説明

紐端止め具、および紐端止め具付き紐

【課題】従来の紐端止め具に比べ、紐の端部を強固に止めることができる紐端止め具を提供する。
【解決手段】紐端止め具の雌部材80は、紐16の端部が挿入される下方開口82と、その開口と対向して形成される上方開口84と、雌部材の内周面に配置される雌内壁部88とを有する。紐端止め具の雄部材40は、基体部42と、その基体部の一側面から延び、上方開口から挿入される延出部と、その延出部に形成される貫通孔50と、紐が貫通孔に挿通されて折り返されるときに、紐の折り返される部分CTの内側と係合する係合突起54と、折り返された紐の先端部CEを雌内壁部との間で挟持するための右方係止部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄および衣類などの品物に取り付けられる紐の端部を止める紐端止め具に関する。詳細には、雌部材と、その雌部材に挿入される雄部材とを利用して、雌部材に挿通された紐の端部を止める紐端止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞄及び衣類などの品物の所定箇所を結束するために、または、品物の開口部を開閉するための部材の一部として、種々の紐が使用される。たとえば、上着のフードに紐が取り付けられ、ユーザはその紐の両端部を互いに結んでフードを頭部に保持するために紐が使用される。また、鞄または衣類の開口部に設けられたファスナを開閉するために紐がファスナの部品に取り付けられ、ユーザはその紐を掴んでファスナを開閉するために紐が使用される。
【0003】
特許文献1には、紐の1つの端部を止める紐端止め具の一例として、端部カバーが開示されている。この端部カバーは、筒状の雌部材と、雄部材とからなる。雄部材は、互いに対向して配置される一対の挟持用脚部を備える。各挟持用脚部は、紐状物の端部に突き刺さる突起を有する。雌部材に挿通された紐状物の端部は、両挟持用脚部の間で挟持される。雄部材が雌部材の内部に挿入されるときに、両挟持用脚部が雌部材の傾斜する内壁により押され、突起が紐状物の端部を突き刺してその端部を止める。
【0004】
また、特許文献2には、紐の2つの端部を止める紐端止め具の一例として、紐止め具が開示されている。この紐止め具は、雌部材に相当する筒状のソケットと、雄部材に相当するプラグとからなる。プラグは、互いに対向して配置される一対の押圧脚部を備える。各押圧脚部は、紐の端部に食い込む食込突起を有する。ソケットは、その内壁に形成されたV溝形状の係止部と、その内部に突設された拡開部とを有する。紐の2つの端部は、拡開部の両側を通ってソケットに挿通され、プラグに仮固定される。プラグがソケットの内部に挿入されるときに、両押圧脚部が拡開部に係合して押し拡げられる。この押し拡げられた両押圧脚部の各々は、食込突起が紐の2つの端部の各々に食い込んだ状態で、係止部と協働して各端部を挟持して止める。
【0005】
特許文献1、2に開示された従来の紐端止め具は、紐の端部を単に結んだものと比べ、美的外観上優れており、また、紐が編んだ素材から構成される場合に紐の端部の解れを止めるためにも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4040451号公報
【特許文献2】特許第4528687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の紐端止め具において、紐の端部は、雌部材の内部にまっすぐ延びた状態で挿入される。このまっすぐな状態の紐の端部は、雄部材の両挟持用脚部の間で挟持されたり、または、雌部材の係止部と雄部材の各押圧脚部との間で挟持され、この挟持力のみで止められる。ユーザが、紐端止め具を掴んで紐を強く引っ張った場合、紐の端部を挟持している紐端止め具の部分が、まっすぐな状態の紐の端部の表面上を滑って紐の端部から抜けるおそれがある。特に、ナップサックなどの鞄に大量のものを詰め込んで結束する場合、または、衣類をしっかりと身に付ける場合など、紐を強く引っ張る必要がある場合には、紐端止め具が紐の端部から抜けることがある。
【0008】
そこで、本発明は、従来の紐端止め具に比べ、紐の端部を強固に止めることができる紐端止め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1の発明態様およびその具体的態様)
請求項1に記載の第1の発明態様は、筒状の雌部材と、その雌部材の内部に挿入される雄部材とを備え、紐の端部を止める紐端止め具であって、前記雌部材が、紐の端部が挿入される第1の開口と、その第1の開口と所定の対向方向に対向して形成される第2の開口と、前記第1および第2の開口に間に位置する前記雌部材の内周面に配置される第1の雌内壁部と、を有し、前記雄部材が、基体部と、その基体部の一側面から所定の延出方向に延び、前記第2の開口から前記所定の対向方向に挿入される延出部と、その延出部に形成され、紐の端部が挿通されるように前記所定の延出方向と直交する方向に貫通する貫通孔と、前記第1の開口から挿入された紐が前記貫通孔に挿通されて折り返されるときに、紐の折り返される部分の内側と係合するために、前記貫通孔の内壁のうちで前記基体部から最も離れた内壁に形成される折り返し係合部と、前記貫通孔で折り返された紐の先端部を前記第1の雌内壁部との間で挟持するために、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記第1の雌内壁部に対向するように前記延出部に形成される第1の係止部と、を有する構成である。
【0010】
本発明態様では、紐端止め具が、1本の紐の1つの端部を止める構成でも、1本の紐の2つの端部を合わせて止める構成でも、2本以上の複数本の紐の2つ以上の複数の端部を合わせて止める構成であっても良い。複数の端部を合わせて止める場合、第1の雌内壁部、貫通孔、折り返し係合部、および第1の係止部の各部分が、複数の端部にそれぞれ対応して複数個ずつ設けられる構成でも、複数の端部に対して1個ずつ設けられる構成であっても良い。
