説明

紙幣処理装置

【課題】 移動自在に設けた2つのプッシャプレートで区切られ、これらのプッシャプレートの移動によりそのサイズが変化する2つの紙幣収納空間に対して個別に収納されている紙幣の有無を検知するための構成を簡単にすることで、装置本体のコストダウンを図った紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】 紙幣処理装置1は、プリズム13aを利用して2つの紙幣収納空間に対して収納されている紙幣の有無を個別ではなく総合的に検知し、いずれかの紙幣収納空間に紙幣が収納されていることが検出されたとき、第1の紙幣収納空間に対して収納されている紙幣の有無を検知する。このように、簡単な構成で、2つの紙幣収納空間に対して個別に紙幣が収納されているかどうかを検知することができ、装置本体のコストダウンが図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体に投入された紙幣を受け付ける入金取引や、本体に収納している紙幣を放出する出金取引を行う紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入金取引や出金取引を行うATMやCD等の紙幣処理装置が金融機関やコンビニエンスストア等の店舗に設置されている。従来の紙幣処理装置には、入出金口の内側に入金取引や出金取引にかかる紙幣(入出金紙幣)を収納する入出金紙幣収納空間が形成されている。また、入出金紙幣収納空間に収納されている紙幣を1枚ずつ分離して搬送路に繰り出す分離繰出機構や、搬送路を搬送されてきた紙幣を入出金紙幣収納空間に集積するスタック機構が設けられている。入出金口には、シャッタが設けられている。
【0003】
従来の紙幣処理装置は、入金取引時、シャッタを開して、入出金紙幣収納空間に紙幣が投入されるのを待つ。紙幣処理装置は、紙幣が入出金紙幣収納空間に投入されると、シャッタを閉し、入出金紙幣収納空間に投入された紙幣を1枚ずつ分離して繰り出し、鑑別部に搬送する。鑑別部は、搬送されてきた紙幣毎に受入可能紙幣であるかどうかの鑑別を行う。受入可能紙幣とは、真券であり、且つ装置本体で取り扱っている金種の紙幣である。例えば、真券であると鑑別しても、取り扱っていない金種の紙幣であれば受入可能紙幣でないと鑑別する。紙幣処理装置は、受入可能紙幣であると鑑別された紙幣(以下、受入紙幣と言う。)を一時保留部に搬送して収納し、反対に受入可能紙幣でないと鑑別された紙幣(以下、リジェクト紙幣と言う。)を前記一時保留部とは別に設けたリジェクト紙幣保留部に搬送して収納する。紙幣処理装置は、入出金紙幣収納空間に今回投入された全ての紙幣を鑑別すると、リジェクト紙幣保留部に収納しているリジェクト紙幣を入出金紙幣収納空間に搬送し収納する。リジェクト紙幣を入出金紙幣収納空間に全て収納すると、再度シャッタを開して、このリジェクト紙幣を利用者に返却する。リジェクト紙幣がなかった場合には、言い換えれば利用者に返却するリジェクト紙幣がない場合には、この処理は行われない。また、紙幣処理装置は入金金額(受入紙幣の合計金額)が利用者により確認されると、この入金金額の入金取引を処理する。このとき、一時保留部に保留している受入紙幣を1枚ずつ繰り出し、再度鑑別部に搬送し、紙幣の再鑑別を行う。そして、各紙幣をこの再鑑別で鑑別した金種に応じた入出金カートリッジに搬送し収納する。
【0004】
なお、紙幣処理装置は、入金金額が利用者によって確認されることなく、入金取引の中止が入力された場合、一時保留部に保留している受入紙幣を1枚ずつ繰り出し、入出金紙幣収納空間に搬送し収納する。そして、シャッタを開して利用者が今回投入した全ての紙幣をこの利用者に返却する。一時保留部は、利用者が入金取引を途中で中止したときに、この利用者に対して今回投入された全ての紙幣を返却するために設けている。
【0005】
なお、紙幣処理装置は、入金取引、および出金取引において、入出金紙幣収納空間に利用者が取り忘れた紙幣があれば、この取り忘れ紙幣を回収カートリッジに搬送して収納する。
【0006】
このように、従来の紙幣処理装置は、装置本体に一時保留部に加えてリジェクト紙幣保留部を別途設けなければならず、装置本体が大型であった。一時保留部は、上述したように、入金取引が途中で中止された場合に、利用者が投入した全ての紙幣をこの利用者に返却するために必要である。また、リジェクト紙幣保留部は、受入可能紙幣でないと鑑別された紙幣を利用者に返却するために必要である。
【0007】
そこで、入出金口に対向する入出金紙幣収納空間を入金紙幣を投入する投入紙幣空間と、リジェクト紙幣や出金紙幣を収納するリジェクト紙幣空間とに分割し、装置を小型化することが特許文献1で提案されている。具体的には、入出金口に対向する入出金紙幣収納空間に中板を設け、この中板で入金紙幣を投入する投入紙幣空間と、リジェクト紙幣や出金紙幣を収納するリジェクト紙幣空間とに分けることが提案されている。また、中板を移動することで、これらの空間の大きさを必要に応じて調整することが記載されている。この紙幣処理装置は、入金取引時にリジェクト紙幣をリジェクト紙幣空間に直接搬送して収納することができ、装置本体にリジェクト紙幣収納部を設ける必要がないので、装置本体を小型にできる。
【特許文献1】特開2000−99795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で示されている構成では、投入紙幣空間やリジェクト紙幣空間は移動させた中板の位置により、その空間が殆ど存在しない状態、言い換えれば入出金紙幣収納空間の殆どが投入紙幣空間またはリジェクト紙幣空間の一方の空間として使用される状態、になることがある。また、投入紙幣空間およびリジェクト紙幣空間に対して、個別に収納されている紙幣の有無を検知する必要がある。このため、投入紙幣空間およびリジェクト紙幣空間に対して、その空間が殆ど存在していない状態から、反対に入出金紙幣収納空間の殆ど全体を使用している状態まで、どの状態であっても収納されている紙幣の有無が検知できなければならず、投入紙幣空間およびリジェクト紙幣空間に対して個別に収納されている紙幣の有無を検知するための構成が複雑であり、装置本体が高価であるという問題があった。
【0009】
なお、特許文献1には、投入紙幣空間およびリジェクト紙幣空間に対して個別に収納されている紙幣の有無を検知するための構成について特に記載されていない。
【0010】
