説明

紙含有樹脂組成物、その製造方法及びそれから得た成形品

【課題】本発明の目的は、PPC用紙等上質紙の古紙、再生困難なラミネート紙の全体を再利用して、資源の有効活用を目指した紙含有樹脂組成物を提供することにある。すなわち、紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗いエステル化された粉砕物、酸化チタンと樹脂原料との混練性を改善することで、紙の未分散物をなくして均一に混合分散し、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善する。
【解決手段】本発明に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリオレフィン系樹脂が主要成分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上質紙、ラミネート紙の断裁屑、回収された上質紙若しくはラミネート紙の古紙又はこれらの混合物を粉砕して樹脂原料と混合してなる紙含有樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、粒径の粗い紙の粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、紙の未分散物をなくして均一に混合分散させ、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、紙の含有率を増加させることができる紙含有ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木質系材料と樹脂との混練物の成形性を向上させる目的で、紙に対する機械的・化学的処理を施すことによって木質系材料を微細化させると共に、成形用途に応じて樹脂を選定し、樹脂と混練する方法が採られている。この機械的・化学的処理の例として、所定の粒度まで粉砕した木質系材料を多塩基酸無水物などでエステル化して微細化し、樹脂との混練性を高める方法がある(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3651117号公報
【特許文献2】特許第3933315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、紙については、前記機械的・化学的処理例は見当たらず、機械的処理だけでは、紙の含有率をある範囲を超えて配合した場合は、成形加工時の熱流動性が低下したり、成形品の機械的強度が低下したりするなどの問題があった。
【0005】
本発明の第一の目的は、成形品の機械的強度を低下させることなく、解砕又は粉砕された紙素材と熱可塑性樹脂とを混練して成形用組成物を作るときの混練組成物の熱溶融流動性を向上させることにある。すなわち、上質紙、ラミネート紙の断裁屑、回収された上質紙若しくはラミネート紙の古紙又はこれらの混合物の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗い粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、紙の未分散物をなくして均一に混合分散し、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、紙の含有率を増加させても射出成形などの成形性が良好な紙含有樹脂組成物を提供することにある。紙の含有率を増加させることで、填料を除いた紙素材の含有量が従来以上に高めることも目的とする。
【0006】
本発明の第二の目的は、本発明に係る紙含有樹脂組成物を用いて、紙の含有率が高く、変色及び臭気がなく、吸水率が少なく、衝撃強度に優れた紙含有樹脂成形品を提供することにある。
【0007】
本発明の第三の目的は、二軸押出機を用いた混練を行うことによって、紙の未分散がなく、均一に混合分散された紙含有樹脂組成物を得るための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、紙の粉砕物に使用する紙の組成と該粉砕物との関係、及び樹脂を混合したときの作業性と紙含有樹脂組成物の品質との関係について鋭意検討を進めた結果、前記目的を同時に達成できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリオレフィン系樹脂が主要成分であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン樹脂単独又はポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合物である場合が含まれる。
【0011】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記多塩基酸無水物が無水マレイン酸であり、かつ、エステル化によって導入された無水マレイン酸の割合が紙素材に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。紙含有樹脂組成物の流動性が改善され、吸水率も少なくなる。紙の未分散がなく均一に混合分散されやすい。
【0012】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記アルカリ土類金属化合物がマグネシウム化合物であり、かつ、酸化マグネシウム換算で全質量に対し0.1〜5質量%含有していることが好ましい。有機酸を中和することによって、変色及び臭気の発生を抑えることが可能となる。
