説明

紙幣収納装置

【課題】紙幣が収納室からまっすぐに搬送されない場合でも、紙幣の種類を正確に判断して、正常な出金動作あるいはリジェクト処理を可能とする。
【解決手段】紙幣を収納する収納室300aと、その収納室300aの紙幣搬送口に、紙幣の幅方向に配置される少なくとも2個のセンサー307と、各センサー307から送出される検知信号を受け、その検知信号を受けた時間間隔から各センサーを通過した通過距離を算出すると共に、両センサーから検知信号を受け始めた時点の時間差若しくは検知信号を受け終えた時点の時間差から紙幣の搬送角度を算出し、その搬送角度と上記通過距離とから正しい紙幣長を算出する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を要求に応じて収納室から搬出する機能を有する紙幣収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、街頭、金融機関あるいは遊戯場に設置されている両替機や自動販売機には、紙幣を収納しまたは払い出す紙幣収納装置が設けられている。両替機や自動販売機は、限られたスペ−スに設置される必要があるため、できるだけ小型のものが要求される。一方、両替機や自動販売機は、効率化および省力化を目的に設置されるため、紙幣の入金および出金の際にトラブルが少ない、いわゆる信頼性の高い装置であることが要求される。
【0003】
紙幣の入金あるいは出金時に起こるトラブルは種々あるが、例えば、紙幣の出金時に紙幣が重なったまま搬出される、いわゆる重送という現象がある。これは、紙幣の収納室が紙幣を積載して収納するタイプが多いことから起こりやすいトラブルである。重送を防止する紙幣収納装置として、例えば、特許文献1に開示される装置(以後、「公知装置」という)が知られている。
【0004】
図69に、公知装置の収納室およびその周辺の構造を示す。この装置は、千円札の入出金可能な千円金庫901を備えている。この千円金庫901の内部には、上部に配置された低額紙幣搬送ベルト902と、紙幣を載置したまま上下動可能であって弾性体によって上方に付勢されているプレ−ト903と、低額紙幣スタック板904と、紙幣の上から搬出を防止する分離爪905等が備えられている。また、千円金庫901の外にある紙幣経路には、紙幣の重送を検知可能なセンサー906が備えられている。
【0005】
千円金庫901から紙幣を搬出する際には、低額紙幣スタック板904が低額紙幣搬送ベルト902の下面よりも上方に移動して、プレート903上の紙幣を低額紙幣搬送ベルト902の下面に接触せしめる。次に、低額紙幣搬送ベルト902を搬出方向に回転させて、紙幣を千円金庫901から搬出する。この際、一枚目の紙幣の一部が千円金庫901から外方向に出たところで、図示されないセンサーによって、分離爪905が下方に向けて回動して、二枚目以下の紙幣の搬出を防止するようにしている。さらに、センサー906によって、千円金庫901から搬出された紙幣の長さを測定しているので、制御部が規定の長さ以上の検知信号を受けた場合には、公知装置は、重送と判断してリジェクト処理するようにしている。
【特許文献1】特開平08−153240号公報(図1〜図3、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の公知装置は、次のような問題を有している。すなわち、分離爪905を二枚目の紙幣に接触させて重送を防止しようとしても、低額紙幣搬送ベルト902の搬送力が大きい場合若しくは紙幣同士が湿っていて密着している場合には、分離爪905の制止を振り切って、重送が生じる危険性がある。この場合、分離爪905を二枚目の紙幣に押しつける力を大きくする方法も考えられるが、紙幣が破ける危険性が高くなる。
【0007】
ところで、複数の券種を入出金処理可能な紙幣収納装置の場合、所定の収納室に他種の紙幣が混入される場合がある。これは、たとえば、装置の管理者が誤って別の紙幣である異券を収納したり、紙幣の識別あるいは収納動作にミスが起こった場合に起こると考えられる。通常、上述の公知装置のように、収納室の外に紙幣長を測定可能なセンサーを備えているので、異券の搬出を容易に検知できる。しかし、紙幣が少し曲がって搬出された場合には、正規の紙幣と異なる紙幣が搬出されても、正規の紙幣と判断される場合や、逆に、正規の紙幣が搬出されても、異券と判断される場合もある。紙幣の長さは、千円札から高額紙幣になるにつれ、5mmづつしか長くならない。このため、曲がって搬送された場合には、別の紙幣の紙幣長に近くなり、誤った判別が行われ、正常な出金動作ができない危険性がある。
【0008】
本発明は、このような出金時の問題を解決すべくなされたものであり、紙幣が収納室からまっすぐに搬送されない場合でも、紙幣の種類を正確に判断して、正常な出金動作あるいはリジェクト処理可能な紙幣収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、紙幣を収納する収納室と、その収納室の紙幣搬送口に紙幣の幅方向に配置される少なくとも2個のセンサーと、各センサーから送出される検知信号を受け、その検知信号を受けた時間間隔から各センサーを通過した通過距離を算出すると共に、両センサーから検知信号を受け始めた時点の時間差若しくは検知信号を受け終えた時点の時間差から紙幣の搬送角度を算出し、その搬送角度と通過距離とから正しい紙幣長を算出する制御部とを備えるようにしている。
【0010】
このように構成した場合には、紙幣の搬送方向に対して傾いた状態で紙幣が搬送されても、正確な紙幣長を測定できる。したがって、正規の紙幣を異券と判断することによって無駄なリジェクト処理を行うことがなく、また、異券を正規の紙幣と判断して出金してしまうトラブルも解消できる。
【0011】
また、制御部は、少なくとも正しい紙幣長のデータを利用して紙幣の種類を識別すると共に、収納室から搬出される紙幣が出金すべき正規の紙幣と異なる異券であると判断した際、出金せずにその異券のみを保留するリジェクト処理を行うようにするのが好ましい。
【0012】
このように構成した場合には、異券を出金するトラブルを防止できると共に、正規の紙幣ごと多くの紙幣をリジェクト処理せずに済み、装置の小型化を図ることができる。
【0013】
また、センサーを4個備え、制御部は、その内の任意に選んだ2個のセンサーからの検知信号を基に算出した第一の正しい紙幣長のデータと、残りの2個のセンサーからの検知信号を基に算出した第二の正しい紙幣長のデータとを利用して、第三の正しい紙幣長を算出するようにするのが好ましい。
【0014】
このように構成した場合には、紙幣長の測定に正確を期すことができると共に、紙幣の識別の精度を高めることができる。
【0015】
また、センサーは、発光素子と受光素子とから構成される透過型光センサーとするのが好ましい。
【0016】
このように構成した場合には、他のセンサーを用いる場合と比べて紙幣長の測定に正確を期すことができる。
【0017】
また、センサーの発光素子および受光素子の内少なくともいずれか一方は、センサーカバーを備えるようにするのが好ましい。
【0018】
このように構成した場合には、センサーカバーを備えるようにしているため、センサーが汚れて測定値に誤差を生じる危険性が低くなる。さらに、発光素子と受光素子の両センサーカバー同士の隙間を調整することによって、紙幣の搬送によるセルフクリーニングが可能となる。したがって、センサーのクリーニングや点検等のメンテナンスの労を軽減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、紙幣の種類を正確に判断して、正常な出金動作あるいはリジェクト処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
(1)装置全体の構造について
【0022】
図1は、本発明に係る紙幣収納装置全体の構成を表したブロック図である。
【0023】
この紙幣収納装置は、最上部に紙幣識別部100、側面に紙幣搬送部200、最下部に紙幣収納部300、そして紙幣識別部100と紙幣収納部300との間にイジェクト・リジェクト部400を備えた構造となっている。また、図1に示されていないが、紙幣収納装置を制御する制御部500も備えられている(制御部500の詳細については、後述する)。
【0024】
紙幣識別部100は、紙幣挿入口101から入金された紙幣1の真偽および種類を識別して、紙幣搬送部200に紙幣1を搬送する部分である。紙幣識別部100は、各種のセンサ−によって紙幣を検知する検知部100aと検知した紙幣を収納準備が完了するまで一時的に待機させる一時待機部100bとから構成されている。
【0025】
紙幣搬送部200は、装置の下部に設けられた図示されていないステッピングモ−タの回転による搬送ベルトの駆動によって紙幣1を紙幣識別部100から紙幣収納部300へ搬送する入金動作と、紙幣1を紙幣収納部300からイジェクト・リジェクト部400へ搬送する出金動作を行う部分である。
【0026】
紙幣収納部300は、3種の紙幣1を個別に収納できる収納室(以後、収納室を「スタッカ−」という)を上下に積載した構成となっている。具体的には、紙幣収納部300は、上から千円札用スタッカ−300a、5千円札用スタッカ−300bおよび1万円札用スタッカ−300cとから構成されている。千円札用スタッカ−300aは、紙幣の出入りが最も多いため、一番大きな容量となっている。
【0027】
イジェクト・リジェクト部400は、紙幣収納部300から紙幣搬送部200を経由し紙幣1を受け入れると共に紙幣出金口401から紙幣1を取り出せるようにする部分である。イジェクト・リジェクト部400は、真券を出金する出金動作を行うイジェクト部400aと、出金紙幣中に存在する異券、重送紙幣および偽札を保存するリジェクト部400bとから構成されている。イジェクト部400aは、搬送された紙幣1を出金すべき枚数となるまで保留してから一括して出金動作を行う部分である。また、リジェクト部400bは、出金動作時に発見された異券等を正規の紙幣1と区別して保存して出金を行わないようにする部分である。
【0028】
制御部500は、紙幣識別部100、イジェクト・リジェクト部400および紙幣収納部300の裏側(図1の紙面に対して裏)に設けられている。
【0029】
図2は、制御部500の構成を示したブロック図である。制御部500は、紙幣識別部100、紙幣搬送部200、紙幣収納部300およびイジェクト・リジェクト部400を電子制御する部分である。制御部500は、中央演算処理装置(CPU)501、識別部MPU501a、読み出し専用記憶装置(ROM)502、読み出しと書き込みが可能な記憶装置(RAM(1)503、RAM(2)504)、表示部505、テストスイッチ506とから構成されている。識別部MPU501aは、紙幣識別部100における紙幣の識別に必要な紙幣デ−タを記録している部分であり、センサ−で検知されたデータと照合する。
【0030】
また、紙幣収納装置には、電源部507と外部通信部508が設けられている。外部通信部508によって、紙幣収納装置と当該装置を組み込んだ紙幣両替機や自動販売機等の上位機制御装置509との間で、信号のやりとりが可能となっている。また、必要によっては、上位機制御装置509を他のホストコンピュ−タと通信可能に構成することも可能である。この紙幣収納装置内には、多くのセンサ−やモ−タがあり(共に詳細は後述する)、制御部500を介して紙幣1の搬送等の動作を精密に制御できる構造となっている。
【0031】
また、この紙幣収納装置の表側(図1の紙面に対して表側)には、後述するカギ付きの紙幣格納部ドア600が設けられており(詳細は後述する)、紙幣1の回収や補充あるいは故障時の点検の際に開閉可能となっている。
【0032】
図3は、この実施の形態における紙幣収納装置の全体構造を示した図である。この図に示すように、紙幣挿入口101と紙幣出金口401とが装置の上部に近接して設けられている。そのため、紙幣1の取り忘れを防止することができるとともに、使用者にとって使いやすいものとなっている。
【0033】
また、紙幣収納部300は、上から千円札用スタッカ−300a、5千円札用スタッカ−300b、1万円札用スタッカ−300cの順で積載された構造となっている。すなわち、最も使用頻度の高い紙幣1のスタッカ−が紙幣挿入口101と紙幣出金口401に近い位置に配置されている。したがって、通常の紙幣1の取引きにおいて迅速な入出金動作が可能となっている。なお、各紙幣1の収納位置は、この紙幣収納装置が組み込まれる機器によって適宜その位置を変えることができる。例えば、上部から順に千円、1万円、5千円としたり、1万円、千円、5千円としても良い。
【0034】
(2)紙幣識別部について
【0035】
図4および図5は、それぞれ紙幣識別部100の側面および上面からみた断面図である。紙幣識別部100は、種々のセンサ−によって紙幣1の真偽および種類を検知する検知部100aと真券である場合に紙幣1の収納準備が完了するまで一時的に紙幣1を待機させる一時待機部100bとから構成されている。
【0036】
検知部100aおよび一時待機部100bは、各々蓋となる上部100c,100dが独立して開閉可能な構造となっている。したがって、紙幣1の入金時にトラブルが発生した場合やメンテナンスの際に点検あるいは修理が容易である。紙幣識別部100の入口側には、紙幣1を入金する紙幣挿入口101が設けられている。また、検知部100aの内部には、入口センサ−102、光式識別センサ−103,104、磁気式識別センサ−105、引き抜き防止レバ−センサ−106、終端センサ−107の各センサ−が設けられている。
【0037】
各センサ−102,103,104,105,106,107の構造および機能は、以下のとおりである。すなわち、入口センサ−102は、検知部100aの両端であって、挿入された紙幣1の幅方向の両端部を検知できる位置に各1個づつ設けられている。これによって、幅の狭い紙幣1が挿入されると偽札と判断し、偽札が戻されるようになっている。なお、この入口センサ−102は、識別部搬送モ−タ108および電磁クラッチ109を動作させる信号を送る役割を有している。
【0038】
入口センサ−102は、透過型の光センサ−であり、検知部100aの紙幣挿入経路の上側(検知部上部100c)に設けられた発光素子と、下側となる本体側に設けられた受光素子とから構成されている。入口センサ−102は、紙幣挿入口101から入金された紙幣1を検知する。
【0039】
光式識別センサ−103,104は、紙幣挿入口101からみて入口センサ−102よりさらに内部に設けられている。検知部100aのほぼ中央に1個、その位置から奥の検知部100aの両端に2個の計3個のセンサ−が設けられている。中央に設けられた中央光式識別センサ−103は、赤外線を用いた赤外線センサ−である。また、側部に設けられた側部光式識別センサ−104は、可視光を用いた可視光線センサ−である。
【0040】
いずれの光式識別センサ−103,104も、入口センサ−102と同様の透過型センサ−であり、蓋となる上側100cと本体となる下側に配置された発光素子と受光素子とから構成されている。このように、赤外線と可視光線の2種類の光を用いているのは、次の理由による。波長の異なる光を用いると、波形パタ−ンが異なる。そのため、紙幣1の真偽および種類をダブルチェックできる。したがって、紙幣を正確に識別可能となるからである。
【0041】
磁気式識別センサ−105は、検知部100aの下側であって、装置の上部からみて中央光式識別センサ−103とほぼ水平の位置に2個設けられている。磁気式識別センサ−105は、通過する紙幣1の磁気パタ−ンを読み取るセンサ−である。磁気式識別センサ−105は、センサ−上を通過する紙幣に印刷されている磁性体から磁気パタ−ンを読みとり、紙幣1の真偽および種類を識別している。このように、3個の光式識別センサ−103,104と2個の磁気式センサ−105によって、紙幣1の種類および真偽が正確に識別されている。
【0042】
引き抜き防止レバ−センサ−106は、紙幣1の有無を検知する光遮断型センサ−であり、検知部上部100cに設けられている。紙幣1が引き抜き防止レバ−112に乗ると、引き抜き防止レバ−センサ−106の光を遮断していた引き抜き防止レバ−112は下降し、引き抜き防止レバ−センサ−106を遮断していた位置から外れる。その後、紙幣1の後端が引き抜き防止レバ−112通過すると、該レバ−112が立ち上がり、再度、引き抜き防止レバ−センサ−106を遮断する。これによって、引き抜き防止レバ−センサ−106はオフとなる。このように、引き抜き防止レバ−112が立ち上がることによって、紙幣の抜き取りを防止できるようになっている。
【0043】
終端センサ−107は、透過型の光センサ−であり、紙幣1の後端が終端センサ−107を通過すると、識別部搬送モ−タ108が停止することによって、搬送ベルト113が停止する。したがって、紙幣1は、一時待機部100bに待機することになる。これは、紙幣搬送部200および紙幣収納部300の入金準備が整うまで、紙幣1を搬送しないようにするためである。
【0044】
なお、終端センサ−107は、紙幣1の終端を検知すると、電磁クラッチ109をオフにする。したがって、紙幣1が一時待機部100bに待機している際に、紙幣挿入口101から次の入金が行われても、搬送ベルト114は駆動しない。また、この終端センサ−107は、他の透過型の光センサ−と同様に検知部100aの上側と下側に配置される発光素子と受光素子とから構成されている。
【0045】
検知部100aの下側となる本体側には、それぞれロ−ラ−115,116に張設された2本の搬送ベルト114が備えられている。検知部100aの上側には各ロ−ラ−115,116に対向する位置と、各磁気式識別センサ−105に対向する位置の計6箇所に、6個のロ−ラ−117が設けられている。紙幣1が搬送ベルト114によって入金方向に駆動されると、ロ−ラ−117は紙幣1の移動に従動して回転可能になっている。
【0046】
ロ−ラ−116は、軸118と連結しており、識別部搬送モ−タ108が回転して電磁クラッチ109がオンになると、出力プ−リ119、ベルト120、クラッチプ−リ121、ギア122、ギア123およびギア124を介して回転可能となっている。そして、ロ−ラ−116の回転によって、搬送ベルト114が入金あるいは出金方向に回転可能となっている。
【0047】
なお、識別部搬送モ−タ108は定速回転するモ−タとなっている。このように、紙幣識別部100には、後述するステッピングモ−タ700と独立したモ−タとして、識別部搬送モ−タ108が設けられている。そのため、連続入金の場合であっても、先に挿入した紙幣1の入金動作と併行して、一時待機部100bまで次の紙幣1の挿入が可能となる。したがって、紙幣1の入金動作を迅速に行うことが可能である。
【0048】
一時待機部100bの下側には、ロ−ラ−125およびロ−ラ−126に張設された2本の搬送ベルト113が設けられている。また、一時待機部100bの上側には各ロ−ラ−127,128,129に張設された2本の搬送ベルト130が設けられている。紙幣1を2本の搬送ベルト113と2本の搬送ベルト130で挟持して搬送できるようにしている。搬送ベルト113は、出力プ−リ119、出力プ−リ131、ベルト132、駆動ロ−ラ−133およびロ−ラ−126を介して、識別部搬送モ−タ108と連結されており、入金方向に回転可能となっている。
【0049】
(3)紙幣搬送部について
【0050】
次に、紙幣搬送部200の構造について説明する。図6、図7および図8は、紙幣搬送部200の搬送路ドア部201を開いた状態の斜視図、側面からみた断面図および紙幣挿入口101と反対方向からみた断面図である。2本の搬送ベルト202は、搬送路ドア部201の内側に設置された各2個のロ−ラ−203,204,205,206,207,208に張設されている。ロ−ラ−203は、図8に示すステッピングモ−タ700から図示されていないギアを介して回転を受けて駆動される。なお、ステッピングモ−タ700は、制御部500にあるCPU501からの信号によって、正逆両方向に回転可能なモ−タとされている。すなわち、紙幣1の入金時と出金時によってステッピングモ−タ700の回転方向が変えられるようになっている。
【0051】
したがって、ステッピングモ−タ700に連結しているロ−ラ−203の回転方向によって搬送ベルト202は、紙幣搬送部200の中の紙幣1を上下両方向に搬送可能となっている。この実施の形態では、紙幣1の入金動作と出金動作を同一の搬送経路とすることによって、紙幣収納装置全体の小型化を図っている。
【0052】
また、ステッピングモ−タ700の回転速度は、入金時あるいは後述するリジェクト時に変えている。すなわち、入金時には、一時待機部100bの搬送ベルト113の移動速度よりも、紙幣搬送部200の搬送ベルト202の移動速度が速くなるように、ステッピングモ−タ700を回転させている。これによって、入金される紙幣1が紙幣搬送部200にスム−ズに送り込まれる。ステッピングモ−タ700の回転速度は、識別部搬送モ−タ108の回転速度の1から3倍が好ましく、特に、2倍が好ましい。なお、入金の際、必要によっては搬送ベルト113と搬送ベルト202の移動速度を同じにしても良い。
