説明

紐状の繊維製品の湿式処理機械

【課題】紐製品への処理染液の塗布を簡単なやり方で改善する。
【解決手段】閉じた容器1と、その容器内で循環するエンドレスの紐製品4を所定の循環方向10で駆動するために搬送媒体流を供給可能な、通過通路を備えるノズルテーパ部35によって片側で区切られた搬送媒体流が貫流するノズル環状間隙を有するベンチュリ搬送ノズルシステム6と、紐製品進行方向で見て搬送ノズルシステムの前に配置され、そのつどの紐製品を搬送ノズルシステムに導入可能な巻取手段5と、巻取手段と搬送ノズルシステムのノズル環状間隙との間に位置する紐製品進行経路の区域で紐製品に処理染液を塗布するための手段とを備えた、紐状の繊維製品の湿式処理機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じた容器と、前記容器内で循環するエンドレスの紐製品を所定の循環方向で駆動するために搬送媒体流が供給されるベンチュリ搬送ノズルシステムとを備える、紐状の繊維製品の湿式処理機械に関する。
【背景技術】
【0002】
実際にいくつかの実施形態でジェット式染色設備等として公知となっているこのような湿式処理機械は、搬送媒体流が液体状であるか気体状であるかに応じて、流体力学の原理または空気力学の原理で作動する。搬送ノズルシステムによって送出されるエンドレスの紐製品は、搬送ノズルシステムから外に出るとカトリング装置によって折り畳まれてから蓄積部に蓄積され、そこから継続的に取り出されて、搬送ノズルシステムの紐製品入口へと供給される。蓄積部から紐を引き出し、これを搬送ノズルシステムの紐製品入口へ挿入するために、搬送ノズルシステムの各々の搬送ノズルについて巻取機を通常有する巻取手段が、搬送ノズルシステムに付属している。電動モータで駆動される巻取機は、それぞれに付属する搬送ノズルの紐製品入口の手前で紐製品の進行経路に位置しており、蓄積部から引き出された紐製品が搬送ノズルの紐製品入口へ入る前に、これを実質的に垂直方向に少なくとも90°方向転換させる。巻取機から蓄積部までの紐製品進行経路の実質的に垂直な区域では、紐製品によって一緒に運ばれる処理染液の一部が滴り落ち、このことは、紐製品がその自重により巻取機の表面に載り、それにより程度の差こそあれ圧縮されることによって促進される。
【0003】
循環する紐製品に処理染液をできるだけ均等に塗布するために、処理染液は染液循環ポンプによって循環させられ、搬送媒体流と協働しながら紐製品に作用させられる。特許文献1から公知となっているこの種の湿式処理機械では、循環する紐製品のための搬送媒体流としての役目をする気体流に、噴霧の形態をした処理剤が添加される。空気力学の原理に基づいて作動する、特許文献2に記載の別の後染め機械では、処理剤が搬送ノズルのノズルハウジングに導入され、処理剤の粒子が気体状の搬送媒体流によりノズルの環状隙間を介して通過中の紐製品へ均等に塗布され、搬送ノズルの集中区間をさらに通過するときに処理剤が紐製品へ練り込まれる。
【0004】
実際問題としては、空気力学の原理に基づいて作動するジェット湿式処理機械で気体状の搬送媒体流に注入することができる液体状の処理染液の量は限られていることが判明している。すなわち、搬送媒体流に持ち込まれた処理染液の液滴は紐製品の進行方向に加速され、そのために搬送媒体流のかなりのエネルギーが必要になり、搬送媒体流を送出する送風機によってこのエネルギーを印加しなくてはならない。しかしながら、特に紐製品を洗浄する場合には、洗浄時間を短縮するとともに優れた洗浄作用を実現するために、搬送ノズルによる高い染液流量を得ることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0078022号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第09455381号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、紐製品への処理染液の塗布を簡単なやり方で改善する可能にするための道を開くことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明による湿式処理機械は請求項1の構成要件を有している。
【0008】
