説明

紙容器

【課題】耐ピンホール性、シール性等の特性を維持しつつ、強い浸透性や拡散性を有する内容物の長期保管に耐え得る紙容器を提供すること。
【解決手段】最外層、紙基材層、接着樹脂層、バリア層、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンからなる樹脂フィルム層、アンカーコート層及び最内層を順次積層した積層体を製函してなる紙容器であって、該アンカーコート層が、特定の酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を該フィルム層へ塗布して乾燥することにより形成したものであることを特徴とする紙容器である。この紙容器は、液体入浴剤、ワイン、香辛料等のような強い浸透性や拡散性を有する内容物の包装に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体入浴剤、ワイン、香辛料等のように強い浸透性や拡散性を有する内容物の包装に好適な紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙基材の表面にポリエチレンが積層された積層体は、様々な製品の包装材料として広く使用されている。中でも、酒類、シャンプー、リンス、液体洗剤等のように流通期間が比較的長く、バリア性が要求される製品は、主に最外層/紙基材層/接着性樹脂層/バリア層/樹脂フィルム層/最内層からなる積層体、例えば、ポリエチレン/紙/接着樹脂/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンあるいはポリエチレン/紙/接着樹脂/アルミニウム蒸着膜/ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンといった構成の積層体を製函してなる紙容器が用いられている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−327888号公報
【特許文献2】特開2003−335362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、従来の紙容器に用いられる積層体は、最外層、紙基材層、接着樹脂層、バリア層、樹脂フィルム層及び最内層がこの順に積層されたものが一般的である。樹脂フィルム層は主にポリエチレンテレフタレートフィルムから構成されるが、この樹脂フィルム層はバリア層の補強を目的に積層されており、外部からの物理的ストレスによるバリア層の割れやピンホールを防ぐと共に、耐熱効果もある。樹脂フィルム層がバリア層よりも容器の内側に積層されている理由は、積層体を製函する際に吹き付けられる熱風によってバリア層がダメージを受けて、シール時に割れたりピンホールが発生したりするのを低減するためである。
しかしながら、上記のように構成された紙容器に液体入浴剤、ワイン、香辛料等のように強い浸透性や拡散性を有する内容物を充填し、長期保管したところ、ポリエチレンテレフタレートフィルムと最内層であるポリエチレンとの間に内容物が浸透して層間剥離が起き、紙容器として機能しなくなることが確認された。
従って、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、液体入浴剤、ワイン、香辛料等のように強い浸透性や拡散性を有する内容物の長期保管に耐え得る紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来の紙容器において層間剥離が発生する原因は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、無極性(官能基を有さない)であるために、ドライラミネーションや押出コーティングにより積層体を作製した場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムと他の層を構成する材料との間の接着性が不十分となるためではないかと考えた。
本発明者らは上記考察に基づいて、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンからなる樹脂フィルム層に対し優れた接着性を有するアンカーコート剤について種々検討したところ、特定の酸変性ポリオレフィンの水性分散体に対して、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも1種を特定の割合で添加した水性分散体からなるアンカーコート剤を用いることにより、樹脂フィルム層と最内層との間が強固に接着され、液体入浴剤のような高浸透性、高拡散性及び高膨潤性を有する内容物の浸透による層間剥離を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記の目的を達成するための第一の発明は、最外層、紙基材層、接着樹脂層、バリア層、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンからなる樹脂フィルム層、アンカーコート層及び最内層を順次積層した積層体を製函してなる紙容器であって、該アンカーコート層が、0.01質量%〜20質量%の不飽和カルボン酸又はその無水物を構成成分として含有し、数平均粒子径が0.5μm以下であり且つJIS K7210に従って測定したメルトフローレートが0.01g/10分〜100g/10分である酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に対し、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を1質量%〜10質量%添加した水性分散体を該樹脂フィルム層へ塗布して乾燥することにより形成したものであることを特徴とする紙容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の紙容器にて長期保管が可能であった内容物は勿論、従来の紙容器では長期保管が不可能であった、液体入浴剤や香辛料等のように強い浸透性や拡散性を持った内容物の長期保管に耐える紙容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る紙容器を形成するための積層体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る紙容器を形成するための積層体の模式断面図である。