【0053】
一方、リジェクト処理の際には、搬送ベルト202の移動速度を、搬送ベルト113の移動速度よりも遅くしている。すなわち、ステッピングモ−タ700を識別部搬送モ−タ108の回転速度よりも低速で回転するようにしている。ステッピングモ−タ700の回転速度は、識別部搬送モ−タ108の回転速度の0.2から0.9倍が好ましく、特に、0.5から0.8が好ましい。なお、出金時にも、搬送ベルト202の移動速度を搬送ベルト113の移動速度よりも高速としても良い。上述のステッピングモ−タ700の構造については、後述する。
【0054】
紙幣搬送部200の紙幣収納装置本体側には、各2本の搬送ベルト210,211,212,213と、各2個のロ−ラ−214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,224,225が設けられている。搬送ベルト210,211,212,213は、搬送ベルト202と異なり一本の長いベルトではなく、各種紙幣用のスタッカ−300a,300b,300c毎に別個に設けられている。これは、紙幣1を各スタッカ−300a,300b,300cに搬送可能とするためである。
【0055】
また、搬送ベルト210,211,212,213は、ステッピングモ−タ700から直接駆動されず、搬送ベルト202の駆動に従動して回転するようになっている。これによって、搬送モ−タの個数を少なくすることができると共に、開閉可能としている搬送路ドア部201を簡易な構造とすることができる。
【0056】
紙幣搬送部200におけるイジェクト・リジェクト部400の紙幣搬送口と対向する位置には、イジェクト搬送ゲ−ト226が設けられている。イジェクト搬送ゲ−ト226は、各スタッカ−300a,300b,300cから紙幣搬送部200を経由してきた紙幣1を取り込むことができるように、図7において時計回りに開くことが可能な構造となっている。
【0057】
イジェクト搬送ゲ−ト226、千円搬送ゲ−ト231および5千円搬送ゲ−ト261は、それぞれイジェクトゲ−トソレノイド227、千円ゲ−トソレノイド232および5千円ゲ−トソレノイド262がオンになったときに開く機構となっている。具体的には、CPU501から入金または出金信号が送られた時に開く。
【0058】
ここで、千円札を紙幣搬送部200から千円札用スタッカ−300aに搬送する際の千円搬送ゲ−ト231を例にとって、ゲ−トの開閉機構を説明する。なお、5千円搬送ゲ−ト261は、千円搬送ゲ−ト231と同じ構造および機構を有する。したがって、千円搬送ゲ−ト231の開閉機構に関与する各部材の番号の後ろに、5千円搬送ゲ−ト261の対応する各部材の番号を、カッコ書きで表すこととする。
【0059】
図7に示すように、千円搬送ゲ−ト231(261)は、ア−ム233(263)、ア−ム234(264)、ア−ム235(265)、ア−ム236(266)、ア−ム237(267)を介して千円ゲ−トソレノイド232(262)と連結されている。制御部500からの入金信号によって、千円ゲ−トソレノイド232(262)がオンになると、ア−ム237(267)が引き上げられ、ア−ム236(266)が図7において右に回動移動し、ア−ム235(265)とア−ム234(264)が図7において右に移動する。これによって、ア−ム233(263)がア−ム234(264)に引っ張られ、千円搬送ゲ−ト231(261)が開くようになっている。
【0060】
ここで、千円ゲ−トソレノイド232(262)がオンになると、ア−ム236(266)の端部に備えられた磁石238(268)が、ホ−ルセンサ−である千円搬送ゲ−トセンサ−239(269)と重なる。これによって、千円搬送ゲ−ト231(261)が開いたことを知らせる信号が、制御部500に送られる。その後、紙幣1が、紙幣搬送部200を通って千円札用スタッカ−300a(300b)に搬送されるようになっている。なお、イジェクトゲ−トソレノイド227がオンになった場合にも、磁石228がイジェクトゲ−トセンサ−229に重なることで、制御部500は、イジェクト搬送ゲ−ト226が開いたことを知らせる信号を受け取るようになっている。
【0061】
また、千円ゲ−トソレノイド232(262)がオフになると、図8に示すスプリング(以下、「リタ−ント−ションスプリング」という)260(290)によって、ア−ム233(263)が図7において左に回動移動し、千円搬送ゲ−ト231(261)が閉まるようになっている。これに伴い、ア−ム234(264)とア−ム235(265)が、図7において左に移動する。そして、ア−ム236(266)が、図7において左に回動移動して、磁石238(268)が、ホ−ルセンサ−としての千円搬送ゲ−トセンサ−239(269)から離れる。
【0062】
これによって、千円搬送ゲ−ト231(261)が閉じたことを知らせる信号が、制御部500のCPU501に送られる。なお、イジェクトゲ−トソレノイド227がオフになった場合にも、リタ−ント−ションスプリング230によって、イジェクト搬送ゲ−ト226が閉じるようになっている。この際、磁石228がイジェクトゲ−トセンサ−229から離れることによって、CPU501は、イジェクト搬送ゲ−ト226が閉じたことを知らせる信号を受け取るようになっている。
【0063】
1万円札用スタッカ−300cの入口にある1万円搬送ゲ−ト291は、紙幣収納部300の最下段にある。このゲ−ト291を通り過ぎる紙幣1はないので、1万円搬送ゲ−ト291は、常時開いた状態で固定されている。これによって、1万円搬送ゲ−ト291を駆動するゲ−トソレノイドが不要となり、紙幣収納装置の小型化および構造の単純化を図ることができる。
【0064】
図9は、紙幣識別部100の方向から見た千円搬送ゲ−ト231の開いた状態の斜視図である。なお、5千円搬送ゲ−ト261も、千円搬送ゲ−ト231と同じ構造を有する。したがって、千円搬送ゲ−ト231の各部材の番号の後ろに、5千円搬送ゲ−ト261の各対応部材の番号を、カッコ書きで表すこととする。
【0065】
千円搬送ゲ−ト231(261)は、3本の各ツメ231a(261a),231b(261b),231c(261c)からなる形状であり、各ツメが図6に示す搬送ベルト211(212)と交互に隣り合う位置に収納できるようになっている。中央のツメ231a(261a)の裏側には、各ロ−ラ−240(270),241(271),242(272),243(273)に張設されたベルト244(274)が設けられている。ベルト244(274)は、図6に示す搬送ベルト202に従動して回転するようになっている。
【0066】
また、千円搬送ゲ−ト231(261)が閉じた時にツメ231b(261b)およびツメ231c(261c)の裏側に位置する部分には、それぞれベルト245(275)が設けられている。各ベルト245(275)は、各ロ−ラ−246(276),247(277),248(278)に張設されている。ベルト245(275)は、図8に示すステッピングモ−タ700に従動して駆動されるようになっている。
【0067】
搬送ベルト202と搬送ベルト211(212)の駆動によって搬送されてきた紙幣1は、千円搬送ゲ−ト231(261)からスタッカ−300a(300b)に入る際に、まずベルト244(274)に接触する。そして、紙幣1は、ベルト244(274)の駆動によって、千円札用スタッカ−300a(300b)に向かう。次に、紙幣1先端の中央部分がベルト244(274)とロ−ラ−249(279)の間に引き込まれる。この際、同時に、千円札の両先端は、各ベルト245(275)に接触するため、該ベルト245(275)の駆動を受けることになる。このため、紙幣1の先端全体がベルトの駆動を受けて、千円札用スタッカ−300a(300b)にスム−ズに搬入されることになる。
【0068】
また、各ベルト244(274),245(275)を、ステッピングモ−タ700と噛み合うギアの比やプ−リ−の径を変更したり、あるいは別個のモ−タで駆動することによって、搬送ベルト211(212)よりも高速で駆動することも可能である。これにより、千円搬送ゲ−ト231(261)から千円札用スタッカ−300a(300b)に紙幣1を搬送する際に、紙幣1の先端を強制的に引っ張るように搬送することが可能となる。
【0069】
また、1万円搬送ゲ−ト291は、中央のツメのみからなる形状であり、千円搬送ゲ−ト231(261)の中央のツメ231a(261a)の裏側と同じ構造となっている。そのため、1万円札紙幣1は、紙幣1の先端の中央部分をベルトによって駆動されながら、1万円札用スタッカ−300cに搬入される。
【0070】
1万円搬送ゲ−ト291の場合も、千円搬送ゲ−ト231(261)の場合と同様に、ステッピングモ−タ700と噛み合うギアの比の変更等によって、搬送ベルト213よりも高速の搬送を行うことが可能である。なお、以後、5千円搬送ゲ−ト261の各部材の番号を、対応する千円搬送ゲ−ト231の各部材の番号の後ろに、カッコ書きで表さないこととする。
【0071】
このように、各搬送ゲ−ト231,261,291の裏側にベルト等を設けることにより、紙幣1が紙幣搬送部200からほぼ直角に各スタッカ−300a,300b,300cに曲がって入る搬送経路であっても、ジャムを起こしにくくなっている。なお、ジャムを防止するための方法の一つは、紙幣1の搬送経路を急激に曲げないようにすることである。しかし、このようにすると紙幣収納装置が大型化してしまう。このため、この実施の形態では紙幣1の搬送経路をほぼ直角にして、かつロ−ラ−等を有効に活用することによって装置の小型化を達成している。
【0072】
紙幣搬送部200には、図8に示す搬送路センサ−255、図6に示す搬送路ドアセンサ−256が設けられている。搬送路センサ−255は、反射式の光センサ−である。同センサ−255は、搬送路センサ−255から発する光が紙幣1表面で反射した反射光を検知できるようになっている。そして、紙幣1が搬送路センサ−255の位置に存在すると、制御部500に信号が送られて、ゲ−トの開閉等の動作を行うようにしている。
【0073】
搬送路ドアセンサ−256は、接点式のセンサ−であり、搬送路ドア201を開けた際に接点が解除されて、制御部500に信号を送るようになっている。その信号を受けたCPU501は、搬送ベルト202等の動作が行われないようにしている。搬送路ドア201を開けてジャムを起こした紙幣1の除去あるいは装置の点検等を行っている最中に、搬送ベルト202等が駆動しないようにすることによって、安全を確保するためである。
【0074】
(4)紙幣収納部について
【0075】
次に、紙幣収納部300を構成するスタッカ−の構造について説明する。なお、千円札用スタッカ−300a、5千円札用スタッカ−300b、1万円札用スタッカ−300cは、容量が異なる以外は同じ構造である。そこで、各スタッカ−300a,300b,300cを代表して、千円札用スタッカ−(以後、特に言及しない限り「スタッカ−」という)300aの構造および機能について説明する。
【0076】
図10は、紙幣収納部300を構成するスタッカ−300aの斜視図である。スタッカ−300aの紙幣搬送口301には、スタック入口上ロ−ラ−302とスタック入口下ロ−ラ−303が設けられている。これらのロ−ラ−302,303は、互いに対向する位置に各々2個設けられている。また、これらのロ−ラ−302,303は、それぞれ紙幣1より狭い間隔で紙幣1の幅方向に備えられている。スタック入口下ロ−ラ−303には搬送ベルトが巻かれておらず、スタック入口上ロ−ラ−302には搬送ベルト304が巻かれている。
【0077】
スタック入口上ロ−ラ−302は、軸305を介してギア306と連結されている。ギア306は、後述するように、図8に示すステッピングモ−タ700の回転によって正逆回転可能となっている。したがって、紙幣1は、搬送ベルト304とスタック入口下ロ−ラ−303に挟持されて、スタッカ−300aの内部または外部に搬送される。
【0078】
紙幣搬送口301には、紙幣1の通過を検知するスタック入口センサ−307が、紙幣搬送口301を隔てて対向する位置に設けられている。スタック入口センサ−307は、透過型の光式センサ−であり、発光素子と受光素子から構成されている。かかる両素子から構成される2組のスタック入口センサ−307が、紙幣1より狭い幅で配置されている。スタック入口センサ−307の発光素子(以後、「スタック入口下センサ−」という)307bは、紙幣搬送口301の下面に設けられている。同センサ−307の受光素子(以後、「スタック入口上センサ−」という)307aは、同上面に設けられている。
【0079】
紙幣1が、これらのセンサ−307a,307bの間に存在すると、光が遮られて紙幣1の存在を検知できるようになっている。また、スタック入口センサ−307は、紙幣1が通過する際に、紙幣1の長さおよび紙幣1を透過する光量パタ−ンを測定する機能を有している。
【0080】
図11は、スタック入口センサ−307を、紙幣搬送口301の側面からみた拡大図である。スタック入口センサ−307a,307bは、その対向平面部分が紙幣搬送口301の上面および下面と水平になるように作られたセンサ−カバ−308a,308bによって覆われている。センサ−カバ−308が紙幣1の汚れによって汚染されると、正確な紙幣1の識別ができなくなる。そのため、紙幣1によって持ち込まれた汚れをクリ−ニングする必要がある。特別なクリ−ニング機構を設けることも可能であるが、構造の複雑化を避けるべく、この紙幣収納装置には、他の紙幣1自身によってセンサ−カバ−308a,308bをセルフクリ−ニングできるようにしている。
【0081】
具体的には、上下のセンサ−カバ−308a,308bの隙間を適度な距離とすることによって、セルフクリ−ニングを実現している。紙幣1は、下方のセンサ−カバ−308bには常に接する一方で、上方のセンサ−カバ−308aには頻繁ではあるが常時接することがないようにしている。それは、下方のセンサ−カバ−308bの方が汚れやすい上に、上方のセンサ−カバ−308aに紙幣1が常時接するくらい狭くすると、ジャムが起こりやすくなるからである。両センサ−カバ−308a,308b間の距離は、2.0〜3.0mmが適切であり、好ましくは2.3〜2.7mmが良い。さらに最適な幅は2.4〜2.5mmである。
【0082】
スタッカ−300aの上部には、紙幣1をスタッカ−300aの内外に搬送する搬送機構部309が固定されている。
【0083】
図12は、搬送機構部309を取り外した状態のスタッカ−300aの斜視図である。スタック入口下ロ−ラ−303より奥には、3個の分離ロ−ラ−310が設けられている。紙幣1がスタッカ−300aの内部に入金される際には、スタック入口上ロ−ラ−302と各分離ロ−ラ−310が、入金方向に駆動される。スタック入口下ロ−ラ−303は、紙幣1の搬送により、入金方向に回転するようになっている。これによって、紙幣1は、スタッカ−300aの内部に搬送される。
【0084】
また、スタッカ−300aの内部から紙幣1を搬出する際には、ステッピングモ−タ700の駆動を受けて、スタック入口上ロ−ラ−302が、出金方向に回転する。したがって、スタック入口上ロ−ラ−302に巻かれた搬送ベルト304は、出金方向に回転する。この際、分離ロ−ラ−310は出金方向に回転できないようになっている。具体的には、分離ロ−ラ−310に連結されているギア319に、入金方向に回転する時のみ駆動を伝達するワンウェイクラッチが備えられている。
【0085】
このように、分離ロ−ラ−310が出金方向に回転できないようにしたのは、次の理由による。スタッカ−300aの内部に収納されている紙幣1を外部に搬出する際に、2枚以上の紙幣が一緒に分離ロ−ラ−310のロ−ラ−面に沿って移動する場合がある。この際に、分離ロ−ラ−310が出金方向に回転すると、2枚目以下の紙幣も、紙幣搬送口301まで搬送されてしまい、重送が生じる危険性があるからである。
【0086】
分離ロ−ラ−310の紙幣収納方向側には、ロ−ラ−面に沿うようにロ−ラ−ガイド311が設けられている。図13は、ロ−ラ−ガイド311を備えたスタッカ−300aの内部の一部分の拡大図である。ロ−ラ−ガイド311の一端は、スタッカ−300aの外壁にネジ止めされ、分離ロ−ラ−310と接離可能となっている。
【0087】
紙幣1がスタッカ−300aから搬出される際に、収納されている紙幣1が、搬送ベルト304と後述する搬送ベルト312の駆動を受けてロ−ラ−ガイド311を分離ロ−ラ−310の方向に押す。押されたロ−ラ−ガイド311は、分離ロ−ラ−310のロ−ラ−面に接する。したがって、搬出される紙幣1が、分離ロ−ラ−310から下方に向かって折れてジャムを起こさないようになっている。
【0088】
また、ロ−ラ−ガイド311は、固定している図示されないネジを調節することによって、上下方向に高さを調節できるようになっている。さらに、調節ネジ313のねじ込む長さによって、ロ−ラ−ガイド311と分離ロ−ラ−310との距離を調節可能となっている。具体的には、調節ネジ313をねじ込むと、ロ−ラ−ガイド311の上端が、分離ロ−ラ−310に接近する。一方、調節ネジ313を緩めると、ロ−ラ−ガイド311の上端が、分離ロ−ラ−310から離れる。これによって、出金動作の際の重送あるいはジャムが起こる状況をみながら、ロ−ラ−ガイド311の高さと、分離ロ−ラ−310との距離を調整できるようになっている。
【0089】
図14は、スタッカ−300aの側面図である。また、図15は、スタッカ−300aを紙幣収納装置の上方からみた平面図である。搬送機構部309には、搬送ベルト304,312が、各々2本づつ備えられている。各2本づつの搬送ベルト304,312は、搬送機構部309の下面にベルトを露出した状態とされている。
【0090】
2本の搬送ベルト304は、スタック入口上ロ−ラ−302とロ−ラ−314に張設されている。そして、搬送ベルト304の間には、それぞれ3個のロ−ラ−315,316,317に張設された2本の搬送ベルト312が設けられている。また、ギア306とギア319は、図15に示すように互いにかみ合っている。ギア319は、ステッピングモ−タ700からの駆動を受けて正逆回転可能となっている。
【0091】
分離ロ−ラ−310の外側には、搬送ベルト304と接するように分離ロ−ラ−310より径が小さい2個のフリクションロ−ラ−320が設けられている。フリクションロ−ラ−320は、紙幣1の出金時に搬送ベルト304の駆動を受けて回転するロ−ラ−であり、分離ロ−ラ−310の外側に備えたロ−ラ−固定円板321に回転可能に固定されている。さらに、ロ−ラ−固定円板321は、分離ロ−ラ−310と同軸である軸318を中心に回動可能に備えられている。
【0092】
さらに、図16に示すように、当該円板321上の係合支点322とスタッカ−300aとは、バネ323によって連結されており、フリクションロ−ラ−320は、上方に付勢されている。したがって、フリクションロ−ラ−320は、回動範囲内において、一定圧力で、搬送ベルト304に接触する。このフリクションロ−ラ−320を設けることによって、次のような効果が得られる。
【0093】
すなわち、紙幣1の出金動作において、分離ロ−ラ−310の方向に飛び出た紙幣1を、後述する整頓動作によって容易にスタッカ−300aの内部に戻すことが可能である。加えて、先端が折れている紙幣1を出金する際には、フリクションロ−ラ−320が紙幣1の先端の折れを修正して、出金することが可能である。また、仮にフリクションロ−ラ−320と搬送ベルト304の間に複数の紙幣1が入り込んでも、紙幣1に加わる圧力は一定となるため、紙幣1に必要以上の圧力がかからない。このため、重送やジャムといったトラブルを防止することができる。
【0094】
図16は、スタッカ−300aから紙幣1が搬出される際の状態を、紙幣搬送口301の方向からみた図である。紙幣1の上面は、スタック入口上ロ−ラ−302に巻かれた搬送ベルト304とロ−ラ−317に巻かれた搬送ベルト312に接している。また、紙幣1の下面は、分離ロ−ラ−310とフリクションロ−ラ−320に接している。
【0095】
搬送ベルト304,312は、分離ロ−ラ−310のロ−ラ−上面よりも下方に位置するように配置されている。したがって、出金の際に紙幣1は、図16に示すように、波形形状でスタッカ−300aから搬出されるようになっている。
【0096】
図17は、紙幣搬送口301の方向からみたスタッカ−300aの内部構造である。スタッカ−300aの内部には、紙幣1を積載すると共にスタッカ−300a内部を上下動可能な積載プレ−ト(以後、「プッシャ−プレ−ト」という)325が備えられている。また、スタッカ−300aの底部には、プッシャ−プレ−ト325を引っ掛けて固定するためのプレ−トフック346が備えられている。プレ−トフック346の使用状況については、後述する。
【0097】
図18は、図17からプッシャ−プレ−ト325とその駆動部を抜き出して示した図である。図示されるように、プッシャ−プレ−ト325の一部であるプレ−ト連結部325cは、弾性体(以後、「プッシャ−スプリング」という)326を介して、スタッカ−300aの側部に固定される側部プレ−ト327の側部プレ−ト連結部327aに連結されている。プッシャ−スプリング326は、スタッカ−300aに固定される円板328の円周に沿って設けられている溝に接するように、逆U次状に曲げられている。プッシャ−スプリング326は、プッシャ−プレ−ト325を上方に付勢するように、スタッカ−300aに連結されている。
