説明

納豆容器

【課題】納豆原料を容器本体部内に入れた後の蓋体部の閉蓋作業、かつ、納豆を食するに際しての蓋体部の開蓋作業が非常に容易な構造の納豆容器を提供することである。
【解決手段】納豆が入れられる納豆容器Aであって、前記納豆容器Aは、フランジ部3を有する容器本体部1と、フランジ部4を有する蓋体部2とを具備し、前記容器本体部1と前記蓋体部2とは互いのフランジ部3,4の端縁においてヒンジ部5を介して連結されていて、前記容器本体部1は、該容器本体部1の凹状容器部6の周囲において、該容器本体部1のフランジ部3の面より上方に立設した立設壁7を具備し、前記蓋体部2は、閉蓋時に、前記立設壁7が嵌る嵌合用凹部8を具備し、該立設壁7と該嵌合用凹部8との間の摩擦力によって閉蓋状態が維持されるよう構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は納豆容器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の一般的な納豆容器は、例えば図7に示されるタイプである(特開2008−265780号公報、特開2010−241487号公報)。図7中、51は容器本体部、52は容器本体部における納豆収納用(充填用)の凹状容器部(凹状部)、53は容器本体部51におけるフランジ部、54は蓋体部、55は蓋体部54に設けられた凸部、56は蓋体部54におけるフランジ部、57はヒンジ部である。ヒンジ部57によって、フランジ部53とフランジ部56とは繋がっている。このような容器において、納豆原料が凹状部52に入れられた後、蓋体部54による閉蓋が行われる。この後、ヒンジ部57以外の残りの辺においてフランジ部53とフランジ部56との間でヒートシールが行われ、醗酵室に搬送される。すなわち、これまでの納豆容器は、特開2008−265780号公報や特開2010−241487号公報にも記載の通り、容器本体部のフランジ部と蓋体部のフランジ部とは、基本的に、ヒートシール等により、一体固着がなされている。従って、この種の納豆容器の蓋体部を開蓋しようとすると、前記ヒートシールを壊さなければならない。この時、開蓋に際して、力を入れ過ぎ、蓋体部54を破ってしまったりする。酷い場合には、容器本体部51を破ってしまい、凹状容器部(凹状部)52に収納(充填)されている納豆を床に落としてしまうことすら有った。
【0003】
従って、出来るならば、ヒートシールが無くても良い構造の納豆容器の開発が望まれた。このような観点からの開発が進められ、ヒートシールを必要としない納豆容器が提案されている。
【0004】
例えば、外形が方形で納豆生産ラインの支持手段をそのまま利用でき、しかも内部の納豆の攪拌が容易であり、更にヒートシールを要さずに閉蓋状態に保持でき、一旦開封した後の再度の閉蓋も容易に可能なことを目的として、図8に示される如く、納豆を収納するための収納凹部62が開口部周囲に平面方形のフランジ部63を残して形成されてなる容器本体61と、前記容器本体61にヒンジ部64を介して連設された蓋体65とよりなる納豆容器であって、前記容器本体61の収納凹部62の側壁が、開口部から連続して下方に向かって延びる上部側壁66と、開口部に近い高さ位置で該上部側壁から内方に屈曲して形成された段部67と、該段部67から下方に延びて平面円形をなす底部に至る下部側壁68とからなり、該下部側壁がテーパ状をなして底部69に連続しており、前記蓋体65には、収納凹部62の開口部との対応位置に、閉蓋時に該開口部の内側に嵌合する凸部70が形成されてなり、更に容器本体61のフランジ部と蓋体65のフランジ部に、閉蓋時に、互いに嵌合する係合凹部71と係合凸部72とが設けられた納豆容器が提案(特開2010−202282号公報)されている。
【0005】