【0013】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記酸化チタンの含有量が紙素材に対して2〜15質量%であることが好ましい。酸化チタンによって、紙含有樹脂組成物の流動性が改善され、機械的強度が向上する。
【0014】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記紙がさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙であることが好ましい。上質紙、ラミネート紙の断裁屑、回収された上質紙若しくはラミネート紙の古紙又はこれらの混合物であり、さらしクラフトパルプを多く含有することで、紙含有樹脂組成物の強度が高まる。
【0015】
本発明に係る紙含有樹脂組成物では、前記粉砕物の紙素材(填料を除く)の含有量が、51質量%以上であることが好ましい。すなわち、環境配慮型紙含有樹脂組成物とすることができる。
【0016】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法は、さらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、前記紙の粉砕物を多塩基酸無水物でエステル化する工程と、エステル化した紙粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを混練し、かつ、前記アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、得られた混練物をさらに二軸押出機で混練して紙含有樹脂組成物を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る紙含有樹脂成形品の製造方法では、前記紙の粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることが好ましい。良好な混練性が得られると共に、粉砕が容易でロングラン操業できる。
【0018】
本発明に係る紙含有樹脂成形品は、本発明の紙含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紙含有樹脂組成物によって、解砕又は粉砕されたさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する上質紙の裁断屑又は回収された上質紙の古紙及び/又はさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙と、熱可塑性樹脂とを混練して成形用組成物をつくるときの混練組成物の熱溶融流動性を改良することができる。すなわち、本発明の紙含有樹脂組成物は、前記紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径の粗い粉砕物と樹脂原料との混練性を改善することで、紙の未分散物をなくして均一に混合分散させ、その結果、紙含有樹脂組成物の流動性を改善することによって、ラミネート紙の含有率を増加させても射出成形などの成形性が良好である。
【0020】
本発明の紙含有樹脂成形品は、本発明に係る紙含有樹脂組成物を用いることで、解砕又は粉砕されたさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する上質紙の裁断屑又は回収された上質紙の古紙及び/又はさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する原紙をベースとしたポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑及び/又は該ポリエチレンフィルムラミネート紙の回収古紙の含有率を高くすることができ、しかも変色及び臭気がなく、衝撃強度に優れる。
【0021】
本発明の紙含有樹脂組成物の製造方法では、多塩基酸無水物及びアルカリ土類金属化合物による反応と、酸化チタンの機械的作用による微細化の促進によって、かつ、二軸押出機を用いた混練を行うことによって、紙の未分散がなく均一に混合分散された流動性の良好な紙含有樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。また、発明の効果を奏する限り、実施形態を変形してもよい。
【0023】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリオレフィン系樹脂が主要成分である。前記紙は、さらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙であることが好ましい。また、さらしクラフトパルプを含有する紙と、TMP(サーモメカニカルパルプ)、GP(グランドパルプ)等の中質紙とを組み合わせて、紙全体として、さらしクラフトパルプを70質量%以上含有している場合も含まれる。また前記紙は、針葉樹さらしクラフトパルプを含有する原紙をベースとしたラミネート紙、又は、該ラミネート紙とラミネート前のその原紙とを組み合わせたものでもよい。
【0024】
