説明

紙塗工用共重合体ラテックス

【課題】塗料の放置安定性に優れ、塗料の高せん断時粘度が低く、中せん断時の粘度が高い塗料粘性が得られるためにブレード塗工における塗工作業性に優れ、かつ、吸水着肉性、白紙光沢に優れた紙塗工用共重合体ラテックスの提供。
【解決手段】 脂肪族共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびその他の共重合可能な単量体20〜69.5重量%からなる単量体(合計100重量部)を乳化重合してなる共重合体ラテックスで、該共重合体ラテックスフィルム中に含まれるアルカリ金属の含有量が17000〜25000ppmの範囲にあり、かつ、アルカリ金属中に占めるナトリウムの量が下記式(1)の範囲内にある紙塗工用共重合体ラテックス。
ナトリウム/(アルカリ金属の合計)=0.61〜0.85 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスに関するものである。詳しくは、得られた共重合体ラテックスを用いることで、塗料の放置安定性に優れ、塗料の高せん断時粘度(高シェア粘度と表記)が低く、中せん断時の粘度(中シェア粘度と表記)が高いブレード塗工に適した塗料粘性が得られ、吸水着肉性、白紙光沢に優れた紙塗工用共重合体ラテックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されている。季刊、月間紙等の定期刊行物の中にも、全ての頁に塗工紙が使用される場合もかなり増えている。特に、メールオーダービジネスにおけるダイレクトメールや商品カタログ等においては、そのほとんどが全ての頁に塗工紙を使用している。
塗工紙は非塗工紙に比べ、白色度、光沢度、平滑度、印刷適性など多くの優れた点を有しているが、原紙を抄造したあとに紙塗工用組成物をブレードコーターやロールコーターなどを用いて塗工する工程が必要となるが、最近ではブレードコーターによる塗工が主流となって来ており、紙塗工用組成物のブレード塗工適性が生産性や最終的な塗工紙製品の品質に大きく影響するため、ブレード塗工適性に大きな影響を及ぼす紙塗工用組成物の粘性コントロールは重要な因子である。
【0003】
一般的に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレンーブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレンーブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物あるいは最終的な塗工紙製品の性能に大きく影響する。
【0004】
そのため、紙塗工用スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの品質設計や製造方法に関しては優れた塗料粘性や塗工性を有し、さらに優れた塗工紙の品質を得るために従来からさまざまな技術改良が提案されている。例えば特開2003−192726号公報(特許文献1)にはシード重合により重合安定性を向上させて、乳化剤添加量が少なくても小粒子径化できて高せん断下での流動性が良好な共重合体ラテックスの紹介がある。また、特開平7−70990号公報(特許文献2)ではラテックス組成中にポリリン酸塩類を用いて乳化重合したラテックスを用いることで優れた塗料粘性と塗工作業性を有した紙塗工用組成物が得られるとの紹介がある。さらに、特開2005−139577(特許文献3)では仕上がりのラテックスpHを低く抑えることで、アルカリ金属含有量を減らし、操業性とウエット強度に優れた紙塗工用共重合体ラテックスおよび紙塗工用組成物が得られるとの記載がある。
【0005】
しかし、これらの様々な改良技術は、未だ塗工紙作成時に要求される作業操業性と塗工紙に要求される性能を十分に満足するレベルには至っておらず、更なる改良が強く求められていた。
【特許文献1】特開2003−192726号公報
【特許文献2】特開平7−70990号公報
【特許文献3】特開2005−139577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗料の高シェア粘度が低く、中シェア粘度が高いブレード塗工に適した塗料粘性が得られ、さらに、吸水着肉性、白紙光沢に優れた紙塗工用共重合体ラテックスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、脂肪族共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびその他の共重合可能な単量体20〜69.5重量%からなる単量体(合計100重量部)を乳化重合してなる共重合体ラテックスで、該共重合体ラテックスフィルム中に含まれるアルカリ金属の含有量が17000〜25000ppmの範囲にあり、かつ、アルカリ金属中に占めるナトリウムの量が下記式(1)の範囲内にある紙塗工用共重合体ラテックスを提供するものである。
ナトリウム/(アルカリ金属の合計)=0.61〜0.85 (1)
【発明の効果】
【0008】
本発明の共重合体ラテックスを用いることで、塗料の放置安定性に優れ、塗料の高シェア粘度が低く、中シェア粘度が高い塗料粘性が得られるためブレード塗工における塗工作業性が優れ、かつ、吸水着肉性、白紙光沢に優れた塗工紙が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
【0010】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)を挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0011】
上記脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
【0012】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
【0013】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートの使用が好ましい。
【0014】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートの使用が好ましい。
