説明

紙塗工用共重合体ラテックス。

【課題】 耐ベッセルピック特性(ベッセルピック強度)に優れ、機械的安定性、ベタツキ性、塗工紙のドライピック強度に優れた紙塗工用共重合体ラテックスを提供すること。
【解決手段】 脂肪族共役ジエン30〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸3〜10重量%、シアン化ビニル5〜30重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(少なくとも芳香族ビニルおよび/または不飽和カルボン酸アルキルエステルを含む)1〜62重量%(単量体合計100重量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、重合の後半で芳香族ビニルおよび/または不飽和カルボン酸アルキルエステルのみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%添加して乳化重合した後、全pH調整剤のうち水酸化カリウムを重量比で1/3以上添加して得られる数平均粒子径が110〜220nmである紙塗工用共重合体ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスに関するものである。詳しくは、耐ベッセルピック特性に優れ、機械的安定性、ベタツキ性、塗工紙のドライピック強度に優れた紙塗工用共重合体ラテックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されている。季刊、月間紙等の定期刊行物の中にも、全ての頁に塗工紙が使用される場合もかなり増えている。特に、メールオーダービジネスにおけるダイレクトメールや商品カタログ等においては、そのほとんどが全ての項に塗工紙を使用している。
塗工紙は非塗工紙に比べ、白色度、光沢度、平滑度、印刷適性など多くの優れた点を有しているが、原紙を抄造したあとに紙塗工用組成物をブレードコーターやロールコーターなどを用いて塗工する工程が必要となるため、紙塗工用組成物の性能が最終的な塗工紙製品の品質に大きく影響する。このため、紙塗工用組成物には高いレベルの機械的安定性が求められている。
近年の印刷現場においてはオフセット印刷の高速化とともに広葉樹特有の導管の剥け(ベッセルピック)の問題が増加している。一般には抄紙工程でのデンプンサイズなどでベッセルピックの抑制に効果が見られるが、抄紙マシンの機械的な制約からサイズ工程が取れない、もしくは省略されるケースも増えており、ますますベッセルピック対策は重要視されている。
そのため、ベッセルピックに関しては従来からさまざまな技術改良が提言されており、そのうちのいくつかを例示すると、機械的な圧縮処理を施された広葉樹チップを含むチップを蒸解、漂白することによって製造したパルプを使用することによって、ベッセルピックの低減させる技術が特開平11−200268号公報(特許文献1)に紹介されており、また、抄紙工程において、紙ウエブの表裏を均等に搾水、脱水、乾燥することで紙層強度を向上させ、ベッセルピックの発生を抑制し良質な紙を製造できる紙の製造方法および抄紙機の技術が特開2004−190153号公報(特許文献2)に紹介されている。しかし、これらの技術においてはバインダーからの改良について提案されていない。
【0003】
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレンーブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレンーブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能あるいは最終的な塗工紙製品の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている。
特開平10−273897号公報(特許文献3)には、平均粒子径が40〜70nmの範囲内にあるスチレン・ブタジエン系ラテックスと還元末端基量(ウィルシュテッターシューデル法測定値)が0.09〜0.15mmol/gのデンプンあるいはその誘導体を含む塗被層を原紙の表面に設けることでトラッピングムラ、ベッセルピック強度を含む印刷表面強度が改良されるとの技術開示がある。
しかしながら、ベッセルピック強度の改良効果としては未だ十分に満足するレベルには至っておらず、更なる改良が強く求められていた。
【特許文献1】特開平11−200268号公報
【特許文献2】特開2004−190153号公報
【特許文献3】特開平10−273897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐ベッセルピック特性(ベッセルピック強度)に優れ、機械的安定性、ベタツキ性、塗工紙のドライピック強度に優れた紙塗工用共重合体ラテックスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、脂肪族共役ジエン系単量体30〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜10重量%、シアン化ビニル系単量体5〜30重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(少なくとも芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を含む)1〜62重量%(単量体合計100重量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、重合の後半で芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体のみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%添加して乳化重合した後、全pH調整剤のうち水酸化カリウムを重量比で1/3以上添加して得られる数平均粒子径が110〜220nmである紙塗工用共重合体ラテックスを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスは、耐ベッセルピック特性(ベッセルピック強度)に優れ、機械的安定性、ベタツキ性、塗工紙のドライピック強度に優れた塗工紙が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
【0008】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0009】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
【0010】
