説明

紙容器用原紙

【課題】
本発明は、折り曲げ加工適性に優れるとともに、折り曲げ部分において、印刷層、ガスバリア層の割れを防止した紙容器用原紙を提供することを目的とする。
【解決手段】
曲げ試験における破壊発生角度が、25°以上35°未満の3層以上の多層抄き合わせ紙容器用原紙を用いることで、折り曲げ加工適性に優れるとともに、印刷層あるいは及びガスバリア層の割れを防止することを見出した。特に、表層、裏層および内層の坪量比が、表層:内層:裏層=0.8〜1.2:1.6〜2.4:0.8〜1.2とすることで優れた効果が発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
箱型の包装体の一つである、牛乳、ジュース、清酒、焼酎、ミネラルウォーターなどの食品用の包装容器は、多種の材料を積層させることにより、耐水性、ガスバリア性、ヒートシール性、印刷適性等の各種機能性を付与した積層体を、ブリック状(平行6面体)の他、6角柱状、8角柱状、四面体形状、ゲーブルトップ状(屋根型)などの形に成形して使用している。
【0003】
一般に、食品用の包装容器には、単層もしくは多層抄き合わせた紙基材に、印刷適性(美粧性)付与を目的に印刷層、耐水性の付与などを目的に低密度ポリエチレン(LDPE)などのラミネート層、ガスバリア性・遮光性の付与などを目的にアルミニウム箔などを積層させた積層体が用いられている。
【0004】
包装容器は、この積層体を折り曲げ加工し、目的の形状に成形されるが、糊張りやヒートシール等により積層体を重ね合わせた部分を折り曲げ加工した部分に応力が集中するため、印刷層が割れ、美粧性が低下する問題があった。
また、この応力はアルミ箔等のガスバリア層の破壊させる場合もあり、内容物が漏洩してしまう問題があった。
【0005】
これらの問題に対して、包装容器を構成する基材の配合するパルプのろ水度と紙力剤配合量を適正化することで内部破壊強度を向上させた包装容器が開示されている(特許文献1)。
【0006】
箱型包装紙においては、従来より、折り成型時に発生する表面印刷層の割れが美粧性の観点から課題となっている。表面印刷層の割れは、特に糊張りやヒートシール等により原紙を重ね合わせた部分を折り曲げた時に、原紙表面にかかる引張応力が大きくなり、発生しやすい。
【0007】
箱型包装紙の一つである液体食品包装容器は、耐水性、ガスバリア性、ヒートシール性、印刷適正等の付与のため、多種の材料による積層構成をとるが、その他の箱型包装紙と同様に表面印刷層の割れが課題となっている。
【0008】
一方、柔軟性に富んだ包装積層材料は多年にわたって液体食品を包装するために用いられてきた。牛乳、ジュース、清酒、焼酎、ミネラルウォーター及びその他飲料のための包装容器は、例えば、繊維質基材(例えば、紙など)/プラスチック積層体に折目線が付けられたウェブ状包装材料を長手方向の縦線シールによりチューブ状に成形し、チューブ状に成形された包装材料内に被充填物を充填し、チューブ状包装材料の横断方向に横線シールを施し、先ず、クッション形若しくは枕状の一次形状に成形し、包装材料が帯状の場合は一定間隔に個々に切断し、折目線に沿って折り畳んで最終形状に成形される。その最終形状には、ブリック状(平行6面体)の他、6角柱状、8角柱状、四面体形状などがある。なお、繊維質基材の材料は厚手の紙であることが多い。
【0009】
ゲーブルトップ状(屋根型)の紙製包装容器では、紙製包装材料を所定の形状に裁断し、容器縦方向にシールしたブランクスを得、充填機内でブランクスの底をシールした後に上部開口から牛乳、ジュース又はその他の飲料の被充填物を充填し、上部をシールして得られる。これらの包装材料には、その表面に包装容器製品の外観デザインが印刷される。
【0010】
一般に、紙製容器製品に用いられる多層材料は、単層もしくは多層抄き合わせ紙容器用原紙に、美粧性などの観点から必要に応じて塗工層を設けた後、低密度ポリエチレン(LDPE)や、ガスバリア性・遮光性付与などを目的にアルミニウム箔などの材料群を積層させ包装用積層体として製造される。
【0011】
この包装用積層体は、紙基材層の原紙ロールを印刷・折り曲げ線入れ・ストロー穴形成機に運び、原紙に印刷、折り曲げ線入れ、ストロー穴形成を施し、該原紙を再度ロール状に巻き、次いで押出ラミネーターに送り、押出機から溶融ポリオレフィン(例えば、LDPEなど)を原紙面に押し出し、原紙の他にガスバリア層(アルミニウム箔など)がある場合、ガスバリア層との間にも押出ラミネート・コーティングを施して製造する。
【0012】
食品を包装充填するプロセスにおいて、包装用積層体は、適正な形状に加工されるが、まず、1つまたはそれ以上の折り曲げ線に沿って折り曲げられる。次いで、包装用積層体両端の重なり合い部分が形成され、適当な接着剤を添加するかまたは熱可塑性層を互いに熱シールすることによりシール部を形成させることが可能となっている。積層体に折り目をつけるという事は積層体に応力を誘起させる。この応力は紙基材、あるいは紙基材塗工層、または紙基材と印刷層の間のラミネート樹脂層の割れを誘起させ、ひいては印刷層の割れを誘起させる。このことは、印刷の美粧性が損なわれる点から問題視される。また、この応力はアルミ箔等のガスバリア層の破壊を誘起せしめ、漏洩を生じさせるか、または少なくとも積層体をかなり弱化させ、その後の取扱い中にカートンの漏洩をもたらす可能性がある。
【0013】