又、図9に示される如く、納豆を収納するための収納凹部82が開口部周囲に平面方形のフランジ部83を残して形成されてなる容器本体81と、前記容器本体81にヒンジ部84を介して連設された平面方形の蓋体85とよりなる納豆容器であって、前記容器本体81の収納凹部82の側壁が、開口部から連続して下方に向かって延びる上部側壁86と、開口部に近い高さ位置で該上部側壁から内方に屈曲して形成された段部87と、該段部からテーパ状に傾斜して下方に延びて平面円形の底部88に至る下部側壁89とからなり、前記蓋体85には、収納凹部82の開口部との対応位置に、閉蓋時に該開口部の内側に嵌合するリブ状凸部90が形成され、該リブ状凸部90の一個所もしくは複数個所に外方へ拡張形成された張り出し部91が設けられてなり、更に容器本体81のフランジ部83における二つのコーナー部近傍には、前記収納凹部82の開口部に連続して係合凹部92が形成され、これに対応する蓋体85のフランジ部93のコーナー部近傍には、前記リブ状凸部90に連続して、閉蓋時に前記係合凹部92に嵌合する係合凸部94が設けられてなる納豆容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−265780号公報
【特許文献2】特開2010−241487号公報
【特許文献3】特開2010−202282号公報
【特許文献4】特開2011−42400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2010−202282号公報や特開2011−42400号公報で提案の納豆容器は、容器本体部と蓋体部との間に凹凸の嵌合(係合)構造を採用することにより、ヒートシールを不採用とすることが出来ている。
【0008】
しかしながら、ヒートシールと言った強い結合力で蓋体部が容器本体部に対して閉蓋ロックされているものでは無い。従って、比較的大きな力が作用しなくても、蓋体部が多少ずれ、蓋体部と容器本体部との間、特に容器本体部のフランジ部上面と蓋体部のフランジ部下面との間に隙間が出来ることも多い。そして、容器本体部のフランジ部上面に飛散して来た虫や埃は、前記隙間から収納凹部62,82内に入り込み(落ち込み)易い。
【0009】
更に、図7タイプの納豆容器でも、図8,9タイプの納豆容器でも、蓋を開いて、容器本体部内の納豆を掻き混ぜようとした場合、例えば親指と人差し指とで容器本体部のフランジ部を挟み持つようにしている。この状態で、箸などにより、納豆の掻き混ぜが行われる。この時、納豆のネバネバがフランジ部上面に在る親指に付くことが起きている。これは非常に嫌なものである。
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、上記課題を解決することである。
【0011】
特に、本発明が解決しようとする第1の課題は、容器本体部と蓋体部との間に、ヒートシール処理を、積極的に、講じなくても済み、納豆原料を容器本体部内に入れた後の蓋体部の閉蓋作業、かつ、納豆を食するに際しての蓋体部の開蓋作業が非常に容易な構造の納豆容器を提供することである。更には、ヒートシールが積極的に行われてないことから、蓋体部の閉蓋ロック力が弱いことに起因して蓋体部がズレ、容器本体部と蓋体部との間に多少の隙間が出来るようになっても、内部に虫や埃が入り難い(落ち込み難い)構造の納豆容器を提供することである。かつ、容器本体部内に入れられている納豆を掻き混ぜる時に、納豆のネバネバが親指に付き難い構造の納豆容器を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする第2の課題は、納豆を食するに際して、容器本体部の納豆を取り出し易い構造の納豆容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記第1の課題は、
納豆が入れられる納豆容器であって、
前記納豆容器は、
フランジ部を有する容器本体部と、フランジ部を有する蓋体部とを具備し、
前記容器本体部と前記蓋体部とは互いのフランジ部の端縁においてヒンジ部を介して連結されていて、
前記容器本体部と前記蓋体部とは発泡材で成形されてなり、
前記容器本体部は、
該容器本体部の凹状容器部の周囲において、該容器本体部のフランジ部の面より上方に立設した立設壁を具備し、
前記蓋体部は、
閉蓋時に、前記立設壁が嵌る嵌合用凹部を具備し、
前記蓋体部が前記容器本体部に対して閉蓋された場合、該容器本体部の立設壁に該蓋体部の嵌合用凹部が嵌り、該立設壁と該嵌合用凹部との間の摩擦力によって閉蓋状態が維持されるよう構成されてなる