上質紙は、さらしクラフトパルプだけでつくった紙であり、印刷用紙、筆記用紙等に使用される。その代表例は、いわゆるPPC用紙と呼ばれるコピー用紙であり、紙表面に白色顔料が塗布されていない印刷用紙である。また、その使用済みコピーの断裁屑、回収古紙であってもよい。資源の有効活用の効率が高まる。上質紙の原紙を構成するパルプは、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)を主体とし、その原紙中のLBKPの配合率は、少なくとも70質量%以上である。より好ましくは、80質量%以上である。LBKP70質量%未満の配合率では、本実施形態の紙含有樹脂組成物の強度適性が不十分となりやすい。
【0025】
ラミネート紙は、原紙の片面又は両面に膜厚20〜50μmのポリエチレン樹脂がラミネートされている。ここでラミネート紙は、液体容器用のラミネート紙、ラミネート紙の断裁屑又はラミネート紙の回収古紙のそれぞれ単独の使用、ラミネート紙及びラミネート紙の断裁屑の組み合わせの使用、ラミネート紙及びラミネート紙の回収古紙の組み合わせの使用、ラミネート紙の断裁屑及びラミネート紙の回収古紙の組み合わせの使用、又は、ラミネート紙とラミネート紙の断裁屑とラミネート紙との回収古紙の組み合わせの使用の各形態とすることが好ましい。資源の有効活用の効率が高まる。その代表例は、いわゆるミルクカートンと呼ばれる液体容器用のラミネート紙であり、若しくはその印刷断裁屑(以下、「印刷トリミング屑」という。)であり、又は、牛乳パックなどの回収古紙でもよい(以後、これらを総称して「ラミネート古紙」と呼ぶ。)。原紙は、坪量が300〜500g/m、紙厚が0.4〜0.6mm、密度が0.7〜0.6g/cmの範囲にあることが好ましい。ラミネート紙の原紙を構成するパルプは、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)を主体とし、その原紙中のNBKPの配合率は、少なくとも70質量%以上である。より好ましくは、80質量%以上である。NBKPが70質量%未満の配合率では、本実施形態の紙含有樹脂組成物の強度適性が不十分となりやすい。ラミネートされたフィルムの材料としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂である。
【0026】
さらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙を粉砕することによって紙の粉砕物を得る。粉砕物の粉砕粒径は、その後の混錬条件の影響も受けるが、0.5〜2.5mmであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜2.0mmである。紙粉砕物の粒径は、所定のスクリーンを通過して得られるスクリーンの径で定義される(以下、単に「粒径」という。)。樹脂との混練性を良好にする為には、紙の粉砕粒径が一般的に細かい程よい。粉砕粒径を2.5mm以下とすることで良好な混練性が得られやすい。粉砕機の操業については、粉砕粒径が細かくなる程、スクリーン又は平網の目詰まりが起き易く、粉砕機内部の温度上昇による固定刃と回転刃の接触などの問題が発生しやすい。ポリエチレンなどの熱溶融しやすい樹脂をラミネートしたラミネート紙を粉砕する場合には、粉砕粒径が細かくなる程、樹脂の熱溶融によるスクリーン又は平網の目詰まりが起き易く、粉砕機内部の温度上昇による固定刃と回転刃の接触などの問題が発生しやすい。本発明者らの実験によれば、特に0.5mm未満の粒径に粉砕する場合には、粉砕機の操業が著しく困難となる結果であった。しかし、0.5mm以上の粒径では、この種のトラブルがほとんど発生することなくロングラン操業が可能になり、粉砕効率も向上した。
【0027】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、粉砕物及びポリオレフィン系樹脂が主要成分であり、これらの合計含有量は、85〜98質量%とすることが好ましく、より好ましくは90〜95質量%である。85質量%未満の場合は、流動性及び分散性で劣る場合があり、98質量%を超えると色の変色が目立ちやすい場合がある。ここで、粉砕物の含有量は、50〜70質量%とすることが好ましく、より好ましくは55〜60質量%である。50質量%未満の場合は、粉砕物の混入量が減ってリサイクル効率が劣り、70質量%を超えると流動性及び分散性で劣る場合がある。また、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、15〜48質量%とすることが好ましく、より好ましくは25〜43質量%である。15質量%未満の場合は、強度が低下する場合があり、48質量%を超えると粉砕物の混入量が減ってリサイクル効率が劣る。さらに、前記ポリオレフィン系樹脂には、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂、メチルペンテン樹脂などがあり、より好ましくは、ポリプロピレン樹脂単独又はポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合物であり、紙との相溶性の点でよい。
【0028】
本実施形態で使用する多塩基酸無水物は、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸又は無水コハク酸などがあり、そして樹脂と混練する前の紙の粉砕物に選択的に付加され、主としてパルプ繊維中のセルロース、ヘミセルロースをエステル化することによって、紙の粉砕粒径を細かくすることなく、粒径が粗い粉砕物の流動性の向上に効果がある。これらのうち無水マレイン酸がより好ましく、添加量は、紙素材に対して0.1〜5質量%の範囲で選ばれる。より好ましくは、0.5〜3質量%である。この量が0.1質量%未満では流動性向上の効果が不十分な場合があり、5質量%を超えると紙含有樹脂組成物及び紙含有樹脂成形品の物性が低下する場合がある。
