説明

紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法ならびに該共重合体ラテックスを含有してなる紙塗工用組成物。

【課題】操業汚れの原因となるベタツキ性が良好で、かつ、優れた接着力を有する紙塗工用共重合体ラテックスの提供。
【解決手段】脂肪族共役ジエン、エチレン系不飽和カルボン酸単量体および共重合可能な他の単量体を重合してなる共重合体ラテックスにおいて、単量体を2段階以上に分けて添加する際し、各段階において添加する単量体のホモポリマーのTgからFoxの式によって導かれる理論Tgが、1段目の共重合体組成では−30〜30℃の範囲にあり、2段目以降の共重合体組成は前段の理論Tgと比較して±10℃以上の差になるように添加して重合を行い、かつ得られたラテックスの示差捜査熱量計によるガラス転移温度(Tg)が一つであって、かつチャートにおける吸熱反応のT1とT2の差が20℃未満である紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法ならびに該紙塗工用共重合体ラテックスを用いてなる紙塗工用組成物に関するものである。
詳しくは、ドライピック強度と操業性のバランスに優れた紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されており、塗工紙は非塗工紙に比べ、白色度、光沢度、平滑度、印刷適性など多くの優れた点を有しているが、原紙を抄造したあとに紙塗工用組成物をブレードコーターやロールコーターなどを用いて塗工する工程が必要となるため、近年の塗工の高速化に伴い紙塗工用組成物には高いレベルの操業性の確保が求められている。
【0003】
一般的に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレンーブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレンーブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物あるいは最終的な塗工紙製品の性能であるドライピック強度などの接着強度に大きく影響する。
【0004】
しかしながら、一般的に接着強度を上げると操業性の指標のひとつとされるラテックスのベタツキ性が悪化するなど、強度と操業性は相反する要素となっている。
【0005】
そのため、紙塗工用スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの品質設計や製造方法に関しては強度と操業性を両立させるために、従来からコア・シェル技術など実に様々な改良技術が紹介されており、例えば特開平11−350389号公報(特許文献1)には重合前半と重合後半に添加するブタジエンの比率を規定して重合した共重合体ラテックスを用いることによって、接着強度と耐ブロッキング性に優れる紙塗工用組成物が得られるとの紹介がある。
【0006】
しかし、これらの様々な改良技術は、未だ紙塗工用共重合体ラテックスに要求される性能を十分に満足するレベルには至っておらず、更なる改良が強く求められていた。特に、ラテックス粒子の外側を硬く、内側を柔らかくする異相構造においては外側の堅い層(シェル部とも言う。)で耐ブロッキング性を付与し、内側の柔らかい層(コア部とも言う)で強度を付与する設計となっており、均一な組成構造をもつ粒子に比べて強度と操業性のバランスが優れるが、粒子内に硬い成分をもつ層が存在するために、強度面での十分な性能が得られない傾向が散見される。
【特許文献1】特開平11−350389号公報
【特許文献2】特開2005−139309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、操業汚れの原因となるベタツキ性が良好で、かつ、優れた接着力を有する紙塗工用共重合体ラテックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、脂肪族共役ジエン系単量体20〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体25〜79.5重量%(単量体合計100重量%)を重合して得られる共重合体ラテックスにおいて、単量体を2段階以上に分けて添加する多段重合を行うに際し、各段階において添加する単量体のホモポリマーのTgからFoxの式によって導かれる計算上の理論的ガラス転移温度(以下、理論Tgと記す)が、1段目の共重合体組成では−30〜30℃の範囲にあり、2段目以降の共重合体組成は前段の理論Tgと比較して±10℃以上の差になるように添加して重合を行い、かつ実際に得られたラテックスの示差捜査熱量計によるガラス転移温度(Tg)が一つであって、かつ該示差捜査熱量計から得られるチャートにおける吸熱反応の開始点T1と終点T2の差が20℃未満であることを特徴とする紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の構成とすることにより、操業汚れの原因となるベタツキ性が良好で、かつ、優れた接着力を有する紙塗工用共重合体ラテックスが得られるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
【0011】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0012】
上記脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
【0013】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
【0014】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートの使用が好ましい。
【0015】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートの使用が好ましい。
【0016】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
【0017】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
【0018】
上記の単量体組成は、脂肪族共役ジエン系単量体20〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体25〜79.5重量%である(ただし、単量体合計は100重量%である。)
【0019】
脂肪族共役ジエン系単量体が20重量%未満では印刷時に必要とされるドライピック強度などの接着性が、また65重量%を超えると印刷時に必要とされるウェットピック強度などの湿潤接着性が劣り、好ましくない。さらに好ましくは30〜60重量%である。
