説明

紙カップ原紙

【課題】
紙カップ製罐時におけるトップカール適性に優れ、自動販売機の切り離し結合カムに係合する適切な口径を有し、手に把持した際にも潰れにくい紙カップを提供する。
【解決手段】最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを用い、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下であり、好ましくは、テーバーこわさが縦方向で5.0mN・m以上、かつ横方向で2.5mN・m以上である紙カップ用原紙で、3層以上の多層抄き合わせにより、最裏層に濾水度360〜460mlCSFのNBKPを20〜40質量%、濾水度320〜420mlCSFのLBKPを60〜80質量%配合し、かつ最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを100質量%配合し、 最裏層の坪量が最表層の坪量の1.0倍以上1.5倍以下で、パルプ含有液の吐出速度(J)とワイヤー速度(W)との比(J/W)が最表層では1.000±0.005の範囲であり、かつ最裏層では0.995以下又は1.005以上で抄造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
紙カップ製罐時におけるトップカール適性に優れ、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙とその製造方法、また、自動販売機の切り離し結合カムに係合する適切な口径を有し、手に把持した際にも潰れにくい紙カップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動販売機における紙カップ供給装置は、上下方向に積み重なった多数のカップを収納する円筒状のカップ収納器と、このカップ収納器の下端部に設けられ、最下位の紙カップを、その上の紙カップと切り離し、落下させるためのカップドロップリングなどを備えている。カップドロップリングには、中央部にカップを通過させる貫通孔を有するケース上のカップドロップリング本体と、このカップドロップリング本体内に、貫通孔に臨むように配置された複数のカップ切り離しカムを有している。
【0003】
これらのカップ切り離しカムはいずれも、ほぼ円柱状に形成されており、鉛直軸線を中心に回転自在に構成されている。また、これらのカップ切り離しカムは、販売待機時に、最下位の紙カップのトップカール部に係合することにより、紙カップ収納器内のカップを支持する一方、販売時に、回転に伴ってその係合を解除するとともに、最下位の紙カップのすぐ上の紙カップのトップカール部に係合することにより、最下位の紙カップのみを切り離し、落下させるように構成されている。
【0004】
紙カップ用原紙に要求される品質のひとつとしてトップカール適性が挙げられる。従来、飲料用紙カップは、紙カップ用原紙の片面にラミネートを施し、ラミネート面を内側にしてカップ外側に巻き込むトップカール処理によりコップの口元となる部分(以降、トップカール部)を成形する。
【0005】
紙カップにおけるトップカール部は、紙カップ上端開口部周縁に金型をあてることにより開口部を広げ、紙カップ上端開口部側から特定の大きさのカール形状が施された金型をあて紙カップ上端開口部周縁に対して外側にカールさせる。さらに紙カップを下方へ押し込むことにより、下方にセットされたカール形状が施された金型の曲面に沿ってガイドさせて内側へ巻き込み、トップカール部を成形する。使用する金型は、製造する紙カップのサイズにより使い分けられ、各紙カップのサイズごとに口径が定められている。
【0006】
トップカール加工処理において、トップカール部の径が小さいと総じて紙カップの口径が小さくなるため、自動販売機内の切り離しカムに係合できず、販売待機時に紙カップが落下してしまうという問題が発生する。
【0007】
また、一般的に紙カップ表面には各種の印刷が施されている。印刷適性を付与する手段として、紙カップ用原紙中へのLBKPの高配合やパルプの叩解を進める手法があるが、こわさが低下するため、カップを把持して飲料を飲む際に紙カップが潰れやすくなるという欠点があった。こわさの低下を防ぐため、NBKPを多配合する手法もあるが(特許文献1)、NBKPはLBKPに比べて繊維形態が太くて長いため、NBKPの多配合により紙力が改善される一方で地合が不均一となり、印刷適性およびラミネート適性が劣る。
【特許文献1】特開平5−272090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記紙カップ用原紙として、紙カップ製罐時におけるトップカール適性が優れ、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙、ならびトップカール適性に優れ、印刷適性およびラミネート適性が良好であり、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙の製造方法、また、自動販売機の切り離し結合カムに係合する適切な口径を有し、手に把持した際にも潰れにくい紙カップの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、トップカール加工処理時に紙カップ用原紙の厚さ方向に付与される力を検討した結果、以下の(1)〜(4)の本発明を完成するに至った。
(1)3層以上の多層抄き合わせにより抄造され、最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを用い最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下である紙カップ用原紙。
(2)テーバーこわさが縦方向で5.0mN・m以上、かつ横方向で2.5mN・m以上である前記(1)記載の紙カップ用原紙。