上記脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体およびシアン化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられるが、少なくとも芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を含むものである。
【0011】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートの使用が好ましい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートの使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
【0012】
上記の単量体組成は、脂肪族共役ジエン系単量体30〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜10重量%、シアン化ビニル系単量体5〜30重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(少なくとも芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を含む)5〜62重量%(単量体合計は100重量%)である。
【0013】
脂肪族共役ジエン系単量体が30重量%未満では印刷時に必要とされるドライピック強度などの接着性が、また65重量%を超えると印刷時に必要とされるウェットピック強度などの湿潤接着性が劣り好ましくない。さらに好ましくは35〜60重量%である。
【0014】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が3重量%未満では共重合体ラテックス自身および紙塗工用組成物の機械的安定性が劣り、また10重量%を超えるとラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックス自身の取り扱い上の問題を生じる可能性があるため好ましくない。さらに好ましくは4〜8重量%である。
【0015】
共重合可能な他の単量体(少なくとも芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を含む)が62重量%を超えるとドライピック強度などの接着性が劣り好ましくない。
【0016】
本発明においては、重合の後半で芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体のみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%添加して乳化重合することが必要である。重合の後半においてこれら単量体を添加しない場合にはラテックスの機械的安定性が不足し、また5重量%を超えて添加するとラテックス表面が硬くなりすぎドライピック強度に劣り好ましくない。
なお、本発明においては、特に、多段重合法を採用し、重合の最終段階に芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体のみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%を添加して乳化重合することが好ましい。
【0017】
また、乳化重合においては、常用の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
【0018】
乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0019】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0020】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0021】
また、重合に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用しても良い。
【0022】
本発明においては、乳化重合終了後、pH調整剤として使用される全アルカリ成分のうち、水酸化カリウムを重量比で1/3以上使用する必要がある。水酸化カリウムが重量比で1/3未満ではベッセルピック強度の向上が得られないため好ましくない。なお、水酸化カリウム以外のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを使用することができる。
【0023】
本発明で使用される紙塗工用共重合体ラテックスの数平均粒子径は110〜220nmであることが必要である。数平均粒子径が110nm未満ではベッセルピック強度に劣り、また220nmを超えるとドライピック強度が劣るため好ましくない。
【0024】
また、本発明において使用される紙塗工用共重合体ラテックスのゲル含有量には特に制限ないが、50〜97重量%である。
【0025】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスと共に紙塗工用組成物を構成する顔料としては、例えば、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、あるいはポリスチレンラテックスのような有機顔料が挙げられ、これらは単独または混合して使用される。
【0026】
また、必要に応じて澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性合成バインダーなどを使用しても差し支えない。さらに、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス等を本発明の共重合体ラテックスと併用してもよいが、本発明の効果を高く発揮させるためには、これらの使用割合は全共重合体ラテックスの(固形分)50重量%未満に抑えることが望ましい。
【0027】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスを用いて紙塗工用組成物を調整する際には、さらにその他の助剤、例えば分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)を必要に応じて添加しても良い。
【0028】
さらに、紙塗工用組成物を塗工用紙へ塗布する方法には、公知の技術、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーターなどのいずれの塗工機を使用しても差し支えない。また、塗工後、表面を乾燥し、カレンダーリングなどにより仕上げる。
【0029】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0030】