これらの問題に対し、配合するパルプのろ水度と紙力剤配合量を適正化させ内部破壊強度を向上させた技術(特許文献1)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−242999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
包装用積層体が折り込まれ折り畳まれる食品包装充填プロセスにおいて、必要な要素は、良好な成形性及び、印刷層が割れないこと及びアルミ箔等のガスバリア層の耐久性である。
【0016】
しかしながら、ろ水度と紙力剤配合量では、内部破壊強度は向上するものの、紙層が固くなるため、大きな折り曲げ部分では、印刷層あるいはガスバリア層の割れを防止することができず、更なる改善が必要であった。
【0017】
そこで、本発明は、折り曲げ加工適性に優れるとともに、折り曲げ部分において、印刷層、ガスバリア層の割れを防止した紙容器用原紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、鋭意検討した結果、3層以上の多層抄き合わせ紙からなる紙容器用原紙であって、曲げ試験における破壊発生角度が、25°以上35°未満の紙容器用原紙を用いることで、折り曲げ加工適性に優れるとともに、折り曲げ部分において、印刷層あるいは及びガスバリア層の割れを防止することを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、折り曲げ加工適性に優れるとともに、折り曲げ部分において、印刷層、ガスバリア層の割れを防止することができる紙容器用原紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る紙容器用原紙を実施するための形態を説明する。
本発明は、3層以上の多層抄き合わせ紙による紙容器用原紙であり、曲げ試験における破壊発生角度が、25°以上35°未満であることを特徴とする紙容器用原紙に関するものである。
【0021】
本発明の紙容器用原紙(以下、単に[原紙]ということがある。)を用いた紙容器用積層体(以下、単に「積層体」ということがある。)の構成としては、特に限定されるものではなが、原紙の一方の面に印刷層/ポリエチレンラミネート層、もう一方の面にポリエチレンラミネート層/アルミ箔層/ポリエチレンラミネート層を積層したものを例示することができる。
【0022】
本発明において、原紙の破壊発生角度を25°以上調整することにより、折り曲げ加工において、原紙が曲げ応力に容易に降伏しないため、成型角が緩やかとなり、原紙上に設けた印刷層の割れを抑制することが出来る。また、原紙の破壊発生角を35°未満であることにより、成型角が緩やかに成りすぎず良好な成形性を維持できる。また、原紙の破壊発生角度を35°未満にすることにより、包装用積層体が折り込まれ折り畳まれる際に、折り部の内部で座屈が生じ、折り部の最表層に圧縮、引張などの応力が集中することを緩和し、印刷層・ガスバリア層の破壊を抑制することが出来る。
【0023】
本発明において、破壊発生角度は、L&W bending testerを用い、紙容器用原紙についてMD方向(マシン長手方向)の90°折り試験時の曲げモーメントの降伏角を測定した値である。
【0024】
本発明の紙容器用原紙は、3層以上の多層抄き合わせ紙であることが必要である。紙容器用原紙に多層抄き合わせ紙を使用することで、各層の層内強度及び剛度をパルプ配合、サイズ剤あるいは乾燥紙力剤などの添加により、別々に設定することが可能となり、座屈発生角度の調整が容易になる。また、単層抄きより抄造速度を早く出来るなど生産性が良好となる。
【0025】
本発明における紙容器用原紙(多層抄き合わせ紙)の製造方法としては、各種抄造装置などにより、抄造された低坪量のシートを湿潤状態で3層以上重ねてプレスし、乾燥することを例示することができる。各種抄造装置としては、長網抄造、ツインワイヤー抄造、円網抄造など、各種抄造装置が適宜使用可能であるが、生産性が良好であるため、長網抄造及びツインワイヤー抄造が好ましい。また、各単層の調製方法は特に限定されるものではない。
【0026】
本発明において、紙容器用原紙を構成する各層の坪量比は特に限定されないが、折り曲げ成型時にガスバリア層及び印刷層に割れ若しくはヒビをが生じさせない耐久性(折り曲げ成形耐久性)観点から、表層および裏層(以下、それぞれを単に「外層」ということがある。)と、それら以外の層(以下、「内層」ということがある。)の坪量比が、表層:内層:裏層=0.8〜1.2:1.6〜2.4:0.8〜1.2とするのが好ましい。なお、本発明において、表層及び裏層(外層)は原紙の最表裏の各1層部分を指す。
【0027】
本発明の紙容器用原紙の各層に用いられる原料パルプとしては、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半漂白クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半漂白クラフトパルプ(LSBKP);広葉樹亜硫酸クラフトパルプ、針葉樹亜硫酸クラフトパルプ等の亜硫酸パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;切茶古紙、無地茶古紙、雑袋古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、ダンボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的または機械的に製造された非木材パルプ等の公知の種々のパルプを用いることが出来る。