【0011】
本発明態様では、紐の横断面形状は、円形でも、楕円形でも、平坦な形状であっても良く、横断面形状が、紐の端部とそれ以外の部分とで異なっていても良い。また、紐自体の材質は、編んだ素材のみの材質でも、編んだ素材でゴム素材を被覆する材質であっても良い。ゴム素材は、いわゆるエラストマ素材であり、熱硬化性エラストマ、熱可塑性エラストマ、天然ゴム、および合成ゴムを含むものである。
【0012】
本発明態様では、雌部材は、所定の対向方向に平行な中心線の回りに点対称の形状でも、非点対称の形状であっても良い。また、雄部材も、所定の延出方向に平行な中心線の回りに点対称の形状でも、非点対称の形状であっても良い。
【0013】
請求項2に記載の具体的態様では、前記雌部材が、前記第1の雌内壁部と対向して前記雌部材の内周面に配置される第2の雌内壁部を有し、前記雄部材が、前記第1の開口から挿入され前記貫通孔に挿通される紐のうち前記折り返し係合部の形成位置に達する前の紐の部分を前記第2の雌内壁部との間で挟持するために、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記第2の雌内壁部に対向するように前記延出部に形成される第2の係止部を有する。
【0014】
具体的態様では、第2の雌内壁部の形状は、第1の雌内壁部の形状と同じでも、異なっていても良い。また、第2の係止部の形状も、第1の係止部の形状と同じでも、異なっていても良い。たとえば、第2の雌内壁部および第2の係止部の間で紐を挟持する挟持力と、第1の雌内壁部および第1の係止部の間で紐を挟持する挟持力とを異ならせるために、雌内壁部と係止部との間隔、または、紐に対する雌内壁部の摩擦抵抗が異なるように、第2の雌内壁部および第2の係止部と、第1の雌内壁部および第1の係止部との形状が異なっていても良い。
【0015】
請求項3に記載の具体的態様では、前記第1および第2の雌内壁部が、前記所定の対向方向に平行な前記雌部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成され、前記第1および第2の係止部が、前記所定の延出方向に平行な前記雄部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成される。
【0016】
請求項4に記載の具体的態様では、前記折り返し係合部が、前記貫通孔の内壁のうちで前記基体部から最も離れた内壁から前記基体部に向かって突出する係合突起から構成される。
【0017】
請求項5に記載の具体的態様では、前記第2の開口が、前記第1の開口より大きく、前記貫通孔に挿通された紐の折り返される部分が前記第2の開口から挿入されるように形成され、前記雌部材が、前記貫通孔に挿通された紐の折り返される部分を収容する収容空間を前記第2の開口の近傍に有する。
【0018】
請求項6に記載の具体的態様では、前記雌部材が、前記第2の開口からの前記延出部の挿入を案内するために前記雌部材の内周面に形成され、前記所定の対向方向に延びる複数の案内部を有する。
【0019】
請求項7に記載の具体的態様では、前記第1の係止部が、前記第1の雌内壁部との間で、所定の半径を有する略円形の横断面形状を有する紐の端部を挟持するために、その所定の半径より小さい曲率半径を有する円弧状の凹所を備える。
【0020】
請求項8に記載の具体的態様では、前記第1の雌内壁部が、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記雌部材の内周面から前記凹所に向かって突出するように形成される。
【0021】
請求項9に記載の具体的態様では、前記雄部材が、前記所定の延出方向に前記延出部から延び、前記雌部材の内周面と係合する一対の弾性係止片を有する。
【0022】
具体的態様では、一対の弾性係止片は、雌部材の内部における雄部材の挿入状態を保持するために弾性変形して雌部材の内周面と係合する構成であれば、弾性係止片が突出する構成でも、内周面の一部が突出する構成であっても良い。
【0023】
(第2の発明態様およびその具体的態様)
請求項10に記載の第2の発明態様は、請求項1〜9のいずれかに記載の紐端止め具により端部が止められた紐端止め具付き紐である。
【0024】
本発明態様の紐端止め具付き紐は、紐端止め具により端部が止められる紐であって、品物の結束などの使用時に紐端止め具に対して引っ張られて引張力が作用する紐であれば、いかなる用途を目的とする紐であっても良い。
【0025】
本発明態様では、第1の発明態様と同様に、紐端止め具により止められる紐の端部の数は、1つでも、複数でも良い。また、紐の横断面形状、および紐自体の材質は、第1の発明態様と同様に、特に限定されない。
【0026】
請求項11に記載の具体的態様では、前記紐が、略円形の横断面形状を有するゴム素材を含んで構成される。
【0027】
具体的態様では、紐は、少なくともゴム素材を含んでいれば良く、ゴム素材のみの材質でも、編んだ素材でゴム素材を被覆する材質であっても良い。ゴム素材は、いわゆるエラストマ素材であり、熱硬化性エラストマ、熱可塑性エラストマ、天然ゴム、および合成ゴムを含むものである。
【発明の効果】
【0028】
(第1の発明態様およびその具体的態様の効果)
請求項1に記載の発明態様では、第1の開口から挿入された紐が貫通孔に挿通されて折り返されるときに、折り返し係合部は、紐の折り返される部分の内側と係合する。雄部材が雌部材の内部に挿入されたときに、第1の係止部は、第1の雌内壁部に対向し、貫通孔で折り返された紐の先端部を第1の雌内壁部との間で挟持する。この結果、第1の雌内壁部および第1の係止部の間で紐の先端部を挟持するとともに、折り返し係合部が紐の折り返される部分に係合する構成により、従来の雌部材の内部でまっすぐな状態の紐の端部を挟持する構成に比べ、紐端止め具から紐を引き抜くための引張力が大幅に増大し、紐の端部を強固に止めることができる。
