説明

紙の強度およびプロセスのためのスルホポリエステル

スルホポリエステル熱可塑性樹脂は、製紙プロセスおよび紙製品(例えば板紙)において利点を与える。紙製品の湿潤強度および乾燥強度の改善は、スルホポリエステル熱可塑性樹脂およびカチオン性強度付与添加剤を、製紙プロセスの間に添加することによって実現される。紙製品におけるスルホポリエステル熱可塑性樹脂の使用はまた、紙の再パルプ化能を顕著に向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、セルロース系紙の湿潤強度を改善しつつ再パルプ化能を向上させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
湿潤強度付与樹脂(wet strength resin)は、しばしば、板紙等の紙製品に、製造時に添加される。湿潤強度付与樹脂の不存在下では、紙は、通常、水で湿潤された後に、その強度の3%〜5%を保持するに過ぎない。しかし、湿潤強度付与樹脂とともに形成された紙は、一般的に、湿潤時に、その強度の少なくとも10〜50%の強度を保持する。湿潤強度は、広範な紙用途(その幾つかの例は、タオル、ミルクおよびジュースのパック、紙袋、ならびにダンボール容器用のライナーボードである)において有用である。
【0003】
Handbook for Pulp and Paper Technologists,Gary A.Smook,Angus Wilde Publications,1992(これは参照により本明細書に組入れる)に記載されるように、「紙は従来、繊維の水懸濁物から細かいスクリーンの上に形成されたフエルト状のシートとして定義されてきた。現在の紙製品は、一般的には、殆どの製品が非繊維状添加剤も含有することを除けばこの定義と一致する。今では、幾つかの特殊紙製品の製造のために、乾燥形成方法が利用されている。パルプは繊維状の製紙用原料である。パルプ繊維は通常植物由来であるが、動物、鉱物、または合成の繊維を特殊用途のために用いてもよい。紙と板紙との間の区別は製品厚みに基づく。名目上、0.3mmを超える厚みの全てのシートは板紙に分類される;しかし、幾らかあいまいな区別を生じさせるに十分な例外が適用される。」。
【0004】
回収またはリサイクルされたセルロースを基にする紙製品の開発において、商業的な重要性が増大しているため、容易に再パルプ化可能な紙の開発における関心が高まっている。紙および板紙の廃物は、これらが湿潤強度付与樹脂を含有する場合、特別な化学的処理なしでは、水性系における再パルプ化が困難である。
【0005】
湿潤強度付与樹脂を含有する紙の再パルプ化能の改善は、一般的には、再パルプ化条件の調整によって実現されてきた。しかし、湿潤強度紙用の多くの従来の再パルプ化プロセスは、環境的に不所望の塩素含有分解生成物(例えば強い酸化剤)の形成を招来し、または進行が遅い。
【0006】
紙の湿潤および乾燥の強度特性を顕著に低下させることなく容易に再パルプ化可能な紙製品を形成するための、改善された方法に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要約
本発明は、製紙用繊維;カチオン性強度付与添加剤(cationic strength additive);およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂;を含む、再パルプ化可能な紙製品に関する。
【0008】
本発明はまた、セルロース系紙の湿潤強度を改善する方法であって、製紙プロセスの間に、紙に、カチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を添加することを含む、方法に関する。
【0009】
本発明は:製紙用繊維;カチオン性強度付与添加剤;およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂;を含む、紙製品に関する。
【0010】
本発明は、紙の湿潤強度を改善する方法であって、製紙プロセスの間に製紙用繊維にカチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を添加することを含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、本発明の以下の詳細な説明およびそれに含まれる例の参照によってより容易に理解されよう。
【0012】
本発明の主題の組成物および方法を開示および説明する前に、本発明は、特記がない限り具体的な合成方法、または特定の配合に限定されず、そして、それ自体を本開示から変更できることを理解すべきである。用いる専門用語は、特定の態様を説明するのみの趣旨であって本発明の範囲の限定を意図しないことも理解すべきである。
【0013】
単数形”a”,”an”および”the”は、他であることの明確な記載がない限り複数の指示対象を包含する。
【0014】
「任意」または「任意に」は、後続で説明する事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味する。該説明は、該事象または該状況が生じる場合およびそれが生じない場合を包含する。
【0015】
特記がない限り、含有成分、特性,例えば分子量、反応条件、ならびに明細書および特許請求の範囲において記載するものの量を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されると理解すべきである。範囲は、本開示において、約 1の特定値 から、および/または、約 別の1つの特定値 までと表現できる。このような範囲を表現する場合、別の態様は、1つの特定値から、および/または、他の特定の値まで、更に該範囲の中の全ての組合せ、であることを理解すべきである。従って、特記がない限り、以下の説明および特許請求の範囲において記載される数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化できる近似である。最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、記録される有効数字の数を考慮して、および通常の四捨五入法を適用することによって解釈すべきである。更に、本開示および特許請求の範囲で記載する範囲は、全範囲を、具体的に、そして1つまたは複数の端点のみではなく、包含することが意図される。例えば、0〜10と記載される範囲は、0から10の間の全ての整数,例えば1、2、3、4等、および0から10の間の全ての小数,例えば1.5、2.3、4.57、6.113等、ならびに端点0および10を開示することが意図される。
【0016】
本件全体を通じ、特許または公報が引用される場合、本発明が属する分野の状況をより完全に説明するために、これらの文献の開示はその全部を参照により本明細書に組入れることが意図される。
【0017】
本発明の文脈において用いる幾つかの関連する技術用語は、以下のように理解することを意味する(記載全体で特記がない限り)。
【0018】
本開示で用いる「製紙用繊維」は、全ての公知のセルロース系繊維またはセルロース系繊維を含む繊維混合物を包含する。本発明のウエブを形成するのに好適な繊維は、任意の天然または合成のセルロース系繊維を含み、これらに限定するものではないが、非木質繊維,例えばコットンまたはコットン誘導体、アバカ、ケナフ、サバイグラス、亜麻、エスパルトグラス、藁、ジュート麻、バガス、トウワタフロス繊維、およびパイナップル葉繊維;ならびに木質繊維,例えば落葉樹および針葉樹の房から得られるもの,例えば針葉樹繊維,例えば北方および南方の針葉樹クラフト繊維;広葉樹繊維,例えばユーカリ、カエデ、樺、およびアスペンが挙げられる。木質繊維は、高収率または低収率の形状で得ることができ、そして任意の公知の方法,例えばクラフト、サルファイト、グラウンドウッド、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、および漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、高収率パルプ化法、および他の公知のパルプ化法でパルプ化できる。高輝度パルプ,例えば化学漂白パルプを使用でき、そして無漂白または半漂白パルプもまた使用できる。リサイクル繊維は本発明の範囲内に包含される。任意の公知のパルプ化および漂白の方法を用いることができる。オルガノソルブパルプ化法によって得られる繊維もまた使用できる。好適な製紙用繊維はまた、リサイクル繊維、バージン繊維、またはこれらの混合物を包含できる。
【0019】
合成セルロース繊維もまた使用に好適であり、その全ての種類のレーヨン、およびビスコースまたは化学修飾セルロースに由来する他の繊維が挙げられる。化学的に処理された天然セルロース系繊維を使用でき、例えば、マーセル化パルプ、化学的に補強または架橋させた繊維、スルホン化繊維等が挙げられる。好適な合成高分子繊維としては、レーヨン、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が挙げられる。好適な合成高分子繊維構造としては、1成分、2成分、および多成分の繊維,例えば芯−鞘、海中島、並列(side-by-side)、セグメント化パイ等が挙げられる。