紙塗工用組成物の機械的安定性の評価
紙塗工用組成物の固形分濃度を30重量%に調整し、ロール式機械的安定性試験機(パダースタビリティーテスター)を用いて金属ロールとゴムロールの間で機械的せん断を与え、ゴムロール上に凝固物が発生するまでの時間を測定し、下記の4段階で評価した。
◎・・・45分以上 (非常に良い)
○・・・30分以上45分未満 ( 良い )
△・・・20分以上30分未満 (少し悪い)
×・・・20分未満 (非常に悪い)
【0031】
塗工紙のベッセルピック強度の評価
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際に塗工紙から脱離した導管(ベッセル)の個数を数える。n数=10の平均値を算出し、(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)まで相対的に評価した。
【0032】
塗工紙のドライピック強度の評価
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)まで相対的に評価した。
【0033】
ラテックスフィルムのベタツキ性
PETフィルム上にワイヤーバー#10を用いてラテックスフイルムを作成し、熱風循環式オーブン中で110℃×1分間乾燥してフィルムを得る。フィルムサンプルの上にNo.5ろ紙を置き、加圧式熱ロール装置にて圧着したのち、ろ紙をはずして、フィルム上に付着したろ紙の状態を肉眼で判定し、以下に示す◎(最も良い)から×(最も悪い)までを相対的に評価した。結果を表1に示した。
(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)
【0034】
共重合体ラテックスの粒子径測定
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、LPA−3000/3100(大塚電子製)を使用した。
【0035】
共重合体ラテックスのゲル含有量の測定
室温雰囲気にてラテックスフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400ccのトルエンに入れ48時間膨張溶解させる。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶部を乾燥後秤量し、この重量のはじめのラテックスフィルムの重量に占める割合をゲル含有量として重量%で算出した。
【0036】
共重合体ラテックスの作製
耐圧性の重合反応機に、重合水150部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、炭酸ナトリウム0.2部、過硫酸カリウム1部を仕込み、十分攪拌した後、表1〜2に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、2段重合については、1段目の単量体の重合転化率が90%以上になった時点で2段目の各単量体を添加して重合し、(さらに3段重合については2段目の単量体の重合転化率が90%以上になった時点で3段目の各単量体を添加して重合し、)最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、これら共重合体ラテックスをpH調整剤を用いてラテックスのpHを7〜8に調整する際に、表1〜2に示す比率でpH調整剤を添加した後、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA〜D、およびE〜Iを得た。
【0037】
紙塗工用組成物の作製と評価
下記に示した配合処方に従って共重合体ラテックスA〜D、およびE〜Iを用い、表1に示す紙塗工用組成物を作製した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
カオリンクレー 50部
重質炭酸カルシウム 50部
変性デンプン 3部
共重合体ラテックス 9部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 65%
【0038】
塗工紙の作製と評価
塗工原紙(坪量55g/m)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を行い塗工紙を得た。得られた塗工紙を各試験に供して評価し、その結果を表1〜2に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
上記のとおり、本発明にて得られた紙塗工用共重合体ラテックスを使用することにより、耐ベッセルピック特性(ベッセルピック強度)に優れ、機械的安定性、ベタツキ性、塗工紙のドライピック強度に優れた塗工紙が得られるものであり、紙塗工用途に好適に使用することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体30〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3〜10重量%、シアン化ビニル系単量体5〜30重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体(少なくとも芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を含む)1〜62重量%(単量体合計100重量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、重合の後半で芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体のみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%添加して乳化重合した後、全pH調整剤のうち水酸化カリウムを重量比で1/3以上添加して得られる数平均粒子径が110〜220nmである紙塗工用共重合体ラテックス。
【請求項2】
多段階重合法を採用し、重合の最終段階において芳香族ビニル系単量体および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体のみを単量体合計100重量%に対して0.5〜5重量%添加して乳化重合してなる請求項1記載の紙塗工用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2009−13541(P2009−13541A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178578(P2007−178578)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】