【0029】
請求項2に記載の具体的態様では、雄部材が雌部材の内部に挿入されたときに、第2の係止部は、第2の雌内壁部に対向し、第1の開口から挿入され貫通孔に挿通される紐のうち折り返し係合部の形成位置に達する前の紐の中間部分を第2の雌内壁部との間で挟持する。この結果、第1の雌内壁部および第1の係止部による紐の先端部の挟持と、折り返し係合部による紐の折り返される部分への係合とに加え、第2の雌内壁部および第2の係止部により紐の中間部分を挟持する構成により、紐端止め具から紐を引き抜くための引張力が更に増大し、紐の端部を一層強固に止めることができる。
【0030】
請求項3に記載の具体的態様では、第1および第2の雌内壁部が、雌部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成され、第1および第2の係止部が、雄部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成される。この結果、雌部材に対する雄部材の挿入姿勢が、180度異なっても、雄部材を雌部材に確実に挿入することができることから、作業者は、紐端止め具により紐の端部を止める作業を容易に行うことができる。
【0031】
請求項4に記載の具体的態様では、折り返し係合部が、係合突起から構成される。この結果、係合突起が紐の折り返される部分に係合する構成により、その折り返される部分が係合突起に対して滑り難くなり、紐の端部を一層強固に止めることができる。
【0032】
請求項5に記載の具体的態様では、第2の開口が第1の開口より大きく、貫通孔に挿通された紐の折り返される部分が第2の開口から挿入される。貫通孔に挿通された紐の折り返される部分が第2の開口の近傍の収容空間に収容される。この結果、第2の開口が大きく形成され、その第2の開口の近傍に収容空間を備える構成により、雄部材を雌部材に挿入するときに、作業者は、貫通孔に挿通された紐の折り返される部分を第2の開口から挿入して収容空間に収容する作業を容易に行うことができる。
【0033】
請求項6に記載の具体的態様では、複数の案内部が、第2の開口からの延出部の挿入を案内する。この結果、作業者は、複数の案内部により、第2の開口から延出部を挿入する作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0034】
請求項7に記載の具体的態様では、第1の係止部が、略円形の横断面形状を有する紐の所定の半径より小さい曲率半径を有する円弧状の凹所を備え、第1の雌内壁部との間で紐の端部を挟持する。この結果、円弧状の凹所および第1の雌内壁部の間で紐の端部を挟持する構成により、紐の端部が円弧状の凹所から抜け難くなり、紐の端部を一層強固に止めることができる。
【0035】
請求項8に記載の具体的態様では、雄部材が雌部材の内部に挿入されたときに、第1の雌内壁部が凹所に向かって突出する。この結果、第1の雌内壁部が凹所に向かって突出する構成により、紐の端部が凹所から一層抜け難くなり、紐の端部をより一層強固に止めることができる。
【0036】
請求項9に記載の具体的態様では、一対の弾性係止片が、所定の延出方向に延出部から延び、雌部材の内周面と係合する。この結果、一対の弾性係止片が雌部材の内周面と係合する構成により、雄部材が雌部材に挿入された状態を確実に保持することができる。
【0037】
(第2の発明態様およびその具体的態様の効果)
請求項10に記載の第2の発明態様は、紐端止め具により端部が止められた紐である。紐の端部が強固に止められることから、本発明態様の紐は、鞄および衣類などの品物を強い引張力で強固に結束することができ、または、鞄のファスナの取手部分などの品物の一部として確実に取り付けられる。
【0038】
一般に、略円形の横断面形状を有するゴム素材を含む紐は、衣類などを確実に結束するために広く使用される。ゴム素材は、編んだ素材に比べ、弾性変形し易いことから、2つの部材の間で挟持される場合、2つの部材がゴム素材に食い込み難く、ゴム素材に対して滑り易い。このため、ゴム素材を含む紐は紐端止め具から抜け易くなる。そこで、ゴム素材を含む紐を紐端止め具に強固に止めるために、請求項11に記載の具体的態様のゴム素材を含む紐は、第1の発明態様またはその具体的態様の紐端止め具により止められる。すなわち、紐の折り返される部分が折り返し係合部に係合するとともに、折り返された紐の先端部が第1の雌内壁部および第1の係止部の間で挟持される。この結果、具体的態様のゴム素材を含む紐は、品物を強い引張力で強固に結束することができ、または、品物の一部として確実に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る紐端止め具20により端部が止められた紐16、18が、防寒用ジャケット10の襟部分12および裾部分14の回りに取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】紐端止め具20を分解して示す拡大斜視図である。
【図3】紐端止め具20の雄部材40を下方から見た図面である。
【図4】雄部材40を右方から見た右側面図である。
【図5】図3に示すA−A線に沿って雄部材40を切断して前方から見た断面図である。
【図6】紐端止め具20の雌部材80を上方から見た図面である。
【図7】図6に示すB−B線に沿って雌部材80を切断して右方から見た右側断面図である。
【図8】図6に示すC−C線に沿って雌部材80を切断して前方から見た断面図である。
【図9】雄部材40を雌部材80の内部に挿入して両部材を組み付けた構成を下方から見た図面である。
【図10】図9に示すD−D線に沿って両部材40、80の組み付けた構成を切断して右方から見た右側断面図である。
【図11】図9に示すE−E線に沿って両部材40、80の組み付けた構成を切断して前方から見た断面図である。
