紐締めフィッティング構造を備えた靴
【課題】足の部位に応じた締付け力で選択的に、かつ、迅速に紐締めすることのできる靴を提供する。
【解決手段】紐締めフィッティング構造を備えた靴は、メインアッパー2Mの内部の空間において内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられシューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメ23とを主たる要素とする。
【解決手段】紐締めフィッティング構造を備えた靴は、メインアッパー2Mの内部の空間において内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられシューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメ23とを主たる要素とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の紐締めフィッティング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山を歩行ないし走行するのに適した靴は、外の物体の衝突から足を守り、また、傾斜面や荒地において足を捻挫から守る。そのため、この種の靴は、一般的な靴に比べ、アッパーの剛性が大きい。
【0003】
アッパーの剛性が大きいと、紐締めに大きな力と時間を要する上、緊締力の配分が難しくなる。かかる観点から、種々の紐締め構造が提案されている。
【特許文献1】特開平6−78801号
【特許文献2】USP 5,167,084
【特許文献3】特開平2−5903号
【特許文献4】特開2005−143954
【特許文献5】US2005/0126043 A1
【発明の開示】
【0004】
特開平6−78801号およびUSP5,167,084に開示された靴は、内部に緊締装置を備えている。この靴は、靴自体の緊締と内部の緊締装置の締付動作を、各々、別々に行う必要がある。
【0005】
特開平2−5903号に開示された靴は、踵および舟状骨を支えるスターラップを備える。しかし、この靴のスターラップは、内側楔状骨を支持していない。また、スターラップとメインアッパーとを異なる緊締力で締付けることや、選択的に締付けることはできないだろう。
【0006】
特開2005−143954号に開示された靴は、ソールに連結されたベルトを備える。このベルトは、メインアッパーの外に配置されている。
この靴においては、ソールとメインアッパーとの一体感は得られるであろう。しかし、ベルトとメインアッパーとを異なる緊締力で締付けることや、両者を選択的に締付けることはできないだろう。
【0007】
US2005/0126043A1に開示されたブーツは、2つの独立した紐通しゾーンを備える。各ゾーンのシューレースは、各々、引っ張り操作されて、各ゾーンにおいてブーツのアッパーを足にフィットさせる。このブーツは、互いに独立した2本のシューレースを必要とする。
【0008】
本発明の主目的は、足の部位に応じた締付け力で選択的に、かつ、迅速に紐締めすることのできる靴を提供することである。
【0009】
本発明の靴は、紐締めフィッティング構造を備えた靴であって、着地の衝撃を吸収するソールと、足の甲を包むアッパーと、前記アッパーを足の甲にフィットさせるためのシューレース手段とを有し、前記アッパーは、着用時に脚が上方に出る第1開口と、前記第1開口の前方に設けられた第2開口とを有しており、前記2つの開口は、前後に互いに連なっており、前記アッパーは、足の内側面、外側面、爪先および背面を覆うメインアッパーと、前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍および前記第2開口の足首近傍に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第1ハトメと、前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍の前記第1ハトメと前記足首近傍の前記第1ハトメとの間に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第2ハトメと、前記メインアッパーの内部の空間において前記内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられ前記シューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメとを主たる要素とし、かつ、少なくとも前記各サイドパネルの上部が前記メインアッパーに接合されていないことを共通の要件とする。
【0010】
本発明において、メインアッパーの内部の空間とは、メインアッパーで定義される空間を意味し、メインアッパーの外装材よりも内の空間をいい、内装材が存在する場合には内装材と外装材との間の空間を含む。したがって、メインアッパーが外装材と内装材とを有する場合には、各パネルは内装材と外装材との間に配置されていてもよい。つまり、各パネルが内装材を介して足の側面や甲に接する場合も本発明に含まれる。また、パネルは内装材で構成されてもよい。
【0011】
かかる主要素および共通の要件を備えた靴は、各パネルがメインアッパーの内部の空間において足の側面に接する。そのため、各パネルは外装材と足との間に配置され、各パネルがメインアッパーにおける剛性の大きい外装材を介することなく、つまり、足とパネルとの間に外装材が挟まれることなく、各パネルが足の側面や甲に直接的にフィットする。
しかも、各パネルの上部がメインアッパーに接合されていないので、各パネルの上部がメインアッパーとは別に動き易い。そのため、各パネルの上部が足の側面や甲に沿うことが妨げられない。
その結果、パネルの上部が足にフィットし易い。
【0012】
本発明において、「足の内(外)側面に沿って」とは、足の内(外)側面に概ね平行であることを意味する。
【0013】
ここにおいて「ハトメ」とは、シューレース手段が通過し係合する孔をいい、例えば、メインアッパーに貫通孔を設けて形成したり、当該貫通孔に円環を設けたり、あるいは、U字状の金具を用いて形成する。なお、サイドパネルに必ずしも別途ハトメを設ける必要はなく、シューレース手段がサイドパネル自体を通過し係合してもよい。例えば、折り畳んで形成したサイドパネルの折り畳み部(ループ部)にシューレース手段が通過し係合してもよい。
【0014】
本発明のある態様は、前記主要素を備えた靴において、前記シューレース手段と前記第2ハトメとの摩擦力が、前記シューレース手段と前記第1ハトメとの摩擦力よりも小さく、ここにおいて、前記シューレース手段は、前記第3ハトメを通らずに前記内側面と前記外側面との間を往復することを繰り返すように前記第1および第2ハトメを通って、前記第2開口を足幅方向に小さくして前記メインアッパーを足にフィットさせる第1部と、前記第2開口の爪先近傍の第1ハトメから前記中間の第2ハトメを通ることなく前記両サイドパネルの第3ハトメを通って、更に、前記第2開口の足首近傍の第1ハトメを通ることで、前記第1および第2サイドパネルを足の側面にフィットさせる第2部とを備えている。
【0015】
この態様によれば、シューレース手段の第1部は、各パネルに設けた第3ハトメを通ることなく、第1ハトメと第2ハトメを通って、メインアッパーを足にフィットさせる。一方、シューレース手段の第2部は、爪先近傍の第1ハトメと足首近傍の第1ハトメとの間に設けた第2ハトメを通ることなく、爪先近傍の第1ハトメから第3ハトメを通って、更に、足首近傍の第1ハトメを通って、各パネルを足の甲にフィットさせる。
【0016】
ここで、前記第1ハトメとシューレース手段との摩擦力は大きいので、前記第1部の締付力と第2部の締付力とは異なる大きさに制御され得る。そのため、メインアッパーとパネルとは互いに異なる緊締力で足にフィットされ得ると共に選択的に紐締めされ得る。
【0017】
本発明の別の態様は、前記第1サイドパネルの前記第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとが、足長方向に延びる仮想のラインを中心として、互いに斜め向かいに配置され、前記シューレース手段が前記第1サイドパネルの第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとを連続的に通っている。
【0018】
この態様によれば、互いに斜め向かいに配置された複数の第3ハトメをシューレース手段が連続的に通っているので、当該シューレース手段に張力を付与することにより、各第3ハトメが足の内外の中央に向って移動する。これによって、各サイドパネルが足の甲にフィットする。
【0019】
なお、前記第2開口は一般に前記舌片で閉じられる。
【0020】
本発明の更に別の態様では、前記第1および第2サイドパネルが前記メインアッパーの前記内部の面に接し、前記第1および第2サイドパネルの下部が前記足のアーチに接し、前記第1および第2サイドパネルの上部が前記舌片と前記メインアッパーとの間に配置され、かつ、前記第3ハトメが前記舌片上において前記第2開口から上方に向かって露出している。
【0021】
足の甲の上面には、足趾を屈曲させる腱が通っている。前記腱が圧迫されると痛みを感じやすい上、足趾のスムースな屈曲が阻害される。