この発明の目的は、移動自在に設けた2つのプッシャプレートで区切られ、これらのプッシャプレートの移動によりそのサイズが変化する2つの紙幣収納空間に対して個別に収納されている紙幣の有無を検知するための構成を簡単にすることで、装置本体のコストダウンを図った紙幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の紙幣処理装置は、上記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0012】
(1)収納されている紙幣を繰り出す繰出ローラに対して接離する方向に移動自在に取り付けた2つのプッシャプレートにより、前記繰出ローラとこの繰出ローラに近い側の一方のプッシャプレートとで区切られた第1の紙幣収納空間、およびこれら2つのプッシャプレートで区切られた第2の紙幣収納空間を有する紙幣収納手段と、
前記一方のプッシャプレートを前記繰出ローラに対して接離する方向に移動する第1の駆動手段と、
前記他方のプッシャプレートを前記繰出ローラに対して接離する方向に移動する第2の駆動手段と、
前記繰出ローラ側から、前記一方のプッシャプレートを介して他方のプッシャプレートに光を照射し、その光の反射光を検知する光センサを有し、この光センサが他方のプッシャプレートに照射している光の反射光を検知しているかどうかにより、前記紙幣収納手段に紙幣が収納されているかどうかを検知する収納紙幣検知手段と、
前記第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを繰出ローラ側に移動し、前記繰出ローラに押圧される紙幣の有無を検知する押圧検知手段と、
前記収納紙幣検知手段により前記紙幣収納空間に紙幣が収納されていることが検知されると、前記前記押圧検知手段が第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを移動し、前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しているとき、少なくとも前記一方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定し、反対に前記押圧検知手段が前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しなかったときに、前記他方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定する紙幣収納空間判定手段と、を備えている。
【0013】
この構成では、紙幣収納手段が紙幣を繰り出す繰出ローラに対して接離する方向に移動自在に取り付けた2つのプッシャプレートにより、繰出ローラとこの繰出ローラに近い側の一方のプッシャプレートとで区切られた第1の紙幣収納空間、および2つのプッシャプレートで区切られた第2の紙幣収納空間を有する。第1の駆動手段、および第2駆動手段により2つのプッシャプレートを移動することで、第1の紙幣収納空間、および第2の紙幣収納空間のサイズを調整できる。また、収納紙幣検知手段が繰り出しローラ側から、この繰出ローラに近い側の一方のプッシャプレートを介して他方のプッシャプレートに光を照射し、その反射光を検知する光センサにより、第1の紙幣収納空間または第2の紙幣収納空間に紙幣が収納されているかどうかを検知する。具体的には、光センサが反射光を受光していれば、第1の紙幣収納空間および第2の紙幣収納空間に紙幣が収納されていないとし、光センサが反射光を受光していなければ、第1の紙幣収納空間または第2の紙幣収納空間の少なくとも一方に紙幣が収納されているとする、検知を行う。また、紙幣収納空間判定手段が、前記押圧検知手段が第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを移動し、前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しているとき、少なくとも前記一方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定し、反対に前記押圧検知手段が前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しなかったときに、前記他方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定する。
【0014】
このように、収納紙幣検知手段が2つの紙幣収納空間に対して収納されている紙幣の有無を個別ではなく総合的に検知し、いずれかの紙幣収納空間に紙幣が収納されていることが検出されたとき、押圧検知手段により第1の紙幣収納空間に対して収納されている紙幣の有無を検知する。したがって、押圧検知手段が第1の紙幣収納空間に収納されている紙幣があると検知したときには、少なくとも第1の紙幣収納空間に収納されている紙幣があり、反対に押圧検知手段が第1の紙幣収納空間に収納されている紙幣がないと検知したときには、第2の紙幣収納空間に収納されている紙幣がある。また、第1の紙幣収納空間に収納されている紙幣があることが検知された場合、繰出ローラにより第1の紙幣収納空間に収納されている紙幣を繰り出すことで、第2の紙幣収納空間に紙幣が収納されているかどうかを検知することができる。
【0015】
したがって、簡単な構成で第1の紙幣収納空間および第2の紙幣収納空間に対して個別に紙幣が収納されているかどうかを検知することができ、装置本体のコストダウンが図れる。
【0016】
(2)前記押圧検知手段は、前記第1の駆動手段または前記第2の駆動手段により前記繰出ローラに紙幣が押圧されたときに回動する検知レバーと、この検知レバーの回動を検知する回動検知センサと、を有する。
【0017】
この構成では、押圧検知手段を、繰出ローラに紙幣が押圧されたときに回動する検知レバーと、この検知レバーの回動を検知するセンサとで構成したので、安価に実現できる。
【0018】
(3)前記収納紙幣検知手段は、前記繰出ローラ側に配置され、前記一方のプッシャプレートに形成した第1の開口部を介して他方のプッシャプレートに光を照射する発光部と、
前記他方のプッシャプレートに設けられ、前記発光部から照射された光を折り曲げ、前記一方のプッシャプレートに形成した第2の開口部を介して前記繰出ローラ側に送るプリズムと、
前記繰出ローラ側に配置され、前記プリズムにより送られてきた光を受光する受光部と、を有する。
【0019】
この構成では、プリズムを利用したので、簡単な構成で紙幣収納手段、すなわち第1の紙幣収納空間および第2の紙幣収納空間、に紙幣が収納されているかどうかを検知することができ、装置本体のコストダウンが図れる。
【0020】