【0098】
プッシャ−プレ−ト325は、プッシャ−スプリング326に連結される固定式プッシャ−プレ−ト325aと、固定式プレッシャ−プレ−ト325aの上に位置すると共に紙幣1の幅方向が上下に揺動可能とする可動式プッシャ−プレ−ト325bとから構成されている。固定式プッシャ−プレ−ト325aの下方には、図17に示すように、紙幣1の幅方向に軸329が固定されている。軸329の上部には、固定式プッシャ−プレ−ト325aの縦方向に伸びる軸330が備えられている。可動式プッシャ−プレ−ト325bは、該プレ−ト325bに固定される連結板331を介して、軸330に連結されている。連結板331は、軸330を中心に回動可能となっている。
【0099】
図19は、可動式プッシャ−プレ−ト325bの揺動動作を示した図である。(A)は、可動式プッシャ−プレ−ト325bのプレ−ト面が固定式プッシャ−プレ−ト325aと平行の状態を示した図である。積載された紙幣1の右端の厚みaと左端の厚みbがほとんど等しい場合には、(A)のように可動式プッシャ−プレ−ト325bのプレ−ト面が水平状態となる。
【0100】
しかし、積載された紙幣1の厚みが一定とは限らない。(B)は、積載された紙幣1の右端の厚みaよりも左端の厚みbの方が厚い状態を示した図である。図示されるように、紙幣1の最上位の紙幣1が搬送ベルト304,312に接すると、連結板331が軸330の時計と反対方向に回転する。その結果、最上位の紙幣1は水平状態で搬送ベルト304,312に接することが可能となる。
【0101】
また、(C)は、積載された紙幣1の右端の厚みaよりも左端の厚みbの方が薄い状態を示した図である。図示されるように、紙幣1の最上位の紙幣1が搬送ベルト304,312に接すると、連結板331が軸330の時計方向に回転する。その結果、(B)と同様に、最上位の紙幣1は水平状態で搬送ベルト304,312に接することが可能となる。
【0102】
このように、可動式プッシャ−プレ−ト325b上に積層される紙幣1の厚みが紙幣1の幅方向で不均一な状態であっても、スタッカ−300a上部にある搬送ベルト304,312に均一な圧力で接することが可能となる。したがって、紙幣1が曲がって出金されるこなく、ジャムを防止できる。また、固定式プッシャ−プレ−ト325aと搬送ベルト304,312とが厳密に平行となっていなくても、紙幣1に均一な圧力がかかることになる。したがって、製造コストの低減が可能になる。
【0103】
なお、可動式プッシャ−プレ−ト325bは、左右どちらに回転しても、その端部が固定式プッシャ−プレ−ト325aに接触するため、可動範囲は必要以上に大きくならないようになっている。したがって、可動式プッシャ−プレ−ト325b上の紙幣1が、幅方向にずれる危険性がない。
【0104】
図14に示されるように、スタッカ−300aの内部には、ア−ム部(以後、「スタックア−ム」という)332が設けられている。スタックア−ム332は、図15にも示されるように、2本の細長いプレ−トから構成されており、2本のプレ−トの内側の間隔は、紙幣1の幅より狭く、かつ搬送機構部309の幅よりも広くしてある。なお、スタックア−ム332は、スタッカ−300aの下部に配置されたリフトモ−タ333に連結されており、リフトモ−タ333の回転で上下動可能となっている。
【0105】
スタックア−ム332は、入金待機状態において、プッシャ−プレ−ト325に積載される紙幣1の最上位にある紙幣1の上面を押さえ、紙幣搬送口301より下方の所定位置に停止している。これは、スタッカ−300aに入金されてくる紙幣1が、既にプッシャ−プレ−ト325上に積載されている紙幣1にぶつからないようにするためである。
【0106】
図20は、紙幣1をスタッカ−300aから搬出する直前のスタッカ−300aの側面図である。紙幣1の出金の際には、スタックア−ム332は、搬送機構部309に向かって上昇する。プッシャ−プレ−ト325は、図18を参照して述べたように、プッシャ−スプリング326の弾性力によって上方に付勢されている。
【0107】
そのため、スタックア−ム332が上昇すると、プッシャ−プレ−ト325は、その上に積載している紙幣1の最上位にある紙幣1の上面を、スタックア−ム332の下面に接触させた状態で上昇する。そして、スタックア−ム332が、搬送ベルト304,312のベルト面より上に移動した時点で、プッシャ−プレ−ト325は、最上位の紙幣1を搬送ベルト304,312に接触させて停止する。なお、スタックア−ム332の上下動の機構については、後述する。
【0108】
スタッカ−300aの紙幣搬送口301と反対側には、出金後に搬送ベルト304,312を出金と反対方向に駆動させる、いわゆる整頓動作の際に紙幣1の先端を押さえるストッパ−部材(以後、「エンドストッパ−」という)334が設けられている。エンドストッパ−334は、紙幣搬送口301と反対側の垂直壁面に平行な垂直部334aと、その垂直部334aの紙幣搬送口301の高さ付近で直角に曲がった押しつけ部334bと、その押しつけ部334bから上方に角度α(αは鋭角)で立ち上がった傾斜部334cを有する形状となっている。なお、この傾斜部334cの角度αは、25から45度の範囲が好ましく、この実施の形態では、35度としている。
【0109】
エンドストッパ−334の垂直部334aの下部は、バネ335を介してスタッカ−300aと連結されている。図21は、エンドストッパ−334とその周辺部分を示した図である。バネ335は、エンドストッパ−334を下方に付勢するように備えられている。(A)に示す入金待機状態においては、エンドストッパ−334は、プッシャ−プレ−ト325上に載置する紙幣1の最上位にある紙幣1と離れている。
【0110】
一方、(B)に示す出金時には、スタックア−ム332が搬送ベルト304,312より上方に移動することによって、プッシャ−プレ−ト325が上昇する。その結果、プッシャ−プレ−ト325上に積載される紙幣1の最上位の紙幣1が、エンドストッパ−334を僅かに持ち上げると共に、搬送ベルト304,312に接する。エンドストッパ−334は、図示されるように、(A)の入金状態から僅かな距離Dだけ上昇した分、下方に向かって最上位の紙幣1を押さえる働きを有する。
【0111】
このため、紙幣1の出金直後の整頓動作において、プッシャ−プレ−ト325に積載している紙幣1の最上位にある紙幣1が搬送ベルト304,312の駆動を受けて、たわんだり、あるいは下方に積載されている他の紙幣1に回り込んだりする危険性が低い。また、エンドストッパ−334の先端は、傾斜部334cを有しているので、紙幣1が入金されてきた際に、紙幣1が、万一エンドストッパ−334の上に載置する方向に移動してきても、確実にエンドストッパ−334の下方に向かわせて、正常な入金動作を行うことができる。
【0112】
図22は、図14に示すスタッカ−300aを、紙幣搬送口301と反対方向からみた図である。また、図23は、図20に示すスタッカ−300aを、紙幣搬送口301と反対方向からみた図である。スタッカ−300aの裏側(図22の右側)には、スタックア−ム332を駆動するリフトモ−タ333を格納しているスタックア−ム駆動室336が設けられている。リフトモ−タ333は、スタックア−ム駆動室336の下部に固定されている。
【0113】
スタックア−ム332は、図22に示すように、2本のプレ−トからスタックア−ム駆動室336へと突き出た形状となっており、その突き出た部分に、左右が丸みを帯びた細長い空隙部337を有している。また、リフトモ−タ333のモ−タ軸333aには、回転ア−ム338が取り付けられている。回転ア−ム338のモ−タ軸333aと反対方向の先端には、回転可能な円板339が取り付けられている。さらに、その円板339は、前述のスタックア−ム332にある空隙部337に、左右に移動可能に取り付けられている。
【0114】
したがって、リフトモ−タ333が回転すると、回転ア−ム338が回転して、円板339が回転しながら空隙部337を左右に移動する。そして、回転ア−ム338の回転によって、スタックア−ム332が上下動できるようになっている。
【0115】
また、回転ア−ム338のモ−タ軸333aと反対方向の先端には、筒状磁石340が設けられている。スタッカ−300aには、円板339がほぼ最下部にくる位置と、最上部にくる位置にそれぞれ1個のホ−ルセンサ−341が固定されている。前者および後者のホ−ルセンサ−341は、スタックア−ム332をそれぞれ上下の所定位置で停止させるスタックリフト上センサ−341aおよびスタックリフト下センサ−341bである。
【0116】
図22に示すように、リフトモ−タ333が回転して筒状磁石340がスタックリフト下センサ−341bと重なると、CPU501に信号が送られる。そして、CPU501は、リフトモ−タ333を停止させる。この際、スタックア−ム332は、紙幣搬送口301より下方の所定位置まで移動してプッシャ−プレ−ト325の上昇を停止させた状態となっている。かかる状態の後、搬送ベルト304,312が入金方向に駆動されて、入金動作が行われる。
【0117】
一方、出金の際には、図23に示すように、リフトモ−タ333が、図22の状態から半回転することによって、筒状磁石340がスタックリフト上センサ−341aと重なる。これによって、CPU501は、リフトモ−タ333を停止させる。この際、スタックア−ム332は、搬送ベルト304,312のベルト面より上方の所定位置で停止した状態となっている。かかる状態の後、搬送ベルト304,312が出金方向に駆動されて、出金動作が行われる。
【0118】
このように、リフトモ−タ333は、2個のスタックリフトセンサ−341a,341bによって、常に半回転毎に停止する。このため、スタックア−ム332は、上下所定位置で往復動作できるようになっている。
【0119】
スタッカ−300aのスタックア−ム駆動室336の内壁には、スタッカ−300aに収納されている紙幣1が空に近いことを検知するニアエンドセンサ−342と、紙幣1が満杯に近いことを検知するニアフルセンサ−343が設けられている。これらのセンサ−342,343の固定位置は、スタッカ−300aの外から可変であるが、通常、収納されている紙幣1が空に近い状態および満量に近い状態におけるプッシャ−プレ−ト325の位置を検知できる場所に固定されている。
【0120】
ニアエンドセンサ−342およびニアフルセンサ−343は、それぞれ中央に隙間を有している遮断センサ−である。プッシャ−プレ−ト325に固定された検知プレ−ト344がこの隙間に入ると、それまで隙間を通っていた光が遮断される。かかる光の遮断によって、CPU501に信号が送られるようになっている。検知プレ−ト344は、ニアエンドセンサ−342に検知されてから、プッシャプレ−ト325がさらに上昇しても、ニアエンドセンサ−342がオンの状態を維持できるのに十分な長さを有している。ニアフルセンサ−343についても同様である。
【0121】
また、ニアエンドセンサ−342またはニアフルセンサ−343がオンになると、オンになった時点からスタッカ−300aに入出する紙幣の枚数を相対カウントする機構が設けられている。具体的には、ニアエンドセンサ−342またはニアフルセンサ−343がオンになった以後に、スタック入口センサ−307を通過した紙幣1のカウント信号が、CPU501に送られる。そして、CPU501は、紙幣1の増減を相対的にカウントする相対カウントを行う。そして、予め記憶させて置いた所定の枚数に達すると、エンド信号またはフル信号を送出してスタッカ−300aに収納されている紙幣1が空あるいは満杯であることを知らせるようになっている。
【0122】
したがって、この紙幣収納装置と外部のホストコンピュ−タを接続しておくと、自動販売機等の上位機の制御装置509から離れた場所でも、紙幣1の収納状態を定量的かつ経時的に把握することができる。
【0123】
また、ニアフルセンサ−343の下方には、使用不可センサ−345が設けられている。使用不可センサ−345は、紙幣1の入金および出金動作におけるプッシャ−プレ−ト325の上下動の範囲では点灯しない場所に固定されている。
【0124】
本装置の保守、点検あるいは紙幣の回収、補充の際には、プッシャ−プレ−ト325をスタッカ−300aの最下部まで下げてプレ−トフック346で固定できるようにしている。その際には、使用不可センサ−345がオンになる。使用不可センサ−345がオンになっている時には、管理者にプッシャプレ−ト325が固定されていることを認知させて、仮にプッシャ−プレ−ト325を固定したまま電源を入れても本装置を運転できないようにしている。
【0125】
したがって、本装置の運転に際しては、プッシャ−プレ−ト325から図17に示すプレ−トフック346をはずして、プッシャ−プレ−ト325が上下動可能な状態となっていることを確認してから、運転を行うことができる。これによって、管理者は、装置が動作しない状態のまま、紙幣の補充、回収等の作業を終えることを低減できる。
【0126】
図24は、出金最中におけるスタッカ−300a内部の側面図である。搬送機構部309には、収納されている紙幣1が検知手段としてのスタック入口センサ−307に検知された時に、重送を防止するための機構が備えられている。以下、重送防止機構について説明する。
【0127】
スタッカ−300aの紙幣搬送口301の反対側の上部には、軸347を中心に回動可能なストッパ−ア−ム348が備えられている。ストッパ−ア−ム348は、軸347を介して図示されないブレ−キソレノイドに連結されている。したがって、積載プレートであるプッシャープレート325上の紙幣1の最表面の紙幣1の先端がスタック入口センサー307に検知される位置までくると、スタック入口センサー307からの検出信号を受けた制御部500がブレーキソレノイドに信号を送りオンとする。すると、ストッパ−ア−ム348は、図24において時計と反対方向に回動する。
【0128】
ストッパ−ア−ム348の軸347と反対方向の先端は、軸347よりも紙幣搬送口301の方向に配置される軸349を中心に回動可能な重送防止手段としてのブレ−キア−ム350の先端350aに連結されている。ブレ−キア−ム350の先端350aには、摩擦係数の大きなブレ−キ部材(例えば、ゴム)351が取り付けられている。
【0129】
ブレーキ部材351が紙幣1に接する位置から収納されている紙幣1の後端部までの長さL1は、スタック入口センサー307の位置から収納されている紙幣1の前端部までの長さL2よりも短くなるようにしている。ブレーキ部材351が、確実に2枚目以下の紙幣1を押さえることができるようにするためである。また、ブレ−キ部材351には、紙幣1の出金と直角方向に凹凸の溝がつけられており、2枚目以下の紙幣1が紙幣搬送口301方向に搬送されにくくしている。
【0130】
また、搬送機構部309には、軸349より紙幣搬送口301の方向に備えられた軸352を中心に回動可能な分離手段としてのロ−ラ−ア−ム353が備えられている。ロ−ラ−ア−ム353の一端353bは、ブレ−キア−ム350の先端350aと反対側の先端350bの上方に位置している。また、ロ−ラ−ア−ム353の一端353bと反対方向の先端353aには、紙幣1の入出両方向に回転可能な回転部材としてのロ−ラ−354が備えられている。
【0131】
ブレ−キア−ム350が、図24において時計回りに回動してブレーキ部材351と反対側の先端350bが上方に移動すると、当該先端350bのすぐ上に接しているロ−ラ−ア−ム353の先端353bが持ち上げられる。これによって、ロ−ラ−ア−ム353が、軸352を中心として図24において反時計回りに回動して、その先端353aに備えられたロ−ラ−354を出金される最表面の紙幣1に押し当てる。これによって、最表面の紙幣1と搬送ベルト304,312が離される。したがって、最表面の紙幣1の下方にある2枚目以下の紙幣1は、搬送ベルト304,312によって出金方向の駆動を受けない。このため、単に、ブレ−キ部材351が2枚目の紙幣1の上面から押さえるだけの機構よりも、重送を低減することができる。
【0132】
なお、最表面の紙幣1は、スタック入口センサ−307に検知された時点において、搬送ベルト304に巻かれたスタック入口上ロ−ラ−302とスタック入口下ロ−ラ−303に挟まれている。したがって、ローラーアーム353が、最表面の紙幣1と搬送ベルト304,312とを分離しても、最表面の紙幣1は、スタック入口上ロ−ラ−302とスタック入口下ロ−ラ−303に挟持された位置で搬送ベルト304,312の駆動を受けて出金される。また、ロ−ラ−354は、収納室300aの内外両方向に回転自在であるため、最表面の紙幣1の出金に対する抵抗が小さくなり、スムーズな出金動作が可能となる。
【0133】
また、ロ−ラ−ア−ム353の先端353aは、バネ355によって搬送機構部309の上部に連結されて、かつ上方に付勢されている。そのため、ストッパ−ア−ム348が時計回りに回動すると、ロ−ラ−ア−ム353は軸352を中心に時計回りに回動する。それによって、ロ−ラ−354が搬送ベルト304,312等より上方に収納されるようになっている。
【0134】
次に、検知手段としてのスタック入口センサー307によって、搬送方向に対する紙幣1の傾きを補正して、紙幣を判別する方法について説明する。図25は、紙幣1の搬送路の幅W1より短い紙幣幅W2の紙幣1が、搬送方向に対して傾いて搬送される状態を、スタッカー300aの上方向から見た図である。図中のAとBの両位置には、各々、透過型光センサーであるスタック入口センサー307の発光素子と受光素子とが上下方向に対向して配置されている。AとBの間隔は一定の距離Xとする。紙幣1がスタック入口センサー307の両素子の間にくると、発光素子から受光素子に向かう光が遮られ、スタック入口センサー307がオンとなるようになっている。
【0135】
紙幣1の先端がAにくると、Aにあるスタック入口センサー307がオンになる。この時点では、Bの位置には紙幣1の先端が来ていないので、Bのスタック入口センサー307はオフのままである。その後、紙幣1がスタッカー300aの外方向に搬送されていくと、Bの位置に紙幣1の先端がきて、Bのスタック入口センサー307もオンになる。制御部500は、AおよびBの各スタック入口センサー307がオンとなった時間差に、紙幣1の搬送速度を乗じて、図25におけるCA間の距離を算出する。AB間の距離はXなので、三角形ABCの角ABC(=θ)は、θ=tan-1(C/X)より求まる。三角形ABCと三角形ECDは相似であり、また、CD間の距離は、Aのスタック入口センサー307がオンとなっている時間と搬送速度から求められる。したがって、CE間の距離、すなわち正しい紙幣長L1が求まる。同様に、三角形ABCと三角形FGBの相似関係からも、FG間の距離(正しい紙幣長L2)が求まる。制御部500は、L1とL2を平均して紙幣長Lを決定する。なお、上記の時間差は、両センサー307がオフになった時間差としても良い。
【0136】
続いて、上記の計算により求めた紙幣長Lが、正規の紙幣の長さか否かの判別が行われる。たとえば、千円札用スタッカー300aからの搬出であれば、制御部500は、出金される紙幣1が千円札か否かを判別する。日本で通常使用されている紙幣1は、千円札、5千円札、1万円札の3種類の紙幣である。3種類の紙幣の幅は等しいが、長さは、高額紙幣になるにしたがって5mmづつ長くなっている。千円札は約150.0mmであるが、摩耗によって長さが短くなったものもある。さらに、スタック入口センサー307による計測誤差によって、制御部500の算出した紙幣長Lが、150.0mmからずれた値となる場合がある。そこで、制御部500が算出した紙幣長Lが、149±2mmという千円札の長さの許容範囲に入るか否かで、券種を判断するようにしている。
【0137】
この結果、千円札用スタッカー300aから出金する紙幣1が、千円札以外の紙幣1であると判断した場合には、リジェクト処理を行う。具体的には、その異券を後述するリジェクト部に保留する。また、出金する紙幣1が千円札であると判断した場合には、後述するイジェクト部に搬送して出金する。なお、券種の判別は、上記の許容範囲と比較する場合に限定されず、別の許容範囲、たとえば、148±2mmという紙幣長の範囲を記憶させておくことも可能である。
【0138】
以上のように、検出手段としてのスタック入口センサー307からの信号を受けた制御部500の計算から、紙幣長を正確に求めることができる。したがって、紙幣1が傾いて搬送されても、正規の紙幣1を異券と判断してリジェクト処理を行ったり、逆に、異券を正規の紙幣1と判断して出金してしまうといった出金トラブルを解消できる。
【0139】