【0020】
本発明の一態様において、製紙用繊維は、木質繊維、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、リサイクル繊維、非木質繊維、合成高分子繊維、ガラス繊維、またはこれらの組合せを含む。一態様において、合成高分子繊維は、平均繊維径5ミクロン未満を有する。別の態様において、合成高分子繊維は、総製紙用繊維の50%超、または総製紙用繊維の70%超を含む。
【0021】
製紙用繊維の使用における良好な機械特性のために、繊維が比較的損傷を受けておらず、大部分がリファインされておらず、または軽度にリファインされているのみであることが望ましい場合がある。リサイクル繊維を使用できるが、バージン繊維もまた、その機械特性および汚染物がないことで有用である。マーセル化繊維、再生セルロース系繊維、微生物により産生されたセルロース、レーヨン、および他のセルロース系材料またはセルロース系誘導体を使用できる。好適な製紙用繊維としてはまた、リサイクル繊維、バージン繊維、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0022】
本開示で用いる「高収率パルプ繊維」は、パルプ化プロセスによって製造されるパルプの製紙用繊維であって収率約65%以上を与えるものである。収率は、加工された繊維の得られる量であり、初期の木材質量のパーセントとして表現する。高収率パルプとしては、漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧/圧サーモメカニカルパルプ(PTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、サーモメカニカルケミカルパルプ(TMCP)、高収率サルファイトパルプ、および高収率クラフトパルプが挙げられ、これらの全ては、高レベルのリグニンを有する繊維を含有する。特徴的な高収率繊維は、リグニン量約1質量%以上を有することができる。好適な高収率パルプ繊維は、パルプ化および任意の漂白のステップによって得られた後、かつドライベールまたはウエブに形成される前に、一態様において、比較的欠けておらず、比較的損傷を受けていない繊維、高叩解(250 Canadian Standard Freeness(CSF)以上)、および低い微細物量(Brittジャー試験で25%未満)のものからなることを特徴とすることもできる。一態様において、高収率繊維は、主に針葉樹,例えば北方針葉樹である。
【0023】
本開示で用いる用語「セルロース系(cellulosic)」は、セルロースを主要な構成成分として有する任意の物質を包含することを意味し、そして具体的には約50質量%以上のセルロースまたはセルロース誘導体を含む。よって、用語は、コットン、典型的な木材パルプ、非木質セルロース系繊維、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、レーヨン、ビスコース繊維、サーモメカニカル木材パルプ、ケミカル木材パルプ、脱結合ケミカル木材パルプ、リヨセルおよび他の繊維(NMMO中のセルロースの溶液から形成されるもの、トウワタ、またはバクテリアセルロース)を包含する。溶液から紡糸または再生されていない繊維は、所望であれば、単独に使用でき、またはウエブの少なくとも約80%が紡糸繊維またはセルロース溶液から再生された繊維を含まないことができる。
【0024】
本発明の一側面は、製紙用繊維の水性スラリーからの、紙および板紙を含む紙製品の製造に関する。カチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を含有する本発明の紙製品が、改善された、または維持された、湿潤強度および乾燥強度、ならびに顕著に向上した再パルプ化能を有する紙製品を与えたことを発見した。
【0025】
本発明の一態様は:製紙用繊維;カチオン性強度付与添加剤;および熱可塑性スルホポリエステル樹脂を含む再パルプ化可能な紙製品に関する。
【0026】
本発明の別の態様は:製紙用繊維;カチオン性強度付与添加剤;および熱可塑性スルホポリエステル樹脂を含む紙製品に関する。本発明に係る紙製品は再パルプ化能の向上を与える。
【0027】
向上した再パルプ化能に加え、本発明に係る紙製品はまた、向上したシート強度、増大した機械速度、および改善された歩留まりを与える。本発明はまた、製紙業者が、特定のウエットエンド添加剤(例えば乾燥強度付与樹脂、カチオン性スターチ、廃水および歩留まりの助剤、ならびに凝固剤)の使用を低減または排除することによってウエットエンドを単純化することを可能にする。本発明を湿潤および乾燥の強度付与助剤の両者として用いる場合、紙製品の吸収性は低下しない。本発明はシート性能において以下の改善を与える:より低い坪量、増大したリサイクル繊維使用、より高濃度または固体形状での分散を与える能力、延長された保存寿命、低減されたクラフト使用、即時硬化、改善された印刷受容性、改善された表面強度、改善されたシート加工性、改善された機械運転能力、増大した製造、より高いシート灰分およびフィラーコスト低減、改善された繊維回収、低減されたホワイトウォーター固形分および濁り、湿潤強度付与添加剤の増大した歩留まり、低減されたシステム堆積、高レベルの制御可能な廃水の提供、改善された配置、増大した機械速度、低減された乾燥器エネルギー消費、より少ない添加剤による単純化され清浄なウエットエンド、コスト的に有効な添加剤スキーム、ならびにウエットエンドケミカル効率の増加。
【0028】
パルプまたは製紙用繊維の水性スラリーに対して、紙製品および製紙プロセスを改善するために、種々の無機および有機の物質を含ませることが一般的である。本発明に係る紙製品の製造方法は、任意の従来の製紙装置で実施できる。
【0029】
一般的に、本発明の方法は、製紙用繊維のスラリーを準備すること、本発明の成分をパルプ製紙用繊維のスラリーに添加すること、本発明の成分を含有するパルプ製紙用繊維のスラリーを形成用布帛の上に堆積させること、およびスラリーを乾燥させて紙ウエブを形成すること、を含む。
【0030】
本発明の一態様において、本発明に従って処理された製紙用繊維から形成されることになる繊維状ウエブは、ウエットレイドであることができ、例えばウエブを、動いているワイヤの上に希薄水性繊維スラリーを並べて繊維を濾し取って紙ウエブを形成し、続いて吸引ボックス、湿潤プレス、乾燥器ユニット等を含むユニットの組合せによってこれを脱水する、公知の製紙方法で形成できる。キャピラリー脱水を適用してウエブから水を除去することもできる。
【0031】
任意の従来の乾燥方法または乾燥器を、本発明に従って使用できる。乾燥操作としては、ドラム乾燥、通気乾燥、スチーム乾燥,例えば過熱スチーム乾燥、置換脱水、Yankee乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥、ラジオ波乾燥を一般的に、およびインパルス乾燥を挙げることができる。
【0032】
湿った繊維状ウエブは、発泡プロセスによって形成することもでき、このプロセスは処理された繊維を泡中に同伴または懸濁させた後脱水し、または泡を紙ウエブに適用した後脱水または乾燥する。
【0033】
繊維状ウエブは、一般的には、ランダムな複数の製紙用繊維であり、任意にバインダーとともに接合できる。ここで定義するような任意の製紙用繊維、またはその混合物,例えばクラフトまたはサルファイトケミカルパルプ化プロセスによる漂白された繊維を使用できる。リサイクル繊維も、コットンリンター、またはコットンを含む製紙用繊維のように使用できる。高収率および低収率の両者の繊維もまた使用できる。一態様において、繊維は主に広葉樹であることができ、例えば少なくとも50%が広葉樹、または約60%以上が広葉樹、または約80%以上が広葉樹または実質的に100%が広葉樹であることができる。別の態様において、ウエブは主に針葉樹であることができ、例えば少なくとも約50%が針葉樹、または少なくとも約80%が針葉樹、または約100%が針葉樹であることができる。別の態様において、ウエブは、主に合成高分子繊維であり、例えば少なくとも約50%が合成高分子繊維、または少なくとも約80%が合成高分子繊維、または約100%が合成高分子繊維である。
【0034】
本発明の繊維状ウエブは、単層または複層から形成できる。層状ウエブ(少なくとも1層が針葉樹繊維を含み、一方別の層が広葉樹または他の繊維種を含むもの)もまた形成できる。当該分野で公知の任意の手段によって得られる層状構造が本発明の範囲内である。複数層の場合、該層は、一般的には、並列または表面−対−表面の関係に配置し、層の全てまたは一部を隣接層に結合してもよい。紙ウエブはまた、複数の別個の紙ウエブ(別個の紙ウエブを1つまたは複数の層から形成できるもの)から形成できる。