本態様によれば、各パネルの上部および第3ハトメが柔軟な舌片上に配置されているので、各パネルを大きい緊締力で締め付けた場合に、腱が圧迫され難い。したがって、パネルと腱との当りがソフトな状態で、パネルが舌片を介して甲にフィットする。
また、各パネルはメインアッパーの内部の面に接し、かつ、アーチに接するから、パネルがメインアッパーとは異なる力で足に接することが可能である。
【0022】
本態様において、「パネルがメインアッパーの内部の面に接し、かつ、アーチに接する」とは、パネルが足のアーチとメインアッパーの外装材との間に配置されていることを意味し、内装材が存在する場合には、パネルが内装材と外装材との間に配置され、内装材を介してパネルがアーチに接することを意味する。
【0023】
本発明の他の態様では、前記メインアッパーは、少なくとも足の後足部を覆うと共に足の表面に接触する内装材と、足の爪先から後足部にわたる全体を覆い、かつ、前記内装材を外部から覆う外装材とを備え、ここにおいて、前記各サイドパネルは前記外装材で形成される内部の空間に配置されており、着用時に前記シューレース手段により締め付けられて、前記外装材を介することなく、かつ、内装材を介して足の表面に接し、前記着用時に前記シューレース手段による第1サイドパネルの前記内側アーチに対する締め付けを抑制する第1抑制手段と、前記着用時に前記シューレース手段による第2サイドパネルの前記外側アーチに対する締め付けを抑制する第2抑制手段とを更に備えている。
【0024】
本態様においては、各サイドパネルが外装材を介することなく内装材を介して足の表面に接するので、外装材とは別に各サイドパネルを足にフィットさせることができる。一方、各サイドパネルは内装材を介して、足にフィットするので、ソフトな足当たりが得られる。
しかも、各抑制手段が各サイドパネルの足への当たりが過大になるのを抑制し得る。
【0025】
前記各態様において、前記各サイドパネルの下端はメインアッパーおよび/またはソールに付着されていてもよい。
【0026】
パネルの下端はメインアッパーに付着(結合)されていてもよいし、メインアッパーを介して、あるいは、メインアッパーを介することなくソールに付着(結合)されていてもよい。この場合、パネルはソールから足の側面に沿って巻き上がっていてもよい。
【0027】
前記各態様において、前記各サイドパネルの前縁の上部および各サイドパネルの後縁の上部は前記メインアッパーに接合されておらず、かつ、前記各サイドパネルの前記後縁の下部および/または前縁の下部は前記メインアッパーに接合されていてもよい。
【0028】
この場合、パネルの後縁の下部または前縁の下部のうち少なくとも一方がメインアッパーに接合されているので、パネルがメインアッパーに拘束されることにより、パネルの足への当りが強くなりすぎるのを、特に、足のアーチに対する当りが強くなりすぎるのを抑制し得る。
【0029】
前記各態様においては、前記内装材と前記外装材とは、足の内側面の部位において互いに面接合されていない袋状の第1袋部と、足の外側面の部位において互いに面接合されていない袋状の第2袋部とを形成しており、前記第1および第2袋部は、それぞれ前記内部の空間において開口する第1および第2スリットを有しており、前記第1袋部には前記第1サイドパネルの下部が収納されていると共に前記第1サイドパネルの上部が前記第1スリットから延び出ており、前記第2袋部には前記第2サイドパネルの下部が収納されていると共に前記第2サイドパネルの上部が前記第2スリットから延び出ているのが好ましい。
【0030】
この場合、各スリットの前端および後端によりパネルが前後方向に位置ズレするのを防止し得る。
また、パネルを足にフィットさせる際に、内装材はパネルの下部が足の中央へ移動するのを抑制する。そのため、サイドパネルの下部の足への当たりが強くなりすぎるのを抑制し得る。
【0031】
前記各態様において、前記サイドパネルの前縁および後縁の双方が前記メインアッパーに接合されていなくてもよい。
【0032】
この場合、パネルがメインアッパーに拘束されていないから、パネルを足に強くフィットさせることができる。この実施例の場合は、たとえば、装着時間の短い短距離走などに適する。
【0033】
本発明において、シューレース手段は、1本または複数本のシューレースを包含する。1本のシューレースの場合、靴の構造がシンプルになる。
【0034】
前記各態様において、前記第3ハトメが前記舌片の上方で、かつ、締付時に前記シューレース手段の第1部の下方となるように設けられ、前記シューレース手段の第1部の下方を前記第2部が通っているのが好ましい。
この場合、第1部よりも短い第2部が下方に配置されているので、シューレースの締め付け状態を変更し易い。
【0035】
前記各態様において、第1サイドパネルが舟状骨よりも前方において内側楔状骨の少なくとも一部を覆っており、第2サイドパネルが第1サイドパネルに相対する位置、その前方、または後方のいずれか1箇所以上において足を覆ってもよい。つまり、第2サイドパネルは、第5趾骨底、骨体または立方骨のいずれか1箇所以上を覆っていてもよい。
【0036】
内側楔状骨を第1サイドパネルで覆うことにより、足の内側のアーチが第1サイドパネルによって覆われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は本発明の第1実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図2】図2はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図3】図3はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図4】図4はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図5】図5はシューレース手段を取り外した状態の同靴を内側から見た概略側面図である。
【図6】図6はシューレース手段を取り外した状態の同靴を外側から見た概略側面図である。
【図7】図7Aは同靴に第1部および第3部のシューレース手段を通した状態の同靴の概略斜視図、図7Bは第2ハトメの例を示す概略平面図、図7Cは同第2ハトメの例を示す概略側面図である。
【図8】図8は同靴に第2部および第4部のシューレース手段を通した状態の同靴の概略斜視図である。
【図9】図9は同靴の着用状態における同靴を示す概略斜視図である。
【図10】図10は本発明の第2実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図11】図11はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図12】図12はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、それぞれ、シューレースを取り外した状態の本発明の第3実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図14】図14Aおよび図14Bは、それぞれ、シューレースを取り外した状態の本発明の第4実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図15】図15Aは同実施例の靴を正面から見た概略斜視図、図15Bは同靴の概念的な断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:ソール
10A:第1抑制手段
10B:第2抑制手段
11:内装材
12:外装材
13A:第1袋部
13B:第2袋部
14A:第1スリット
14B:第2スリット
2:アッパー
25:接合材
2M:メインアッパー
3:シューレース
31:第1部
32:第2部
33:第3部
34:第4部
21d,21u:第1ハトメ
22:第2ハトメ
23:第3ハトメ
5a:前縁
5b:後縁
51:第1サイドパネル
52:第2サイドパネル
100:上部
101:下部
4:舌片
Ak:足首
B:背面
B51 :内側楔状骨
B6:舟状骨
Fd:足の甲
Le:脚
P1:第1開口
P2:第2開口
P2s:側縁
S1:内側面
S2:外側面
T:爪先
W:幅方向
Y1:前方
Y2:後方
Z1:上方
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲は請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0040】
第1実施例:
以下、本発明の第1実施例が図1〜図9を参照して説明される。
以下の説明では、左足用の靴が例示される。また、以下の図において、矢印OUTは靴の外側方向、矢印INは靴の内側方向を示す。
【0041】
靴の全体構造:
図1に示す紐締めフィッティング構造を備えた靴は、ソール1、アッパー2、シューレース3および舌片4を備えている。
ソール1は、着地の衝撃を吸収するものである。アッパー2は、足の甲を包むものである。シューレース3は、アッパー2を足の甲にフィットさせるためのものである。舌片4は、足の甲を覆うものである。
【0042】
図2,図3および図4に示すように、アッパー2は、第1開口P1と第2開口P2とを備えている。図1に示すように、第1開口P1は着用時に脚Leが上方Z1に出る開口である。
