説明

純水中の微粒子数測定用の濾過装置および微粒子数測定方法

【課題】純水の濾過時間を短縮することで、純水中の微粒子数測定に要する時間を短縮することができる濾過装置を提供する。
【解決手段】純水中の微粒子数を測定するのに用いる濾過装置1は、濾過膜11を含む濾過手段10と、濾過手段10に純水を供給する純水供給手段20と、濾過手段10に供給される純水を濾過膜11を介して吸引する純水吸引手段30と、濾過手段10に供給され、濾過膜11を通過する純水を加熱する加熱手段70と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水中の微粒子数測定用の濾過装置および微粒子数測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスなどの半導体製造分野や医薬品製造分野など、様々な分野で、イオン成分や有機物、微粒子などの不純物が高度に除去された超純水などの純水が使用されている。純水の純度(水質)に対する要求は年々高まってきており、それに伴い、純水の水質評価のための高度な分析技術も求められている。
【0003】
純水中に含まれる不純物のうち、微粒子を測定する方法としては、レーザ散乱を利用した液中パーティクルカウンタ(PC)法や、濾過膜で超純水を濾過したときに濾過膜上に捕捉される微粒子を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて測定する直接検鏡法(以下、直検法という)がある。
【0004】
PC法では、オンラインでの評価が可能であるという利点があるが、50nmよりも粒径の小さな粒子の場合、散乱光強度が小さい、計数効率が低いといった理由から、正確な計測が困難になるという問題が生じてしまう。
【0005】
その一方で、直検法は、原理的には測定対象の微粒子の粒径よりも孔径が小さい濾過膜を使用すれば、粒径が50nm未満の微粒子を測定することも可能である。ただし、直検法においても、測定の信頼性を確保するには、濾過膜に捕捉される微粒子数が濾過膜自身に初めから含まれている微粒子数と同数か、またはそれ以上となるように、大量の純水を濾過膜で濾過する必要がある。したがって、直検法による微粒子測定方法では、十分な数の微粒子を濾過膜で捕捉するために、純水の濾過に長時間を要することが問題となっていた。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1には、濾過膜に供給される純水を加熱することで、純水の粘度を低下させ、濾過に要する時間を短縮する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3040292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
純水、特に超純水の水質評価には、より小さい粒径の微粒子を測定対象とすることが求められている。測定対象となる微粒子の粒径が小さくなるほど、濾過膜の孔径を小さくする必要があり、それによって、濾過速度はより低下する。したがって、より小さい粒径の微粒子の計測精度を向上させるには、純水の濾過にさらに長時間を要することになる。これに対して、上述の特許文献1に記載の方法は十分な効果を発揮しているとは言えず、さらなる濾過時間の短縮が求められていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、純水の濾過時間を短縮することで、純水中の微粒子数測定に要する時間を短縮することができる濾過装置および微粒子数測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、純水中の微粒子数を測定するのに用いる本発明の濾過装置は、濾過膜を含む濾過手段と濾過手段に純水を供給する純水供給手段と、濾過手段に供給される純水を濾過膜を介して吸引する純水吸引手段と、濾過手段に供給され、濾過膜を通過する純水を加熱する加熱手段と、を有している。
【0011】
また、純水中の微粒子数を測定する本発明の微粒子測定方法は、濾過膜を含む濾過手段に純水を供給し、濾過手段で純水を濾過する工程と、濾過手段で純水を濾過した後、濾過膜を観測し、濾過膜上に捕捉された微粒子数を測定する工程と、を含み、純水を濾過する工程が、濾過手段に供給される純水を、加熱手段によって加熱しながら、純水吸引手段によって濾過膜を介して吸引することを含んでいる。