(3)3層以上の多層抄き合わせにより抄造され、下記抄造条件[1]〜[3]をすべて満たして抄造する(1)および(2)に記載の紙カップ用原紙の製造方法。
[1] 最裏層に濾水度360〜460mlCSFのNBKPを20〜40質量%、濾水度320〜420mlCSFのLBKPを60〜80質量%配合し、かつ最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを100質量%配合。
[2] 最裏層の坪量が最表層の坪量の1.0倍以上1.5倍以下。
[3] パルプ含有液の吐出速度(J)とワイヤー速度(W)との比(J/W)が最表層では1.000±0.005の範囲であり、かつ最裏層では0.995以下又は1.005以上。
(4)前記(1)〜(2)のいずれかに記載の紙カップ用原紙を基紙とする紙カップ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙カップ製罐時におけるトップカール適性に優れ、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙が得られる。
本発明の紙カップ用原紙の製造方法によれば、トップカール適性に優れ、印刷適性およびラミネート適性が良好であり、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙を製造できる。
また、本発明によれば、自動販売機において販売待機時に紙カップが切り離し結合カムから落下することなく、また手に把持した際にも潰れにくい紙カップが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、紙カップ用原紙のトップカール適性、印刷適性、ラミネート適性および紙カップを把持した際の潰れにくさをすべて満たすために、表層・中層・裏層の3層抄き以上にする。3層以上の多層抄きにすることにより、各層の原料のパルプ配合、フリーネス、坪量、J/W比を変えることができるので、紙カップ用原紙の表面・裏面の品質特性を変えることができる。
【0012】
本発明の紙カップ用原紙は、3層以上の多層構造において、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下であることが好ましい。上記引張強度の比(表/裏)が1.00以下の場合は、トップカール部の径を、トップカール加工処理工程において使用された金型の大きさにすることができるため、紙カップの口径が適切な大きさとなる。従って、自動販売機での販売待機時における紙カップの切り離し結合カムからの落下が防ぐことができる。上記引張強度の比(表/裏)が1.00より大きい場合は、トップカール部が金型に沿って形成されず、縦長の楕円となってしまうため、トップカール部の径が小さくなり紙カップの口径が小さくなるため、自動販売機の切り離し結合カムに係合できず、販売待機時に紙カップが切り離し結合カムから落下してしまう。
【0013】
本発明の紙カップ用原紙のJIS P 8125により測定するテーバーこわさは、縦方向で5.0mN・m以上、かつ横方向で2.5mN・m以上であることが好ましい。縦方向のテーバーこわさが5.0mN・m未満、または横方向のテーバーこわさが2.5mN・m未満であると、こわさが低く、カップを把持した際にカップが潰れやすくなる。また、縦方向の上限値は25mN・mで、この値を超えると、トップカール加工時に内側の面にかかる圧縮応力が大きくなり座屈や割れが発生しやすくなる。横方向の上限値は30mN・mで、この値を超えると、紙カップの胴部を筒状にして貼り合わせる工程において
貼合部がはがれやすくなるため。
【0014】
本発明の紙カップ用原紙中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調製剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加できる。
また、本発明の紙カップ用原紙には、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド等の各種表面バインダーや、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等の表面サイズ剤、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の導電剤が塗布または含浸されていてもよい。
【0015】
本発明の紙カップ用原紙は、3層以上の多層構造において、最裏層に濾水度360〜460mlCSFのNBKPを20〜40質量%、濾水度320〜420mlCSFのLBKPを60〜80質量%配合し、かつ最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを100質量%配合して製造することが好ましい。最表層と最裏層を上記範囲にて製造することにより、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)を1.00以下にすることができる。
最表層のLBKPの濾水度が420mlCSFを超えると、得られる紙カップ用原紙の表面の地合が不均一となり、印刷適性が劣化する。最裏層のNBKPの配合が40%以上、または濾水度が460mlCSFを超えると、得られる紙カップ用原紙の地合が不均一となり、ラミネート適性が劣化する。また、最裏層のNBKPの配合が20質量%以下、濾水度が460mlCSFを超え、かつ最表層のLBKPの濾水度が420mlCSFを超えると、得られる紙カップ用原紙の紙力が低下し、カップを把持した際にカップが潰れやすくなる。最表層のLBKPの濾水度が320mlCSF未満、または最裏層のNBKPの濾水度が360mlCSF未満であると、抄紙工程での脱水が遅延する。
【0016】