図2に示すように、第2開口P2は第1開口P1の前方Y1、すなわち、爪先T(図5)に向って設けられた開口である。第2開口P2はアッパー2の上部において、足長方向(前後方向)Yに長く設けられている。前記2つの開口P1,P2は互いに連なっている。図1に示すように、前記舌片4は、前記第2開口P2を下方Z2から閉じる。
【0043】
アッパー2:
図3において、前記アッパー2は、メインアッパー2M、ハトメ21d,21u,22,23およびサイドパネル51,52(図5および図6)を備えている。
【0044】
メインアッパー2M;
前記メインアッパー2Mは、図5の足の内側面S1、図6の外側面S2、爪先Tおよび背面Bを覆う。メインアッパー2Mには、前記第1開口P1および第2開口P2が形成されている。
図2の前記メインアッパー2Mは、内装材11と外装材12とを備える。前記内装材11は足の後足部からアーチまでを覆うと共に足の表面に接する。前記外装材12は前記内装材11の外部に設けられ、足の全体を覆う。
【0045】
ハトメ21d,21u,22,23;
前記ハトメは、前記シューレース3が通過すると共に係合する第1ハトメ21d,21u、第2ハトメ22および第3ハトメ23からなる。
【0046】
第1ハトメ21d,21uは、前記第2開口P2の側縁P2sに沿って設けられている。第1ハトメ21d,21uは、第2開口P2の爪先T近傍に配置された爪先側第1ハトメ21dと、第2開口P2の足首Ak近傍に配置された足首側第1ハトメ21uからなる。
第1ハトメ21u,21dは、メインアッパー2Mに円形の貫通孔を穿孔することにより形成されていてもよいし、外側OUTの爪先側第1ハトメ21dのように、ループ状に形成された帯をシューレース3が通過するように形成されていてもよい。
【0047】
第2ハトメ22は、第2開口P2の側縁P2sに沿って設けられている。第2ハトメ22は、爪先側第1ハトメ21dと足首側第1ハトメ21uとの間の中間に配置されている。後述するように、第2ハトメ22は金具で形成されている。
【0048】
図4に示すように、第3ハトメ23は、前記サイドパネル51,52の上端に各々設けられている。
第3ハトメ23は、折り畳んだ布の両端がサイドパネル51,52の第1面5cおよび第2面5dにそれぞれ縫合され、シューレース3が通過できるようにループ状に形成されている。
【0049】
サイドパネル51,52;
前記サイドパネル51,52は、第1サイドパネル51と、第2サイドパネル52からなる。図5および図6に示すように、各サイドパネル51,52は、ソール1から足の内外の側面S1,S2に沿ってそれぞれ巻き上がっている。なお、図2〜図6において、サイドパネル51,52の部位には、網点が施されている。
【0050】
図2および図3に示すように、各サイドパネル51,52は、メインアッパー2Mの外装材12に面接合されていない。つまり、各サイドパネル51、52と外装材12の対向面同士は、互いに面で接合されておらず、各サイドパネル51,52のメインアッパー2Mに対面する第1面5cは、図5および図6の網点を施した部位について、メインアッパー2Mの外装材12の面から離れることが可能である。図5および図6に示すように、サイドパネル51,52の下端51d,52dはソール1に付着(縫合)されている。
【0051】
各サイドパネル51,52の第1面5cの下部は、メインアッパー2Mの外装材12の内部の面にそれぞれ接している。各サイドパネル51,52の第2面5dの下部は、外装材12を介することなく足のアーチFr(図5および図6)に接している。
【0052】
第1サイドパネル51は、締付時に、メインアッパー2Mの内部の空間において足の内側面S1に沿って上方Z1に向って足の内側面S1に巻き付く。第2サイドパネル52は、締付時に、メインアッパー2Mの内部の空間において足の外側面S2に沿って上方Z1に向って足の外側面S2に巻き付く。
【0053】
図2および図3においては、各サイドパネル51,52は後方Y2に向って折り曲げた状態である。
図2および図3に示すように、前記各サイドパネル51,52は、内装材11に連なって内装材11と一体に形成されている。つまり、前記各サイドパネル51,52の後縁5bの上部および前縁5aは、メインアッパー2Mに接合されておらず、一方、各サイドパネル51,52の後縁5bの下部はメインアッパー2Mに接合されている。
前記接合は第1および第2抑制手段10A,10Bを構成しており、この接合により各サイドパネル51,52はメインアッパー2Mに拘束される。
つまり、第1抑制手段10Aは着用時にシューレース3を介して足の中央に引き寄せられた第1サイドパネル51が足の内側のアーチFrを過度に締め付けるのを抑制する。一方、第2抑制手段10Bは着用時にシューレース3を介して足の中央に引き寄せられた第2サイドパネル52が足の外側のアーチFrを過度に締め付けるのを抑制する。
【0054】
図4において、メインアッパー2Mが折り曲げられて、第2開口P2が拡げられた状態の靴が示される。
図4に示すように、各サイドパネル51,52の上部および第3ハトメ23は、舌片4とメインアッパー2Mとの間に配置されている。図1に示すように、サイドパネル51,52(図4)の第3ハトメ23は、舌片4上において、第2開口P2から上方Z1に向って露出している。
【0055】
図1に示すように、第1サイドパネル51の第3ハトメ23と、第2サイドパネル52の第3ハトメ23とは、足長方向Yに延びる仮想のラインLを中心として、互いに斜め向かいに配置されている。
【0056】
図5に示すように、第1サイドパネル51は、メインアッパー2Mの内部の空間において、足の内側面S1に沿って、斜め上方Z1に向って足の内側面S1に巻き付く。第1サイドパネル51は、舟状骨B6よりも前方Y1において内側楔状骨B51 を覆っている。
【0057】
図6に示すように、第2サイドパネル52は、メインアッパー2Mの内部の空間において、足の外側面S2に沿って、斜め上方Z1に向って足の外側面S2に巻き付く。第2サイドパネル52は、第1サイドパネル51に相当する位置およびその前方Y1を覆う。第2サイドパネル52は、第2〜第4中足骨B42 〜B45 の骨底付近を覆う。
したがって、第1および第2サイドパネル51,52は、足のアーチFrの側面に接触し、該アーチFrの側面を覆う。
【0058】
シューレース3:
図9に示すように、前記シューレース3は1本のシューレースからなる。前記シューレースの周囲には、図示しない多数の凸部が形成されている。
前記シューレース3は、各第1〜第3ハトメ21d,21u,22,23を通過する。
シューレース3は、第1部〜第4部31〜34を備えている。なお、図9において、説明を分かり易くするために、シューレース3の第2部32および第4部34に網点が施されている。また、シューレース3の第3部33および第4部34は、各図において図示が一部省略されている。
【0059】
図7Aに示すように、シューレース3の第1部31は第3ハトメ23を通らない。前記第1部31は、内側面S1と外側面S2との間を往復することを繰り返すように、つまり、第2開口P2を斜めに横切ることを繰り返しながら、爪先側の第1ハトメ21d、第2ハトメ22および足首側第1ハトメ21uを通る。
【0060】
前述したように、第1ハトメ21u,21dは、メインアッパー2Mに円形の貫通孔を穿孔することにより形成されている。シューレース3の周囲には、多数の凸部が形成されているので、前記第1ハトメ21u,21dの孔とシューレース3とが係合し、摩擦力が大きくなる。
【0061】
一方、第2ハトメ22には、図7Bおよび図7Cに示す金属製の第2ハトメ22が用いられている。
図7Bおよび図7Cに示すように、第2ハトメ22は、シューレース3が接触する平滑な円筒形の接触部22aを備えている。そのため、金属製の接触部22aとシューレース3との摩擦力は小さく、前記シューレース3と第2ハトメ22との摩擦力は、第1ハトメ21u,21dとの摩擦力よりも小さく設定されている。
第2ハトメ22は、留め具22bを介してメインアッパー2Mに対して回転自在に固定されている。シューレース3により第2ハトメ22が引っ張られると、第2ハトメ22が、矢印で示すように留め具22bの回動中心Oを中心に回動される。
【0062】
図8に示すように、シューレース3の第2部32は、第2開口P2の爪先側第1ハトメ21dから、中間の第2ハトメ22を通ることなく、前記両サイドパネル51,52(図5,図6)の第3ハトメ23を通る。更に、第2部32は、第2開口P2の足首側第1ハトメ21uを通るように配置される。こうして、第2部32は第2開口P2を斜めに横切ることを繰り返し、爪先側第1ハトメ21d、第3ハトメ23,23および足首側第1ハトメ21uを通る。
【0063】
図9に示すように、シューレース3の第3部33は、内側INにおける足首側第1ハトメ21uから延び出る。
シューレース3の第4部34は、外側OUTにおける足首側第1ハトメ21uから延び出る。
【0064】
前記第3ハトメ23は、舌片4の上方Z1で、かつ、締付時にシューレース3の第1部31の下方Z2に配置される。シューレース3の第2部32は、第1部31の下方Z2を通っている。
【0065】
調整方法:
図9に示すようにシューレース3を第1〜第3ハトメ21u,21d,22、23に通した後、シューレース3の第3部33と第4部34とを互いに結ぶ。
【0066】
ここで、図5および図6に示すアーチFrを強く締め付け、爪先T部分等を自由に動かしたい場合には、図9に示す第3部33の張力を小さくすると共に、シューレース3の第4部34を引っ張る。