【0035】
本発明の一態様は、セルロース系紙の湿潤強度を改善する方法であって、製紙プロセスの間に、紙にカチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を添加すること、を含む方法を提供する。
【0036】
本発明に係る、紙製品または再パルプ化可能な紙製品を製造する方法は、多くのステップを含む。1つのステップは、製紙用繊維もしくはパルプの水性スラリーを形成すること、または従来の手段で実施できるもの,すなわち公知のメカニカル、ケミカル、およびセミケミカル等のパルプ化プロセスを含む。別のステップは、製紙用繊維またはパルプの水性スラリーにカチオン性強度付与添加剤および熱可塑性スルホポリエステル樹脂を添加することを含む。これは任意の時点で、シート形成の前に行うことができ、または、タブサイズのシート形成後、またはサイズプレスにて、またはシャワーから乾燥もしくは一部乾燥されたシートへ、これを適用することもできる。更に別のステップは、製紙用繊維またはパルプ繊維(カチオン性熱硬化性樹脂を含有するもの)の水性スラリーをシート形成および乾燥することを含む。これは任意の従来の手段によって行うことができる。
【0037】
一態様において、カチオン性強度付与添加剤および熱可塑性スルホポリエステル樹脂を含む、本発明の成分は、パルプスラリーに別個に添加するが、ウエブの所望の強度特性に応じて、カチオン性強度付与添加剤または熱可塑性スルホポリエステル樹脂を、他よりも前にスラリーに添加できる。
【0038】
製紙プロセスの間、カチオン性強度付与添加剤は、パルプ繊維スラリーにおける添加またはパルププレスでの組込み等の種々の方法によって組込むことができる。本発明の一態様において、カチオン性強度付与添加剤は、スルホポリエステル熱可塑性樹脂の前にスラリーに添加する。いずれの理論にも拘束されないが、カチオン性強度付与添加剤はアニオン的に帯電したセルロースパルプ繊維に結合し、これは正に帯電したパルプ繊維を生じさせる。続いて、アニオン的に帯電したスルホポリエステル熱可塑性樹脂をパルプ繊維に適用し、イオン結合を生じさせる。スルホポリエステル樹脂は、スプレー適用等の種々の方法によって適用できる。
【0039】
別の態様において、本発明の方法は、パルプまたは製紙用繊維のスラリーを準備すること、本発明の成分をパルプまたは製紙用繊維の水性スラリーに順番に添加すること、本発明の成分を含有するパルプまたは製紙用繊維のスラリーを形成用布帛の上に堆積させること、およびスラリーを乾燥させて紙ウエブを形成すること、を含む。このような成分はまた、形成後のウエブの上に湿潤している間にスプレー、印刷もしくはコートでき、または、形成前に製紙機のウエットエンドに添加できる。
【0040】
本発明に従い、カチオン性強度付与添加剤および熱可塑性スルホポリエステル樹脂を含む成分は、スラリーに、所望に応じて、約1:5〜約5:1の比で添加できる。
【0041】
スラリーのpHは、プロセスの間に調整できる。例えば、スラリーのpHを酸性pH,例えば一態様では約6以下に調整できる。しかし、別の態様において、pHは約6超に調整できる。所望の粘度に到達した時点で、次いで十分な水を添加して樹脂溶液の固形分量を約15%以下に調整し、生成物を約25℃まで冷却し、次いで十分な酸を添加することにより安定化させてpHを少なくとも約6まで、および好ましくは約5まで低下させる。任意の好適な酸,例えば塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、リン酸および酢酸を用いて生成物を安定化できる。
【0042】
本発明の紙ウエブは、任意の従来のバルク質量を有することができる。一態様において、本発明の紙ウエブは、約2cc/g超のバルクを有することができる。例えば、紙ウエブは、約5cc/g超のバルクを有することができる。紙ウエブの乾燥比引張強さは、任意の従来の値であることができる。例えば、紙ウエブの乾燥比引張強さは、一態様において約20Nm/g超であることができる。別の態様において、紙ウエブの乾燥比引張強さは、約22Nm/g超であることができる。更に別の態様において、乾燥比引張強さは、約25Nm/g超であることができる。一般的に、本発明の紙ウエブの坪量は、任意の所望の坪量であることができる。例えば、一態様において、紙ウエブは、坪量約5〜約200gsmを有することができる。
【0043】
本発明に係る製紙プロセスにおいて使用できる他の従来の化学添加剤は:ロジンサイズ、反応性サイズ(アルケニルコハク酸無水物またはアルキルケテンダイマー)、表面サイズ、スターチ、歩留まり助剤、排水助剤、形成助剤、凝集剤、クレーピング助剤(接着剤および離型剤)、乾燥強度付与樹脂(カチオン性スターチ、グアーガム、ポリアクリルアミド)、消泡剤、アニオン性の夾雑物の捕捉剤および粘着調整剤、フィラー(クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン)、任意の増白助剤および染料である。
【0044】
カチオン性強度付与添加剤
製紙およびウエットレイド不織布水硬製造プロセスの間に、化学添加剤をしばしば組込んで紙および板紙の製品の湿潤強度および/または乾燥強度を改善する。これらの化学添加剤は、一般的には、湿潤および乾燥の強度付与添加剤として公知であり、そして多くの市販の入手可能源から入手可能である。
【0045】
恒久的な湿潤強度付与添加剤の例としては、ポリアミドエピクロロヒドリンおよびポリアミドアミンエピクロロヒドリンであり、そして包括的にPAE樹脂として公知である。湿潤強度付与添加剤の例は、ポリアクリルアミドおよびグリオキサル化ポリアクリルアミド(GPAM)樹脂等の化学物質を基にする。
【0046】
本発明に従い、カチオン性強度付与添加剤は、湿潤強度付与添加剤または乾燥強度付与添加剤のいずれからなることもでき、グリオキシル化ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)、スターチおよび他のカチオン性添加剤であって当業者に周知のものを含むことができる。
【0047】
ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミドアミンエピクロロヒドリンおよびポリアミンエピクロロヒドリン樹脂は包括的にPAE樹脂として公知である。PAE樹脂は、その、多くの紙製品(例えばティッシュ、タオル、拭き取り紙およびダンボール)に対して高度の湿潤強度を与える能力によって、製紙産業において広く使用されている。PAE樹脂は、紙または板紙の乾燥強度を改善せず、そしてこれらの樹脂を含有する製品は一般的には、再パルプ化可能ではないと考えられる。湿潤強度付与添加剤を含有する紙製品は、一般的には再パルプ化可能ではないが;多くの用途に対してしばしば不十分な湿潤強度を有する。完全な湿潤の際に、湿潤強度付与添加剤に由来する紙製品は、典型的には数分から数時間以内に分解する。
【0048】
本発明に従って用いられる好適なカチオン性強度付与添加剤としては、PAE樹脂、グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂、スターチ、ポリアクリルアミド、および他の湿潤強度付与添加剤および乾燥強度付与添加剤であって当業者に一般的に公知であるものが挙げられる。
【0049】
PAE樹脂を製造する手順は文献において周知であり、米国特許第3,772,076号(参照により本明細書に組入れる)でより詳細に記載されている。PAE樹脂はAshland,Inc.,Wilmington,Delawareにより商品名Kymene(登録商標)にて、およびGeorgia Pacific,Inc.,Atlanta,Georgiaにより商品名Amres(登録商標)にて販売されている。PAE樹脂を合成するための典型的な手順は以下の通りである。ポリアルキレンポリアミンは、脂肪族ジカルボン酸と反応してポリアミドアミン骨格を形成する。ポリアミドアミンの例は、ジエチレントリアミンとアジピン酸またはジカルボン酸誘導体のエステルとの反応生成物である。次いで、得られるポリアミドアミンをエピクロロヒドリンと水性溶液中で反応させる。得られる生成物を希釈し、そして強鉱酸でpH3.0未満まで中和する。
【0050】
グリオキサルで修飾されたアクリルアミドポリマーは、グリオキサル化ポリアクリルアミド樹脂として公知である。グリオキサル化ポリアクリルアミドの合成手順は文献において周知であり、米国特許第3,556,932号(参照により本明細書に組入れる)でより詳細に記載されている。グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂は、Kemira,Inc.,Kennesaw,Georgiaによって商品名Parez(登録商標)にて販売されている。アクリルアミドポリマーは、イオン特性を改質するモノマーを含有できる。アクリルアミドベースポリマーは、十分なグリオキサルと、水性アルカリ条件下で、粘度の若干の増大が生じるまで反応させる。次いで、得られる生成物を酸でクエンチする。添加するグリオキサルの約半分が未反応で残り、水中に溶解する。アクリルアミドポリマーおよびグリオキサルを乾燥粒状状態で前ブレンドし、続いてこのブレンド物を温水に添加してグリオキサル化ポリアクリルアミド樹脂を形成することも可能である。