【0028】
なお、本発明の紙容器用原紙を食品包装用に用いる場合は、衛生上の観点から針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)や、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等の漂白パルプを用いることが望ましい。
【0029】
本発明において、折り曲げ成形耐久性の観点から、紙容器用原紙の外層のパルプ配合比は、NBKP/LBKP=50/50〜90/10が好ましく、カナダ標準ろ水度は、NBKP400〜600ml程度、LBKP350〜500ml程度が好ましい。また、内層のパルプ配合比は、NBKP/LBKP=0/100〜50/50が好ましく、カナダ標準ろ水度は、NBKP400〜450ml程度、LBKP400〜550ml程度が好ましい。
【0030】
本発明において、曲げ試験における破壊発生角度を調整する方法は、特に限定されるものではなく、パルプ種類、パルプの叩解強度、紙力剤(乾燥紙力剤および/または湿潤紙力剤)の種類および/または配合量を適宜選択する等種々の方法を適用することが可能である。
【0031】
乾燥紙力剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉などや、湿潤紙力剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどを選択する事ができ、その配合量は、折り曲げ成形耐久性の観点から、外層では、パルプ絶乾重量に対し、0.1〜0.3重量%程度が望ましく、内層では、パルプ絶乾重量に対し、0〜0.2重量%程度が望ましい。内層のパルプ配合がLBKP100で、ろ水度が450ml程度以上の場合、折り曲げ成形時の、印刷層・ガスバリア層の破壊を抑制するために、内層に紙力剤を配合することがより好ましい。
【0032】
その他の内添薬品としてはフッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスエマルジョン等の撥水剤、ロジン系サイズ剤、スチレン・マレイン酸、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸など、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、澱粉、濾水歩留り向上剤、耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料等を使用することができる。
【0033】
また、原紙とポリエチレンなどの熱可塑性樹脂のラミネート層との接着力を向上させるため、紙容器用原紙の表面面を、ポリビニルアルコール、澱粉、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−ビニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などを塗布または含浸することもできる。
原紙表面に塗布または含浸する手段としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパーコーター等の公知の装置が挙げられるが、本発明では特に限定されない。
【0034】
本発明において、美粧性を付与する印刷層とは、印刷適性を付与した層であり、顔料及びバインダーを主成分とした塗工層、水溶性高分子を主成分とした塗工層、インキ定着性を有する樹脂ラミネート層など例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
塗工層に用いる顔料としては、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料を、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0036】
塗工層に用いるバインダー、水溶性高分子としては、従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用される。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、印刷適性向上剤など、各種助剤が使用される。
【0037】
塗工装置には、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を、オンマシン又はオフマシンで使用できる。さらに、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の各種カレンダー装置を単独使用又は併用し、表面仕上げをしてもよい。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の紙容器用原紙の具体的な構成を実施例によって説明すると共に、本紙容器用原紙の特性を比較例と対比して説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、「重量部」を表す。また、各実施例及び比較例において得られた紙容器用原紙の評価のうち、破壊発生角度については、紙容器用原紙をそのまま使用し、印刷層割れ、ガスバリア層割れ、成形性については、印刷・罫線入れ・アルミ箔貼合・表裏PEラミネートを施した包装用積層体について、充填機による成型加工を行ったものをサンプルとして用い評価した。下記に詳細を記す。