(4)入金取引時に、前記第1の駆動手段および第2駆動手段により前記2つのプッシャプレートを移動し、前記第1の紙幣収納空間を紙幣の入出金口に対向させ、この第1の紙幣収納空間に対する入金紙幣の投入を受け付ける入金紙幣受付手段と、
前記第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを移動し、前記入金紙幣受付手段により受け付け、前記第1の紙幣収納空間に収納している入金紙幣を前記繰出ローラに押圧している状態で、この繰出ローラを回転させて前記第1の紙幣収納空間に収納している入金紙幣を1枚ずつ繰り出す入金紙幣繰出手段と、
前記入金紙幣繰出手段が繰り出した入金紙幣毎に受入可能紙幣であるかどうかを鑑別する鑑別手段と、
前記鑑別手段で受入可能紙幣でないと鑑別された入金紙幣をリジェクト紙幣として前記第2の紙幣収納空間へ搬送し収納するリジェクト手段と、を備えている。
【0021】
この構成では、入金取引時に、第1の紙幣収納空間が入金紙幣の投入空間、第2の紙幣収納空間がリジェクト紙幣の収納空間として利用するので、装置本体を小型にできる。
【0022】
(5)前記第1の紙幣収納空間に収納している全ての入金紙幣を前記入金紙幣繰出手段により繰り出した後、前記鑑別手段で受入可能紙幣でないと鑑別された前記リジェクト紙幣が前記第2の紙幣収納空間に収納されていれば、この第2の紙幣収納空間を紙幣の入出金口に対向させ、収納しているリジェクト紙幣の取り出しを許可する。
【0023】
この構成では、2つのプッシャプレートを移動し、第2の紙幣収納空間を紙幣の入出金口に対向させることにより、利用者にリジェクト紙幣を返却することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、簡単な構成で、第1の紙幣収納空間および第2の紙幣収納空間に対して個別に紙幣が収納されているかどうかを検知することができ、装置本体のコストダウンが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態である紙幣処理装置について説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施形態である紙幣処理装置の主要部の構成を示す概略断面図である。この実施形態の紙幣処理装置1は、入金取引、および出金取引が行える所謂ATMである。紙幣処理装置1には、本体正面に紙幣の入出金口2が形成されている。この入出金口2には、シャッタ2aが設けられている。入出金口2に対向する装置本体の内側には、受けプレート11、第1のプッシャプレート12、第2のプッシャプレート13、第3のプッシャプレート14が、入出金口2の下端側からこの順に立設されている。受けプレート11は、一方の端部を入出金口2の下端の辺に沿って立設している。この受けプレート11は固定されている。一方、第1のプッシャプレート12、第2のプッシャプレート13、および第3のプッシャプレート14は、受けプレート11に対して接離する方向に移動時自在に取り付けている。受けプレート11と第1のプッシャプレート12とで区切られた空間がこの発明で言う第1の紙幣収納空間に相当し、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13とで区切られた空間がこの発明で言う第2の紙幣収納空間に相当する。
【0027】
また、3は受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の空間に収納されている紙幣を繰り出す繰出ローラを含む分離繰出機構であり、4は第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間に紙幣を送り収納する送りローラを含むスタック機構であり、さらに5は第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の空間に収納されている紙幣を繰り出す繰出ローラ、およびこの間に紙幣を送り込む送りローラを含む分離繰出/スタック機構である。第1のプッシャプレート12の一方の端部が入出金口2の上端の辺に沿って立設し、第2のプッシャプレート13が第1のプッシャプレート12に当接し、第3のプッシャプレート14が第2のプッシャプレート13から入出金口2と略同じ幅だけ離れた位置に立設している状態を初期状態(第1〜第3のプッシャプレート12〜14が初期位置にある状態)と呼ぶ。
【0028】
スタック機構4は、第2のプッシャプレート13が初期位置にあるとき、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間に紙幣を送り込むことができる。また、分離繰出/スタック機構5は、第3のプッシャプレート14が初期位置にあるとき、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間に紙幣を送り込むことができる。また、第3のプッシャプレート14は、分離繰出/スタック機構5の繰出ローラが対向する位置に切欠を形成しており、分離繰出/スタック機構5の繰出ローラはこの切欠を介して第2のプッシャプレート13側に突出する。分離繰出/スタック機構5の繰出ローラは、第2のプッシャプレート13側に突出する向きに付勢されている。したがって、第2のプッシャプレート13に押し上げられて第3のプッシャプレート14に当接している紙幣、すなわち第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の空間に収納されている紙幣、を1枚ずつ繰り出すことができる。
【0029】
さらに、受けプレート11は、分離繰出機構3の繰出ローラが対向する位置に切欠を形成しており、分離繰出機構3の繰出ローラはこの切欠を介して第1のプッシャプレート12側に突出する。また、この繰出ローラは、詳細については後述するが、第1のプッシャプレート12側に突出する向きに付勢されている。したがって、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間に収納されている紙幣は、この繰出ローラに当接する。分離繰出機構3は、第1のプッシャプレート12に押し下げられて分離繰出機構3の繰出ローラに当接している紙幣を1枚ずつ繰り出すことができる。また、第1のプッシャプレート12にも、分離繰出機構3の繰出ローラが対向する位置に切欠を形成しており、第1のプッシャプレート12を受けプレート11に当接する位置に移動させたとき、分離繰出機構3の繰出ローラは受けプレート11、および第1のプッシャプレート12の切欠を介して第2のプッシャプレート13側に突出する。したがって、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間に収納されている紙幣は、この繰出ローラに当接する。分離繰出機構3は、第2のプッシャプレート13に押し下げられて分離繰出機構3の繰出ローラ3に当接している紙幣を1枚ずつ繰り出すことができる。