【0051】
乾燥強度付与添加剤としては、もともとカチオン性、4級またはノニオン性である、スターチ等の物質が挙げられる。本発明において用いるのに好適な乾燥強度付与添加剤の例としては、多糖(例えばスターチ、グアー、セルロース、およびキチン)のカチオン誘導体;ポリアミン;ポリエチレンイミン;ビニルアルコール−ビニルアミンコポリマー;カチオン性アクリルホモ−およびコポリマー,例えばポリアクリルアミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリル酸、アクリルエステルおよびアクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドおよびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマーが挙げられる。
【0052】
本発明において使用できる他のカチオン性強度付与樹脂は:アミノポリアミド−エピ樹脂(例えば、Kymene(登録商標)557H−樹脂)、ポリアミン−エピ樹脂(例えば、Kymene(登録商標)736樹脂)、エポキシド樹脂(例えば、Kymene(登録商標)450およびKymene(登録商標)2064樹脂);ポリエチレンイミン、尿素ホルムアルデヒド樹脂;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;グリオキサル化ポリアクリルアミド(例えば、Hercobond(登録商標)1000樹脂,Parez 631NC);ポリイソシアネート;および反応性スターチ(酸化スターチ、ジアルデヒドスターチ、ブロック化反応性基スターチ)である。
【0053】
カチオン性強度付与添加剤の量は、一般的には、乾燥させた紙の質量基準、乾燥物基準で約0.25〜約3.00質量%である。例えば、本発明の幾つかの態様において、カチオン性強度付与添加剤の量は、約0.25〜3.00質量%、0.25〜2.00質量%、または0.25〜1.50質量%である。他の態様において、カチオン性強度付与添加剤は、乾燥させた紙の質量基準、乾燥物基準で、約2質量%、または約1質量%、または約0.5質量%、であることができる。本発明の一態様において、同様の量の湿潤強度付与添加剤およびスルホポリエステルを使用する。
【0054】
スルホポリエステル熱可塑性樹脂
本発明のスルホポリエステルは、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基、および繰り返し単位を含む。スルホモノマーは、ジカルボン酸、ジオールまたはヒドロキシカルボン酸であることができる。よって、本明細書で用いる用語「モノマー残基」は、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書で用いる「繰り返し単位」は、カルボニルオキシ基を介して結合した2つのモノマー残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルは、実質的に等モル比率の酸残基(100モル%)およびジオール残基(100モル%)(これらは、繰り返し単位の総モルが100モル%となるように実質的に等しい比率で反応する)を含む。従って、本開示で与えられるモルパーセントは、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または繰り返し単位の総モルを基準とすることができる。例えば、総繰り返し単位基準で30モル%のスルホモノマーを含有するスルホポリエステル(これは、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸であることができる)は、スルホポリエステルが、100モル%の繰り返し単位全体のうち、30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。よって、全100モルの繰り返し単位のうち30モルのスルホモノマー残基が存在する。同様に、総酸残基基準で30モル%のジカルボン酸スルホモノマーを含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の酸残基全体のうち30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。よって、この後者の場合では、全100モルの酸残基のうち30モルのスルホモノマー残基が存在する。
【0055】
本明細書で記載するスルホポリエステルのインヘレント粘度(以後「Ih.V.」と略す)は、フェノール/テトラクロロエタン溶媒の60/40質量部溶液中で25℃にて、溶媒100mL中のスルホポリエステル約0.5gの濃度で測定したときに、少なくとも約0.1dL/g、好ましくは約0.2〜0.3dL/g、および最も好ましくは約0.3dL/g超である。本明細書で用いる用語「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」および「コポリエステル」の両者を網羅し、そして二官能カルボン酸と二官能ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味する。本明細書で用いる用語「スルホポリエステル」は、スルホモノマーを含む任意のポリエステルを意味する。典型的には、二官能カルボン酸はジカルボン酸であり、そして二官能ヒドロキシル化合物は二価アルコール,例えばグリコールおよびジオール等である。代替として、二官能カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸,例えばp−ヒドロキシ安息香酸等であることができ、そして、二官能ヒドロキシ化合物は、芳香核を有する2ヒドロキシ置換物,例えばハイドロキノン等であることができる。本明細書で用いる用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応を介してポリマーに組込まれる任意の有機構造を意味する。よって、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマーまたはその関連酸のハライド、エステル、塩、無水物またはこれらの混合物に由来することができる。従って、本明細書で用いる用語ジカルボン酸は、ジカルボン酸およびジカルボン酸の任意の誘導体,例えばその関連酸のハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物またはこれらの混合物の、ジオールとの重縮合プロセスにおいて高分子量ポリエステルを形成するのに有用であるものを含むことを意図する。
【0056】
本発明のスルホポリエステルは1種以上のジカルボン酸残基を含む。スルホモノマーの種類および濃度に左右されるが、ジカルボン酸残基は、酸残基の約60〜約100モル%含むことができる。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、約60モル%〜約95モル%、および約70モル%〜約95モル%である。使用できるジカルボン酸の例としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、またはこれらの酸の2種以上の混合物が挙げられる。よって、好適なジカルボン酸としては、これらに限定するものではないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、およびイソフタル酸が挙げられる。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、またはジエステルを用いる場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートであり、イソフタル酸およびテレフタル酸の残基が特に好ましい。ジカルボン酸メチルエステルが最も好ましい態様であるが、より高配列のアルキルエステル,例えばエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等を含むことも許容される。加えて、芳香族エステル、特にフェニルも採用できる。
【0057】