【0029】
本実施形態で使用するアルカリ土類金属化合物は、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛などがあり、樹脂と混練するときに添加され、パルプ中の水分と反応し水酸化物に変化した後、エステル化後に残留した多塩基酸及び/又はパルプの熱分解によって生じる有機酸を中和することによって、臭気・ガスの発生を防止するのに有効である
。これらのうち酸化マグネシウムがより好ましく、添加量は、本実施形態に係る紙素材に対して0.1〜5質量%の範囲で選ばれる。より好ましくは、0.5〜3質量%である。この量が0.1質量%未満では中和の効果が不十分の場合があり、5質量%を超えると紙含有樹脂組成物及び紙含有樹脂成形品の物性が低下する場合があり、また経済的に好ましくなくなる。なお、紙含有樹脂組成物を形成した場合、例えば酸化マグネシウムを添加すると、酸化マグネシウムは、前記中和反応によってマグネシウム化合物となるため、紙含有樹脂組成物の状態から酸化マグネシウムの含有量を測定するときには、酸化マグネシウム換算で求める。
【0030】
本実施形態で使用する酸化チタンは、樹脂と混練するときに無機充填物成分として付加されるが、白色顔料として有効であると同時に、混練時の機械的作用によってパルプ繊維の微細化が促進されることによって、紙含有組成物の流動性を改善する。本発明に係わる紙含有組成物では、酸化チタンの含有量が紙素材に対して2〜15質量%が好ましい。3〜10質量%がより好ましい。酸化チタンの含有量が2質量%未満では流動性改善の効果が不十分であり、20質量%を超えると逆に流動性が低下する。また、無機充填物成分としての炭酸カルシウムは、白色顔料としても、流動性の改善に対しても有効ではない。
【0031】
本実施形態の紙含有樹脂組成物では、必要に応じて、紙粉砕物及び樹脂以外の成分を含有させてもよい。例えば、流動性向上剤を添加してもよい。
【0032】
本実施形態において使用される流動性向上剤の添加は、粉砕された紙粉砕物と樹脂を混練するときに配合する場合、又は紙含有樹脂組成物を成形するときに配合する場合のいずれの場合でもよい。流動性向上剤を含有させることで、成形時の発熱が防止され、成形時の成形性が向上する。なお、混練するときに流動性向上剤を配合する場合、成形時での効果だけでなく、混練時の摩擦による発熱を防止する効果も得られる。流動性向上剤は、成形時の摩擦による発熱を防止し、紙含有樹脂組成物の流動性を向上するものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸又はその塩、各種高級脂肪酸エステルが挙げられる。流動性向上剤の融点が100℃以下であることが好ましく、例えば
、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミドが挙げられる。これらを1種類用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
また、必要に応じて相溶化剤、樹脂の酸化防止剤、帯電防止剤などの助剤を本発明の効果に影響を与えない範囲で添加してもよい。
【0034】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物では、填料を除く紙素材の合計量が、51質量%以上であることが好ましい。環境配慮型紙含有樹脂組成物とすることができる。より好ましくは、51〜70質量%である。紙含有樹脂組成物中の紙素材以外の成分は、樹脂を主成分とする。紙の粉砕物には、その構成するすべての成分を含む。例えば、LBKP、LBKP以外のパルプ、原紙中の樹脂分、ラミネート紙の場合はラミネートフィルムを含む。
【0035】
本実施形態の紙含有樹脂組成物は、二軸押出機で混練することが好ましく、このとき未分散物が少なくなり、均質化されやすい。二軸押出機による処理は、1回よりも2回以上の方がより均質化させることができるため好ましい。このとき、100〜200℃の温度で混練することがより好ましい。二軸押出機で混練する前に、所定の割合になるように計量された紙の粉砕物及び樹脂並びに必要に応じて添加する流動性向上剤などの助剤をヘンシェルミキサーなどの混合機で予め均一に混合しておくことが好ましい。二軸押出機のスクリューによる流動、混練作用によって、繊維の解繊と切断とがなされ、紙含有樹脂組成物の分散性と流動性が改善される。
【0036】
本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、ASTM D1238‐04cで規定したMFR(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜55.0g/10minであることが好ましい。MFRがこの範囲に入る紙含有樹脂組成物は、さらしクラフトパルプを70質量%以上含有した紙の粉砕物を含有しているにもかかわらず、紙粉砕物と樹脂とが十分に均一分散されている。MFRが2.0g/10min未満であると、紙粉砕物と樹脂との分散が不十分である。また、LBKPを多く含有している本実施形態では、紙粉砕物と樹脂との分散が十分に為されると、MFRは55.0g/10minに近づく。このMFRの値は、二軸押出機で混練するときに、流動性向上剤の添加の有無によって大きく影響を受けない。また、JIS K 7209:2000「プラスチック−吸水率の求め方」D法に準じて測定した吸水率が、0.10未満であることが好ましい。JIS K 7113:1995「プラスチックの引張試験方法」に準じて測定した引張強さが、33MPa以上であることが好ましい。さらに、JIS K 7203:1995「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準じて測定した曲げ強さが、63MPa以上であることが好ましい。
