説明

紙塗工用組成物および塗工紙

【課題】顔料としてクレーを多く含む紙塗工用組成物においてハイシェア粘度が低く、かつ強度も十分に備える組成物を得る。
【解決手段】(A)脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位を20〜80質量%、(B)不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を4〜15質量%、及び(C)その他共重合可能な単量体由来の構造単位を5〜76質量%(但し、(A)、(B)、(C)の合計100質量%)有する共重合体を含有し、透過型電子顕微鏡で測定した数平均粒子径が30〜80nm、固形分48質量%における粘度が50〜400mPa・sである、共重合体ラテックスならびにクレーを50質量%以上含有する顔料を含有することを特徴とする紙塗工用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料としてクレーを多く含む紙塗工用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共重合体ラテックスを用いたバインダーの接着強度を大きくするためには、共重合
体ラテックス中の共重合体の分子量、架橋度、ガラス転移温度等を最適化する方法と、フ
ィラー等を含有する塗料組成物に用いる場合には、共重合体ラテックスを小粒径化することにより、フィラーと共重合体粒子の有効接着面積を増やすことで、接着強度を大きくする方法が検討されてきた。
例えば、塗工紙の製造に用いられる塗料バインダーとして、高剪断速度下における塗工液
の異常流動を抑制するために、小粒径の共重合体ラテックスを使用することが知られてお
り(特許文献1〜6)、これら小粒径の共重合体ラテックスは結果的に接着強度が向上す
ることが期待される。しかし、これらの小粒径の共重合体ラテックスでは、ラテックスの
粘度が著しく高くなり、多量の減粘剤を使用しない限り、実用的な濃度でのハンドリング
が著しく困難であった。一方、多量の減粘剤を使用すると、耐水性が悪化したりして、バ
インダーとしての実用性能を得ることが困難であった。そのため、文献には記載されてい
るものの、実際に実用化されているものは、十分な接着強度を有するほどには小粒径化さ
れていなかったり、十分に小粒径化されていたとしても、ハンドリング性や他の物性の悪
化により、実用化に至っていないか、又は、他の性能との両立が不十分なものであった。
【0003】
特許文献1 ラッテクスの粒子径を下げだけでは印刷強度と耐ブリスター性を同時に向上させることが不可能であるとしてラテックスのゲル含量に着目している。しかしながら製造において用いられる界面活性剤の量が多く得られるラテックスのウェットピック強度は不十分であると考えられる。
【0004】
特許文献2 高速塗工に50nm以下の小粒径のラテックスを安定的に製造するために、大量の乳化剤を使用しないで製造する方法として、特定の反応性乳化剤の使用を開示している。しかしながら本製造方法では得られたラテックスの粘度が高く、依然塗工性において充分ではない。
【0005】
特許文献3 数平均分子量が80nm以下のラテックスが開示されているが、本文献では印刷特性を改良するためにラテックスの接触角に着目したもので、その接触角のラテックスを製造するために特定のアニオン性界面活性剤を使用することを開示している。
【0006】
特許文献4 二段重合の前段において重合抑制剤を使用し平均粒子径30〜50nmのラテックスを製造することが開示されているが、モノマー組成からすると粘度が高いと考えられる。
【0007】
特許文献5 連続添加重合により数平均粒子径が100nm以下のラテックスの製造方法が開示されているが、酸モノマーの使用量が少なく安定性に問題があると考えられる。
【0008】
特許文献6 2,4−ジニトロクロロベンゼンを用い、瞬間重合速度の最大値を10〜45質量%/時間の範囲にして重合することにより数平均粒子径が60nm以下のラテックスの製造方法が開示されているが、乳化剤の使用量が多く、耐水性に不足すると考えられる。
【0009】
一方、紙塗工用組成物として、白色光沢の良好な塗工層が得られることから、顔料中のクレーの含有率を上げることが行われているが、クレーを多く用いた紙塗工用組成物は流動性が悪く塗工の際にストリークが発生しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−188989号公報
【特許文献2】特開2003−119203号公報
【特許文献3】特開2008−248446号公報
【特許文献4】特開2005−343934号公報
【特許文献5】特開2004−59758号公報
【特許文献6】特開2003−335807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、顔料としてクレーを多く含む紙塗工用組成物において、十分な接着強度を有し、かつ、流動性にも優れる紙塗工用組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(A)脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位を20〜80質量%、(B)不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を4〜15質量%、及び(C)その他共重合可能な単量体由来
の構造単位を5〜76質量%(但し、(A)、(B)、(C)の合計100質量%)有する共重合体を含有し、透過型電子顕微鏡で測定した数平均粒子径が30〜80nm、固形分48質量%における粘度が50〜400mPa・sである、共重合体ラテックスならびにクレーを50質量%以上含有する顔料を含有する紙塗工用組成物と、当該紙塗工用組成物を塗布し乾燥してなる塗工層を有する塗工紙を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紙塗工用組成物は、従来にない少ないバインダー量で良好な接着強度が得られるとともに、クレーを多く含む顔料を用いた場合でも流動性に優れることから塗工紙の生産工程におけるブリーディングやストリーク等のトラブルを発生させずに低コストでの塗工紙の生産を可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良などが加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0015】
本発明の紙塗工用組成物は、共重合体ラテックスおよび顔料を含むものである。

[1]共重合体ラテックス
本実施形態の共重合体ラテックスは、20〜80質量%の(A)脂肪族共役ジエン単量
体由来の構造単位、4〜15質量%の(B)不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位及び
、5〜76質量%の(C)その他共重合可能な単量体由来の構造単位(但し、(A)、(
B)、(C)の合計100質量%)を有する共重合体を含有し、透過型電子顕微鏡で測定
した数平均粒子径が30〜80nm、固形分48質量%における粘度が50〜400mPa
・sである共重合体ラテックスである。
[1−1]共重合体の構造
(A)脂肪族共役ジエン単量体に由来する構造単位
(A)脂肪族共役ジエン単量体に由来する構造単位とは、脂肪族共役ジエン単量体(a)
を(b)不飽和カルボン酸単量体や(c)その他共重合可能な単量体と共重合させた場合
の、脂肪族共役ジエン単量体(a)に由来する構造単位である。
脂肪族共役ジエン単量体(a)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2
,3−ジメチル1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1
,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロル−1,3−ブタジ
エン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうち、1,3−ブタジエンが好ま
しい。これらの共役ジエン単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用すること
ができる。共重合体中の(A)脂肪族共役ジエン単量体(a)に由来する構造単位の含有
割合は、全構造単位に対して、20〜80質量%であり、30〜80質量%であることが