この新規の湿式処理機械は、巻取手段の領域と搬送ノズルシステムのノズル環状隙間との間の紐製品進行経路の区域で紐製品に処理染液を塗布するための手段を備えており、この手段は、紐製品に処理染液を塗布するために搬送ノズルシステムの領域にある手段の追加または代替として紐製品に処理染液を作用させ、それにより、すでに搬送ノズルシステムのノズル環状間隙の領域で紐製品に処理染液が施される。紐製品への処理染液の塗布が、巻取手段の領域とノズル環状間隙との間で行われることによって、紐製品が搬送ノズルシステムで処理染液により処理される前に、格別に有効な紐製品の湿潤が実現される。なぜなら、通常は水平方向または水平線に対して若干傾いて延びる、巻取手段と搬送ノズルシステムの間の紐製品進行経路は比較的短いので、塗布された処理染液の大部分を紐製品が搬送ノズルシステムへ持ち込むからである。それに応じて、搬送ノズルシステム自体の領域で紐製品に塗布される処理染液の割合を減らすことができる。
【0009】
紐製品への処理染液の塗布手段は、当該塗布手段から出ていく処理染液が、紐製品の進行方向の運動成分を少なくとも1つ有するように配置されていると目的に適っている。それにより、塗布される処理染液がすでに紐製品の進行方向へ加速されているので、紐製品進行方向へ液滴を加速するために必要なエネルギーコストが減る。このことは、気体状の搬送手段循環の負担軽減と、いっそう高速の紐製品循環とをもたらす。そのうえ通過中の製品が丁寧に扱われ、このことは、処理染液の液滴が紐製品進行方向に対して直角に紐製品表面に衝突しないことに由来している。
【0010】
実際の実施形態では、処理染液塗布手段は巻取手段の領域に、噴霧ノズルを有する噴霧手段を備えていてよい。この噴霧ノズルはそのノズル連通部の領域に、紐製品進行方向との間で90°よりも小さい角度をなす連通軸を有している。
【0011】
巻取手段が、回転軸を中心として回転可能な少なくとも1つの巻取機を有しており、処理染液塗布手段が、たとえば巻取機の上方の領域で連通しており、それにより、外に出ていく処理染液が下方に向かって流れて、前を通過していく紐製品に当ると、設計的に簡素な形態が得られる。代替的および/または追加的に、設計上の所与の条件から考えて可能であるならば、巻取機の回転軸と搬送ノズルシステムのノズルテーパ部との間に位置する領域で、処理染液塗布手段が連通していてもよい。
【0012】
この新規の湿式処理機械は、追加的または代替的に、通過通路を仕切っている通路壁を取り囲むように連通する、ノズルテーパ部の通過通路に処理染液を注入するための手段を備えていてよい。この注入手段を介して、処理染液すなわち処理剤が搬送媒体流から分離された状態で、搬送ノズルを通過する紐製品に塗布される。この場合も紐製品への処理染液の作用は、製品の送出を惹起する、環状間隙に流入する搬送媒体流の速度とは無関係である。注入手段がノズルテーパ部の領域に配置されているので、紐製品は、環状間隙に入ってそこで搬送媒体が作用するときには、注入手段から出てくる処理染液ですでに予備処理されている。注入手段が通過通路壁を取り囲むように分散された状態で配置されているので、紐製品はノズルテーパ部の通過通路を通り抜けるときに、ノズル開口部の回りに同心的に配置された処理染液のカーテンを通過する。それにより、処理染液が製品に非常に穏やかに作用する。
【0013】
すでに述べたように、1つの有利な実施形態では、注入手段は通過通路の長手方向中心軸に対して、注入手段から通過通路へと出ていく処理染液が製品進行方向の運動成分を有するように連通する。この目的のために、注入手段は長手方向中心軸に対して、頂点が製品進行方向を向く角度で連通するように配置されるのが好ましい。この方策により、前述した処理染液カーテンは、通過する紐製品の速度を近似的に有する程度の大きさにすることができる、製品進行方向を向いた成分を有することになる。その結果として、注入手段を介して通過通路へ導入される処理染液は、前述したとおり、処理染液を一緒に運ぶ通過中の紐製品によって初めて加速されなくてよい。そのような加速方法は、紐製品に対する制動作用につながってしまうことになる。
【0014】
