説明

紙の表面着色方法

本発明は、第一の工程において、紙の表面を水溶性染料で処理し、続いて、第二の工程において、紙の表面を定着剤で処理することを特徴とする、紙の表面着色の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の工程において、紙の表面を水溶性染料で処理し、続いて、第二の工程において、紙の表面を定着剤で処理することを特徴とする紙の表面着色の方法に関する。
【0002】
紙の表面着色の経済的有利性は、長く認識されているという事実にもかかわらず、実際には、先染めと比較した場合、表面の着色が広範囲に及ばない。この状況の主な理由(例えば、"On-machine surface coloration", A.S.Tindal, Surface Application of Paper Chemicals, 1997, 175-191を参照)は、水、アルコールまたは飲料のような液体と接触させた場合、表面着色された紙は一般に、弱いブリード堅牢性を示すことである。
【0003】
この問題を解決するための1つの試みは、WO 03/004766に開示されており、それによって、ポリビニルピロリドン誘導体である、結合剤および増粘剤を含有する染料組成物を、紙の表面に塗布する。好ましくは、紙の表面を、ブリード堅牢性を改善するために染色工程の前に定着剤で処理するが、このアプローチの有効性を示すのに具体的な数値は示されていない。
【0004】
紙のコーティングにおける有機着色顔料のブリード堅牢性を制御するためのさらなる組成物が、WO 2004/090228に開示されていて、それにより、特定の結合剤と一緒に顔料組成物を、紙の表面に塗布する。このアプローチは、着色顔料に適しているが、表面コーティングにおいて従来の紙の染料のブリード堅牢性と関連した問題がまだ解決していない。
【0005】
驚くことに、染色後、紙を定着剤で処理する2工程の方法の使用により、ブリード堅牢性が多大に改善された染色物が得られることが今や見出された。
【0006】
その結果として、本発明は、第一の工程において、紙の表面を水溶性染料で処理し、続いて、第二の工程において、紙の表面を定着剤で処理することを特徴とする紙の表面着色の方法に関する。
【0007】
適切な水溶性染料は、アニオン性直接染料、酸性染料、塩基性染料、カチオン性直接染料および反応染料からなる群より選択されるものである。これらの染料のさまざまな群の例は、記号表示「C.I.ダイレクト」、「C.I.アシッド」、「C.I.ベーシック」、および「C.I.リアクティブ」、続いて色および適した番号に基づいてカラーインデックスで開示される。
【0008】
好ましい染料は、アニオン性直接染料と反応染料である。
【0009】
アニオン性直接染料は、さまざまな化学物質から誘導されてもよいが、少なくとも1個のスルホン酸基を含有し、それにより、スルホン酸基の数を変化させて、十分な水溶性を確保するとともに、最適な親和性を得る。スルホン酸基に加えて、カルボン酸基およびホスホン酸基が存在していてもよい。最も好ましい化学物質は、スチルベン誘導体、そして特にアゾ化合物である。
【0010】
アニオン性直接染料の好ましい例は、C.I.ダイレクトイエロー11、47、50、84、137、157および160、C.I.ダイレクトオレンジ29、C.I.ダイレクトレッド80、81、239、254および262、C.I.ダイレクトバイオレット9および51ならびにC.I.ダイレクトブルー199および290、特にC.I.ダイレクトイエロー11、C.I.ダイレクトレッド81、239、254および262ならびにC.I.ダイレクトブルー199および290であるが、これらの例は、制限することを実際に意図していない。
【0011】
好ましい反応染料は、例えば、C.I.リアクティブイエロー42、C.I.リアクティブオレンジ134、C.I.リアクティブレッド228ならびにC.I.リアクティブブルー21および260であるが、これらの例は、制限することを実際に意図していない。
【0012】
したがって、第一の好ましい態様において、本発明は、第一の工程において、紙を
a) 水溶性のアニオン性直接染料、酸性染料または反応染料、場合により、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物、場合により、
c) 1以上の助剤、および
d) 水
を含む組成物で、そして第二の工程において、カチオン性定着剤でコーティングする、紙の表面着色の方法に関する。
【0013】
好ましくは、第一の工程の組成物は、結合剤を含有する。適切な天然の結合剤は、でんぷんとその誘導体である。でんぷんが組成物中に存在する場合、本発明の第一の工程における組成物の結合剤成分b)として有用であるでんぷん材料は、実際にトウモロコシ、小麦、ジャガイモ、タピオカ、コメ、サゴおよびソルガムからのでんぷんをはじめとする植物由来のすべての薄でんぷんを含む。ロウ状およびハイアミロースのでんぷんも適切でありうる。でんぷんは、酸加水分解、酸化的加水分解または酵素分解によって薄くすることができる。また、適切なさらに誘導体化されたでんぷんは、でんぷんエーテル、でんぷんエステル、架橋でんぷん、酸化でんぷんおよび塩素化でんぷん、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロースのようなでんぷんを含む。