また、図26に示すように、検出手段としてのスタック入口センサー307を3個以上備えることによって、より正確な紙幣1の判別を行うこともできる。スタック入口センサー307は、紙幣1の搬送方向に対して直角方向になるように一直線に、A、B、C、Dの位置に計4個備えられている。AとCの各スタック入口センサー307のオンとなる時間差から、前述と同様の方法によって距離Yを求める。また、BとDの各スタック入口センサー307のオンとなる時間差からも同様に、距離Zを求めることができる。したがって、紙幣長として、L1からL4までの4種の長さが算出される。制御部500は、これらL1からL4までの紙幣長を平均して紙幣長Lを決定する。このように、スタック入口センサー307を3個以上備えることによって、より正確な紙幣長を算出可能となる。
【0140】
さらに、スタック入口センサー307を紙幣搬送路の中央近傍に配置することによって、紙幣長の算出を確実に行うこともできる。スタック入口センサー307を紙幣搬送路の両端部に配置すると、紙幣1が傾いて搬送されてきた際に、紙幣の長辺からスタック入口センサー307に検知される場合もある。これによって、スタック入口センサー307がオンとなる時間から求める距離が、実際の紙幣長よりも短く計測され、紙幣長の算出が困難になる。このため、確実に紙幣1の短辺が、スタック入口センサー307に検知されるように、スタック入口センサー307を紙幣搬送路の中央近傍に配置するのが好ましい。
【0141】
ところで、各スタッカ−300a、300b、300cの構造および外形は、基本的には同一となっている。しかし、3種類の各紙幣1は幅は同じであるが、長さが異なる。具体的には千円札が最も短く、5千円札、1万円札と5mmづつ長くなっている。紙幣1を収納するスペ−スは、紙幣1の大きさとほぼ同じ大きさとしないと、紙幣1が整頓された状態で収納できない。
【0142】
例えば、各スタッカ−300a,300b,300cの内部を1万円札の大きさに合わせた収納スペ−スとすると、1万円札は問題ないが千円札および5千円札は端部が揃わず遊びが多い状態で収納される。そのため、出金動作においてトラブルが生じる危険性がある。一方、各スタッカ−300a,300b,300cの内部を千円札あるいは5千円札の大きさに合わせた収納スペ−スとすると、1万円札がたわんだり、折れ曲がった状態で収納され、同様にトラブルの原因となる。
【0143】
このため、各スタッカ−300a,300b,300cの大きさを各種紙幣1の大きさにあった収納スペ−スとすべく、各スタッカ−300a,300b,300cの内部スペ−スをまず1万円札用に合わせ、他種の紙幣1のスタッカ−300a,300bの紙幣搬送口301と反対方向の内壁には、千円札あるいは5千円札の長さに合わせた調整プレ−トとしてのエンドストッパ−334を着脱可能に装着できるようにしている。
【0144】
具体的には、千円札用スタッカ−300aには、厚さ10mmのエンドストッパ−334を、また5千円札用スタッカ−300bには厚さ5mmのエンドストッパ−334を装着している。
【0145】
このように、紙幣1の種類毎に各スタッカ−300a,300b,300cの大きさを変えず、厚さの異なるエンドストッパ−334の着脱のみによって、各スタッカ−300a,300b,300c内容積を変えることができる。そのため、各スタッカ−300a,300b,300cの部品の共有化ができ、さらに取り扱う紙幣1の変化への対応が容易となる。特に、最近では米国のドル紙幣等の外国紙幣の使用要求が高まっており、本装置は、このような要求にもすばやく対応できるものとなる。
【0146】
(5)イジェクト・リジェクト部について
【0147】
次に、イジェクト・リジェクト部400の構造について説明する。図27および図28は、それぞれイジェクト・リジェクト部400の斜視図および側面からみた断面図である。イジェクト・リジェクト部400は、図1に示すように、真券を一括して出金するまで保存すると共に全ての真券が搬送された後に一括して出金するイジェクト部400aと、偽券、ジャムあるいは重送を起こした紙幣1等の異常紙幣(以後、「異券」という)2のみを保存するリジェクト部400bとから構成されている。
【0148】
イジェクト部400aは、イジェクト・リジェクト部400の下部に配置されている。一方、リジェクト部400bは、イジェクト・リジェクト部400の上部に配置されている。イジェクト部400aの前方であって装置外部には、紙幣1が出金される紙幣出金口401が設けられている。また、紙幣出金口401と反対方向には、紙幣搬送部200からの紙幣1を受け入れる紙幣搬送口402が設けられている。紙幣搬送口402には、紙幣搬送部200から搬送される真券あるいは異券2の通過を検知可能なイジェクト入口センサ−403が配置されている。
【0149】
イジェクト入口センサ−403は、透過型の光式センサ−であり、紙幣搬送口402の上下に対向する位置に、発光素子403bと受光素子403aが各2個づつ設けられている。図28では、イジェクト入口センサ−403は、上下1個づつしか見えていないが、同図の紙面裏方向に、上下1個づつのイジェクト入口センサ−403が存在する。発光素子403bは、紙幣搬送口402の下側に、受光素子403aは、紙幣搬送口402の上側に設けられている。イジェクト入口センサ−403は、発光素子403bと受光素子403aの間に紙幣1が存在すると、CPU501に、紙幣1の存在を知らせる信号を送る。
【0150】
さらに、イジェクト入口センサ−403は、紙幣1によって運ばれた汚れを他の紙幣1の搬送時にセルフクリ−ニングできるように、紙幣1との接触面を平らにした上下各1個のセンサ−カバ−404a,404bで覆われている。上下のセンサ−カバ−404a,404bの間隔は、スタック入口センサ−307のセンサ−カバ−308と同様に、2.0〜3.0mmが適切であり、好ましくは2.3〜2.7mmが良い。さらに最適な幅は2.4〜2.5mmである。
【0151】
紙幣搬送部200から搬送されてきた紙幣1は、出金方向に回転するイジェクト下ロ−ラ−405と回転可動に備えられたイジェクト上ロ−ラ−406に挟持されて、イジェクト・リジェクト部400の内部に搬送される。図29は、紙幣搬送口402に設けられたイジェクト下ロ−ラ−405とその周辺部材を示した図である。イジェクト下ロ−ラ−405の両側面には、イジェクト下ロ−ラ−405の直径より大きな円形の支持板407が備えられている。
【0152】
また、支持板407の両側面には軟質ウレタンゴム製の8本の羽根408aを有する羽根車408が設けられている。羽根車408は、紙幣搬送口402から搬送されてきた紙幣1をイジェクト・リジェクト部400の内部に導くと同時に、既にイジェクト部400aに搬送されている紙幣1を下方に押さえる役割を有している。この羽根車408の構造および機能については、後述する。
【0153】
イジェクト下ロ−ラ−405は、図示されていないギアを介して紙幣収納装置の下部に設けられているステッピングモ−タ700と連結されている。イジェクト上ロ−ラ−406は、回転可動ではあるがモ−タ等の駆動源とは連結されていない。したがって、紙幣1は、ステッピングモ−タ700によって駆動されるイジェクト下ロ−ラ−405と同ロ−ラ−405に従動して回転するイジェクト上ロ−ラ−406に挟持されて、イジェクト・リジェクト部400の内部に搬送される。
【0154】
図30は、紙幣1が搬送されてくる際の紙幣搬送口402の方向からみたイジェクト・リジェクト部400である。図示されるように、紙幣1は、イジェクト上ロ−ラ−406とイジェクト下ロ−ラ−405の接面によってほぼU字形状となる。加えて、紙幣1は、中央から端部までの間で羽根車408に支えられると共に、後述する回動式ア−ム485bの下面で押さえられている。
【0155】
したがって、紙幣1は、全体としてその断面が緩やかな波形形状で、イジェクト・リジェクト部400に搬送されるようになっている。これによって、しわや折り癖のある中古の紙幣1でも、イジェクト部400aの下方に折れたりたわんだ状態とならず、イジェクト部400aに既に保留されている紙幣1と衝突するといったトラブルを防止することができる。
【0156】
紙幣搬送口402から搬送された紙幣1が異券2の場合には、その異券2は、リジェクト部400bから下降してきたリフトベ−ス450の上に載置される。異券2を載置したリフトベ−ス450は、再びリジェクト部400bまで上昇して待機状態となる。一方、紙幣搬送口402から搬送された紙幣1が真券の場合には、その真券は、イジェクト部400aの下部に固定された紙幣出金駆動部420の上に設けられた一時保留板410に載置される。この際、リフトベ−ス450は、リジェクト部400bに待機した状態のままである。
【0157】
リフトベ−ス450には、図28に示されるように、先端にロ−ラ−451を備えたイジェクトロ−ラ−ア−ム452が設けられている。イジェクトロ−ラ−ア−ム452は、リフトベ−ス450がリジェクト部400bに待機している場合には、図28に示すようにリフトベ−ス450の下方に降ろされた状態となっている。
【0158】
しかし、リフトベ−ス450がイジェクト部400aに移動した際には、ロ−ラ−451が一時保留板410の上に載置された紙幣1に接触する。これによって、イジェクトロ−ラ−ア−ム452は、図28において軸453を中心に反時計回りに回動してリフトベ−ス450の内部に収納されるようになっている。イジェクトロ−ラ−ア−ム452は、真券の搬送時には、紙幣搬送口402から搬送されてくる紙幣1が丸まらないように、紙幣出金口401方向のスペ−スを狭める役割を持っている。また、出金時には、リフトベ−ス450が紙幣1に自重をかける妨げとならないようになっている。
【0159】
また、イジェクトロ−ラ−ア−ム452には、該ア−ム452のほぼ中心に一軸454によって連結されると共に、紙幣搬送口402の方向に水平に伸びたガイドア−ム455が連結されている。ガイドア−ム455は、リフトベ−ス450がリジェクト部400bに待機している時は、紙幣搬送口402とほぼ同じ高さでかつ水平状態になっている。しかし、リフトベ−ス450がイジェクト部400aに下降した時には、イジェクトロ−ラ−ア−ム452の収納動作によって、ガイドア−ム455は、軸454を中心に回動して水平状態を維持する。
【0160】
ガイドア−ム455は、真券がイジェクト部400aに搬送されてくる際に、羽根車407によって巻き上げられてイジェクト部400aの上方でジャムを起こさないようにするために設けられている。さらに、真券が、イジェクト部400aの入口付近で丸まることによって、次の紙幣1と衝突しないようにする目的もある。このように、搬送されてきた真券は、ガイドア−ム455によって上方に向かわないように押さえられながら、イジェクトロ−ラ−ア−ム452の傾斜に沿って、正常に一時保留板410の上に載置されるようになっている。
【0161】
図31および図32は、それぞれ紙幣1をイジェクト部400aに搬送している際および出金直前の一時保留板410と紙幣出金駆動部420の状態を示す図である。図31に示されるように、一時保留板410は、イジェクト部400aの下部に固定された紙幣出金駆動部420の上部に設けられている。紙幣1がイジェクト部400aに搬送されている際には、一時保留板410は、軸421を中心として回動可能な2つの前部回動ア−ム422および軸423を中心として回動可能な2つの後部回動ア−ム424によって持ち上げられた状態となっている。前部回動ア−ム422の方が、後部回動ア−ム424よりも急角度で立ち上げられているので、一時保留板410は、紙幣出金口401の方向がわずかに高く傾斜した状態となっている。
【0162】
このように、一時保留板410が傾斜することによって、一時保留板410の上に載置される紙幣1の後端を、イジェクト部400aの紙幣搬送口402側に揃えることが可能となる。紙幣搬送口402の側には、羽根車408が回転して、羽根408aによって紙幣1を一時保留板410に押しつけるようになっている。したがって、一時保留板410に載置されている紙幣1は、次の紙幣1がイジェクト部400aに搬送されてくる際に、一時保留板410の上に圧縮された状態におかれる。そのため、一時保留板410に載置されている紙幣1と新たにイジェクト部400aに搬送されてくる紙幣1とがぶつかる危険性がない。さらに、一時保留板410が紙幣出金口401の方向を上に傾斜しているので、紙幣出金口401の方向の空間が、紙幣搬送口402方向の空間よりも狭くなっている。このため、イジェクト部400aに搬送されてきた紙幣1が、紙幣出金口401側で丸まる等のトラブルを防止でき、正常なイジェクト動作が可能となる。
【0163】
図31および図32に示すように、一時保留板410には、紙幣出金駆動部420を構成するロ−ラ−425a,425bおよび搬送ベルト426が、一時保留板410からわずかに上方に突出可能となるように、各位置に合わせた2つの小長穴411a,411bおよび1つの大長穴412が設けられている。上述のように、一時保留板410は、2つの前部回動ア−ム422と2つの後部回動ア−ム424によって、イジェクト部400a側に持ち上げられている。そのため、出金時以外は、一時保留板410の上から、ロ−ラ−425a,425bおよび搬送ベルト426が突出しない状態となっている。
【0164】
図32は、出金直前に、一時保留部410が紙幣出金駆動部420に下降した状態を示す図である。後述するイジェクトシャッタ−ソレノイド440がオンとなることによって、2つの前部回動ア−ム422と2つの後部回動ア−ム424が、それぞれ軸421,423を中心に回動して、紙幣搬送口402の方向に倒れる。これによって、一時保留板410が、紙幣出金駆動部420に下降するようになっている。
【0165】
図28に示すように、前部回動ア−ム422と後部回動ア−ム424は、一時保留板410に固定されておらず、一時保留板410に接する部分には、それぞれロ−ラ−422a,424aが備えられている。前部回動ア−ム422と後部回動ア−ム424が倒れると、一時保留板410は、紙幣搬送口402の方向には移動せず、スム−ズに垂直方向に下降できるようになっている。したがって、一時保留板410が紙幣搬送口402の方向に移動しながら下降する場合に比べて、イジェクト部400aのスペ−スは小さくて済む。このため、装置の小型化を図ることができる。
【0166】
図32に示すように、一時保留板410が紙幣出金駆動部420に下降して重なった場合には、ロ−ラ−425a,425bおよび搬送ベルト426の他に、後述する紙幣検知プレ−ト427も、大長穴412から一時保留板410の上に出る。一方、出金の際に、一時保留板410上の紙幣1はリフトベ−ス450によって押されているので、紙幣検知プレ−ト427の上昇が抑制されている。したがって、紙幣検知プレ−ト427は、上方に紙幣1が存在するか否かを検知する機能を有する。この機能については、後述する。
【0167】
図33は、紙幣出金駆動部420の構造を示した斜視図である。ギア430は、紙幣収納装置下部に配置されたステッピングモ−タ700と、図示されていないギアを介して連結されている。ギア430は、軸431を介してロ−ラ−432と連結されいる。ロ−ラ−432とロ−ラ−433はベルト434に巻かれている。そして、ロ−ラ−433、ロ−ラ−435、ロ−ラ−425aおよびロ−ラ−425bは、軸436によって連結されている。
【0168】
また、搬送ベルト426は、ロ−ラ−435とロ−ラ−437に張設されている。さらに、搬送ベルト426のほぼ中央には、ロ−ラ−438が仲介ロ−ラ−として配置されている。したがって、ステッピングモ−タ700が回転することによって、ロ−ラ−425a,425bおよび搬送ベルト426(以後、適宜、「搬送ベルト426等」と記す)が回転可能となっている。
【0169】
一方、ギア430は、イジェクト下ロ−ラ−405と図示されないベルトを介して結ばれている。したがって、ステッピングモ−タ700が出金方向に回転すると、ロ−ラ−425a,425bおよび搬送ベルト426が出金方向に回転すると共に、イジェクト下ロ−ラ−405も出金方向に回転するようになっている。このため、イジェクト・リジェクト部400への紙幣1の搬送と紙幣1の紙幣出金口401への搬送が、1つのモ−タで行うことが可能となっている。したがって、装置のコストの抑制と共に、簡易な構造とすることによる故障の低減を図ることができる。
【0170】
なお、上記のように、一時保留板410は、出金する全ての紙幣1が一時保留板410の上に載置されるまで、紙幣出金駆動部420の側に下降しない。そのため、紙幣1を一時保留板410に載置している最中に、搬送ベルト426等が出金方向に回転していても、紙幣1と搬送ベルト426等とは接触できない。このため、一時保留板410に載置される紙幣1は、出金直前まで出金方向の駆動を受けないようになっている。
【0171】
図34は、イジェクト部400aとリジェクト部400bを隔てる回動式ア−ム485とリフトベ−ス450を抜き出して示した図である。回動式ア−ム485は、紙幣出金口401の側に配置された2つの回動式ア−ム485aと紙幣搬送口402の側に配置された2つの回動式ア−ム485bから成る。回動式ア−ム485a,485bは、図34に示す水平状態(図中のBの位置)を回動下限とする位置と、その状態からほぼ90度上方の回動上限位置(図中のCの位置)との間で、回動可能となっている。回動式ア−ム485a,485bは、紙幣1の幅より狭い幅で、リフトベ−ス450の4つ角に各1個づづ設けられた回動板456と接する位置に配置されている。
【0172】
そして、異券2を上方から押さえつけるための押さえ板488が、回動式ア−ム485の上に載置されている。押さえ板488の構造については、後述する。4個の回動板456は、各片側をリフトベ−ス450の外側に備えた各1本の軸457(図34において残り2本はみえていない)と連結されている。しかも、各回動板456は、図34に示すように、水平状態からA方向にのみ回動可能とされており、図示されないストッパ−によって、水平状態からAと逆方向には回動できないようになっている。
【0173】
紙幣搬送口402から異券2が搬送されてくると、CPU501からの命令にしたがって、リフトベ−ス450は、リジェクト部400bからイジェクト部400aへ下降する。この際、水平状態を保持する回動式ア−ム485に接触したリフトベ−ス450の回動板456は、図34に示すA方向に回動する。これによって、リフトベ−ス450は、回動式ア−ム485を回避してイジェクト部400aに下降できるようになっている。
【0174】
イジェクト部400aに下降したリフトベ−ス450は、異券2を載置すると、再びリジェクト部400bへ上昇移動する。図35は、リフトベ−ス450がリジェクト部400bに上昇移動する際の回動式ア−ム485aと回動板456の動きを、紙幣出金口401とその左側からみた図である。図35の(A)は、リフトベ−ス450が、イジェクト部400aにある状態を示したものである。この状態では、まだ回動式ア−ム485aと回動板456は接触していないため、両者とも水平状態を維持している。
【0175】
リフトベ−ス450が上昇して(B)のように、回動式ア−ム485aと回動板456が接触すると、回動板456はリフトベ−ス450の内側には回転できないため、水平を維持する。一方、回動式ア−ム485aは、上方に回動可能であるため、回動板456によって上方に押し上げられる。このようにして、リフトベ−ス450は、回動式ア−ム485aを上方に回動させながらリジェクト部400bへと移動する。
【0176】
回動式ア−ム485a,485bの軸486は、図示されていないストッパ−に連結されており、回動式ア−ム485a,485bは、下方に回動しないようになっている。さらに、そのストッパ−は、バネに連結されており、回動式ア−ム485bを水平に保持している。したがって、(C)のように、リフトベ−ス450がリジェクト部400bに移動した後は、上方に回動した回動式ア−ム485a,485bは、バネの復元力によって、元の水平状態まで戻る。
【0177】
図36は、リフトベ−ス450を、紙幣収納装置の下方からみた底面図である。リフトベ−ス450は、紙幣搬送口402側に2個のロ−ラ−458a,458bと、ほぼ中央に1個のロ−ラ−459と、紙幣出金口401側に近接して配置される2個のロ−ラ−460a,460bを備えている。各ロ−ラ−458a,458b,459は、紙幣出金駆動部420の各ロ−ラ−425a,425b,438とそれぞれ対向する位置に配置されている。
【0178】
また、近接して配置されたロ−ラ−460aとロ−ラ−460bは、紙幣出金駆動部420のロ−ラ−437に対向する位置に配置されている。したがって、出金の際に、リフトベ−ス450がイジェクト部400aに下降すると、出金すべき紙幣1をこれら上下の各ロ−ラ−425a,425b,435,437,458a,458b,459,460a,460bによって挟むようになっている。
【0179】
図37は、出金直前のリフトベ−ス450と紙幣出金駆動部420の各ロ−ラ−425a,425b,435,437,458a,458b,459,460a,460bによって紙幣1を挟んだ状態の側面図である。各ロ−ラ−458a,459,460aは、各軸461a,462,463とそれぞれ連結されている。なお、図37では紙幣1の裏となっていて見えないが、図36に示すように、各ロ−ラ−458b,460bは、各軸461b,463とそれぞれ連結されている。
【0180】