図1に示すように、本実施の形態における積層体は、最外層1、紙基材層2、接着樹脂層3、バリア層4、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンからなる樹脂フィルム層5、アンカーコート層6及び最内層7がこの順に積層されてなるものである。本実施の形態に係る積層体は、アンカーコート層6を形成するアンカーコート剤として、0.01質量%〜20質量%の不飽和カルボン酸又はその無水物を構成成分として含有し、数平均粒子径が0.5μm以下であり且つJIS K7210に従って測定したメルトフローレートが0.01g/10分〜100g/10分である酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に対し、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を1質量%〜10質量%添加した水性分散体を用いることに特徴がある。このようなアンカーコート剤を使用することで、耐ピンホール性やシール性などの物性を損なうことなく樹脂フィルム層5と最内層7との接着を強固にでき、内容物の浸透による層間剥離を防ぐことができる。
【0009】
本発明における最外層1及び最内層7は、熱によって溶融し互いに融着し得る樹脂材料から構成される。このような材料の具体例としては、ポリプロピレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー系低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用した直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの材料の中でも、シール性及び滑り性に優れるという点で、高圧法低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。最外層1の厚さは、5μm〜50μmであることが好ましい。また、最内層7の厚さは、30μm〜100μmであることが好ましい。なお、最外層1及び最内層7には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、染料、顔料等を適宜添加してもよい。
また、最内層7を積層させる際の樹脂の押し出し温度は、300℃〜330℃であることが好ましい。押し出し温度が300℃未満であると、接着強度が弱くなり、高浸透の内容物を充填した場合に層間剥離が発生し易くなる。また、330℃を超えると、ポリエチレン臭の発生及びポリエチレンの分解によるシール性低下が認められるため好ましくない。
【0010】
本発明における紙基材層2を構成する紙基材としては、コートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、クラフト紙、上質紙等の公知の紙を用いることができる。紙基材の坪量は、紙容器の形態に応じて適宜決定すればよいが、通常、100g/m2〜500g/m2である。
また、紙基材層2上に最外層1又は接着樹脂層3を積層させる前に、紙基材層2となる紙基材の表面にコロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理、イミン系アンカーコート剤処理等を施してもよい。これらの処理を施すことで層間の接着強度を向上させることができる。コロナ放電処理は、公知のコロナ放電処理器を用い、発生させたコロナ雰囲気中に紙基材を通過させることにより行うことができる。このときのコロナ放電出力は、好ましくは1.0kW〜10.0kWである。フレーム処理は、公知のフレーム処理器を用い、紙基材表面を火で炙ることにより行うことができる。このときのフレーム出力は、好ましくは50%〜100%である。オゾン処理は、公知のオゾン処理器を用い、発生させたオゾン雰囲気中に紙基材を通過させることにより行うことができる。このときのオゾン濃度は、好ましくは10g/Nm3〜30g/Nm3である。イミン系アンカーコート剤処理は、紙基材表面にグラビア印刷等で公知のイミン系アンカーコート剤を塗布することにより行うことができる。
【0011】
本発明における接着樹脂層3は、主に、エチレンとメタクリル酸等の酸変性樹脂材料から構成される。このような材料の具体例としては、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの材料の中でも、バリア層4(金属類や無機酸化物類)と強い接着性が得られると同時に、設備面から見て加工適性が優れるという点と、これらの材料の中では価格が比較的安価であるという点で、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体が好ましく、酸含量が1%〜15%程度のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体が最も好ましい。接着樹脂層3の厚さは、5μm〜80μmであることが好ましい。
【0012】