【0014】
あるいはまた、本発明の成分b)は、1個以上のジエン類および/または不飽和モノマーから誘導される水に不溶の合成ポリマーを含んでもよく、そのような生成物は、合成ラテックスと呼ばれる。ラテックスの製造に適したジエンモノマーの例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、シクロブタジエンおよびジビニルベンゼンを含んでもよいが、その一方で、適切な不飽和モノマーは、アルキルアクリラートおよびメタクリラート、水酸化アルキルメタクリラート、アルキルビニルケトン、置換されたアクリルアミド、メタクリル酸、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリラート、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、クロロスチレン、アルキルスチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ビニルトリエトキシシランおよびトリフェニルビニルシランを含んでもよい。好ましいモノマーは、メチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルアセタート、アクリロニトリル、アクリル酸、アクリルアミド、無水マレイン酸、ビニルトリメチルシランを含むモノビニルケイ素化合物、エチルビニルエーテル、クロロスチレン、ビニルピリジン、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルアクリラート、イソプレンおよびクロロプレンであり、ビニリジンクロリド、ブチルビニルエーテル、そしてとりわけスチレンが、特に適している。
最も好ましいラテックスは、スチレンおよびブタジエンまたはアクリラートから誘導されたものであり、そして市販の製品Pensize(登録商標)730のようなスチレン/ブタジエン/でんぷん共重合体、あるいは市販の製品Raiprint(登録商標)501のようなスチレン/アクリラート/でんぷん共重合体、それにより、でんぷんに加えて、好ましい結合剤の混合物、すなわち、でんぷんおよびラテックスも使用されてもよい。
【0015】
さらに、本発明の組成物は、サイジング剤、定着剤、付加的な結合剤およびバインダ樹脂、不溶化剤および/または架橋剤、アニオン性、カチオン性および中性のポリマー、湿潤強度剤、消泡剤ならびに殺生物剤より選択されるさらなる助剤を含有してもよい。
【0016】
適切な助剤は、例えば、ポリエチレンイミンおよびそれの誘導体、無機塩類、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび塩化カリウム、みょうばん、アルキルケテン二量体、ポリジアリルジメチル塩化アンモニウム、ポリアミドアミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびその単独重合体および共重合体、ポリエステルおよびポリエーテル、グリオキサル誘導体、モノエタノールアミン、アクリル酸/アルキルアクリラート共重合体ならびにスチレン/アクリラート共重合体を含んでもよい。
【0017】
アニオン性直接染料または反応染料が、本発明の方法の第一の工程において用いられる場合、本発明の第二の工程は、少なくとも1種のカチオン性定着剤で紙の表面の処理を必要とする。好ましいカチオン性定着剤は、ポリアミンとその誘導体、ポリイミンとその誘導体、ポリエチレンイミンとその誘導体、ポリエチレンアミンとその誘導体、アミン/アミド縮合物、ジアリルジメチル塩化アンモニウム(DADMAC)とその共重合体、ポリ塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムと塩化ナトリウムからなる群より選択される。最も好ましいカチオン性定着剤は、ポリエチレンポリアミン誘導体、脂肪族ポリアミンおよびアミン/アミド/ホルムアルデヒドの縮合生成物であり、記号表示Tinofix(登録商標)ECO−N、Tinofix(登録商標)APおよびTinofix(登録商標)ECO−WSPのもとで市販されている。
【0018】
第二の好ましい態様において、本発明は、第一の工程において、紙を
a) 水溶性のカチオン性直接染料、または塩基性染料、場合により、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物、場合により、
c) 1種以上の助剤、および
d) 水
を含む組成物で、そして、第二の工程において、アニオン性定着剤でコーティングする、紙の表面着色の方法に関する。
【0019】
好ましくは、塩基性のカチオン性染料は、モノ−、ビス−、およびトリスアザヘミシアニンからなる群より選択され、そしてC.I.ベーシックレッド46、C.I.ベーシックブルー3および41で例示されうるが、第一の工程において用いられる組成物の好ましい成分b)およびc)は、アニオン性染料または反応染料とともに使用するための上述のものに対応する。