【図12】紐16の一方の端部が雌部材80に挿通された状態を示す図面である。
【図13】紐16の先端部CEが貫通孔50に挿通された状態を示す断面面である。
【図14】雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図9に示すE−E線に沿って切断して前方から見た断面図である。
【図15】雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図9に示すF−F線に沿って切断して前方から見た断面図である。
【図16】雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図14に示すG−G線に沿って切断して下方から見た断面図である。
【図17】本発明の実施例1および実施例2、比較例、並びに従来例について、紐端止め具から紐を引き抜くための引張力を測定した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<実施形態>
以下に、本発明の一実施形態に係る紐端止め具20について、図面を参照して説明する。図1は、防寒用ジャケット10の襟部分12および裾部分14の回りに、紐16、18が取り付けられた状態を示す斜視図である。紐端止め具20は、紐16の両端部、および紐18の両端部にそれぞれ取り付けられる。本実施形態では、紐端止め具20は、1本の紐の各端部に取り付けられる。また、紐16、18の材質として、編んだ素材、または、編んだ素材により被覆されたゴム素材が使用される。紐の横断面形状は、略円形である。
【0041】
[紐端止め具20の構成]
図2は、紐端止め具20を分解して示す拡大斜視図である。図2において、紐端止め具20は、雄部材40と、雌部材80とから構成される。雄部材40は、筒状の雌部材80の内部に挿入可能に形成される。雄部材40、および雌部材80は、合成樹脂材料により成形される。合成樹脂材料として、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリプロピレン樹脂などが使用される。図2に矢印で示す3つの方向を、上下方向、前後方向、および左右方向とし、図2以降の他の図面でも同様に、各方向を示す。
【0042】
(雄部材40の構成)
図3〜図5を参照して、雄部材40の詳細な構成を説明する。雄部材40は、基体部42、延出部44と、一対の弾性係止片46、48とを有する。延出部44は、基体部42の一側面である下面から下方に延びる。一対の弾性係止片46、48は、延出部44の下端部から下方に延びる。
【0043】
図3は、雄部材40を下方から見た図面である。図3に示すように、基体部42は楕円形状を有する。基体部42の上面は湾曲面に形成され、下面は平坦面に形成される。
【0044】
図4は、雄部材40を右方から見た右側面図である。図2および図4において、貫通孔50が、延出部44を左右方向に貫通して形成される。貫通孔50は、4つの内壁52A〜52Dを有する。内壁52Cは、基体部42から最も離れた内壁である。
【0045】
図5は、図3に示すA−A線に沿って雄部材40を切断した断面図である。図4および図5において、係合突起54が、左右方向における内壁52Cの中央部分から基体部42に向かって上方に突出する。係合突起54の上方先端部は、尖った形状に形成され、図4に示すように前後方向に延びる。係合突起54の上方先端部は紐の折り返される部分に係合するので、強く引っ張られた紐の折り返される部分が係合突起54に押し当てられる場合でも、係合突起54の上方先端部が損傷しない強度を有する範囲で、係合突起54の上方先端部は鋭角の形状をなす。
【0046】
図5において、内壁52Cは、左右方向の中央部分から左右の両端部に向かって下方に傾斜して形成される。左方係止部56は、内壁52Cの左下方への傾斜面により形成され、右方係止部58は、内壁52Cの右下方への傾斜面により形成される。左方係止部56の左方先端部、および右方係止部58の右方先端部は、尖った形状に形成される。左方係止部56の左方先端部、および右方係止部58の右方先端部は、紐を押圧して係止するので、その係止される紐が強く引っ張られた場合でも、両係止部56、58の先端部が損傷しない強度を有する範囲で、両係止部56、58の先端部は鋭角の形状をなす。
【0047】
図4において、貫通孔50の内壁52A、52B、52Dと、係合突起54の上方先端部とにより画定される貫通空間は、紐16、18の各紐の横断面より充分に大きくなるように、貫通孔50および係合突起54の寸法が設定される。
【0048】
図3において、円弧状の凹所60、62が、係止部56、58の前後方向の中央部分を切り欠いてそれぞれ形成される。円弧状の凹所60、62の曲率半径は、略円形の横断面形状を有する紐16、18の半径より充分に小さく設定される。
【0049】
一対の弾性係止片46、48は、前後方向に弾性変形可能に構成される。図2および図4に示すように、係止溝64、66が、左右方向に延びて両弾性係止片46、48にそれぞれ形成される。
【0050】
図4および図5において、雄部材40は、上下方向に平行に延びる中心線PLを有する。雄部材40を中心線PLの回りに180度回転させた場合でも同じ形状となるように、雄部材40は点対称の形状に形成される。
【0051】
(雌部材80の構成)
図6〜図8を参照して、雌部材80の詳細な構成を説明する。図6は、雌部材80を上方から見た図面であり、図7は、図6に示すB−B線に沿って雌部材80を切断して右方から見た右側断面図であり、図8は、図6に示すC−C線に沿って雌部材80を切断して前方から見た断面図である。図6において、雌部材80は、紐挿入用の下方開口82と、雄部材40を挿入するための上方開口84とを有する。下方開口82は、略円形であり、上方開口84は、左右方向に長い長孔形状である。
【0052】