【0037】
このように本実施形態に係る紙含有樹脂組成物は、さらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、前記紙の粉砕物を多塩基酸無水物でエステル化する工程と、エステル化した紙粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを混練し、かつ、前記アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、得られた混練物をさらに二軸押出機で混練して紙含有樹脂組成物を得る工程と、を有する製造方法で得ることができる。なお、ラミネート紙に、ラミネート前のその原紙を添加して使用してもよい。
【0038】
次に本実施形態に係る紙含有樹脂成形品は、本実施形態に係る紙含有樹脂組成物を射出成形機によって成形して得られる。本実施形態に係る紙含有樹脂成形品は、ASTM D1238‐04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜55.0g/10minであることが好ましい。ここで、紙含有樹脂組成物を得る工程及び/又は紙含有樹脂成形品を得る工程において、流動性向上剤を添加することが好ましい。
【0039】
このようにして得られた本実施形態に係る紙含有樹脂成形品は、多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂及びアルカリ土類金属化合物、酸化チタンを少なくとも含有し、粉砕物及びポリオレフィン系樹脂が主要成分である。ここでASTM D1238‐04cで規定したメルトマスフローレイト(MFR)(試験温度=190℃、試験荷重=10kg)が2.0〜55.0g/10minであることが好ましい。前記紙は好ましくは、NBKPを50質量%以上含有する。紙含有樹脂組成物のMFRの値と紙含有樹脂成形品にした後のMFRの値は、ほぼ同等となる。この紙含有樹脂成形品は、変色及び臭気がなく、衝撃強度が優れる。
【0040】
本実施形態の紙含有樹脂成形品では、含有されている上質紙が、PPC用紙等の上質紙の断裁屑若しくは回収された上質紙の古紙、又はポリエチレンフィルムラミネート紙の断裁屑若しくは回収古紙であることを含み、資源の有効活用がなされる。また、紙含有樹脂成形品中の填料を除く紙素材の合計量が、51質量%以上であることが好ましく、環境配慮型となる。紙含有樹脂成形品としては、例えば、皿、コップ、ボウル、スプーン、櫛などがある。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。また、例中の「%」「部」は、特に断らない限り「質量%」「質量部」を示す。
【0042】
(実施例1)
[紙粉砕物のA及びBの製造]
A.LBKPを95質量%含有し、坪量69g/m、厚さ92μm、密度0.75g
/cmの抄紙工程で発生した上質PPC用紙の端材の原紙を粉砕機(型式 BO‐25
75及びHaA‐2542:ホーライ社製)にて粉砕し、0.5mmφのスクリーンを通
過させ、紙の粉砕物を得た。
B.ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙が、NBKPを90質量%含有し、坪量
393g/m、厚さ0.48mm、密度0.82g/cmのミルクカートン印刷トリミング屑を粉砕機(型式 BO‐2575及びHaA‐2542:ホーライ社製)にて粉砕し、0.5mmφのスクリーンを通過させポリエチレンフィルムラミネート紙の粉砕物を得た。
[紙含有樹脂組成物の製造]
次いで、前記A、Bのそれぞれに対し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を、予備乾燥した紙の粉砕物に対し0.5質量%となる量を加え、エステル化を進めた。次に、エステル化した粉砕物に酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し8.0質量%となる量を加え、変性ポリプロピレン樹脂(商品名 ユーメックス1010:サンノプコ社製)を紙の粉砕物に対し0.5質量%となる量を加え、ポリプロピレン樹脂(商品名 J-5051HP:出光石油化学社製)を紙の粉砕物に対し30質量%となる量を加え、更に中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%となる量を加え、ヘンシェルミキサーで均一に混合し、その後デスクペレッター(型式 F−60:不二パウダル社製)及び二軸押出機に投入してペレット化し、紙含有樹脂組成物を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
[評価用射出成形品の製造]