図9に示すように、第1サイドパネル51の第3ハトメ23と、第2サイドパネル52の第3ハトメ23とが、足長方向Yに延びる仮想のラインLを中心として、互いに斜め向かいに配置されている。そのため、第4部34を引っ張ると、一対の第3ハトメ23,23を介して図4のサイドパネル51,52が互いに近づき、サイドパネル51,52が図5および図6のアーチFrにフィットし、当該アーチFrが締め付けられる。
【0067】
一方、図9のシューレース3と第2ハトメ22との摩擦力は、シューレース3と第1ハトメ21u,21dとの摩擦力よりも小さく設定されているので、第3部33を緩めることで、簡単にメインアッパー2Mによる内側面S1および外側面S2に対する締付力を緩めることができる。
【0068】
メインアッパー2Mを足全体に概ね均等にフィットさせたい場合には、シューレース3の第4部34だけでなく第3部33を引っ張ることにより、サイドパネル51,52だけではなく、第2ハトメを介してメインアッパー2Mの内側面S1と外側面S2とが互いに引き寄せられ、サイドパネル51,52およびメインアッパー2Mが足全体にフィットする。
【0069】
第2実施例:
以下、本発明の第2実施例が図10〜図12を参照して説明される。
図10に示すように、本第2実施例の靴には、第1および第2サイドパネル51,52が設けられている。図11および図12に示すように、各サイドパネル51,52の前縁5aおよび後縁5bの双方は、上部および下部において、メインアッパー2Mに接合されていない。
その他の構成は、第1実施例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
第3実施例:
以下、本発明の第3実施例が図13Aおよび図13Bを参照して説明される。
図13Aおよび図13Bに示すように、本実施例3のメインアッパー2Mにおいて、第1および第2サイドパネル51,52の後方Y2にU字状の切欠部200が設けられている。前記各サイドパネル51,52の後縁が前記内装材11に連なっていることでメインアッパー2Mに拘束されている。前記各サイドパネル51、52は前記内装材11とは異なる合成皮革の張り材が前記内装材11に貼り合わされていてもよい。
前記各サイドパネル51、52における第3ハトメ23を設けた上部100は、メインアッパー2Mの外装材12にその全面において接合されていない。したがって、前記上部100は外装材12から離れて足の側面や甲にフィットすることが可能である。
一方、各サイドパネル51、52は、太い破線で示すように、前縁5aの下部、後縁5bの下部および上下の中間の部位において、外装材12に糸102で縫合されて接合されている。したがって、各サイドパネル51、52の下部101は外装材12に接合されて外装材12から離れることなく、足の側面にフィットしたり、足の側面から離れた状態で対面する。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
第4実施例:
以下、本発明の第4実施例が図14A〜図15Bを参照して説明される。
図14Aに示すように、本実施例4の靴は、舌片4の両側部と、メインアッパー2Mとが接合材25を介してそれぞれ互いに接合されている。
前記接合材25により、舌片4とメインアッパー2Mとの隙間から砂や雨、泥水などが靴内に侵入するのを防止することができる。
接合材25としては、たとえば、溌水および通気性を有する素材を用いるのが好ましい。
【0072】
本実施例においては、内装材11は前記接合材25の内面および舌片4の内面に連なっていると共に、足の概ね全面を覆っている。足の内外のアーチFrの部位において、前記内装材11と外装材12とが互いに面接合されていない袋状の第1および第2袋部13A,13Bが形成されている。
図15Bに示すように、各袋部13A,13B内において、前記各サイドパネル51,52は内装材11と外装材12とに挟まれた位置に配置されている。
【0073】
前記第1および第2袋部13A,13Bは、それぞれ前記アッパー内部の空間において開口する第1および第2スリット14A,14Bを有している。前記第1袋部13Aには前記第1サイドパネル51の下部が収納されていると共に前記第1サイドパネル51の上部が第1スリット14Aから延び出ている。前記第2袋部13Bには第2サイドパネル52の下部が収納されていると共に前記第2サイドパネル52の上部が前記第2スリット14Bから延び出ている。
【0074】
前記各スリット14A,14Bの長さは、各サイドパネル51,52の前後方向の幅よりも若干大きい。そのため、前記各スリット14A,14Bは前記各サイドパネル51,52が前後方向に位置ズレするのを抑制する。
【0075】
前記各サイドパネル51,52の下部は、前記各袋部13A,13B内に収納されている。そのため、図15Aのように、各サイドパネル51,52がシューレース3で締め付けられて、各サイドパネル51,52が足の中央に引き寄せられた際に、図14Aの内装材11が前記サイドパネル51,52の下部の移動を抑制する。つまり、本実施例では、第1および第2袋部13A,13Bが第1および第2抑制手段10A,10Bを構成する。
【0076】
本実施例の場合、前記スリット14A,14Bは接合材25に設けられているが、接合材25ではなく内装材11に設けられてもよい。たとえば、接合材25が設けられておらず、かつ、内装材11が外装材12の内表面に設けられている場合、内装材11と外装材12との間の袋部から、内装材11に設けられたスリットを介してサイドパネル51、52が延び出てもよい。
【0077】
図15Aにおいて、前記一対のサイドパネル51,52は、互いに対面する位置に設けられている。つまり、第1および第2サイドパネル51,52は、足長方向の同じ位置に設けられている。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
【0079】
たとえば、第2サイドパネルは、第1サイドパネルに相対する位置やその前方または後方に位置していてもよい。
第2ハトメは、1つのサイドパネルに2個以上設けられていてもよい。
【0080】
また、シューレース3は2本以上であってもよい。
さらに、サイドパネルの下端はソールに付着されていなくてもよい。
また、舌片を設けなくてもよい。舌片を設けない場合、たとえば内側面および外側面の双方に櫛歯状のパネルを設け、第1サイドパネルと第2サイドパネルとが互い違いに足の甲を覆ってもよい。
【0081】
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、トレッキングシューズ等の運動靴の他、様々な靴に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の紐締めフィッティング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山を歩行ないし走行するのに適した靴は、外の物体の衝突から足を守り、また、傾斜面や荒地において足を捻挫から守る。そのため、この種の靴は、一般的な靴に比べ、アッパーの剛性が大きい。
【0003】
アッパーの剛性が大きいと、紐締めに大きな力と時間を要する上、緊締力の配分が難しくなる。かかる観点から、種々の紐締め構造が提案されている。
【特許文献1】特開平6−78801号
【特許文献2】USP 5,167,084
【特許文献3】特開平2−5903号
【特許文献4】特開2005−143954
【特許文献5】US2005/0126043 A1
【発明の開示】
【0004】
特開平6−78801号およびUSP5,167,084に開示された靴は、内部に緊締装置を備えている。この靴は、靴自体の緊締と内部の緊締装置の締付動作を、各々、別々に行う必要がある。
【0005】
特開平2−5903号に開示された靴は、踵および舟状骨を支えるスターラップを備える。しかし、この靴のスターラップは、内側楔状骨を支持していない。また、スターラップとメインアッパーとを異なる緊締力で締付けることや、選択的に締付けることはできないだろう。
【0006】
特開2005−143954号に開示された靴は、ソールに連結されたベルトを備える。このベルトは、メインアッパーの外に配置されている。
この靴においては、ソールとメインアッパーとの一体感は得られるであろう。しかし、ベルトとメインアッパーとを異なる緊締力で締付けることや、両者を選択的に締付けることはできないだろう。
【0007】
US2005/0126043A1に開示されたブーツは、2つの独立した紐通しゾーンを備える。各ゾーンのシューレースは、各々、引っ張り操作されて、各ゾーンにおいてブーツのアッパーを足にフィットさせる。このブーツは、互いに独立した2本のシューレースを必要とする。
【0008】
本発明の主目的は、足の部位に応じた締付け力で選択的に、かつ、迅速に紐締めすることのできる靴を提供することである。
【0009】