ことを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0014】
前記第1及び第2の課題は、前記納豆容器であって、前記立設壁が、高さが高い高壁部と、高さが低い低壁部とを具備することを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0015】
前記納豆容器であって、好ましくは、前記立設壁が、ヒンジ部に対向する前端側における中央部側の位置に低壁部を具備することを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0016】
前記納豆容器であって、好ましくは、前記立設壁が、ヒンジ部に対向する前端側における端部側の位置に高壁部を具備することを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0017】
前記納豆容器であって、好ましくは、前記凹状容器部は平面視で略矩形であり、前記立設壁は、前記略矩形の四隅の角部において、高壁部を具備することを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0018】
前記納豆容器であって、好ましくは、前記凹状容器部は、平面視における長さが5〜13cmの大きさであることを特徴とする納豆容器によって解決される。
【0019】
前記納豆容器であって、好ましくは、前記ヒンジ部が対向する前端側および後端側の凹状容器部に押圧力を作用させた場合、立設壁が撓み、立設壁と嵌合用凹部との間の摩擦力が低下して閉蓋力が緩み、ヒンジ部が有する弾撥力で開蓋されるよう構成されてなることを特徴とする納豆容器によって解決される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の納豆容器は、蓋を閉じた際に、例えばヒートシールと言った手段を積極的に講じる必要が無い。すなわち、納豆製造工程において、納豆原料(又は、納豆)を入れて閉蓋する際、従来では、閉蓋力を持たせる為に、容器本体部と蓋体部とをヒートシールしていたが、斯かる処理は絶対的なものでなくなった。従って、納豆製造工程の簡略化が図られ、コストの低減化を図ることが出来る。
【0021】
容器本体部と蓋体部との間にヒートシールが積極的に施されてないことから、蓋体部の閉蓋ロック力は弱い。そして、この弱い閉蓋ロック力を越えた力が作用した場合、蓋体部がズレ、容器本体部と蓋体部との間に多少の隙間が出来るようになる。しかしながら、斯かる隙間が出来ても、本発明の納豆容器では、内部に虫や埃が入り難い。
【0022】
本発明の納豆容器に納豆が入った商品の購入後に、蓋が開けられ、例えば箸などで容器本体部内の納豆が掻き混ぜられて食されるようになる。この時、例えば親指と人差し指などで容器本体部のフランジ部が把持され、掻き混ぜが行われる。この時、親指は立設壁でガードされている。従って、納豆掻き混ぜによって出来た納豆のネバネバが指に付き難い。すなわち、立設壁が無いものにあっては、容器本体部内の納豆を掻き混ぜていると、不注意の所為でもあろうが、しばしば、納豆のネバネバが指に付いてしまう。これは、非常に、嫌なものであるが、本発明の容器が用いられた場合には、斯かる現象が起き難い。使用性が非常に良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明になる納豆容器の開蓋状態での斜視図
【図2】本発明になる納豆容器の閉蓋状態におけるX−X線での断面図
【図3】本発明になる納豆容器の閉蓋状態におけるY−Y線での断面図
【図4】本発明になる納豆容器の容器本体部に押圧力を作用させた際の立設壁の変形具合を示す平面図
【図5】本発明になる納豆容器の容器本体部に入れられている納豆を掻き混ぜる際の使用状態説明図
【図6】本発明になる納豆容器の容器本体部から納豆を取り出す際の使用状態説明図
【図7】従来の納豆容器の説明図
【図8】従来の納豆容器の説明図
