説明

紙容器

【課題】舌片が切り込みから引き抜けることを防止でき、隣り合う側壁板同士を確実且つ強固に結合して組み立てることを可能にした紙容器を提供する。
【解決手段】紙容器Bの組み立て時に舌片11を切り込み12に差し込んで係止することによって隣り合う側壁板3a、3b同士を結合させる第1ロック機構10に加えて、コーナー部折り罫線6上に形成され、一方の側壁板3aの上端から下端側に向けて凹む切り欠き部16と、他方の側壁板3bの上端側に形成され、他方の側壁板3bの側端から横方向T2外側に延設された係合凸部17とからなり、紙容器Bの組み立て時に係合凸部17を切り欠き部16に挿入して係合させることによって、第1ロック機構10によるロックが緩む方向S1に力が作用した際に隣り合う側壁板3a、3b同士の相対変位を規制する第2ロック機構20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一枚のブランク(打ち抜かれた板紙)を折り曲げて組み立てられ、食品などの包装に用いられる紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などの包装用として、プラスチック製や発泡スチロール製のトレー状あるいは箱状の容器が多用されている。一方で、プラスチック製や発泡スチロール製の容器は、回収し再利用することが進められているが、焼却時に有毒ガスが発生するなど、廃棄処理を行う上での大きな課題がある。
【0003】
このため、近年、食品の包装用容器などとして紙容器を採用するケースが増大してきている。また、この種の紙容器は、例えば、多角形状の底板(1)と、底板(1)の各辺に側壁板折り罫線(2)を介して連設された側壁板(3)とを備える一枚のブランク(打ち抜かれた板紙)(4)を製作し、このブランク(4)の側壁板(3)を側壁板折り罫線(2)で折り曲げ、インラインの製函工程でトレー状や箱状に組み立てて形成される(図15、図16参照)。また、隣り合う一方の側壁板(3a)の側端側に、コーナー部折り罫線(6)を介して横方向(T1)外側に延出する重合部(7)を形成しておき、一方の側壁板(3a)の重合部(7)をコーナー部折り罫線(6)で折り曲げて隣り合う他方の側壁板(3b)に重ね合わせ、この重合部(7)を接着剤で接着することにより、隣り合う側壁板(3a、3b)同士を結合するようにしている。
【0004】
一方、例えば図15から図17に示すように、重合部7を接着剤で接着して隣り合う側壁板3a、3b同士を結合するのではなく、ロック機構(第1ロック機構)10によって隣り合う側壁板3a、3b同士を着脱可能に係止させて結合するようにした紙容器Aがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このロック機構10は、一方の側壁板3aの重合部7の側端から横方向T1外側に向かうに従い漸次上方に延設した舌片(フック)11と、紙容器Aのコーナー部となる他方の側壁板3bの側端から横方向T2内側の所定位置に設けられ、他方の側壁板3bの一面から他面に貫通するように形成した切り込み12とから構成されている。
【0005】
そして、このようなロック機構10を備えた紙容器Aは、図17に示すように、一方の側壁板3aの重合部7をコーナー部折り罫線6で折り曲げて隣り合う他方の側壁板3bに重ね合わせる際に、一方の側壁板3aの舌片11を他方の側壁板3bの一面側から切り込み12に差し込んで他方の側壁板3bの他面側に出すと、舌片11の重合部7側を向く係止端11aが切り込み12部分の係止受端12aに引っ掛かり、舌片11が切り込み12部分に係止されて隣り合う側壁板3a、3b同士が結合する。
【0006】
これにより、ロック機構10を備えた紙容器Aは、舌片11を切り込み12に差し込むことで、容易に隣り合う側壁板3a、3b同士を結合して紙容器Aを組み立てることができる。また、接着剤を使用しないため、例えば、冷凍食品とともに電子レンジで加熱される電子レンジ加熱用紙容器などに用いるのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭50−78633号公報
【特許文献2】実用新案登録第10314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のロック機構10を備えた紙容器Aにおいては、図18(a)に示すように、隣り合う側壁板3a、3b同士が舌片11の係止端11aと切り込み12部分の係止受端12aの1箇所の引っ掛かりによって結合し、また、舌片11を切り込み12に差し込む操作性を確保するため、隣り合う側壁板3a、3b同士の結合部分に僅かな遊びを設けるようにしている。このため、図18(b)に示すように、組み立て後、使用中に舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aから離れるように、舌片11が切り込み12から奥に押し込まれると(ロックが緩む方向S1に力が作用すると)、図18(c)に示すように、再度舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aに当接するように戻る際に(側壁板3を開く方向S2に力が作用して)、係止端11aが係止受端12aに引っ掛からず、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまう場合があった。そして、このように舌片11が切り込みから引き抜けることで、隣り合う側壁板3a、3b同士の結合が解除され、紙容器Aが解体されてしまうおそれがあった。
【0009】
また、例えば冷凍食品を収納する紙容器Aの場合など、水分によって舌片11が軟化し、さらに舌片11が切り込み12から引き抜けやすくなる場合もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、舌片が切り込みから引き抜けることを防止でき、隣り合う側壁板同士を確実且つ強固に結合して組み立てることを可能にした紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