さらに、図36に示されるように、各軸461a,461b,462,463の両端は、各1個づつ計2個のバネ464a,464b,465,466を介して、リフトベ−ス450の内部に連結されている。したがって、出金する紙幣1の表面が出金方向で平らでない場合でも均一な圧力で紙幣出金口401に送り出すことができる。
【0181】
図38は、出金直前のリフトベ−ス450を、紙幣出金口401の方向からみた図である。リフトベ−ス450の両端に設けられた2個のロ−ラ−458a,458bとリフトベ−ス450の紙幣出金口401側に近接して設けられた2個のロ−ラ−460a,460bが図示されている。なお、ロ−ラ−459は、2個のロ−ラ−460a,460bの後方に位置するため、図を複雑にしないために図38から省略されている。図示されるように、紙幣出金口401からみて左右に紙幣1が不均一な状態であっても、均一な圧力で挟持されるようになっている。したがって、紙幣1を紙幣出金口401に向かってまっすぐに、搬送することが可能である。
【0182】
図39は、ロ−ラ−458bを紙幣出金口401の方向からみた拡大図である。図示されるように、ロ−ラ−458bの軸461bの両端は、別個の各バネ464bで連結されている。そのため、ロ−ラ−458bは、図示した中心線に対して傾斜可能である。したがって、紙幣1に局部的な凹凸があっても、均一な圧力がかけられるようになっている。なお、図39は、ロ−ラ−458bのみを示したものであるが、各ロ−ラ−458a,459も同様の構造となっている。
【0183】
図40は、紙幣搬送部200から異券2が搬送された際の、イジェクト・リジェクト部400の側面図である。図示されるように、リフトベ−ス450が、イジェクト部400aに移動した状態となっている。既に搬送されてきた異券2は、その上部に押さえ板488を載せて、回動式ア−ム485の上に載置されている。前述のようにリフトベ−ス450は、その4つ角に備えた回動板456が回動することによって回動式ア−ム485より下方に移動できる。
【0184】
しかし、回動式ア−ム485よりも幅が広い異券2と押さえ板488は、回動式ア−ム485より下方に移動できずに、イジェクト部400bに残される。なお、単に、回動式ア−ム485の上に異券2のみを載置するようにすると、異券2の折り癖やその重みによって、異券2は、回動式ア−ム485からイジェクト部400aに落ちる危険性がある。そこで、押さえ板488が、リジェクト部400bに配置されている。また、押さえ板488は、異券2の上部から圧縮することによって、狭いスペ−スになるべく多くの異券2を保存できるようにする機能も有している。
【0185】
図41は、押さえ板488を、イジェクト・リジェクト部400の壁面から取り外した状態の斜視図である。また、図42および図43は、それぞれ押さえ板488を装置上部からみた図および紙幣出金口401の方向(図41の矢印Aの方向)からみた図である。図41から図43に示すように、押さえ板488には、各フック489a,489bが設けられている。そして、各フック489a,489bを、それぞれイジェクト・リジェクト部400の壁面に設けられた溝490a,490bにはめ込むようになっている。
【0186】
各溝490a,490bの下端は、L字型となっており、この場所でのみ各フック489a,489bを挿入することが可能とされている。また、各溝490a,490bの下端は、回動式ア−ム485より下方にある。したがって、回動式ア−ム485より上方でのみ上下動可能な押さえ板488は、装置の動作中に各溝490a,490bから抜け出ないようになっている。
【0187】
なお、フック489aは、押さえ板488と同一平面上になるような形状となっている。一方、フック489bは、押さえ板488と同一平面上にならない形状となっている。かかる形状の違いを設けたのは、次の理由による。図46に示すように、図示されるイジェクト・リジェクト部400の右上には、異券2の満杯を知らせる機能を持たせたリジェクトフルセンサ−491が取り付けられている。リジェクトフルセンサ−491は、異券2を保存する場所の図46の紙面に対して裏側に配置されている。保存される異券2が増加すると、フック489bが、バネ492の弾性力に抗して調節ネジ493を押し上げる。調節ネジ493が上昇すると、これに伴って、小ア−ム494が上がるようになっている。そして、保存される異券2が所定量に達して、小ア−ム494が所定の傾斜になると、リジェクトフルセンサ−491がオンとなるようになっている。
【0188】
図44は、図26に示される状態を紙幣出金口401の方向からみた図である。リフトベ−ス450を駆動するモ−タであるイジェクトリフトモ−タ471は、イジェクト・リジェクト部400の裏(図44の右側)に設けられたリフトベ−ス駆動部470に配置されている。リフトベ−ス450は、リフトベ−ス駆動部470に突き出した駆動ア−ム450aを有している。イジェクトリフトモ−タ471のモ−タ軸471aには、円板472が連結されている。さらに、円板472は、回転ア−ム473を介してカム474に連結されている。
【0189】
回転ア−ム473には、図示されない磁石475が備えられている。また、カム474がほぼ垂直上部および垂直下部にきたときに、その磁石475と対向する位置に、それぞれ各1個のホ−ルセンサ−476が固定されている。一つは、リフトベ−ス450をリジェクト部400bに停止させるために設けられた、イジェクトリフトモ−タ上センサ−476aである。もう一つは、リフトベ−ス450をイジェクト部400aに停止させるために設けられたイジェクトリフトモ−タ下センサ−476bである。
【0190】
両ホ−ルセンサ−476ともに、磁石475と重なった時に、CPU501に信号を送る。これによって、イジェクトリフトモ−タ471が停止するようになっている。したがって、イジェクトリフトモ−タ471は、半回転単位で停止する。図44によれば、磁石475がイジェクトリフトモ−タ上センサ−476aと重なることによって、リフトベ−ス450が、リジェクト部400bに停止した状態となる。
【0191】
図45は、一時保留板410に出金する全ての紙幣1が載置された後あるいは異券2をリフトベ−ス450の上に載置する際に、リフトベ−ス450が一時保留板410の上に降りた状態を示した図である。回転ア−ム473は、図44の状態から半回転している。この状態で、カム474は、駆動ア−ム450aからはずれている。したがって、一時保留板410の上に載置されている紙幣1には、リフトベ−ス450の自重がかかった状態となっている。
【0192】
図46は、図45の状態を紙幣出金口401の左側からみた図である。リフトベ−ス450が一時保留板410の上に下降しても、この段階ではまだ一時保留板410は下方の紙幣出金駆動部420の側に降下していない。なお、紙幣出金駆動部420のロ−ラ−425a,425bと搬送ベルト426は、出金すべき紙幣1が全てイジェクト部400aに搬送された時点で、停止するようになっている。また、図46に示すように、前部回動ア−ム422は、各ア−ム441a,441b,441c,441dを介して、イジェクトシャッタ−ソレノイド440に連結されている。
【0193】
図47は、リフトベ−ス450が一時保留板410の側に下降した状態を示した図である。リフトベ−ス450が一時保留板410の上に降下すると、イジェクトリフトモ−タ471に連結した回転ア−ム473に備えられた図示されていないリフトセンサ−がオンとなる。これによって、イジェクトシャッタ−ソレノイド440がオンとなる。
【0194】
イジェクトシャッタ−ソレノイド440がオンとなると、前部回動ア−ム422が、各ア−ム441a,441b,441c,441dに引かれて倒れる。前部回動ア−ム422が倒れると、後部回動ア−ム424も紙幣出金口401と反対方向に倒れる。これによって、一時保留板410は、下方に移動して、紙幣出金駆動部420に重なる。なお、イジェクトシャッタ−ソレノイド440は、オンとなった直後にオフとなる。
【0195】
前部回動ア−ム422の軸421には、折れ曲がった形状の屈曲ア−ム442が連結されており、前部回動ア−ム422の回動に連動して回動するようになっている。そして、屈曲ア−ム442が回動して磁石445が停止する2つの位置には、各1個のホ−ルセンサ−443が固定されている。両ホ−ルセンサ−443の内、上方の所定位置に固定されているホ−ルセンサ−443は、後述するシャッタ−413が開いたことを知らせるイジェクトシャッタ−上センサ−443aである。また、下方の所定位置に固定されているホ−ルセンサ−443は、シャッタ−413が閉じたことを知らせるイジェクトシャッタ−下センサ−443bである。
【0196】
図46および図47に示されるように、一時保留板410の紙幣出金口401側であって、紙幣出金口401に対向する位置には、出金前に紙幣出金口401を塞ぐ機能を有するシャッタ−413が設けられている。また、このシャッタ−413は、一時保留板410と一体的に動作するように取り付けられている。したがって、一時保留板410の上下動作によって、紙幣出金口401が開閉可能となっている。かかる簡易な機構で紙幣出金口401を開閉可能とすることで、特別なシャッタ−機構を設ける必要がない。したがって、装置のコスト低減や故障の低減を図ることができる。
【0197】
屈曲ア−ム442が回動して、イジェクトシャッタ−上センサ−443aがオンとなると、同センサ−443aからCPU501に、シャッタ−413が開いたことを知らせる信号が送られる。また、一時保留板410の上に載置される紙幣1の上部からリフトベ−ス450の自重がかかっている。このため、紙幣出金駆動部420に備えられた紙幣検知プレ−ト427の下端に固定された磁石428が、ホ−ルセンサ−である紙幣有無センサ−429と重なる。イジェクトシャッタ−上センサ−443aと紙幣有無センサ−429の両センサ−がオンであることを確認してから、CPU501は、ステッピングモ−タ700を出金方向に駆動する。
【0198】
図48は、図47の状態を、紙幣出金口401の方向からみた図である。リフトベ−ス450は、一時保留板410の下降によって、図45で示された位置よりさらに低い位置に下降していることがわかる。この状態において、カム474は、図45の状態と同様に駆動ア−ム450aから離れている。したがって、一時保留板410上に載置れている紙幣1には、リフトベ−ス450の自重がかかった状態となっている。したがって、下方から紙幣1に圧力をかけて出金する場合と比べると、特別な加圧機構を設ける必要がない。したがって、装置のコスト低減や故障の低減を図ることができる。
【0199】
図49は、紙幣1の出金中における、紙幣検知プレ−ト427の動作の変化を示した図である。(A)に示す出金直前の段階では、紙幣検知プレ−ト427は、リフトベ−ス450の自重で一時保留板410に圧縮された紙幣1によって下方に押されている。そのため、紙幣検知プレ−ト427の下端に固定された磁石428が、出金する紙幣1の有無を検知する紙幣有無センサ−429に重なった状態(オン状態)となっている。
【0200】
しかし、(B)に示すように、紙幣1の後端が紙幣検知プレ−ト427より紙幣出金口401側に搬送されると、紙幣検知プレ−ト427は立ち上がり、紙幣有無センサ−429から磁石428が離れる(オフ状態)。そして、紙幣1の搬送が停止して、紙幣1の一部が紙幣出金口401から飛び出した状態に保持される。したがって、紙幣1が完全に装置外部に出てしまうことがないため、自動販売機等の利用者は、紙幣1を受け取りやすい。
【0201】
また、紙幣出金口401の直前には、図45から図48に示すように、イジェクト排出口センサ−444が設けられている。このセンサ−444は、紙幣1が抜き取られたか否かを検知するセンサ−である。イジェクト排出口センサ−444は、透過型の光式センサ−で、発光素子と受光素子の一対の素子から成っている。紙幣1が、発光素子と受光素子の間に入ると光が遮断され、それによって紙幣1の存在を検知できるようになっている。
【0202】
紙幣1が紙幣出金口401から抜き取られると、イジェクト排出口センサ−444がオフとなる。そして、紙幣1が存在しないことを知らせる信号が、CPU501に送られる。これによって、イジェクトリフトモ−タ471が回転して、リフトベ−ス450がリジェクト部400bへと上昇する。リフトベ−ス450は、一時保留板410と、図示されていないバネで連結されているので、リフトベ−ス450の上昇に伴い、一時保留板410も上方に持ち上げられる。このようにして、イジェクト・リジェクト部400は、紙幣1の搬送前である図28の状態に戻る。
【0203】
(6)紙幣格納部ドア
について
【0204】
紙幣収納装置の紙幣収納部300およびイジェクト・リジェクト部400の側面には、紙幣格納部ドア600が設けられている。紙幣格納部ドア600は、紙幣収納装置の修理および点検時ならびに紙幣の回収および補充時に開けられるようになっている。
【0205】
図50および図51は、カギ部601を、それぞれスタッカ−300aの内部かみた斜視図およびドア(以後、「紙幣格納部ドア」という)600の開く側からみた拡大図である。カギ部601は、紙幣格納部ドア600の開閉を検知するドアセンサ−601aと、紙幣格納部ドア600の施錠を行う施錠部601bとから構成されている。
【0206】
施錠部601bは、紙幣格納部ドア600に固定されたプレ−ト602と、装置本体側に備えられたフック603とから構成されている。プレ−ト602は、クランク状に立体的に曲げられた形状となっている。以後、このプレ−トを、「クランク型金具」という。クランク型金具602には、図示されるように、ドアセンサ−601aに検知可能な磁石606が固着されている。
【0207】
また、装置本体に備えられたフック603は、コの字形状となっている。以後、このフックを、「薄型フック金具」という。なお、図50(A)および(B)では、施錠部601bの構造および動作を理解しやすくするため、薄型フック金具603は宙に浮いたように示され、かつ後述するドアセンサ−601aは省略されている。
【0208】
図51に示すように、薄型フック金具603は、溝603aを有している。そして、施錠時において、薄型フック金具603は、クランク型金具602の一部であるプレ−ト602aに掛かる状態となる。紙幣格納部ドア600を開ける際には、図50(B)において、薄型フック金具603の面に、キ−604を差込んで時計回りに回転させる。
【0209】
すると、薄型フック金具603は、図51(B)に示すように、キ−差し込み口603eを中心として、矢印Xの方向に回動する。これによって、薄型フック金具603のツメ部603bが、プレ−ト602aからはずれる。それと同時に薄型フック金具603の下部603cがクランク型金具602を、矢印Y方向に押し出す。そのため、紙幣格納部ドア601は、キ−604を回すことによって、外側へと自動的に開くようになっている。
【0210】
また、薄型フック金具603は、スプリング605を介してスタッカ−300aに連結されている。スプリング605は、薄型フック金具603の固定点603dと、スタッカ−300aの固定点300dに接続されている。薄型フック金具603は、このスプリング605によって、紙幣格納部ドア600を開け、キ−604を離した際に、再び施錠時の状態に戻るように、付勢されている。
【0211】
したがって、再度、キ−604を差し込んで薄型フック金具603のロック状態を解除させないと、紙幣格納部ドア600を閉められないようになっている。これは、キ−604を装置内部に置いたまま施錠する危険性を回避するためである。
【0212】
また、図51に示すように、薄型フック金具603の上方向には、ドアセンサ−601aとして、ホ−ルセンサ−(以後、「紙幣格納部ドアセンサ−」という)が備えられている。施錠時には、図51(A)に示すように、紙幣格納部ドアセンサ−601aとクランク型金具602に固着されている磁石606が重なる。これによって、CPU501は、装置の動作を可能な状態としている。
【0213】
一方、図51(B)および図52に示すように、解錠時には、紙幣格納部ドアセンサ−601aと磁石606が離れる。なお、図52中の602Lは、施錠時のクランク型金具602の位置である。これにより、紙幣格納部ドアセンサ−601aは、オフとなる。CPU501は、リフトモ−タ333を回転させて、スタックア−ム332を上方に移動させた後、装置全体の動作を停止させる。
【0214】
スタックア−ム332を上方に移動させるのは、紙幣1の回収、補充あるいは点検等を容易に行うことができるようにするためである。また、その後に、装置全体の動作を停止するのは、紙幣1の回収等の作業中に、装置が作動すると、けがをする危険性があるためである。
【0215】
(7)制御部について
【0216】
図53および図54は、紙幣収納装置の各構成部の関係を示したブロック図である。制御部500が識別部100、紙幣搬送部200、紙幣収納部300、イジェクト・リジェクト部400および外部通信部508と信号のやり取りを行うことによって、紙幣収納装置の正確な動作が可能となっている。
【0217】
識別部MPU501aは、光式および磁気式センサ−から、入金された紙幣1の長さ、光透過パタ−ンおよび磁気パタ−ンの各種信号を受け取る。そして、識別部MPUは、記録されている千円札、5千円札および1万円札の各種紙幣の保存デ−タと比較して、いずれかの真券情報と一致すれば、所定の動作を行う。一方、デ−タが一致しない場合は、偽券と判断して、紙幣1が戻される。
【0218】
制御部500のCPU501は、紙幣搬送部200、紙幣収納部300、イジェクト・リジェクト部400等にある光式および磁気式センサ−から、紙幣1の存在、紙幣1の長さ、紙幣1の光透過パタ−ン等の信号を受け取り、装置の種々動作を司る部分である。ROM502には、各種紙幣の紙幣長の所定範囲のデータやその所定範囲に相当するステップ数範囲が記録されている。CPU501は、スタック入口センサー307を通過した紙幣1のステップ数から、その紙幣1が千円札と1万円のいずれかに属するか、それとも5千円札かを判断可能である。そして、CPU501は、後述する紙幣1の透過光量データと照らし合わせて、紙幣1の特定を行う。この結果、CPU501は、出金すべき紙幣と判断すれば出金動作を行い、そうでなければリジェクト処理を行う。
【0219】
RAM(1)503には、予め所定のステップで次のセンサ−からの信号を受け取ることを記憶させている。したがって、紙幣1が、あるセンサ−から他のセンサ−の間を所定のステップ範囲で行けなかった場合には、紙幣1がその経路の途中でジャムを起こしたと判断されるようになっている。また、RAM(1)503には、ステッピングモータ700の加速領域におけるエンコーダパルス検出時間や、定速領域における所定時間あたりのエンコーダパルス数が記憶されている。したがって、CPU501が、RAM(1)503から、これらのデータを読み出して実際のエンコーダパルスと比較することによって、過負荷検出できるようになっている。
【0220】
また、RAM(1)503には、各紙幣1の紙幣長方向を3分割した各ブロック毎の平均透過光量パターンと、紙幣全長の平均透過光量データが記憶されている。そして、紙幣1が存在しないときのバックグラウンドデータも更新可能に記憶されている。さらに、RAM(1)503には、入金および出金動作の直後に、スタッカ−300aの最上位の紙幣1を出金と反対方向に駆動するステップ数を24とするデ−タも記憶されている。
【0221】
RAM(2)504は、各センサ−から送られてくる紙幣1の長さや磁気パタ−ン等のデ−タやエラ−があった回数等を、バックアップデ−タとして記憶させておく部分である。電源部507は、紙幣収納装置の電源であって、24V直流電源を使用している。直流電源を用いることによって、ステッピングモ−タ700を使用することができる。また、直流24Vとすることによって、漏電しても交流100V電源より安全である。また、外部の電源を利用するので、装置の軽量化が図れる。さらに、電圧が安定しているので装置の動作が安定するメリットがある。
【0222】
(8)ステッピングモ−タについて
【0223】
本発明の紙幣収納装置の駆動源は、紙幣搬送部100に設けられた識別部搬送モ−タ108と、装置下部の設けられたステッピングモ−タ700の2個である。したがって、紙幣識別部100から紙幣搬送部200に送られた後の紙幣1の搬送およびスタッカ−300a内部から紙幣出金口401まで紙幣1を搬送する動作は、1個のステッピングモ−タ700を使用して行われている。
【0224】
ステッピングモ−タ700の回転数は、300〜1500ppsまで可変となっている。なお、回転数の範囲は、この範囲に限定されるものではない。紙幣1の迅速な入出金動作とジャム等のエラ−の発生を考慮して、かかる範囲としている。また。装置の電源をオンにした時の初期動作は、ステッピングモ−タ700が正逆に回転して、紙幣搬送部200や紙幣収納部300等の内部に配置されている各搬送ベルトが回転する動作となっている。装置の動作に異常がないことを確認するためである。
【0225】