1つの有利な実施形態では、注入手段は、通路壁を取り囲むように分散された状態で通過通路に連通する注入通路を有しており、これらの注入通路の連通部は通過通路の円周にわたって特に均等に分散されている。しかしながら代替的および/または追加的に、注入手段は、通過通路の壁を貫通して取り囲むように延びる少なくとも1つの環状間隙を有していてもよく、この環状間隙は通過中の紐製品を包囲して、処理染液を紐製品へ均等に塗布する。しかしいずれの場合でも、すでに述べたように、処理染液による紐製品への作用は非常に穏やかに行われる。製品への処理染液の必要な練り込みまたは擦り込みは、環状間隙を起点として製品進行方向に延びる搬送ノズルの集中区間を紐製品が引き続いて通り抜けるときに、搬送媒体流によって行われる。ノズルテーパ部で処理染液を注入することで、処理染液を方向転換させる必要がなくなる。処理染液が搬送媒体流に添加される場合には避けることができない液体粒子の飛散や分離が起こらないので、通過中の製品流に処理染液が直接かつ100パーセント到達する。
【0015】
相応の配管を介して搬送媒体源と接続された、環状間隙の領域にある独自のノズルハウジングで、搬送ノズルを通常のやり方により包囲することが可能である。特に、複数の搬送ノズルが相並んで位置するように単一の容器に付属しているいわゆる多重蓄積機械の場合、ノズルシステムの搬送ノズルがすべてその環状間隙で、気体状の搬送媒体が供給される共通の搬送媒体分配室に位置するように配置される構成を採用することができる。この分配室は、搬送媒体源と接続されていて搬送ノズルが直接的に挿入された長尺状の搬送媒体分配箱の中に構成されるのが目的に適っている。
【0016】
本発明の発展例は従属請求項の対象となっている。図面には、本発明の対象物の一実施例が示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に概略的に示す高温(HT)後染め機械は、耐圧性の円筒形の容器1を有しており、蓋2で閉止可能な操作開口部3がその内部に通じており、この操作開口部を通して紐製品4を中へ入れることができる。紐製品4は外部駆動される巻取機5を介してベンチュリ搬送ノズル6へ導入され、ベンチュリ搬送ノズルの後にはカトリング装置7が続いている。カトリング装置7は、搬送ノズル6から出てくる紐製品4を折り畳まれた状態で蓄積部8に一時保管し、そこからエンドレスの紐製品が巻取機5によって再び引き出される。このとき紐製品4は、図1から見てとれるように、蓄積部8と巻取機5の間で実質的に垂直方向の紐製品進行経路に従っている。巻取機5と搬送ノズル6は、容器1と液密に結合されたハウジング部分9に格納されている。紐製品4は操作開口部3から中へ入れられた後、その端部のところでエンドレスの製品ループに結び合わされている。
【0018】
容器1には、染液ストレーナ15を含み、染液循環ポンプ17の吸込配管16と接続された染液排出部14が下側に配置されており、この染液循環ポンプの圧力配管18は熱交換器19を含んでおり、制御弁20と配管21とを介して搬送ノズル6に連通している。染液循環ポンプ17は、容器1から吸引された処理染液を搬送ノズル6および容器1を介して循環させることを可能にする。その循環経路が図1では黒色で図示されている。熱交換器19および染液循環ポンプ17と並列に、止め弁23を含み、染液排出部14を圧力配管21と接続するバイパス配管22が通っている。
【0019】
最後に、処理剤ポンプ25および連絡配管26を介して染液循環ポンプ17の吸込配管16に送り込むことができる化学的な処理剤を水溶液、エマルジョン、または分散液の中に含んでいる調製剤容器24がさらに設けられている。図2から見てとれるように、上に説明した後染め機械は、円筒状の容器1の軸方向に相並んで位置する、本例では4つの蓄積部8を含む多重蓄積機械として構成されている。各々の蓄積部8に搬送ノズル6が付属している。これらの4つの搬送ノズル6が搬送ノズルシステムを形成する。このノズルシステムでは、各々の搬送ノズル6に、駆動される巻取機5が図1から明らかなやり方で付属しており、これらの巻取機の駆動装置は詳しくは図示していない。巻取機5は、駆動装置およびハウジング部分9とともに巻取手段を形成する。
【0020】
以上に説明した空気力学の原理に基づいて作動する後染め機械は、それ自体としては公知である。
【0021】