【0039】
<破壊発生角度>
L&W bending testerを用い、紙容器用原紙についてMD方向(マシン長手方向)の90°折り試験時の曲げモーメントの降伏角を測定した。
【0040】
<印刷層割れ>
包装用積層体について、充填機による成型加工を行い、ヒートシール部(二枚重ね部)を90度折り曲げた箇所の表面印刷層の割れを観察した。
○:印刷層の割れ無し、または亀裂があるが2mm以下である
×:印刷層に2mm以上の亀裂がある
【0041】
<ガスバリア層割れ>
1)通電検査:接液面PE層の破壊の有無(予備テスト)
包装用積層体について、充填機による成型加工を行った後、サンプルを半分に切断し、容器上部・下部に水を注ぎ、水浴に置く。容器内と容器外の水の中に電極を挿し、通電するか否かをテストする。接液面樹脂ラミネート層に破壊がない場合は通電しないが、接液面樹脂ラミネート層が非常に薄くなっている、あるいは、破壊されている場合には、該破壊部と容器端面のアルミ露出部分を通じて通電する。通電が確認されたサンプルについては、接液面ラミネート層が破壊されているのか、それとも単に薄くなっているだけなのかを確認するため、下記レッド浸透チェックを行う。

2)界面活性剤入り赤色浸透液によるテスト
半分に切断した容器にに界面活性剤入り赤色浸透液を注ぐ。破壊が接液面側から原紙層まで達している場合には、一定時間後、浸透液が印刷面側まで浸透する。
○:通電検査で通電が確認されない、または通電が確認されるが浸透液によるテストで浸透液が印刷面側まで浸透しない。
×:通電検査で通電が確認され、浸透液によるテストで浸透液が印刷面側まで浸透する。
【0042】
<成形性>
包装用積層体について、充填機による成型加工を行った後、箱型に成型されたサンプルを平らなテーブルに置き指先でつついたときに成型物がぐらつくか否かを評価した。
○:ぐらつきがない
×:ぐらつきがある
【0043】
<端面割れ>
本発明のような曲げ角度を調整した包装用積層体を充填機により加工した際、原紙が折り畳まれる、端面部分において紙基材層の層間剥離(端面割れ)が発生し、美粧性を低下させる場合がある。この端面割れ評価を目的に、成型物の端部について目視評価を行った。
○:紙基材層端面に割れがみられない。
×:紙基材層端面に割れがみられる。
【0044】
[実施例1]
(外層用紙料スラリー)
カナダ標準濾水度(CSF)560mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)と、CSF440mlの広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を90/10の重量比で配合して、原料パルプとした。原料パルプスラリーに乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミドを全原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し0.3重量部、内添サイズ剤としてロジンを0.3重量部添加し、外層用紙料スラリーとした。

(内層用紙料スラリー)
CSF410mlのLBKPを原料パルプとした。原料パルプスラリーに、内添サイズ剤としてロジンを全原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し0.3重量部添加し内層用紙料スラリーとした。

(塗工層用組成物)
以下の構成材料を使用し、均一に混合して紙塗工組成物を調製した。配合部数は、水を除いて、全て固形分に換算したそれぞれ重量部を示す。
重質炭酸カルシウム80部及びカオリン20部を含有する顔料100部に対して、接着剤として酸化澱粉5部とスチレン・ブタジエン共重合ラテックスを8部配合し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、更に水を加えて固形分濃度60%とした。

上記の紙料スラリー、塗工層用組成物から3層構成の多層抄塗工シートを得るために、まずフォードリニア式長網抄紙機で表層、裏層、内層の各単層のシートを作成した。表層及び裏層は外層用紙料スラリーを用いて坪量は50.0g/m2、内層は内層用紙料スラリーを用いて坪量は100g/m2で調整し、表層1、内層1、裏層2の坪量比は1:2:1とした。湿紙は内層の両面に層間接着剤として酸化澱粉を片面あたり1.0g/m2ずつスプレーにて塗布し、上から表層、内層、裏層の順に重ねてプレスにて貼り合わせた。ついで得られた紙匹をカレンダーサイズプレスにより、酸化澱粉の濃度4.0%の表面サイズ剤水溶液を、両面で1.0g/m2となるように塗工し、さらに表層の表面に塗工量が片面20g/m2となるように上記塗工層用組成物をバーコーターにて塗工、130℃で30秒間乾燥させ、坪量220g/m2の紙容器用原紙を得た。

(包装用積層体)
包装用積層体は、紙容器用原紙の表側に押し出しラミネーターを使用してLDPEを押し出して熱可塑性樹脂層(30μm)を積層させ、ガスバリア層となるアルミ箔層(7μm)を設けた後、さらにLDPEによる熱可塑性樹脂層(30μm)を積層させた。その後、裏側に、押し出しラミネーターを使用してLDPEを押し出して熱可塑性樹脂層(15μm)を積層させた後、印刷を行い、さらに印刷面にLDPEによる熱可塑性樹脂層(15μm)を積層させ作成した。