好ましい。脂肪族共役ジエン単量体に由来する構造単位が上記含有割合であると、共重合
体が硬くなり過ぎず、また、粘着性も高くなり過ぎないため、十分な接着強度を得ること
ができ、かつ、耐ロール汚れ性が悪化することもない。
(B)不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位
(B)不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位とは、不飽和カルボン酸単量体(b
)を前記脂肪族共役ジエン単量体(a)やその他共重合可能な単量体(c)と共重合させ
た場合の、不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位である。不飽和カルボン酸単量体
(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸
類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;マレイン酸メチル、イタ
コン酸メチル、β−メタアクリルオキシエチルアシッドヘキサハイドロフタレートなどの
ハーフエステル類;これらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩などを挙げるこ
とができる。なお、本明細書において、不飽和カルボン酸単量体(b)というときは、乳
化重合中に不飽和カルボン酸単量体に変化するものを含めたものをいう。
乳化重合中に不飽和カルボン酸単量体に変化するものとしては、例えば、モノカルボン酸
類の無水物、ジカルボン酸類の無水物、これらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウ
ム塩などを挙げることができる。具体的には、アクリル酸無水物、マレイン酸無水物など
は、水性媒体中で乳化重合する際にカルボン酸に変化するため、不飽和カルボン酸単量体
として使用することができる。これらの不飽和カルボン酸単量体は、単独でまたは2種以
上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、アクリル酸、イタコン酸、メタ
クリル酸、フマル酸が好ましい。
【0016】
また、一塩基酸と二塩基酸を併用する場合には、一塩基酸/二塩基酸(質量比)が1以上となることが好ましい。
【0017】
共重合体中の(B)不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位の含有割合は、全構造
単位に対して、4〜15質量%であり、4.5〜14質量%であることが好ましく、5〜
13質量%であることが更に好ましい。不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位が上
記含有割合であると、乳化重合時の共重合体ラテックスの安定性が良く、また、塗工液の
機械的安定性が良好であるとともに、得られる共重合体ラテックスの粘度が高くならない
ため、塗工液の粘度が高くならず、塗工の際の操作性を良好に保つことができる。
(C)その他共重合可能な単量体由来の構造単位
共重合体中の(C)他の単量体に由来する構造単位とは、前記脂肪族共役ジエン単量体(
a)及び前記不飽和カルボン酸単量体(b)と共重合可能でかつ、前記(A)及び(B)
以外の単量体に由来する構造単位である。
その他共重合可能な単量体(c)としては、共重合体に主として目的に応じた適度な硬さ
や塗料としての性能を付与するために用いられる成分である。
その他共重合可能な単量体(c)としては、例えば、分子中に重合性不飽和結合を1個以
上有する化合物を挙げることができる。具体的には、芳香族ビニル化合物、α、β−不飽和ニトリル化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和二塩基酸アルキルエステル、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、アミノ基を有する塩基性単量体、ビニルピリジン、オレフィン、ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0018】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルス
チレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、
ビニルキシレン、ブロモスチレン、ビニルベンジルクロリド、p−t−ブチルスチレン、
クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等が挙げら
れる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
α、β−不飽和ニトリル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルメタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
【0019】
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アク
リレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(
メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレー
ト、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミルヘキシル(メタ)アクリレート、オク
チル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート
、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル
(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート
、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリ
レート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート
、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオ
ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アク
リレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(
メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート
、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ
)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)
アクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メトキシポリ
エチリングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイ
ドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ
ート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)
アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン
、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−
ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[
4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、イソボルニル(メタ
)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレートが好まし
い。
【0020】
不飽和二塩基酸アルキルエステルとしては、例えば、クロトン酸アルキルエステル、イ
タコン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル等
が挙げられる。
【0021】