本発明によれば、処理染液を巻取手段の領域で紐製品4へ塗布するために、この後染め機械に追加の手段が設けられている。そのために、紐製品の進行方向で見て各々の搬送ノズル6の前に位置し、ハウジング9の回転軸28を中心として回転可能な巻取機5に、ハウジング9の接続管30に配置された処理染液ノズル29(図3)が付属している。場合により噴霧ノズルまたは噴射ノズルとして構成される処理染液ノズル29は、配管31(図1)と制御弁32とを介して、処理染液圧力配管21とつながっている。図2から見てとれるように、本例では、4つの搬送ノズル6へと通じる配管31は、圧力配管21と接続された集合配管33へそれぞれ並列に接続されている。
【0022】
図3が示すように、処理染液ノズル29はその連通部の領域で、垂直方向から、紐製品進行方向10に近似する方向へと曲がっており、それにより、ノズル連通軸34が紐製品搬送方向10との間で、頂点が製品進行方向で見て前方に位置する鋭角をなすようになっている。それにより、ノズル29から出ていく処理染液が紐製品4の進行方向10の運動成分を有していることが実現される。
【0023】
図3に図示するように、搬送ノズル6は、紐製品4のための同軸な通過通路36を備えるノズルテーパ部35を有しており、紐製品進行方向で見てその後に、ノズルテーパ部35とともに環状間隙38を形成するデフューザ37が続いている。環状間隙38は、回りを取り囲む管状のノズルハウジング39の中に配置されており、処理染液圧力配管21と(図3には図示しない)送風機圧力配管13とがこのノズルハウジングに連通している。
【0024】
ノズルハウジング39への処理染液圧力配管21の連通は、図3には個別に詳しくは図示していない連通部を介して行われ、この連通部は同じく紐製品4の循環方向10に向くように配置されていてよく、注入された処理染液の液滴はこの連通部から搬送媒体流によって環状間隙38の中へ持ち込まれる。
【0025】
ノズルハウジング39に連通する注入配管または圧力配管21の代替または追加として、図3に示すように、通過通路36を取り囲むように均等に分散された状態で通過通路に連通する注入通路40が、ノズルテーパ部35に配置されるような構成が採用されていてもよい。これらの注入通路40は、図3から見てとれるように、それぞれの中心軸が製品進行方向10に対して傾くように配置されており、それにより、注入通路から出ていく処理染液噴射が紐進行方向10の運動成分をもつようになっている。注入通路40のそれぞれの軸(そのうち1本だけを図示する)は、通過通路36の軸との間で90°よりも小さい角度をなしている様子が図面からわかる。
【0026】
注入通路40は、配管21aを介して染液循環ポンプ17の圧力配管21と接続された、ノズルテーパ部35に装着されている環状通路410から分岐している。
【0027】
作動時には、場合により調整剤容器24から着色剤などの特別な処理剤が添加されて熱交換器でそのつど所要の処理温度にされる、図1に黒色で示す循環経路で循環する処理染液が、染液循環ポンプ17から圧力配管21を介して各々の搬送ノズルのノズルハウジング39へ注入され、そこで搬送媒体流とともに通過中の紐製品4へ塗布される。それと同時に配管21とノズル29を介して、それぞれの巻取機5の領域で、ノズルテーパ部35に入る前に処理染液が紐製品4へ塗布される。ノズルハウジング39と処理染液ノズル29との処理染液の配分は、両方の制御弁20,32(図1)で調整することができる。すでに述べたように、追加的または代替的に、図3の配管21aおよび注入通路40を介して処理染液を紐製品4に塗布することもできる。
【0028】
上述した実施例では、処理染液ノズル29が巻取機5の上方で連通しているのに対して、処理染液ノズル29の連通部が、巻取機5の回転軸28とノズルテーパ部35への紐製品入口との間の領域に位置するような構成が採用されていてもよい。このことは、図1に破線で模式的に示している制御弁32aを含む配管31aによって可能である。紐製品への処理染液の塗布を、紐製品がノズルテーパ部35へ入る前に、回転軸28とノズルテーパ部35の間の区域で平面状に分散された状態で、もしくは複数の部位で行うことも考えられる。
【0029】
図4から図6には、本発明による湿式処理機械の別の例として、空気力学の原理に基づく高温(HT)後染め機械が示されており、そのうち図4では、閉じた円筒状の加圧タンクとして構成された容器1だけが基本的に図示されている。この機械はいわゆる多重蓄積機械であり、容器1に軸方向で相並んで位置するように配置された4つのベンチュリ搬送ノズル6を同じく含んでいる。このとき、各々の搬送ノズルに付属する巻取機5は、巻取機5と搬送ノズル6の間で実質的に水平方向の紐製品4の進行経路が生じるように配置されている。
