説明

紐締め具

【課題】簡単な構造で幅広の紐を確実に締め付けて、張力を付与することができる紐締め具を提供する。
【解決手段】 板状の第一側面板12と、第一側面板12の一側面から立ち上がる縦長部材である巻付部14と、巻付部14を長手方向に分割したスリット状の差込部18を有する。巻付部14の先端付近には、第一側面板12に対向する第二側面板30を備える。巻付部14の先端には、フランジ部が16一周して設けられている。フランジ部16には、第二側面板30がその長手方向の一端部付近で揺動可能に取り付けられている。第二側面板30の巻付部14と反対側の自由端部付近には、回転止め部34が一体に設けられている。第一側面板12の巻付部14と反対側の端部には、回転止め部34の先端が保持される保持突起26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製のシートやその他の部材を枠組み等に固定する際に用いられる紐締め具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室のビニールシートを枠組みに固定する際は、ビニールシートの表面に押さえ用の扁平な紐を掛け渡し、その紐の両端部を枠組みの枠材に結び付けて固定していた。しかし、紐の長さを調節する場合や紐の張りを強くする際は、枠材に結びつける紐の端部を引っ張って締め付けており、その作業が面倒なものであった。また、紐の締め付け途中で紐自体が弛んでしまいやすく、十分な締め付けができなかった。そこで、これを解決するために、特許文献1、2に開示されているように、紐の結び付けと、締め付け作業を容易にする紐締め具が提供されている。
【特許文献1】特開平11−308931号公報
【特許文献2】登録実用新案公報3072020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の特許文献1、2の場合、いずれも幅が細い紐を用いたものであった。特許文献1に開示されている紐締め具を幅が広い紐に使用するときは、巻き付け部と回転止め部を紐の幅に合わせて長く形成しなければならず、また紐を巻き付け部に巻き回すときに回転止め部が支障となり、係止部が紐の通路上から退避させるために紐を捻らなければならず、紐にゆるみが生じて十分な締めができなかった。また、特許文献2に開示されているビニールハウス用扁平紐の固定具も同様に、紐巻と回転止めを紐の幅に合わせて長くしなければならず、また回転止めが紐の通路上から退避するように捻らなければならず、紐を効率良く強く締めることができなかった。
【0004】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で幅広の紐を確実に締め付けて、張力を付与することができる紐締め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、板状の第一側面板と、前記第一側面板の一側面から立ち上がる縦長部材である巻付部と、前記巻付部を長手方向に分割したスリット状の差込部と、前記巻付部の先端付近に設けられ前記第一側面板に対向する第二側面板と、前記第一側面板と前記第二側面板の間に設けられ前記第一側面板と前記第二側面板を着脱自在に連結する回転止め部が設けられている紐締め具である。
【0006】
また、前記第一側面板と前記第二側面板は、一方向に長い形状に形成され、前記第一側面板の長手方向の一端部付近に前記巻付部が設けられている。前記巻付部の先端にはフランジ部が一周して設けられている。前記フランジ部には、前記第二側面板が前記第二側面板の長手方向の一端部付近で揺動可能に取り付けられ、前記第二側面板の前記巻付部と反対側の自由端部付近には前記回転止め部が一体に設けられている。そして前記第一側面板の前記巻付部と反対側の端部には、前記回転止め部の先端が保持される保持突起が設けられている。
【0007】
また、前記保持突起は、前記第一側面板の一側面から突出する筒状に形成され、内周面の断面形状は、前記第二側面板の揺動に伴って移動する前記回転止め部先端の軌跡に沿った方向に長い楕円形に形成されている。
【0008】
また、前記第二側面板には、前記第一側面板に対して略平行な位置に閉じられたときに前記巻付部に弾性的に係止する複数の係止部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紐締め具は、簡単な構造で、幅広の紐を確実に枠材等に連結し、また紐を弛みなく締め付けて、シートやその他の部材の取り付けを強固にすることができる。これにより、締め付け用の紐の扱いが簡単になり、弛んだ紐の張力調整も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の紐締め具10は、板状の第一側面板12が設けられている。第一側面板12は、一方向に長い形状に形成され、長手方向の一端部12aは大きい半径の円弧状に形成され、他方の端部12bはそれより小さい半径の円弧状に形成されている。第一側面板12は、長手方向に沿う両側縁部が端部12bから端部12aに向かって徐々に離れて、幅広になるように形成されている。
