説明

紙塗工用組成物

【課題】 本発明の目的は、紙塗工用組成物の流動性を改善し、紙塗工用組成物の高速かつ、高濃度での塗工を可能とすると共に、塗工時の乾燥エネルギーを低減化し、塗工紙の生産コストに優れた紙塗工用組成物を提供することにある。
【解決手段】 (A)顔料、(B)デンプン、(C)デンプン以外の水性バインダー、および(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物を含有してなることにより、従来の紙塗工用組成物より同濃度でのハイシェアー粘度が改善され、従来の紙塗工用組成物よりも高速かつ、高濃度塗工が可能となり、塗工時の乾燥エネルギーを低減化するとともに塗工紙の生産コストを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙塗工用組成物に関するものである。さらに詳しくは、塗工紙を製造するに際し、特に高濃度での塗工において、流動性に優れた紙塗工用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の塗工技術の傾向として、中性抄紙の実用化に伴い紙塗工用組成物の顔料として、安価な炭酸カルシウムの多量使用に合せて塗工紙品質の向上を目的として紙塗工用組成物の高濃度化が指向される一方、主に、生産性向上等の目的でコーターの高速化が進められており、塗工時の乾燥エネルギーの低減化が図られている。これら高濃度塗工および高速塗工に伴い紙塗工用組成物に対して種々の性質が要求されるようになってきている。とりわけ紙塗工用組成物に優れた流動性が必要とされる。
【0003】
塗工紙の塗層は、デンプン、合成高分子ラテックス等の接着剤とカオリンと炭酸カルシウムを主たる顔料とする紙塗工用組成物を塗工することで形成される。高速塗工を行う為には、優れた流動性が必要とされることから、紙塗工用組成物の濃度を低下させて粘度を低減し、流動性を増大させる方法が一般的にとられるが、紙塗工用組成物の濃度を低下させた場合、着肉性、等のオフセット印刷適性は著しく低下する。即ち、印刷適性の点からはむしろ高濃度化した紙塗工用組成物を高速塗工する必要がある。そこで、高速塗工適性を与える為、例えば、湿式粉砕した重質炭酸カルシウムを顔料に用い、紙塗工用組成物の流動性を改善する方法(特許文献1)が開示されている。しかしながら、湿式粉砕重質炭酸カルシウムを多用した場合、かえって塗工紙の着肉性を悪化させることから望ましい方向ではない。又、接着剤としてのデンプンを冷水可溶性デンプン、デキストリン、等の低分子デンプンとし、高濃度化を図ると共に、塗工適性、印刷品質を向上させる方法(特許文献2)が開示されている。しかしながら、低分子デンプンを用いた場合、デンプンの不均一なマイグレーションが起こり易く、着肉ムラを発生させ易い。以上のように、従来の技術では高濃度紙塗工用組成物での高速塗工を満足させるものがないのが現状であり、改善が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−62296号公報
【特許文献2】特開昭58−169595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、紙塗工用組成物の流動性を改善し、紙塗工用組成物の高速かつ、高濃度での塗工を可能とすると共に、塗工時の乾燥エネルギーを低減化し、塗工紙の生産コストに優れた紙塗工用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく紙塗工用組成物の高せん断速度下での流動性(以下ハイシェアー粘度と略称する)に着目し、種々の組成物について鋭意検討した結果、(A)顔料、(B)デンプン、(C)デンプン以外の水性バインダー、および(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物を含有してなることにより、従来の紙塗工用組成物より同濃度でのハイシェアー粘度が改善され、紙塗工用組成物を高濃度化できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙塗工用組成物を用いることにより、従来の紙塗工用組成物よりも高速かつ、高濃度塗工が可能となり、塗工時の乾燥エネルギーを低減化するとともに塗工紙の生産コストを削減することができる。また本発明の紙塗工用組成物は、粘度を低減させることができ、固形分濃度を高くすることができるため、バインダーマイグレーションを抑制することができ、塗工紙の塗工層強度を向上させるだけでなく、印刷適性をも向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における紙塗工用組成物の成分となる(A)顔料は、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、白色無機顔料及び白色有機顔料が使用できる。白色無機顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、デラミカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、コロイダルシリカなどが挙げられる。また白色有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらの(A)顔料は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0009】
本発明における紙塗工用組成物の成分となる(B)デンプンは、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、例えば、酸化でんぷんや尿素リン酸エステル化でんぷんをはじめとする無変性の、又は変性されたでんぷん類などが挙げられる。これらの(B)デンプンは、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。(A)顔料と(B)デンプンの組成割合は、通常、(A)顔料100重量部に対して、(B)デンプンが0.1重量部〜10重量部であり、好ましくは0.3重量部〜5重量部である。(B)デンプンが10重量部より多いと紙塗工用組成物のハイシェアー粘度が増大する傾向がある。