本発明の紙容器は、多角形状の底板と、前記底板の外周辺に側壁板折り罫線を介して連設された複数の側壁板とを備える一枚の板紙を用い、前記側壁板折り罫線で前記側壁板を折り曲げるとともに、隣り合う前記側壁板同士を結合して組み立てられる紙容器であって、隣り合う一方の側壁板の側端側に、コーナー部折り罫線を介して横方向外側に延出し、紙容器の組み立て時に前記コーナー部折り罫線で折り曲げて他方の側壁板に重なる重合部が形成されており、前記一方の側壁板の重合部の側端から横方向外側に向かうに従い前記上方あるいは下方に延設した舌片と、前記他方の側壁板の側端側に形成された切り込みとからなり、紙容器の組み立て時に前記舌片を前記切り込みに差し込んで係止することによって隣り合う側壁板同士を結合させる第1ロック機構と、前記コーナー部折り罫線上に形成され、前記一方の側壁板の上端から下端側に向けて凹む切り欠き部と、前記他方の側壁板の上端側に形成され、前記他方の側壁板の側端から横方向外側に延設された係合凸部とからなり、紙容器の組み立て時に前記係合凸部を前記切り欠き部に挿入して係合させることによって、前記第1ロック機構によるロックが緩む方向に力が作用した際に隣り合う側壁板同士の相対変位を規制する第2ロック機構とを備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明においては、従来と同様、第1ロック機構の舌片を切り込みに差し込み、舌片の重合部側を向く係止端を切り込み部分の係止受端に引っ掛け、舌片が切り込み部分に係止されることで、側壁板が開く方向に相対変位することを第1ロック機構によって規制するようにして隣り合う側壁板同士を結合することができ、紙容器をトレー状や箱状に組み立てることができる。
【0014】
また、第1ロック機構で隣り合う側壁板同士を結合するとともに、第2ロック機構の一方の側壁板に形成した切り欠き部に、他方の側壁板に形成した係合凸部を挿入して係合させる。そして、このように第2ロック機構の切り欠き部に係合凸部を係合させることで、第1ロック機構の舌片の係止端と係止受端の引っ掛け状態が解除され、すなわち、舌片が切り込みにさらに押し込まれ、第1ロック機構のロックが緩む方向に側壁板が相対変位することを第2ロック機構によって規制することができる。これにより、組み立て後、使用中に第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止できる。
【0015】
また、本発明の紙容器においては、前記他方の側壁板の側端から横方向外側に延設された突片部からなり、紙容器の組み立て時に前記突片部が前記一方の側壁板の前記コーナー部折り罫線上に当接することによって、前記第1ロック機構によるロックが緩む方向に力が作用した際に隣り合う側壁板同士の相対変位を規制する第3ロック機構を備えていることが望ましい。
【0016】
この発明においては、紙容器の組み立て時に突片部が一方の側壁板のコーナー部折り罫線上に当接することによって、第2ロック機構とともに、第3ロック機構によっても、第1ロック機構の舌片の係止端と係止受端の引っ掛け状態が解除され(舌片が切り込みにさらに押し込まれ)、第1ロック機構のロックが緩む方向に側壁板が相対変位することを規制することができる。これにより、組み立て後、より確実に、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止できる。
【0017】
さらに、本発明の紙容器においては、前記第2ロック機構の前記係合凸部が、先端に引掛け部を備えて鉤状に形成されていることがより望ましい。
【0018】
この発明においては、第2ロック機構の係合凸部を切り欠き部に挿入して係合させるとともに、鉤状の係合凸部の先端に設けられた引掛け部を一方の側壁板に引っ掛けて係止することができる。これにより、第2ロック機構によって第1ロック機構のロックが緩む方向に側壁板が相対変位することを規制することに加え、一方の側壁板を引掛け部で係止することにより、側壁板が開く方向に相対変位することをも第2ロック機構によって規制することが可能になる。よって、組み立て後、さらに確実に、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止することが可能になる。
【0019】
また、本発明の紙容器においては、前記第2ロック機構が、前記切り欠き部に前記係合凸部を挿入して係合させるとともに前記係合凸部の先端側を折り返して前記一方の側壁板の側端を拘束し、隣り合う側壁板同士の相対変位を規制するように構成されていてもよい。
【0020】
この発明においては、第2ロック機構の係合凸部を切り欠き部に挿入して係合させるとともに係合凸部の先端側を折り返すことにより、一方の側壁板の側端を係合凸部で拘束するようにして係止することができる。これにより、第2ロック機構によって第1ロック機構のロックが緩む方向に側壁板が相対変位することを規制することに加え、係合凸部を折り返して一方の側壁板を係止することで、側壁板が開く方向に相対変位することをも第2ロック機構によって規制することが可能になる。これにより、組み立て後、さらに確実に、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止できる。
【0021】
さらに、本発明の紙容器においては、耐水性及び/又は耐熱性を有する前記板紙を用いて形成されていることがより望ましい。
【0022】
この発明においては、食品など、水分が多く、加熱を要する収納物を好適に収納可能な紙容器を提供することができる。
【0023】
また、本発明の紙容器においては、内面に発熱シートが貼着されていてもよい。
【0024】
この発明においては、例えば冷凍ピザなどの食品(冷凍食品)を収納し、電子レンジで冷凍食品とともに加熱して使用される紙容器である場合に、内面に、電子レンジから照射される電磁波を受けることによって発熱する発熱シート(サセプター)を貼着して紙容器を構成することにより、食品の発熱シートに接する面に焦げ目をつけたり、カリッとした仕上がりにすることが可能になる。