アクリルアミド及びメタクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N
−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げ
られる。
なお、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(C)他の単量体に由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、5〜76質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることが更に好ましい。他の単量体に由来する構造単位が上記含有割合であると、共重合体(A)が硬くなり過ぎず、接着強度が低下するおそれがない。
【0022】
本発明においては、(C)他の単量体に由来する構造単位として、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を5〜40質量%、特に10〜40質量%含むことが好ましい。
【0023】
さらにまた、α、β−不飽和ニトリル単量体由来の構造単位を5〜40質量%、特に5〜30質量%で含むことが好ましい。
【0024】
α、β−不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を上記割合で含有する場合、例えば、塗工紙用バインダーとして用いた場合には、共重合体の耐油性が向上し、印刷光沢を更に向上させるという利点がある。また、例えば、電気化学デバイス電極形成用バインダーとして用いた場合には、共重合体が電解液により適度に膨潤するため、網目構造が広がり、溶媒和したイオンがこの網目構造をすり抜けて移動し易くなり、イオンの拡散性が向
上する等の効果がある。
[1−2]共重合体ラテックスの数平均粒子径
本明細書において、「数平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡に共重合体ラテックスを供して測定される、共重合体ラテックス中に含まれる共重合体粒子の数平均粒子径である

【0025】
本発明で用いる共重合体ラテックスは、数平均粒子径が30〜80nmであり、さらに30〜75nm、より30〜70nm、特に40〜65nmであることが好ましい。上記質量平均粒子径が30nm未満であると、粘度が上昇して、製造が困難になったり、顔料や活物質などを含む組成物のバインダーとして使用した場合、顔料や活物質を均一に分散するのに困難が伴う。また、例えば、塗工紙用の塗料バインダーとして使用する場合、得られる塗工層の平滑性が低下し、印刷光沢等の印刷適性が低下する。一方、80nm超であると、優れた接着強度が得られなくなり、強度が低下する。具体的な測定方法は、後述する実施例の項に記載したとおりである。
[1−3] 共重合体ラテックスの粘度
本発明で用いる共重合体ラテックスの固形分48質量%の粘度は、50〜400mPa・sであり、さらに80〜400mPa・s、特に100〜400mPa・sであることが好ましい。
共重合体ラテックスを上記粘度範囲にすることにより、実用的な濃度でのハンドリングを行うことができる。
[1−4]共重合体ラテックス中の共重合体の質量平均分子量
本実施形態の共重合体ラテックスは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから得
られる分子量分布において、ポリスチレン換算の分子量で100万以下の成分(α)の重
量平均分子量が30,000〜400,000であり、40,000〜200,000で
あることが好ましい。上記質量平均分子量が30,000未満であると、良好な接着強度
が得られない。一方、400,000超であると、良好な接着強度が得られるが、得られ
る共重合体ラテックスの粘度が高くなるため、塗工液の粘度も高くなり、塗工作業が困難
になる。ここで、本明細書において、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから得
られる分子量分布において、ポリスチレン換算の分子量で100万以下の成分(α)の重
量平均分子量」とは、共重合体ラテックスに含有される成分のうち、ゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィーから得られる分子量分布において、ポリスチレン換算の分子量で1
00万以下の成分(α)の質量平均分子量のことであり、具体的には、下記測定条件によ
り測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィーから得られる分子量分布において、
ポリスチレン換算の分子量で100万以下の成分(α)における質量平均分子量をいう。
なお、上記質量平均分子量は、重合温度、分子量調節剤及び開始剤の量や種類等を調整す
ることにより制御することができる。
具体的な測定方法は、後述する実施例の項に記載したとおりである。
[1−5]共重合体ラテックスのゲル含有率
本明細書において「ゲル含有率」とは、共重合体ラテックスに含有される成分のゲル含
有率を意味し、THFゲル含有率とトルエンゲル含有率があり、いずれも50〜98%であることが好ましい。 本明細書において「THFゲル含有率」とは、下記条件により測定したGPCから得られるポリスチレン換算の質量平均分子量Mw(以下、単に「Mw」ともいう。)が100万以上を示すものの比率、即ち、縦軸を検出量、横軸を溶出時間としたクロマトグラムにおいて、溶出曲線と横軸で囲まれた部分の面積に対する分子量が100万に対応する溶出時間より早く検出されるピーク面積の比率である。
【0026】
THFゲル含有率が50%未満であると共重合体ラテックスの強度が不十分で、さらに粘着性が増加し、耐ロール性が低下する。一方、98%を越えると十分な強度が得られなくなる。
【0027】
本明細書において「トルエンゲル含有率」とは、共重合体ラテックスに含有される成分のトルエン不溶分率を意味する。本実施形態の共重合体ラテックスのトルエンゲル含有量は特に制限されず、用途によって最適な値とすることができる。例えば本発明で用いる共重合体ラテックスを印刷用塗工紙の塗工組成物のバインダーとして使用する場合、トルエンゲル含有率が50%未満であると、十分な強度が得られず、また、粘着性が増し、耐ロール汚れ性が低下する。一方、98%超であると、十分な強度が得られなくなる。

[1−6]使用量
本発明においては、共重合体ラテックスは顔料100質量部に対し固形分換算で3〜7質量部含むことが好ましい。
[2]共重合体ラテックスの製造方法
本実施形態の共重合体ラテックスの製造方法は、前記(a)共役ジエン単量体、前記(b)不飽和カルボン酸単量体、及び、(c)その他共重合可能な単量体を前述した所定の割合で含む単量体混合物を特に、回分重合法を採用し、重合の初期仕込みで、(b)不飽和カルボン酸単量体の全使用量の70質量%以上を使用して重合し、重合初期から反応させることが好ましい。
【0028】
単量体の重合においては、前記初期仕込みで、予め用意したシードラテックスを使用し、シード重合法により製造してもよい。
[2−1]重合開始剤
本実施形態の共重合体ラテックスは、前記単量体成分を乳化重合して得られる。
【0029】
重合開始剤は、熱または還元性物質の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を行
わせるものであり、過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等の無機系および有機系のいず
れの開始剤も使用できる。例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニ
ウムクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、
パラメンタンハイドロパーオキサイド、2,2―アゾビスイソブチロニトリル等が挙げら
れる。
本発明においては、上記開始剤に還元剤を組み合わせて使用するレドックス重合法を用い
ることもできる。還元剤としては、エルソルビン酸、エルソルビン酸ナトリウム、エルソ
ルビン酸カリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウ
ム、糖類、ロンガリットソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜硫酸水素ナト
リウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩、ピロ亜
硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリ
ウム等のピロ亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、亜燐酸、亜燐酸ナトリ
ウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウム等の亜燐酸塩、ピロ
亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ
亜燐酸水素カリウム等のピロ亜燐酸塩、メルカプタン等を挙げることができる。
【0030】
重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対して、通常0.6〜2質量部であり、還元剤は単量体100質量部に対して0〜1質量部使用する。
【0031】
重合開始剤及び還元剤の添加方法としては、例えば、それぞれ異なる供給配管から同時
に連続的に重合系内に添加する方法、重合開始剤の全部及び還元剤の一部が存在する重合
系内に還元剤の残部を回分的及び連続的の少なくとも一方の方法で添加する方法、還元剤
の全部及び重合開始剤の一部が存在する重合系内に重合開始剤の残部を回分的及び連続的
の少なくとも一方の方法で添加する方法などを挙げることができる。これらの中でも、重
合開始剤の全部及び還元剤の一部が存在する重合系内に還元剤の残部を回分的及び連続的
の少なくとも一方の方法で添加する方法が好ましい。この方法であると、反応が一気に進
行することで発生する反応熱によって重合系内の温度が急激に上昇してしまうことを防止
することができる。ここで、回分的とは、複数回に分けてという意味であり、連続的とは
、所定時間内において所定量を継続してという意味である。
【0032】
本実施形態の共重合体ラテックスは、上述した重合開始剤及び還元剤に加えて、酸化還
元触媒の存在下で、乳化重合して得ることもできる。酸化還元触媒としては、例えば、金
属触媒などを挙げることができる。金属触媒としては、例えば、2価の鉄イオン、3価の
鉄イオン、銅イオンなどが挙げられる。
【0033】
酸化還元触媒を重合系内に添加する方法としては、重合系内に、回分的、連続的、また
はこれらを組み合わせて添加する方法などを挙げることができる。ラジカル触媒、還元剤
、及び酸化還元触媒を用いる場合、ラジカル重合触媒として過硫酸カリウム、還元剤とし
て亜硫酸水素ナトリウム、酸化還元触媒として硫酸第一鉄を用いることが好ましい。
[2−2]乳化剤
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活
性剤などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用する
ことができる。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベ
ンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの
硫酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル
型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などのものを挙げることができる

【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩
、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム
塩を含むものが挙げられる。具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタインなどの
ベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノ
エチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプのものな
どが挙げられる。これら乳化剤のうち、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデ
シルベンゼンスルホン酸ナトリウムが更に好ましい。
【0037】
乳化剤の使用割合は、単量体成分100質量部に対して、0.5〜5質量部であること
が好ましく、0.5〜4質量部であることが更に好ましい。上記使用割合が0.5質量部
未満であると、重合安定性が低下し、凝集を起こすおそれがある。一方、5質量部超であ
ると、泡立ちが著しくなるため、バインダーとして使用する際の操作性が悪くなるおそれ
がある。乳化剤は、回分的、連続的、またはこれらを組み合わせて重合系内に添加するこ
とができる。
[2−3]分子量調整剤
分子量調節剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタ
ン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプ
タン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、チオグリコール
酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジ
スルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどのキサントゲンジスルフィド
類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブ
チルチウラムジスルフィドなどのチウラムスルフィド類、クロロホルム、四塩化炭素、四
臭化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ペンタフェニルエタン、α−メチ
ルスチレンダイマーなどの炭化水素類、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコー
ル、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルネピン、γ−テル
ネピン、ジペンテン、1,1−ジフェニルエチレンなどを挙げることができる。これらの
中でも、メルカプタン類、キサントゲンジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、1,
1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。なお、これらは単独
でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。分子量調節剤の使用割合は、単
量体成分100質量部に対して、0〜20質量部であることが好ましく、0.05〜15
質量部であることが更に好ましく、0.1〜10質量部であることが特に好ましい。上記
使用割合が20質量部超であると、接着強度が低下するおそれがある。分子量調節剤は、
一括して添加するか、或いは、回分的、連続的、またはこれらを組み合わせて重合系内に
添加することができる。
[2−4]
本発明で用いる共重合体ラテックスは、小粒子径と低粘度を両方兼ね備えたものである。
前記に先行特許文献で示したとおり、従来からも小粒子径の共重合体ラテックスの製造は検討されており、粒子系事態を小さくすることは実現されている。しかしながら、共重合体ラテックスの粒子径を小さくすることにより、ラテックスが高粘度化する現象を克服できた技術は見られない。本発明では、不飽和カルボン酸の使用量を従来技術よりも多くし、さらに重合初期に不飽和カルボン酸モノマーを反応させ、かつ重合初期段階のゲル分を減少させることによって、初めて小粒子径化と低粘度の共重合体ラテックスを得ることができたものである。このような方法によると水溶性モノマー由来のポリマー部分が、重合体粒子にグラフトされる構造をとるためと推定される。
【0038】
本発明において、重合初期段階とは、共重合する全モノマーの50質量%以下のモノマーを反応容器に添加するまでの段階をいう。
【0039】
また、本願発明においては共重合体ラテックスの重合を3段階以上の多段重合を行うことが好ましく、この多段重合の1段目および2段目に使用するモノマーの総量のうち、ブタジエンが20〜80質量%であることが好ましい。
[3]重合固形分