【0030】
このように、分離繰出機構3は受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の空間に収納されている紙幣を繰り出すことができ、分離繰出/スタック機構5は第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の空間に収納されている紙幣を繰り出すことができる。
【0031】
また、図1に示す6は紙幣毎に受入可能な紙幣であるかどうかを鑑別する鑑別部であり、7a〜7cは金種毎に設けた紙幣カートリッジであり、8は取り忘れ紙幣等を回収する回収カートリッジである。受入可能な紙幣とは、真券であり、且つ装置本体で取り扱っている金種の紙幣である。例えば、鑑別部6は真券であると鑑別しても、取り扱っていない金種の紙幣であれば受入可能な紙幣でないと鑑別する。受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間(この発明で言う第1の紙幣収納空間)は、入金取引時における紙幣の投入空間として使用される。第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間(この発明で言う第2の紙幣収納空間)は、入金取引時におけるリジェクト紙幣(鑑別部6で受付可能な紙幣でないと鑑別され紙幣)の収納空間として使用される。さらに、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間は、入金取引時に受入紙幣(鑑別部6で受付可能な紙幣であると鑑別された紙幣)を一時的に保留する一時保留空間、および出金取引時に出金紙幣(紙幣カートリッジ7a〜7cから繰り出した紙幣)を収納する収納空間として使用される。紙幣処理装置1は、第1〜第3のプッシャプレート12〜14を移動し、これらのプッシャプレート12〜14の位置を調整することで、これらの紙幣収納空間のサイズ(対向する2枚のプレート間の距離)や、位置を調整することができる。
【0032】
紙幣処理装置1には、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間から繰り出した紙幣を鑑別部6を経由して、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間、または第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間に搬送したり、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間から繰り出した紙幣を鑑別部6を経由して紙幣カートリッジ7a〜7cや回収カートリッジ8に搬送したり、さらには紙幣カートリッジ7a〜7cから繰り出した紙幣を鑑別部6経由して第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間に搬送する紙幣搬送路が形成されている。この紙幣搬送路には、搬送している紙幣の送り先に応じて、紙幣の搬送経路を切り替えるフラッパが設けられている。この紙幣搬送路の構成については、公知であるのでここでは説明を省略する。
【0033】
図2は、受けプレート、および第1〜第3のプッシャプレートの取り付け状態を示す概略図である。この図2では、分離繰出機構3、スタック機構4、および分離繰出/スタック機構5については図示を省略している。図2は、第1〜第3のプッシャプレートが初期位置にあるときを示している。受けプレート11は、一方の端部が入出金口2の下端の辺に沿うように立設している。この受けプレート11は、上述したように固定されており、移動しない。第1のプッシャプレート12は、受けプレート11に当接する位置と一方の端部が略入出金口2の上端の辺に沿う位置との間で移動自在に取り付けられている。第1のプッシャプレート12は、第1のアクチュエータ21により、受けプレート11に対して接離する方向に移動される。受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間の幅は、第1のプッシャプレート12が初期位置にあるときが最大であり、入出金口2の幅と略同じであり、図2に示すように第1のプッシャプレート12が初期位置にあるとき、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間が入出金口2に対向する。反対に、第1のプッシャプレート12が受けプレート11に当接する位置にあるときが最小であり、その幅が略0である。
【0034】
第2のプッシャプレート13は、第1のバネ22を介して駆動プレート23に連結されている。駆動プレート23は、第2のアクチュエータ24により上下方向(受けプレート11に対して接離する方向)に移動される。第2のプッシャプレート13は、この駆動プレート23を第1のプッシャプレート12側に移動させることにより、第1のプッシャプレート12側に移動できる。第2のプッシャプレート13は第1のプッシャプレート12に当接する位置より下方に移動することはない。図3に示すように、第1のプッシャプレート12が受けプレート11に当接する位置にあり、且つ第2のプッシャプレート13が初期位置にあるとき、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間が入出金口2に対向している。
【0035】
さらに、第3のプッシャプレート14は、第2のバネ25により第2のプッシャプレート13から離れる方向に付勢されている。第3のプッシャプレート14は、長穴26aを形成した連結プレート26により第2のプッシャプレート13に連結している。具体的には、図2に示すように、第3のプッシャプレート14の側面に連結プレート26を取り付け、第2のプッシャプレート13の側面に設けた凸部27を連結プレート26の長穴に挿入することで、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14とを連結している。第3のプッシャプレート14は図2に示す位置が最も上方に移動している状態であり、この状態であるとき図示していないストッパに当接しており、これより上方に移動することはない。このとき、凸部27は長穴26aの下側の端部に当接している。