【0010】
本発明における紙塗工用組成物の成分となる(C)デンプン以外の水性バインダーは、紙の塗工に従来から一般に用いられているものでよく、水溶性のバインダーや水乳化系のバインダーが使用できる。水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼインやゼラチンをはじめとする水溶性プロテイン、カルボキシメチルセルロースをはじめとする変性セルロース類などが挙げられる。また水乳化系バインダーとしては、例えば、カルボキシル基含有スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、メチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。これらの水性バインダーは、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。(A)顔料と(C)デンプン以外の水性バインダーの組成割合は、用途や目的に応じて決定され、当業界で一般に採用されている組成と特に異なるところはなく、通常、(A)顔料100重量部に対して、(C)デンプン以外の水性バインダーが1〜200重量部、好ましくは3〜50重量部である。
【0011】
本発明における紙塗工用組成物の成分となるアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基をし、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物としては、例えばアンモニアと有機カルボン酸類の反応物、有機アミン類と有機カルボン酸類の反応物、有機アミン類と尿素類の反応物等が挙げられる。
これらのカチオン性化合物のカチオン当量は0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下である。(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のはそれぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0012】
本発明におけるカチオン性化合物の原料として用いられる有機アミン類としては、分子中に1級又は2級アミノ基を1個有するモノアミン類、および分子中に1級又は2級アミノ基を少なくとも2個有するポリアミン類が挙げられる。モノアミン類とは、分子中に1級又は2級アミノ基を1個有する脂肪族モノアミン、脂環式モノアミン、アルカノールモノアミン、複素環モノアミンであり、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等の炭素数1〜10程度のアルキル基を含有するアルキルモノアミン;アミノメチルシクロヘキサンなどの脂環式モノアミン;エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン等の炭素数1〜10程度のアルキル基を含有するアルカノールモノアミン;複素環モノアミンが挙げられる。ポリアミン類とは、分子中に1級又は2級アミノ基を少なくとも2個有する脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、アルカノールポリアミン、複素環ポリアミンであり、例えば、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数1〜10程度のアルキレン基を含有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、3−アザヘキサン−1,6−ジアミン、4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等のポリアルキレンポリアミン;イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン等の炭素数1〜10程度のアルキル基を含有するアルカノールポリアミン;複素環ポリアミン等が挙げられる。
【0013】
ここで複素環モノアミンとは、分子中に窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個含有する複素環を含み、1級又は2級アミノ基を1個有するモノアミンのことである。複素環ポリアミンとは、分子中に窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個含有する複素環を含み、1級又は2級アミノ基を少なくとも2個有するポリアミンのことである。中でも、複素環に窒素原子を含有する複素環ポリアミンが好ましく、具体例としては、ピペラジン、ホモピペラジン等のような複素環ジアミン類;N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、及び1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジンのような複素環アミンとアミノアルキル基とからなる複素環ポリアミンなどが挙げられる。
【0014】
有機アミン類として、異なる2種類以上の有機アミン類を用いてもよい。有機アミン類としては、中でも、ポリアルキレンポリアミンが好ましく、とりわけ、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N−アミノエチルピペラジンが好適である。
【0015】