【0012】
このような濾過装置および微粒子測定方法では、純水中の微粒子を捕捉するために微粒子捕捉器の濾過膜で純水を濾過する際に、微粒子捕捉器に供給される純水を、加熱手段によって加熱するとともに、純水吸引手段によって濾過膜を介して吸引する。これにより、濾過膜を通過する際にガス化可能な温度にまで純水の温度を容易に上げることが可能となり、それによって、純水の粘度を大幅に低下させることが可能となる。その結果、加熱による効果と吸引による効果との相加効果から予想される以上に濾過速度を増加させることができ、純水の濾過時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、純水の濾過時間を短縮することで、純水中の微粒子数測定に要する時間を短縮することができる濾過装置および微粒子数測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の構成を示す概略図である。
【図2】微粒子捕捉器の構成例を示す分解斜視図である。
【図3】実施例および比較例の濾過装置における濾過速度の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る濾過装置の構成について説明する。図1は、本実施形態の濾過装置の構成を示す概略図である。図2は、本実施形態の濾過装置に使用する微粒子捕捉器の構成例を示す分解斜視図である。
【0017】
なお、本実施形態の濾過装置の対象となる純水は、例えばイオン交換樹脂や逆浸透膜など、あるいはこれらを組み合わせた一次純水システムによって処理された一次純水に限定されるものではない。例えば、紫外線酸化装置、カートリッジポリッシャー、限外濾過装置などを組み合わせた二次純水システム(サブシステム)によって一次純水を処理した超純水の他、水素水のようないわゆる機能水を含む概念であることに留意されたい。また、以下の説明において、濾過水とは、濾過膜を通過した後の純水を意味するものとする。
【0018】
本実施形態の濾過装置1は、試料である純水を濾過して、純水中の微粒子を捕捉するための濾過膜11を含む微粒子捕捉器(濾過手段)10と、微粒子捕捉器10に純水を供給する純水供給手段20とを有している。純水供給手段20は、微粒子捕捉器10と純水供給源23とを接続し、純水供給源23中を流れる純水を微粒子捕捉器10に供給する純水供給管21と、純水供給管21に設けられたバルブ22とによって構成されている。なお、本実施形態では、純水供給源23が、純水製造装置などの純水供給ラインから微粒子数測定用に分岐した配管として構成されているが、例えば、純水供給管21が純水供給ラインに直接接続するように構成されていてもよい。
【0019】
また、濾過装置1は、濾過水流入管31を介して微粒子捕捉器10に接続され、微粒子捕捉器10に供給される純水を濾過膜11を介して吸引するようになっている純水吸引手段30を有している。さらに、濾過装置1は、微粒子捕捉器10に供給され、濾過膜11を通過する純水を加熱するための加熱機(加熱手段)70を有している。
【0020】
濾過膜11を内部に収容する微粒子捕捉器10は、濾過膜11の一次側に設けられ、試料である純水を導入する流入口10aと、濾過膜11の二次側に設けられ、濾過膜11を通過した純水(濾過水)を流出させる流出口10bとを有している。流入口10aは、純水供給管21を介して純水供給源23に接続されており、流出口10bは、濾過水流入管31を介して純水吸引手段30に接続されている。これにより、微粒子捕捉器10は、濾過膜11の一次側で純水供給源23に連通し、濾過膜11の二次側で純水吸引手段30に連通することになる。微粒子捕捉器10の構成例の詳細については後述する。
【0021】
加熱機70は、微粒子捕捉器10を加熱するように設けられており、それにより、微粒子捕捉器10内を流れる純水を加熱するようになっている。加熱機70の構造は特に限定されないが、本実施形態では、使用される微粒子捕捉器10の比表面積が小さく、熱効率が良くないため、加熱機70は、微粒子捕捉器10の外面を覆うように微粒子捕捉器10に密着して設けられていることが好ましい。
【0022】