また、温度計等の温度検知素子を装置内部の所定箇所に備えることによって、外部の温度が所定の温度以下に低下した際に、ステッピングモ−タ700に電流を流すことも可能である。ステッピングモ−タ700が作動している時には、該モ−タが高温となる。したがって、冬に外界の温度が下がっても、装置の動作に支障が生じる危険性は少ない。
【0226】
しかし、装置の動作が停止している場合には、装置内部の温度も外界の気温に近くなるため、装置の動作に支障を期たす場合がある。例えば、平温時(20度前後)に比べて、動作が遅くなる場合、凍結して動作しない等のごとくである。装置は、外壁で囲まれているので、発熱する部材を設けることによって、このようなトラブルを低減することができる。
【0227】
上記の発熱する部材として、例えば、温風器等のヒ−タを装置内部に備えることも考えられる。しかし、装置に余分な部材が多くなると、装置の小型化やコストダウンの障害となる。
【0228】
そこで、装置内の温度が低い時であって、かつステッピングモ−タ700が回転していない時には、該モ−タ700に電流を流して、装置内部を暖める方法を採るようになっている。このような方法を採ることによって、長時間モ−タが停止しているシステムでも、装置動作に支障を期たす危険性を低減できる。
【0229】
(9)入金動作について
【0230】
図55に、入金動作のフロ−チャ−トを示す。以下、フロ−チャ−トに従って、紙幣収納装置の入金動作を説明する。
【0231】
最初に、紙幣収納装置の電源部507をオンにして、入金待機状態とする(ステップS1)。この状態で、まず、紙幣1を紙幣識別部100の紙幣挿入口101に入れ、入金動作を開始する(ステップS2)。すると、紙幣識別部100の検知部100aに備えた入口センサ−102が、紙幣1が挿入されたか否かを検知する(ステップS3)。なお、挿入された紙幣1の幅が、正規の紙幣1の幅よりも狭いために、入口センサ−102に検出されない場合には、元の待機状態のままである。
【0232】
入口センサ−102が紙幣1を検知すると、紙幣識別部100にある電磁クラッチ109がオンになるとともに、識別部搬送モ−タ108が入金方向に回転する(ステップS4)。
【0233】
識別部搬送モ−タ108が入金方向に回転すると、検知部100aの搬送ベルト114と一時待機部100bの搬送ベルト113が、入金方向に回転する。そのため、紙幣1は、搬送ベルト114と6個のロ−ラ−117に挟持されたまま、さらに奥へとすすむ。紙幣1が、2個の磁気式識別センサ−105、検知部100aに配置された側部光式識別センサ−104および中央光式識別センサ−103を通過する間に、紙幣1の長さ、光透過パタ−ンおよび磁気パタ−ンが検知される(ステップS5)。
【0234】
紙幣1の後端が、側部光式識別センサ−104を通過したところで、識別部搬送モ−タ108が停止する(ステップS6)。ここで、識別部MPU501aは、磁気式識別センサ−105および各光式識別センサ−103,104から受け取った識別デ−タと、予め識別部MPU501aに記憶されている各種紙幣1のデ−タとを比較して、真券か否かを判断する(ステップS7)。
【0235】
その結果、検知された各識別デ−タが、3種の紙幣のいずれのデ−タとも一致しない場合には、識別部MPU501aは、入金された紙幣1を偽券と判断する。そして、識別部搬送モ−タ108を入金と逆方向に回転させる(ステップS8)。これによって、紙幣1は、検知部100aの搬送ベルト114によって紙幣挿入口101へと搬送される。
【0236】
紙幣挿入口101に戻された偽券の後端が、中央光式識別センサ−103を通過したところで、識別部搬送モ−タ108が停止し、偽券の引き抜きを待つ状態となる(ステップS9)。そして、入口センサ−102からの信号を受けた識別部MPU501aは、紙幣1が引き抜かれたか否かを判断する(ステップS10)。紙幣1が引き抜かれて、入口センサ−102が紙幣1を検知しなくなったら、紙幣収納装置は、次の紙幣1の入金を待つ状態に戻る(ステップS11)。一方、紙幣1が引き抜かれなかった時には、識別部MPU501aは、ステップS9に戻って紙幣1の引き抜きを待つ。
【0237】
また、挿入された紙幣1の識別デ−タが、いずれかの紙幣デ−タと一致した場合には、入金された紙幣1が真券と判断される。そして、識別部搬送モ−タ108が再び入金方向に回転して(ステップS12)、紙幣1は、各搬送ベルト114,113の駆動を受けて一時待機部100bへと進む。
【0238】
紙幣1の後端が、検知部100aの引き抜き防止レバ−112の下部に設けた引き抜き防止レバ−センサ−106を通過した段階で、識別部搬送モ−タ108が停止し、かつ電磁クラッチ109がオフとなる(ステップS13)。したがって、紙幣1は一時待機部100bで停止するとともに、引き抜き防止レバ−112が検知部100aの下方より立ち上がる。これによって、以後、紙幣1の引き抜きは不可能となる。
【0239】
次に、紙幣識別部100は、制御部500に真券信号を送るとともに、外部通信部508を通じて自動販売機等の上位機の制御部509に入金通知を行う(ステップS14)。紙幣識別部100は、紙幣搬送部200を制御する制御部500からの真券確認信号を待つ状態となる(ステップS15)。
【0240】
一方、紙幣搬送部200と制御部500は、電源をオンにした後、紙幣識別部100のステップS1の待機状態と同様に待機状態となっている(ステップS16)。そして、紙幣搬送部200と制御部500は、ステップS14における紙幣識別部100からの真券信号が入力されると、その真券信号を確認できたか否かを判断する(ステップS17)。
【0241】
その結果、制御部500(具体的には、CPU501)が、真券信号を受け取った場合には、紙幣1の種類に応じた各スタッカ−300a,300bの各搬送ゲ−トソレノイド232,262に信号を送る。そして、CPU501は、千円搬送ゲ−ト231または5千円搬送ゲ−ト261のいずれかを開けるとともに、ステッピングモ−タ700を回転させる(ステップS18)。これによって、紙幣搬送部200の搬送ベルト202が入金方向に駆動されて、入金準備が始まる。なお、紙幣1が1万円札の場合には、1万円搬送ゲ−ト291は常時開いているので、搬送ゲ−トソレノイドのオンは行われない。したがって、ステッピングモ−タ700のみを回転させることによって、入金準備が行われる。
【0242】
一方、真券信号を受け取っていないと判断された場合には、CPU501は、ステップS16に戻って待機状態を維持する。
【0243】
入金準備が行われると、CPU501は、真券確認信号を識別部MPU501aに送る(ステップS19)。識別部MPU501aは、CPU501から真券確認信号を受け取ったか否かを判断する(ステップS20)。
【0244】
その結果、識別部MPU501aが真券確認信号を受け取った場合には、識別部搬送モ−タ108が入金方向に回転して、一時待機部100bにある紙幣1は、紙幣搬送部200へと搬送される(ステップS21)。この段階では、電磁クラッチ109がオフなので、次の紙幣1を紙幣挿入口101から挿入しても、搬送ベルト114は駆動せず、次の紙幣1は取り込まれない。その後、識別部MPU501aは、CPU501からの再度の真券確認信号を待つ状態となる(ステップS22)。
【0245】
一方、紙幣搬送部200に送られた紙幣1は、途中でジャム等のトラブルが生じなければ、搬送路センサ−255を通過する(ステップS23)。紙幣1の後端が搬送路センサ−255を通過したところで、CPU501は、真券確認信号を識別部MPU501aに送る(ステップS24)。
【0246】
識別部MPU501aは、真券確認信号を受け取ったか否かを判断する(ステップS25)。その結果、真券確認信号を受け取った場合には、識別部搬送モ−タ108が停止する(ステップS26)。一方、真券確認信号を受け取っていない場合には、ステップS22の待機状態を維持する。
【0247】
識別部搬送モ−タ108が停止すると、紙幣識別部100は、次の紙幣1を入金できる待機状態に戻り、紙幣識別部100の動作が終了する(ステップS27)。
【0248】
一方、搬送路センサ−255を通過した紙幣1は、各搬送ゲ−ト231,261,291のいずれかの搬送ゲ−トから、各スタッカ−300a,300b,300cのいずれかに向かう。ここで、千円札の場合を例にとると、千円札は、紙幣搬送口301に設けられたスタック入口センサ−307を通過する(ステップS28)。なお、ステップS28からステップS33については、千円札を例に説明するが、他の紙幣の場合も同様のステップとなっている。
【0249】
千円札の後端が、スタック入口センサ−307を通過すると、CPU501はスタック入口センサ−308からの信号を受けて、紙幣1が完全にスタッカ−300a内部に収納されるのに十分な時間を経過してから、ステッピングモ−タ700を停止させる(ステップS29)。ステッピングモ−タ700の停止によって、搬送機構部309の各搬送ベルト304,312が停止する。そして、紙幣1は、スタッカ−300a内部に収納されている紙幣1の上面を押さえているスタックア−ム332の上に載置される。
【0250】
次に、リフトモ−タ333が、スタックア−ム332を上昇させる方向に半回転する(ステップS30)。スタックア−ム332の上に載置された紙幣1は、各搬送ベルト304、312に接触してスタックア−ム332の2本のプレ−トの間から下方に向かって力を受ける。続いて、紙幣1は、スタックア−ム332の2本のプレ−トの間から下方にすり抜けて、プッシャ−プレ−ト325上の紙幣1の上に載置される。その後、スタックア−ム332は、搬送ベルト304,312より上方の所定位置で停止する。
【0251】
スタックア−ム332が停止すると、CPU501の命令に従って、ステッピングモ−タ700が入金方向に回転する(ステップS31)。なお、この実施の形態では、ステッピングモ−タ700が入金方向に24ステップ回転するようになっている。入金時にスタッカ−300aの奥まで入りきらなかった紙幣1があっても、かかる整頓動作によって、収納されている他の紙幣1と端部を揃えて載置される。
【0252】
次に、スタックア−ム332は、リフトモ−タ333が半回転することによって下降し、スタックリフト下センサ−341bがオンになる位置で停止する(ステップS32)。この結果、プッシャ−プレ−ト325は、入金された紙幣1を含め収納されている紙幣1を積載した状態で、スタックア−ム332に押さえられる。
【0253】
そして、千円ゲ−トソレノイド232がオフになり(ステップS33)、千円搬送ゲ−ト231が閉じると共に、上位機の制御装置509に入金の登録通知が行なわれる。以上で、紙幣収納装置の入金動作が終了する(ステップS34)。そして、同時に上位機の制御装置509の動作も終了する(ステップS35)。
【0254】
(10)出金動作について
【0255】
次に、千円札2枚を出金する場合を例にして、出金動作について説明する。図56および図57に、出金動作のフロ−チャ−トを示す。以下、フロ−チャ−トにしたがって、紙幣収納装置の出金動作を説明する。
【0256】
自動販売機等の上位機の制御装置509から、千円札2枚を出金するための信号となる出金通知が、CPU501に送られる(ステップS51)。
【0257】
CPU501は、紙幣識別部100に入金禁止信号を送り、紙幣識別部100を入金禁止状態とする(ステップS52)。先の出金通知によって、CPU501は、紙幣収納部300と紙幣搬送部200を制御する。すなわち、紙幣搬送部200のイジェクトゲ−トソレノイド227がオンとなり、イジェクト搬送ゲ−ト226が開かれる。同時に千円ゲ−トソレノイド232がオンとなり、千円搬送ゲ−ト231が開かれる。そして、リフトモ−タ333の回転によって、スタックア−ム332が上昇する(ステップS53)。プッシャ−プレ−ト325に積載された紙幣1の最上位にある紙幣1の上面が、各搬送ベルト304,312に接したところで、プッシャ−プレ−ト325が停止する。この際、エンドストッパ−334は、バネ335の弾性力によって紙幣1の後端を軽く下に押し下げた状態となっている。
【0258】
次に、ステッピングモ−タ700が出金方向に回転することによって、各搬送ベルト304,312が出金方向に駆動される(ステップS54)。これによって、収納されている千円札の一番上の紙幣が、スタッカ−300aから紙幣搬送口301に向かって搬出される。この際、2枚目の千円札も、各搬送ベルト304,312により出金方向の駆動を受ける。しかし、紙幣搬送口301に設けられた分離ロ−ラ−310、フリクションロ−ラ−320およびロ−ラ−ガイド311によって、スタッカ−300aの外に飛び出さないようにされている。
【0259】
スタッカ−300aの外部へと搬出された千円札の先端が、スタック入口センサ−307を通過すると(ステップS55)、スタック入口センサ−307が、CPU501に信号を送る。すると、CPU501は、スタック紙幣ブレ−キソレノイドをオンにする(ステップS56)。この結果、搬送機構部309の後端に設けられたストッパ−ア−ム348が回動して、ブレ−キア−ム350の先端350aに接続されたブレ−キ部材351が、2枚目の千円札の後端に押しあてられる。同時に、ロ−ラ−ア−ム353が回動して、その先端にあるロ−ラ−354が1枚目の千円札の上面から下方に向かって押す。これによって、1枚目の千円札と各搬送ベルト304,312とが引き離される。
【0260】
1枚目の千円札は、スタック入口上ロ−ラ−302とスタック入口下ロ−ラ−303の接触部および分離ロ−ラ−310とロ−ラ−317とによる挟持部分で搬送ベルト304の駆動を受けて、紙幣搬送部200へと搬送される。千円札がスタック入口センサ−307を通過している最中には、同センサ−307によって、紙幣1の長さと光透過パタ−ンが検知される(ステップS57)。
【0261】
千円札の後端が、スタック入口センサ−307を通過する(ステップS58)と、スタック紙幣ブレ−キソレノイドがオフとなる(ステップS59)。なお、ブレ−キア−ム350とロ−ラ−ア−ム353は、下がったままでスタッカ−300a内部の紙幣1が搬送されないようにしている。
【0262】
次に、CPU501は、スタック入口センサ−307からのデ−タ信号を受けて、重送していないかどうか判断する(ステップS60)。その結果、重送していると判断すれば、ステップS61にすすみ、後述するようなリジェクト処理を行う。
【0263】
一方、重送していないと判断されると、CPU501は、紙幣1が正しいか否かの判定、すなわち千円札か否かの判定をする(ステップS62)。その結果、別の種類の紙幣1であれば、ステップS61のリジェクト処理が行なわれる。また、紙幣1の識別の結果、真券と判断された場合には、千円札は、既に開かれているイジェクト搬送ゲ−ト226から、イジェクト部400aに搬送される(ステップS63)。
【0264】
次に、CPU501は、指定枚数の紙幣1、すなわち、この例では2枚の千円札が搬送されたか否かを判断する(ステップS64)。1枚しか搬送していなければ、さらに紙幣1をイジェクト部400aに送るべく、ステップS54以下の動作を繰り返す。なお、2枚目の千円札がイジェクト部400aに搬送されるまで、先に搬送された千円札は、イジェクト部400aの一時保留板410に載置された状態となっている。
【0265】
一方、指定枚数の紙幣1、すなわち、この例では2枚の千円札が、イジェクト部400aに搬送されると、ステッピングモ−タ700が、入金方向に回転する(ステップS65)。この実施の形態では、24ステップ回転する。
【0266】
次に、リフトモ−タ333を半回転させることによって、スタックア−ム332が、下方に向かって移動し、プッシャ−プレ−ト325を紙幣搬送口301より下方に押し下げる(ステップS66)。続いて、CPU501からイジェクトゲ−トソレノイド227および千円ゲ−トソレノイド232に信号が送られ、各ソレノイド227,232がオフとなる。これによって、イジェクト搬送ゲ−ト226および千円搬送ゲ−ト231が、閉められる(ステップS67)。
【0267】
次に、CPU501は、イジェクトリフトモ−タ471を回転させて、リフトベ−ス450を下降させる(ステップS68)。イジェクトリフトモ−タ471の回転によって、回転ア−ム473に備えられた図示されないリフトセンサ−がオンになる。CPU501は、リフトセンサ−がオンとなっているか否かを確認して(ステップS69)、オンになっていなければ、エラ−処理を要することとなる(ステップS70)。
【0268】
一方、リフトセンサ−がオンとなっていれば、CPU501は、イジェクトシャッタ−ソレノイド440をオンにする(ステップS71)。これによって、一時保留板410が、紙幣出金駆動部420に重なる。そして、リフトベ−ス450によって下方に押しつけられた紙幣1によって、紙幣検知プレ−ト427の下部に備えられた磁石428が、イジェクト紙幣有無センサ−429と重なる。
【0269】
一方、一時保留板410の下降によって、紙幣出金口401のシャッタ−413が開く。この時、屈曲ア−ム442が回動して、イジェクトシャッタ−上センサ−443aがオンとなる。CPU501は、イジェクト紙幣有無センサ−429とイジェクトシャッタ−上センサ−443aが共にオンになっているか否かを確認する(ステップS72)。その結果、両センサ−429,443aがオンになっていなければ、エラ−処理を要することとなる(ステップS70)。
【0270】
一方、両センサ−429,443aがオンになっていれば、CPU501は、ステッピングモ−タ700を出金方向に回転させる(ステップS73)。これによって、一時保留板410の上に載置されている全ての紙幣1が、出金方向の駆動を受ける。紙幣1が、出金方向に移動して紙幣検知プレ−ト427を通過すると、同プレ−ト427が立ち上がる。CPU501は、イジェクト紙幣有無センサ−429がオフになったか否かを確認する(ステップS74)。
【0271】
その結果、イジェクト紙幣有無センサ−429がオンのままであれば、エラ−処理を要することとなる(ステップS75)。一方、イジェクト紙幣有無センサ−429がオフとなれば、ステッピングモ−タ700が停止する(ステップS76)。この状態では、紙幣1の先端が、紙幣出金口401から半分程度出た状態となっている。
【0272】
そして、紙幣1が引き抜かれて、イジェクト排出口センサ−444がオフになるまで、待機状態が維持される(ステップS77)。紙幣1が全て引き抜かれると、CPU501は、イジェクト排出口センサ−444がオフになったか否かを判断する(ステップS78)。イジェクト排出口センサ−444がオフにならなければ、ステップS76に戻りそのままの状態におかれる。
【0273】
イジェクト排出口センサ−444がオフになると、イジェクトリフトモ−タ471が回転して、リフトベ−ス450が上昇する(ステップS79)。また、一時保留板410が、紙幣出金駆動部420から上方に持ち上げられる。これによって、紙幣出金口401のシャッタ−413が閉まる。
【0274】
次に、CPU501は、入金禁止状態となっていた紙幣識別部100に入金禁止解除信号を送出する。これによって、紙幣識別部100の入金禁止状態が解除され(ステップS80)、紙幣識別部100は、元の状態に戻り、その動作を終了する(ステップS81)。
【0275】
一方、CPU501は、上位機制御装置509に出金動作を完了した旨の通知を行い、紙幣収納装置の動作が終了する(ステップS82)とともに、上位機制御装置509の動作も終了する(ステップS83)。
【0276】
(11)リジェクト動作について
【0277】
次に、上述したような正常な入金動作あるいは出金動作が行われない場合、すなわち、ジャム、重送、異券混入等が生じた場合に行うリジェクト動作について説明する。
【0278】
入金動作あるいは出金動作の途中でトラブルが起きた場合は、ジャムを生じた紙幣1を取り除き易くする機構、紙幣1をリジェクト部400bに搬送する機構およびエラ−表示がされてからエラ−処理を行う機構を採用することによって、対応している。これらの中で、紙幣1をリジェクト部400bに搬送するリジェクト動作とは、入金の途中でジャムが起こったとき、出金時に紙幣1が重送を起こしたときまたは出金時に異券2が搬送されたときの3つの場合に行う動作をいう。
【0279】
また、エラ−処理は、例えば、出金時にジャムが生じた場合等のごとく、リジェクト部400bに紙幣1を搬送できない場合に、管理者が人力で行う処理をいう。
【0280】
図58に、入金時に紙幣1がジャムを起こした場合のリジェクト動作のフロ−チャ−トを示す。以下、該フロ−チャ−トにしたがって説明する。紙幣1を紙幣識別部100の紙幣挿入口101に入れてから、紙幣搬送部200に搬送されるまでの動作は、入金動作と共通なので省略する。
【0281】
紙幣1が紙幣搬送部200を移動中、どこかでジャムを起こすと、リジェクト動作を開始する(ステップS101)。なお、ジャムの発生検知は、次のように行われる。すなわち、CPU501は、紙幣1が搬送路センサ−255から所定範囲のステップ数で、各スタッカ−300a,300b,300cの入口に備えたスタック入口センサ−307等まで到達しない場合に、ジャムが発生したものと判断する。ステッピングモ−タ700のステップ数で判断するのは、紙幣1が両センサ−255,307の間を正常に通過する場合のステップ数が、所定の範囲にはいるためである。