本実施形態の製造方法における重合固形分は15〜55質量%、より好ましくは20〜50質量%,更に好ましくは25〜50質量%である。重合固形分が15質量%以下では生産効率が悪く,工業的に好ましくない。一方55質量%を超えると重合時の除熱が困難となる。
[4]その他のラテックスへの添加剤
本実施形態の共重合体ラテックスを得るための乳化重合は、更に、pH調節剤、各種キレ
ート剤などの種々の重合調節剤を添加して行ってもよい。
また、本実施形態の共重合体ラテックスには、必要に応じてpH調整剤や粘度調整剤を添
加してもよい。pH調節剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが
挙げられる。各種キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなど
が挙げられる。 上記粘度調節剤の種類は特に限定されないが、通常、水溶性のものを用い、例えば、各種水溶性重合体、カゼイン、カゼイン変性物、澱粉及び澱粉変性物等を挙げることができる。このうち、水溶性重合体としては、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系、変性ポリカルボン酸系、ウレタン変性ポリエーテル系、変性ポリアクリル系及び会合性ポリアクリル系等の水溶性重合体、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは1種のみであってもよく、2種以上を併用してもよい。
この粘度調節剤の使用量は、共重合体ラテックスの固形分を100質量部とした場合に、0.01〜4質量部、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。

[5] 顔料 本発明において、顔料は、クレーを50質量%以上含むものであり、特に60質量%以上含んでいるものであることが好ましい。
クレーとしては、微粒クレーや高アスペクトクレーなどを挙げることができる。
【0040】
この微粒クレーとしては、ハイドラグロス、ハイドラグロス90、ハイドラグロス92、ハイドララックス91、ヒューバグロス、ヒューバグロス2000、ジャパングロス、ハイドラグレーズ(以上、ヒューバ社製)、ミラグロス、ミラグロス91、ミラグロスJ、ウルトラグロス90(以上 エンゲルハード社製)、アルファファイン、DBグレーズ(以上、イメリス社製)、カオファイン、カオファイン90(以上、シール社製)、アマゾンSD、アマゾンプレミアム(以上、カダム社製)等が挙げられる。これらのなかでもアマゾンSD及びアマゾンプレミアムが好ましい。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記「高アスペクトクレー」とは、2μm未満の粒子径である成分を80〜89質量%含有する顔料をいう。この粒径分布は、TAPPI TEST METHODS T649 cm−90に従うものである。
この高アスペクトクレーとしては、カバーグロス、ハイドラプレート(以上、ヒューバ社製)、ニュークレー、ミラクリプスPG、エクリプス650(以上、エンゲルハード社製)、DBプレート(以上イメリス社製)、カオホワイト(以上、シール社製)、カピムNP、カピムDG(以上リオカピム社製)、センチュリーHC(パラピグメント社製)等が挙げられる。これらのなかでもカピムNP、カピムDG及びセンチュリーHCが好ましい。これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明の紙塗工用組成物に含まれるクレー以外の顔料は、無機顔料または有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛などを挙げることができる。
有機顔料としては、例えば、ポリスチレンラテックス、尿素ホルマリン樹脂などを挙げることができる。これらは目的に応じて、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。有機顔料として中空重合体粒子を使用すると、平滑性が向上し、印刷光沢が更に向上するという効果がある。ここで、本明細書において「中空重合体粒子」とは、重合体層の内部に空孔を有する重合体粒子を意味する。
【0041】
[6] バインダー
本発明の紙塗工組成物においては、共重合体ラテックスおよび顔料に加えて、澱粉、酸化澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス、カルボキシメチルセルロース等の水溶性物質などのバインダーを含むことができる。これらのバインダーの中でも、澱粉が好ましい。
本発明では、前記特定の共重合体ラテックスを使用することで通常よりもこれらのバインダーの使用量を低減することができる。バインダーの使用量は、バインダーと前記共重合体ラテックスとの合計が顔料100質量部に対し、固形分換算で4〜8質量部となる量であることが好ましい。
[7] 紙塗工用組成物の助剤
種々の助剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、耐水化剤、離型剤、蛍光染料、カラー保持性向上剤、pH調節剤などを挙げることができる。
【0042】
分散剤としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。消泡剤としては、例えば、ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコンオイルなどを挙げることができる。レベリング剤としては、例えば、ロート油、ジシアンアミド、尿素などを挙げることができる。耐水化剤としては、例えば、ホルマリン、ヘキサミン、メラミン樹脂、尿素樹脂、グリオキサルなどを挙げることができる。離型剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなどを挙げることができる。カラー保持性向上剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0043】
本発明の紙塗工用組成物は、共重合体ラテックスの固形分量が、顔料100質量部に対して、3〜25質量部であり、4〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることが更に好ましい。
【0044】
本実施形態の紙塗工用組成物は、上述した共重合体ラテックス、顔料、及び、必要に応じてバインダーおよび助剤をそれぞれ所定量混合して調製することができる。
[8]塗工紙
本発明の塗工紙の一の実施形態は、原紙と、この原紙の両面に本発明の紙塗工用組成物を含有する塗工液を塗工して得られる塗工層と、を有するものである。
【0045】
このように、本実施形態の塗工紙は、本発明の紙塗工用組成物を含有する塗工液によって形成される塗工層を有するため、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、及び耐ブリスター性が良好である。
【0046】
本実施形態の塗工紙は、枚葉オフセット印刷用及び輪転オフセット印刷用として特に好適に使用することができる。また、その他の平版印刷用、グラビア印刷等の凹版印刷用、及び凸版印刷用としても使用することができる。
【0047】
本実施形態の塗工紙に使用する原紙は、特に制限はなく、構成するパルプの種類、抄紙方法、抄紙機は従来公知のものを適宜選択して用いることができる。また、坪量は、例えば、一般印刷用に使われる範囲、即ち、30〜200g/mとすることが好ましく、30〜150g/mとすることが更に好ましい。また、抄紙方法は、長網フォーマや、ギャップタイプのツインワイヤーフォーマ、長網部の後半部をツインワイヤーで構成するハイブリッドフォーマ等を用いて、酸性抄紙方式、中性抄紙方式、またはアルカリ性抄紙方式で抄造した原紙のいずれであっても良い。更に、原紙としては、メカニカルパルプを含む中質原紙及び古紙パルプを含む原紙及び上質原紙を使用することができる。
【0048】
本実施形態の塗工紙が有する塗工層は、上記原紙の両面に本発明の紙塗工用組成物を含有する塗工液を塗工して得られるものである。このような塗工層を有するため、本実施形態の塗工紙は、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、及び耐ブリスター性が良好である。
【0049】
塗工液は、本発明の紙塗工用組成物を含有するものであり、固形分含量が30〜80質量%であることが好ましく、35〜78質量%であることが更に好ましく、40〜75質量%であることが特に好ましい。上記固形分含量が30質量%未満であると、平滑性が低下し、印刷光沢が低下するおそれがある。一方、80質量%超であると、高速で塗工する場合における流動性が十分でなく、塗工に支障をきたすおそれがある。