【0025】
さらに、本発明の紙容器においては、前記多角状の底板の周方向に連続して並ぶ3つの外周辺のうち、1つの第1の外周辺を間に周方向両側に配された第2の外周辺と第3の外周辺にそれぞれ前記側壁板が連設され、前記第2の外周辺に連設された前記側壁板に、コーナー部折り罫線を介して横方向外側に延出し、紙容器の組み立て時に前記コーナー部折り罫線で折り曲げて前記第1の外周辺に沿って配設される側壁板が連設されており、前記底板が、前記第1の外周辺部分に、該第1の外周辺に沿って配設される側壁板の下端を支持するように外側に延出する額部を備えて形成されていてもよい。
【0026】
この発明においては、多角状の底板の周方向に連続して並ぶ3つの外周辺のうち、1つの第1の外周辺を間に周方向両側に配された第2の外周辺と第3の外周辺にそれぞれ側壁板が連設されている場合に、底板に形成した額部によって、第1の外周辺に沿って配設される側壁板を受けてその下端を支持することにより、この第1の外周辺に沿って配設される側壁板が落ち込むことを防止でき、組み立て後、使用中に、第1の外周辺に沿って配設される側壁板の落ち込みに伴って第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止できる。
【0027】
また、多角状の底板の周方向に連続して並ぶ3つの外周辺のうち、1つの第1の外周辺を間に周方向両側に配された第2の外周辺と第3の外周辺にそれぞれ側壁板が連設されている場合には、第1ロック機構や第2ロック機構の数を減らすことができ、成形機構を容易にすることも可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の紙容器においては、第1ロック機構によって側壁板が開く方向に相対変位することが規制され、第2ロック機構によって第1ロック機構のロックが緩む方向に相対変位することが規制されるため、組み立て後、使用中に第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜けることを防止でき、隣り合う側壁板同士を確実且つ強固に結合して紙容器を組み立てることが可能になる。
【0029】
また、例えば冷凍食品を収納する紙容器の場合など、水分によって舌片が軟化しても、第2ロック機構を備えることで舌片が切り込みから引き抜けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブランクを示す平面視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る紙容器を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るブランクの第1ロック機構、第2ロック機構、第3ロック機構の拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を内側から見た図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を外側から見た図である。
【図6】第1ロック機構、第2ロック機構、第3ロック機構の拡大図であり、本発明の第1実施形態に係る第2ロック機構の変形例を示す図である。
【図7】図6の紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を内側から見た図である。
【図8】図6の紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を外側から見た図である。
【図9】第1ロック機構、第2ロック機構、第3ロック機構の拡大図であり、本発明の第1実施形態に係る第2ロック機構の変形例を示す図である。
【図10】図9の紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を外側から見た図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るブランクを示す平面視図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を外側から見た図である。
【図13】本発明の第2実施形態において、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜ける現象の説明に用いた斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態において、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜ける現象の説明に用いた斜視図である。
【図15】従来のブランクを示す平面視図である。
【図16】従来の紙容器を示す斜視図である。
【図17】従来の紙容器を示す斜視図であり、コーナー部を内側から見た図である。
【図18】従来の紙容器において、第1ロック機構の舌片が切り込みから引き抜ける現象の説明に用いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1から図5を参照し、本発明の第1実施形態に係る紙容器について説明する。なお、本実施形態は、例えば冷凍ピザなどの冷凍食品を収納し、オーブンや電子レンジなどで冷凍食品とともに加熱される紙容器に関するものである。なお、本発明は、冷凍食品の包装用の紙容器に限定する必要はなく、あらゆる物品の包装用紙容器に適用可能である。
【0032】
本実施形態の紙容器Bは、図1及び図2に示すように、平面視八角形の底板1と、底板1の各外周辺に連設された8つの側壁板3とを備えた一枚のブランク(板紙)4をインラインの製函工程で組み立てて形成されている。また、この紙容器Bは、底板1の各外周辺に沿って側壁板折り罫線2が設けられており、底板1に連設された各側壁板3を側壁板折り罫線2で折り曲げ、隣り合う側壁板3a、3bの端部側同士を結合して、トレー状(あるいは箱状)に組み立てられている。