本発明の靴は、紐締めフィッティング構造を備えた靴であって、着地の衝撃を吸収するソールと、足の甲を包むアッパーと、前記アッパーを足の甲にフィットさせるためのシューレース手段とを有し、前記アッパーは、着用時に脚が上方に出る第1開口と、前記第1開口の前方に設けられた第2開口とを有しており、前記2つの開口は、前後に互いに連なっており、前記アッパーは、足の内側面、外側面、爪先および背面を覆うメインアッパーと、前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍および前記第2開口の足首近傍に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第1ハトメと、前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍の前記第1ハトメと前記足首近傍の前記第1ハトメとの間に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第2ハトメと、前記メインアッパーの内部の空間において前記内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられ前記シューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメとを主たる要素とし、かつ、少なくとも前記各サイドパネルの上部が前記メインアッパーに接合されていないことを共通の要件とする。
【0010】
本発明において、メインアッパーの内部の空間とは、メインアッパーで定義される空間を意味し、メインアッパーの外装材よりも内の空間をいい、内装材が存在する場合には内装材と外装材との間の空間を含む。したがって、メインアッパーが外装材と内装材とを有する場合には、各パネルは内装材と外装材との間に配置されていてもよい。つまり、各パネルが内装材を介して足の側面や甲に接する場合も本発明に含まれる。また、パネルは内装材で構成されてもよい。
【0011】
かかる主要素および共通の要件を備えた靴は、各パネルがメインアッパーの内部の空間において足の側面に接する。そのため、各パネルは外装材と足との間に配置され、各パネルがメインアッパーにおける剛性の大きい外装材を介することなく、つまり、足とパネルとの間に外装材が挟まれることなく、各パネルが足の側面や甲に直接的にフィットする。
しかも、各パネルの上部がメインアッパーに接合されていないので、各パネルの上部がメインアッパーとは別に動き易い。そのため、各パネルの上部が足の側面や甲に沿うことが妨げられない。
その結果、パネルの上部が足にフィットし易い。
【0012】
本発明において、「足の内(外)側面に沿って」とは、足の内(外)側面に概ね平行であることを意味する。
【0013】
ここにおいて「ハトメ」とは、シューレース手段が通過し係合する孔をいい、例えば、メインアッパーに貫通孔を設けて形成したり、当該貫通孔に円環を設けたり、あるいは、U字状の金具を用いて形成する。なお、サイドパネルに必ずしも別途ハトメを設ける必要はなく、シューレース手段がサイドパネル自体を通過し係合してもよい。例えば、折り畳んで形成したサイドパネルの折り畳み部(ループ部)にシューレース手段が通過し係合してもよい。
【0014】
本発明のある態様は、前記主要素を備えた靴において、前記シューレース手段と前記第2ハトメとの摩擦力が、前記シューレース手段と前記第1ハトメとの摩擦力よりも小さく、ここにおいて、前記シューレース手段は、前記第3ハトメを通らずに前記内側面と前記外側面との間を往復することを繰り返すように前記第1および第2ハトメを通って、前記第2開口を足幅方向に小さくして前記メインアッパーを足にフィットさせる第1部と、前記第2開口の爪先近傍の第1ハトメから前記中間の第2ハトメを通ることなく前記両サイドパネルの第3ハトメを通って、更に、前記第2開口の足首近傍の第1ハトメを通ることで、前記第1および第2サイドパネルを足の側面にフィットさせる第2部とを備えている。
【0015】
この態様によれば、シューレース手段の第1部は、各パネルに設けた第3ハトメを通ることなく、第1ハトメと第2ハトメを通って、メインアッパーを足にフィットさせる。一方、シューレース手段の第2部は、爪先近傍の第1ハトメと足首近傍の第1ハトメとの間に設けた第2ハトメを通ることなく、爪先近傍の第1ハトメから第3ハトメを通って、更に、足首近傍の第1ハトメを通って、各パネルを足の甲にフィットさせる。
【0016】
ここで、前記第1ハトメとシューレース手段との摩擦力は大きいので、前記第1部の締付力と第2部の締付力とは異なる大きさに制御され得る。そのため、メインアッパーとパネルとは互いに異なる緊締力で足にフィットされ得ると共に選択的に紐締めされ得る。
【0017】
本発明の別の態様は、前記第1サイドパネルの前記第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとが、足長方向に延びる仮想のラインを中心として、互いに斜め向かいに配置され、前記シューレース手段が前記第1サイドパネルの第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとを連続的に通っている。
【0018】
この態様によれば、互いに斜め向かいに配置された複数の第3ハトメをシューレース手段が連続的に通っているので、当該シューレース手段に張力を付与することにより、各第3ハトメが足の内外の中央に向って移動する。これによって、各サイドパネルが足の甲にフィットする。
【0019】
なお、前記第2開口は一般に前記舌片で閉じられる。
【0020】
本発明の更に別の態様では、前記第1および第2サイドパネルが前記メインアッパーの前記内部の面に接し、前記第1および第2サイドパネルの下部が前記足のアーチに接し、前記第1および第2サイドパネルの上部が前記舌片と前記メインアッパーとの間に配置され、かつ、前記第3ハトメが前記舌片上において前記第2開口から上方に向かって露出している。
【0021】
足の甲の上面には、足趾を屈曲させる腱が通っている。前記腱が圧迫されると痛みを感じやすい上、足趾のスムースな屈曲が阻害される。
本態様によれば、各パネルの上部および第3ハトメが柔軟な舌片上に配置されているので、各パネルを大きい緊締力で締め付けた場合に、腱が圧迫され難い。したがって、パネルと腱との当りがソフトな状態で、パネルが舌片を介して甲にフィットする。
また、各パネルはメインアッパーの内部の面に接し、かつ、アーチに接するから、パネルがメインアッパーとは異なる力で足に接することが可能である。
【0022】
本態様において、「パネルがメインアッパーの内部の面に接し、かつ、アーチに接する」とは、パネルが足のアーチとメインアッパーの外装材との間に配置されていることを意味し、内装材が存在する場合には、パネルが内装材と外装材との間に配置され、内装材を介してパネルがアーチに接することを意味する。
【0023】
本発明の他の態様では、前記メインアッパーは、少なくとも足の後足部を覆うと共に足の表面に接触する内装材と、足の爪先から後足部にわたる全体を覆い、かつ、前記内装材を外部から覆う外装材とを備え、ここにおいて、前記各サイドパネルは前記外装材で形成される内部の空間に配置されており、着用時に前記シューレース手段により締め付けられて、前記外装材を介することなく、かつ、内装材を介して足の表面に接し、前記着用時に前記シューレース手段による第1サイドパネルの前記内側アーチに対する締め付けを抑制する第1抑制手段と、前記着用時に前記シューレース手段による第2サイドパネルの前記外側アーチに対する締め付けを抑制する第2抑制手段とを更に備えている。
【0024】
本態様においては、各サイドパネルが外装材を介することなく内装材を介して足の表面に接するので、外装材とは別に各サイドパネルを足にフィットさせることができる。一方、各サイドパネルは内装材を介して、足にフィットするので、ソフトな足当たりが得られる。
しかも、各抑制手段が各サイドパネルの足への当たりが過大になるのを抑制し得る。
【0025】
前記各態様において、前記各サイドパネルの下端はメインアッパーおよび/またはソールに付着されていてもよい。
【0026】
パネルの下端はメインアッパーに付着(結合)されていてもよいし、メインアッパーを介して、あるいは、メインアッパーを介することなくソールに付着(結合)されていてもよい。この場合、パネルはソールから足の側面に沿って巻き上がっていてもよい。
【0027】
前記各態様において、前記各サイドパネルの前縁の上部および各サイドパネルの後縁の上部は前記メインアッパーに接合されておらず、かつ、前記各サイドパネルの前記後縁の下部および/または前縁の下部は前記メインアッパーに接合されていてもよい。
【0028】
この場合、パネルの後縁の下部または前縁の下部のうち少なくとも一方がメインアッパーに接合されているので、パネルがメインアッパーに拘束されることにより、パネルの足への当りが強くなりすぎるのを、特に、足のアーチに対する当りが強くなりすぎるのを抑制し得る。
【0029】
前記各態様においては、前記内装材と前記外装材とは、足の内側面の部位において互いに面接合されていない袋状の第1袋部と、足の外側面の部位において互いに面接合されていない袋状の第2袋部とを形成しており、前記第1および第2袋部は、それぞれ前記内部の空間において開口する第1および第2スリットを有しており、前記第1袋部には前記第1サイドパネルの下部が収納されていると共に前記第1サイドパネルの上部が前記第1スリットから延び出ており、前記第2袋部には前記第2サイドパネルの下部が収納されていると共に前記第2サイドパネルの上部が前記第2スリットから延び出ているのが好ましい。
【0030】
この場合、各スリットの前端および後端によりパネルが前後方向に位置ズレするのを防止し得る。