【0030】
図1から図3と同じ部品には同じ符号が付されており、再度説明はしない。各図面には、本発明にとって重要でない機械部品は図示していない。詳細については、たとえば欧州特許出願公開第0945538A1号明細書などを参照されたい。
【0031】
それぞれの搬送ノズル9での紐製品4の駆動は、気体状の搬送媒体すなわち通常は空気、蒸気、または空気と蒸気の混合物が搬送ノズルに供給されることによって行われる。そのために、容器1には容器端面の領域に、電動モータ11aによって駆動され、実質的に4つの蓄積部3の軸方向の長さにわたって延びる搬送媒体分配箱41に連通する圧力通路13を有する送風機11が配置されている。送風機11は吸込側では、容器1の軸方向の長さにわたって延びていて壁部に相応のパーフォレーションを有する、円筒状の容器1と同軸な吸込管42と接続されている。
【0032】
搬送媒体分配箱41は端面150で閉じられており、これと向かい合う端面では送風機11の圧力通路13に接続されている。搬送媒体分配箱は実質的に長方形の形態を有しており(図2参照)、その上側の被覆壁43は、容器1の外套面の湾曲に合わせるために屋根状に構成されている。
【0033】
搬送媒体分配箱41には、4つの搬送ノズル6が特に図5、図6から明らかなやり方で軸平行に相並んで挿入されている。各々の搬送ノズル6は、同軸なデフューザ37の捕集ノズル37aに向かって拡張する部分とともに同軸の環状間隙を区切るノズルテーパ部35を有しており、この環状間隙38を通って搬送媒体が均等に分配されながらデフューザ37へ流れ込む。ノズルテーパ部35は紐製品4のための同軸な通過通路36を含んでおり、通過通路36は、円筒状部分45と、紐製品入口を形成する漏斗状に拡張する同軸部分46とで構成されており、この同軸部分の後に円筒状部分45が続いている。
【0034】
図5からわかるように、搬送ノズル6は、ノズルテーパ部35とデフューザ37とが互いに向かい合う箱側壁46をそれぞれ封止しながら貫通するように、水平方向に向いたノズル長軸で搬送媒体分配箱41に挿入されている。
【0035】
作動時には、搬送ノズル6の環状間隙38が内部に位置する、搬送媒体分配箱41で包囲された空間に、送風機11によって搬送媒体が供給され、その結果、4つの搬送ノズル6がすべてそれぞれの紐製品4を均等に送出する。搬送ノズル6が挿入された搬送媒体分配箱41はいわゆるコモンレール原理に基づいて作動し、すべての搬送ノズルへの非常に均等な搬送媒体供給を保証することを可能にする。
【0036】
特に図6から見てとれるように、各々の搬送ノズル6のノズルテーパ部35は、通過通路36へ処理染液を注入するための手段を備えており、この手段は、矢印240で図示するように、通過通路36の壁部を円周方向で取り囲みながら均等に分散された状態で連通している。これらの注入手段は、ノズルテーパ部35に形成され、通過通路36の漏斗状に拡張する区域に連通する注入通路40を有している。注入通路40の連通部は、すでに述べたように、通過通路壁にわたって円周方向で均等に分散されている。図6が示すように、注入通路は、その軸が長手中心軸47との間で、頂点が紐製品進行方向10に向いた角度をそれぞれなすように、ノズル長手中心軸に対して傾いた状態で配置されている。注入通路は、連通部と向かい合う側では、ノズルテーパ部35に装着されてこれを包囲する環状通路410の内部空間とつながっており、この環状通路は、詳しくは図示していない図3の配管21aと接続されている。
【0037】
注入通路40からノズルテーパ部35の通過通路へ入った処理染液は、注入通路40から出るときに通過中の紐製品4と緊密に接触する。注入通路40はノズル長軸に対して製品進行方向に傾くように配置されているので、注入通路から出ていく処理染液は、この場合にも紐製品の搬送を促進する製品進行方向の運動成分を有している。環状通路410への処理染液の供給は、通過通路36に入る処理染液の製品進行方向10を向いている成分の速度が、紐製品4の進行速度とほぼ等しくなるように選択された圧力のもとで行われる。しかしながらそのつどの方法条件によっては、運動成分の速度がこれよりも高速または低速であってもよい。