本発明におけるバリア層4は、太陽光等を遮光する性質や水蒸気、水、ガス等を透過させない性質を有する材料から構成される。このような材料の具体例としては、アルミニウム箔が挙げられるが、アルミニウム箔の代わりに、真空蒸着又はスパッタリングによって樹脂フィルム層5上に形成されたアルミニウム等の金属あるいはシリカ、アルミナ等の無機酸化物の蒸着膜であってもよい。また、上記した材料の中でも、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料を用いることで、製函する際に積層体に吹き付けられる熱風の熱が拡散しやすくなり、シール性をより向上させることができる。
バリア層4としてアルミニウム箔を用いる場合、ウレタン系接着剤、ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等のラミネート用接着剤を用いて樹脂フィルム層5上に積層させることが好ましい。アルミニウム箔の厚さは、3μm〜20μmであることが好ましい。接着剤の塗布量は、接着剤の厚さが乾燥皮膜として0.1g/m2〜5g/m2となるように適宜設定すればよい。また、アルミにはミラー面とマット面が存在するが、ミラー面とマット面では表面の物性差(表面粗さからくるアンカー効果の違い)からマット面の方があらゆる接着剤や接着性樹脂層に対してより強い接着性を有する。よって樹脂フィルム層5との接着性を高めたい場合はマット面を樹脂フィルム層5側に向け、接着性樹脂層3との接着性を高めたい場合は接着性樹脂層3側にマット面を向けることが望ましい。なお、本発明において、アルミニウム箔の「ミラー面」とは、アルミニウム箔を重ね圧延により製造する際に箔が圧延ロールと接触することによって生じる光沢のある面を意味し、また、「マット面」とは、箔と箔とが接触することによって生じるつやのない面を意味する。
バリア層4として金属蒸着膜又は無機酸化物蒸着膜を用いる場合、金属蒸着膜又は無機酸化物蒸着膜の厚さは、100Å〜1000Åであることが好ましい。
【0013】
本発明における樹脂フィルム層5は、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンのフィルム等から構成される。樹脂フィルム層5の厚さは、5μm〜30μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルム層5として、一部のメーカーより市販されている片面に易接着処理が施された樹脂フィルム、例えば、ユニチカのPTMB等を用いる場合、易接着処理面で内容物のアタックによる積層強度低下が起き易いので、易接着処理面をバリア層4側に向け、未処理面若しくはコロナ処理面をアンカーコート層6側に向けて積層することが好ましい。また、このような樹脂フィルムの未処理面に、インラインにてコロナ処理を適宜施してもよい。
【0014】
本発明におけるアンカーコート層6は、0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%の不飽和カルボン酸又はその無水物を構成成分として含有し、数平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01μm〜0.2μmであり且つJIS K7210に従って測定したメルトフローレートが0.01g/10分〜100g/10分、好ましくは0.1g/10分〜50g/10分である酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に対し、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を1質量%〜10質量%添加した水性分散体を、樹脂フィルム層5へ塗布して乾燥することにより形成される。酸変性ポリオレフィン樹脂の不飽和カルボン酸又はその無水物の含有量が0.01質量%未満であると、耐内容物適性が低下し、一方、20質量%を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂粒子が凝集し易くなる。酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が0.5μmを超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂粒子が分散し難くなる。また、酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.01g/10分未満であると、酸変性ポリオレフィン樹脂粒子が凝集し易くなり、一方、100g/10分を超えると、耐内容物適性が低下する。このような酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体は、市販されており、例えば、ユニチカ株式会社製のアローベース(登録商標)シリーズ(SE−1200J2)が挙げられる。酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体の塗布量は、乾燥後の厚さが好ましくは0.01g/m2〜5.0g/m2、更に好ましくは0.1g/m2〜3g/m2となるように適宜設定すればよい。酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体の塗布方法は、特に限定されるものではないが、グラビア印刷、ロールコーター方式等が挙げられる。
【0015】
本実施の形態における積層体は、上記した材料を用いて、包装材料分野で公知の方法、例えば、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法等により製造することができる。また、ラミネーションを行う際に、必要に応じて、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理、イミン系アンカーコート剤処理等を各層に施してもよい。
