説明

紙包装容器

【課題】帯状包材を筒状にして内容液を充填して成る紙容器に差込んだストローから内溶液が噴出することを抑制する紙包装容器を提供する。
【解決手段】紙容器1の正面12と裏面14に各々三組のエンボス17が長さW1で形成され、エンボス17の両端部17aはアール加工で弧状に形成される。頂面10と底面11間を高さHとすると、三組のエンボス17は頂面10と平行に正面12と裏面14を上下間隔H/4で区画する位置に備える。紙容器1の正面12と裏面14の幅Wは他の一対の側面13、15の幅Sよりも広幅で、エンボス17の長さW1は正面12の幅Wの50%以上で紙容器1の内部側に向かって凸状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強度ある液体充填紙容器に関し、詳しくは、紙容器を把持して液体内容物をストローで吸飲する際に液体内容物が不用意にストローから噴出することを抑制する紙包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙包装容器に関する従来技術として特許文献1に掲載の内容が知られている。図8に示すように、紙容器50は包材50aを縦線シールS1と横線シールS2によって外形を直方体形状に形成して内部に飲料等の内溶液51を入れ、スポーツや屋内外活動時等に手軽に持運びができて内容液51をストロー52で吸飲することができるので利便性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−307575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、子供、特に乳幼児がこの紙容器50を手53で持って吸飲する際に、紙容器50の把持加減に不慣れなため不必要な把持力によって内溶液50aの圧力が高まり、稀に、内容液50aが矢印Pで示すようにストロー52から噴出し上手に吸飲できないことがある。
【0005】
本発明は、かかる従来技術に鑑みなされたものであって、帯状包材を縦線シールで筒状にして内容液を充填し、この筒状の両端部を横線シールで密封且つ切断して成る紙容器を把持する場合に、紙容器のストローホールに差込んだストローから内溶液が噴出するのを抑制する紙包装容器の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、帯状包材を縦線シールで筒状にして内容液を充填し、横線シールで密封且つ切断して連続的に原型容器を形成し、帯状包材に備える折り目線を介して原型容器の一対の横線シールの両端部を折って頂面と底面を形成するとともに四側面を形成して成る直方体形状でストロー穴を備える紙容器である。紙容器の側面にその側面を区画する断面凹状のエンボスが形成されることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の紙包装容器であって、エンボスは紙容器の一対の広幅側の側面に、頂面と底面間を区画する断面凹状のエンボスが少なくとも三組形成されることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の紙包装容器であって、エンボスの長さは紙容器の側面の幅の50%以上の領域に形成されることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紙包装容器であって、エンボスの長さ方向の両端部は弧状に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、帯状包材を縦線シールで筒状にして内容液を充填し頂面と底面を形成するとともに四側面を形成して成る直方体形状でストロー穴を備える紙容器において、紙容器の側面に断面凹状のエンボスが形成され、矩形形状の側面はエンボスによって小区画化される。このため、側面が小区画化されることによって側面における面外方向の強度が補強されて側面全体として強度が向上するので、消費者が紙容器の側面をもって把持した状態で側面の撓みが減少し、紙容器のストローホールに差込んだストローから内溶液が不意に噴出することを抑制できるので紙容器の品質性が向上する。特に、紙容器の把持加減に不慣れな乳幼児にとって有効である。
【0011】
請求項2の発明によれば、紙容器の一対の広幅側の側面に、頂面と底面間を区画する断面凹状のエンボスが少なくとも三組形成されるので、一対の矩形形状の側面は各々エンボスによって四区画以上に小区画化される。このため、一対の側面が小区画化されることによって側面における面外方向の強度が補強されるので請求項1の効果をさらに確実に得ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、エンボスの形成される長さは紙容器の側面の幅の50%以上の領域なのでエンボスによって側面の補強が確保できて請求項1又は請求項2の効果と同じ効果が確実に得られる。