【0020】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.5重量%未満では共重合体ラテックス自身および紙塗工用組成物の機械的安定性が劣り、また10重量%を超えるとラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックス自身の取り扱い上の問題を生じる可能性があるため、好ましくない。さらに好ましくは1〜7重量%である。
【0021】
共重合可能な他の単量体が25重量%未満では前述の湿潤接着性が、また79.5重量%を超えるとドライピック強度などの接着性が劣り、好ましくない。さらに好ましくは33〜69重量%である。
【0022】
また、本発明においては、上記単量体を重合するに際し、αメチルスチレンダイマー0.1〜4部と環内に1個の不飽和結合を有する不飽和環状炭化水素1〜40部を併用して乳化重合することが、本発明の目的とする紙塗工用共重合体ラテックスを得るうえで好ましい。
【0023】
上記のα−メチルスチレンダイマーには、異性体として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテンおよび1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンがあるが、本発明にて使用されるα−メチルスチレンダイマーとしては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの含有量が60重量%以上、特に80重量%以上であることが好ましい。
【0024】
上記の環内に1個の不飽和結合を有する不飽和環状炭化水素としてはシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等が挙げられるが特にシクロヘキセンが好ましい。また、その他にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を併用しても良い。
【0025】
本発明においては、α−メチルスチレンダイマー以外の公知の分子量調整剤、例えばn−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0026】
更に、乳化重合において、常用の乳化剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
乳化剤としては高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
【0027】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0028】
また、本発明においては、乳化重合に際して2段重合以上の多段階重合とすることが必要である。
すなわち所定の単量体の一部(1段目)をまず重合し、その後、2段目以降の単量体を順次重合する。
具体的には、1段目の単量体組成は、添加する単量体のホモポリマーのTgからFoxの式によって導かれる計算上の理論的ガラス転移温度(理論Tg)が−30℃〜+30℃であり、2段目の単量体組成が、同様の理論Tgが1段目の理論Tgに比べて±10℃以上の差があることが必要であり、さらに実際に得られたラテックスの示差捜査熱量計によるガラス転移温度(Tg)が一つであって、かつ該示差捜査熱量計から得られるチャートにおける吸熱反応の開始点T1と終点T2の差が20℃未満であることが必要である。そして、上記1段目と2段目の理論Tg差が10℃未満では、本発明の目的とする接着強度とベタツキ性のバランスに優れたラテックスが得られず、また上記の理論Tg差が10℃以上であり、かつ上記示差捜査熱量計によるガラス転移温度(Tg)が一つであったとしても、上記のT1とT2の差が20℃を超える場合には、同様に本発明の目的とする接着強度とベタツキ性のバランスに優れたラテックスが得られないため好ましくない。
なお、上記のFoxの式による理論Tgについては、例えば、高分子科学序論、第2版第172頁(1981年発行)に記載されている。
【0029】
また、本発明の目的とするラテックスを得るために、上記の2段目の単量体の添加は、1段目の単量体の重合転化率が5重量%以上40重量%未満の段階で開始することが好ましく、さらに前述のとおり、上記単量体を重合するに際し、αメチルスチレンダイマー0.1〜4部と環内に1個の不飽和結合を有する不飽和環状炭化水素1〜40部を併用して乳化重合することが好ましい。
【0030】
また、紙塗工用組成物を調製する際に使用する顔料としては、例えば、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、あるいはポリスチレンラテックスのような有機顔料が挙げられ、これらは単独または混合して使用される。
【0031】
また、必要に応じて澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性合成バインダーなどを使用しても差し支えない。さらに、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス等を本発明の共重合体ラテックスと併用してもよいが、本発明の効果を高く発揮させるためには、これらの使用割合は全共重合体ラテックスの(固形分)50重量%未満に抑えることが望ましい。
【0032】
さらにその他の助剤、例えば分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)を必要に応じて添加しても良い。
【0033】
上記にて調製された紙塗工用組成物を塗工用紙へ塗布する方法には、公知の技術、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーターなどのいずれの塗工機を使用しても差し支えない。また、塗工後、表面を乾燥し、カレンダーリングなどにより仕上げる。
【0034】
〔実施例〕
以下、実施例を挙げ本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0035】
ラテックスフィルムのベタツキ性
PETフィルム上にワイヤーバー#10を用いてラテックスフイルムを作成し、熱風循環式オーブン中で110℃×1分間乾燥してフィルムを得る。フィルムサンプルの上にNo.5ろ紙を置き、加圧式熱ロール装置にて圧着したのち、ろ紙をはずして、フィルム上に付着したろ紙の状態を肉眼で判定し、以下に示す◎(最も良い)から×(最も悪い)までを相対的に評価した。結果を表1に示した。
(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)
【0036】
塗工紙のドライピック強度の評価
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)まで相対的に評価した。