得られた積層体を製函して、ゲーブルトップ型、ブリック型等種々の形状の紙容器を製造することができる。具体的には、まず、積層体を所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートを得る。次に、フレームシール又はホットエアーシールにより最内層7又は最外層1を構成する樹脂材料を溶融し、胴部を貼り合わせて、筒状のスリーブを得る。続いて、この筒状スリーブを充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、液体入浴剤を充填し、トップ部をシールするという公知の方法により製造することができる。
【0016】
このようにして製造される紙容器は、液体入浴剤、ワイン、芳香剤、香辛料、非食品、溶剤が添加された内容物等のように強い浸透性や拡散性を有する内容物全般の包装に用いることができる。特に、植物エキス、生薬、ハーブ等の天然由来の精油成分が配合された液体状のものの包装に好適である。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
二液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ6μmのアルミニウム箔(バリア層)のマット面側を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(樹脂フィルム層)にドライラミネーション法により積層し、ラミネートフィルムを作製した。この時の接着剤の塗布量は、接着剤の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。一方、坪量400g/m2の板紙(紙基材層)の一方の表面に厚さ20μmの高圧法低密度ポリエチレン(最外層)を押出ラミネーション法により積層し、板紙の他方の表面にイミン系アンカーコート剤を乾燥重量で0.5g/m2となるように塗布した。続いて、先に作製したラミネートフィルムのアルミ面を板紙のイミン系アンカーコート剤を塗布した面と対向させ、その間に厚さ20μmのエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル株式会社製N0908C、酸含量9%)(接着樹脂層)を押出してサンドラミネートし、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルムという層構成のサンドラミネートフィルムを作製した。
次に、サンドラミネートフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面に、不飽和カルボン酸又はその無水物の含有量:15質量%、数平均粒子径0.5μm以下、JIS K7210に従って測定したメルトフローレート:30g/10分の酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に対し、ポリエステル樹脂を8質量%添加したもの(ユニチカ株式会社製アローベース(登録商標)SE−1200J2)を乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し、加熱乾燥してアンカーコート層を形成し、このアンカーコート層の表面に最内層として厚さ60μmの低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製LC520)を、オゾン処理を施しながら押出ラミネーション法により積層し、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート層/低密度ポリエチレンという層構成の積層体を得た。得られた積層体にオフセット印刷法により所望の絵柄・表示等の印刷を行った後、所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートとし、次いで、フレームシールにより胴部を貼り合わせて筒状スリーブとし、この筒状スリーブを充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、内容物を充填し、トップ部をシールすることにより実施例1のゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【0018】
なお、内容物としては以下の3種類を用いた。
・液体入浴剤(クチナシエキス、ユズエキス、ショウブ根エキス、チャ葉エキス、ローズマリーエキス、レモングラス油、ゼラニウム油、パルマローザ油、レモン油、エタノール、グリセリン、メントール、ソルビトール、ラウリン酸ポリグリセリル−10、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、水等を含む)
・赤ワイン(添加剤として亜硫酸塩を含む)
・クローブ
【0019】
[比較例1]
二液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ6μmのアルミニウム箔(バリア層)のマット面側を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(樹脂フィルム層)にドライラミネーション法により積層し、ラミネートフィルムを作製した。この時の接着剤の塗布量は、接着剤の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。一方、坪量400g/m2の板紙(紙基材層)の一方の表面に厚さ20μmの高圧法低密度ポリエチレン(最外層)を押出ラミネーション法により積層し、板紙の他方の表面にイミン系アンカーコート剤を乾燥重量で0.5g/m2となるように塗布した。続いて、先に作製したラミネートフィルムのアルミ面を板紙のイミン系アンカーコート剤を塗布した面と対向させ、その間に厚さ20μmのエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル株式会社製N0908C、酸含量9%)(接着樹脂層)を押出してサンドラミネートし、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルムという層構成のサンドラミネートフィルムを作製した。