【0013】
請求項4の発明によれば、エンボスの長さ方向の両端部は弧状に形成されるので、エンボスの形成時や紙容器の搬送時等に衝撃が掛かった場合でも衝撃が分散するのでこの両端部にクラック等の発生が回避できるので請求項1乃至請求項3の効果と同じ効果がさらに確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における、充填機2の包材繰出部3から帯状包材4を繰り出して筒状包材6にし、内溶液Qを充填した後に横切断して形成される紙容器1の製造工程を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における、直方体形状の紙容器1の一対の広幅側の側面としての正面12に、頂面10と底面11間を区画する断面凹状のエンボス17が三組形成された状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における、図2のA−A斜視図で紙容器1の側面としての裏面14にエンボス18が三組形成された状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における、帯状包材4に折り曲げ線19とエンボス17、18(18a、18b)が形成された状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態における、紙容器1に用いる帯状包材4の断面構成図である。
【図6】本発明の実施形態における、(a)は図4のB−B断面図、(b)は図4のC−C断面図である。
【図7】本発明の実施形態における紙容器の、(a)は、正面12にエンボスが形成されない状態の強度計算用のモデル図、(b)は、正面12がエンボス17によって4区画された状態の強度計算用のモデル図である。
【図8】従来例における、ストロー52で内溶液51を飲用するため紙容器50を手で把持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の実施形態>
以下に、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
<紙包装容器の構成>
【0016】
本発明の紙容器が充填機で形成される過程の概略説明をする。図1に示すように、紙容器1に牛乳、清涼飲料水等の内溶液Qを充填する充填機2は無菌室に設置される。充填機2の包材繰出部3に紙容器1を形成する包材としての帯状包材4がリール状で装着され、容器1の頂部10と成る側を先頭にして連続的に繰り出される。帯状包材4は図示しない複数のローラーによって案内され、下方に向けて搬送されながら図示しないフォーミングリング等によって徐々に湾曲して筒状に形成され、図示されない縦線シール装置によって熱圧着で縦線シール5が施されて筒状包材6になる。そして、筒状包材6が下方に搬送される間に、上方から充填用パイプ7を介して内溶液Qが筒状包材6に充填される。
【0017】
筒状包材6は所定の間隔毎に熱圧着でシールされて横線シール8が形成され、この横線シール8を図示しない切断装置で切断して枕状の原型容器9が分離される。原型容器9は図示しない成形装置によって、一対の横線シール8の両端部を折り曲げてそれぞれ頂面10と底面11を形成するとともに四側面としての正面12、側面13、裏面14、側面15とで合計六面から成る直方体形状の紙容器1が完成する。正面12と裏面14は他の一対の側面13、15よりも幅広に形成され、裏面14の中央部に縦線シール5が配置される。紙容器1にはエンボス17、18が形成される。
【0018】
図2、図3、図4に示すように、紙容器1の正面12に三組のエンボス17が長さW1で形成され、頂面10と底面11間を高さHとすると三組のエンボス17は頂面10と平行に上下間隔H/4で正面12を区画する。なお、紙容器1の正面12、裏面14の幅Wは他の一対の側面13、15の幅Sよりも広幅(W>S)である。裏面14側の三組のエンボス18は帯状包材4の両側に分離してそれぞれ一対のエンボス18a、18bが形成され、この一対のエンボス18a、18bは縦線シール5の領域5aで重なり連結して長さW1のエンボス18が形成される。エンボス17、18の長さW1は正面12、裏面14の幅Wの50%以上で、エンボス17、18の両端部17a、18cが正面12、側面13、裏面14、側面15を形成する折り目19(m3〜m6)に当接しないように幅Wの95%以下の範囲で形成される。なお、両端部17aはアール加工で弧状に形成される。頂面10にはストローを差込むためのストロー穴21を備える。