【0033】
また、本実施形態では、耐水性及び耐熱性を有するブランク4を用いて紙容器Aが形成されている。さらに、紙容器Aの内面(本実施形態では底板1の内面)には、電子レンジから照射される電磁波を受けることによって発熱する発熱シート(サセプター)15が貼着して設けられている。
【0034】
また、本実施形態において、底板1は、4つの長辺(長い外周辺)と、2つの長辺の間にそれぞれ配される4つの短辺(短い外周辺)とを備えて平面視略矩形状を呈するように形成されている。そして、底板1の4つの長辺部分に、この長辺の長さに応じた大きな長さの4つの側壁板3b(他方の側壁板:以下、長辺側壁板という)が側壁板折り罫線2を介して連設され、底板1の4つの短辺部分に、短辺の長さに応じた小さな長さの4つの側壁板3a(一方の側壁板:以下、短辺側壁板という)が側壁板折り罫線2を介して連設されている。
【0035】
また、4つの短辺側壁板3aには、図3(図1及び図2参照)に示すように、長さ方向である横方向T2の両側端側にそれぞれ、底板1の短辺と長辺の交点を基点とし、短辺側壁板3aの下端から上端まで長さ方向T1に直交する上下方向(高さ方向)T3に延びるコーナー部折り罫線6が設けられている。そして、各短辺側壁板3aには、横方向T1の両側端側にそれぞれ、コーナー部折り罫線6を介して横方向T1外側に延出し、紙容器Bの組み立て時にコーナー部折り罫線6で折り曲げて長辺側壁板3bに重なる重合部7が形成されている。
【0036】
さらに、短辺側壁板3aの両側端側にはそれぞれ、重合部7の側端から横方向T1外側に向かうに従い漸次上方に延設した舌片11が設けられている。また、舌片11は、重合部7の上下方向T3略中央部分から横方向T1外側の上方に向けて斜設され、傾斜して重合部7側を向く舌片11の上方の外周端部分が係止端11aとされている。なお、舌片11は、重合部7の側端から横方向T1外側に向かうに従い漸次下方に延設して形成されていてもよい。
【0037】
また、短辺側壁板3aの両側端側にはそれぞれ、コーナー部折り罫線6上に形成され、短辺側壁板3aの上端から下端側に向けて凹む切り欠き部16が設けられている。本実施形態では、この切り欠き部16が、短辺側壁板3aを上端から下端側に向けてV字状に切り込み、V字の頂点をコーナー部折り罫線6上に配して形成されている。
【0038】
一方、4つの長辺側壁板3bにはそれぞれ、横方向T2の両側端側に、切り込み(切り込み線)12が長辺側壁板3bの一面から他面に貫通形成されている。各切り込み12は、長辺側壁板3bの側端から所定の間隔をあけ、且つ長辺側壁板3bの側端に沿う上下方向T4に延びる縦切り込み部12bと、縦切り込み部12bの下端から横方向T2内側に延びる下側横切り込み部12cと、縦切り込み部12bの上端から横方向T2内側に向かうに従い漸次上方に傾斜する斜め切り込み部12dと、斜め切り込み部12dの上端から横方向T2内側に延びる上側横切り込み部12eとを備えて、略コ字状に形成されている。また、本実施形態では、各切り込み12が長辺側壁板3bの上下方向T4略中央に配設されている。そして、切り込み12の斜め切り込み部12dによって係止受端12aが形成されている。
【0039】
また、長辺側壁板3bの両側端側にはそれぞれ、長辺側壁板3bの上端側の側端から横方向外側に延出(突出)した係合凸部17が形成されている。また、本実施形態の係合凸部17は、その上端が長辺側壁板3bの中央側の上端と上下方向T4の同位置に配され、長辺側壁板3bの中央側の上端を横方向T2に延出した形で形成されている。また、この係合凸部17は、その下端が長辺側壁板3bの側端から横方向T2外側に向かうに従い漸次上方に向けて傾斜し、さらに横方向T2外側に延びて形成されている。そして、本実施形態の係合凸部17は、下端が傾斜した基端側の平面視略台形状の部分が当接部17aとされ、その下端が当接部17aの先端から横方向T2外側に延びる平面視方形状の部分が係合本体部17bとされている。
【0040】
また、長辺側壁板3bの両側端側にはそれぞれ、長辺側壁板3bの下端側の側端から横方向T2外側に延出(突出)した平面視方形状の突片部18が形成されている。
【0041】
ここで、本実施形態の紙容器Aにおいては、短辺側壁板3aの重合部7の側端から横方向T1外側に向かうに従い上方に延設した舌片11と、長辺側壁板3bの側端側に形成された切り込み12とによって、第1ロック機構10が構成されている。
【0042】
また、コーナー部折り罫線6上に形成され、短辺側壁板3aの上端から下端側に向けて凹む切り欠き部16と、長辺側壁板3bの上端側に形成され、長辺側壁板3aの側端から横方向T2外側に延設された係合凸部17とによって、第2ロック機構20が構成されている。
【0043】
さらに、長辺側壁板3bの側端から横方向T2外側に延設された突片部18によって、第3ロック機構21が構成されている。
【0044】
次に、上記構成からなる本実施形態の紙容器Bの作用及び効果について説明する。
【0045】
本実施形態の紙容器Bは、図1及び図2に示すように、平面視八角形の底板1と、底板1の各外周辺に連設された8つの側壁板3とを備えた一枚のブランク4を用い、インラインの製函工程で、各側壁板3を側壁板折り罫線2で折り曲げるとともに、隣り合う短辺側壁板3aと長辺側壁板3bの端部側同士を結合して、トレー状(あるいは箱状)に組み立てられる。
【0046】
このとき、まず、図3から図5に示すように、短辺側壁板3aの重合部7がコーナー部折り罫線6で折り曲げて隣り合う長辺側壁板3bに重ね合わされ、短辺側壁板3aの舌片11が長辺側壁板3bの一面(本実施形態では外面)側から切り込み12に差し込まれて長辺側壁板3bの他面(内面)側に出される。そして、このように舌片11を切り込み12に差し込むと、側壁板折り罫線2で折り曲げた短辺側壁板3aと長辺側壁板3bがそれぞれ元に戻ろうとする力(側壁板3を開く方向S2の力)が働くとともに、舌片11の重合部7側を向く係止端11aが切り込み部分の係止受端12aに引っ掛かる。これにより、切り込み12に差し込んだ舌片11が切り込み部分に係止され、これら舌片11と切り込み12からなる第1ロック機構10によって、容易に隣り合う側壁板3a、3b同士が結合する。
