説明

紙容器用ブランク材

【課題】バリア層を傷付けることなくかつバリア層にピンホールを形成することのない開封用ハーフカット線を有する紙容器用ブランク材の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも紙基材用ヒートシール層21と紙層22とを有する紙基材20Aに紙層22側から切断刃30を当てて多数の貫通孔28を形成する。紙基材20Aの紙層22上に接着層23を介してアルミ層24を積層して第1積層体20Bを得る。第1積層体20Bのアルミ層24上に第1ヒートシール層25を積層することにより第2積層体20Cからなる紙容器用ブランク材20を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封性と、内容物に悪影響を及ぼす水蒸気や酸素等を遮断するバリア性とを有する紙容器を製造するための紙容器用ブランク材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スナック菓子、液体飲料、シャンプーやリンス、車用洗浄液等の容器としてバリア性をもった密封紙容器が用いられている。密封紙容器として使用されている容器としては種々のタイプがある。近時、牛乳、ジュース、コーヒーや紅茶飲料、ミネラルウォーター、清酒等の多くの用途に広く普及しているゲーベルトップタイプ紙容器、ブリック(れんが)型紙容器をはじめ、正四面体容器或いは紙カップの技術や紙管技術などを利用したもの等がある。これらの紙容器から内容物を取り出す方法として、種々の工夫がなされている。
【0003】
ところで乾燥食品、スナック食品等の包装用として紙容器を利用する場合には、易開封性を有することが必要である。このため紙容器に開封用ハーフカットを設け、この開封用ハーフカット線に沿って紙容器を開封する技術が開発されている。
【0004】
この場合、紙容器用ブランク材に予め開封用ハーフカット線を設けておき、このような開封用ハーフカット線を有するブランク材を組立てることにより紙容器が得られる。
【0005】
一般にブランク材は少なくとも紙層とバリア層とを有しており、まず紙層に切断刃によって貫通孔を設けた後、この紙層上にバリア層を積層することによりブランク材を得ている。
【0006】
しかしながら、紙層の貫通孔にバリが残ると、このバリによりバリア層が傷つき、バリア層にピンホールが生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−48426
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、ブランク材に開封用ハーフカット線を形成するため紙層に貫通孔を設けても、バリア層が傷付いたり、バリア層にピンホールが生じることのない紙容器用ブランク材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、開封用ハーフカット線を有する紙容器用ブランク材の製造方法において、紙基材を準備する工程と、紙基材の一方側から切断刃を当てて、紙基材に開封用ハーフカット線となる多数の貫通孔を形成する工程と、切断刃を当てた側の紙基材に接着層を介してバリア層を積層して第1積層体を作製する工程と、第1積層体のバリア層上に第1ヒートシール層を積層して第2積層体からなるブランク材を得る工程と、を備えたことを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法である。
【0010】
本発明は紙基材は紙基材用ヒートシール層と紙層からなり、紙層側から切断刃を当てることを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法である。
【0011】
本発明は、バリア層はアルミニウム層からなることを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法である。
【0012】
本発明は、紙基材の貫通孔の断面は、紙層から紙基材用ヒートシール層に向って先細状に形成されていることを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法である。
【0013】
本発明は、紙基材の一方側から切断刃を当てて、紙基材に多数の貫通孔をミシン目状に形成することを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、紙基材の一方側から切断刃を当てて、紙基材に開封用ハーフカット線となる多数の貫通孔を形成するので、貫通孔に切断刃を当てた側へ突出するバリが生じることはない。このため、紙基材の切断刃を当てた側にバリア層を積層しても、このバリア層がバリにより傷付いたり、バリア層にピンホールが生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明によるブランク材の製造方法により得られたブランク材を組立ててなる紙容器を示す斜視図。
【図2】図2はブランク材を示す平面図。
【図3】図3(a)〜(d)はブランク材の製造方法を示す図。