【0019】
帯状包材4は、幅の広い図示されない原紙を複数箇所で縦方向に裁断することによって形成され、帯状包材4には容器成型を容易とするための折り目19(m1、m2、m3〜m6、等)と正面12、裏面14を補強するためのエンボス17、18が紙容器1の内部側に向かって凸状に形成される。なお、エンボス18の一対のエンボス18a、18bはそれぞれ帯状包材4の両端部5b、5cに亘って形成される。
【0020】
図5、図6(a)、(b)に示すように、帯状包材4の構成は、紙容器1の外側から内側にかけて順に、外側層1a、紙基材1b、接着層1c、バリヤー層1d、内側層1eから成る。外側層1a、内側層1eは低密度ポリエチレン樹脂で、接着層1cはポリエチレン、エチレン共重合体等の樹脂で、バリヤー層1dはアルミ箔等でそれぞれ形成される。紙基材1bの外側表面には予め紙容器1としてのデザイン1fが印刷される。なお、図5においては各構成を判り易く示すため乱尺で示しているが、実際には紙基材1bの厚さに比べて外側層1a、接着層1c、バリヤー層1d、内側層1eの厚さは薄いので、帯状包材4の厚さDは紙基材1bの厚さと略等しい。
【0021】
エンボス17、18と折り目19は帯状包材4の厚さDの略半分の深さD1で形成され、エンボス17、18の幅K1は紙容器1を折り曲げ形成する折り目19の幅Kより広幅で、好ましくは、幅K1は幅Kの二倍以上に形成される。エンボス17、18と折り目19は、予め、外側層1a、接着層1c、バリヤー層1d、内側層1eを形成する前の段階で紙基材1bに紙容器1の内部側に向かって凸状に形成される。折り目19は帯状包材4を90度に回転Rして凸状部を挟むように折り曲げて紙容器1を形成する。
<紙包装容器の作用>
【0022】
図7(a)、(b)に示すように、内容量250cc用の細長い直方体の紙容器をモデルとして、その正面12を上下方向に四等分する位置にエンボス17を備えた場合に撓みが如何に変化するかを考察する。なお、紙容器は弾性構造ではないので力学解析することは至難であり、正面12に対するエンボス17の強度貢献度も算出困難である。このため、紙容器に弾性理論を敢えて当て嵌め正面12が等分布加重を受ける矩形板として扱い、材料力学の解析便覧を用いて正面12に生じる最大撓みを算出し、エンボス17による撓み防止効果を推察する。なお、正面12は隣接する側面13、15と頂面10と底面11によって四周が支持され、外力である消費者の把持力は正面12に等分布加重pで負荷されるものとする。
【0023】
図7(a)に示すように、エンボス17が無い状態の紙容器1の正面12における中心点Gの撓みを求める。いま、正面12の領域を、高さH=130mm、幅W=53mm、紙厚=tmmとすると、H/W≒2.5である。H/W≒2.5の矩形板の場合、便覧よりε1(イプシロン:歪係数)=0.12である。ここで、Δ(デルタ:撓み)=pW4/(E・t3)で、Δmax1(最大撓み:中心点G)=ε1・Δなので、Δmax1=0.12Δである。Eは弾性係数である。
【0024】
次に、図7(b)に示すように、正面12の高さH=130mmの領域が三組のエンボス17で四等分されエンボス17に撓みが生じないとすると、各区画の高さH1≒33なので、H1/W≒33/53≒0.6<1である。この場合、便覧より、ε2(イプシロン:歪係数)=0.044である。ここで、Δ(デルタ:撓み)=pW4/(E・t3)で、Δmax2(最大撓み:各区画の中心点G1)=ε2・Δなので、Δmax2=0.044Δである。
【0025】
従って、紙容器1の正面12が三組のエンボス17で四等分された場合の各区画12aの中心点G1の最大撓みと、エンボス17が形成されない場合の中心点Gの最大撓みを比較すると、(Δmax2)/(Δmax1)=(0.044Δ)/(0.12Δ)=1/2.7となり、中心点G1の撓みは中心点Gの撓みに対して減少比1/2.7と推察される。なお、エンボス17にも撓みが若干発生することを考慮すると、正面12の中心点G2の撓みの減少比は1/2.7より少ない。
【0026】
このように、エンボス17により紙容器1の正面12が四区画される効果によって面強度が増した各区画12aの中心点G1の撓み或いは正面12の中心点G2は、エンボス17を設けない場合の中心点Gの撓みよりも減少するので、紙容器1の使用経験に未熟な乳幼児等が紙容器1を把持して圧縮した場合でも、不意に内溶液が噴出すことを抑制することができる。なお、各区画の中心点G1に集中加重が掛かると想定した場合でも同様に撓み及び容積の減少効果が得られる。