次に、サンドラミネートフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面に、不飽和カルボン酸又はその無水物の含有量:23質量%、数平均粒子径0.5μm以下、JIS K7210に従って測定したメルトフローレート:300g/10分の酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体を乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し、加熱乾燥してアンカーコート層を形成し、このアンカーコート層の表面に最内層として厚さ60μmの低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製LC520)をオゾン処理を施しながら押出ラミネーション法により積層し、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート層/低密度ポリエチレンという層構成の積層体を得た。得られた積層体にオフセット印刷法により所望の絵柄・表示等の印刷を行った後、所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートとし、次いで、フレームシールにより胴部を貼り合わせて筒状スリーブとし、この筒状スリーブを充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、実施例1と同様の内容物を充填し、トップ部をシールすることにより比較例1のゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【0020】
[比較例2]
二液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、厚さ6μmのアルミニウム箔(バリア層)のマット面側を厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(樹脂フィルム層)にドライラミネーション法により積層し、ラミネートフィルムを作製した。この時の接着剤の塗布量は、接着剤の厚さが乾燥皮膜として3g/m2となる量とした。一方、坪量400g/m2の板紙の一方の表面に厚さ20μmの高圧法低密度ポリエチレン(最外層)を押出ラミネーション法により積層し、板紙の他方の表面にイミン系アンカーコート剤を乾燥重量で0.5g/m2となるように塗布した。続いて、先に作製したラミネートフィルムのアルミニウム箔のミラー面をインラインでコロナ放電処理しつつ、板紙のイミン系アンカーコート剤を塗布した面と対向させ、その間に厚さ20μmのエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル株式会社製N0908C、酸含量9%)を押出してサンドラミネートし、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルムという層構成のサンドラミネートフィルムを作製した。
次に、サンドラミネートフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面に、イソシアネート系アンカーコート剤を乾燥重量で0.2g/m2となるように塗布した。サンドラミネートフィルムのイソシアネート系アンカーコート剤を塗布した面を、厚さ40μmの高圧法低密度ポリエチレンフィルム(最内層)と対向させ、その間に厚さ20μmの高圧法低密度ポリエチレンをオゾン処理を施しながら押出し、高圧法低密度ポリエチレン/板紙/エチレン−メタクリル酸共重合体/(ミラー面)アルミニウム箔(マット面)/ポリエチレンテレフタレートフィルム/アンカーコート層/高圧法低密度ポリエチレン/高圧法低密度ポリエチレンフィルムという層構成の積層体を得た。得られた積層体にオフセット印刷法により所望の絵柄・表示等の印刷を行った後、所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートとし、次いで、フレームシールにより胴部を貼り合わせて筒状スリーブとし、この筒状スリーブを充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、実施例1と同様の内容物を充填し、トップ部をシールすることにより比較例2のゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【0021】
<耐久性評価>
まず、液体入浴剤を充填する前の積層体のラミネート強度を確認した。具体的には、実施例1及び比較例1〜2と同様にして積層体をそれぞれ作製し、これらから幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、切り出した試験片の一端から測定対象とする層間を50mm剥がし、テンシロン引張り試験機の両チャックにそれぞれチャッキングした。25℃雰囲気下、50mm/minの引張り速度で180度方向に剥がし、最大荷重を測定した。
実施例1の積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムと低密度ポリエチレンとの間のラミネート強度を測定しようと試みたが、ラミネート強度が高過ぎて基材破壊が起きた(剥離不可能)。
比較例1の積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムと低密度ポリエチレンとの間のラミネート強度を測定したところ、3.5N/15mm幅であった。
