説明

紙厚検出装置

【目的】 複数個の変位検出器単体がその上部で連結されるように一体成形することによって、不良紙幣の選別の重送防止を可能にした変位検出装置の簡素化を図る。
【構成】 紙幣Pを給送する主ローラ1の上部に接して回転し垂直方向にのみ変位可能に従ローラ2を支持する。従ローラ2は4個の分割ローラ2bがそれぞれ独立して回転可能に互いに連結される。分割ローラ2bの上には自由端部3bがそれぞれ連接し他端3cは同一軸3bに枢支された4個の長片3aを設ける。そして、長片3aの自由端部3bとの間に一定間隔をおいて上部にそれぞれ変位検出器単体40aが配列され、その上端が連結されるように変位検出器40を一体に成形する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は紙片の厚さを検出する装置に関し、特に金融装置の紙幣の厚さ検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紙片等の厚さを検出する装置は、例えば、プリンタにおける記録紙の重送防止や、現金自動支払機等の金融装置における不良紙幣の選別や紙幣の重送防止等多種多様な分野で使用されている。以下金融装置の紙幣厚さ検出装置を例に図3に示す斜線図を用いて説明する。駆動軸1aによつて回転する主ローラ1は上部の従ローラ2との間で厚さ検出物である紙幣Pを右側から左側へ給送する。従ローラ2は軸2aが上下方向にのみ変位可能に構成されており、主ローラ1と同一軸長を有し、かつ、複数の幅狭い分割ローラ2bが独立して上下動可能に互いに連結されている。これらの分割ローラ2b上部外周には複数個(図の場合4個)の導電板(金属板)3の各単体3aの自由端部3bが載置され、他端3cは軸3dに枢支されている。一方、導電板3の自由端部3bの上方には一定間隔をおいて各導電板単体3aに対向して変位検出器4が設置されている。従って、紙幣Pが主,従ローラ1,2間を右から左へ通過する際は、紙幣Pの厚さ分だけ導電板3の自由端部3bが上昇し、変位検出器4が導電板3の変位分を検知していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構成の紙厚検出装置では、複数の変位検出器を一個一個筺体等(図示せず)にねじで取付けているため、広い実装スペースが必要であり、また、組立てが煩雑になる。さらに、厚さ検出の精度向上のために、従ローラの分割ローラ数を増やして、これに導電板の長片数を対応させ、さらには、紙幣の検出幅を縮小化することによって検出位置数を増やそうとしても、これによって、各変位検出器の配列ピッチが小さくなるため、筺体への取付は更に困難になる等組立て上の問題点もあった。
【0004】この発明は、このような従来の技術の有していた実装スペースを広く必要としたり、組立て性が悪い等の問題点を除去するために、少なくとも2個以上の変位検出器を一体化し、アッセンブリとして構成することにより、組立ての安易な紙厚検出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、駆動される給紙用主ローラと、この主ローラに接して回転し、かつ、垂直方向にのみ変位可能に支持された複数の分割ローラからなる従ローラと、この従ローラの分割ローラにそれぞれ自由端部が対向して載置され、かつ、他端は同一軸に枢支された複数個の長片からなる導電板と、この導電板上方に一定間隔をおいて対設された複数の検出部を垂設した一体の変位検出器とによって構成されたもので、上述の主ローラと従ローラとの接触面を紙片が通過した時に、従ローラ及び導電板が紙片の厚さだけ上下に変位する量を変位検出器で検出することによって、紙片の厚さを検知するようにしたものである。
【0006】
【作用】この発明の金融機関等に用いられる紙厚検出装置は、従ローラは主ローラの軸長より小さい幅の複数の分割ローラがそれぞれ独立して上下動可能に構成されるほか、この分割ローラに対向して複数の導電板を設けると共に、さらに、各長片に対向して一体成形された変位検出器の複数の単体を設けたので、紙幣が主,従ローラ間を通過すると変位検出器は導電板の微少回動による変位量を検知する。また、各変位検出器単体は従ローラの分割範囲が対向する紙幣の幅を分担して、その厚さを検出することにより、端が折れ曲がった紙幣や一部分にテープを貼り付けた紙幣等も適確に検出することができる。
【0007】
【実施例】以下、この発明の紙厚検出装置を金融機関に使用される紙幣厚さ検出装置に適用した場合の実施例について図面を参照して説明する。図1は金融機関の紙幣厚さ検出装置を示す要部斜線図であって、図2は紙幣厚さ検出装置を構成する紙幣厚さ検出器の断面図である。図1,2において、図3と同一部分には同一符号を付してある。従って、本発明においても、所定の駆動源(図示せず)によって駆動される給紙用ローラ1の垂直上方にはこれに接して駆動回転させられる従ローラ2が上下動可能に支持されている。また、従ローラ2は複数(図の場合4個)の分割ローラ2bが一体に連結されて主ローラ1と同一寸法に組み立てられており、これらの分割ローラ2bは互いに独立して上下動可能に互いに連結されている。なお、この従ローラ2に連結される導電板3も従来と同一に構成されている。