濾過装置1には、加熱機70の加熱量を制御する温度コントローラ(制御手段)80が設けられている。それに応じて、微粒子捕捉器10の内部には、濾過膜11を通過する際の純水の温度を検出する温度モニタ(温度検出手段)81が設けられている。温度コントローラ80は、この温度モニタ81によって検出される純水の温度に基づいて動作するようになっている。すなわち、温度コントローラ80は、加熱機70の加熱量を制御して、濾過膜11を通過する際の純水の温度を所定値となるように調節する。
【0023】
なお、温度モニタ81としては、熱電対が好適に用いられる。この場合、温度モニタ81は、図1に示すように、濾過膜11を通過した直後の濾過水の温度を検出するようになっていることが好ましく、すなわち、濾過膜11の直下(二次側)に設けられていることが好ましい。これにより、熱電対からの金属成分の溶出による微粒子数測定精度の低下を抑制することができる。
【0024】
純水吸引手段30は、微粒子捕捉器10からの濾過水を収容する密閉容器40と、配管62を介して密閉容器40に接続され、密閉容器40の内部に負圧を発生させる負圧発生手段61とを有している。密閉容器40と負圧発生手段61との間の配管62上には、バルブ63が設けられている。
【0025】
密閉容器40は、容器本体41と、図示しない架台に固定された容器蓋42とを有している。容器本体41は、容器蓋42との間に設けられた気密性部材43を介して、ボルト44によって容器蓋42に固定されており、その結果、密閉容器40の内部の高い密閉性が保持されている。また、容器蓋42には、濾過水流入管31が貫通して設けられており、それにより、密閉容器40の内部と、微粒子捕捉器10の濾過膜11の二次側とが連通することになる。さらに容器蓋42には、負圧発生手段61に接続された配管62と、後述する負圧解除手段48を構成する配管46とが、それぞれ貫通して設けられている。
【0026】
密閉容器40は、密閉容器40の内部を任意の圧力まで減圧した際に、変形や破損などが生じないような耐圧性を有していればよい。密閉容器40の材質としては、密閉容器40の内部圧力と厚さ容器壁厚などを勘案して選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニルなどの樹脂、ガラス、ステンレス(SUS)などが挙げられる。また、本実施形態では、密閉容器40は円筒状に形成されているが、これに限定されず、上述の材質などを勘案して所望の耐圧性が得られる形状であればよい。また、気密性部材43としては、密閉容器40の内部の高い気密性を保持する機能が備えられていればよく、例えば、樹脂製のガスケットやパッキンが挙げられる。
【0027】
純水吸引手段30の負圧発生手段61は、密閉容器40の内部に負圧を発生させ、任意の圧力まで減圧できる手段であればよく、例えば真空ポンプやエゼクターなどが好適に用いられる。
【0028】
さらに、純水吸引手段30は、密閉容器40に設けられた濾過水排水手段を有している。濾過水排水手段は、密閉容器40に収容された濾過水を排水するために設けられており、密閉容器40内の負圧を解除する負圧解除手段48と、密閉容器40に接続された排水ポンプ54とから構成されている。
【0029】
負圧解除手段48は、密閉容器40の上部に設けられており、容器蓋42を貫通して設けられた配管46と、配管46上に設けられたバルブ47とから構成されている。
【0030】
排水ポンプ54は、密閉容器40の底面付近の側面に設けられた配管51を介して、密閉容器40に接続されている。配管51の、排水ポンプ54の二次側には、排水ポンプ54によって密閉容器40から排水される濾過水の流量を積算することで、濾過膜11を通過した濾過水の量を測定する濾過水量測定手段としての積算流量計55が設けられている。一方、配管51の、排水ポンプ54の一次側には、濾過水が密閉容器40から排水ポンプ54に向かって流れるのを許容し、排水ポンプ54から密閉容器40に向かって流れるのを阻止する逆止弁52が設けられている。これに加えて、逆止弁53と密閉容器40との間の配管51上には、バルブ52が設けられている。
【0031】
なお、濾過水量測定手段としては、濾過膜11を通過した濾過水の量を測定できる構成であればよく、例えば、密閉容器に収容された濾過水の重量や体積を測定する手段であってもよい。
【0032】