スルホポリエステルは、総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基および芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、ここで該官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである。スルホモノマー残基の濃度範囲の追加的な例は、総繰り返し単位基準で約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜約25モル%である。スルホモノマーは、スルホネート基を含有するジカルボン酸またはそのエステル、スルホネート基を含有するジオール、またはスルホネート基を含有するヒドロキシ酸であることができる。用語「スルホネート」は、構造「−SO3M」(式中、Mはスルホネート塩のカチオンである)を有するスルホン酸の塩を意味する。スルホネート塩のカチオンは、金属イオン,例えばLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等であることができる。代替として、スルホネート塩のカチオンは、非金属のもの,例えば窒素塩基(例えば米国特許第4,304,901号明細書に記載されるもの)であることができる。窒素塩基カチオンは、窒素含有塩基(これは脂肪族、脂環式、または芳香族の化合物であることができる)に由来する。このような窒素含有塩基の例としては、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン、およびピペリジンが挙げられる。窒素塩基スルホネート塩を含有するモノマーは、典型的には、溶融物中でポリマーを形成するのに必要な条件で熱的に安定でないため、窒素塩基スルホネート塩の基を含有するスルホポリエステルを製造するための本発明の方法は、必要量のスルホネート基をそのアルカリ金属塩の形で含有するポリマーを水中で分散、消失または溶解させ、次いで窒素塩基カチオンをアルカリ金属カチオンに交換するのがよい。
【0058】
一価アルカリ金属イオンをスルホネート塩のカチオンとして用いる場合、得られるスルホポリエステルは、ポリマー中のスルホモノマーの量、水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚み等に左右される分散速度で、水中において完全に分散性である。二価金属イオンを用いる場合、得られるスルホポリエステルは、冷水によっては容易に分散しないが、熱水によってより容易に分散する。単一ポリマー組成物中で1種より多い対イオンを用いることが可能であり、そして得られる工業物品の水応答性を調整または手直しする手段を与えることができる。スルホモノマー残基の例としては、スルホネート塩の基が芳香族酸核,例えば、ベンゼン;ナフタレン;ジフェニル;オキシジフェニル;スルホニルジフェニル;およびメチレンジフェニル等、または脂環式環,例えばシクロヘキシル;シクロペンチル;シクロブチル;シクロヘプチル;およびシクロオクチル等に付いているモノマー残基が挙げられる。本発明において使用できるスルホモノマー残基の他の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、またはこれらの組合せの金属スルホネート塩である。使用できるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸およびそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸由来である場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、酸残基の総モル基準で約0.4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜25モル%である。
【0059】
スルホポリエステルの製造において用いるスルホモノマーは、公知の化合物であり、そして当該分野で周知の方法を用いて製造できる。例えば、スルホモノマー(その中でスルホネート基が芳香環に付いている)は、芳香族化合物を発煙硫酸(oleum)でスルホン化して対応スルホン酸を得て、続いて金属酸化物または塩基,例えば酢酸ナトリウムと反応させてスルホネート塩を得ることによって得ることができる。種々のスルホモノマーを得るための手順は、例えば米国特許第3,779,993号;第3,018,272号;および第3,528,947号に記載されている。
【0060】
例えばナトリウムスルホネート塩およびイオン交換法を用いてナトリウムを異なるイオン,例えば亜鉛に置換してポリエステルを得ることも可能である(ポリマーが分散形態にある場合)。この種のイオン交換手順は、一般的に、二価の塩でポリマーを得るよりも優れている(ナトリウム塩が通常ポリマー反応物質溶融相中でより溶解性である限り)。
【0061】
スルホポリエステルは、脂肪族、脂環式およびアラルキルのグリコールを含んでもよい1種以上のジオール残基を含む。脂環式ジオール,例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールは、これらの純粋なシスまたはトランス異性体として、またはシスおよびトランス異性体の混合物として存在できる。本明細書で用いる用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義であり、そして任意の二価アルコールを意味する。ジオールの例としては、エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;ポリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルへキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシリレンジオールまたはこれらのグリコールの1種以上の組合せが挙げられる。
【0062】
ジオール残基は、総ジオール残基基準で約25モル%〜約100モル%の、構造
H−(OCH2−CH2n−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)の残基を含むことができる。より低分子量のポリエチレングリコール,例えばnが2〜6のものの限定しない例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールである。これらのより低分子量のグリコールのうち、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールは最も好ましい。より高分子量のポリエチレングリコール(本明細書で「PEG」と略す)(式中、nが7〜約500のもの)としては、市販で入手可能な製品の、称号CARBOWAX(登録商標)で公知のもの(Dow Chemical Company(元Union Carbide)の製品)が挙げられる。典型的には、PEGは、他のジオール,例えば、ジエチレングリコールまたはエチレングリコール等との組合せで用いる。nの値(その範囲は6超から500である)に基づき、分子量は300超から約22,000g/molの範囲であることができる。分子量およびモル%は互いに反比例する;具体的には、分子量が増大するに従って、モル%は、規定程度の親水性を実現するために低くなる。例えば、この概念の例は、分子量1000のPEGが総ジオールの10モル%を構成し、一方分子量10,000のPEGが総ジオールの1モル%未満のレベルで典型的に組込まれることを考慮することである。
【0063】
所定の二量体、三量体および四量体のジオールは、プロセス条件を変えることによって制御される場合がある副反応に起因して、in situで形成される場合がある。例えば、変動量のジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは、酸性条件下で重縮合反応が起こる際に容易に生じる酸触媒脱水反応によって、エチレングリコールから形成される場合がある。緩衝溶液(当業者に周知のもの)の存在を反応混合物中に加えてこれらの副反応を抑制できる。追加的な組成の自由も可能である。しかし、緩衝溶液を省略する場合、二量化、三量化および四量化の反応の進行がもたらされる。
【0064】
本発明のスルホポリエステルは、総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基(ここで、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである)を有する分岐用モノマーの残基を含むことができる。分岐用モノマーの限定しない例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸またはこれらの組合せである。分岐用モノマー濃度範囲の更なる例は、0〜約20モル%、および0〜約10モル%である。分岐用モノマーの存在は、多くの考えられる利点を本発明のスルホポリエステルにもたらす場合があり、これらに限定するものではないが、レオロジー、溶解性、および引張特性を調整する能力が挙げられる。例えば、一定分子量では、分岐スルホポリエステルは、直鎖の類似物と比較して、末端基(重合後架橋反応を促進する場合がある)のより大きい濃度も有する。しかし、分岐用剤が高濃度であると、スルホポリエステルはゲル化する傾向を有する場合がある。
【0065】