比較例2の積層体において、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間のラミネート強度を測定しようと試みたが、ラミネート強度が高過ぎて基材破壊が起きた(剥離不可能)。
【0022】
次に、実施例1及び比較例1〜2の紙容器を50℃にて2週間〜4.5ヶ月間保管した後、紙容器を分解し、幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、上記と同様の方法でラミネート強度を確認した。結果を表1〜3に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
内容物を2週間〜4.5ヶ月間保管後の実施例1の紙容器から切り出した試験片において、ポリエチレンテレフタレートフィルムと低密度ポリエチレンとの間のラミネート強度を測定しようと試みたが、液体入浴剤、赤ワイン及びクローブのいずれの内容物を充填したものもラミネート強度が高過ぎて基材破壊が起きた(剥離不可能)。
【0027】
液体入浴剤を2週間保管後の比較例1の紙容器から切り出した試験片では、液体入浴剤、赤ワイン及びクローブのいずれの内容物を充填したものもポリエチレンテレフタレートフィルムと低密度ポリエチレンとの間(層間B)で剥離(デラミ)が発生した。
【0028】
液体入浴剤を2週間保管後の比較例2の紙容器から切り出した試験片では、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)のラミネート強度を測定したところ、0.4N/15mm幅であったが、1ヶ月間保管後のものでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)で剥離が起きていた。赤ワインを2週間及び1ヶ月保管後の比較例2の紙容器から切り出した試験片では、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)のラミネート強度を測定したところ、それぞれ0.5N/15mm幅及び0.1N/15mm幅であったが、1.5ヶ月間保管後のものでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)で剥離が起きていた。また、クローブを2週間保管後の比較例2の紙容器から切り出した試験片では、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)のラミネート強度を測定したところ、0.1N/15mm幅であったが、1ヶ月間保管後のものでは、ポリエチレンテレフタレートフィルムと高圧法低密度ポリエチレンとの間(層間C)で剥離が起きていた。
【0029】
以上のことから、実施例1の紙容器は、液体入浴剤、ワイン、香辛料等のように強い浸透性や拡散性を有する内容物を長期保管しても層間剥離及び内容物の漏れは一切認められず、比較例1〜2の紙容器と比べて耐久性に優れていることが明らかである。
【0030】
<シール性評価>
充填機において紙容器のトップ部及びボトム部をシールする際の炙り温度を250℃〜400℃の範囲で変化させて紙容器を作製し、下記基準に従って紙容器のシール性を評価した。結果を表4に示した。
◎:シールが良好で液体入浴剤の漏れはない
○:シールは良好で液体入浴剤の漏れはないが、アルミニウム箔の白化現象あり
△:シールは弱いが、液体入浴剤の漏れはなし
×:液体入浴剤の漏れがあり(ただし、低温領域における漏れはシール不良に起因し、高温領域における漏れはアルミ割れやピンホール発生に起因するものである)
【0031】
【表4】

【0032】
以上のことから、実施例1の紙容器は、比較例1〜2の紙容器と同等の耐ピンホール性を有している。
【符号の説明】
【0033】
1 最外層、2 紙基材層、3 接着樹脂層、4 バリア層、5 樹脂フィルム層、6 アンカーコート層、7 最内層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層、紙基材層、接着樹脂層、バリア層、ポリエチレンテレフタレート又はナイロンからなる樹脂フィルム層、アンカーコート層及び最内層を順次積層した積層体を製函してなる紙容器であって、
該アンカーコート層が、0.01質量%〜20質量%の不飽和カルボン酸又はその無水物を構成成分として含有し、数平均粒子径が0.5μm以下であり且つJIS K7210に従って測定したメルトフローレートが0.01g/10分〜100g/10分である酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体に対し、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を1質量%〜10質量%添加した水性分散体を該樹脂フィルム層へ塗布して乾燥することにより形成したものであることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体が、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及びシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記接着樹脂層が、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体又はエチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−73728(P2011−73728A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226881(P2009−226881)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】