本発明の紙カップ用原紙の最表層、最裏層以外に使用するパルプについては、特に限定するものではなく、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルSGP、RGP、BCTMP、CTMP等の機械パルプや、あるいはケフナ、竹、藁、麻等のような非木材パルプも使用出来る。これらを単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよいが、操業性の面から最表層・最裏層以外の層に使用するパルプは統一して使用することが好ましい。
【0017】
本発明の紙カップ用原紙は、3層以上の多層構造において、最裏層の坪量が最表層の坪量の1.0倍以上1.5倍以下となるように調整して製造することが好ましい。最裏層の坪量が最裏層の坪量の1.0倍未満であると、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00を超えてしまう可能性がある。また、最裏層の坪量が最表層の坪量の1.5倍を超えると、最表層の付量が少なくなり、印刷適性が劣化する。
最表層および最裏層以外を形成する各層の坪量については、特に限定はするものではないが、多層構造を形成する各層において各層の坪量が表裏対称となるように調整して製造することが好ましい。例えば、表・表下・裏下・裏の4層では表下・裏下層の坪量が同等になるように、表・表下・中・裏下・裏の5層では表下・裏下層の坪量が同等になるように調整して製造することが好ましい。
【0018】
本発明の紙カップ用原紙は、パルプ含有液の吐出速度(J)とワイヤー速度(W)との比(J/W)が最表層では1.000±0.005の範囲になるように、最裏層では0.995以下又は1.005以上の範囲になるように調節して製造することが好ましい。J/W比が上記範囲の場合は、最裏層の繊維配向強度が最表層よりも高くなるため、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)を1.000以下にすることができる。また、最表層のJ/W比が1.000±0.005の範囲の場合は、地合が均一となるため、印刷適性が良好な紙が得られる。3層以上の多層構造において最表層・最裏層以外の各層のJ/W比については、特に限定はない。
【0019】
抄紙方法については3層以上の多層抄き以外では、特に限定するものではなく、例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性の中性抄紙法等の全ての抄紙方法に適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機を適宜組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明の紙カップは、上記紙カップ用原紙を基紙とするため、自動販売機の切り離し結合カムに係合する適切な口径であり、印刷適性に優れ、手に把持した際にも潰れにくい。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例及び明細書において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
下記実施例1〜6および比較例1〜7により得られた紙カップ用原紙について、下記の測定方法により測定した結果を表1に示す。
【0022】
(引張強度比)
紙カップ用原紙を佐川製作所製紙研削装置に供して、最表層の引張強度を測定する場合は、裏面から最表層以外の層を研削して除去し、残りの部分の引張強度をJIS P 8113に従って測定した。また、最裏層の引張強度を測定する場合は、表面から最裏層以外の層を研削して除去し、残りの部分の引張強度をJIS P 8113に従って測定した。研削の砥石には寸法φ50.8×12.7mmを使用した。
上記方法にて測定した最表層と最裏層の引張強度から、次式に従って引張強度比を求める。
(引張強度比) = (最表層の引張強度) / (最裏層の引張強度)
【0023】
(テーバーこわさ)
JIS P 8125に従って測定した。
【0024】
(トップカール適性)
得られた紙カップ用原紙を用いて7オンスサイズの紙カップに製罐した際における、紙カップの口径を測定し、下記基準で評価した。
○ : 紙カップの口径が72.6±0.3mmである。
× : 紙カップの口径が72.3mm未満である。
【0025】
(印刷適性)
本発明の紙カップ用原紙にグラビア印刷を行い、その印刷状態を目視により評価した。
○ : 良好
× : 劣る
【0026】
(ポリエチレンラミネート適性(接着性))
本発明の紙カップ用原紙にポリエチレンラミネートを施し、原紙表面とポリエチレンとの間の浮きの有無を目視により評価した。
○ : 接着性が良好
× : 接着性が劣る
【0027】
パルプの製造方法
(パルプA)
ダブルディスクリファイナー(以下、DDR)を用いてLBKPを濾水度が360mlに調整し、パルプAを得た。
【0028】
(パルプB)
DDRを用いてNBKPを濾水度410mlに調整し、パルプBを得た。
【0029】
(パルプC)
DDRを用いてLBKPを濾水度390mlに調整し、パルプCを得た。
【0030】
(パルプD)
DDRを用いてLBKPを濾水度420mlに調整し、パルプDを得た。
【0031】
(パルプE)
DDRを用いてNBKPを濾水度460mlに調整し、パルプEを得た。
【0032】
(パルプF)
DDRを用いてLBKPを濾水度450mlに調整し、パルプFを得た。
【0033】
(パルプG)
DDRを用いてNBKPを濾水度485mlに調整し、パルプGを得た。
【0034】
実施例1
以下に示す紙料・条件にて多層抄き合せ長網抄紙機により、5層により構成された米坪220g/mの紙カップ用原紙を作成した。各層の張合は、それぞれ3.0%の酸化澱粉水溶液を絶乾固形分で0.3g/m塗布し、各層を貼合した。また、表面サイズ処理として、表面にポリエチレンイミンを固形分で0.65質量%、ポリビニルアルコールを固形分で1.0質量%、パラフィンワックスエマルジョンを固形分で0.25質量%を塗布し、裏面にポリビニルアルコールを固形分で1.0質量%、パラフィンワックスエマルジョンを固形分で0.25質量%を塗布した。