【0045】
[実施例2]
外層用紙料スラリーに用いるNBKPをCSFが400mlのものとし、LBKPをCSFが350mlのものとした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0046】
[実施例3]
外層用紙料スラリー中のNBKPとLBKPの重量比を50/50にした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0047】
[実施例4]
内層用紙料スラリー中に、さらに乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミドを全内層原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し、0.1重量部添加した以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0048】
[実施例4]
内層用紙料スラリーに用いるLBKPをCSFが530mlのものとし、内層用紙料スラリー中に、さらに乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミドを全内層原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し、0.2重量部添加した以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0049】
[実施例6]
内層用紙料スラリーに用いる原料パルプを、CSFが440mlのNBKPとCSFが410mlのLBKPとし、該NBKPと該LBKPの配合比を50/50とした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0050】
[比較例1]
内層用紙料スラリーに用いるLBKPをCSFが530mlのものとした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0051】
[比較例2]
外層用紙料スラリーに添加する乾燥紙力増強剤の量を全外層原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し0.1重量部とした以外は、比較例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0052】
[比較例3]
外層用紙料スラリーに用いるNBKPとLBKPの配合比を50/50とした以外は、比較例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0053】
[比較例4]
内層用紙料スラリーに用いるLBKPをCSFが350mlのものとした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0054】
[比較例5]
内層用紙料スラリーに用いる原料パルプを、CSFが350mlのNBKPとCSFが350mlのLBKPとし、該NBKPと該LBKPの配合比を50/50とした以外は、実施例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0055】
[比較例6]
内層用紙料スラリー中に、さらに乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミドを全内層原料パルプ100重量部(絶乾パルプ重量)に対し、0.5重量部添加した以外は、比較例1と同様の手順にて紙容器用原紙を得た。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表1に示される実施例1〜6、表2の比較例1〜6から、表層、裏層および内層の坪量比や原料配合の工夫により、曲げ試験における破壊発生角度を本発明の範囲内とすることで、折り曲げ加工適性、及び印刷層、ガスバリア層の割れ防止に優れた紙容器用原紙が得られることが明らかにされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の多層抄き合わせ紙からなる紙容器用原紙であって、曲げ試験における破壊発生角度が、25°以上35°未満であることを特徴とする紙容器用原紙。
【請求項2】
前記紙容器用原紙において、表層、裏層および内層の坪量比が、表層:内層:裏層=0.8〜1.2:1.6〜2.4:0.8〜1.2とすることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用原紙。
【請求項3】
前記紙容器用原紙において、内層が、カナダ標準ろ水度400〜450mlのNBKPとカナダ標準ろ水度400〜550mlのLBKPからなり、NBKP:LBKP=0/100〜50/50であることを特徴とする請求項1〜2に記載の紙容器用原紙。

【公開番号】特開2012−158854(P2012−158854A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20599(P2011−20599)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】