また、パネルを足にフィットさせる際に、内装材はパネルの下部が足の中央へ移動するのを抑制する。そのため、サイドパネルの下部の足への当たりが強くなりすぎるのを抑制し得る。
【0031】
前記各態様において、前記サイドパネルの前縁および後縁の双方が前記メインアッパーに接合されていなくてもよい。
【0032】
この場合、パネルがメインアッパーに拘束されていないから、パネルを足に強くフィットさせることができる。この実施例の場合は、たとえば、装着時間の短い短距離走などに適する。
【0033】
本発明において、シューレース手段は、1本または複数本のシューレースを包含する。1本のシューレースの場合、靴の構造がシンプルになる。
【0034】
前記各態様において、前記第3ハトメが前記舌片の上方で、かつ、締付時に前記シューレース手段の第1部の下方となるように設けられ、前記シューレース手段の第1部の下方を前記第2部が通っているのが好ましい。
この場合、第1部よりも短い第2部が下方に配置されているので、シューレースの締め付け状態を変更し易い。
【0035】
前記各態様において、第1サイドパネルが舟状骨よりも前方において内側楔状骨の少なくとも一部を覆っており、第2サイドパネルが第1サイドパネルに相対する位置、その前方、または後方のいずれか1箇所以上において足を覆ってもよい。つまり、第2サイドパネルは、第5趾骨底、骨体または立方骨のいずれか1箇所以上を覆っていてもよい。
【0036】
内側楔状骨を第1サイドパネルで覆うことにより、足の内側のアーチが第1サイドパネルによって覆われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は本発明の第1実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図2】図2はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図3】図3はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図4】図4はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図5】図5はシューレース手段を取り外した状態の同靴を内側から見た概略側面図である。
【図6】図6はシューレース手段を取り外した状態の同靴を外側から見た概略側面図である。
【図7】図7Aは同靴に第1部および第3部のシューレース手段を通した状態の同靴の概略斜視図、図7Bは第2ハトメの例を示す概略平面図、図7Cは同第2ハトメの例を示す概略側面図である。
【図8】図8は同靴に第2部および第4部のシューレース手段を通した状態の同靴の概略斜視図である。
【図9】図9は同靴の着用状態における同靴を示す概略斜視図である。
【図10】図10は本発明の第2実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図11】図11はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図12】図12はシューレース手段を取り外した状態の同靴の概略斜視図である。
【図13】図13Aおよび図13Bは、それぞれ、シューレースを取り外した状態の本発明の第3実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図14】図14Aおよび図14Bは、それぞれ、シューレースを取り外した状態の本発明の第4実施例にかかる紐締めフィッティング構造を備えた靴の概略斜視図である。
【図15】図15Aは同実施例の靴を正面から見た概略斜視図、図15Bは同靴の概念的な断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:ソール
10A:第1抑制手段
10B:第2抑制手段
11:内装材
12:外装材
13A:第1袋部
13B:第2袋部
14A:第1スリット
14B:第2スリット
2:アッパー
25:接合材
2M:メインアッパー
3:シューレース
31:第1部
32:第2部
33:第3部
34:第4部
21d,21u:第1ハトメ
22:第2ハトメ
23:第3ハトメ
5a:前縁
5b:後縁
51:第1サイドパネル
52:第2サイドパネル
100:上部
101:下部
4:舌片
Ak:足首
B:背面
B51 :内側楔状骨
B6:舟状骨
Fd:足の甲
Le:脚
P1:第1開口
P2:第2開口
P2s:側縁
S1:内側面
S2:外側面
T:爪先
W:幅方向
Y1:前方
Y2:後方
Z1:上方
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲は請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0040】
第1実施例:
以下、本発明の第1実施例が図1〜図9を参照して説明される。
以下の説明では、左足用の靴が例示される。また、以下の図において、矢印OUTは靴の外側方向、矢印INは靴の内側方向を示す。
【0041】
靴の全体構造:
図1に示す紐締めフィッティング構造を備えた靴は、ソール1、アッパー2、シューレース3および舌片4を備えている。
ソール1は、着地の衝撃を吸収するものである。アッパー2は、足の甲を包むものである。シューレース3は、アッパー2を足の甲にフィットさせるためのものである。舌片4は、足の甲を覆うものである。
【0042】
図2,図3および図4に示すように、アッパー2は、第1開口P1と第2開口P2とを備えている。図1に示すように、第1開口P1は着用時に脚Leが上方Z1に出る開口である。
図2に示すように、第2開口P2は第1開口P1の前方Y1、すなわち、爪先T(図5)に向って設けられた開口である。第2開口P2はアッパー2の上部において、足長方向(前後方向)Yに長く設けられている。前記2つの開口P1,P2は互いに連なっている。図1に示すように、前記舌片4は、前記第2開口P2を下方Z2から閉じる。
【0043】
アッパー2:
図3において、前記アッパー2は、メインアッパー2M、ハトメ21d,21u,22,23およびサイドパネル51,52(図5および図6)を備えている。
【0044】
メインアッパー2M;
前記メインアッパー2Mは、図5の足の内側面S1、図6の外側面S2、爪先Tおよび背面Bを覆う。メインアッパー2Mには、前記第1開口P1および第2開口P2が形成されている。
図2の前記メインアッパー2Mは、内装材11と外装材12とを備える。前記内装材11は足の後足部からアーチまでを覆うと共に足の表面に接する。前記外装材12は前記内装材11の外部に設けられ、足の全体を覆う。
【0045】
ハトメ21d,21u,22,23;
前記ハトメは、前記シューレース3が通過すると共に係合する第1ハトメ21d,21u、第2ハトメ22および第3ハトメ23からなる。
【0046】
第1ハトメ21d,21uは、前記第2開口P2の側縁P2sに沿って設けられている。第1ハトメ21d,21uは、第2開口P2の爪先T近傍に配置された爪先側第1ハトメ21dと、第2開口P2の足首Ak近傍に配置された足首側第1ハトメ21uからなる。
第1ハトメ21u,21dは、メインアッパー2Mに円形の貫通孔を穿孔することにより形成されていてもよいし、外側OUTの爪先側第1ハトメ21dのように、ループ状に形成された帯をシューレース3が通過するように形成されていてもよい。
【0047】
第2ハトメ22は、第2開口P2の側縁P2sに沿って設けられている。第2ハトメ22は、爪先側第1ハトメ21dと足首側第1ハトメ21uとの間の中間に配置されている。後述するように、第2ハトメ22は金具で形成されている。
【0048】
図4に示すように、第3ハトメ23は、前記サイドパネル51,52の上端に各々設けられている。
第3ハトメ23は、折り畳んだ布の両端がサイドパネル51,52の第1面5cおよび第2面5dにそれぞれ縫合され、シューレース3が通過できるようにループ状に形成されている。
【0049】
サイドパネル51,52;
前記サイドパネル51,52は、第1サイドパネル51と、第2サイドパネル52からなる。図5および図6に示すように、各サイドパネル51,52は、ソール1から足の内外の側面S1,S2に沿ってそれぞれ巻き上がっている。なお、図2〜図6において、サイドパネル51,52の部位には、網点が施されている。
【0050】
図2および図3に示すように、各サイドパネル51,52は、メインアッパー2Mの外装材12に面接合されていない。つまり、各サイドパネル51、52と外装材12の対向面同士は、互いに面で接合されておらず、各サイドパネル51,52のメインアッパー2Mに対面する第1面5cは、図5および図6の網点を施した部位について、メインアッパー2Mの外装材12の面から離れることが可能である。図5および図6に示すように、サイドパネル51,52の下端51d,52dはソール1に付着(縫合)されている。
【0051】
各サイドパネル51,52の第1面5cの下部は、メインアッパー2Mの外装材12の内部の面にそれぞれ接している。各サイドパネル51,52の第2面5dの下部は、外装材12を介することなく足のアーチFr(図5および図6)に接している。
【0052】
第1サイドパネル51は、締付時に、メインアッパー2Mの内部の空間において足の内側面S1に沿って上方Z1に向って足の内側面S1に巻き付く。第2サイドパネル52は、締付時に、メインアッパー2Mの内部の空間において足の外側面S2に沿って上方Z1に向って足の外側面S2に巻き付く。