【0038】
代替的に、環状通路410と接続されていて回りを取り囲む環状間隙によって、注入ノズル40が置き換えられていてもよい。通過通路36の軸方向で相並んで位置する複数列の注入通路40、および/または同様に配置された複数の環状間隙が設けられている実施形態も考えられる。
【0039】
注入通路または環状間隙を、通過通路36の円筒状区域45に配置することも原則として可能であることを念のため指摘しておく。
【0040】
この実施形態の場合でも、図1の場合と同じく、巻取機5とノズルテーパ部35の間で紐製品進行経路の区域に連通する、紐製品に処理染液を塗布するための別の手段を設けることができる。なお、この場合には巻取機5は容器1の操作開口部2の領域に直接配置され、その様子は図6に示されている。
【0041】
最後に付言しておくと、本発明は空気力学の原理に基づく湿式処理機械での適用に限定されるものではない。本発明は、液体の搬送媒体で作動するジェット式の湿式処理機械でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による湿式処理機械を後染め機械の形態で示す概略的な側面断面図である。
【図2】図1の後染め機械の処理容器を、追加装置をすべて省略した状態で示す側面図である。
【図3】図1の後染め機械のベンチュリ搬送ノズルを示す縮尺を拡大した部分側面図であり、部分的に断面図である。
【図4】本発明による後染め機械の処理容器を改変された実施形態で示す概略的な縦断側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図で図4の構成を示す側面図である。
【図6】図5に示す搬送ノズルの製品入口領域を示すための図5の部分図である。
【符号の説明】
【0043】
1 容器
4 紐製品
5 巻取手段(巻取機)
6 ベンチュリ搬送ノズルシステム(搬送ノズル)
10 循環方向(紐製品の進行方向)
17 ノズルテーパ部
21 処理染液を塗布するための手段
21a 処理染液塗布手段
28 回転軸
29 処理染液塗布手段(噴霧手段;噴霧ノズル)
34 連通軸
35 ノズルテーパ部
36 通過通路
38 ノズル環状間隙
39 処理染液塗布手段
47 長手中心軸
40 注入通路
41 搬送媒体分配室(搬送媒体分配箱搬送ノズル)
46 漏斗状に拡張する区域
410 環状通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐状の繊維製品の湿式処理機械において、
閉じた容器(1)と、
前記容器内(1)で循環するエンドレスの紐製品(4)を所定の循環方向(10)で駆動するために搬送媒体流を供給可能な、通過通路(36)を備えるノズルテーパ部(35)によって片側で区切られた搬送媒体流が貫流するノズル環状間隙(38)を有するベンチュリ搬送ノズルシステム(6)と、
紐製品進行方向で見て搬送ノズルシステムの前に配置され、そのつどの紐製品を搬送ノズルシステムに導入可能である巻取手段(5)と、
巻取手段(5)と搬送ノズルシステムのノズル環状間隙(38)との間に位置する紐製品進行経路の区域で紐製品(4)に処理染液を塗布するための手段(21,39)とを備えている、紐状の繊維製品の湿式処理機械。
【請求項2】
紐製品への処理染液の塗布手段が、そこから出てくる処理染液が紐製品の進行方向(10)の運動成分を少なくとも1つ有するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の機械。
【請求項3】
前記巻取手段が、回転軸を中心として回転可能な少なくとも1つの巻取機(5)を有しており、処理染液塗布手段(29,21a)は前記巻取機(5)の上方の領域で連通していることを特徴とする、請求項1または2に記載の機械。
【請求項4】
前記巻取手段が、回転軸を中心として回転可能な巻取機(5)を有しており、処理染液塗布手段(29)は、回転軸(28)と搬送ノズルシステムのノズルテーパ部(17)との間に位置する領域で連通していることを特徴とする、請求項1〜3の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項5】
処理染液塗布手段が前記巻取手段の領域で噴霧手段(29)を介して連通していることを特徴とする、請求項1〜4の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項6】