紙含有樹脂組成物から、シリンダー設定温度180℃の射出成形機(型式 J35ELII:日本製鋼所社製)を用いて評価用射出成形品を作製した。ここで、紙粉砕物のAを用いたものを実施例1Aとし、紙粉砕物のBを用いたものを実施例1Bとする。
【0043】
(実施例2A)
実施例1の紙粉砕物のA製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから1.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を紙の粉砕物に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し6.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0044】
(実施例2B)
実施例1の紙粉砕物のB製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから1.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し6.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から1.5質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0045】
(実施例3A)
実施例2Aの紙粉砕物の製造において、粉砕物の原紙がLBKPを70質量%含有し、坪量64g/m、厚さ88μm、密度0.75g/cmの回収されたコピー用紙に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し10.0質量%とした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0046】
(実施例3B)
実施例2Bの紙粉砕物の製造において、粉砕物の原料を、ミルクカートン印刷トリミング屑から、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙がNBKPを80質量%含有し、坪量362g/m、厚さ0.47mm、密度0.78g/cmの回収牛乳パックに変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し12.0質量%とした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0047】
(実施例4A)
実施例3Aの紙含有樹脂組成物の製造において、紙粉砕物の配合量を、紙含有樹脂組成物の中の紙比率が55質量%となる量から紙含有樹脂組成物の中の紙比率が60質量%となる量に変更し、実施例3Aの紙粉砕物の製造において、スクリーンを1.0mmφのスクリーンから2.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を紙の粉砕物に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し3.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0048】
(実施例4B)
実施例3Bの紙含有樹脂組成物の製造において、紙粉砕物の配合量を、紙含有樹脂組成物の中の紙比率が55質量%となる量から紙含有樹脂組成物の中の紙比率が60質量%となる量に変更し、実施例3Bの紙粉砕物の製造において、スクリーンを1.0mmφのスクリーンから2.0mmφのスクリーンに変更し、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し3.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から2.0質量%となる量に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0049】
(実施例5A)
実施例1Aの紙含有樹脂組成物の製造における評価用射出成形品の製造において、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し12.0質量%となる量を加え、流動性向上剤として、エルカ酸アミド(商品名 アルフロー10:日本油脂社製)を、紙含有樹脂組成物100部に対して0.5部添加した以外は同じ方法で、評価用射出成形品を得た。
【0050】
(比較例1A)
実施例1Aの紙粉砕物の製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから3.0mmφのスクリーンに変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し1.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を無添加とした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0051】
(比較例1B)
実施例1Bの紙粉砕物の製造において、スクリーンを0.5mmφのスクリーンから3.0mmφのスクリーンに変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し3.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を無添加とした以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。この紙含有樹脂組成物の中の紙比率は、55質量%であった。