【図9】従来の納豆容器の説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、納豆が入れられる納豆容器である。この納豆容器は、容器本体部と蓋体部とを具備する。容器本体部と蓋体部とは発泡材で成形されている。本発明の納豆容器は、例えば発泡材料を所定形状に成形(成型)することにより、得られる。例えば、樹脂を所望の形状に発泡成形(成型)することで得られる。容器本体部および蓋体部は、共に、フランジ部を具備する。前記フランジ部は、その外形が、共に、平面視で、略矩形である。例えば、略正方形あるいは略長方形である。この矩形は、一辺の長さが、例えば約5.5〜14cmである。より好ましくは、12cm以下である。前記容器本体部のフランジ部の一端縁と前記蓋体部のフランジ部の一端縁とは連結されている。この連結部にヒンジ機構(ヒンジ部)が設けられている。ヒンジ部(ヒンジ機構)は、例えば2本の平行なV条溝で構成されている。このヒンジ機構によって、蓋体部が回動できるようになっている。この回動により、蓋体部の開閉が行われる。容器本体部は凹状容器部(凹状部)を具備する。凹状部は、その外形が、平面視で、例えば略矩形である。例えば、略正方形あるいは略長方形である。この矩形は、一辺の長さが、約5〜13cmである。より好ましくは、10cm以下である。深さは、例えば約1.5〜3cmである。容器本体部は、前記凹状容器部(凹状部)の周囲において、フランジ部の面より上方に立設した立設壁を具備する。立設壁は、例えば凹状部の内壁の延長上に存在している。勿論、凹状部内壁面と立設壁内壁面との間に段差が存在していても良い。すなわち、凹状部内壁面と立設壁内壁面とが一つの平坦面を構成してなくても良い。しかしながら、好ましくは、凹状部の内壁面の延長上に立設壁の内壁面が存在(凹状部内壁面と立設壁内壁面とが一つの平坦面を構成)していることである。なぜならば、凹状部内の納豆を取り出そうとした場合に、スムーズに取り出せるからである。立設壁は、好ましくは、高壁部(高さが高い壁部)と、低壁部(高さが低い壁部)とを具備する。すなわち、低壁部を設けた場合、閉蓋時においても、凹状容器部(凹状部)内に空気の出入りが比較的スムーズに行われる。この為、凹状容器部(凹状部)内に納豆原料を入れて醗酵させるのに好都合である。低壁部は、好ましくは、ヒンジ部に対向する前端側(ヒンジ部から遠い側)における中央部側の位置に構成させていることが好ましい。かつ、この中央部の左側および/または右側の位置において、高壁部を構成させておくことが好ましい。例えば、ヒンジ部に対向する前端側における端部側の位置に高壁部を構成させておくことが好ましい。斯かる位置に低壁部を構成させた場合、納豆を取り出そうとする場合、前記位置の低壁部が納豆排出(取出し)のガイド(堰開門部)の機能を奏するようになり、納豆の取出し作業がスムーズで、かつ、より間違いなく行われるようになる。凹状容器部(凹状部)が、平面視で、略矩形の場合、この略矩形の四隅の角部において、高壁部を構成させることが好ましい。そして、各辺の略中央部位置において、低壁部を構成させることが好ましい。高壁部(立設壁)の高さ(フランジ部上面からの高さ)は、約5〜15mmである。より好ましくは約7〜13mmである。ここで、高壁部を構成させたのは、上記理由以外にも、閉蓋時における蓋体部の閉蓋ロック力を確実なものとする為である。すなわち、本発明においては、容器本体部と蓋体部とは、例えば熱溶着と言った処理は基本的に行われない。本発明では、蓋体部の閉蓋ロックは、閉蓋時における立設壁と後述の蓋体部の嵌合用凹部との間の摩擦力によって、担保(維持)される。従って、立設壁と嵌合用凹部とは、或る程度の長さ(面積)に亘って接合、特に、好ましくは密着(圧接)していることが好ましい。この接合長さが上下方向(開蓋方向)において、非常に短い場合、立設壁と嵌合用凹部との間に生ずる摩擦抵抗力は小さい。従って、上記のように構成させることが好ましかったのである。低壁部(立設壁)の高さ(フランジ部上面からの高さ)は、約0〜10mmである。より好ましくは約2〜8mmである。更には約2〜6mmである。空気の出入りを鑑みた場合、低壁部の高さ(フランジ部上面からの高さ)は0mmでも良い。この場合、閉蓋時においても、凹状容器部(凹状部)の内外に通じる隙間が出来易い。このことは、異物(ゴミや虫)が内部に入り込み(落ち込み)易くなる。従って、1mm程度でも、より好ましくは2mm以上の仕切用の壁が存しておれば、この壁が障壁となる。