【0047】
また、本実施形態の紙容器Bにおいては、上記のように第1ロック機構10で隣り合う側壁板3a、3b同士を結合し、紙容器Bを組み立てる際に、第2ロック機構20の短辺側壁板3aのコーナー部(コーナー部折り罫線6上)の切り欠き部16に、長辺側壁板3bに形成した係合凸部17を挿入して係合させる。また、このとき、係合凸部17の係合本体部17bを切り欠き部16に挿入して係合させる。このように係合本体部17bを係合させると、係合凸部17の当接部17aが切り欠き部16のV字の頂点に当接する。
【0048】
ここで、従来の紙容器Aにおいては、図18に示したように、組み立て後、使用中に、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に力が作用して舌片11が切り込み12から奥に押し込まれると、その後、短辺側壁板3aや長辺側壁板3bに開く方向S2に作用する力によって、再度舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aに当接するように戻る際に、係止端11aが係止受端12aに引っ掛からず、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうおそれがあった。
【0049】
これに対し、本実施形態の紙容器Bにおいては、図3から図5に示すように、第2ロック機構20の係合凸部17の係合本体部17bが切り欠き部16に係合しているため、また、係合凸部17の当接部17aが切り欠き部16のV字の頂点に当接しているため、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aから離れて舌片11が切り込み12から奥に押し込まれることが防止される。すなわち、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することが第2ロック機構20によって規制される。このため、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用した後に、短辺側壁板3aや長辺側壁板3bに開く方向S2の力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み部分の係止受端12aに引っ掛かった状態で保持され、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうことが防止される。
【0050】
また、本実施形態の紙容器Bにおいては、図3及び図4に示すように、第1ロック機構10で隣り合う側壁板3a、3b同士を結合し、紙容器Bを組み立てる際に、第3ロック機構21の長辺側壁板3bの側端から横方向T2外側に延設された突片部18の先端が、短辺側壁板3aのコーナー部折り罫線6上に当接する。これにより、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aから離れて舌片11が切り込み12から奥に押し込まれることが防止される。すなわち、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することが第3ロック機構21によっても規制される。
【0051】
そして、本実施形態では、第2ロック機構20が側壁板3bの上端側に設けられて隣り合う側壁板3a、3b同士の相対変位を規制し、第3ロック機構21が側壁板3bの下端側に設けられて隣り合う側壁板3a、3b同士の相対変位を規制するため、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用した後に、短辺側壁板3aや長辺側壁板3bに開く方向S2の力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み部分の係止受端12aに引っ掛かった状態でさらに確実に保持され、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうことが防止される。
【0052】
一方、本実施形態のように例えば冷凍ピザなどの食品(冷凍食品)を紙容器に収納し、オーブンや電子レンジなどで冷凍食品とともに加熱して使用される紙容器である場合には、耐水性や耐熱性を有するブランク4を用いて紙容器Bを形成することで好適に紙容器Bの形状を保持することが可能であるが、第1ロック機構10の舌片11などが水分で軟化し、これに伴い、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうおそれもある。
【0053】
これに対し、本実施形態の紙容器Bのように、第2ロック機構20や第3ロック機構21を備えることによって、冷凍食品などを収納する紙容器Bであっても、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板が相対変位することを防止し、確実に、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうことが防止される。
【0054】
したがって、本実施形態の紙容器Bにおいては、従来と同様、第1ロック機構10の舌片11を切り込み12に差し込み、舌片11の重合部7側を向く係止端11aを切り込み部分の係止受端12aに引っ掛け、舌片11が切り込み部分に係止されることで、側壁板3a、3bが開く方向S2に相対変位することを第1ロック機構10によって規制するように隣り合う側壁板3a、3b同士を結合することができ、トレー状あるいは箱状の紙容器Bを組み立てることができる。
【0055】