【0050】
塗工液の塗工方法は、特に制限はなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、エアーナイフ方式、ブレードコータ方式、フィルムトランスファー方式(即ち、ロールコータ方式)、バーコータ方式、カーテンコータ方式、ダイロットコータ方式などの方法を挙げることができる。これらの中でも、ブレードコータ方式及びフィルムトランスファー方式からなる群より選択される少なくとも一方の塗工方式で行うことが好ましい。
【0051】
本実施形態の塗工紙には、片面当たり1層以上の塗工層を形成することが好ましい。2層以上の塗工層の場合、本発明の紙塗工用組成物を最上層に用いることが好ましい。また、片面当たり2層以上の塗工層を両面に形成する場合には、下塗り塗工に使用する塗工装置としては、ブレードコータ方式及びフィルムトランスファー方式からなる群より選択される少なくとも一方の塗工方式を採用する装置を用いることが好ましく、上塗り塗工に使用する塗工装置としては、ブレードコータ方式を採用する装置を用いることが好ましい。なお、塗工液を両面に塗工した後は、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等により所望の仕上げ処理をしてもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限
り質量基準である。また、実施例及び比較例中の各種の評価は、下記の方法により行った

(評価方法)
(共重合体ラテックスの物性評価方法)(1)トルエンゲル含有率
共重合体ラテックスを130℃の熱風乾燥機で30分乾燥しフィルムを作成した。得られたフィルムの0.3gを秤量し、100mlのトルエンに撹拌下で2時間浸漬した。その後、濾紙で濾過してトルエン溶液を回収した。得られたトルエン溶液を揮発させ、トルエンに溶解したフィルム質量を測定し、ラテックスフィルム質量からトルエンに溶解したフィルム質量を引き、ラテックスフィルム質量で除することでラテックスフィルムのトルエンゲル含有率を求めた。
【0053】
(2)THFゲル含有率
固形分を20質量%に調整した共重合体ラテックス0.2gに、常法に従い洗浄、水洗したカチオン交換樹脂約1gを加え、陽イオンを除去した。次いで、テトラヒドロフラン(THF)20mlを加え、24時間放置し、溶解する。次にポリテトラフルオロエチレン製メンブレインフィルター(ポアサイズ3μm、ADVANTEC社製)で濾過し、濾液を測定試料とする。なお、測定に際しては、分子量既知のポリスチレン標準物質を用いて、予め検量線を作成し、これを用いた。次に、測定装置として「HLC−8220(商品名)」(東ソー社製)、カラムとして有機溶媒系GPCカラム「TSKgel GMHHR−H(30)(商品名)」(充填剤;ポリスチレンゲル、粒子径;30μm、カラムサイズ;7.8mmI.D.×300mm、東ソー社製)、検出器として示差屈折率計を用い、温度40℃、溶媒をテトラヒドロフラン、流速を1ml/分、注入量を100μlとして測定した。得られたクロマトグラムから上記定義よりTHFゲル含有率を決定した。
(3)数平均粒子径固形分48質量%に調整した共重合体ラテックス 40μlを水100gで希釈し、希釈した溶液をカーボン補強したコロジオン支持膜にのせ、オスミウム酸で染色し、一晩乾燥させて測定サンプルとした。測定サンプルを日立ハイテクノロジーズ 電子顕微鏡 H-7650を用いて観察し、無作為に撮影した写真に写る共重合体ラテックス粒子の大きさを測定し、粒子300個の数平均を数平均粒子径とした。尚、写真撮影時の倍率は30000倍とした。
(4)ラテックス粘度
共重合体ラテックスを25.0℃±0.5℃に調温し、東機産業RB80型粘度計にて60rpmで1分測定し、ラテックスの粘度とした。
(5)質量平均分子量
まず、純水を用い、固形分を20質量%に調整した共重合体ラテックス0.2gに、常
法に従い洗浄、水洗したカチオン交換樹脂1gを加え、陽イオンを除去する。次に、テト
ラヒドロフラン20mlを加え、24時間放置し、溶解する。次に、ポリテトラフルオロ
エチレン製のメンブレインフィルター(ポアサイズ3μm、アドバンテック社製)で濾過
し、濾液を測定試料とする。なお、測定に際しては、分子量既知のポリスチレン標準物質
を用いて、予め検量線を作成し、これを用いる。次に、測定装置として「HLC−822
0(商品名)」(東ソー社製)、カラムとして有機溶媒系GPCカラム「TSKgel
GMHHR−H(30)(商品名)」(充填剤;ポリスチレンゲル、粒子径;30μm、
カラムサイズ;7.8mmI.D.×300mm、東ソー社製)、検出器として示差屈折
率計を用い、温度40℃、溶媒をテトラヒドロフラン、流速を1ml/分、注入量を10
0μlとして測定した。
(バインダー評価方法)
(6)ハイシェア粘度
高速塗工時における紙塗工用組成物の流動性をあらわすものの一例として、紙塗工組成物を作成し、ハイシェア粘度を評価した。
(ハイシェア粘度の測定)
熊谷理機工業社製、HI−SHEAR VISCOMETERを用いてスイープタイム10sec、ボブFの条件で回転数を8800rpmまで上昇させた際の、回転数6600rpmにおける見掛け粘度を紙塗工用組成物のハイシェア粘度として測定した。
(7)ドライピック強度
紙塗工用組成物から形成される塗膜の接着強度をあらわすものの一例として、印刷用塗工紙を作成し、ドライピック強度を評価した。
(塗工紙の作成とドライピック強度の測定)
原紙(80.5g/m)の両面に、塗工量が片面13.5±0.5g/mとなるように印刷用塗工紙の塗工組成物をラボブレードコータで塗工した後、150℃で5秒間熱風で乾燥する。その後、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽に1昼夜放置する。次に、線圧100kg/cm,ロール温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を4回行い、塗工紙を得る。その後、得られた塗工紙をRI印刷機(明製作所社製)で試験用インキ(東洋インキ社製、特殊インキ、SMX10〜25))を用いて印刷してピッキングの強度を肉眼で判定した。評価は5段階で行い、ピッキング現象が少ないものほど高得点とした。評価結果は測定回数6回の平均値を示す。
【0054】
[実施例]
(シードラテックスの合成例)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水290質量部、ドデシルベンゼン
スルホン酸ナトリウム12質量部、α‐メチルスチレンダイマー0.5質量部を添加し、
85℃まで昇温し、スチレン10部、アクリル酸0.5部、過硫酸カリウム0.5部を入
れ重合を開始した。
重合開始から1時間後、あらかじめ別の容器で混合しておいたスチレン59.5質量部、
メチルメタクリレート30質量部、t−ドデシルメルカプタン0.5質量部、α‐メチル
スチレンダイマー0.5質量部を3時間かけて一定速度で連続的に添加した。
重合期間中、1時間毎に、それぞれ、過硫酸カリウム0.1質量部を添加して反応を継続
させた。
重合転化率が98%以上となったら常温まで冷却し反応を停止させた。
次いで、反応液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、重合溶液のpHを4.5に調整
し、数平均粒子径25nmのシードラテックスを得た。
(合成例1)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水224質量部、前記で合成したシードラテックスを、固形分換算で10質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.95質量部、過硫酸カリウム1.3質量部、表1に示した初期仕込み成分を添加し、50℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.04質量部、硫酸第一鉄・7水和物0.0012質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間目に温度を60℃まで昇温し、表1の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の容器で調整した水5.0634部、亜硫酸水素ナトリウム0.1566部からなる水溶液をそれぞれ4.75時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から5.5時間目から、表1の二段目成分単量体混合液を2.5時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から8時間後に63℃まで昇温し、そのまま重合を継続し、重合転化率が98〜100%になった時点で常温まで冷却して重合を終了した。得られた共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(アロン T−50(東亜合成))を1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反応単量体を除去し、減圧下で蒸留を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共重合体ラテックスL1)。