本発明におけるカチオン性化合物の原料として用いられる有機カルボン酸類としては、分子中にカルボキシル基を1個有するモノカルボン酸類、および分子中にカルボキシル基を少なくとも2個有するポリカルボン酸類が挙げられ、該カルボン酸と炭素数1〜4程度のアルコールとからなるエステル類、あるいは該カルボン酸の無水物であることができる。モノカルボン酸類とは、分子中にカルボキシル基を1個有する脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、ブタン酸、マレイン酸、吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸等の炭素数1〜15程度のアルキル基、およびアルケニル基を含有するアルキル、およびアルケニルモノカルボン酸;シクロヘキシルカルボン酸、シクロヘキセニルカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸等が挙げられる。ポリカルボン酸類とは、分子中にカルボキシル基を少なくとも2個有する脂肪族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸であり、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ブタンテトラカルボン酸等の炭素数1〜15程度のアルキル基、およびアルケニル基を含有するアルキル、およびアルケニルポリカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸などの脂環式ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
有機カルボン酸類として、異なる2種類以上の有機カルボン酸類を用いてもよい。有機カルボン酸類としては、中でも、アルキルモノカルボン酸、アルキルポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸が好ましく、とりわけ、2−エチルヘキサン酸、アジピン酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸が好適である。
【0017】
本発明におけるカチオン性化合物の原料として用いられる尿素類としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、中でも尿素が好適である。これら尿素類は、単独で使用しても、あるいは異なる2種類以上を併用してもよい。
【0018】
本発明における(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有するカチオン性化合物のカチオン当量は0.0001〜0.1meq/gであり、好ましくは0.0001〜0.05meq/gであり、とりわけ0.0001〜0.03meq/g以下がより好ましい。カチオン当量が0.1meq/gより大きいと紙塗工用組成物のハイシェアー粘度が増大するため好ましくない。 尚、本発明におけるカチオン当量とは、コロイド滴定法により測定した値をいう。
【0019】
本発明における(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであるカチオン性化合物の分子量は5,000以下であり、好ましくは3000以下であり、とりわけ1000以下がより好ましい。分子量が5,000より大きいと紙塗工用組成物のハイシェアー粘度が増大するため好ましくない。
【0020】
本発明におけるカチオン性化合物の1つであるアンモニアと有機カルボン酸類の反応物において、アンモニアと有機カルボン酸類の反応は、有機カルボン酸類の種類によって、反応温度および反応時間が異なるが、例えば、アンモニアと遊離カルボン酸とをアミド化反応させる場合、通常、130〜250℃程度で、水等を留去しながら、2〜10時間程度反応させる方法;アンモニアとカルボン酸無水物とをアミド化反応させる場合、通常、50〜200℃程度で、水等を留去しながら、1〜10時間程度反応させる方法;アンモニアとカルボン酸エステルとをアミド化反応させる場合、通常、80〜250℃程度で、水またはアルコール等を留去しながら、2〜10時間程度反応させる方法等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるカチオン性化合物の1つである有機アミン類と有機カルボン酸類の反応物において、有機アミン類と有機カルボン酸類の反応は、有機カルボン酸類の種類によって、反応温度および反応時間が異なるが、例えば、有機アミン類と遊離カルボン酸とをアミド化反応させる場合、通常、130〜250℃程度で、水等を留去しながら、2〜10時間程度反応させる方法;有機アミン類とカルボン酸無水物とをアミド化反応させる場合、通常、50〜200℃程度で、水等を留去しながら、1〜10時間程度反応させる方法;有機アミン類とカルボン酸エステルとをアミド化反応させる場合、通常、80〜250℃程度で、水またはアルコール等を留去しながら、2〜10時間程度反応させる方法等が挙げられる。
【0022】
本発明におけるカチオン性化合物の1つである有機アミン類と尿素類の反応物において、有機アミン類のアミノ基と尿素類との脱アンモニア反応は、通常、80〜180℃程度、好ましくは90〜160℃程度で、発生するアンモニアを留去しながら4〜30時間程度、好ましくは5〜20時間度反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
本発明において(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物を配合することにより、同濃度でのハイシェアー粘度が改善される。(A)顔料と(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物の配合割合は、(A)顔料100重量部に対し、通常、0.01〜20重量部であり、0.03〜10重量部配合するのが好ましく、更に好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0024】