【0053】
図2および図3においては、各サイドパネル51,52は後方Y2に向って折り曲げた状態である。
図2および図3に示すように、前記各サイドパネル51,52は、内装材11に連なって内装材11と一体に形成されている。つまり、前記各サイドパネル51,52の後縁5bの上部および前縁5aは、メインアッパー2Mに接合されておらず、一方、各サイドパネル51,52の後縁5bの下部はメインアッパー2Mに接合されている。
前記接合は第1および第2抑制手段10A,10Bを構成しており、この接合により各サイドパネル51,52はメインアッパー2Mに拘束される。
つまり、第1抑制手段10Aは着用時にシューレース3を介して足の中央に引き寄せられた第1サイドパネル51が足の内側のアーチFrを過度に締め付けるのを抑制する。一方、第2抑制手段10Bは着用時にシューレース3を介して足の中央に引き寄せられた第2サイドパネル52が足の外側のアーチFrを過度に締め付けるのを抑制する。
【0054】
図4において、メインアッパー2Mが折り曲げられて、第2開口P2が拡げられた状態の靴が示される。
図4に示すように、各サイドパネル51,52の上部および第3ハトメ23は、舌片4とメインアッパー2Mとの間に配置されている。図1に示すように、サイドパネル51,52(図4)の第3ハトメ23は、舌片4上において、第2開口P2から上方Z1に向って露出している。
【0055】
図1に示すように、第1サイドパネル51の第3ハトメ23と、第2サイドパネル52の第3ハトメ23とは、足長方向Yに延びる仮想のラインLを中心として、互いに斜め向かいに配置されている。
【0056】
図5に示すように、第1サイドパネル51は、メインアッパー2Mの内部の空間において、足の内側面S1に沿って、斜め上方Z1に向って足の内側面S1に巻き付く。第1サイドパネル51は、舟状骨B6よりも前方Y1において内側楔状骨B51 を覆っている。
【0057】
図6に示すように、第2サイドパネル52は、メインアッパー2Mの内部の空間において、足の外側面S2に沿って、斜め上方Z1に向って足の外側面S2に巻き付く。第2サイドパネル52は、第1サイドパネル51に相当する位置およびその前方Y1を覆う。第2サイドパネル52は、第2〜第4中足骨B42 〜B45 の骨底付近を覆う。
したがって、第1および第2サイドパネル51,52は、足のアーチFrの側面に接触し、該アーチFrの側面を覆う。
【0058】
シューレース3:
図9に示すように、前記シューレース3は1本のシューレースからなる。前記シューレースの周囲には、図示しない多数の凸部が形成されている。
前記シューレース3は、各第1〜第3ハトメ21d,21u,22,23を通過する。
シューレース3は、第1部〜第4部31〜34を備えている。なお、図9において、説明を分かり易くするために、シューレース3の第2部32および第4部34に網点が施されている。また、シューレース3の第3部33および第4部34は、各図において図示が一部省略されている。
【0059】
図7Aに示すように、シューレース3の第1部31は第3ハトメ23を通らない。前記第1部31は、内側面S1と外側面S2との間を往復することを繰り返すように、つまり、第2開口P2を斜めに横切ることを繰り返しながら、爪先側の第1ハトメ21d、第2ハトメ22および足首側第1ハトメ21uを通る。
【0060】
前述したように、第1ハトメ21u,21dは、メインアッパー2Mに円形の貫通孔を穿孔することにより形成されている。シューレース3の周囲には、多数の凸部が形成されているので、前記第1ハトメ21u,21dの孔とシューレース3とが係合し、摩擦力が大きくなる。
【0061】
一方、第2ハトメ22には、図7Bおよび図7Cに示す金属製の第2ハトメ22が用いられている。
図7Bおよび図7Cに示すように、第2ハトメ22は、シューレース3が接触する平滑な円筒形の接触部22aを備えている。そのため、金属製の接触部22aとシューレース3との摩擦力は小さく、前記シューレース3と第2ハトメ22との摩擦力は、第1ハトメ21u,21dとの摩擦力よりも小さく設定されている。
第2ハトメ22は、留め具22bを介してメインアッパー2Mに対して回転自在に固定されている。シューレース3により第2ハトメ22が引っ張られると、第2ハトメ22が、矢印で示すように留め具22bの回動中心Oを中心に回動される。
【0062】
図8に示すように、シューレース3の第2部32は、第2開口P2の爪先側第1ハトメ21dから、中間の第2ハトメ22を通ることなく、前記両サイドパネル51,52(図5,図6)の第3ハトメ23を通る。更に、第2部32は、第2開口P2の足首側第1ハトメ21uを通るように配置される。こうして、第2部32は第2開口P2を斜めに横切ることを繰り返し、爪先側第1ハトメ21d、第3ハトメ23,23および足首側第1ハトメ21uを通る。
【0063】
図9に示すように、シューレース3の第3部33は、内側INにおける足首側第1ハトメ21uから延び出る。
シューレース3の第4部34は、外側OUTにおける足首側第1ハトメ21uから延び出る。
【0064】
前記第3ハトメ23は、舌片4の上方Z1で、かつ、締付時にシューレース3の第1部31の下方Z2に配置される。シューレース3の第2部32は、第1部31の下方Z2を通っている。
【0065】
調整方法:
図9に示すようにシューレース3を第1〜第3ハトメ21u,21d,22、23に通した後、シューレース3の第3部33と第4部34とを互いに結ぶ。
【0066】
ここで、図5および図6に示すアーチFrを強く締め付け、爪先T部分等を自由に動かしたい場合には、図9に示す第3部33の張力を小さくすると共に、シューレース3の第4部34を引っ張る。
図9に示すように、第1サイドパネル51の第3ハトメ23と、第2サイドパネル52の第3ハトメ23とが、足長方向Yに延びる仮想のラインLを中心として、互いに斜め向かいに配置されている。そのため、第4部34を引っ張ると、一対の第3ハトメ23,23を介して図4のサイドパネル51,52が互いに近づき、サイドパネル51,52が図5および図6のアーチFrにフィットし、当該アーチFrが締め付けられる。
【0067】
一方、図9のシューレース3と第2ハトメ22との摩擦力は、シューレース3と第1ハトメ21u,21dとの摩擦力よりも小さく設定されているので、第3部33を緩めることで、簡単にメインアッパー2Mによる内側面S1および外側面S2に対する締付力を緩めることができる。
【0068】
メインアッパー2Mを足全体に概ね均等にフィットさせたい場合には、シューレース3の第4部34だけでなく第3部33を引っ張ることにより、サイドパネル51,52だけではなく、第2ハトメを介してメインアッパー2Mの内側面S1と外側面S2とが互いに引き寄せられ、サイドパネル51,52およびメインアッパー2Mが足全体にフィットする。
【0069】
第2実施例:
以下、本発明の第2実施例が図10〜図12を参照して説明される。
図10に示すように、本第2実施例の靴には、第1および第2サイドパネル51,52が設けられている。図11および図12に示すように、各サイドパネル51,52の前縁5aおよび後縁5bの双方は、上部および下部において、メインアッパー2Mに接合されていない。
その他の構成は、第1実施例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
第3実施例:
以下、本発明の第3実施例が図13Aおよび図13Bを参照して説明される。
図13Aおよび図13Bに示すように、本実施例3のメインアッパー2Mにおいて、第1および第2サイドパネル51,52の後方Y2にU字状の切欠部200が設けられている。前記各サイドパネル51,52の後縁が前記内装材11に連なっていることでメインアッパー2Mに拘束されている。前記各サイドパネル51、52は前記内装材11とは異なる合成皮革の張り材が前記内装材11に貼り合わされていてもよい。
前記各サイドパネル51、52における第3ハトメ23を設けた上部100は、メインアッパー2Mの外装材12にその全面において接合されていない。したがって、前記上部100は外装材12から離れて足の側面や甲にフィットすることが可能である。
一方、各サイドパネル51、52は、太い破線で示すように、前縁5aの下部、後縁5bの下部および上下の中間の部位において、外装材12に糸102で縫合されて接合されている。したがって、各サイドパネル51、52の下部101は外装材12に接合されて外装材12から離れることなく、足の側面にフィットしたり、足の側面から離れた状態で対面する。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
第4実施例:
以下、本発明の第4実施例が図14A〜図15Bを参照して説明される。
図14Aに示すように、本実施例4の靴は、舌片4の両側部と、メインアッパー2Mとが接合材25を介してそれぞれ互いに接合されている。
前記接合材25により、舌片4とメインアッパー2Mとの隙間から砂や雨、泥水などが靴内に侵入するのを防止することができる。
接合材25としては、たとえば、溌水および通気性を有する素材を用いるのが好ましい。
【0072】