雌部材80の外形は、図7に示す前後方向の幅が略同じ寸法であるが、図8に示す左右方向の幅が下方に向かって狭くなるように形成される。雄部材40が雌部材80の内部に挿入されたときに、基体部42の下面は雌部材80の上方端面に当接して支持される。また、雄部材40が雌部材80の内部に挿入されたときに、図10および図11に示すように、雌部材80の上方部分の外周面は、雄部材40の基体部42の上面と連続した滑らかな湾曲面を構成する。
【0053】
図6および図8において、一対の雌内壁部86、88が、雌部材80の左右の内周面から雌部材80の中心に向かって突出する。両雌内壁部86、88は、左右方向に対向して配置され、上下方向に延びて形成される。
【0054】
図6および図7において、一対の係止突条90、92が、雌部材80の前後の内周面から突出する。両係止突条90、92は、左右方向に延びて形成される。雄部材40が雌部材80の内部に挿入されたときに、両係止突条90、92は、両弾性係止片46、48の係止溝64、66に嵌合する。
【0055】
図6において、一対の前方案内部94A、94Bが、雌部材80の前方の内周面から突出する。一対の後方案内部96A、96Bが、雌部材80の後方の内周面から突出する。両前方案内部94A、94Bおよび両後方案内部96A、96Bは、両係止突条90、92の形成位置を中心にして上下方向に延びて形成される。図7は、前方案内部94Aおよび後方案内部96Aが、上下方向に延びて形成される構成を示す。両前方案内部94A、94Bは、延出部44の前方部分および弾性係止片46の雌部材80への挿入を案内する。また、両後方案内部96A、96Bは、延出部44の後方部分および弾性係止片48の雌部材80への挿入を案内する。
【0056】
図8において、一対の雌内壁部86、88は、上方開口84の近傍には形成されていないことから、収容空間98が上方開口84の近傍に確保される。上方開口84の左右方向の幅は、下方開口82の左右方向の幅より大きい。収容空間98の左右方向の幅は、上方開口84の左右方向の幅と同じ寸法である。図8において、両雌内壁部86、88の上方部分は、両雌内壁部86、88の間隔が上方に向かって広がるように傾斜して形成される。本実施形態では、略円形の下方開口82の左右方向の幅、すなわち下方開口82の直径は、紐16、18の各紐の直径より僅かに大きい。長孔形状の上方開口84の左右方向の幅は、下方開口82の左右方向の幅の略2倍の大きさである。
【0057】
図7および図8において、雌部材80は、上下方向に平行に延びる中心線SLを有する。雌部材80を中心線SLの回りに180度回転させた場合でも同じ形状となるように、雌部材80は点対称の形状に形成される。
【0058】
(雄部材40および雌部材80の組み付けた構成)
図9〜図11を参照して、雄部材40を雌部材80の内部に挿入して両部材を組み付けた構成を説明する。図9は、両部材40、80の組み付けた構成を下方から見た図面である。図10は、図9に示すD−D線に沿って両部材40、80の組み付けた構成を切断して右方から見た右側断面図である。図11は、図9に示すE−E線に沿って両部材40、80の組み付けた構成を切断して前方から見た断面図である。
【0059】
図10に示すように、雄部材40が雌部材80に挿入された状態において、一対の弾性係止片46、48の係止溝64、66は、係止突条90、92に嵌合する。この嵌合により、雄部材40の挿入状態が保持される。図11に示すように、左方係止部56の円弧状の凹所60が、雌内壁部86に対向して位置し、右方係止部58の円弧状の凹所62が、雌内壁部88に対向して位置する。紐は、凹所60と雌内壁部86との間の空間で挟持されるとともに、凹所62と雌内壁部88との間の空間で挟持される。
【0060】
図11において、上方開口84は、基体部42により封鎖される。この封鎖に伴い、収容空間98が上方開口84の近傍に画定される。紐が係合突起54に係合して折り返されるときに、その折り返される部分を収容するために収容空間98が使用される。
【0061】
[紐の端部を止める作業手順]
図12〜図16を参照して、紐端止め具20により紐の端部を止める作業手順を説明する。一例として、ジャケット10の襟部分12に取り付けられる紐16の両端部を紐端止め具20によりそれぞれ止める作業手順を説明する。この場合、紐16は襟部分12にすでに取り付けられ、襟部分12から延出している紐16の両端部が止められる。
【0062】
図12は、紐16の一方の端部が雌部材80に挿通された状態を示す。図12において、作業者は、紐16の先端部CEを、雌部材80の下方開口82から上方に挿入して上方開口84から引き出する。
【0063】
図13は、紐16の先端部CEが貫通孔50に挿通された状態を示す。図13において、作業者は、紐16の先端部CEを、左方から雄部材40の貫通孔50に挿通する。その後に、作業者は、紐16の先端部CEが下方に向くように紐16を折り返す。この折り返し作業のときに、紐16の折り返される部分CTの内側、すなわち折り返される部分CTの下方側が、係合突起54に係合する。
【0064】
図13において、作業者は、紐16の先端部CEの近傍部分を円弧状の凹所62に押し当て、また、紐16の中間部分CMを円弧状の凹所60に押し当てる。この押し当てた状態で、作業者は、紐16の先端部CEを上方開口84から雌内壁部88の傾斜する上方部分に沿って下方に挿入し、その後に雄部材40を雌部材80の内部に挿入する。雄部材40の基体部42の下面が雌部材80の上方端面に当接したときに、一対の弾性係止片46、48の係止溝64、66は、係止突条90、92に嵌合する。この嵌合により、雄部材40が雌部材80の内部に挿入された状態が保持される。紐16の先端部CE、折り返される部分CT、および中間部分CMが収容空間98に収容された状態で、雄部材40を雌部材80の内部に挿入することにより、作業者は、紐16の一方の端部を紐端止め具20により止める作業を完了する。同様な作業手順に従って、作業者は、紐16の他方の端部を紐端止め具20により止める作業を行う。本実施形態では、紐16の各端部は、先端部CE、折り返される部分CT、および、円弧状の凹所60に押し当てられる中間部分CMを含む部分を意味する。