濾過水が加熱機70によって高温に加熱されていると、濾過水は密閉容器40内で蒸発する場合がある。その場合、積算流量計55で計測した濾過水の積算排水量が、実際に濾過膜11を通過した濾過水の水量と一致しなくなる虞がある。そのような測定誤差が生じるのを防ぐために、密閉容器40には、密閉容器40に収容された濾過水を冷却する冷却手段45が設けられている。冷却手段45の構成は、濾過水を冷却できるものであれば特に限定されず、例えば、熱交換型や放熱型の冷却器を用いることができる。
【0033】
ここで、微粒子捕捉器10の構成例について、図2を参照して説明する。
【0034】
微粒子捕捉器10は、流入口10aが設けられたトッププレート14と、周面上部に雄ねじが形成され、流出口10bが設けられたベースプレート17とを有している。トッププレート14とベースプレート17との間には、上側ガスケット15aと、上側サポートスクリーン16aと、濾過膜11と、下側サポートスクリーン16bと、下側ガスケット15bとが、トッププレート12からベースプレート17に向かってこの順で設けられている。すなわち、濾過膜11は、上側サポートスクリーン16aと下側サポートスクリーン16bとの間に設置されている。また、微粒子捕捉器10は、内側にベースプレート17の雄ねじに嵌合する雌ねじが形成されたロッキングナット12と、ロッキングナット用ワッシャー13とを有している。
【0035】
微粒子捕捉器10は、ロッキングナット用ワッシャー13を介してロッキングナット12をベースプレート17に締め込むことで構成されている。これにより、トッププレート14がベースプレート17に対して固定され、これらの間で、濾過膜11と、上側および下側ガスケット15a,15bと、上側および下側サポートスクリーン16a,16bとが固定されている。
【0036】
なお、微粒子捕捉器10は、純水中の微粒子を捕捉する濾過膜を内部に収容し、その濾過膜に純水を供給できるように構成されていればよい。加えて、密着して設けられた加熱手段によって内部を通過する純水が効率良く加熱されるように、熱伝導性の高い材質や構造を有していればよい。したがって、微粒子捕捉器10は、図2に示す構成に限定されることはなく、例えば、市販のSUS製のシリンジフィルタホルダなどであってもよい。
【0037】
また、濾過膜11は、純水中の測定すべき微粒子を捕捉できればよく、その材質について特に限定されることはない。例えば、純水中の微粒子測定(JIS K0554)に使用されるポリカーボネート膜等の有機膜や、アルミナ製多孔質膜等の無機膜などを使用することができる。このような濾過膜は、市販品として入手可能であり、例えば、有機膜としてはトラックエッチ・ニュークリポアメンブレン(商品名、ワットマン社製)、無機膜としてはアノディスクメンブレン(商品名、ワットマン社製)などがある。
【0038】
本実施形態では、上述のように、微粒子捕捉器10の濾過膜11を通過する純水が、加熱機70によって加熱されるとともに、濾過膜11を介して純水吸引手段30によって吸引されるようになっている。加熱機70による純水の加熱(加熱濾過)は、特許文献1にも記載されているように、加熱によって純水の粘度を低下させ、濾過時間の短縮を図るものである。また、純水吸引手段30による純水の吸引濾過も同様に、濾過膜を通過する際の純水の通過速度、すなわち濾過速度を上げることで、濾過時間の短縮を図るものである。したがって、加熱濾過と吸引濾過とは、それぞれ独立に用いても濾過速度の向上に一定の効果をもたらすものである。
【0039】
しかしながら、本実施形態の濾過装置1では、これらが組み合わされて用いられていることで、加熱濾過と吸引濾過との相加効果以上の効果を得ることができ、さらなる濾過時間の短縮が可能となる。このことは、本願発明者が初めて見出した知見である。
【0040】
濾過膜11の二次側は、濾過水流入管31を介して密閉容器40の内部に連通しているため、密閉容器40の内部が負圧発生手段61によって減圧されると、濾過膜11の二次側も減圧される。その結果、濾過膜11の二次側では、一次側と比べて、純水(濾過水)の沸点がより低温となる。例えば、濾過膜11の一次側、すなわち純水供給源の一次元圧が0.2〜0.3MPa(ゲージ圧)の場合、濾過膜11の一次側での水の沸点は120〜130℃に達する。それに対して、純水吸引手段30の吸引圧力、すなわち密閉容器40内部の圧力を−0.1MPa(ゲージ圧)とすると、濾過膜11の二次側での水の沸点は約45℃である。したがって、このような濾過膜11の二次側での沸点よりも高温の純水を濾過膜11に供給することで、濾過膜11の一次側から二次側へと通過する際に、純水をガス化させることが可能となる。ガス化した純水は、その粘度が急激に減少するため、濾過膜11を通過する際の純水の濾過速度を大幅に増加させることが可能となる。