【0015】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
【0017】
上記の単量体組成は、脂肪族共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびその他の共重合可能な単量体20〜69.5重量%からなる単量体(合計100重量部)である。
【0018】
脂肪族共役ジエン系単量体が30重量%未満では白紙光沢の発現性が、また70重量%を超えるとラテックスフィルムのベタツキ性が劣り好ましくない。さらに好ましくは35〜65重量%である。
【0019】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.5重量%未満では共重合体ラテックスの機械的安定性が劣り、また10重量%を超えるとラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックス自身の取り扱い上の問題を生じる可能性があるため好ましくない。さらに好ましくは2〜8重量%である。
【0020】
共重合可能な他の単量体が20重量%未満ではインキの吸水着肉性が、また69.5重量%を超えると白紙光沢が劣り、好ましくない。
【0021】
本発明においては、一段重合、二段重合、多段階重合、シード重合、パワーフィード重合法等何れを採用してもよい。
【0022】
また、乳化重合においては、常用の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
【0023】
乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0024】
連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0025】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0026】
また、重合に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用しても良い。
【0027】
本発明で使用される紙塗工用共重合体ラテックスの粒子径については特に制限はないが数平均粒子径で50〜150nmであることが好ましい。数平均粒子径が50nm未満ではラテックス粘度が高くなり、また150nmを超えると塗料の高シェア粘度が劣り好ましくない。
【0028】
また、本発明において使用される紙塗工用共重合体ラテックスのゲル含有量には特に制限ないが、50〜100重量%である。50%未満ではラテックスフィルムの粘着性が劣り好ましくない。
【0029】
本発明で使用される紙塗工用共重合体ラテックスのpH調整剤については特に制限はないが一般的に使用される苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニアなどが1種または2種以上併用することができる。出来上がったラテックスのpHは6〜9であることが好ましく、pHが6未満ではラテックスの安定性が劣り、pHが9を超えるとラテックス粘度が上昇し取り扱いが困難になるため好ましくない。
【0030】
さらに、本発明において紙塗工用共重合体ラテックスの粘度調整剤として、一般的な分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)が1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0031】
本発明においては、上記共重合体ラテックスフィルム中に含まれるアルカリ金属の含有量が17000〜25000ppmの範囲にあることが重要である。アルカリ金属の含有量が17000ppm未満では塗料の中シェア粘度が低く好ましくない、また25000ppmを超えると塗料の高シェア粘度が高く好ましくない。
【0032】
また、本発明においては共重合体ラテックスフィルム中に含まれる全アルカリ金属中に占めるナトリウムの割合が0.61〜0.85の範囲内にあることが重要であり、ナトリウムの割合が0.61未満では放置安定性が劣り好ましくない。また0.85を超えると塗料の中シェア粘度が低くなり、かつ、吸水着肉性が劣り好ましくない。
なお、共重合体ラテックスフィルム中に含まれるアルカリ金属の含有量ならびにナトリウムの割合については、重合時に使用する重合開始剤、乳化剤、電解質等の種類と使用量ならびに上記のpH調整剤や分散剤の種類と使用量などにより調製することが可能である。
【0033】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスと共に紙塗工用組成物を構成する顔料としては、例えば、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、あるいはポリスチレンラテックスのような有機顔料が挙げられ、これらは単独または混合して使用される。
【0034】
また、必要に応じて澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、あるいはポリビニルアルコールなどの水溶性合成バインダーなどを使用しても差し支えない。さらに、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス等を本発明の共重合体ラテックスと併用してもよいが、本発明の効果を高く発揮させるためには、これらの使用割合は全共重合体ラテックスの(固形分)50重量%未満に抑えることが望ましい
【0035】
本発明の紙塗工用共重合体ラテックスを用いて紙塗工用組成物を調整する際には、さらにその他の助剤、例えば分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)を必要に応じて添加しても良い。
【0036】
さらに、紙塗工用組成物を塗工用紙へ塗布する方法には、公知の技術、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーターなどの各種塗工機があるが、特にブレードコーターの使用において本発明の効果は顕著に得られるものである。また、塗工後、表面を乾燥し、カレンダーリングなどにより仕上げる。