【0065】
図14〜図16は、紐16の端部を止める紐端止め具20の内部の状態を示す。図14は、雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図9に示すE−E線に沿って切断して前方から見た断面図である。図15は、雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図9に示すF−F線に沿って切断して前方から見た断面図である。図16は、雄部材40が雌部材80の内部に挿入されて紐16の端部が収容空間98に収容された状態において、図14に示すG−G線に沿って切断して下方から見た断面図である。
【0066】
図14および図16に示すように、紐16の先端部CEの近傍部分の一部が、雌内壁部88により押圧されて変形し、円弧状の凹所62の内部に押し込められる。また、紐16の中間部分CMの一部が、雌内壁部86により押圧されて変形し、円弧状の凹所60の内部に押し込められる。
【0067】
図15および図16に示すように、紐16の先端部CEの近傍部分の他の部分は、円弧状の凹所62の前後において延出部44の係止部58の尖った部分により押圧されて変形し、雌部材80の内周面に押し当てられる。また、紐16の中間部分CMの他の部分は、円弧状の凹所60の前後において延出部44の係止部56の尖った部分により押圧されて変形し、雌部材80の内周面に押し当てられる。
【0068】
図14および図15に示すように、紐16の折り返される部分CTの内側は、係合突起54の尖った部分に係合する。図16に示すように、雌部材80の内部における延出部44の左右方向の位置は、延出部44の4つの角部が4つの案内部94A、94B、96A、96Bにそれぞれ当接することにより定められる。また、雌部材80の内部における延出部44の前後方向の位置は、延出部44の前後の面が雌部材80の前後の内周面にそれぞれ当接することにより定められる。
【0069】
[紐の引張力の測定結果]
図17を参照して、紐の引張力の測定結果を説明する。図17は、本発明の実施例1および実施例2、比較例、並びに従来例について、紐端止め具から紐を引き抜くための引張力を測定した結果を一覧表として示す説明図である。
【0070】
実施例1は、本実施形態と同一の構成の雄部材および雌部材を備える具体例である。具体的には、図15に示すように、実施例1の雄部材が、円弧状の凹所を有する左方係止部と、円弧状の凹所を有する右方係止部と、係合突起とを有する。実施例2は、本発明の別の実施形態の具体例であり、本実施形態と同一の構成の雌部材と、本実施形態と異なる構成の雄部材とを備える。具体的には、実施例2の雄部材は、図15において、円弧状の凹所を有する右方係止部と、係合突起とを有するが、円弧状の凹所を有する左方係止部を有しない。実施例2においては、紐の中間部分CMは、雄部材および雌部材の間で挟持されない。
【0071】
比較例は、本実施形態と同一の構成の雌部材と、本実施形態と異なる構成の雄部材とを備える。具体的には、比較例の雄部材は、図15において、円弧状の凹所を有する左方係止部と、係合突起とを有するが、円弧状の凹所を有する右方係止部を有しない。比較例においては、紐の先端部CEの近傍部分は、雄部材および雌部材の間で挟持されない。
【0072】
従来例は、特許文献1に開示された雄部材および雌部材と同様な構成の雄部材および雌部材を備え、市販されている紐端止め具である。具体的には、従来例の雄部材は、互いに対向する一対の挟持用脚部を有し、複数の突起が各挟持用脚部の対向面に形成される。従来例において、紐の先端部の近傍部分は、両挟持用脚部の間で挟持され、雌部材の内部でまっすぐな状態にて止められる。
【0073】
紐の引張力の測定には、硬さの異なる2種類の紐を使用した。第1の紐は、株式会社丸進が販売する商品名「先染ポリエステルエラスティックコード」、品番「(SOFT)3112−TS」の丸紐である。第2の紐は、第1の紐より硬い紐であり、有限会社トリムアイが販売する商品名「ストレッチコード」、品番「HARD TYPE SIC−3141」の丸紐である。第1および第2の紐は、ゴム素材の芯を、ポリエステル繊維の編んだ素材で被覆した材質から構成され、紐径は、2.5mmである。
【0074】
柔らかい第1の紐を使用して測定した場合、実施例1の引張力が最も大きく、引張力は、実施例2、従来例、および比較例の順に小さくなる。硬い第2の紐を使用して測定した場合、実施例1の引張力が最も大きく、引張力は、実施例2、比較例、および従来例の順に小さくなる。
【0075】
[実施形態の効果]
図17に示す測定結果から、本発明の実施例1および実施例2の引張力は、紐の硬さが異なる場合でも、従来例の引張力より大きい。特に、実施例1の引張力は、従来例の引張力より、1.5倍以上大幅に大きくなる。また、実施例1および実施例2の引張力が、紐の硬さが異なる場合でも、従来例の引張力より大きくなる測定結果から、紐16の先端部CEの近傍部分を係止する右方係止部58と、紐16の折り返される部分CTに係合する係合突起54とが、引張力を増大させるために有効に作用することが理解される。さらに、右方係止部58および係合突起54に加えて設けられる左方係止部56が、紐16の中間部分CMを係止することにより、引張力を大幅に増大させるために有効に作用することも理解される。
【0076】
本実施形態では、係合突起54の上方先端部が鋭角をなす尖った形状に形成される。紐端止め具20により止められた紐16が強く引っ張られたときに、図15において紐16の中間部分CMが左方係止部56に対して滑って下方に僅かに移動した場合でも、紐16の折り返される部分CTは、係合突起54の上方先端部の形状にならって、より鋭角に大きく折り返される。この結果、係合突起54の上方先端部は、折り返される部分の移動に対して大きな抵抗力を発生し、紐端止め部20から紐16を引き抜くための引張力を増大させることができる。