【0036】
第2のプッシャプレート13は、図4に示すように、図示していないストッパに当接して停止している第3のプッシャプレート14に当接する位置まで上方に移動できる。紙幣処理装置1は、第2のプッシャプレート13を第3のプッシャプレート14側に押し上げることで、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間に収納されている紙幣を分離繰出/スタック機構5の繰出ローラに押圧する。また、第2のプッシャプレート13の側面に設けた凸部27が連結プレート26の長穴26aの下端に当接している状態において、さらに第2のアクチュエータ24により駆動プレート23を下方に移動すると、第2のプッシャプレート13の下方への移動にともなって、第3のプッシャプレート14が下方に移動する。図5に示すように、第1のプッシャプレート12が受けプレート11に当接する位置にあり、且つ第2のプッシャプレート13が第1のプッシャプレート12に当接する位置にあるとき、第3のプッシャプレート14の位置は一方の端部が入出金口2の上端の辺に沿う位置である。このとき、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間が入出金口2に対向する。
【0037】
このように、第1のアクチュエータ21、および第2のアクチュエータ24の2つの駆動部により、第1〜第3のプッシャプレート12〜14を移動し、これらのプッシャプレート12〜14の位置を調整することで、3つの紙幣収納空間のいずれかを入出金口2に対向させることができる。
【0038】
次に、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間に対して、個別に紙幣が収納されているかどうかを検知する構成について説明する。図6は、この発明の収納紙幣検知手段、および押圧検知手段にかかる構成を示す図である。受けプレート11については図示を省略している。図6において、3aは分離繰出機構部3の繰出ローラであり、3bは分離繰出機構部3のフィードローラである。繰出ローラ3aの回転軸は、回動自在に取り付けられたピックレバー3cに取り付けられている。ピックレバー3cには、バネ3dが連結されている。ピックレバー3cは、このバネ3dの付勢力により繰出ローラ3aを第1のプッシャプレート12側に押し上げる方向に回動する。
【0039】
また、繰出ローラ3aの回転軸の上方には、紙幣の繰出方向に延びる空検知レバー31が回動自在に取り付けられている。この空検知レバー31には、その先端(紙幣の繰出方向側の先端)を第1のプッシャプレート12側に押し上げる方向に回動させる付勢力を発生するバネ32が連結されている。また、空検知センサ33は空検知レバー31の回動を検出するセンサである。空検知センサ33は、発光部と受光部とを対向させて配置したフォトセンサである。空検知レバー31の先端がバネ32の付勢力に抗して押し下げられていないとき、空検知センサ33の発光部と受光部との間に空検知レバー31の一部が位置する。また、空検知レバー31の先端がバネ32の付勢力に抗して押し下げられているとき、空検知センサ33の発光部と受光部との間から空検知レバー31の一部が退避する。したがって、空検知センサ33は空検知レバー31の先端がバネ32の付勢力に抗して押し下げられたときにオンし、押し下げられていないときにオフする。
【0040】
第1のプッシャプレート12は、図7に示すように繰出ローラ3aおよび空検知レバー31が対向する位置にスリット12aを形成しているので、受けプレート11側に移動させたときに受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間に紙幣が収納されていなければ、繰出ローラ3aおよび空検知レバー31がスリット12aを介して第2のプッシャプレート13側に突出する形状である。言い換えれば、繰出ローラ3aおよび空検知レバー31は、第1のプッシャプレート12を受けプレート11側に移動させたとき、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間に紙幣が無ければ受けプレート11側に押圧されない。
【0041】
また、第1のプッシャプレート12には、左右両側に2つずつ開口部12b、12cが設けられている。受けプレート11の下方には、発光部41、および受光部42が配置されている。発光部41は、照射した光が一方の開口部12bを介して第2のプッシャプレート13に照射される位置に配置されている。第2のプッシャプレート13は、図8に示すように、第1のプッシャプレート12に対向する側の面に、発光部41から照射された光を折り曲げ、第1のプッシャプレート12に形成されている他方の開口部12cを介して受光部42に照射するプリズム13aを左右両側に設けている。したがって、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間に収納されている紙幣が無ければ、受光部42において発光部41から照射されている光が受光される。さらに、第2のプッシャプレート13は、図8に示すように空検知レバー31が対向する位置に溝13bを形成しているので、受けプレート11側に移動させたとき、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間に収納されている紙幣が無ければ、空検知レバー31が溝13bに入り込む形状である。言い換えれば、空検知レバー31は、第2のプッシャプレート13を受けプレート11側に移動させたとき、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間、および第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間に収納されいる紙幣が無ければ受けプレート11側に押圧されない。
【0042】
なお、図示していないが、受けプレート11は第1のプッシャプレート12と略同じ形状である。
【0043】
以下、この実施形態の紙幣処理装置1における入金取引時の動作について説明する。
【0044】
なお、紙幣処理装置1における通帳やカードに対する処理については公知であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