本発明における紙塗工用組成物の成分として、必要に応じてさらに(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、かつ分子量が5,000以下のノニオン性化合物を含有しても良い。
【0025】
本発明における(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、かつ分子量が5,000以下のノニオン性化合物としては、例えば尿素類、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。
【0026】
本発明における(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、かつ分子量が5,000以下のノニオン性化合物のうち、尿素類としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、中でも尿素が好適である。これら尿素類は、単独で使用しても、あるいは異なる2種類以上を併用してもよい。
【0027】
本発明におけるノニオン性化合物のうち、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール等の炭素数1〜15程度のアルキル基を含有する脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの脂環式アルコールなどが挙げられる。これらアルコール類は、単独で使用しても、あるいは異なる2種類以上を併用してもよい。
【0028】
本発明におけるノニオン性化合物のうち、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルキレングリコール類、ブテンジオール、オクテンジオール等のアルケニレングリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類等が例示され、中でもエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールが好適に使用される。これらグリコール類は、単独で使用しても、あるいは異なる2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明における(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有するノニオン性化合物の分子量は5,000以下であり、好ましくは3000以下であり、とりわけ1000以下がより好ましい。分子量が5,000より大きいと紙塗工用組成物のハイシェアー粘度が増大するため好ましくない。
【0030】
本発明における(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、かつ分子量が5,000以下のノニオン性化合物の配合割合は、通常、(A)顔料100重量部に対し、0.03〜10重量部配合され、好ましくは、0.05〜5重量部配合される。
【0031】
本発明の紙塗工用組成物には、(A)〜(E)以外の成分として、例えば、分散剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、保水剤、耐水化剤、また染料や有色顔料のような着色剤などを、必要に応じて紙塗工用組成物のハイシェアー粘度に悪影響を与えない範囲でさらに配合させることができる。
【0032】
本発明の紙塗工組成物は、従来より公知の方法、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、キャストコーターなど、公知の各種コーターを用いる方法により、紙に塗布される。その後必要な乾燥を行い、さらに必要に応じてスーパーカレンダーなどで平滑化処理を施すことにより、本発明の塗工紙を製造することができる。
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定される物ではない。例中、部および%は、特に断わらないかぎり重量基準である。また、固形分は、JIS K6828の4.9に準じて乾燥することにより求めた蒸発残分であり、pHは、ガラス電極式水素イオン濃度計〔東亜電波工業社製〕を用い、調製直後の試料のpHを25℃にて測定した値であり、(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下の化合物の粘度は、B型粘度計〔東京計器社製、BL型〕を用い、60rpm 、25℃で、調製直後の試料の粘度を測定した値であり、カチオン当量は、ポリビニル硫酸ナトリウムを用いて、コロイド滴定法により測定した値であり、塗工組成物の粘度は、ハイシェアー粘度計〔熊谷理機工業社製、HERCULES型〕を用い、3000rpm 、25℃で、調製直後の試料の粘度を測定した値である。
【0034】
(合成例1)
<(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物の製造例1:紙塗工用樹脂組成物1の調製>
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた反応器に、ジエチレントリアミンを60.3部(0.58モル比)添加し、水41.4部を徐々に添加した。その後80℃まで内温を昇温させ、尿素105.4部(1.75モル比)を添加した後、内温を90℃まで昇温させた。続いて、発生するアンモニアを系外に留去しながら、内温110℃まで4時間かけて昇温させ、さらに、発生するアンモニアを反応器から留去しながら、内温108〜112℃で8時間反応させた。その後、水94.4部を徐々に加えながら冷却して、不揮発分50.3%、pH10.7、粘度10mPa・s、カチオン当量0.01meq/gの水溶液(紙塗工用樹脂組成物1)271.7部を得た。
【0035】
(合成例2)
<(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物の製造例2:紙塗工用樹脂組成物2の調製>