そして、内部にゴミや虫が入り込み(落ち込み)難くなる。すなわち、2〜8mm程度の低壁部(立設壁)が存しているのが好ましい。立設壁は上記機能を奏する以外に次のような機能をも奏する。納豆容器に納豆が入った商品の購入後に、蓋が開けられ、例えば箸などで容器本体部内の納豆が掻き混ぜられて食される。この時、親指と人差し指などで容器本体部のフランジ部が把持され、掻き混ぜが行われる。この時、親指は立設壁でガードされている。従って、納豆掻き混ぜによって出来た納豆のネバネバが指に付き難い。すなわち、立設壁が無いものにあっては、容器本体部内の納豆を掻き混ぜていると、不注意の所為でもあろうが、しばしば、納豆のネバネバが指に付いてしまう。ところで、フランジ部の幅が数cmと言った大きなものであれば、把持した際に、指が凹状容器部(凹状部)側に食み出ることは少ないであろう。しかしながら、フランジ部の幅は、一般的には、例えば約1cm程度である。フランジ部の幅を数cmと言った程度に大きくすると、材料コストが高くなる。更には、例えば販売時に大面積の陳列場所を必要とする。輸送時にも大きな空間を必要とする。このようなことから、フランジ部の幅を数cmと言った十分に大きなものにすることは出来ない。この為、フランジ部を把持した際に、指は凹状容器部(凹状部)側に嵌り込み易い(食み出やすい)ものとなってしまう。その結果、立設壁が無いものにあっては、容器本体部内の納豆を掻き混ぜていると、納豆のネバネバが指に付く恐れが高い。これは、非常に、嫌なものである。ところが、立設壁が奏する作用(機能)によって、本発明では、斯かる問題が大きく改善される。使用性が非常に良い。前記蓋体部は、閉蓋時に、前記立設壁が嵌る嵌合用凹部を具備する。そして、前記蓋体部が前記容器本体部に対して閉蓋された場合、該容器本体部の立設壁に該蓋体部の嵌合用凹部が嵌り、該立設壁と該嵌合用凹部との間の摩擦力によって閉蓋状態が維持されるよう構成されている。前記納豆容器は、好ましくは、前記ヒンジ部が対向する前端側(ヒンジ部から遠い側)および後端側(ヒンジ部に近い側)の凹状容器部に押圧力を作用させた場合、立設壁、特にヒンジ部から遠い側の立設壁が撓み、立設壁と嵌合用凹部との間の摩擦力が低下して閉蓋力が緩み、ヒンジ部が有する弾撥力で開蓋されるよう構成されている。これによって、凹状容器部を把持して押さえれば、蓋体部が開くようになる。これは、非常に便利である。
【0025】
以下、更に詳しく説明する。
【0026】
図1〜図6は本発明になる納豆容器の一実施形態を説明する為のものであり、図1は納豆容器の開蓋状態での斜視図、図2は納豆容器の閉蓋状態におけるX−X線での断面図、図3は納豆容器の閉蓋状態におけるY−Y線での断面図、図4は納豆容器の容器本体部に押圧力を作用させた際の立設壁の変形具合を示す平面図、図5は納豆容器の容器本体部に入れられている納豆を掻き混ぜる際の使用状態説明図、図6は納豆容器の容器本体部から納豆を取り出す際の使用状態説明図である。
【0027】
各図中、Aは納豆容器である。この納豆容器Aは発泡材で構成されている。例えば、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種の合成樹脂製の発泡シートを用いて構成されている。勿論、材料は上記樹脂に限られるものでは無い。ここで、発泡材が好ましく使用されたのは、断熱性(保冷効果)や剛性(保形性)の観点から好ましいのみならず、発泡によって生じた表面の凹凸によって、蓋体部の閉蓋ロック力(閉蓋時における摩擦抵抗力(開蓋に対する抵抗力))が確保され易いからである。そして、上述のような発泡樹脂シートに対して、真空成形等の熱成形加工が施され、納豆容器Aが構成された。
【0028】
納豆容器Aは、容器本体部1と蓋体部2とを有する。容器本体部1はフランジ部3を有する。蓋体部2もフランジ部4を有する。これ等のフランジ部3,4は、外形が、一辺約9.5cmの略正方形である。厚みは約2〜3mmである。外形が略正方形のフランジ部3と外形が略正方形のフランジ部4とは、一辺において、繋がっている。この連結部には、2条のV状溝5が形成されている。すなわち、2条のV状溝5によってヒンジ機構(ヒンジ部)が構成されている。これが蓋体部2の回動開閉に際しての回動軸機能を奏する。かつ、ここには、多少の弾撥機能が存するようになっている。従って、蓋体部2の閉蓋ロック力が解除されると、前記弾撥機能によって、蓋体部2が半自動的に開くようになっている。