【図4】図4は紙基材に貫通孔を形成する状態を示す図。
【図5】図5は貫通孔を形成する状態を示す比較例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1乃至図4は、本発明の実施の形態を示す図である。
【0018】
図1乃至図4に示すように、乾燥食品、スナック等を収納する紙容器10は、ブランク材20を折罫a,b,c,dに沿って折畳み組立てることにより構成され、このような紙容器10は6面体形状をもつ(図1および図2参照)。
【0019】
この場合、ブランク材20はポリエチレン製の紙基材用ヒートシール層21と、紙層22と、ポリエチレン製の接着層23と、アルミ層(バリア層)24と、ポリエチレン製の第1ヒートシール層25とを有する積層体からなる。
【0020】
このうち紙基材用ヒートシール層21は厚み20μmのPE層からなり、紙層22は坪量210g/mを有し、接着層23は厚み20μmのPE層からなり、アルミ層24は厚み9μmのアルミ箔からなり、第1ヒートシール層25は厚み20μmのPEからなる。
【0021】
また図1および図2に示すように、紙容器10は、正面外フラップ11aと、この正面外フラップ11aに重なり合って貼り付けられた正面内フラップ11bとを有する正面壁11と、正面外フラップ11aに折罫aを介して連設された天壁12と、天壁12に折罫bを介して連設された背面壁13と、背面壁13に折罫cを介して連設された底壁14とを備え、底壁14と正面内フラップ11bとの間に折罫dが設けられている。
【0022】
また正面壁11と背面壁13との間には、一対の側部40、40が設けられている。この各側部40は、天壁12から延びるとともに先端に貼付け部41aを有する天壁側部パネル41と、底壁14から延びるとともに先端に貼付け部42aを有する底壁側部パネル42とを有している。そして天壁側部パネル41の貼付け部41aと、底壁側部パネル42の貼付け部42aを互いに貼付けることにより、側部40が構成される。
【0023】
また各側部40の両側には、天壁側部パネル41と底壁側部パネル42との間に折込まれた第1折込部43と第2折込部47とが設けられている。
【0024】
このうち第1折込部43は正面壁11側に位置し、第2折込部47は背面壁13側に位置している。
【0025】
さらに正面壁11の正面外フラップ11aには、紙容器10を開封するための一対の開封用ハーフカット線28が設けられ、この一対の開封用ハーフカット線28の先端には摘み部28が形成されている。
【0026】
一対の開封用ハーフカット線28は正面外フラップ11aから折罫aを介して天壁12まで延び、この一対の開封用ハーフカット線28は天壁12と背面壁13との間の折罫bまで達している。
【0027】
ところで、正面外フラップ11aから天壁12まで延びる一対のハーフカット線28は、ブランク材20のうち紙基材用ヒートシール層21と紙層22のみを貫通してミシン目状に形成され、摘み部28aはブランク材20を全貫通して形成される。
【0028】
このため、正面外フラップ11aの摘み部28aを摘み、この摘み部28aから一対のハーフカット線28に沿ってブランク材20を破断することにより、紙容器10を開封することができる。
【0029】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0030】
まずブランク材の製造方法について説明する。
【0031】
図3(a)に示すように、はじめに紙基材用ヒートシール層21と紙層22とからなる紙基材20Aを準備する。
【0032】
なお、紙基材20Aの一方側から紙基材用ヒートシール層21を取り外して、紙基材20Aを紙層22のみから形成してもよい。
【0033】
次に図4に示すように、紙基材20Aの紙層22側(紙基材20Aの一方側)から切断刃30を当てて紙基材20Aに多数の貫通孔28をミシン目状に形成する。この貫通孔28は紙基材20Aを完全に貫通するとともに、後述のようにブランク材20の開封用ハーフカット線28となる(図3(b)参照)。
【0034】
また貫通孔28を形成する切断刃30は先端に向って先細状に形成され、このため貫通孔28は切断刃30により紙基材20Aの紙層22から紙基材用ヒートシール層21に向って先細状の断面をもつことになる。
【0035】
また切断刃30は紙基材20Aの紙層22側から当てられるため、紙基材20Aの貫通孔28には、紙基材用ヒートシール層21から外方へ突出するバリ21aが形成されるが、紙層22側にバリが形成されることはない。
【0036】
このため後述のように、紙基材20Aの紙層22上(切断刃30を当てた側)に接着層23を介してアルミ層24を積層した場合であっても、紙層22側にバリが生じることはない。このため、アルミ層24が傷付いたり、アルミ層24にピンホールが生じることはない。
【0037】
すなわち、比較例として示す図5に示すように、紙基材用ヒートシール層21と紙層22とからなる紙基材20Aに対して、紙基材用ヒートシール層21側から切断刃30を当てた場合、貫通孔28に紙層22側へ突出するバリ22aが形成されることも考えられる。