【0011】
第一側面板12の一方の側面12cには、端部12aの円弧の中心付近から、側面12cに対してほぼ直角に突出して、円柱状の巻付部14が一体に設けられている。巻付部14の先端にはフランジ部16が設けられている。フランジ部16は、第一側面板12に対してほぼ平行に、つまり巻付部14の軸方向に対してほぼ直角に、巻付部14の周縁部を一周して突出している。巻付部14とフランジ部16には、巻付部14の長手方向に沿って中心軸から2分割するスリット状の差込部18が形成されている。差込部18は、フランジ部16と巻付部14を長手方向に貫通して、第一側面板12の側面12cに達している。また差込部18を形成する面は、第一側面板12の長手方向に対して直交する方向に形成され、巻付部14とフランジ部16の半径方向に貫通している。
【0012】
フランジ部16の、巻付部14側とは反対側の側面16aには、差込部18よりも第一側面板12端部12a側に、L字形突起20が形成されている。L字形突起20はフランジ部16の側面16aからほぼ直角に立ち上がり、先端は第一側面板12端部12a側へほぼ直角に折り曲げられている。L字形突起20は、差込部18の端縁部18aに沿って同形の3個が等間隔に設けられている。フランジ部16の側面16aには、差込部18よりも第一側面板12中心側に、後述する第二側面板30を係止する係止部である一対のコの字形突起22が形成され、コの字形突起22の近傍には同じく係止部である凹部24が形成されている。
【0013】
第一側面板12の側面12cには、端部12bの円弧の中心付近に、後述する回転止め部34が嵌合される円筒形の保持突起26が形成されている。保持突起26の内側の円筒形の空間の形状は、後述する回転止め部34が差し込まれるときの軌跡に沿った形状、つまり第一側面板12の端部12b側へ長く形成された楕円形状に形成されている。
【0014】
第一側面板12の側面12cと反対の側面12dには、板状の補強部28が設けられている。補強部28は、第一側面板12の長手方向に沿って、端部12aから端部12bにかけて形成されている。補強部28の、第一側面板12の長手方向に直交する厚みは一定であり、長手方向に平行な形状は、両端部付近で外側に2箇所膨出する波形である。
【0015】
フランジ部16の側面16aには、第一側面板12に対して平行な第二側面板30が連結されている。第二側面板30は、一方向に長く第一側面板12よりは短い形状に形成され、長手方向の一端部30aは、第一側面板12の端部12aの直径の約半分程度の幅である。端部30aの形状は、フランジ部16に形成された3個のL字形突起20を両側から挟むコの字形に形成され、コの字形の開口端には、L字形突起20の角部内側に差し込まれ回転可能に係止される軸部32が一体に形成されている。第二側面板30の他方の端部30bは、第一側面板12の端部12bとほぼ等しい半径の円弧状に形成されている。第二側面板30の長手方向に沿う両側縁部は、中心に近づくにつれて徐々に近くなる鼓形に似た形状である。
【0016】
第二側面板30の、第一側面板12に対面する側面30cには、端部30bの円弧の中心付近から、側面30cに対してほぼ直角に、丸棒状の回転止め部34が一体に設けられている。回転止め部34の長さは、第一側面板12の巻付部14の長さとほぼ等しい。第二側面板30の側面30cには、フランジ部16の縁部に弾性的に係止されるフック部36と、コの字形突起22に嵌合される円形突起38、凹部24に嵌合される凸部40が形成されている。
【0017】
第二側面板30は、フランジ部16のL字形突起20内で軸部32が回転することにより揺動自在に設けられている。回転止め部34の先端が第一側面板12の保持突起26に保持されているときは、第一側面板12と第二側面板30が互いに平行になり、第二側面板30のフック部36、円形突起38、凸部40が、それぞれフランジ部16の端縁部、コの字形突起22、凹部24に係止され、不用意に開くことを防いでいる。そして第二側面板30を第一側面板12から引き起こして係止を解除すると、第二側面板30はフランジ部16のL字形突起20に軸止された棒部32の軸周りを中心として揺動可能となり、約180度まで任意の角度に開く。
【0018】
次に、この紐締め具10の使用方法について図3に基づいて説明する。先ず、幅が広い紐42を所定の被締め付け部材46の表面に掛け渡し、その端部42aを被締め付け部材46の下端部近くでほぼ水平に組まれた枠材44に一回巻き回して上方に折り返す。そして、図3(a)に示すように、枠材44より少し上方で、折り返されて2重に重ねた紐42に、紐締め具10を、第二側面板30を開いた状態にして、差込部18に2重の紐42を差し込み、巻付部14を紐42へ交差して重ねる。紐42に弛みがある場合、図3(b)のように紐締め具10の第一側面板12を、端部12bを紙面厚み方向の向こう側へ回しながら半回転させ、巻付部14に紐42を巻き付けて紐42を短くし、適宜この操作を繰り返して弛みをなくす。そして、図3(c)に示すように第二側面板30を閉じて回転止め部34を保持突起26に差し込み、回転止め部34が紐42に当接して、紐締め具10が逆戻りすることを防ぐ。