【0282】
ジャムが発生した場合には、まず、ステッピングモ−タ700の回転が停止し、搬送ベルト202の駆動が停止する。(ステップS102)。ここで、ジャムには、紙幣1が搬送路センサ−255に検知されたままの状態で発生するものと、同センサ−255に検知されない位置で発生するものとがある。前者のジャムは、紙幣1(特に、千円札)が千円札用スタッカ−300aの紙幣搬送口301の直前にある千円搬送ゲ−ト231に入る部分で発生するジャムである。
【0283】
また、後者のジャムは、例えば、5千円札あるいは1万円札がそれぞれの搬送ゲ−ト261,291に入る部分で発生するジャムである。かかる2通りのジャムによって、リジェクト動作が異なるため、CPU501は、まず、搬送路センサ−255が紙幣1に反射した光を受光して、オンになっているかを判断する(ステップS103)。
【0284】
その結果、搬送路センサ−255がオンになっている場合には、CPU501は、紙幣搬送部200に信号を送りステッピングモ−タ700を回転させる。これによって、搬送ベルト202が出金方向に駆動する(ステップS104)。駆動は予め設定してあるステップ数だけ可能であるが、この実施の形態では、最大200ステップまで駆動できるようになっている。
【0285】
搬送ベルト202を出金方向に駆動した結果、CPU501は、紙幣1が搬送路センサ−255を通過して、同センサ−255がオフになったか否かを判断する(ステップS105)。
【0286】
その結果、搬送路センサ−255がオフになっていない場合には、搬送ベルト202を出金方向に駆動することによっては、ジャムを解消することはできない。そのため、エラ−処理を要するようになる(ステップS106)。一方、搬送路センサ−255がオフとなった場合には、CPU501からの信号によって、ステッピングモ−タ700が停止する(ステップS107)。
【0287】
この段階では、イジェクト・リジェクト部400の紙幣搬送口402の直前にあるイジェクト搬送ゲ−ト226のゲ−ト外面に紙幣1が存在する。そのため、この状態からは直接、紙幣1をリジェクト部400bに搬送できない。そこで、まず、CPU501は、開いている搬送ゲ−トを閉じるために、搬送ゲ−トソレノイド(通常の場合、千円ゲ−トソレノイド232)をオフにする(ステップS108)。
【0288】
次に、ステッピングモ−タ700を入金方向に回転させて、搬送ベルト202を入金方向に駆動する(ステップS109)。かかる駆動は、予め設定したステップ数だけ可能であるが、この実施の形態では、最大300ステップまで駆動できるようにしている。搬送ベルト202を所定のステップ数だけ入金方向に駆動している最中に、CPU501は、紙幣1の後端が搬送路センサ−255を通過してオフになったか否を判断する(ステップS110)。
【0289】
その結果、紙幣1の後端が、搬送路センサ−255を通過せずに、該センサ−255がオンのままであれば、エラ−処理を要することになる(ステップS111)。一方、搬送路センサ−255がオフになれば、紙幣1がイジェクト搬送ゲ−ト226を通過していることになる。CPU501は、イジェクトゲ−トソレノイド227をオンにして、イジェクト搬送ゲ−ト226を開く(ステップS112)。
【0290】
次に、CPU501は、イジェクト・リジェクト部400に信号を送り、イジェクトリフトモ−タ471を回転させる。リジェクト部400bに待機していたリフトベ−ス450が下方に移動し、ジャムを起こした紙幣1を受け入れる体制となる(ステップS113)。
【0291】
次に、CPU501は、ステッピングモ−タ700を回転させる。これによって、搬送ベルト202が出金方向に駆動される(ステップS114)。ジャムを起こした紙幣1は、イジェクト・リジェクト部400のイジェクト搬送ゲ−ト226からリフトベ−ス450の上に搬送される。この際、イジェクト入口センサ−403によって、紙幣1の通過が確認される(ステップS115)。
【0292】
この後、イジェクトリフトモ−タ471が回転して、リフトベ−ス450がリジェクト部400bへ上昇する。リフトベ−ス450は、回動式ア−ム485を押し上げて、押さえ板488と異券2を積載した状態で、リジェクト部400bに停止する(ステップS116)。以上の動作によって、千円搬送ゲ−ト231の近傍でジャムを起こした紙幣1のリジェクト動作が終了する(ステップS117)。
【0293】
一方、5千円札または1万円札が、各搬送ゲ−ト261,291の近傍でジャムを起こした場合には、千円札がジャムを起こした場合より単純な動作となる。それは、ジャムの際に、紙幣1がイジェクト搬送ゲ−ト226の部分になく、該ゲ−ト226の開き動作の邪魔にならないからである。具体的には、ステップS103において、搬送路センサ−255がオフになっていると、上記のステップS112以降の動作に入る。
【0294】
以上のように、入金時にジャムが生じたとき、単に、エラ−表示をさせるのではなく、リジェクト部400bに紙幣1を搬送するようにしている。これは、入金方向にジャムが生じたとき、反対方向に駆動すると解消する可能性が高いためと、その処理によって装置の保守労力を減少できるためである。なお、再入金処理を行わせるのではなく、リジェクト処理させるのは、紙幣1が傷んでいることによって、再度のジャムが発生する危険性があるからである。
【0295】
図59に、重送した場合あるいは異券2が出金された場合におけるリジェクト動作のフロ−チャ−トを示す。以下、このフロ−チャ−トにしたがって説明する。
【0296】
自動販売機等の上位機制御装置509から出金信号がCPU501に送られてから、各スタッカ−300a,300b,300cより紙幣が搬出されるまでの動作は、前述した通常の出金動作と共通するので省略する。
【0297】
2枚目の紙幣1が、1枚目の紙幣1と密着した状態で各スタッカ−300a,300b,300cから搬出される、いわゆる重送が起こる場合がある。紙幣1は、スタック入口センサ−307を通過している最中に、同センサ−307によって、紙幣1の長さと光透過パタ−ンを検知する。
【0298】
CPU501は、紙幣1の長さと光透過パタ−ンから、紙幣1が重送していないか、あるいは異券2でないかを判断する。通常、重送した場合は、紙幣1の長さが所定の長さより長くなるため、紙幣1の長さのみの識別で足りる。
【0299】
しかし、ほとんど重なった状態の紙幣1であれば、1枚の紙幣1の長さとほぼ同じであり重送を検知することが困難となる。そこで、光透過パタ−ンを測定することによって、紙幣1の重送を判断している。重送、あるいは異券2の搬送が行われると、CPU501は、以下の動作を開始する(ステップS151)。
【0300】
重送した紙幣1または異券2が搬送されたと判断した場合には、まず、イジェクト入口センサ−403の近傍に、紙幣1が存在しているかを確認する(ステップS152)。そして、複数枚の紙幣1を出金している際、先に進行中の紙幣1が、イジェクト入口センサ−403の近傍に存在している場合には、該紙幣1がイジェクト入口センサ−403を通過するまで、搬送ベルト202の駆動を継続する(ステップS153)。
【0301】
一方、イジェクト入口センサ−403の近傍に紙幣1がない場合には、ステッピングモ−タ700を停止する。この際、スタック紙幣ブレ−キソレノイドはオンのままとし、スタッカ−300aは次の紙幣1の出金を停止した状態となっている(ステップS154)。
【0302】
次に、CPU501は、イジェクトリフトモ−タ471を回転させる。その結果、リジェクト部400bに待機していたリフトベ−ス450が下方に移動して重送した紙幣1や異券2を受け入れる体制となる(ステップS155)。
【0303】
その後、CPU501は、ステッピングモ−タ700を回転させる(ステップS156)。これによって、搬送ベルト202が出金方向に駆動し、搬送ベルト202上の重送した紙幣1や異券2が、リフトベ−ス450の上に搬送される。
【0304】
次に、紙幣搬送口402に設けたイジェクト入口センサ−403によって、重送した紙幣1または異券2の通過が確認される(ステップS157)。そして、イジェクトリフトモ−タ471が回転して、リフトベ−ス450がリジェクト部400bへ上昇する。リフトベ−ス450は、押さえ板488と重送した紙幣1または異券2を積載した状態で、リジェクト部400bに停止する。なお、重送した紙幣1等が確認されなければ、エラ−処理を要することとなる(ステップS158)。
【0305】
一方、搬送ベルト202の駆動は、予め設定したステップ数だけ移動できるようになっている。この実施の形態では、最大1000ステップの設定が可能である。ステッピングモ−タ700は、設定したステップ数だけ回転し、重送した紙幣1等が、まだスタック入口センサ−307あるいは搬送路センサ−255に検知される位置にあるか否かの確認動作が行われる(ステップS159)。
【0306】
確認の結果、重送した紙幣1が上記各センサ−307,255に検知される位置にある場合には、エラ−処理を要することとなる(ステップS160)。一方、重送した紙幣1等が検知されず、重送した全ての紙幣1がリフトベ−ス450に載置された場合には、イジェクトリフトモ−タ471によるリフトベ−ス450の上動作が行われる(ステップS161)。続いて、スタック紙幣ブレ−キソレノイドがオフとなり、重送防止機構が解除される(ステップS162)。
【0307】
次に、ステッピングモ−タ700が入金方向に回転して、再度の重送が生じないように、前述のいわゆる紙幣の整頓動作が行われる(ステップS163)。引き続いて、次の紙幣1の出金動作に入る(ステップS164)。かかる一連の動作によって、リジェクト動作が終了する(ステップS165)。
【0308】
次に、出金時において、ジャムが生じた場合の動作について説明する。以下、図60のフロ−チャ−トにしたがって説明する。
【0309】
まず、CPU501は、紙幣1の搬送中にジャムが発生したことを、前述のように、各センサ−307,255間のステップ数によって検知する(ステップS181)。そして、CPU501は、ステッピングモ−タ700の回転を停止させる。その結果、搬送ベルト202の駆動が停止する(ステップS182)。
【0310】
各搬送ゲ−トソレノイド232,262はオンのまま維持される(ステップS183)。各搬送ゲ−ト231,261の近傍でジャムを起こしている場合に、各搬送ゲ−ト231,261を閉めると、紙幣1の破損につながるからである。また、ジャムを起こした紙幣1の除去作業ができないからである。
【0311】
なお、出金時のジャムについては、リジェクト部400bへの搬送を行わず、エラ−処理を要することとなる(ステップS184)。これによって、紙幣収納装置の管理者は、搬送路ドア部201を開けて、紙幣1の除去を行うことになる。かかる動作によって、出金時のジャムに対するリジェクト動作が終了する(ステップS185)。
【0312】
なお、上記の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例であり、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形した実施が可能である。
【0313】
例えば、図14等に示されるスタックア−ム332は、図61に示すような構造のものでも良い。以下、図61に基づいて、スタックア−ムの構造および動作について説明する。なお、図61に示したスタッカ−300a内部に設けられたプッシャ−プレ−ト325、搬送機構部309等は、図14等に示したスタッカ−300aと共通するので、説明を省略する。
【0314】
スタックア−ム801は、分離ロ−ラ−310と同軸である軸318と連結した駆動手段によって回動可能となっている。また、スタックア−ム801は、プッシャ−プレ−ト325に積載された紙幣1の上側端面を押さえることが可能な幅で、かつ搬送機構部309の幅より広い2本のア−ムから構成されている。
【0315】
2本のア−ムの長さは、紙幣1の先端部分を押さえるだけの長さとなっている。スタックア−ム801の主な役割は、入金時に入金されてくる紙幣1と積載されている紙弊1との衝突を防止し、かつ出金時に、プッシャ−プレ−ト325の上昇を抑制することである。したがって、図61に示す長さであっても、かかる役割は十分に果たせる。また、スタックア−ム801の長さを短くすると、スタックア−ム801の駆動機構を小型化できるメリットもある。
【0316】
次に、スタックア−ム801を用いたスタッカ−300aの内部に、紙幣1を搬送する入金動作および同スタッカ−300aの外部に、紙幣1を搬送する出金動作について説明する。
【0317】
まず、入金動作について、図62のフロ−チャ−トと図61に基づいて説明する。
【0318】
紙幣1の入金の際には、スタックア−ム801は、スタッカ−300aの内部にア−ムを回動させて、収納されている紙幣1の上面からプッシャ−プレ−ト325を押し下げた位置であるA部に停止している。かかる待機状態から入金動作が開始する(ステップS231)。
【0319】
入金待機状態では、収納されている紙幣1の上面と各搬送ベルト304,312の間には空間が形成されている。したがって、スタック入口上ロ−ラ−302に巻かれた搬送ベルト304の駆動によって入金されてくる紙幣1は、すでに収納されている紙幣1と衝突せずに、スタッカ−300aの内部に搬送される。入金されてくる紙幣1は、スタックア−ム801にその先端を載せた状態で、収納されている紙幣1の上面にたわんだ状態で積載される(ステップS232)。
【0320】
次に、スタックア−ム801が、軸318を中心に、図61において反時計回りに回動する(ステップS233)。プッシャ−プレ−ト325は、図示されていないバネの弾性力で上昇する。スタックア−ム801が図示されるB部まで回動すると、入金された紙幣1は、スタックア−ム801の間から抜けて、収納されている紙幣1の上に積載される。それと同時に、プッシャ−プレ−ト325は、入金された紙幣1を各搬送ベルト304,312に接触させた状態で停止する(ステップS234)。
【0321】
スタックア−ム801は、B部からさらに回動を続けて、スタッカ−300a外部のC部で停止する(ステップS235)。次に、ステッピングモ−タ700の回転によって、スタック入口上ロ−ラ302が出金方向と反対方向に駆動される。すなわち、入金された紙幣1が収納された紙幣1と端部を揃えて載置される、いわゆる整頓動作が行われる(ステップS236)。
【0322】
かかる整頓動作が完了すると、スタックア−ム801は、図61においてC部から時計回りに回動する(ステップS237)。スタックア−ム801がB部にきた時点以後、スタックア−ム801は、入金された紙幣1の上面からプッシャ−プレ−ト325を押し下げる(ステップS238)。この押し下げは、プッシャ−プレ−ト325を上方に付勢するバネに抗して行われる。
【0323】
そして、スタックア−ム801は、A部まで回動して停止する(ステップS239)。かかる一連の動作をもって、入金動作が終了する(ステップS240)。
【0324】
図63は、図61に示すスタッカ−300aの出金動作のフロ−チャ−トである。以下、図63のフロ−チャ−トおよび図61に基づいて、出金動作を説明する。
【0325】
出金動作の前には、スタックア−ム801は、図61に示すA部にてプッシャ−プレ−ト325を押し下げている。かかる待機状態から出金動作が開始始する(ステップS251)。まず、上位機制御装置509から、制御部500に出金信号が出される(ステップS252)。スタックア−ム801は、図61において反時計回りに回動する(ステップS253)。
【0326】
プッシャ−プレ−ト325は、図示されていないバネの弾性力によって、スタックア−ム801の先端の上昇に追随して上昇する(ステップS254)。そして、スタックア−ム801が図示されるB部にきた時点で、プッシャ−プレ−ト325は、収納されている紙幣1の上面を各搬送ベルト304,312に接触させた状態で停止する(ステップS255)。スタックア−ム801は、さらに回動を続けC点で停止する(ステップS256)。
【0327】
次に、ステッピングモ−タ700が回転して、各搬送ベルト304,312が出金方向に駆動される(ステップS257)。各搬送ベルト304,312の駆動によって、収納されている紙幣1の最上位にある紙幣1が、紙幣搬送口301からスタッカ−300aの外部へと出金される(ステップS258)。
【0328】
出金後、各搬送ベルト304が出金方向と反対方向に駆動されて、収納されている紙幣1の端部を揃える、いわゆる整頓動作が行われる。これにより、出金の際にスタッカ−300aの外方向に飛び出た紙幣1が、スタッカ−300aの正規の位置に戻される(ステップS259)。整頓動作が終了すると、スタックア−ム801は、C部から図61において時計回りに回動してB部までくる(ステップS260)。
【0329】
スタックア−ム801は、B部からA部に至る過程で、プッシャプレ−ト325を、図示されないバネの上方への付勢に抗して押し下げる(ステップS261)。そして、スタックア−ム801は、A部で停止するとともに、プッシャプレ−ト325が停止する(ステップS262)。かかる一連の動作によって、出金動作が終了する(ステップS263)。
【0330】
なお、スタックア−ム801は、モ−タ以外の駆動、例えばゼンマイやバネ等の弾性力を利用して回動できるようにしても良い。
【0331】
上記の各実施の形態における紙幣収納装置に使用される部材や構造は、次に示すような部材等としても良い。
【0332】
たとえば、図14に示すような搬送ベルト304は、長期間、紙幣収納装置を使用するにつれて摩耗する。一方、スタッカ−300aの内部あるいは外部に搬送される紙幣1は、図16に示すようにスタック入口上ロ−ラ−302、ロ−ラ−317、分離ロ−ラ−310に挟持される。
【0333】
このため、搬送ベルト304が摩耗すると、搬送ベルト304,312、分離ロ−ラ−310による紙幣1の挟み込みがあまくなる。したがって、分離作用が低下し、重送が起き易くなる恐れがある。
【0334】
そこで、図64から図67に示すような、搬送ベルト304の摩耗に追随して搬送ベルト304を下方に押し下げて、挟み込む力を一定に維持するベルト摩耗追随機構部810を設けるようにしても良い。
【0335】
図64および図65は、それぞれベルト摩耗追随機構部810の側面図および斜視図である。以下、これらの図にしたがって、ベルト摩耗追随機構部810の構造について説明する。
【0336】
図示されるように、ベルト摩耗追随機構部810は、搬送ベルト304の下側にある下側搬送ベルト304bの上面に接する位置に設けられたロ−ラ−811と、搬送ベルト304の上側にある上側搬送ベルト304aの上面に接する位置に設けられたロ−ラ−812とを連結する支柱813とを有している。支柱813の支柱上端部813aは、支柱813とほぼ直角方向に配置されたプレ−ト814のプレ−ト先端部814aと連結されている。
【0337】
さらに、支柱813は、搬送ベルト304の摩耗に追随して鉛直方向に上下可動となるように軸815を有している。また、ロ−ラ−816は、上側搬送ベルト304aの下面に接する位置に固定されている。但し、ロ−ラ−816は、支柱813と連結していない。プレ−ト814の一部とスタッカ−300aの上壁とは、ロ−ラ−811およびロ−ラ−812が下方に付勢されるように、バネ817を介して連結されている。また、プレ−ト814のプレ−ト先端部814bは、固定されている。
【0338】
したがって、搬送ベルト304が摩耗すると、プレ−ト814が図64において時計回りに回動して、支柱813が下方に移動する。すなわち、プレ−ト814がプレ−ト先端部814bを中心に回動して、ロ−ラ−812は上側搬送ベルト304aをロ−ラ−816との間で挟み続ける。一方、ロ−ラ−811は、搬送ベルト304の摩耗量と同量分だけ下方に下がることによって、下側搬送ベルト304bを下方に押し下げる。プレ−ト先端部814bは、時計回りにのみ回動可能なワンウェイクラッチ818に固定されている。したがって、支柱813は、一旦下降すると上昇できない構造となっている。
【0339】
図66および図67に、ベルト摩耗追随機構部810の有無によるスタッカ−入口の状態を比較して示す。まず、図66に示すベルト摩耗追随機構部810がない場合について説明する。搬送ベルト304が摩耗して、元の厚み(Aとする)からBに減ると、分離ロ−ラ−310のロ−ラ−上面と搬送ベルト304の下面との距離Cが、C−(A−B)に減る。そのため、搬送ベルト304と分離ロ−ラ−310による紙幣1の挟持力が低下して、重送しやすくなる。
【0340】
そこで、図67に示すようなベルト摩耗追随機構部810を設けると、このような問題がなくなる。ベルト摩耗追随機構部810のロ−ラ−811は、搬送ベルト304の摩耗分、すなわちA−Bだけ下降する。したがって、ロ−ラ−811の下降によって、搬送ベルト304が、わずかにスタッカ−300aの内部に向かって傾斜する。このため、分離ロ−ラ−310の上面と搬送ベルト304との間隔は、C−(A−B)よりもCに限りなく近い距離Dとなる。この動作は、搬送ベルト304の摩耗に追随して行われるため、常に、分離ロ−ラ−310の上面と搬送ベルト304との距離は、ほぼ一定に保たれる。したがって、分離作用が一定に保たれる。