【0035】
(表層)
パルプ配合:パルプA 100%
坪量:31g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.68質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で2.00質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.84質量%添加。
【0036】
(表下層)
パルプ配合:パルプC 100%
坪量:42g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.50質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で1.70質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.27質量%添加。
【0037】
(中層)
パルプ配合:パルプC 100%
坪量:60g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.50質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で1.70質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.27質量%添加。
【0038】
(裏下層)
パルプ配合:パルプC 100%
坪量:42g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.50質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で1.70質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.27質量%添加。
【0039】
(裏層)
パルプ配合:パルプA 70%、パルプB 30%
坪量:45g/m
J/W:1.010
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.68質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で2.00質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.84質量%添加。
【0040】
実施例2
以下に示す紙料・条件にて多層抄き合せ長網抄紙機により、3層により構成された米坪220g/mの紙カップ用原紙を作成した。各層の張合は、それぞれ3.0%の酸化澱粉水溶液を絶乾固形分で0.3g/m塗布し、各層を貼合した。また、表面サイズ処理として、表面にポリエチレンイミンを固形分で0.65質量%、ポリビニルアルコールを固形分で1.0質量%、パラフィンワックスエマルジョンを固形分で0.25質量%を塗布し、裏面にポリビニルアルコールを固形分で1.0質量%、パラフィンワックスエマルジョンを固形分で0.25質量%を塗布した。
【0041】
(表層)
パルプ配合:パルプA 100%
坪量:42g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.68質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で2.00質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.84質量%添加。
【0042】
(中層)
パルプ配合:パルプC 100%
坪量:117g/m
J/W:1.000
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.50質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で1.70質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.27質量%添加。
【0043】
(裏層)
パルプ配合:パルプA 70%、パルプB 30%
坪量:61g/m
J/W:1.010
サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を固形分で0.68質量%添加。
紙力増強剤:ポリアクリルアミドを固形分で2.00質量%添加。
硫酸バンド:Alとして8%の水溶液品を固形分で0.84質量%添加。
【0044】
実施例3
表層と裏層のパルプ配合および坪量を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
(表層)
パルプ配合:パルプD 100%
坪量:38g/m
(裏層)
パルプ配合:パルプD 80%、パルプE 20%
坪量:38g/m
【0045】
実施例4
表層と裏層のパルプ配合およびJ/W比を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
(表層)
パルプ配合:パルプD 100%
J/W:1.005
(裏層)
パルプ配合:パルプD 80%、パルプE 20%
坪量:0.994
【0046】
実施例5
表層と裏層の坪量およびJ/W比を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
(表層)
坪量:38g/m
J/W:1.005
(裏層)
坪量:38g/m
J/W:0.994
【0047】
実施例6
表層と裏層のパルプ配合、坪量およびJ/W比を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
(表層)
パルプ配合:パルプD 100%
坪量:38g/m
J/W:1.005
(裏層)
パルプ配合:パルプD 80%、パルプE 20%