【0008】しかし、紙幣通過時における導電板3の変位を検出する変位検出器40は、導電板3の4枚の長片3aにそれぞれ対向して同一ピッチで配列されてはいるが、各単体40aの上端がすべて連結されるように一体にプラスチック等で成形することにより、1個の紙厚検出器アッセンブリとして形成されている。ところで、図2からも分かるように、40は一体成形された変位検出器であり、また、5は変位検出単体40aの下端部に設けられている変位検出コイルである。この変位検出コイル5には高周波電流が通電してあり、各コイル5と対向する導電板3の長片3aとの相対位置により、コイル5の磁界が変化することを利用して導電板3の変位を検出することが可能である。また、前記変位検出コイル5は導電板3の長片3aと同数かつ同ピッチになるように位置決めされ、上部のみを一体に連結した形状のアッセンブリとして構成される。なお、従ローラ2,導電板3及び変位検出器40を分割構造にした理由は、紙幣Pの幅を複数に分割して、その分割区分における厚みの変化を検出することによって、端が折れ曲がった紙幣や、一部分にテープが貼付けされた紙幣等を検知するためである。
【0009】次に、本実施例の動作について説明する。まず、搬入されてきた入金紙幣Pが主ローラ1と従ローラ2間を通過する時、従ローラ2は紙幣Pの厚さ分だけ上昇する。このため、導電板3(長片3a)は軸3dを支点として回動し、その自由端部3bは従ローラ2と共に上昇する。この時変位検出コイル5に高周波電流を通電しておくと、変位検出コイル5に面している導電板(長片3a)3には誘導起電力が発生し、これによって渦電流が流れ、磁界を作る。この磁界が変位検出コイル5と鎖交してそのインダクタンスを変化させる。導電板3が変位検出コイル5に近づけば近づくほど(紙幣が厚ければ厚いほど)インダクタンスの値が小さくなる。これを利用して導電板3の変位検出コイル5の軸方向の変位即ち紙幣の厚さを検出することができる。
【0010】なお、従ローラ2,導電板3及び変位検出コイル5はそれぞれ複数個(本実施例では4個)に分割されたユニット同志が対向しており、従ローラ2の分割数即ち4個分だけ紙幣の幅を分担してそれぞれの厚さを検出できるので、端部が折れ曲がった紙幣や、一部分にテープが貼付けされた紙幣等を検知することができて、不良紙幣の選別や紙幣の重送防止等の効果が得られる。
【0011】ところで、上記実施例では、高周波コイルを利用した変位検出器について説明したが、レーザ等の光の反射を利用したものや、超音波の反射を利用したものなど、他の方法を用いた変位検出器でも、同様に実施が可能である。
【0012】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、以下に記載されるような効果を奏する。変位検出器を複数個一体に成形したので、一部品として組込むことが可能になり、また、導電板と共に配列ピッチを小さくすることが可能になる。結果として、組立てが簡素化され、複数の変位検出器の配列を小さくして紙幣厚さの検出精度の向上化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す要部斜視図である。
【図2】本発明の変位検出器と導電板との関係を示す要部断面図である
【図3】従来例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
1 主ローラ
2 従ローラ
3 導電板
4,40 変位検出器
P 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】 給紙用主ローラと、該主ローラの上部に接して回転し、かつ、上下動可能に支持された従ローラと、該従ローラと自由端部が連動し、かつ、他端を枢支された導電板と、該導電板の自由端部上に一定間隔をおいて配設された変位検出器とから成る紙厚検出装置であって、上記従ローラは複数の分割ローラが連結され各分割ローラがそれぞれ独立して上下動可能であり、上記導電板は前記従ローラの分割ローラと対向する複数の長片からなり、上記変位検出器は上端部が一体に連結された複数の変位検出器単体が前記複数の長片と一定間隔をおいて対設されたものであることを特徴とする紙厚検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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