【0041】
このようにして、本実施形態の濾過装置1では、加熱機70と純水吸引手段30とを組み合わせることで、濾過膜11を通過する際にガス化可能な温度にまで純水の温度を容易に上げることが可能となる。その結果、加熱濾過と吸引濾過との相加効果から予想される以上に濾過速度を増加させることが可能となり、すなわち、濾過膜11を通過する際の純水の粘度を大幅に低下させて、純水の濾過時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0042】
なお、上述のように、濾過膜11の一次側は加圧状態のため、かなりの高温まで加熱しないと、濾過膜11の一次側で純水がガス化することはない。しかしながら、純水の粘度を低下させるという観点から、純水の温度はできるだけ高温であることが好ましく、特に、濾過膜11を通過する際の純水の温度が60℃以上であることが好ましい。これは、水の粘度が、60℃では0.47mPa・sであり、常温(25℃)時の0.89mPa・sと比べて、約50%低下するためである。
【0043】
また、純水の加熱は、濾過膜11を通過する際の純水が所定の温度になるように行われればよく、微粒子捕捉器10以外の部分を加熱するようになっていてもよい。例えば、純水供給管21の外部にヒーターを設け、純水供給管21を通じて純水を加熱したり、あるいは純水供給管21の内部にセラミックヒータなどを設置して、純水を直接加熱したりすることも可能である。しかしながら、例えば純水供給管21を加熱すると、純水供給管21から溶出する微粒子や不純物が濾過膜11で捕捉されてしまい、純水中に含まれる微粒子数の正確な測定ができなくなる虞がある。このことを考慮すると、加熱機70は、本実施形態のように、微粒子捕捉器10を直接加熱して、微粒子捕捉器10内を通過する純水を加熱するようになっていることが好ましい。
【0044】
次に、引き続き図1および図2を参照して、本実施形態の濾過装置を用いた、純水中の微粒子数を測定する方法について説明する。
【0045】
(濾過準備工程)
純水の濾過工程の準備段階として、純水供給管21の洗浄と微粒子捕捉器10の予備加熱とを行う。
【0046】
まず、微粒子捕捉器10を純水供給管21から取り外し、純水供給管21の出口を開放した状態とする。そして、純水供給管21のバルブ22を任意の開度に設定し、純水供給管21に純水を流して純水供給管21の洗浄を行う。
【0047】
任意の時間、純水供給管21の洗浄を行った後、純水供給管21のバルブ22を閉鎖して、密閉容器40が接続された微粒子捕捉器10を純水供給管21に取り付ける。その後、加熱機70を微粒子捕捉器10に取り付け、微粒子捕捉器の加熱を開始する。微粒子捕捉器10の温度が濾過工程での純水の設定温度となるように、温度コントローラ8によって加熱機70の加熱量を制御し、任意の時間、微粒子捕捉器10の予備加熱を行う。全体の加熱時間を短縮するために、純水供給管21に取り付ける前に、微粒子捕捉器10を予め加熱しておいてもよい。
【0048】
(濾過工程)
次に、濾過膜11上に純水中の微粒子を捕捉するために、微粒子捕捉器10で純水の濾過を行う。具体的には、純水の吸引操作と濾過水の排水操作とを繰り返し行い、純水の濾過をオンラインで連続的に行う。
【0049】
純水の吸引操作では、まず、排水ポンプ54と密閉容器40とを接続する配管51上のバルブ52と、負圧解除手段48のバルブ47とを閉鎖する。そして、純水供給管21のバルブ22を開放し、微粒子捕捉器10に純水を供給する。その後、負圧発生手段61を起動させるとともに、負圧発生手段61と密閉容器40との間のバルブ63を開放して、密閉容器40の内部に負圧を発生させる。密閉容器40内が減圧されると、濾過水流入管31を介して密閉容器40に連通した、濾過膜11の二次側も減圧される。こうして、微粒子捕捉器10に供給される純水が、濾過膜11を介して吸引され、すなわち濾過膜で吸引濾過され、純水中に含まれる微粒子が濾過膜11に捕捉される。濾過膜11を通過した濾過水は、微粒子捕捉器10の流出口10bから濾過水流入管31を通じて、密閉容器40内に貯留される。このとき、密閉容器40内の濾過水の貯留量を、例えば密閉容器40に設置された水位計などで測定する。