本発明のスルホポリエステルのガラス転移温度(本明細書において「Tg」と略す)は、乾燥ポリマーで標準技術,例えば示差走査熱量計(「DSC」)(当業者に周知)を用いて測定したときに、少なくとも25℃である。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、「乾燥ポリマー」,すなわち、付随または吸収された水が、ポリマーを温度約200℃まで加熱してサンプルを室温まで戻すことによって追い出されたポリマーサンプルを用いて行なう。典型的には、DSC装置内で、1回目の熱スキャン(ここでサンプルが水蒸発温度を超える温度まで加熱される)を行ない、ポリマー中に吸収された水の蒸発が完了するまで(大きくブロードな吸熱によって示される)サンプルをその温度で保持し、サンプルを室温まで冷却することによってスルホポリエステルを乾燥させ、そして次いで2回目の熱スキャンを行なってTg測定を得る。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、および少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、我々の発明における乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は、約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃および約90℃である。
【0066】
我々の発明はまた、スルホポリエステルであって:(i)総酸残基基準で約50〜約96モル%の、1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸の残基;(ii)総酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基;(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造 H−(OCH2−CH2n−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)であるもの;(iv)総繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3つ以上の官能基(該官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである)を有する分岐用モノマーの残基;を含むものを提供する。
【0067】
スルホポリエステルは、イソフタル酸残基の他の濃度,例えば約60〜約95モル%、および約75〜約95モル%を含有できる。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%および約90〜約95モル%である。スルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むこともできる。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例としては、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%、および約75〜約95モル%が挙げられる。スルホポリエステルは、エチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書において「CHDM」と略す)の残基を含むこともできる。CHDM残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。別の態様において、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸の残基および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含む。
【0068】
本発明のスルホポリエステルは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物または塩、スルホモノマーおよび適切なジオールまたはジオール混合物から、典型的な重縮合反応条件を用いて容易に得ることができる。これらは、連続様式、半連続様式およびバッチ様式の操作で形成でき、そして種々の反応器種を用いることができる。好適な反応器種の例としては、これらに限定するものではないが、撹拌タンク反応器、連続撹拌タンク反応器、スラリー反応器、管型反応器、ワイプトフィルム(wiped-film)反応器、落下膜(falling film)反応器または押出反応器が挙げられる。本明細書で用いる用語「連続」は、不断様式で同時に、反応物質を導入して生成物を取出すプロセスを意味する。「連続」は、プロセスが操作において実質的または完全に連続であることを意味し、「バッチ」プロセスと対比されるものである。「連続」は、例えば、立ち上げ、反応器保守、または定期的な操業停止の期間によるプロセスの連続性の通常の中断を禁止する意味では決してない。本明細書で用いる用語「バッチ」プロセスは、全ての反応物質を反応器に添加し、次いで反応の予定コース(その間、何らの物質も反応器内に供給または取出ししない)に従って加工するプロセスを意味する。用語「半連続」は、反応物質の幾つかを、プロセスの開始時に充填し、そして反応物質を反応の進行に従って連続的に供給し続けるプロセスを意味する。
【0069】
代替として、半連続プロセスは、バッチプロセスと同様のプロセス(ここで、1種以上の生成物を反応の進行に従って連続的に取出すことを除いて、全ての反応物質をプロセスの開始時に添加する)も含むことができる。プロセスは、経済的およびポリマーの着色性に優位性を与えるという理由で連続プロセスとして有利に操作する。高温であまりに長い持続時間で反応器内に残留した場合にはスルホポリエステルが外観を悪化させる場合があるからである。
【0070】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に公知の手順によって製造される。スルホモノマーは、最もしばしば、直接反応混合物中に添加され、これからポリマーが形成されるが、例えば米国特許第3,018,272号、第3,075,952号および第3,033,822号に記載される他のプロセスが公知であり、そしてこれも採用できる。スルホモノマー、ジオール成分およびジカルボン酸成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて行なうことができる。例えば、エステル交換反応の方法で、すなわちジカルボン酸成分のエステル形から、スルホポリエステルを製造する場合、反応プロセスは2ステップを含むことができる。第1のステップにおいては、ジオール成分およびジカルボン酸成分,例えばイソフタル酸ジメチル等を、高温,典型的には約150℃〜約250℃で約0.5〜約8時間、約0.0kPa gauge〜約414kPa gauge(60ポンド毎平方インチ,「psig」)の範囲の圧力で反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は、約180℃〜約230℃で約1〜約4時間の範囲であり、一方好ましい圧力は、約103kPa gauge(15psig)〜約276kPa gauge(40psig)の範囲である。その後、より高温およびより低圧で反応生成物を加熱して、ジオールを排出しながらスルホポリエステル(これは、これらの条件下で容易に蒸発して系から除去される)を形成する。この第2のステップ、すなわち重縮合ステップは、より高い減圧下および温度下である、一般的に、約230℃〜約350℃、好ましくは約250℃〜約310℃、および最も好ましくは約260℃〜約290℃の範囲で、約0.1〜約6時間、または好ましくは、約0.2〜約2時間で、所望の重合度(インヘレント粘度で評価される)のポリマーが得られるまで続く。重縮合ステップは、より低圧である、約53kPa(400torr)〜約0.013kPa(0.1torr)の範囲で行なうことができる。撹拌または適切な条件を両段階で用いて、反応混合物の適切な熱伝導および表面更新を確保する。両段階の反応は、適切な触媒,例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属ヒドロキシドおよびアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物等によって促進させる。特に、酸およびエステルの混合モノマー供給物を採用する場合、米国特許第5,290,631号に記載されるのと同様の3段階製造手順も用いることができる。
【0071】
ジオール成分およびジカルボン酸成分のエステル交換反応機構による反応を完了させることを確保するために、1モルのジカルボン酸成分に対して約1.05〜約2.5モルのジオール成分を採用することが好ましい。しかし、当業者は、ジオール成分のジカルボン酸成分に対する比が、一般的に反応器(この中で反応プロセスを行なう)の設計により決定されることを理解するであろう。
【0072】