また、第1ロック機構10で隣り合う側壁板3a、3b同士を結合するとともに、第2ロック機構20の短辺側壁板3aに形成した切り欠き部16に、長辺側壁板3bに形成した係合凸部17を挿入して係合させる。そして、このように第2ロック機構20の切り欠き部16に係合凸部17を係合させることで、第1ロック機構10の舌片11の係止端11aと係止受端12aの引っ掛け状態が解除され、すなわち、舌片11が切り込み12にさらに押し込まれ、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することを第2ロック機構20によって規制することができる。これにより、組み立て後、使用中に第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止できる。
【0056】
よって、本実施形態の紙容器Bによれば、第1ロック機構10によって側壁板3a、3bが開く方向S2に相対変位することが規制され、第2ロック機構20によって第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に相対変位することが規制されるため、組み立て後、使用中に第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止でき、重合部7を接着剤で接着することなく、隣り合う側壁板3a、3b同士を確実且つ強固に結合して紙容器Bを組み立てることが可能になる。
【0057】
また、例えば冷凍食品を収納する紙容器Bの場合など、水分によって舌片11が軟化しても、第2ロック機構20を備えることで舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止することができる。
【0058】
また、本実施形態の紙容器Bにおいては、紙容器Bの組み立て時に突片部18が短辺側壁板3aのコーナー部折り罫線6上に当接することによって、第2ロック機構20とともに、第3ロック機構21によっても、第1ロック機構10の舌片11の係止端11aと係止受端12aの引っ掛け状態が解除され(舌片11が切り込み12にさらに押し込まれ)、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することを規制することができる。これにより、組み立て後、より確実に、第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止できる。
【0059】
さらに、耐水性及び/又は耐熱性を有する板紙4を用いて形成することによって、食品など、水分が多く、加熱を要する収納物を好適に収納できる紙容器Bの提供が可能になる。
【0060】
また、本実施形態の紙容器Bにおいては、例えば冷凍ピザなどの食品(冷凍食品)を収納し、電子レンジで冷凍食品とともに加熱して使用される紙容器Bである場合に、底板1の内面などに、電子レンジから照射される電磁波を受けることによって発熱する発熱シート15を貼着して紙容器Bを構成している。このように構成したことで、食品の発熱シート15に接する面に焦げ目をつけたり、カリッとした仕上がりにすることが可能になる。
【0061】
以上、本発明に係る紙容器の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0062】
例えば、本実施形態では、八角形の底板1と、底板1の各外周辺に連設された8つの側壁板3とを備えた一枚のブランク4を用いて紙容器Bが組み立て形成されているものとしたが、本発明にかかる紙容器は、勿論、八角形に限定する必要はなく、多角形の底板1を備えて形成されていればよい。また、紙容器がトレー状に形成されるものとして説明を行ったが、勿論、箱状の紙容器などに本発明を適用しても、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、第1ロック機構10と第2ロック機構20と第3ロック機構21の3つのロック機構を備えて紙容器Bが構成されているものとしたが、本発明にかかる紙容器は、少なくとも第1ロック機構10と第2ロック機構20を備えていればよい。
【0064】
また、本実施形態では、本発明にかかる一方の側壁板を短辺側壁板3a、他方の側壁板を長辺側壁板3bとして説明を行ったが、隣り合う一方の側壁板と他方の側壁板は特にその長さの大小を限定する必要はない。
【0065】
さらに、本実施形態では、短辺側壁板3aの長さ方向T1両側端側に重合部7及び舌片11、切り欠き部16を設け、長辺側壁板3bの長さ方向T2両側端側に切り込み12、係合凸部17、突片部18を設けるものとしたが、一つの側壁板の一方の側端側に重合部7及び舌片11、切り欠き部16を設け、この一つの側壁板の他方の側端側に切り込み12、係合凸部17、突片部18を設けて、隣り合う側壁板3a、3b同士をロックする第1ロック機構10、第2ロック機構20、第3ロック機構21をそれぞれ構成するようにしてもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、第2ロック機構20の係合凸部17が、下端が長辺側壁板3bの側端から横方向T2外側に向かうに従い漸次上方に向けて傾斜し、さらに横方向T2外側に延びて形成され、基端側の平面視略台形状の当接部17aと、先端側の平面視方形状の係合本体部17bを備えて形成されているものとした。
【0067】
これに対し、図6から図8に示すように、第2ロック機構20の係合凸部17を、先端に引掛け部17cを備えて鉤状に形成するようにしてもよい。そして、この場合においては、第2ロック機構20の係合凸部17を切り欠き部16に挿入して係合させるとともに、鉤状の係合凸部17の先端に設けられた引掛け部17cを短辺側壁板3aに引っ掛けて係止することができる。これにより、第2ロック機構20によって第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することを規制することに加え、短辺側壁板3aを引掛け部17cで係止することにより、各側壁板3a、3bが開く方向S2に相対変位することをも第2ロック機構20によって規制することが可能になる。よって、組み立て後、さらに確実に、第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止することが可能になる。