【0027】
エンボス17の幅K1は紙容器1を折り曲げ形成するための折り曲げ線19の幅Kより二倍以上の広幅で形成すると、広い幅K1によって四区画されたそれぞれの区画は実質的に更に小区画されるので中心点G1における撓みは若干であるが更に減少する。なお、広い幅K1であっても一対の突出部17aの深さD1は変わらないのでエンボス17自体の面外方向の強度は略同じである。
【0028】
エンボス17の深さD1が紙厚Dの略半分の深さまで形成されるのでエンボス17としての強度を十分保持して小区画された正面12の強度を高めることができる。紙容器1の裏面14は図3に示すように、縦線シール5が二重に重なるため表面12よりも面剛性が高いので、裏面14の撓みは表面12よりも少なくなる。
【0029】
エンボス17の水平長さW1は正面12の幅Wの50%以上の領域に形成されるので有効的に正面12の強度向上に貢献できる。エンボス17の両端部17aはアール加工で形成されるので、エンボス形成時及び形成後の両端部17aにおける紙基材1bのクラック発生が防止できるので内溶液の漏れが発生せず、且つ、正面12の強度保持に有効的に貢献できる
【0030】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、エンボス17又はエンボス18は紙容器の側面に一組又は二組、或いは四組以上で形成しても構わない。各側面のエンボス17又はエンボス18は等間隔でなくてもよく、紙容器の底辺に対して傾斜して設けることもできる。複数のエンボスを隣接して配置すると各エンボスの効果が集積するので当該領域の撓みを集中して減少することができる。エンボス17、18は折り目19と異なる深さで形成してもよく、エンボス17、18を紙容器1の外部側に向かって凸状に形成することもできる。
【0031】
エンボス17、18の適用は、6角柱状の紙容器、プリズマと称される頂面および底面が4角形で胴体部が8角形の柱状紙容器、ウェッジと称される底面は4角形で頂部は横線シールを直線状に形成したクサビ形の紙容器等々色んな形状の紙容器に対して実施できる。また、バリヤー層1dを備えない紙容器1にも適用できる。
【0032】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、液体食品などを包装充填する包装容器の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ‥‥ 紙容器
10 ‥‥ 頂面
11 ‥‥ 底面
12 ‥‥ 正面
13 ‥‥ 側面
14 ‥‥ 裏面
15 ‥‥ 側面
17 ‥‥ エンボス
17a ‥‥ 端部
19 ‥‥ 折り目
H ‥‥ 高さ
S ‥‥ 幅
W ‥‥ 幅
W1 ‥‥ 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状包材を縦線シールで筒状にして内容液を充填し、横線シールで密封且つ切断して連続的に原型容器を形成し、前記帯状包材に備える折り目線を介して前記原型容器の一対の前記横線シールの両端部を折って頂面と底面を形成するとともに四側面を形成して成る直方体形状でストロー穴を備える紙容器であって、
前記紙容器の側面にその側面を区画する断面凹状のエンボスが形成されることを特徴とする紙包装容器。
【請求項2】
請求項1に記載の紙包装容器であって、前記エンボスは前記紙容器の一対の広幅側の側面に、前記頂面と底面間を区画する断面凹状のエンボスが少なくとも三組形成されることを特徴とする紙包装容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙包装容器であって、前記エンボスの長さは前記紙容器の側面の幅の50%以上の領域に形成されることを特徴とする紙包装容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紙包装容器であって、前記エンボスの長さ方向の両端部は弧状に形成されることを特徴とする紙包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102136(P2011−102136A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257824(P2009−257824)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】