【0029】
容器本体部1は、納豆材料が入れられる凹状部(凹状容器部)6を有する。この凹状部6は、平面視で、一辺の長さが約8cmの略矩形(略正方形)である。深さ(フランジ部3下面からの深さ)は約2cmである。凹状部6は、底面側(下方側)の面積が小さく、開口側(上方側)の面積が大きい。すなわち、凹状部6は、その内壁面がテーパー状に傾斜した形状である。尚、図示されていないが、凹状部6の外壁面には、水平方向において、適度なリブ構造が施されている。又、凹状部6の底面(上面および下面)にも適度なリブ構造が施されている。すなわち、これ等のリブ構造によって強度が確保されている。
【0030】
容器本体部1は、更に、立設壁7を有する。立設壁7は、その一端側がフランジ部3の内端部に繋がり、他端側が凹状部6の上端部に繋がったものである。従って、立設壁7は、断面が、∩形状である。断面∩形状の立設壁7は、その他端側が凹状部6の上端部に繋がっていることから理解できるが、立設壁7の内壁面と凹状部6の内壁面とが一つの平坦な傾斜面を構成するようになっている。かつ、立設壁7は凹状部6の周囲に沿って設けられている。従って、立設壁7は、平面視で、略矩形(略正方形)をしたリング状のものである。そして、上記立設壁はリブ効果を奏するようにもなる。
【0031】
立設壁7は、高さ方向において、高低が有る。すなわち、高さが高い高壁部7aと、高さが低い低壁部7bとを有する。高壁部7aは四隅の角部に存する。低壁部7bは、矩形の各辺の略中央部に存する。高壁部7aと低壁部7bとは、その境界において、絶壁の如くに変化したものでも、なだらか(徐々)に変化したものでも良い。本実施形態にあっては、図1からも判る通り、なだらかに変化している。
【0032】
蓋体部2は、閉蓋時に、立設壁7の外壁面が密接する凹部8を有する。この凹部8の外側にフランジ部4が繋がっている。
【0033】
上記の如くに構成させた納豆容器は、図1,2,3から判る通り、閉蓋時においては、立設壁7の外壁面と凹部8の内壁面とが密着している。そして、立設壁7の外壁面と凹部8の内壁面との間に作用している摩擦抵抗力が、2条のV状溝5によって構成されたヒンジ機構部が有する弾撥開蓋力に勝っている。従って、フランジ部3とフランジ部4との間にヒートシール(熱溶着)が行われずとも、閉蓋ロックが行われている。勿論、ヒートシール(熱溶着)の如きの固着力ではないから、容器本体部1と蓋体部2との間(フランジ部3の上面とフランジ部4の下面との間)には隙間が出来るかも知れない。しかしながら、仮に、隙間が出来たとしても、フランジ部3の上面には凹状部6の周囲に沿って立設壁7が設けられているから、塵や虫などは凹状部6内に入り込み(落ち込み)難い。
【0034】
蓋体部2の閉蓋時において、高壁部7aは蓋体部2の天面に当接している。しかしながら、低壁部7bは蓋体部2の天面に当接していない。従って、蓋体部2の閉蓋時においても、低壁部7bの個所においては、隙間が存在している。このことは、凹状部6に空気の出入りが出来やすいことを意味する。従って、容器本体部1の凹状部6内に納豆原料が入れられ、閉蓋後に醗酵室に搬送されて醗酵処理が行われるに際して、その醗酵が上手く進む。
【0035】
醗酵が進み、これが商店に運ばれて販売される。この容器に入った納豆を購入した顧客は、図4に示される如く、凹状部6の相対する外壁面、特に、V状溝5に平行な相対する側面を親指と人差し指(中指)とで持ち、そして押圧力を作用させる。すると、前端側(V状溝5に平行なラインで、かつ、V状溝5から遠い側のライン)に存する立設壁7、特に、高壁部7aが内側に撓む。勿論、力が加わっている低壁部7bは大きく内側に撓んでいる。この為、立設壁7の外壁面と凹部8の内壁面との間に隙間が出来ることから、両者の間の摩擦抵抗力は小さくなる。この結果、ヒンジ部が有する弾撥開蓋力が摩擦抵抗力より大きくなり、蓋体部2が開くようになる。すなわち、凹状部6の壁面を片手で押圧するのみで簡単に開蓋が行われる。これは非常に便利である。