【0037】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0038】
塗料のB型粘度の評価
塗料作成直後にB型粘度計を用いて、60rpmにおける塗料粘度を測定した。
【0039】
塗料の放置安定性
作成した塗料を20℃、60%の条件にて24時間放置後、前述のB型粘度計にて塗料の静置粘度を測定した。上記の塗料作成直後のB型粘度との比率を以下の式で算出し1.5以下を◎(優)、2.5以下を○、3.5以下を△、3.5以上を×(劣)として評価した。
放置安定性=24時間後の静置B型粘度/塗料作成直後のB型粘度
【0040】
塗料の高せん断時粘度(高シェア粘度)の評価
熊谷理機工業株式会社製ハーキュレス高せん断粘度計を用いて、ボブF、8800回転、スイープタイム10secの条件で測定した際の8000回転での見かけ粘度を高せん断時粘度とした。(なお、本条件でのせん断速度は1.7×10sec−1に相当する)
【0041】
塗料の中せん断時粘度(中シェア粘度)の評価
熊谷理機工業株式会社製ハーキュレス高せん断粘度計を用いて、ボブE、2200回転、スイープタイム10secの条件で測定した際の500回転での見かけ粘度を中せん断時粘度とした。(なお、本条件でのせん断速度は5.2×10sec−1に相当する)
【0042】
塗工紙の吸水着肉性の評価
RI印刷機を用いて、インキをインキロールに均一に展開した後、インキ中に水を滴下して充分に乳化させ、各塗工紙試料を同時に印刷した際のインキの着肉の程度を肉眼で判定し、(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)まで相対的に評価した。
【0043】
塗工紙の白紙光沢の評価
各塗工紙試料の光沢度をJIS.P-8142に従い測定した。数値が大きいほど白紙光沢が良い。
【0044】
共重合体ラテックスの数平均粒子径測定
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、LPA−3000/3100(大塚電子製)を使用した。
【0045】
共重合体ラテックスのゲル含有量の測定
室温雰囲気にてラテックスフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400ccのトルエンに入れ48時間膨張溶解させる。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶部を乾燥後秤量し、この重量のはじめのラテックスフィルムの重量に占める割合をゲル含有量として重量%で算出した。
【0046】
共重合体ラテックスフィルム中のアルカリ金属含有量の測定
共重合体ラテックスを室温雰囲気にて乾燥させてフィルムを作成し、硫酸と硝酸で加熱分解した後、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES:セイコー電子工業社製SPS4000型)によりアルカリ金属元素の定量を行った。
【0047】
共重合体ラテックスの作製
耐圧性の重合反応機に、重合水150部を仕込み、十分攪拌しながら、表1に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、2段重合については、1段目の単量体の重合転化率が90%以上になった時点で2段目の各単量体を添加して重合し、(さらに3段重合については2段目の単量体の重合転化率が90%以上になった時点で3段目の各単量体を添加して重合し、)最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した(1段重合については、最終重合添加率が95%を越えた時点で重合を終了した)。
次いで、これら共重合体ラテックスをpH調整剤を用いてラテックスのpHを7.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA〜C、およびD〜Gを得た。
【0048】
紙塗工用組成物(塗料)の作製と評価
下記に示した配合処方に従って共重合体ラテックスA〜C、およびD〜Gを用い、表1に示す紙塗工用組成物(塗料)を作製した。得られた塗料のB型粘度、放置安定性、高シェア粘度、中シェア粘度を測定し、その結果を表1に示した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
配合処方
カオリンクレー 60部
重質炭酸カルシウム 40部
変性デンプン 3部
共重合体ラテックス 9部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 66%
【0049】
塗工紙の作製と評価
塗工原紙(坪量55g/m)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を行い塗工紙を得た。得られた塗工紙を各試験に供して評価し、その結果を表1に示した。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
上記のとおり、本発明の共重合体ラテックスを用いることで、塗料の放置安定性に優れ、塗料の高シェア粘度が低く、中シェア粘度が高い塗料粘性が得られるためブレード塗工における塗工作業性が優れ、かつ、吸水着肉性、白紙光沢に優れた塗工紙が得られるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%およびその他の共重合可能な単量体20〜69.5重量%からなる単量体(合計100重量部)を乳化重合してなる共重合体ラテックスで、該共重合体ラテックスフィルム中に含まれるアルカリ金属の含有量が17000〜25000ppmの範囲にあり、かつ、アルカリ金属中に占めるナトリウムの量が下記式(1)の範囲内にある紙塗工用共重合体ラテックス。
ナトリウム/(アルカリ金属の合計)=0.61〜0.85 (1)
【請求項2】
請求項1記載の共重合体ラテックスからなるブレードコーター用紙塗工用共重合体ラテックス。

【公開番号】特開2009−91670(P2009−91670A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260601(P2007−260601)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】