【0050】
濾過水が密閉容器40内に一定量に貯留されたら、純水の吸引操作を一旦停止して、密閉容器40内の濾過水の排水操作を行う。
【0051】
濾過水の排水操作では、まず、負圧発生手段61と密閉容器40との間のバルブ63を閉鎖し、負圧解除手段48のバルブ47を開放する。これにより、負圧解除手段48の配管46から密閉容器40内に空気が流れ込み、密閉容器40内の負圧が解除される。そして、排水ポンプ54と密閉容器40との間のバルブ52を開放するとともに、排水ポンプ54を起動して、密閉容器40内の濾過水を外部へと排水する。この間、積算流量計54で、配管51を流れる濾過水の水量を計測する。密閉容器40に設置された水位計などによって、密閉容器40内の濾過水が一定量排出されたことを確認した後、配管51上のバルブ52を閉鎖するとともに、排水ポンプ54の起動を停止して、濾過水の排水操作を終了する。
【0052】
その後、再び純水の吸引操作を行い、所定量の純水を濾過するまで、すなわち積算流量計54による濾過水の積算排水量が所定量になるまで、純水の吸引操作と濾過水の排水操作とを繰り返し行う。
【0053】
(測定工程)
濾過水の積算排出量が所定量に達し、濾過水の排水操作が完了したら、純水供給管21のバルブ22を閉鎖して、微粒子捕捉器10への純水の供給を停止する。次に、微粒子捕捉器10を純水供給管21および濾過水流入管31から取り外し、クリーンベンチなどの清浄な環境下で、微粒子捕捉器10から濾過膜11を取り出す。取り出した濾過膜11の表面を顕微鏡観測し、濾過膜11に捕捉された微粒子を計数する。なお、この微粒子数の測定は、JIS K0554に準拠して行われることが好ましい。また、濾過膜11の表面観察には、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの顕微鏡を用いることができ、それらは、測定対象となる微粒子の大きさによって選択することができる。
【0054】
このようにして、濾過膜11上に捕捉された微粒子数の測定が完了する。
【0055】
(実施例)
図1に示す構成の濾過装置を用いて、本発明の効果を確認した。具体的には、実施例として、密閉容器内を負圧にした状態で、加熱された純水の吸引濾過を行い、一定時間に濾過膜を通過する濾過水の水量(濾過速度)を調べた。濾過膜に供給される純水は、温度コントローラで温度制御を行い、その温度が20〜75℃の間で一定となるようにした。純水供給源には、超純水製造装置における超純水を供給する純水供給ラインを用い、したがって、濾過膜に供給される純水として超純水を用いた。純水供給源の一次元圧は0.2MPa(ゲージ圧)、密閉容器内の圧力は−0.099MPa(ゲージ圧)とし、濾過膜には、孔径が0.05μmの、ポリカーボネート製のトラックエッチ・ニュークリポアメンブレン(商品名、ワットマン社製)を用いた。
【0056】
なお、比較例として、密閉容器内を大気圧(0MPa)とし、超純水の加熱温度範囲を20〜80℃とした以外、実施例と同様の条件で純水の濾過を行い、濾過水の濾過速度を調べた。
【0057】
実施例および比較例において、加熱した超純水を濾過膜に1時間通水し、そのときに濾過膜を通過する濾過水の水量から、それぞれの濾過速度を算出した。実際には、超純水の各温度において1時間の通水を複数回行い、そこから得られた平均の濾過速度を各温度での濾過速度とした。結果を図3に示す。なお、図3中に示す点線は、ガイド線である。
【0058】
比較例では、図3に示すように、濾過膜に供給される超純水の温度が上昇するにつれて、濾過速度が全温度範囲で単調に増加していることがわかる。これは、加熱によって超純水の粘度が低下し、それにより、濾過膜を通過する濾過水の水量が増加したためであると考えられる。
【0059】