【0038】
このように紙基材20Aの貫通孔28に紙層22側へ突出するバリ22aが形成されると、紙基材20Aの紙層22上に接着剤23を介してアルミ層24を積層した場合、紙層22側へ突出するバリ22aによりアルミ層24に傷を付けたり、アルミ層24にピンホールが形成される。
【0039】
しかしながら、本発明によれば、貫通孔28に紙層22側へ突出するバリは生じないので、アルミ層24に傷を付けたり、アルミ層にピンホールが形成されることはない。
【0040】
次に図3(c)に示すように、紙基材20Aの紙層22上に接着層23を介してアルミ層24が設けられ、このようにして第1積層体20Bが得られる。
【0041】
次に第1積層体20Bのアルミ層24上に第1ヒートシール層25が積層されて第2積層体20Cからなるブランク材20が得られる。
【0042】
この場合、ブランク材20には、多数の貫通孔28からなる開封用ハーフカット線28が形成される。
【0043】
次にブランク材20が、図2に示すような形状に打抜かれ、同時にブランク材20に対して必要な折罫a,b,c,dが形成される。
【0044】
その後、ブランク材20を折罫a,b,c,dに沿って折り畳み、組立てることにより紙容器10を得ることができる。
【0045】
すなわち、まずブランク材20を折罫a,b,c,dに沿って折り畳み、正面外フラップ11aと正面内フラップ11bを重ね合せ貼り付ける。
【0046】
次にブランク材20を組立て内容物を収納した後、ブランク材20を折罫e,f,g,hに沿って折畳んで正面外フラップ側第1折込部43Aを形成するとともに、正面内フラップ側第1折込部43Bを形成する。このようにして正面外フラップ側折込部43Aと正面内フラップ側第1折込部43Bとからなる第1折込部43を形成する。同時にブランク材20を折罫i、jに沿って折り畳んで第2折込部を形成する。
【0047】
その後、第1折込部43と第2折込部47を、各々天壁側部パネル41と底壁側部パネル42との間に折込み、天壁側部パネル41の貼付け部41aと底壁側部パネル42の貼付け部42aとを貼付けることにより、一対の側部40、40を形成する。
【0048】
このようにして、6面体形状の紙容器10を成形することができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、紙基材20Aに対して紙層22側から切断刃30を当てて貫通孔28を形成したので、紙基材20Aの貫通孔28に紙層22側へ突出するバリが生じることはない。このため紙層22上に接着層23を介して設けられたアルミ層24に貫通孔28のバリにより傷が付くことはなく、アルミ層24にピンホールが形成されることはない。このためブランク材20からなる紙容器10の密封性およびバリア性を高性度に維持することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 紙容器
11 正面壁
12 天壁
13 背面壁
14 底壁
20 ブランク材
20A 紙基材
20B 第1積層体
20C 第2積層体
21 紙基材用ヒートシール層
21a バリ
22 紙層
23 接着層
24 アルミ層
25 第1ヒートシール層
28 開封用ハーフカット線
30 切断刃
40 側部
43 第1折込部
47 第2折込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開封用ハーフカット線を有する紙容器用ブランク材の製造方法において、
紙基材を準備する工程と、
紙基材の一方側から切断刃を当てて、紙基材に開封用ハーフカット線となる多数の貫通孔を形成する工程と、
切断刃を当てた側の紙基材上に接着層を介してバリア層を積層して第1積層体を作製する工程と、
第1積層体のバリア層上に第1ヒートシール層を積層して第2積層体からなるブランク材を得る工程と、を備えたことを特徴とする紙容器用ブランク材の製造方法。
【請求項2】
紙基材は紙基材用ヒートシール層と紙層からなり、紙層側から切断刃を当てることを特徴とする請求項1記載の紙容器用ブランク材の製造方法。
【請求項3】
バリア層はアルミニウム層からなることを特徴とする請求項1又は2記載の紙容器用ブランク材の製造方法。
【請求項4】
紙基材の貫通孔の断面は、紙層から紙基材用ヒートシール層に向って先細状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の紙容器用ブランク材の製造方法。
【請求項5】
紙基材の一方側から切断刃を当てて、紙基材に多数の貫通孔をミシン目状に形成することを特徴とする請求項1記載の紙容器用ブランク材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−112363(P2013−112363A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259310(P2011−259310)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】