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた反応器に、ジエチレントリアミンを80.1部(0.78モル比)添加した。その後80℃まで内温を昇温させ、尿素46.6部(0.78モル比)を添加した後、内温を90℃まで昇温させた。続いて、発生するアンモニアを系外に留去しながら、内温150℃まで2時間かけて昇温させ、さらに、発生するアンモニアを反応器から留去しながら、内温150〜155℃で5時間反応させた。その後、水25.1部を徐々に加えながら冷却した。内温が90℃以下まで冷却した後、尿素46.6部(0.78モル比)を添加し、内温を90℃まで昇温させた。続いて、発生するアンモニアを系外に留去しながら、内温110℃まで4時間かけて昇温させ、さらに、発生するアンモニアを反応器から留去しながら、内温108〜112℃で8時間反応させた。その後、水71.9部を徐々に加えながら冷却して、不揮発分50.9%、pH10.7、粘度10mPa・s、カチオン当量0.01meq/gの水溶液(紙塗工用樹脂組成物2)266.5部を得た。
【0036】
(比較合成例1)
<比較合成例1:紙塗工用樹脂組成物3の調製>
温度計、還流冷却器及び攪拌棒を備えた反応器に、ジエチレントリアミンを60.3部(0.58モル比)添加し、水41.0部を徐々に添加した。その後80℃まで内温を昇温させ、尿素103.6部(1.73モル比)を添加した後、内温を90℃まで昇温させた。続いて、発生するアンモニアを系外に留去しながら、内温110℃まで4時間かけて昇温させ、さらに、発生するアンモニアを反応器から留去しながら、内温108〜112℃で8時間反応させた。その後、水93.6部を徐々に加えながら冷却して、不揮発分50.2%、pH10.8、粘度10mPa・s、カチオン当量0.21meq/gの水溶液(紙塗工用樹脂組成物3)269.0部を得た。
【実施例1】
【0037】
<紙塗工用組成物の製造例>
(A)ウルトラホワイト90(顔料、米国エンゲルハードミネラルズ社製のクレー)50重量部、カービタル90(顔料、富士カオリン社製の炭酸カルシウム)の固形分が50重量部を混合し、更にポリアクリル酸系顔料分散剤の固形分が0.2重量部、(C)スチレン−ブタジエン系ラテックスの固形分が9.5重量部、および(B)尿素リン酸エステル化デンプン(日食MS−4600、日本食品化工社製のデンプン)の固形分が3重量部を混合し、水を加えて、固形分67.0%となるようにマスターカラーを調製した。続いて、マスターカラーの(A)顔料100重量部に、(D)合成例1で得られた紙塗工用樹脂組成物1の固形分が0.6重量部となる割合で添加し、固形分を66.0%に調整し、紙塗工用組成物T1を得た。紙塗工用組成物T1の粘度などの物性を表1に示す。
【実施例2】
【0038】
実施例1において(D)合成例1で得られた紙塗工用樹脂組成物1の固形分が0.6重量部となる割合で添加するかわりに合成例2で得られた紙塗工用樹脂組成物2の固形分が0.6重量部となる割合で添加する以外は実施例1と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T2を得た。紙塗工用組成物T2の粘度などの物性を表1に示す。
【実施例3】
【0039】
実施例1において調製したマスターカラーの(A)顔料100重量部に、(D)合成例2で得られた紙塗工用樹脂組成物2の固形分が0.3重量部と(E)尿素の固形分が0.3重量部となる割合で添加し、固形分を66.0%に調整し、紙塗工用組成物T3を得た。紙塗工用組成物T3の粘度などの物性を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
実施例1において(D)合成例1で得られた紙塗工用樹脂組成物1を配合しない以外は、実施例1と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T4を得た。
紙塗工用組成物T4の粘度などの物性を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
実施例1における(D)合成例1で得られた紙塗工用樹脂組成物1を比較合成例1で得られた紙塗工用樹脂組成物4に変更する以外は実施例1と同様の操作を行ない、紙塗工用組成物T5を得た。
紙塗工用組成物T5の粘度などの物性を表1に示す。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)を含有してなることを特徴とする紙塗工用組成物。
(A)顔料
(B)デンプン
(C)デンプン以外の水性バインダー
(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下のカチオン性化合物
【請求項2】
(E)カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、かつ分子量が5,000以下のノニオン性化合物をさらに含有してなることを特徴とする請求項1記載の紙塗工用組成物。
【請求項3】
(D)アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基などの水素結合を形成する官能基を有し、カチオン当量が0.0001〜0.1meq/gであり、かつ分子量が5,000以下の化合物がポリアルキレンポリアミンと尿素の反応物であることを特徴とする請求項1〜2記載の紙塗工用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の紙塗工用組成物を紙に塗工してなる塗工紙。

【公開番号】特開2008−190069(P2008−190069A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24457(P2007−24457)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】