直接エステル化による,すなわち酸型のジカルボン酸成分からのスルホポリエステルの製造において、スルホポリエステルは、ジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物をジオール成分またはジオール成分の混合物と反応させることによって製造する。反応は、圧力約7kPa gauge(1psig)〜約1379kPa gauge(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満で行なって、低分子量の、直鎖または分岐鎖の、平均重合度が約1.4〜約10のスルホポリエステル生成物を生成する。直接エステル化反応の間に採用される温度は、典型的には約180℃〜約280℃の範囲である。別の範囲は、約220℃〜約270℃である。次いで、この低分子量ポリマーを、重縮合反応によって重合する。
【0073】
熱可塑性スルホポリエステル樹脂の量は、一般的には、乾燥物基準、乾燥紙の質量基準で、約0.25〜約3.00質量%である。例えば一態様において、スルホポリエステルの量は、約0.25〜3.00質量%、0.25〜2.00質量%、または0.25〜1.50質量%である。別の態様において、熱可塑性スルホポリエステルの量は、乾燥物基準で、約0.05質量%、または約0.1質量%または約0.2質量%であることができる。典型的には、熱可塑性スルホポリエステル樹脂の、カチオン性強度付与添加剤に対する比は、約5:1〜約1:5である。一態様において、スルホポリエステルの、カチオン性強度付与添加剤に対する比は、約1:1である。
【0074】
再パルプ化プロセス
再パルプ化プロセスは、任意の従来の方法を用いて実施できる。典型的には、紙を再パルプ化してリサイクルパルプ繊維を得るプロセスは、乾燥パルプ繊維を水性パルプ繊維懸濁物に懸濁させる任意の機械的動作によって実施できる。再パルプ化のための条件、更に商業的に用いられる設備は、“Handbook for Pulp&Paper Technologists,Second Edition”(G.A.Smook,Angus Wilde Publications,1992,pp194−195および211−212による)(この文献はその全部を参照により本明細書に組入れる)に議論されている。
【0075】
本発明の方法によって製造される紙が、ほぼ同じレベルの湿潤強度で、同じパルプを再パルプ化するのに必要な時間よりも実質的により少ない時間で再パルプ化できることを見出した。
【0076】
本発明の紙製品は以下の領域で使用するのに好適である:紙タオル;ナプキン;フェイスティッシュ;液体包装用板(ミルクパック、ジュースパック);家禽用箱;製造用箱;運搬用板;肉用ラップ;漂白袋;ポスター板;テーブルクロス;壁板テープ;紙幣;地図紙;ティーバッグ;ダンボールメディアム;ペーパープレート;成形品(卵パック);積層グレード;フローリングフエルト;コーヒーフィルター;パン用ラップ;多層袋;シングル板用ラップ;等。
【0077】
本発明の再パルプ化プロセスによって製造されるリサイクルパルプ繊維は、従来の製紙プロセス(これは、リサイクルされたパルプ繊維の水性懸濁物を得ること、次いで水性懸濁物をシーティングおよび乾燥させて紙を得ることを含む)によって製紙するのに使用できる。
【0078】
本発明をその好ましい態様を特に参照して詳述してきたが、本発明の精神および範囲の中で変更および改変を行うことができることが理解されよう。
【0079】
本発明をその可能な態様の以下の例によって更に説明できるが、これらの例は例示の目的のみで含まれ、特記がない限り、本発明の範囲の限定を意図しないことが理解されよう。部および%は、特記がない限り質量部および質量%を意味する。
【0080】

例は、EastONE S85030スルホポリエステル分散体を用いて実施し、紙の湿潤強度、乾燥強度および再パルプ化能に対する、その添加の効果を、市販で入手可能な添加剤,例えばKymene(登録商標)およびHercobond(登録商標)製品(Hercules Incorporated,Wilmington,DEより)との比較で評価した。
【0081】
スルホポリエステルおよびポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)の溶液の調製:
スルホポリエステルの3質量%溶液を以下のように調製した。500gの蒸留水を、ホットプレート上で約88℃に加熱されたビーカーに入れた。15.5gのスルホポリエステルペレットを添加し、温度を88℃に維持しながら10〜15分間、または全てのスルホポリエステルが溶解するまで、継続的に撹拌した。混合物を冷却し、蒸留水を添加して総溶液質量515.5gを実現した。
【0082】
PAE溶液の3質量%溶液を以下のように調製した。500gの蒸留水をビーカーに入れた。160gの、市販で入手可能なPAE溶液の12.5質量%溶液をビーカーに添加して撹拌した。
【0083】
コーティング手順:
3質量%溶液の各々を、それぞれ、蒸留水を用いて、3mlの溶液が紙シートに適用されたときに目的添加濃度0.5質量%が実現されるように、蒸留水を用いて希釈した。
【0084】
食用色素3滴を、紙の上の溶液の均一な被覆を確保するための視認助剤として各々の溶液に添加した。Lydall紙の8 1/2”x11”シートを、より大きい離型紙片の上部に置いた。Lydall 18−1/2♯Manning514(含浸紙シート重1.87±0.01g)を用いた。離型紙はアルミニウム箔の上にラミネートされたパーチメント紙であった。
【0085】
対照は以下のように調製した。5mlの蒸留水を、5ml体積ピペットを用いて紙シートに添加した。水を、2インチゴムハンドローラーを用いてシートに穏やかに延ばした。紙シート(離型紙が付着している)を5分間93℃対流オーブン内で乾燥させた。乾燥させたシートを4日間、2ポンドフラット荷重下で貯蔵した。このサンプルを対照とする。
【0086】
0.5質量%PAE樹脂を含有するサンプルを以下のように調製した。5mlの蒸留水を、5ml体積ピペットを用いて紙シートに添加した。水を、ハンドローラーを用いてシートに穏やかに延ばした。3mlの希釈PAE溶液を、3mlシリンジで、前湿潤させた紙に添加した。溶液を、ハンドローラーを用いて、均一な色が実現されるまでシートに穏やかに延ばした。紙シート(離型紙が付着している)を5分間93℃対流オーブン内で乾燥させた。乾燥したサンプルを、4日間、2ポンドフラット荷重下で貯蔵した。このサンプルをサンプル1とする。
【0087】
0.5質量%のスルホポリエステル樹脂を含有するサンプルを以下のように調製した。5mlの蒸留水を、5ml体積ピペットを用いて紙シートに添加した。水を、ハンドローラーを用いてシートに穏やかに延ばした。3mlの希釈したスルホポリエステル溶液を、前湿潤させた紙に3mlシリンジで添加した。溶液を、ハンドローラーを用いて、均一な色が実現されるまでシートに穏やかに延ばした。紙シート(離型紙が付着している)を5分間93℃対流オーブン内で乾燥させた。乾燥したシートを、4日間、2ポンドフラット荷重下で貯蔵した。このサンプルをサンプル2とする。
【0088】
0.25質量%のPAEおよび0.25質量%のスルホポリエステルを含有する本発明の例を以下のように調製した。5mlの蒸留水を、5ml体積ピペットを用いて紙シートに添加した。水を、ハンドローラーを用いてシートに穏やかに延ばした。3mlの希釈したPAE溶液を、前湿潤させた紙に3mlシリンジで添加した。溶液を、ハンドローラーを用いて、均一な色が実現されるまでシートに穏やかに延ばした。シートを2分間おいた。3mlの希釈スルホポリエステル溶液を続いて紙に3mlシリンジで添加した。スルホポリエステル溶液を、紙に穏やかに手動で延ばした。紙シート(離型シートが付着している)を5分間93℃対流オーブン内で乾燥させた。乾燥したシートを、4日間、2ポンドフラット荷重下で貯蔵した。このサンプルをサンプル3とする。
【0089】
対照ならびにサンプル1、2および3を、乾燥強度および湿潤強度について、以下のTAPPI試験法に準拠して評価した:
・T494−om−88:Tensile Breaking Properties of Paper and Paperboard(伸張装置の一定レートを使用)
・T456−om−87:Tensile Breaking Strength of Water−Saturated Paper and Paperboard(“湿潤引張強度”)
【0090】
紙サンプルの再パルプ化能は以下のように評価した。真鍮ハイドロパルパー(Hermann Manufacturing Company製)を試験のために用いた。ハイドロパルパーは、2リットル容器(3000rpm、3/4馬力トリローターを有する)であった。ハイドロパルパーは、径6インチおよび高さ10インチを有していた。
【0091】