【0077】
本実施形態では、紐端止め具20により端部が止められる紐16として、ゴム素材を含む紐を使用することができる。一般に、ゴム素材を含む紐は弾性変形し易いことから、尖った形状の係止部材であってもゴム素材に食い込み難く、ゴム素材を含む紐が係止部材に対して滑って紐端止め具から抜けるおそれがある。しかし、本実施形態では、ゴム素材を含む紐を引っ張った場合に、係合突起54の上方先端部が折り返される部分CTの移動に対して大きな抵抗力を発生するので、ゴム素材を含む紐を紐端止め部20から引き抜くための引張力を増大させることができる。
【0078】
本実施形態では、雌部材80の4つの案内部94A、94B、96A、96Bと、雌部材80の前後の内周面とにより、雄部材40の延出部44は、図16に示すように、雌部材80の内部において左右方向および前後方向にそれぞれ位置決めされる。この位置決めにより、延出部44の両係止部56、58は、紐16の先端部CEおよび中間部分CMを正確に押圧することができる。
【0079】
本実施形態では、延出部44の両係止部56、58が円弧状の凹所60、62を有し、図16に示す雌部材80の両雌内壁部86、88は両凹所60、62に向かって突出する。凹所60、62により、略円形の横断面形状を有する紐16の先端部CEおよび中間部分CMは、図16に示すように、雌部材80の内部おいて両係止部56、58に対して前後方向に位置決めされる。この結果、紐16が円形断面形状であっても、紐16の先端部などの各部分が前後方向にずれることなく、両雌内壁部86、88は、紐16の先端部CEおよび中間部分CMを正確に押圧することができる。
【0080】
本実施形態では、貫通孔50が延出部44に形成され、一対の弾性係止片46、48が延出部44から下方に延びて形成される。雌部材80の内部への雄部材40の挿入状態を保持する両弾性係止片46、48が貫通孔50より下方に設けられることから、雄部材40の基体部42の近傍に両弾性係止片に相当する手段を設ける構成に比べ、雌部材80全体を大きくすることなく、紐16の折り返される部分CTを収容するために比較的大きな収容空間98を確保することができる。
【0081】
本実施形態では、一対の雌内壁部86、88が上方開口84の近傍には設けられないことから、比較的大きな収容空間98が上方開口84の近傍に形成される。そして、両雌内壁部86、88の上方部分が、図14に示すように下方に向かって傾斜する。この収納空間、および少なくとも雌内壁部88の傾斜する面により、作業者は、折り返された紐16の先端部CEを雌内壁部88の傾斜する面に沿って雌部材80の内部に容易に挿入することができ、折り返される部分CTを収容空間98に収容する作業を円滑に行うことができる。
【0082】
<構成の対応関係>
本実施形態の紐端止め具20、および紐端止め具20により端部が止められた紐16、18は、本発明の紐端止め具、および紐端止め具付き紐の一例である。本実施形態の雄部材40および雌部材80は、本発明の雄部材および雌部材の一例である。本実施形態の下方開口82および上方開口84は、本発明の第1および第2の開口の一例である。本実施形態の雌内壁部88、86は、本発明の第1および第2の雌内壁部の一例である。本実施形態の基体部42、延出部44、貫通孔50、および一対の弾性係止片46、48は、本発明の基体部、延出部、貫通孔、および一対の弾性係止片の一例である。本実施形態の右方係止部58および左方係止部56は、本発明の第1および第2の係止部の一例であり、本実施形態の円弧状の凹所62は、本発明の円弧状の凹所の一例である。本実施形態の係合突起54は、本発明の折り返し係合部および係合突起の一例である。本実施形態の案内部94A、94B、96A、96Bは、本発明の複数の案内部の一例である。本実施形態の収容空間98は、本発明の収容空間の一例である。本実施形態の貫通孔50の内壁52Cは、本発明の基体部から最も離れた内壁の一例である。本実施形態の雄部材40の中心線PLおよび雌部材80の中心線SLは、本発明の雄部材の中心線および雌部材の中心線の一例である。本実施形態の上下方向は、本発明の所定の対向方向の一例であり、また所定の延出方向の一例である。
【0083】
<変形例>
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
【0084】
(1)本実施形態では、1本の紐16の1つの端部が、1つの紐端止め具20により止められる構成であるが、1本の紐の両端部、または2本の紐の2つの端部が、1つの紐端止め具により合わせて止められる構成であっても良い。この構成の変形例では、雄部材の貫通孔は2つの端部が挿通される大きさに形成され、円弧状の凹所および雌内壁部は、2つの端部に対応して2個ずつ設けられる。
【0085】
(2)本実施形態では、紐16の先端部CEの近傍部分の一部、および中間部分CMの一部が、雌内壁部88、86により押圧されて変形し、係止部58、56の円弧状の凹所62、60の内部に押し込められる構成である。この構成に代えて、係止部56を除去して紐16の先端部CEの近傍部分の一部のみが押圧され、中間部分CMの一部が押圧されない構成であっても良い。
【0086】
(3)本実施形態では、紐16の先端部CEの近傍部分および中間部分CMを挟持するために、円弧状の凹所62、60を有する係止部58、56と、雌内壁部88、86とが設けられるが、この構成に限定されない。凹所を有しない係止部でも、V字溝などの円弧状以外の形状の凹所を有する係止部であっても良い。雌内壁部は、雌部材の内周面から突出せず、内周面と連続する同一平面または同一の曲面であっても良い。
【0087】