【0020】
しかしながら、塩基性染料を紙に塗布する場合、第二の工程においてアニオン性定着剤を利用することが好都合である。好ましいアニオン性定着剤は、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびデスモルフェンのような脂肪族アミンに加えて、アニオン性でんぷんまたは高分子材料、すなわちアニオン性置換基を担持するラテックスである。
【0021】
本発明の方法において用いられるさまざまな成分の量は、例えば所要の色強度および、塗布方法、特にサイズプレス塗布、ピックアップの程度に依存して広範囲にわたって変化してもよい。
【0022】
しかしながら、さらなる好ましい態様において、本発明は、第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物をサイズプレスによって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二のサイズプレス塗布において、定着剤0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を含有する水溶液で紙の表面を処理し、その後、紙を乾燥に付す方法に関する。
【0023】
あるいはまた、よりさらなる態様において、本発明が、第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物をサイズプレスによって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二の工程において、定着剤0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を含有する水溶液を紙の表面に噴霧し、その後、紙を乾燥に付す方法に関するように、定着剤を噴霧技術によって紙に塗布するが、第一の工程の組成物をサイズプレス塗布により紙に塗布してもよい。
【0024】
塗布のさらなる可能な1つの方法において、よりさらなる態様において、本発明が、第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物を噴霧によって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二の工程において、定着剤0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を含有する水溶液を紙の表面に噴霧し、その後、紙を乾燥に付す方法に関するように、染料と定着剤の組成物の両方を噴霧技術によって紙の表面に塗布してもよい。
【0025】
上述する方法のいずれかによる処理から得られた紙は、本発明の1つのさらなる態様を構成する。
【0026】
以下の例は、実際に制限する意図なしに本発明を例示することに役立つ;部および%は、特に明記しない限り重量である。
【0027】
実施例
【0028】
I. アニオン性直接染料と定着剤のサイズプレス塗布
【0029】
原紙
塗布に使用された原紙を、10%保持された粘土(プラス1%炭酸カルシウム)フィルター、0.4% Hercat(登録商標)27JP 偽中性サイズ、1% みょうばんおよび0.02% Percol(登録商標)230保持剤を含有する、35°SRに打ち延ばされた硬質および軟質のパルプ材の70/30混合物から、UMIST、Manchester、UKで実験用の抄紙機上で加工した。得られた紙は、基礎重量103g/mおよびコブ値95g/mを有する。
【0030】
塗布
5m/分で、圧力200kPasを用いて、温度50℃で作動するマティスサイズプレスにおいて、原紙を、最初に染料の規定量(表1参照)、Raiprint(登録商標)501(スチレン/アクリラート/でんぷん共重合体)結合剤6gを含有する溶液で処理して、(表1参照)およびサイズプレスでんぷんの10%水溶液(Perfectamyl(登録商標)4692)44gが存在する場合、溶液を水で100gにする。
次いで、湿った染料を、第二のサイズプレス塗布において、1、2.5および5% Tinofix(登録商標)ECO−N定着剤を含有する溶液で処理し、その後、紙を乾燥した。
次いで、得られた染色物の色の濃度を測定して、それによって表1で示された値が、紙の表面に実際に存在する染料の量を考慮するために補正した。
さらに、水および50%アルコール/水に関する染色物のブリード堅牢性を、最初に脱イオン水およびアルコール/水のそれぞれで染色物を湿潤させ、そして脱イオン水およびアルコール/水のそれぞれで湿潤させた白いフィルター紙の2枚のシート間に湿った染色物を配置することにより測定した。得られたサンドウィッチ状のものを、1kgのおもりを用いて加重した2枚のガラス板の間に配置した。室温で1時間後、個々のシートを乾燥して、ブリード堅牢性をグレースケールにより評価して、それにより値1(非常に強いブリード)〜5(ブリード0)を割り当てた。
測定の結果を、下記の表1にまとめる:
【0031】
【表1】