サンプルを2つの1インチ角に切断した。水の2リットルサンプルを20℃に保ち、ハイドロパルパー内に注いだ。カウンターをゼロにセットし、両サンプルをハイドロパルパーに入れた。サンプルを500回転間隔でパルプ化した。500回転の各々の後に、ハイドロパルパーを一時停止し、蛍光検査光をボウル上に保持して、サンプルが完全にパルプ化されたか否かを評価した。500回転毎のセット数を記録した。15,000回転後、サンプルは再パルプ化可能ではないと考えられ、試験を中止した。試験結果を下記表1に示す。
【0092】
表1.対照、サンプル1、サンプルおよびサンプル3についての試験結果
【0093】
【表1】

【0094】
*備考:15,000回転後、サンプルは再パルプ化可能ではないと考えられ、試験を中止した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用繊維;カチオン性強度付与添加剤;および熱可塑性スルホポリエステル樹脂;を含む、再パルプ化可能な紙製品。
【請求項2】
該スルホポリエステル樹脂が、(i)1種以上のジカルボン酸の残基;(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基および1つ以上のスルホネート基であって芳香環または脂環式環に結合しているものを有する、少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、スルホモノマーの残基、(iii)1種以上のジオール残基であって総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が構造H−(OCH2−CH2n−OH(式中、nが2〜約500の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、分岐用モノマーの残基;を含む、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項3】
該ジカルボン酸が、脂肪族二塩基酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項4】
該ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸およびこれらの組合せから選択される、請求項3に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項5】
該スルホモノマーが、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸またはこれらの組合せの金属スルホネート塩である、請求項2に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項6】
該ジオール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルへキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオールおよびこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項7】
該分岐用モノマーが、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸またはこれらの組合せである、請求項2に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項8】
該カチオン性強度付与添加剤が、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピハロヒドリン樹脂、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、ポリアミドアミンエピハロヒドリン樹脂、ポリアルキレンイミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、カチオン性多糖またはこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項9】
該カチオン性強度付与添加剤が、カチオン性グリオキシル化ポリアクリルアミド樹脂またはポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂から選択される、請求項8に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項10】
該製紙用繊維が、木質繊維、針葉樹繊維、広葉樹繊維、非木質繊維、合成高分子繊維、リサイクル繊維、ガラス繊維、またはこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項11】
該合成高分子繊維が、総製紙用繊維の50%超である、請求項10に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項12】
該合成高分子繊維が、平均繊維径5ミクロン未満を有する、請求項11に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項13】
製紙用繊維の質量に対し、カチオン性強度付与添加剤の量が、乾燥物基準で約0.25質量%〜約3質量%であり、そして熱可塑性スルホポリエステル樹脂の量が、乾燥物基準で約0.25〜約3.00質量%である、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項14】
熱可塑性スルホポリエステル樹脂の、カチオン性強度付与添加剤に対する比が、約5:1〜約1:5である、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項15】
スルホポリエステルの、カチオン性強度付与添加剤に対する比が、約1:1である、請求項1に記載の再パルプ化可能な紙製品。
【請求項16】
セルロース系紙の湿潤強度を改善する方法であって、製紙プロセスの間に製紙用繊維にカチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を添加することを含む、方法。
【請求項17】
該カチオン性強度付与添加剤およびスルホポリエステル熱可塑性樹脂を、製紙プロセスの間に製紙用繊維の水性スラリーに添加する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該カチオン性強度付与添加剤を製紙用繊維の水性スラリーに添加し、そして、該スルホポリエステル熱可塑性樹脂を、該製紙用繊維の脱水により生じた紙ウエブの上に適用する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
該熱可塑性スルホポリエステル樹脂を、該紙ウエブにスプレー適用によって適用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
得られる紙製品が、向上した再パルプ化能を示す、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
木質繊維、針葉樹繊維、広葉樹繊維、非木質繊維、合成高分子繊維、リサイクル繊維、またはガラス繊維の1種以上からなる製紙用繊維;
ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピハロヒドリン樹脂、ポリアミンエピハロヒドリン樹脂、ポリアミドアミンエピハロヒドリン樹脂、ポリアルキレンイミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、またはカチオン性多糖の1種以上からなるカチオン性強度付与添加剤;ならびに
(i)1種以上のジカルボン酸の残基;(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基および1つ以上のスルホネート基であって芳香環または脂環式環に結合しているものを有する、少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、スルホモノマーの残基、(iii)1種以上のジオール残基であって総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が構造H−(OCH2−CH2n−OH(式中、nが2〜約500の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、分岐用モノマーの残基;を含む、熱可塑性スルホポリエステル樹脂;
を含む、紙製品。

【公表番号】特表2012−524847(P2012−524847A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507220(P2012−507220)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/001216
【国際公開番号】WO2010/123580
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】