【0052】
(比較例2A)
実施例1Aの紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を紙粉砕物に対し0.5質量%から無添加に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を無添加とし、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から無添加に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0053】
(比較例2B)
実施例1Bの紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し0.5質量%から無添加に変更し、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し0.5質量%から無添加に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0054】
(比較例3A)
実施例3Aの紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を紙粉砕物に対し0.5質量%から無添加に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し18.0質量%となる量を加えた以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0055】
(比較例3B)
実施例3Bの紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)をパルプ成分に対し1.5質量%から無添加に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を紙の粉砕物に対し18.0質量%となる量を加え、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から無添加に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0056】
(比較例4A)
実施例3Aの紙含有樹脂組成物の製造において、無水マレイン酸(商品名 無水マレイン酸:日本油脂社製)を紙粉砕物に対し1.5質量%から無添加に変更し、酸化チタン(商品名 タイペークA-220:石原産業社製)を無添加とし、中和剤として酸化マグネシウム(商品名 酸化マグネシウム:富田製薬社製)を全質量に対し1.5質量%から無添加に変更した以外は同じ方法で、紙含有樹脂組成物及び評価用射出成形品を得た。
【0057】
前記実施例、比較例で用いた紙粉砕物及び紙含有樹脂組成物並びに評価用射出成形品の評価を次の方法で行い、その結果を表1と表2に示した。
【0058】
<紙比率>
紙含有樹脂組成物の中の紙の占める割合を紙比率と表示し、ここでは紙と炭酸カルシウムなどの填料の合計量を紙素材分とした。
【0059】
<MFR>
ASTM D1238‐04c「Standard Test Method for Flow Rates of Thermoplastics by Extrusi
on Plastometer」に準じて測定。試験温度=190℃、試験荷重=10kg。紙含有樹脂組成物について測定した。
【0060】
<繊維分散性>
紙含有樹脂組成物に所定量のカーボンブラックを配合して評価用射出成形品を作製し、繊維の分散の程度を次の基準で評価した。
×:繊維の未分散多数あり、劣り実用に耐えない。
△:繊維の未分散ややあり、やや劣り実用に耐えない。
○:繊維の未分散なし、優れる。
【0061】
<成形性>
紙含有樹脂組成物から成形品を作製する成形加工のときの作業性を次の基準で評価した。
×:成形品が得られなかった。
△:成形性が不良であり、実用に耐えない。
○:成形性が良好。
【0062】
<射出成形品の変色>
成形品を視感にて次の基準で判定した。
×:明らかな黄色味あり、劣り実用に耐えない。
△:黄色味ややあり、劣り実用に耐えない。
○:黄色身がなく、優れる。
【0063】
<射出成形品の臭気>
成形品の臭気を次の基準で判定した。
△:紙焼けの臭気がややあり、劣り実用に耐えない。
○:臭気なく、優れる。
【0064】
<引張強さ>
JIS K 7113:1995「プラスチックの引張試験方法」に準じて測定した。
【0065】
<曲げ強さ>
JIS K 7203:1995「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準じて測定した。
【0066】
<IZOD(アイゾット衝撃強度)>
ASTM D256‐04「Test Methods for Determination of thwPendulum Impact Resistance of Notched Specimens of Plastics」(ノッチなし)に準じて測定した。
【0067】
<吸水率>
JIS K 7209:2000「プラスチック−吸水率の求め方」D法に準じて測定した。
【0068】

【表1】

【0069】

【表2】

【0070】