前記噴霧手段が噴霧ノズル(29)を有していることを特徴とする、請求項5に記載の機械。
【請求項7】
前記噴霧ノズルがそのノズル連通部の領域に、紐製品進行方向(10)との間で90°よりも小さい角度をなす連通軸(34)を有していることを特徴とする、請求項2または6に記載の機械。
【請求項8】
通過通路(36)を区切る通路壁の回りを取り囲んで連通する、ノズルテーパ部(35)の通過通路(36)に処理染液を注入するための手段を有していることを特徴とする、請求項1〜7の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項9】
前記注入手段が、前記通過通路(36)の長手中心軸(47)に対して、そこから前記通過通路に入っていく処理染液が製品進行方向(10)の運動成分を有するように連通していることを特徴とする、請求項2または8に記載の機械。
【請求項10】
前記注入手段が、長手中心軸(47)に対して、頂点が製品進行方向(10)のほうを向く角度で連通するように配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の機械。
【請求項11】
前記注入手段が、通路壁の回りを取り囲むように分散された状態で前記通過通路(36)に連通する注入通路(40)を有していることを特徴とする、請求項8〜10の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項12】
前記注入通路(40)は、その連通部が通過通路(36)の円周にわたって均等に分散された状態で配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の機械。
【請求項13】
前記注入手段が、前記通過通路(36)の壁を貫通して環状に取り囲む少なくとも1つの環状間隙を有していることを特徴とする、請求項8〜12の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項14】
前記ノズルテーパ部の前記通過通路(36)が、紐製品(4)の漏斗状入口を形成する漏斗状に拡張する区域(46)を有しており、前記注入手段はこの区域の領域で連通するように配置されていることを特徴とする、請求項8〜13の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項15】
処理染液が供給される分配室が前記ノズルテーパ部(35)にあり、前記注入手段はこの分配室とつながっていることを特徴とする、請求項8〜14の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項16】
前記分配室が、前記ノズルテーパ部に装着された環状通路(410)によって形成されていることを特徴とする、請求項15に記載の機械。
【請求項17】
気体状の搬送媒体を供給可能な搬送媒体分配室(41)を有しており、搬送ノズル(6)はその環状間隙(38)がこの室内に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項8〜16の内の何れか1項に記載の機械。
【請求項18】
複数の搬送ノズル(6)を有しており、すべての搬送ノズルはその環状間隙(38)が共通の室内に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項17に記載の機械。
【請求項19】
前記分配室が、搬送媒体源と接続されていて搬送ノズル(6)が直接挿入された長尺状の搬送媒体分配箱(41)の中に構成されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−207041(P2006−207041A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17117(P2005−17117)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(505030270)ゼン・マシーネン・(ビー・ブイ・アイ)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】