図9、10は、この実施形態の紙幣処理装置における入金取引時の処理を示すフローチャートである。紙幣処理装置1は、入金取引が選択されると、この処理を開始する。紙幣処理装置1は、第1〜第3のプッシャプレート12〜14を初期位置に移動する(s1)。上述したように、第1〜第3のプッシャプレート12〜14が初期位置にあるとき、受けプレート11と第1のプッシャプレート12との間の紙幣収納空間(以下、紙幣投入空間と言う。)が入出金口2に対向している。紙幣処理装置1は、シャッタ2aを開し(s2)、紙幣投入空間に紙幣が投入されるのを待つ(s3)。紙幣処理装置1は、紙幣投入空間に紙幣が投入されると、シャッタ2aを閉する(s4)。紙幣処理装置1は、発光部41から照射している光が受光部42において受光されなくなったときに、紙幣投入空間に紙幣が投入された判定する。紙幣処理装置1は、第1のプッシャプレート12を受けプレート11側に移動する(s5)。これにより、紙幣投入空間に収納された紙幣が、分離繰出機構3の繰出ローラ3a、および空検知レバー31を押圧する。これにより、空検知レバー31が回動し、空検知センサ33がオンする(図11参照)。また、このときピックレバー3cも回動しており、紙幣投入空間に投入されている紙幣は分離繰出機構3の繰出ローラ3aに適当な押圧力で押圧されている。
【0046】
紙幣処理装置1は、分離繰出機構3の繰出ローラ3aを回転させて、紙幣投入空間に投入されている紙幣を1枚ずつ繰り出し(s6)、繰り出した紙幣を鑑別部6に搬送する。そして、鑑別部6で、受入可能紙幣であるかどうかの鑑別を行う(s7)。紙幣処理装置1は、鑑別部6において受入可能紙幣であると鑑別した紙幣を第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14との間の紙幣収納空間(以下、一時保留空間と言う。)に搬送し、収納する(s8、s9)。反対に、鑑別部6で受入可能紙幣でないと鑑別された紙幣(リジェクト紙幣)については、第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13との間の紙幣収納空間(以下、リジェクト紙幣収納空間と言う。)に搬送し、収納する(s8、s10)。紙幣処理装置1は、s6〜s9の処理を、紙幣投入空間に投入された全ての紙幣について繰り返し行う(s11)。言い換えれば、紙幣処理装置1は紙幣投入空間に投入された全ての紙幣について受入可能紙幣であるかどうかの鑑別を行う。このとき、第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14とは初期位置にあるので、分離繰出/スタック機構5の送りローラにより一時保留空間内に送られた紙幣(受入紙幣)は第2のプッシャプレート13の上面に積み重なる。また、第1のプッシャプレート12は紙幣投入空間に投入された紙幣を繰り出すために受けプレート11側に移動しているので、スタック機構4の送りローラによりリジェクト紙幣収納空間内に送られた紙幣(リジェクト紙幣)は第1のプッシャプレート12の上面に積み重なる。
【0047】
分離繰出機構3の繰出ローラ3a、および空検知レバー31は、第1のプッシャプレート12のスリット12aに対向しているので、紙幣投入空間に投入された紙幣が全て繰り出されると、バネ3d、32の付勢力により、このスリット12aを介して第2のプッシャプレート13側に突出する。これにより、空検知センサ33がオフする。紙幣処理装置1は、空検知センサ33がオンからオフに変化すると、紙幣投入空間に投入された紙幣を全て繰り出したと判断する。言い換えれば、紙幣処理装置1は空検知センサ33がオンからオフに変化すると、紙幣投入空間に収納されている紙幣がないと判断する。
【0048】
紙幣処理装置1は、紙幣投入空間に投入された全ての紙幣について鑑別を完了し、この鑑別結果に基づいて一時保留空間、またはリジェクト紙幣収納空間に収納すると、リジェクト紙幣収納空間にリジェクト紙幣が収納されているかどうかを判定する(s12)。s12では、発光部41から照射している光が受光部42において受光されていればリジェクト紙幣収納空間にリジェクト紙幣が収納されていないと判定し、反対に受光部42において受光されていなければリジェクト紙幣収納空間にリジェクト紙幣が収納されていると判定する。紙幣処理装置1は、リジェクト紙幣収納空間にリジェクト紙幣が収納されていると判定すると、シャッタ2aを開する(s13)。このとき、第1のプッシャプレート12は受けプレート11に当接しており、その一方の端部が略入出金口2の下端の辺に沿う位置にあり、また第2のプッシャプレート13は一方の端部が略入出金口2の上端の辺に沿う位置にある。したがって、s12でシャッタ2aが開されたことにより、利用者は入出金口2に対向しているリジェクト紙幣収納空間に収納されている紙幣を取り出すことができる。言い換えれば、紙幣処理装置1は、シャッタ2aを開することにより、リジェクト紙幣を利用者に返却することができる。
【0049】
紙幣処理装置1は、リジェクト紙幣収納空間に収納しているリジェクト紙幣が利用者により取り出されると(s14)、シャッタ2aを閉する(s15)。s14では、発光部41から照射している光が受光部42において受光されたときに、リジェクト紙幣が利用者により取り出されたと判定する。また、紙幣処理装置1は、s11でリジェクト紙幣収納空間にリジェクト紙幣が収納されていないと判定した場合、またはs15でシャッタ2aを閉すると、投入金額の確認、追加投入の要求、または入金取引の中止の要求のいずれかにかかる入力が行われるのを待つ(s16〜s18)。紙幣処理装置1は、紙幣の追加投入にかかる入力が行われると、第1のプッシャプレート12を初期位置に戻し(s19)、s2に戻って上記処理を繰り返す。このとき、第2のプッシャプレート13、および第3のプッシャプレート14も初期位置にある。
【0050】
また、紙幣処理装置1は、投入金額の確認にかかる入力が行われると、第2のプッシャプレート13を第3のプッシャプレート14側に移動し、一時保留空間に収納されている受入紙幣を分離繰出/スタック機構5の繰出ローラ5に押圧する(s20)。このように、一時保留空間に収納されている紙幣を第2のプッシャプレート12で分離繰出/スタック機構5の繰出ローラに適当な押圧力で押圧することができる。紙幣処理装置1は、分離繰出/スタック機構5の繰出ローラを回転させて、一時保留空間に収納している受入紙幣を1枚ずつ繰り出し(s21)、繰り出した紙幣を鑑別部6に搬送し、再度真券であるかどうかや金種の鑑別を行う(s22)。紙幣処理装置1は、鑑別部6における再鑑別で受入可能紙幣であると鑑別した紙幣については、その金種に応じた紙幣カートリッジ7a〜7cへ搬送し、収納する(s23、s24)。また、この紙幣の再鑑別で受入可能紙幣でないと鑑別された紙幣については、回収カートリッジ8へ搬送し、収納する(s23、s25)。紙幣処理装置1は、一時保留空間に収納している全ての受入紙幣を紙幣カートリッジ7a〜7cまたは回収カートリッジ8に収納するまで、s21〜s25の処理を繰り返す(s26)。紙幣処理装置1は、、一時保留空間に収納している全ての受入紙幣を紙幣カートリッジ7a〜7cまたは回収カートリッジ8に収納すると、今回の入金金額に応じた入金処理を行い(s27)、本処理を終了する。