実施例1A及び2Aでは、上質紙の原紙のLBKPが95質量%のPPC用紙の端材を使用して、また実施例1B及び2Bでは、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙のNBKPが90質量%のミルクカートン印刷トリミング屑を使用して紙含有樹脂組成物を作製した。実施例1A及び2Aのいずれの紙含有樹脂組成物も、LBKPの含有量が高いにもかかわらず、また、実施例1B及び2Bのいずれの紙含有樹脂組成物も、NBKPの含有量が高いにもかかわらず、粉砕物のエステル化と二軸押出機の混練とによって均一分散できたため、繊維分散性と成形性とが良好であり、得られた成形品は、変色及び臭気もなかった。実施例1A及び1Bでは、酸化チタンの添加量が多いためその効果によって熱流動性(MFR)が向上している。
【0071】
実施例3A及び4Aでは、紙の原紙のLBKPが70質量%の回収されたコピー用紙を使用して、また実施例3B及び4Bでは、ポリエチレンフィルムラミネート紙の原紙のNBKPが80質量%の回収牛乳パックを使用して紙含有樹脂組成物を作製した。実施例3A及び4Aのいずれの紙含有樹脂組成物も、LBKPの含有量が高いにもかかわらず、また、実施例3B及び4Bのいずれの紙含有樹脂組成物も、NBKPの含有量が高いにもかかわらず、粉砕物のエステル化と二軸押出機の混練によって均一分散できたため、繊維分散性と成形性が良好であり、得られた成形品は、変色及び臭気もなかった。実施例3A及び3Bでは、酸化チタンの添加量が多いためその効果によって熱流動性(MFR)が向上している。
【0072】
実施例5Aは、実施例1Aの配合と比較して、酸化チタンの添加量をさらに多くし、かつ、流動性向上剤を添加して評価用射出成形品を作製した。実施例1Aと同様に流動性は良好であった。
【0073】
比較例1A、1Bでは、粉砕物の粉砕粒径が大きい為、分散性が不十分となり繊維分酸性と成形性が不良であり、また、中和剤を添加しなかった為、得られた成形品は、変色及び臭気が見られた。
【0074】
比較例2A〜4A、2B、3Bでは、無水マレイン酸が無添加の為、いずれも分散性が不十分となり繊維分散性と成形性が不良であった。また、比較例2A、4A、2Bでは中和剤を添加しなかった為、得られた成形品は、変色及び臭気が見られた。また、比較例3A,3Bでは、酸化チタンの含有量が高く、強度の低下が見られた。
【0075】
機械的強度、特に引張強さ、曲げ強さ及び吸水率は、比較例と比べると実施例では良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多塩基酸無水物でエステル化された紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを少なくとも含有し、前記粉砕物及び前記ポリオレフィン系樹脂が主要成分であることを特徴とする紙含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン樹脂単独又はポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記多塩基酸無水物が無水マレイン酸であり、かつ、エステル化によって導入された無水マレイン酸の割合が紙素材に対して0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属化合物がマグネシウム化合物であり、かつ、酸化マグネシウム換算で全質量に対し0.1〜5質量%含有していることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸化チタンの含有量が紙素材に対して2〜15質量%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項6】
前記紙がさらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙であることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項7】
前記粉砕物の紙素材(填料を除く)の含有量が、51質量%以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の紙含有樹脂組成物。
【請求項8】
さらしクラフトパルプを70質量%以上含有する紙を粉砕して紙の粉砕物を得る工程と、
前記紙の粉砕物を多塩基酸無水物でエステル化する工程と、
エステル化した紙の粉砕物、ポリオレフィン系樹脂、アルカリ土類金属化合物及び酸化チタンを混練し、かつ、前記アルカリ土類金属化合物で有機酸を中和する工程と、
得られた混練物をさらに二軸押出機で混練して紙含有樹脂組成物を得る工程と、
を有することを特徴とする紙含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記紙の粉砕物の粉砕粒径が0.5〜2.5mmであることを特徴とする請求項8に記載の紙含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか一つに記載の紙含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする紙含有樹脂成形品。

【公開番号】特開2009−227803(P2009−227803A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74316(P2008−74316)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】