一方、実施例では、60〜70℃の間で、急激な濾過速度の上昇が観測されている。60℃以下では、比較例に対して全体的な濾過速度の上昇が観測されているが、これは、濾過膜を介して超純水を吸引したことによる効果であると考えられる。それに対して、70℃以上での濾過速度の値は、この吸引濾過による効果と、加熱濾過のみによる効果(比較例)との単純な相加効果から予想される値よりも大きな変化であり、したがって、吸引濾過と加熱濾過との相乗効果によって得られたものであると考えられる。すなわち、上述したように、吸引によって純水(超純水)の沸点が低下し、加熱された超純水の少なくとも一部が濾過膜を通過する際にガス化し、粘度が大幅に低下したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 濾過装置
10 微粒子捕捉器
11 濾過膜
20 純水供給手段
30 純水吸引手段
40 密閉容器
45 冷却手段
46 負圧解除手段
54 排水ポンプ
55 積算流量計
61 負圧発生手段
70 加熱機
80 温度コントローラ
81 温度モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水中の微粒子数を測定するのに用いる濾過装置であって、
濾過膜を含む濾過手段と、
前記濾過手段に純水を供給する純水供給手段と、
前記濾過手段に供給される純水を前記濾過膜を介して吸引する純水吸引手段と、
前記濾過手段に供給され、前記濾過膜を通過する純水を加熱する加熱手段と、
を有する濾過装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、前記濾過手段を加熱する手段である、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、前記濾過手段の外面を覆うように該濾過手段に密着して設けられている、請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過膜を通過する際の純水の温度が所定値となるように、前記加熱手段の加熱量を制御する制御手段を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記濾過膜を通過した直後の濾過水の温度を検出する温度検出手段を有し、前記制御手段が、前記温度検出手段により検出された濾過水の温度に基づいて、前記加熱手段の加熱量を制御するようになっている、請求項1から4のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記純水吸引手段が、前記濾過膜を通過した濾過水を収容するように、前記濾過手段に接続された密閉可能な容器と、該容器の内部に負圧を発生させる負圧発生手段とを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の濾過装置。
【請求項7】
前記容器が、該容器に収容された濾過水を冷却する冷却手段を有する、請求項6に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記純水吸引手段が、前記濾過膜を通過した濾過水の量を測定する濾過水量測定手段を有する、請求項6または7に記載の濾過装置。
【請求項9】
前記純水吸引手段が、前記容器に収容された濾過水を排水する濾過水排水手段を有する、請求項8に記載の濾過装置。
【請求項10】
前記濾過水排水手段が、前記容器内の負圧を解除する負圧解除手段と、前記容器に接続された排水ポンプとを有する、請求項9に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記濾過水量測定手段が、前記容器から排水される濾過水の流量を積算する手段である、請求項9または10に記載の濾過装置。
【請求項12】
純水中の微粒子数を測定する微粒子測定方法であって、
濾過膜を含む濾過手段に純水を供給し、該濾過手段で純水を濾過する工程と、
前記濾過手段で純水を濾過した後、前記濾過膜を観測し、該濾過膜上に捕捉された微粒子数を測定する工程と、を含み、
前記純水を濾過する工程が、前記濾過手段に供給される純水を、加熱手段によって加熱しながら、純水吸引手段によって前記濾過膜を介して吸引することを含む、微粒子測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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