(4)本実施形態では、係止部56、58の先端部、および係合突起54の上方先端部は、鋭角に尖った形状であるが、鈍角をなす尖った形状でも良い。また、紐端止め具に対して紐が引っ張られたときに、紐の移動に対して抵抗力を発生することができれば、係止部56、58の先端部、および係合突起54の上方先端部は、曲率半径の小さい湾曲面であっても良い。
【0088】
(5)本実施形態では、一対の雌内壁部86、88が左右方向に対向して配置され、雄部材40が雌部材80の内部に挿入されるときに、一対の係止部60、62の円弧状の凹所56、58が雌内壁部86、88と左右方向において対向する。この構成に代えて、一対の雌内壁部が、互いに対向しない状態で配置され、雌部材の内周面から前後方向において突出して形成され、一対の係止部の円弧状の凹所が、一対の雌内壁部と前後方向において対向する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0089】
16、18 紐
20 紐端止め具
40 雄部材
42 基体部
44 延出部
50 貫通孔
52C 貫通孔の最も離れた内壁
54 係合突起
56 左方係止部
58 右方係止部
60、62 円弧状の凹所
82 下方開口
84 上方開口
86、88 雌内壁部
CE 紐の先端部
CT 紐の折り返される部分
CM 紐の中間部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の雌部材と、その雌部材の内部に挿入される雄部材とを備え、紐の端部を止める紐端止め具であって、
前記雌部材は、
紐の端部が挿入される第1の開口と、
その第1の開口と所定の対向方向に対向して形成される第2の開口と、
前記第1および第2の開口に間に位置する前記雌部材の内周面に配置される第1の雌内壁部と、を有し、
前記雄部材は、
基体部と、
その基体部の一側面から所定の延出方向に延び、前記第2の開口から前記所定の対向方向に挿入される延出部と、
その延出部に形成され、紐の端部が挿通されるように前記所定の延出方向と直交する方向に貫通する貫通孔と、
前記第1の開口から挿入された紐が前記貫通孔に挿通されて折り返されるときに、紐の折り返される部分の内側と係合するために、前記貫通孔の内壁のうちで前記基体部から最も離れた内壁に形成される折り返し係合部と、
前記貫通孔で折り返された紐の先端部を前記第1の雌内壁部との間で挟持するために、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記第1の雌内壁部に対向するように前記延出部に形成される第1の係止部と、を有することを特徴とする紐端止め具。
【請求項2】
前記雌部材は、前記第1の雌内壁部と対向して前記雌部材の内周面に配置される第2の雌内壁部を有し、
前記雄部材は、前記第1の開口から挿入され前記貫通孔に挿通される紐のうち前記折り返し係合部の形成位置に達する前の紐の部分を前記第2の雌内壁部との間で挟持するために、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記第2の雌内壁部に対向するように前記延出部に形成される第2の係止部を有することを特徴とする請求項1に記載の紐端止め具。
【請求項3】
前記第1および第2の雌内壁部は、前記所定の対向方向に平行な前記雌部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成され、
前記第1および第2の係止部は、前記所定の延出方向に平行な前記雄部材の中心線の回りに点対称となる形状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の紐端止め具。
【請求項4】
前記折り返し係合部は、前記貫通孔の内壁のうちで前記基体部から最も離れた内壁から前記基体部に向かって突出する係合突起から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紐端止め具。
【請求項5】
前記第2の開口は、前記第1の開口より大きく、前記貫通孔に挿通された紐の折り返される部分が前記第2の開口から挿入されるように形成され、
前記雌部材は、前記貫通孔に挿通された紐の折り返される部分を収容する収容空間を前記第2の開口の近傍に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紐端止め具。
【請求項6】
前記雌部材は、前記第2の開口からの前記延出部の挿入を案内するために前記雌部材の内周面に形成され、前記所定の対向方向に延びる複数の案内部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紐端止め具。
【請求項7】
前記第1の係止部は、前記第1の雌内壁部との間で、所定の半径を有する略円形の横断面形状を有する紐の端部を挟持するために、その所定の半径より小さい曲率半径を有する円弧状の凹所を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紐端止め具。
【請求項8】
前記第1の雌内壁部は、前記雄部材が前記雌部材の内部に挿入されたときに前記雌部材の内周面から前記凹所に向かって突出するように形成されることを特徴とする請求項7に記載の紐端止め具。
【請求項9】
前記雄部材は、前記所定の延出方向に前記延出部から延び、前記雌部材の内周面と係合する一対の弾性係止片を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の紐端止め具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の紐端止め具により端部が止められた紐端止め具付き紐。
【請求項11】
前記紐は、略円形の横断面形状を有するゴム素材を含んで構成されることを特徴とする請求項10に記載の紐端止め具付き紐。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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