DB=C.I.ダイレクトブルー;DY=C.I.ダイレクトイエロー;DR=C.I.ダイレクトレッド
St=でんぷん;Lat=Raiprint(登録商標)501(スチレン/アクリラート/でんぷん共重合体)
上記の結果は、本発明の方法に従ってそれらの塗布から得られる水およびアルコールの両方に対して染料の改善されたブリード堅牢性を証明する。
【0032】
II. アニオン性直接染料のサイズプレス塗布および定着剤の噴霧
さらなる一連の実験において、アニオン性直接染料を、再びサイズプレス中に塗布して、上述のように、定着剤とともに、1%および3%の濃度で、塗料および水溶液(Wagner W 600)を噴霧するために設計されている市販のハンドスプレーで噴霧することにより塗布した。
実験の結果を、下記表2に並べる:
【0033】
【表2】


DB=C.I.ダイレクトブルー;DY=C.I.ダイレクトイエロー;DR=C.I.ダイレクトレッド
St=でんぷん;Lat=Raiprint(登録商標)501(スチレン/アクリラート/でんぷん共重合体)
再度、上記の結果は、本発明の方法に従って、それらの塗布から得られる水およびアルコールの両方に対して染料の改善されたブリード堅牢性を証明する。
【0034】
III. 反応染料と定着剤のサイズプレス塗布
第三の一連の実験において、塗布Iの直接染料を、反応染料に置き換えて、再度、上記のPt.Iのもとで記載されるような原紙をサイズプレスにおいて塗布して、それにより、Raiprint(登録商標)501(スチレン/アクリラート/でんぷん共重合体)結合剤を、Pensize(登録商標)730(スチレン/ブタジエン/でんぷん共重合体)5gに置き換えた。
第二のサイズプレスにおいて、定着剤、Tinofix(登録商標)ECO−Nの1、2.5および5%の溶液を、次いで上記のように湿潤染色に適用した。
実験の結果を、下記の表3にまとめる:
【0035】
【表3】


RB=C.I.リアクティブブルー;RO=C.I.リアクティブオレンジ
St=でんぷん;Pen=Pensize(登録商標)730(スチレン/ブタジエン/でんぷん共重合体)
再度、上記の結果は、本発明の方法に従って、それらの塗布から得られる水およびアルコールの両方に対して染料の改善されたブリード堅牢性を証明する。
【0036】
IV. 反応染料のサイズプレス塗布および定着剤の噴霧
さらなる一連の実験を、反応染料のサイズプレス塗布に続いて、上記のPt.IIに記述されるような1%および3%の濃度で、定着剤、Tinofix(登録商標)ECO−Nの噴霧塗布により行った。
実験の結果を、下記の表4にまとめる:
【0037】
【表4】


RY=C.I.リアクティブイエロー;RR=C.I.リアクティブレッド
Pensize(登録商標)730が単独の結合剤である場合、でんぷん溶液を加えず、その8.0gをサイズプレス浴に加え、次いで水で100gにした。
再び、上記の結果は、本発明の方法に従って、それらの塗布から得られる水およびアルコールの両方に対して染料の改善されたブリード堅牢性を証明する。
【0038】
V. 2工程および1工程の表面染色と定着の比較
さらなる一連の実験において、本発明の2工程染色および定着の方法の利点を、以下のとおり示す:
第一のサイズプレス塗布において、アニオン性直接染料(それぞれ、C.I.ダイレクトレッド239およびC.I.ダイレクトレッド254)を、Pt.1のもとで記載されたようなサイズプレス浴中で、でんぷん単独あるいはでんぷんとPensize(登録商標)730(6g)またはでんぷんとRaiprint(登録商標)501(6g)の組合せのいずれかと一緒に、Pt.1の原紙に塗布した。第二の塗布において、乾燥の前に、Pt.2のもとで上述されるように、Tinofix(登録商標)ECO−Nの0.7%溶液を、次いで噴霧により紙に塗布し、その後乾燥した。
直接の比較として、染料、結合剤および定着剤(0.4%および0.7%の濃度で)をサイズプレス浴に一緒に加え、単一の工程において、上記のPt.1のもとで記載されるようなサイズプレスにおいて紙の表面に塗布し、その後乾燥した。
比較実験の結果を、下記の表5にまとめるが、表において、文字a)、c)およびe)で指定された例は、定着剤で処理していないが、文字b)、d)およびf)で指定された例は、本発明の例に対応する。文字g)、h)、i)、j)、k)およびl)で指定された例は、比較目的のための1工程サイズプレス塗布方法に対応する:
【0039】
【表5】