(合成例2)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水224質量部、ドデシルベンゼン
スルホン酸ナトリウム2.4質量部、過硫酸カリウム1.3質量部、表1に示した初期仕
込み成分を添加し、50℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.04質量部、硫酸第一
鉄・7水和物0.0012質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間
目に温度を60℃まで昇温し、表1の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の
容器で調整した水5.0634部、亜硫酸水素ナトリウム0.1566部からなる水溶液
をそれぞれ6.75時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始か
ら7.5時間目から、表1の二段目成分単量体混合液を3.5時間かけて一定速度で連続
的に添加した。重合開始から11時間後に63℃まで昇温し、そのまま重合を継続し、重
合転化率が98〜100%になった時点で常温まで冷却して重合を終了した。得られた共
重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(ア
ロン T−50(東亜合成))を1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反
応単量体を除去し、減圧下で蒸留を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共
重合体ラテックスL2)。
(合成例3)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水159.36質量部、前記で合成したシードラテックスを、固形分換算で5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.475質量部、過硫酸カリウム0.5質量部、表1に示した初期仕込み成分を添加し、40℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.06質量部、硫酸第一鉄・7水和物0.0018質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間目に表1の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の容器で調整した水5.0634部、亜硫酸水素ナトリウム0.1566部からなる水溶液をそれぞれ4.25時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から5時間目にあらかじめ別の容器で調整した水1.3786部、過硫酸カリウム0.05部からなる水溶液を一括添加し、続いて、表1の二段目成分単量体混合液を1.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始5.5時間目から重合温度を変化させ、重合開始8時間目に70℃になるようにコントロールした。重合開始から6.25時間後に表1の三段目成分単量体混合液を1.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。尚、三段目成分中のイタコン酸については、あらかじめ別の容器で水14.87部に溶解させ、重合開始6.5時間目に一括添加した。また,重合開始6.5時間目からあらかじめ別の容器で調整した水2.7572部、過硫酸カリウム0.1部からなる水溶液を1時間おきに一括添加した。重合開始7.5時間目からあらかじめ別の容器で調整した水3.88部、亜硫酸水素ナトリウム0.12部からなる水溶液を3時間かけて一定速度で連続的に添加した。そのまま重合を継続し、重合転化率が98〜100%を確認し常温まで冷却して重合を終了した。得られた共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(アロン T−50(東亜合成))を1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反応単量体を除去し、減圧下で蒸留を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共重合体ラテックスL3)。
(実施例1)
合成例1で得られた共重合体ラテックス(L1) 5部、カオリンクレー(商品名「MGJ」、BASF社製)60部、炭酸カルシウム(商品名「カービタル90」、イメリス社製)40部、分散剤としてポリアクリル酸系分散剤(商品名「アロンT−50」、東亜合成社製)0.06部、水酸化ナトリウム(商品名「水酸化ナトリウム1級」、和光純薬社製)0.05部、及び、澱粉(商品名「王子エースC」、王子コーンスターチ社製)2部を用い、全固形分含量が68%の印刷用塗工紙の塗工用組成物を調製した。
(実施例2〜4)
実施例1において、共重合体ラテックスの種類、炭酸カルシウムおよびクレーの使用量を表3のとおりとし、さらに実施例4においてはポリアクリル酸系分散剤の使用量を0.08部とした以外は実施例1と同様にして紙塗工用組成物を調整した。
【0055】
【表1】

【0056】
得られた共重合体ラテックスL1〜L3を、上述した(1)トルエンゲル含有率、(2)数平均粒子径、(3)ラテックス粘度、(4)質量平均分子量及び(5)重合転化率50%におけるTHFゲル含有率の評価方法に従って評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例1〜4で得られた紙塗工用組成物を、上述した(6)ハイシェア粘度、
(7)ドライピック強度の評価方法に従って評価した。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
(比較例)
(比較例合成例1)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水224質量部、前記で合成した
シードラテックスを、固形分換算で10質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
0.95質量部、過硫酸カリウム1.3質量部、表4に示した初期仕込み成分を添加し、
50℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.04質量部、硫酸第一鉄・7水和物0.0
012質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間目に温度を60℃ま
で昇温し、表4の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の容器で調整した水1
.6878部、亜硫酸水素ナトリウム0.0522部からなる水溶液をそれぞれ4.75
時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から5.5時間目から
、表4の二段目成分単量体混合液を2.5時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合
開始から8時間後に63℃まで昇温し、あらかじめ別の容器で調整した水3.3756部
、亜硫酸水素ナトリウム0.1044部からなる水溶液を3時間かけて一定の速度で連続
的に添加した。添加終了後、そのまま重合を継続し、重合転化率が98〜100%になっ