【0051】
また、紙幣処理装置1は、入金取引の中止にかかる入力があると、第2のアクチュエータ24により第2のプッシャプレート13を受けプレート11に移動する(s28)。このとき、第1のプッシャプレート12は受けプレート11に当接している。したがって、第2のプッシャプレート13は、受けプレート11に当接している第1のプッシャプレートに当接する位置まで移動させることができる。紙幣処理装置1は、第2のプッシャプレート13を受けプレート11に当接している第1のプッシャプレート12に当接する位置まで移動する。これにより、この第2のプッシャプレート13に連結プレート26で連結されている第3のプッシャプレート14は、その一方の端部が略入出金口2の上端の辺に沿う位置に移動し、一時保留空間が入出金口2に対向する。その後、紙幣処理装置1は、シャッタ2aを開し(s29)、一時保留空間に収納されている紙幣が利用者により取り出されると(s30)、シャッタ2aを閉し(s31)、本処理を終了する。この場合には、入金処理は行われない。
【0052】
また、紙幣処理装置1は、この入金取引後に、紙幣投入空間、リジェクト紙幣収納空間、または一時保留空間のいずれかに、利用者が取り忘れた紙幣が残っていると、その紙幣を繰り出して回収カートリッジ8に収納する。紙幣投入空間に収納されている紙幣は、第1のプッシャプレート12で分離繰出機構3の繰出ローラに押圧し、繰り出す。また、一時保留空間に収納されている紙幣は、第2のプッシャプレート13で分離繰出/スタック機構5の繰出ローラに押圧し、繰り出す。さらに、リジェクト紙幣収納空間に収納されている紙幣は、図12に示すように、第1のアクチュエータ21により第1のプッシャプレート12を受けプレート11に当接する位置まで移動し、さらに第2のアクチュエータ24により第2のプッシャプレート13を受けプレート11に当接している第1のプッシャプレート12側に移動させることで、リジェクト紙幣収納空間に収納されている紙幣を分離繰出機構3の繰出ローラに押圧し、繰り出す。このとき、リジェクト紙幣収納空間に収納されている紙幣により空検知レバー31が押圧されて回動するので、空検知センサ33がオンする。また、空検知レバー31は、第2のプッシャプレート13の溝13bに対向しているので、リジェクト紙幣収納空間に収納されている紙幣が全て繰り出されると、バネ32の付勢力により、この溝13bに入り込む。これにより、空検知センサ33がオフする。紙幣処理装置1は、空検知センサ33がオンからオフに変化し、且つ発光部41から照射している光が受光部42において受光されていれば、リジェクト紙幣収納空間に収納されていた紙幣を全て繰り出したと判定する。
【0053】
このように、この実施形態の紙幣処理装置1は、受けプレート11と第1〜第3のプッシャプレート12〜14との4枚のプレートで分割した3つの空間のいずれかを、入出金口2に対向させることができる。具体的に言うと、紙幣の投入時には受けプレート11と第1のプッシャプレート12とで区切られた紙幣投入空間を入出金口2に対向させ、またリジェクト紙幣の返却時には第1のプッシャプレート12と第2のプッシャプレート13とで区切られたリジェクト紙幣収納空間を入出金口2に対向させ、さらに入金取引が途中で中止されたときには、受入紙幣を収納している第2のプッシャプレート13と第3のプッシャプレート14とで区切られた一時保留空間を入出金口2に対向させることができる。したがって、入金紙幣の投入、リジェクト紙幣の返却、入金取引が途中で中止されたときの受入紙幣の返却が、第1〜第3のプッシャプレート12〜14の移動により行え、装置本体を小型にできる。また、2つのアクチュエータ(第1のアクチュエータ21、第2のアクチュエータ24)で3枚のプッシャプレート(第1〜第3のプッシャプレート12〜14)を移動する構成であるので、装置本体を一層小型にできる。さらに、紙幣処理装置1は、発光部41と受光部42からなるセンサと、空検知センサ33とを含む簡単な構成で、紙幣投入空間およびリジェクト紙幣収納空間に対して個別に紙幣が収納されているかどうかを検知することができ、装置本体のコストアップが十分に抑えられ、安価にできる。
【0054】
次に、出金取引時の動作について説明する。図13は、この実施形態の紙幣処理装置における出金取引時の処理を示すフローチャートである。紙幣処理装置1は、出金取引が選択されると、この処理を開始する。紙幣処理装置1は、第1〜第3のプッシャプレート12〜14を初期位置に移動し(s41)、出金金額の入力を受け付ける(s42)。紙幣処理装置1は、入力された出金金額に基づいて、金種毎に紙幣の放出枚数を決定する(s43)。紙幣処理装置1は、紙幣カートリッジ7a〜7cから金種毎にs43で決定した放出枚数の紙幣を繰り出し、鑑別部6に搬送する。鑑別部6において、真券であるかどうかや金種の鑑別を行う(s45)。紙幣処理装置1は、s45で真券であると鑑別された紙幣を一時保留空間に搬送し、収納する(s46、s47)。反対に真券であることが確認されなかった紙幣については、回収カートリッジ8に搬送し、収納する(s46、s48)。
【0055】
紙幣処理装置1は、s42で入力された出金金額に相当する紙幣を、一時保留空間に収納すると、第1のアクチュエータ21により第1のプッシャプレート12を受けプレート1に当接する位置まで移動する(s50)。さらに、紙幣処理装置1は、第2のアクチュエータ24により第2のプッシャプレート13を受けプレート11に当接している第1のプッシャプレート12に当接する位置まで移動する(s51)。これにより、入出金口2に一時保留空間が対向する。紙幣処理装置1は、この状態でシャッタ2aを開し(s52)、一時保留空間に収納されている紙幣が利用者により取り出されると(s53)、シャッタ2aを閉する(s54)。また、紙幣処理装置1は今回の出金取引における出金金額に応じた出金処理を行って(s55)、本処理を終了する。
【0056】
なお、紙幣処理装置1は、利用者が取り忘れた紙幣が一時保留空間に残っていると、その紙幣を繰り出して回収カートリッジ8に収納する。
【0057】