【0068】
さらに、図9及び図10に示すように、本実施形態よりも第2ロック機構20の係合凸部17を長く形成し、切り欠き部16に係合凸部17を挿入して係合させるとともに係合凸部17の先端側(係合本体部17b)を折り返して短辺側壁板(一方の側壁板)3aの側端を拘束し、隣り合う側壁板3a、3b同士の相対変位を規制するように構成してもよい。
【0069】
そして、この場合においては、第2ロック機構20の係合凸部17を切り欠き部16に挿入して係合させるとともに係合凸部17の先端側を折り返すことにより、短辺側壁板3aの側端を係合凸部17で拘束するようにして係止することができる。これにより、第2ロック機構20によって第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することを規制することに加え、係合凸部17を折り返して短辺側壁板3aを係止することで、側壁板3a、3bが開く方向S2に相対変位することをも第2ロック機構20によって規制することが可能になる。これにより、組み立て後、さらに確実に、第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止できる。
【0070】
次に、図11から図14を参照し、本発明の第2実施形態に係る紙容器について説明する。ここで、本実施形態においては、第1実施形態と同様の構成に対して同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施形態の紙容器Cは、第1実施形態と同様、図11及び図12に示すように、平面視八角形の底板1と、底板1の各外周辺に連設された8つの側壁板3とを備えた一枚のブランク4をインラインの製函工程で組み立てて形成される。また、この紙容器Cは、隣り合う側壁板3a、3b同士を第1ロック機構10と第2ロック機構20によって結合(ロック)して組み立てられる。
【0072】
一方、本実施形態の紙容器Cにおいては、八角形状(多角状)の底板1の周方向に連続して並ぶ3つの外周辺のうち、1つの短辺(第1の外周辺)を間に周方向両側に配された2つの長辺(第2の外周辺と第3の外周辺)にそれぞれ、側壁板折り罫線3を介して長辺側壁板3b、3cが連設されている。また、一方の長辺に連設した一方の長辺側壁板3cには、コーナー部折り罫線6を介して横方向T2外側に延出し、紙容器Cの組み立て時にコーナー部折り罫線6で折り曲げて短辺に沿って配設される(短辺に連設されていない)短辺側壁板3aが連設されている。
【0073】
また、本実施形態においては、底板1が、短辺部分に、この短辺に沿って配設される短辺側壁板3aの下端を支持するように外側に延出する額部22を備えて形成されている。
【0074】
また、短辺側壁板3aの一側端にのみ、コーナー部折り罫線6を介して重合部7が設けられ、さらに第1ロック機構10の舌片11と、第2ロック機構20の切り欠き部16が設けられている。また、他方の長辺側壁板3bの両側端側にそれぞれ、第1ロック機構10の切り込み12と、第2ロック機構20の係合凸部17が設けられている。
【0075】
そして、このように構成した本実施形態の紙容器Cにおいては、短辺側壁板3aの重合部7をコーナー部折り罫線6で折り曲げつつ、隣り合う他方の長辺側壁板3bに重ね合わせ、短辺側壁板3aの舌片11を他方の長辺側壁板3bの一面側から切り込み12に差し込んで他方の長辺側壁板3bの他面側に出す。このように舌片11を切り込み12に差し込むと、側壁板折り罫線2で折り曲げた一方の長辺側壁板3cと他方の長辺側壁板3bにそれぞれ元に戻ろうとする力(開く方向S2の力)が働くとともに、短辺側壁板3aの舌片11の重合部7側を向く係止端11aが他方の長辺側壁板3bの切り込み部分の係止受端12aに引っ掛かる。これにより、切り込み12に差し込んだ舌片11が切り込み部分に係止され、これら舌片11と切り込み12からなる第1ロック機構10によって、容易に隣り合う側壁板3a、3b同士が結合する。
【0076】
また、第1ロック機構10で隣り合う側壁板3a、3b同士を結合し、紙容器Cを組み立てる際に、第2ロック機構20の短辺側壁板3aのコーナー部(コーナー部折り罫線6上)の切り欠き部16に、他方の長辺側壁板3bに形成した係合凸部17を挿入して係合させる。
【0077】
そして、第2ロック機構20の係合凸部17が切り欠き部16に係合しているため、また、係合凸部17が切り欠き部16のV字の頂点に当接するため、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み12の係止受端12aから離れて舌片11が切り込み12から奥に押し込まれることが防止される。すなわち、第1実施形態と同様、第1ロック機構10のロックが緩む方向S1に側壁板3a、3bが相対変位することが第2ロック機構20によって規制される。このため、第1ロック機構10が緩む方向S1に力が作用した後に、短辺側壁板3aや長辺側壁板3bに開く方向S2の力が作用しても、舌片11の係止端11aが切り込み部分の係止受端12aに引っ掛かった状態で保持される。よって、舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうことが防止される。
【0078】
一方、本実施形態では、このように第1ロック機構10と第2ロック機構20によって短辺側壁板3aと他方の長辺側壁板3bの隣り合う側壁板3a、3b同士を結合すると、一方の長辺側壁板3cに接続し、底板1に連設されていない短辺側壁板3aは、自動的に、底板1の短辺に沿って配設される。
【0079】
このとき、上記のように短辺側壁板3aを底板1に連設せずに構成した場合、図13に示すように、底板1に連接されていない短辺側壁板3aに開く方向S1の力が作用すると、短辺側壁板3aが底板1よりも下方に落ち込むように変位し、図14に示すように、第1ロック機能10の舌片11が切り込み12から引き抜けてしまうおそれがある。