た時点で常温まで冷却して重合を終了した。得られた共重合体ラテックスを水酸化ナトリ
ウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(アロン T−50(東亜合成))を
1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反応単量体を除去し、減圧下で蒸留
を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共重合体ラテックスR1)。
(比較例合成例2)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水224質量部、前記で合成した
シードラテックスを、固形分換算で2質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0
.175質量部、過硫酸カリウム1.3質量部、表1に示した初期仕込み成分を添加し、50℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.04質量部、硫酸第一鉄・7水和物0.0012質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間目に温度を60℃まで昇温し、表4の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の容器で調整した水1.6878部、亜硫酸水素ナトリウム0.0522部からなる水溶液をそれぞれ4.75時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から5.5時間目から、表4の二段目成分単量体混合液を2.5時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から8時間後に63℃まで昇温し、そのまま重合を継続し、重合転化率が98〜100%になった時点で常温まで冷却して重合を終了した。得られた共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(アロン T−50(東亜合成))を1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反応単量体を除去し、減圧下で蒸留を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共重合体ラテックスR2)。
(比較例合成例3)
攪拌機を備え、温度調節可能なオートクレーブ中に、水224質量部、前記で合成したシードラテックスを、固形分換算で10質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.95質量部、過硫酸カリウム1.3質量部、表1に示した初期仕込み成分を添加し、50℃まで昇温し、亜硫酸水素ナトリウム0.04質量部、硫酸第一鉄・7水和物0.0012質量部を添加して重合を開始した。重合開始から0.75時間目に温度を60℃まで昇温し、表1の一段目成分単量体混合液、および、あらかじめ別の容器で調整した水5.0634部、亜硫酸水素ナトリウム0.1566部からなる水溶液をそれぞれ4.75時間、7.25時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から5.5時間目から、表1の二段目成分単量体混合液を2.5時間かけて一定速度で連続的に添加した。重合開始から8時間後に63℃まで昇温し、そのまま重合を継続し、重合転化率が98〜100%になった時点で常温まで冷却して重合を終了した。得られた共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(アロンT−50(東亜合成))を1.5質量部添加し、スチームストリッピング法で未反応単量体を除去し、減圧下で蒸留を行い、固形分を48質量%となるように調整した(共重合体ラテックスR3)。
(比較例合成例4)
撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125部、アデカリアソープSE1025N:旭電化工業株式会社製(ポリオキシアルキレン鎖と硫酸基を有する反応性乳化剤)3部を仕込み、窒素置換の後、内温を80℃に昇温した。さらに、ブタジエン35部、スチレン45部、メクリル酸メチル13部、アクリル酸2部、メタクリル酸5部の合計100部よりなる単量体混合物と、t−ドデシルメルカプタン2.5部との油性混合液、並びに、水28部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2部、水酸化ナトリウム0.2部、前記と同じ反応性乳化剤1部からなる水溶液を、調製後窒素置換を行い、それぞれ5時間および6時間かけて一定の流速で添加した。
そして、80℃の温度をそのまま1時間保って重合反応を完了した後、冷却した。次いで、生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去し、固形分濃度が48%になるように調整した(共重合体ラテックスR4)
(比較例1〜4)
実施例1において、共重合体ラテックスの種類を表6に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして紙塗工用組成物を調整した。
【0061】
【表4】

【0062】
得られた共重合体ラテックスR1〜R4を、上述した(1)トルエンゲル含有率、(2)数平均粒子径、(3)ラテックス粘度、(4)質量平均分子量及び(5)重合転化率50%におけるTHFゲル含有率の評価方法に従って評価した。その結果を表2に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
比較例1〜4で得られた紙塗工用組成物を、上述した(6)ハイシェア粘度、(7)ドライピック強度の評価方法に従って評価した。その結果を表6に示す。
【0065】
【表6】










【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位を20〜80質量%、(B)不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を4〜15質量%、及び(C)その他共重合可能な単量体由来の構造単位を5〜76質量%(但し、(A)、(B)、(C)の合計100質量%)有する共重合体を含有し、透過型電子顕微鏡で測定した数平均粒子径が30〜80nm、固形分48質量%における粘度が50〜400mPa・sである、共重合体ラテックスならびにクレーを50質量%以上含有する顔料を含有することを特徴とする紙塗工用組成物。
【請求項2】
前記共重合体ラテックスの(C)成分として、α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する構造単位を5〜40質量%有する共重合体ラテックスを含有することを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項3】
前記共重合体ラテックスの(C)成分として、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を5〜40質量%有する共重合体ラテックスを含有することを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項4】
前記共重合体ラテックスの数平均粒子径が30〜75nmであることを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項5】
前記共重合体ラテックスの粘度が80〜400mPa・Sであることを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項6】
共重合体ラテックスを顔料100質量部に対し固形分換算で3〜7質量部含むことを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項7】
上記1〜6のいずれかの請求項に記載の紙塗工用組成物を塗布し乾燥してなる塗工層を有する塗工紙。

【公開番号】特開2013−67922(P2013−67922A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208850(P2011−208850)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】