本実施例においては、内装材11は前記接合材25の内面および舌片4の内面に連なっていると共に、足の概ね全面を覆っている。足の内外のアーチFrの部位において、前記内装材11と外装材12とが互いに面接合されていない袋状の第1および第2袋部13A,13Bが形成されている。
図15Bに示すように、各袋部13A,13B内において、前記各サイドパネル51,52は内装材11と外装材12とに挟まれた位置に配置されている。
【0073】
前記第1および第2袋部13A,13Bは、それぞれ前記アッパー内部の空間において開口する第1および第2スリット14A,14Bを有している。前記第1袋部13Aには前記第1サイドパネル51の下部が収納されていると共に前記第1サイドパネル51の上部が第1スリット14Aから延び出ている。前記第2袋部13Bには第2サイドパネル52の下部が収納されていると共に前記第2サイドパネル52の上部が前記第2スリット14Bから延び出ている。
【0074】
前記各スリット14A,14Bの長さは、各サイドパネル51,52の前後方向の幅よりも若干大きい。そのため、前記各スリット14A,14Bは前記各サイドパネル51,52が前後方向に位置ズレするのを抑制する。
【0075】
前記各サイドパネル51,52の下部は、前記各袋部13A,13B内に収納されている。そのため、図15Aのように、各サイドパネル51,52がシューレース3で締め付けられて、各サイドパネル51,52が足の中央に引き寄せられた際に、図14Aの内装材11が前記サイドパネル51,52の下部の移動を抑制する。つまり、本実施例では、第1および第2袋部13A,13Bが第1および第2抑制手段10A,10Bを構成する。
【0076】
本実施例の場合、前記スリット14A,14Bは接合材25に設けられているが、接合材25ではなく内装材11に設けられてもよい。たとえば、接合材25が設けられておらず、かつ、内装材11が外装材12の内表面に設けられている場合、内装材11と外装材12との間の袋部から、内装材11に設けられたスリットを介してサイドパネル51、52が延び出てもよい。
【0077】
図15Aにおいて、前記一対のサイドパネル51,52は、互いに対面する位置に設けられている。つまり、第1および第2サイドパネル51,52は、足長方向の同じ位置に設けられている。
その他の構成は、実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
【0079】
たとえば、第2サイドパネルは、第1サイドパネルに相対する位置やその前方または後方に位置していてもよい。
第2ハトメは、1つのサイドパネルに2個以上設けられていてもよい。
【0080】
また、シューレース3は2本以上であってもよい。
さらに、サイドパネルの下端はソールに付着されていなくてもよい。
また、舌片を設けなくてもよい。舌片を設けない場合、たとえば内側面および外側面の双方に櫛歯状のパネルを設け、第1サイドパネルと第2サイドパネルとが互い違いに足の甲を覆ってもよい。
【0081】
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、トレッキングシューズ等の運動靴の他、様々な靴に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐締めフィッティング構造を備えた靴であって、
着地の衝撃を吸収するソールと、足の甲を包むアッパーと、前記アッパーを足の甲にフィットさせるためのシューレース手段とを有し、
前記アッパーは、着用時に脚が上方に出る第1開口と、前記第1開口の前方に設けられた第2開口とを有しており、前記2つの開口は、前後に互いに連なっており;
前記アッパーは、
足の内側面、外側面、爪先および背面を覆うメインアッパーと、
前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍および前記第2開口の足首近傍に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第1ハトメと、
前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍の前記第1ハトメと前記足首近傍の前記第1ハトメとの間に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第2ハトメと、
前記メインアッパーの内部の空間において前記内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、
前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、
前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられ前記シューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメとを備え、
少なくとも、前記各サイドパネルにおける前記第3ハトメを設けた近傍を含む上部が前記メインアッパーに接合されておらず、
前記第1サイドパネルの前記第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとが、足長方向に延びる仮想のラインを中心として、互いに斜め向かいに配置され、
前記シューレース手段が前記第1サイドパネルの第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとを連続的に通っている靴。
【請求項2】
請求項1において、前記各サイドパネルの下端はアッパーおよび/またはソールに付着されている靴。
【請求項3】
請求項2において、前記各サイドパネルの後縁の上部および各サイドパネルの前縁の上部は前記メインアッパーに接合されておらず、かつ、前記各サイドパネルの前記後縁および/または前縁の下部は前記メインアッパーに接合されている靴。
【請求項4】
請求項2において、前記サイドパネルの前縁および後縁の双方が前記メインアッパーに接合されていない靴。
【請求項1】
紐締めフィッティング構造を備えた靴であって、
着地の衝撃を吸収するソールと、足の甲を包むアッパーと、前記アッパーを足の甲にフィットさせるためのシューレース手段とを有し、
前記アッパーは、着用時に脚が上方に出る第1開口と、前記第1開口の前方に設けられた第2開口とを有しており、前記2つの開口は、前後に互いに連なっており;
前記アッパーは、
足の内側面、外側面、爪先および背面を覆うメインアッパーと、
前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍および前記第2開口の足首近傍に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第1ハトメと、
前記第2開口の側縁に沿って設けられ、前記第2開口の爪先近傍の前記第1ハトメと前記足首近傍の前記第1ハトメとの間に配置され、前記シューレース手段が通過すると共に係合する複数の第2ハトメと、
前記メインアッパーの内部の空間において前記内側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の内側面に巻き付く第1サイドパネルと、
前記メインアッパーの内部の空間において前記外側面に沿って上方ないし斜め上方に向って前記足の外側面に巻き付く第2サイドパネルと、
前記第1および第2サイドパネルの先端に各々設けられ前記シューレース手段が通過すると共に係合する第3ハトメとを備え、
少なくとも、前記各サイドパネルにおける前記第3ハトメを設けた近傍を含む上部が前記メインアッパーに接合されておらず、
前記第1サイドパネルの前記第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとが、足長方向に延びる仮想のラインを中心として、互いに斜め向かいに配置され、
前記シューレース手段が前記第1サイドパネルの第3ハトメと前記第2サイドパネルの第3ハトメとを連続的に通っている靴。
【請求項2】
請求項1において、前記各サイドパネルの下端はアッパーおよび/またはソールに付着されている靴。
【請求項3】
請求項2において、前記各サイドパネルの後縁の上部および各サイドパネルの前縁の上部は前記メインアッパーに接合されておらず、かつ、前記各サイドパネルの前記後縁および/または前縁の下部は前記メインアッパーに接合されている靴。
【請求項4】
請求項2において、前記サイドパネルの前縁および後縁の双方が前記メインアッパーに接合されていない靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−236041(P2012−236041A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158583(P2012−158583)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2009−537828(P2009−537828)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2009−537828(P2009−537828)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
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