【0080】
これに対し、本実施形態の紙容器Cにおいては、図11及び図12に示すように、底板1に形成した額部22によって、短辺側壁板3aを受けてその下端を支持することにより、この短辺に沿って配設される短辺側壁板3aが落ち込むことを防止でき、組み立て後、使用中に、短辺側壁板3aの落ち込みに伴って第1ロック機構10の舌片11が切り込み12から引き抜けることを防止できる。
【0081】
また、短辺側壁板3aを底板1に連設せずに構成した場合には、第1ロック機構10や第2ロック機構20の数を減らすことができ、成形機構を容易にすることが可能になる。
【0082】
以上、本発明に係る紙容器の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の記載例、変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 底板
2 側壁板折り罫線
3 側壁板
3a 短辺側壁板(一方の側壁板)
3b 長辺側壁板(他方の側壁板)
3c 長辺側壁板(側壁板)
4 ブランク
6 コーナー部折り罫線
7 重合部
10 第1ロック機構
11 舌片
11a 係止端
12 切り込み
12a 係止受端
12b 縦切り込み部
12c 下側横切り込み部
12d 斜め切り込み部
12e 上側横切り込み部
15 発熱シート(サセプター)
16 切り欠き部
17 係合凸部
17a 当接部
17b 係合本体部
17c 引掛け部
18 突片部
20 第2ロック機構
21 第3ロック機構
22 額部
A 従来の紙容器
B 紙容器
C 紙容器
S1 ロックが緩む方向
S2 側壁板が開く方向
T1 横方向
T2 横方向
T3 上下方向
T4 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状の底板と、前記底板の外周辺に側壁板折り罫線を介して連設された複数の側壁板とを備える一枚の板紙を用い、前記側壁板折り罫線で前記側壁板を折り曲げるとともに、隣り合う前記側壁板同士を結合して組み立てられる紙容器であって、
隣り合う一方の側壁板の側端側に、コーナー部折り罫線を介して横方向外側に延出し、紙容器の組み立て時に前記コーナー部折り罫線で折り曲げて他方の側壁板に重なる重合部が形成されており、
前記一方の側壁板の重合部の側端から横方向外側に向かうに従い前記上方あるいは下方に延設した舌片と、前記他方の側壁板の側端側に形成された切り込みとからなり、紙容器の組み立て時に前記舌片を前記切り込みに差し込んで係止することによって隣り合う側壁板同士を結合させる第1ロック機構と、
前記コーナー部折り罫線上に形成され、前記一方の側壁板の上端から下端側に向けて凹む切り欠き部と、前記他方の側壁板の上端側に形成され、前記他方の側壁板の側端から横方向外側に延設された係合凸部とからなり、紙容器の組み立て時に前記係合凸部を前記切り欠き部に挿入して係合させることによって、前記第1ロック機構によるロックが緩む方向に力が作用した際に隣り合う側壁板同士の相対変位を規制する第2ロック機構とを備えていることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
請求項1記載の紙容器において、
前記他方の側壁板の側端から横方向外側に延設された突片部からなり、紙容器の組み立て時に前記突片部が前記一方の側壁板の前記コーナー部折り罫線上に当接することによって、前記第1ロック機構によるロックが緩む方向に力が作用した際に隣り合う側壁板同士の相対変位を規制する第3ロック機構を備えていることを特徴とする紙容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の紙容器において、
前記第2ロック機構の前記係合凸部が、先端に引掛け部を備えて鉤状に形成されていることを特徴とする紙容器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の紙容器において、
前記第2ロック機構が、前記切り欠き部に前記係合凸部を挿入して係合させるとともに前記係合凸部の先端側を折り返して前記一方の側壁板の側端を拘束し、隣り合う側壁板同士の相対変位を規制するように構成されていることを特徴とする紙容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙容器において、
耐水性及び/又は耐熱性を有する前記板紙を用いて形成されていることを特徴とする紙容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の紙容器において、
内面に発熱シートが貼着されていることを特徴とする紙容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の紙容器において、
前記多角状の底板の周方向に連続して並ぶ3つの外周辺のうち、1つの第1の外周辺を間に周方向両側に配された第2の外周辺と第3の外周辺にそれぞれ前記側壁板が連設され、
前記第2の外周辺に連設された前記側壁板に、コーナー部折り罫線を介して横方向外側に延出し、紙容器の組み立て時に前記コーナー部折り罫線で折り曲げて前記第1の外周辺に沿って配設される側壁板が連設されており、
前記底板が、前記第1の外周辺部分に該第1の外周辺に沿って配設される側壁板の下端を支持するように外側に延出する額部を備えて形成されていることを特徴とする紙容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−52884(P2013−52884A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190519(P2011−190519)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】