【0036】
開蓋後、図5に示される如く、容器本体部1のフランジ部3が持たれる。そして、凹状部6内の納豆が箸などで掻き混ぜられる。この時、納豆が飛び散るようなことが起きても、フランジ部3上面の指は立設壁7でガードされている。例えば、親指は立設壁7に圧接していて、親指の下方側は立設壁7によって隠れている。かつ、指が凹状部6内側に嵌り込む(食み出る)ことが確実に防止される。従って、納豆のネバネバが指に付くと言ったことが防止される。
【0037】
納豆の掻き混ぜが終了すると、図6に示される如く、容器が傾けられて、納豆はご飯の上に運ばれる。この時、低壁部7bが納豆取出のガイド(堰開門部)の機能を奏する。そして、納豆が上手くご飯の上に運ばれる。
【0038】
上記において、本発明の代表的な実施形態が説明された。上記実施形態の納豆容器には、基本的には、ヒートシールが施されてない。しかしながら、本発明を逃げる為に、ピンポイント的に弱い力の溶着が施されている過ぎない場合などは、実質的にヒートシール処理が行われてないのと同等であると見做すべきであろう。
【符号の説明】
【0039】
A 納豆容器
1 容器本体部
2 蓋体部
3,4 フランジ部
5 V状溝
6 凹状部
7 立設壁
7a 高壁部
7b 低壁部
8 凹部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆が入れられる納豆容器であって、
前記納豆容器は、
フランジ部を有する容器本体部と、フランジ部を有する蓋体部とを具備し、
前記容器本体部と前記蓋体部とは互いのフランジ部の端縁においてヒンジ部を介して連結されていて、
前記容器本体部と前記蓋体部とは発泡材で成形されてなり、
前記容器本体部は、
該容器本体部の凹状容器部の周囲において、該容器本体部のフランジ部の面より上方に立設した立設壁を具備し、
前記蓋体部は、
閉蓋時に、前記立設壁が嵌る嵌合用凹部を具備し、
前記蓋体部が前記容器本体部に対して閉蓋された場合、該容器本体部の立設壁に該蓋体部の嵌合用凹部が嵌り、該立設壁と該嵌合用凹部との間の摩擦力によって閉蓋状態が維持されるよう構成されてなる
ことを特徴とする納豆容器。
【請求項2】
立設壁は、高さが高い高壁部と、高さが低い低壁部とを具備する
ことを特徴とする請求項1の納豆容器。
【請求項3】
立設壁は、ヒンジ部に対向する前端側における中央部側の位置に低壁部を具備する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の納豆容器。
【請求項4】
立設壁は、ヒンジ部に対向する前端側における端部側の位置に高壁部を具備する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの納豆容器。
【請求項5】
凹状容器部は平面視で略矩形であり、
立設壁は、前記略矩形の四隅の角部において、高壁部を具備する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの納豆容器。
【請求項6】
凹状容器部は、平面視における長さが5〜13cmの大きさである
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの納豆容器。
【請求項7】
ヒンジ部が対向する前端側および後端側の凹状容器部に押圧力を作用させた場合、立設壁が撓み、立設壁と嵌合用凹部との間の摩擦力が低下して閉蓋力が緩み、ヒンジ部が有する弾撥力で開蓋されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかの納豆容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218742(P2012−218742A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83474(P2011−83474)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(391011825)中央化学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】