坪量:38g/m
J/W:0.994
【0048】
比較例1
表層と裏層のパルプ配合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
表層:パルプF 100%
裏層:パルプF 70%、パルプB 30%
【0049】
比較例2
表層と裏層のパルプ配合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
表層:パルプA 100%
裏層:パルプA 40%、パルプB 60%
【0050】
比較例3
表層と裏層のパルプ配合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
表層:パルプA 100%
裏層:パルプA 70%、パルプG 30%
【0051】
比較例4
表層と裏層のパルプ配合を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
表層:パルプF 100%
裏層:パルプF 90%、パルプG 10%
【0052】
比較例5
表層と裏層の坪量を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された再生葉書用紙を作成した。
表層:42g/m
裏層:34g/m
【0053】
比較例6
表層と裏層の坪量を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された再生葉書用紙を作成した。
表層:27g/m
裏層:49g/m
【0054】
比較例7
表層と裏層のパルプ配合、坪量およびJ/W比を以下に変更した以外は実施例1と同様にして5層により構成された紙カップ用原紙を作成した。
(表層)
パルプ配合:パルプA 100%
坪量:38g/m
J/W:1.020
(裏層)
パルプ配合:パルプA 80%、パルプB 20%
坪量:38g/m
J/W:0.999
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1、表2から明らかなように、3層以上の多層構造において、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下である、実施例1〜5の紙カップ用原紙はトップカール適性が良好であり、縦方向および横方向のテーバー剛度が適切な範囲であるため、カップを把持しても潰れにくい。また、各層のパルプ配合、濾水度、坪量、J/W比を特定の範囲内で製造した実施例1〜5の紙カップ用原紙は、トップカール適性および印刷適性、ラミネート適性が良好であり、カップを把持した際にも潰れにくい強度を有する。
これに対し、濾水度が420mlより大きいLBKPを表層に100%配合した比較例1の紙カップ用原紙は、表面の地合が不均一となり、印刷適性が不十分であった。
裏層にNBKPを40質量%を超えて配合した比較例2の紙カップ用原紙は、裏面の地合が不均一となりラミネート適性が不十分であった。
濾水度が460mlより大きいNBKPを裏層に30%配合した比較例3の紙カップ用原紙は、裏面の地合が不均一となりラミネート適性が不十分であった。
濾水度が460mlより大きいNBKPを裏層に20質量%を下回って配合し、濾水度が420mlより大きいLBKPを表層に100%配合した比較例4の紙カップ用原紙は、テーバーこわさが特定の範囲を逸脱し、カップを把持した際にカップが潰れやすく、また表面の地合が不均一となり印刷適性が不十分であった。
裏層の坪量が表層の坪量に対して1.0倍を下回った比較例5の紙カップ用原紙は、表層と裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が特定の範囲を超過し、トップカール適性が不十分であった。
裏層の坪量が表層の坪量に対して1.0倍を下回った比較例6の紙カップ用原紙は、印刷適性が不十分であった。
表層と裏層のJ/Wが特定の範囲を超えて製造した比較例7の紙カップ用原紙は、表層と裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が特定の範囲を超過し、トップカール適性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の多層抄き合わせにより抄造され、最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを用い、最表層と最裏層の縦方向の引張強度の比(表/裏)が1.00以下であることを特徴とする紙カップ用原紙。
【請求項2】
テーバーこわさが縦方向で5.0mN・m以上、かつ横方向で2.5mN・m以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ用原紙。
【請求項3】
3層以上の多層抄き合わせにより抄造され、下記抄造条件[1]〜[3]をすべて満たして抄造することを特徴とする請求項1および請求項2に記載の紙カップ用原紙の製造方法。
[1] 最裏層に濾水度360〜460mlCSFのNBKPを20〜40質量%、濾水度320〜420mlCSFのLBKPを60〜80質量%配合し、かつ最表層に濾水度320〜420mlCSFのLBKPを100質量%配合。
[2] 最裏層の坪量が最表層の坪量の1.0倍以上1.5倍以下。
[3] パルプ含有液の吐出速度(J)とワイヤー速度(W)との比(J/W)が最表層では1.000±0.005の範囲であり、かつ最裏層では0.995以下又は1.005以上。
【請求項4】
請求項1または2に記載の紙カップ用原紙を基紙とすることを特徴とする紙カップ。

【公開番号】特開2012−219381(P2012−219381A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82764(P2011−82764)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】