Pptn.=沈殿
【0040】
明らかに、上記の結果は、2工程の方法における定着剤の改善された効果だけでなく、単一の工程の方法と比較して、本発明の方法を用いることにより色の強度において大きな改善も証明し、それにより、特に、1工程の塗布から得られる色の強度の損失が明白である。
【0041】
VI. アニオン性直接染料と定着剤の噴霧塗布
最終の一連の実験において、アニオン性直接染料(それぞれ、C.I.ダイレクトレッド239およびC.I.ダイレクトレッド254)を、サイジングを施していないかまたはオフセットの中性サイズ紙(ONS)のいずれかに、実験用の抄紙機(紙の35%乾燥重量)上に形成後か、または乾燥後のいずれかで直接に塗布した。その後、第二の噴霧塗布において、染色を定着剤Tinofix(登録商標)WSPの1%溶液で処理し、その後乾燥した。
【0042】
噴霧塗布を、塗料と水溶液(Wagner W 600)用の市販のハンドスプレーを使用して行った。
実験の結果を下記の表6にまとめる:
【0043】
【表6】


ブリード堅牢性試験を、濾紙をガラス繊維シートに置き換えることを除いては、Pt.1において記載されるように行った。
【0044】
結果は、本発明の方法に従って、成分を噴霧することによっても水に対して染料のブリード堅牢性における改善を明らかに証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の工程において、紙の表面を水溶性染料で処理し、続いて、第二の工程において、紙の表面を定着剤で処理することを特徴とする、紙の表面着色の方法。
【請求項2】
水溶性染料が、アニオン性直接染料、酸性染料、塩基性染料、カチオン性直接染料および反応染料からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一の工程において、紙を、
a) 水溶性のアニオン性直接染料、酸性染料または反応染料、場合により、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物、場合により、
c) 1種以上の助剤、および
d) 水
を含む組成物で、そして第二の工程において、カチオン性定着剤でコーティングする、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
第一の工程において、紙を、
a) 水溶性の塩基性染料またはカチオン性直接染料、場合により、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物、場合により、
c) 1種以上の助剤、および
d) 水
を含む組成物で、そして第二の工程において、アニオン性定着剤でコーティングする、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項5】
天然の結合剤が、でんぷんまたはでんぷん誘導体であり、合成の結合剤が、1以上のジエン類および/または不飽和モノマーから誘導された合成高分子材料(合成ラテックスまたはラテックス/でんぷんの共重合体)である、請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項6】
定着剤が、カチオン性であり、ポリアミンとその誘導体、ポリイミンとその誘導体、ポリエチレンイミンとその誘導体、ポリエチレンアミンとその誘導体、アミン/アミド縮合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)およびそのポリマー、ポリ塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムからなる群より選択される、請求項1〜3および5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
定着剤が、アニオン性であり、アニオン性でんぷんとアニオン性ラテックスを含む群より選択される、請求項1、2、4および5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物をサイズプレスによって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二のサイズプレス塗布において、紙の表面を定着剤0.1〜10重量%を含有する水溶液で処理して、その後、紙を乾燥に付す、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物をサイズプレスによって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二の工程において、定着剤0.1〜10重量%を含有する水溶液を紙の表面に噴霧して、その後、紙を乾燥に付す、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
第一の工程において、
a) 水溶性染料0.1〜20重量%、
b) 天然または合成の結合剤あるいはその混合物0〜20重量%、
c) 1種以上の助剤0〜20重量%、および
d) 100重量%になるように加えた水
を含む組成物を噴霧することによって紙の表面に塗布し、
続いて、乾燥なしで、第二の工程において、定着剤0.1〜10重量%を含有する水溶液を紙の表面に噴霧して、その後、紙を乾燥に付す、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の方法により処理された紙。

【公表番号】特表2009−515064(P2009−515064A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539401(P2008−539401)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068007
【国際公開番号】WO2007/054452
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】