【0019】
ここで、弛みが残っているときは、図3(d)のように第一側面板12をさらに180度回転させた後、第二側面板30を閉じて、紐42に弛みを解消する。なお、紐42の弛みがなくなるまで、第一側面板12は何回転させてもよく、図3と反対方向に回転させて巻付部14に紐42を巻き回してもよい。第二側面板30を止める位置は、図3(c)(d)のどちらでもよく、紐42の張り具合が適した方を選択することができる。第一側面板12を回転させたり、回転を止めたりするときに補強部28を保持して行ってもよい。
【0020】
また、取り外すときは、紐42に当接している回転止め部34を、第二側面板30を開いて外すことにより、簡単に紐42から外すことができる。
【0021】
この実施形態の紐締め具10によれば、簡単な構造で確実に幅が広い紐42の弛みを解消することができる。紐42に紐締め具10を係止するときに紐42をねじったりすることがなく、簡単で確実に弛みなく係止して、ビニールハウス等の被締め付け部材46の締め付けを効率よく行うことができる。また、第一側面板12、補強部28、第二側面板30は丸みを帯びた形状であり、紐42やビニールシート等に傷を付ける恐れがなく、安全である。紐締め具10は、巻付部14に紐42を半回転巻き回す毎に係止することができるため、紐42の締め具合を細かく調整することが可能である。フランジ部16と第二側面板30は、第二側面板30のフック部36、円形突起38、凸部40が、それぞれフランジ部16の端縁部、コの字形突起22、凹部24に弾性的に係止され、閉じられているため、不容易に開くことがなく、安全である。また、開くときは力を加えれば容易に開き、紐42から紐締め具10を外すことができる。
【0022】
なお、この実施形態の紐締め具によれば、上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の形状や数など自由に変更可能である。差込部に入る範囲であれば、どんな幅の紐にも対応可能であり、細い紐や断面が丸い紐でも使用することができる。また、巻付部の先端のフランジ部は第二側面板と一体に設けられ、第二側面板に揺動可能な回転止め部が取り付けられたもの等でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の紐締め具の正面図である。
【図2】この実施形態の紐締め具の平面図である。
【図3】この実施形態の紐締め具の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 紐締め具
12 第一側面板
14 巻付部
16 フランジ部
18 差込部
20 L字形突起
26 保持突起
28 補強部
30 第二側面板
34 回転止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第一側面板と、前記第一側面板の一側面から立ち上がる縦長部材である巻付部と、前記巻付部を長手方向に分割したスリット状の差込部と、前記巻付部の先端付近に設けられ前記第一側面板に対向する第二側面板と、前記第一側面板と前記第二側面板の間に設けられ前記第一側面板と前記第二側面板を着脱自在に連結する回転止め部が設けられていることを特徴とする紐締め具。
【請求項2】
前記第一側面板の前記巻付部には、前記第二側面板が揺動可能に取り付けられ、前記第二側面板の前記巻付部と反対側の自由端付近には前記回転止め部が一体に設けられ、前記第一側面板には、前記回転止め部の先端が保持される保持突起が設けられていることを特徴とする請求項1記載の紐締め具。
【請求項3】
前記保持突起は、前記第一側面板の一側面から突出する筒状に形成され、内周面の断面形状は、前記第二側面板の揺動に伴って移動する前記回転止め部先端の軌跡に沿った方向に長い楕円形に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の紐締め具。
【請求項4】
前記第二側面板には、前記第一側面板に対して対面する位置に閉じられたときに前記巻付部に係止する複数の係止部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の紐締め具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−68442(P2007−68442A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257349(P2005−257349)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(505337032)
【出願人】(504158191)有限会社プリズム (1)
【出願人】(597029446)
【Fターム(参考)】