【0037】
共重合体ラテックスのTg及びT1、T2の測定
共重合体ラテックスをガラス板上に流延し70℃で4時間乾燥してフィルムを作製し、このフィルムをアルミパンに詰め、示差走査熱量計(DSC6200:セイコーインスツルメンツ社製)にセットする。
あらかじめ、予想されるTgより約50℃低い温度まで装置を冷却した後、加熱速度10℃/minで昇温し、DSC曲線を描かせる(図1参照)。
《ガラス転移温度(Tg)》
ガラス転移温度(Tg)は各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。
《T1(ガラス転移開始温度)、T2(ガラス転移終了温度)》
T1(ガラス転移開始温度)は低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるように引いた接線との交差の温度とする。
T2(ガラス転移終了温度)は高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるように引いた接線との交差の温度とする。
【0038】
共重合体ラテックスのゲル含有量の測定
室温雰囲気にてラテックスフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを
約1g秤量し、これを400ccのトルエンに入れ48時間膨張溶解させる。そ
の後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶部
を乾燥後秤量し、この重量のはじめのラテックスフィルムの重量に占める割合を
ゲル含有量として重量%で算出した。
【0039】
共重合体ラテックスの粒子径の測定
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、LPA−3000/3100(大塚電子製)を使用した。
【0040】
共重合体ラテックスの作製
耐圧性の重合反応機に、重合水150部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、炭酸ナトリウム0.2部、過硫酸カリウム1部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目に相当する各単量体を加えて重合を開始し、1段目の単量体の重合転化率が表1および表2に示す数値に達した後、2段目の単量体を添加して重合を続け、最終的な重合転化率が96%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、これら共重合体ラテックスを苛性ソーダ水溶液でpHを7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA〜Eを得た。
【0041】
紙塗工用組成物の作製と評価
下記に示した配合処方に従って、共重合体ラテックスA〜Dおよび共重合体ラテックスE〜Fを用いて、紙塗工用組成物を作製した。各紙塗工用組成物の評価結果を表1および表2に示した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
カオリンクレー 50部
重質炭酸カルシウム 50部
変性デンプン 3部
共重合体ラテックス 9部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 65%
【0042】
塗工紙の作製と評価
塗工原紙(坪量67g/m)に、上記の紙塗工用組成物を片面当たりの塗被量が10g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧70kg/cm、温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を行い塗工紙を得た。得られた塗工紙は接着力を評価し、その結果を表1および表2に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
上記のとおり、本発明にて得られた紙塗工用共重合体ラテックスを使用することにより、操業汚れの原因となるベタツキ性が良好で、かつ、優れた接着力を発現することができるものであり、紙塗工用途に好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】示差走査熱量計によるDSC曲線である。
【符号の説明】
【0047】
T1:ガラス転移開始温度
T2:ガラス転移終了温度
Tg:ガラス転移温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体20〜65重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体25〜79.5重量%(単量体合計100重量%)を重合して得られる共重合体ラテックスにおいて、単量体を2段階以上に分けて添加する多段重合を行うに際し、各段階において添加する単量体のホモポリマーのTgからFoxの式によって導かれる計算上の理論的ガラス転移温度(以下、理論Tgと記す)が、1段目の共重合体組成では−30〜30℃の範囲にあり、2段目以降の共重合体組成は前段の理論Tgと比較して±10℃以上の差になるように添加して重合を行い、かつ実際に得られたラテックスの示差捜査熱量計によるガラス転移温度(Tg)が一つであって、かつ該示差捜査熱量計から得られるチャートにおける吸熱反応の開始点T1と終点T2の差が20℃未満であることを特徴とする紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
1段目の重合における重合転化率が5重量%以上40重量%未満となった後に2段目以降の重合を開始してなる請求項1記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
各段階において添加する単量体として、シアン化ビニル単量体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項4】
αメチルスチレンダイマー0.1〜4部と環内に1個の不飽和結合を有する不飽和環状炭化水素1〜40部を併用して乳化重合することを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の紙塗工用共重合体ラテックスを含有することを特徴とする紙塗工用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−231262(P2008−231262A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73356(P2007−73356)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】