このように、出金取引においても何らの問題もなく、出金紙幣を一時保留部に収納し、利用者に出金することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施形態である紙幣処理装置の主要部の構成を示す図である。
【図2】受けプレート、および第1〜第3のプッシャプレートの位置を示す図である。
【図3】受けプレート、および第1〜第3のプッシャプレートの位置を示す図である。
【図4】受けプレート、および第1〜第3のプッシャプレートの位置を示す図である。
【図5】受けプレート、および第1〜第3のプッシャプレートの位置を示す図である。
【図6】この発明の収納紙幣検知手段、および押圧検知手段にかかる構成を説明する図である。
【図7】この実施形態の紙幣処理装置における第1のプッシャプレートを示す図である。
【図8】この実施形態の紙幣処理装置における第2のプッシャプレートを示す図である。
【図9】この実施形態の紙幣処理装置における入金取引時の処理を示すフローチャートである。
【図10】この実施形態の紙幣処理装置における入金取引時の処理を示すフローチャートである。
【図11】この発明の収納紙幣検知手段、および押圧検知手段にかかる構成を説明する図である。
【図12】この発明の収納紙幣検知手段、および押圧検知手段にかかる構成を説明する図である。
【図13】この実施形態の紙幣処理装置における出金取引時の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1−紙幣処理装置
2−入出金口
2a−シャッタ
3a−繰出ローラ
11−受けプレート
12−第1のプレート
12a−スリット
12b、12c−開口部
13−第2のプレート
13a−プリズム
13b−溝
14−第3のプレート
21−第1のアクチュエータ
23−駆動プレート
24−第2のアクチュエータ
26−連結プレート
26a−長穴
27−凸部
31−空検知レバー
32−バネ
33−空検知センサ
41−発光部
42−受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納されている紙幣を繰り出す繰出ローラに対して接離する方向に移動自在に取り付けた2つのプッシャプレートにより、前記繰出ローラとこの繰出ローラに近い側の一方のプッシャプレートとで区切られた第1の紙幣収納空間、およびこれら2つのプッシャプレートで区切られた第2の紙幣収納空間を有する紙幣収納手段と、
前記一方のプッシャプレートを前記繰出ローラに対して接離する方向に移動する第1の駆動手段と、
前記他方のプッシャプレートを前記繰出ローラに対して接離する方向に移動する第2の駆動手段と、
前記繰出ローラ側から、前記一方のプッシャプレートを介して他方のプッシャプレートに光を照射し、その光の反射光を検知する光センサを有し、この光センサが他方のプッシャプレートに照射している光の反射光を検知しているかどうかにより、前記紙幣収納手段に紙幣が収納されているかどうかを検知する収納紙幣検知手段と、
前記第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを繰出ローラ側に移動し、前記繰出ローラに押圧される紙幣の有無を検知する押圧検知手段と、
前記収納紙幣検知手段により前記紙幣収納空間に紙幣が収納されていることが検知されると、前記前記押圧検知手段が第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを移動し、前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しているとき、少なくとも前記一方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定し、反対に前記押圧検知手段が前記繰出ローラに押圧される紙幣を検知しなかったときに、前記他方の紙幣収納空間に紙幣が収納されていると判定する紙幣収納空間判定手段と、を備えた紙幣処理装置。
【請求項2】
前記押圧検知手段は、前記第1の駆動手段または前記第2の駆動手段により前記繰出ローラに紙幣が押圧されたときに回動する検知レバーと、この検知レバーの回動を検知する回動検知センサと、を有する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記収納紙幣検知手段は、前記繰出ローラ側に配置され、前記一方のプッシャプレートに形成した第1の開口部を介して他方のプッシャプレートに光を照射する発光部と、
前記他方のプッシャプレートに設けられ、前記発光部から照射された光を折り曲げ、前記一方のプッシャプレートに形成した第2の開口部を介して前記繰出ローラ側に送るプリズムと、
前記繰出ローラ側に配置され、前記プリズムにより送られてきた光を受光する受光部と、を有する請求項1または2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
入金取引時に、前記第1の駆動手段および第2駆動手段により前記2つのプッシャプレートを移動し、前記第1の紙幣収納空間を紙幣の入出金口に対向させ、この第1の紙幣収納空間に対する入金紙幣の投入を受け付ける入金紙幣受付手段と、
前記第1の駆動手段により前記一方のプッシャプレートを移動し、前記入金紙幣受付手段により受け付け、前記第1の紙幣収納空間に収納している入金紙幣を前記繰出ローラに押圧している状態で、この繰出ローラを回転させて前記第1の紙幣収納空間に収納している入金紙幣を1枚ずつ繰り出す入金紙幣繰出手段と、
前記入金紙幣繰出手段が繰り出した入金紙幣毎に受入可能紙幣であるかどうかを鑑別する鑑別手段と、
前記鑑別手段で受入可能紙幣でないと鑑別された入金紙幣をリジェクト紙幣として前記第2の紙幣収納空間へ搬送し収納するリジェクト手段と、を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記第1の紙幣収納空間に収納している全ての入金紙幣を前記入金紙幣繰出手段により繰り出した後、前記鑑別手段で受入可能紙幣でないと鑑別された前記リジェクト紙幣が前記第2の紙幣収納空間に収納されていれば、この第2の紙幣収納空間を紙幣の入出金口に対向させ、収納しているリジェクト紙幣の取り出しを許可する請求項4に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−4039(P2006−4039A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177838(P2004−177838)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】