【0341】
なお、搬送ベルト304が摩耗し続けて切れた場合には、紙幣収納装置が使用不可能となる。そこで、かかる状態を防止すべく、搬送ベルト304が一定の厚みに達した時点で同ベルト304を含めた他の消耗部材(例えば、ロ−ラ−)の交換を知らせる機構を付けてもよい。例えば、図64に示すワンウェイクラッチ818の回転量が所定量に達した時点で、制御部500を通じて警告ランプが点灯するようにする方法も考えられる。
【0342】
また、ベルト摩耗追随機構部810の一部に、赤外線センサ−の発光素子を設けることによって、スタッカ−300aの壁面に設けた赤外線センサ−の受光素子とのズレによる光量変化を検知して警告するようにしても良い。
【0343】
また、図9に示すような搬送ゲ−ト231の各ツメの内側の構造について、中央のツメ231aと両サイドのツメ231b,231cを逆にすることも可能である。
【0344】
図68に、図9に示す千円搬送ゲ−ト231のツメ231aの裏構造と、同ゲ−ト231の各両端のツメ231b,231cの裏構造とを逆転した搬送ゲ−トを示す。両サイドの各ツメ231b、231cの裏側には、それぞれ各ロ−ラ−820,821,822,823とこれらに張設されたベルト824が設けられている。ベルト824は、ステッピングモ−タ700の回転によって駆動される搬送ベルト202に従動して回転する機構となっている。
【0345】
また、千円搬送ゲ−ト231が閉じた時に中央のツメ231aの裏側に位置する部分には、ベルト825が設けられている。ベルト825は、各ロ−ラ−826,827,828に張設され、ステッピングモ−タ700に従動して回転できるようにされている。
【0346】
ロ−ラ−829は、ベルト825に巻かれたロ−ラ−827と対向する位置に配置されている。さらに、ロ−ラ−830は、ロ−ラ−822とベルト824を挟持する位置に設けられている。ロ−ラ−830は、搬送ベルト211に巻かれている。
【0347】
したがって、搬送ベルト202と搬送ベルト211の駆動によって搬送された千円札は、開いた千円搬送ゲ−ト231に入る際に、両端の2本のベルト824に接触して、千円札用スタッカ−300aに向かう。次に、千円札の両側の先端部分が、それぞれベルト824とロ−ラ−830に巻かれた搬送ベルト211との間に引き込まれる。この際同時に、千円札の中央先端部分は、ベルト825とロ−ラ−829の間に引き込まれる。このように、千円札先端が局部的にベルト等の駆動を受けることなく、千円札用スタッカ−300aにスム−ズに引き込まれる。
【0348】
また、ステッピングモ−タ700に噛み合うギアの比やプ−リ−の径を変更したり、あるいはステッピングモ−タ700と別個のモ−タで駆動することによって、ベルト825を搬送ベルト211よりも高速で駆動することも可能である。これによって、千円搬送ゲ−ト231から千円札用スタッカ−300aに紙幣1を搬送する際に、紙幣1の先端を積極的に引っ張るように搬送することが可能となる。
【0349】
なお、5千円搬送ゲ−ト261も、千円搬送ゲ−ト231と同じ構造と機構を有している。そのため、5千円札が入金された際には、上述の千円札と同様の動作で5千円札用スタッカ−300bに搬入される。
【0350】
また、1万円搬送ゲ−ト291は、中央の1本のツメからなる形状であるが、千円搬送ゲ−ト231の中央のツメ231aと同じ構造と機構を有している。そのため、1万円札の先端の中央部分は、図68に示す中央のツメ231aの下方に配置されたベルト825と同位置に配置されたベルトの駆動を受ける。
【0351】
なお、5千円搬送ゲ−ト261、1万円搬送ゲ−ト291も、ステッピングモ−タ700と別個に備えられたモ−タによって高速で紙幣1の搬送を行うことが可能である。
【0352】
このように、各搬送ゲ−ト231,261,291の裏側に駆動ベルトを設けることにより、紙幣搬送部200からほぼ直角に各スタッカ−300a、300b、300cに曲がって入る搬送経路であっても、ジャムがを起こりにくくなる。なお、ジャムを防止するための方法の一つは、紙幣1の搬送経路を急激に曲げないようにすることである。しかし、このようにすると、紙幣収納装置が大型化してしまう。このため、この実施の形態では、紙幣1の搬送経路をほぼ直角にして、かつロ−ラ−およびベルトを有効に活用することによって、装置の小型化を達成している。
【0353】
また、上述した各実施の形態で採用している重送防止手段としてのブレーキアーム350と、分離手段としてのローラーアーム353は、所定の軸を中心として回動する構造としているが、かかる構造に限定されない。垂直方向に上下動する構造としても良い。さらに、ブレーキアーム350と、ローラーアーム353は、連動する機構としなくても、別個独立に動作するようにしても良い。しかし、別個独立に動作するようにした場合には、両アーム350,353を同時に紙幣1に接触させるか、若しくはローラーア−ム353を少し遅らせて紙幣1に接触させるようにする必要がある。かかる微妙なタイミングで両ア−ム350,353を動かすよりも、連動式の動作とするのが好ましい。
【0354】
また、ブレーキアーム350のブレーキ部材351は、ゴム以外の材料を用いても良い。また、ブレーキ部材351に付ける滑り止めの横溝に替えて、ブレーキ部材351の表面に多くの凸部をつけるようにしても良い。さらに、ローラーアーム353の先端には、ローラー354以外の回転部材、たとえば、あらゆる方向に回転自在なボールをつけても良い。また、ローラーアーム353は、バネ355によって上方に付勢されるようにして、重送防止を解除した際に、特別な駆動源を必要とせずに、分離動作も解除できるようにしている。しかし、ゴムなどのバネ以外の弾性体を用いても良く、また、電動で分離動作を解除する方向にローラーアーム353を動かすようにしても良い。
【0355】
また、スタック入口センサー307は、発光素子と受光素子を対向させた透過型光センサーとしているが、反射型光センサー等の他のセンサーを用いても良い。さらに、発光素子と受光素子を、上述の実施の形態と上下逆に取り付けても良い。また、ブレーキアーム350を動かすための信号を制御部500に送る検知手段と、紙幣長を測定するセンサーとを共通のスタック入口センサー307としているが、別個に備えても良い。
【0356】
また、上述の実施の形態では、ローラーアーム353は、最も上にある紙幣1の上から下方に押し下げて、二枚目以下の紙幣1に搬送手段の駆動が及ばないようにしている。しかし、積載されている紙幣1をスタッカー300aの下方から搬出する場合には、重力に抗して、出金すべき一番下にある紙幣1の上から二枚目以下の紙幣1を押し上げて、搬送手段からの駆動が及ばないようにすることもできる。さらに、出金すべき紙幣1の上からではなく、二枚目の紙幣の上から押し下げても良い。また、上述の実施の形態では、挟持手段を、出金方向に回転不能な分離ローラー310としているが、分離ローラー310以外の両方向回転自在なローラーやベルトを適用しても良い。
【0357】
また、スタック入口センサー307は、上述の実施の形態では、2個あるいは4個としているが、3個あるいは5個以上備えるようにしても良い。ただし、センサーを多くすると、紙幣長の測定に正確を期すことができる反面、汚れの影響による測定誤差が多くなったり、それを防ぐべくセンサー部のクリーニングの手間を要するので、4個以下が好ましい。
【0358】
また、紙幣収納部300は、紙幣1を積層して収納する各スタッカ−300a,300b,300cが、上から千円札用、5千円札用、1万円札用と積載された構造に限定されず、任意の順番に積載した構造でも良い。また、各スタッカ−300a,300b,300cが積載された構造に限定されず、これらを並列させた構造でも良い。
【0359】
さらに、現在の日本においては、上述のように、千円札、5千円札、1万円札の3種紙幣用のスタッカ−を備えることによって、最も好ましい紙幣収納装置となるが、時代の要請や使用の要求に合わせて1種類の紙幣用の装置としたり、2種類用としたり、4種類以上の紙幣に対応するようにしても良い。
【0360】
例えば、千円札、5千円札または1万円札のいずれか1種類のスタッカ−を1または2以上備えるものでも、千円札と5千円札、1万円札と千円札または1万円札と5千円札のみを収納するスタッカ−を1または2以上備えるようにしたものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0361】
【図1】本発明の実施の形態である紙幣収納装置の全体の構成を表したブロック図である。
【図2】図1の紙幣収納装置における制御部の構成および制御部とその他の構成部との関係を示したブロック図である。
【図3】図1幣収納装置の詳細な構成を示した全体側面図で、主要部品を一部重ね合わせて示した図である。
【図4】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣識別部の側面図で、主要部品を一部重ね合わせて示した図である。
【図5】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣識別部から蓋部分を取り除いた状態の平面図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図6】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣搬送部を示す図であり、搬送路ドア部を開いた状態の斜視図である。
【図7】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣搬送部の主要部品を示す側面図で、主要部品を一部を重ね合わせて示す図である。
【図8】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣搬送部を紙幣挿入口と反対方向からみた詳細構成を示す図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図9】図1から図3の紙幣収納装置の搬送ゲ−ト部分を、紙幣識別部の方向から見た斜視図である。
【図10】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣収納部を構成する千円札用スタッカ−を示す斜視図である。
【図11】図10に示される千円札用スタッカ−に備えられたスタック入口センサ−とその周辺を示す要部側面図である。
【図12】図10の千円札用スタッカ−の搬送機構部を外した状態の斜視図である。
【図13】図10の千円札用スタッカ−の出口に備えられたロ−ラ−ガイドおよびその周辺を示す図である。
【図14】図10の千円札用スタッカ−の入金待機状態の側面図で、主要部品の一部を重ねて示す図である。
【図15】図14の千円札用スタッカ−を装置の上方からみた平面図で、主要部品の一部を重ねて示す図である。
【図16】図10の千円札用スタッカ−から紙幣が搬出される際の状態を、紙幣搬送口の方向からみた図である。
【図17】図10の千円札用スタッカ−の出金直前の状態を示す側面図で、主要部品の一部を重ねて示す図である。
【図18】図17のプッシャ−プレ−トとそれを上方に付勢するプッシャ−スプリングを抜き出して示す図である。
【図19】図17のプッシャ−プレ−トの一部を構成する可動式プッシャ−プレ−トの揺動動作を示す図である。(A)は、収納されている紙幣の右側の厚みaと左側の厚みbが、ほぼ等しい状態を示す。(B)は、収納されている紙幣の右側の厚みaが、左側の厚みbより薄い状態を示す。(C)は、収納されている紙幣の右側の厚みaが、左側の厚みbより厚い状態を示す。
【図20】図10の千円札用スタッカ−から紙幣が出金される直前の状態を示す側面図である。
【図21】図14および図20の、千円札用スタッカ−のストッパ−部材であるエンドストッパ−とその周辺部分を示した図である。(A)は、入金待機状態を示す。(B)は、出金時の状態を示す。
【図22】図14の千円札用スタッカ−を紙幣搬送口と反対方向からみた図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図23】図20の千円札用スタッカ−を紙幣搬送口と反対方向からみた図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図24】図17の千円札用スタッカ−の重送防止機構が働いている状態を示す図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図25】図10に示すスタッカ−から紙幣が曲がって搬出される状態を、スタッカーの上方から見た図である。
【図26】図25と同じ状態を、スタック入口センサーが4個の場合を例に示した図である。
【図27】図1から図3の紙幣収納装置のイジェクト・リジェクト部の斜視図である。
【図28】図27のイジェクト・リジェクト部の側面図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図29】図27のイジェクト・リジェクト部の紙幣搬送口に設けられたイジェクト下ロ−ラ−とその周辺部材を示した斜視図である。
【図30】図27のイジェクト・リジェクト部の紙幣搬送口に紙幣が搬入されている状態を、紙幣搬送口の方向からみた図である。
【図31】図27のイジェクト・リジェクト部の出金前における、一時保留板と紙幣出金駆動部の状態を示した斜視図である。
【図32】図27のイジェクト・リジェクト部の出金直前に、一時保留部と紙幣出金駆動部とが重なった状態を示す斜視図である。
【図33】図27のイジェクト・リジェクト部の一部である紙幣出金駆動部の構造を示した斜視図である。
【図34】図27のイジェクト・リジェクト部の回動式ア−ムとリフトベ−スを抜き出して示した分解斜視図である。Aは、回動板が回動可能な方向を示す。Bは、回動式ア−ムが水平状態を保持している位置を示す。Cは、回動式ア−ムが、下方からのリフトベ−スの上昇によって上方に回動した位置である。
【図35】図27のイジェクト・リジェクト部のリフトベ−スが、リジェクト部に上昇する際に、回動式ア−ムと回動板の動きを、紙幣出金口の方向とその左側面方向からみた図である。(A)は、リフトベ−スがイジェクト部から上方に移動する前の状態を示す。(B)は、リフトベ−スがリジェクト部に向かって上昇し、回動板が回動式ア−ムを上方に回動させている状態を示す。(C)は、リフトベ−スが、リジェクト部への移動を完了した状態を示す。
【図36】図27のイジェクト・リジェクト部のリフトベ−スを、紙幣収納装置の下方からみた底面図である。
【図37】図27のイジェクト・リジェクト部の出金直前における、リフトベ−スと紙幣出金駆動部の各ロ−ラ−によって紙幣を挟んだ状態を模式的に示す側面図である。
【図38】図37に示すリフトベ−スの内部構造を、紙幣出金口の方向からみた図である。
【図39】図38に示すロ−ラとその周辺部分の拡大図である。
【図40】図27のイジェクト・リジェクト部のリフトベ−ス上に異券が搬送された際の、イジェクト・リジェクト部の側面図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図41】図27のイジェクト・リジェクト部の押さえ板を、これと係合する溝を示す斜視図である
【図42】図41の押さえ板を装置上部からみた平面図である。
【図43】図41の押さえ板を紙幣出金口の方向(図中のA方向)からみた側面図である。
【図44】図28のイジェクト・リジェクト部を、紙幣出金口の方向からみた図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図45】図40のイジェクト・リジェクト部を、紙幣出金口の方向からみた図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図46】図45のイジェクト・リジェクト部の側面図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図47】図27のイジェクト・リジェクト部の、出金直前の状態を示す側面図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図48】図47のイジェクト・リジェクト部を紙幣出金口の方向からみた図で、主要部品の一部を重ね合わせて示す図である。
【図49】図47のイジェクト・リジェクト部の、紙幣検知プレ−トの動作の変化を透過的に示す図である。(A)は、一時保留板上にある紙幣を出金する直前の状態の紙幣検知プレ−トとその周辺の状態を示す。(B)は、一時保留板上にある紙幣が出金方向に移動して、紙幣検知プレ−トが上方に立ち上がった状態を示す。
【図50】図1から図3の紙幣収納装置の紙幣格納部ドアに設けられたカギの開閉状態を、スタッカ−内部からみた斜視図である。(A)は、施錠時であり、(B)は開錠時の状態である。
【図51】図1から図3の紙幣収納装置のカギ部の一構成部である施錠部の開閉状態を、紙幣格納部ドアの開く側からみた拡大図である。(A)は、施錠時であり、(B)は解錠時の状態である。
【図52】図1から図3の紙幣収納装置のカギ部を、紙幣収納装置の上方からみた図である。602Lは、施錠時のクランク金具の位置を示す。
【図53】図1から図3の紙幣収納装置の各構成部の関係の一部を示すブロック図である。
【図54】図51以外の、図1から図3の紙幣収納装置の各構成部を示すブロック図である。
【図55】図1から図3の紙幣収納装置の入金動作を示すフロ−チャ−トである。
【図56】図1から図3の紙幣収納装置の出金動作を示すフロ−チャ−トである。
【図57】図56のフロ−チャ−トの続きを示す図である。
【図58】図1から図3の紙幣収納装置の入金時に、紙幣がジャムを起こした場合のリジェクト動作のフロ−チャ−トを示す。
【図59】図1から図3の紙幣収納装置の出金時に、重送した場合あるいは異券が搬送された場合におけるリジェクト動作のフロ−チャ−トを示す。
【図60】図1から図3の紙幣収納装置の出金時に、紙幣がジャムを起こした場合の動作のフロ−チャ−トを示す。
【図61】図1から図3の紙幣収納装置において、その実施の形態で示したスタックア−ムに換えて、スタッカ−の紙幣搬送口近傍に回動式のア−ムを備えた場合のスタッカ−の側面断面図である。
【図62】図61のスタッカ−を備えた紙幣収納装置の入金動作を示すフロ−チャ−トである。
【図63】図61のスタッカ−を備えた紙幣収納装置の出金動作を示すフロ−チャ−トである。
【図64】図1から図3の紙幣収納装置に、ベルト摩耗追随機構部を付加した場合の構造を示した図である。
【図65】図64のベルト摩耗追随機構部とその周辺を示す斜視図である。
【図66】図64のベルト摩耗追随機構部が無い場合において、搬送ベルトが摩耗した場合の搬送ベルトと分離ロ−ラ−との位置関係を示す図である。
【図67】図64のベルト摩耗追随機構部を備えた場合において、搬送ベルトが摩耗した場合の搬送ベルトと分離ロ−ラ−との位置関係を示す図である。
【図68】図9に示す千円搬送ゲ−トの中央のツメの裏構造と、同ゲ−トの各両端のツメの裏構造とを逆転した千円搬送ゲ−トを、紙幣識別部の方向からみた斜視図である。
【図69】従来の紙幣収納装置の重送防止機構の近傍を示す図である。
【符号の説明】
【0362】
100 紙幣識別部
100a 検知部
100b 一時待機部
101 紙幣挿入口
200 紙幣搬送部
300 紙幣収納部
300a 千円札用スタッカ−(収納室)
300b 5千円札用スタッカ−(収納室)
300c 1万円札用スタッカ−(収納室)
301 紙幣搬送口
304 搬送ベルト(搬送手段)
307 スタック入口センサ−(検出手段,センサー)
308a センサーカバー
308b センサーカバー
309 搬送機構部
310 分離ローラー(挟持手段)
312 搬送ベルト(搬送手段)
325 プッシャープレ−ト(積載プレ−ト)
332 スタックア−ム
350 ブレーキアーム(重送防止手段)
353 ローラーアーム(分離手段)
354 ローラー(回転部材)
355 バネ
400 イジェクト・リジェクト部
400a イジェクト部
400b リジェクト部
401 紙幣出金口
500 制御部
501 CPU
501a 識別部MPU
503 RAM(1)
504 RAM(2)
505 表示部
507 電源部
508 外部通信部
700 ステッピングモ−タ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納する収納室と、その収納室の紙幣搬送口に、紙幣の幅方向に配置される少なくとも2個のセンサーと、各センサーから送出される検知信号を受け、その検知信号を受けた時間間隔から各センサーを通過した通過距離を算出すると共に、両センサーから検知信号を受け始めた時点の時間差若しくは検知信号を受け終えた時点の時間差から紙幣の搬送角度を算出し、その搬送角度と上記通過距離とから正しい紙幣長を算出する制御部とを備えていることを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣収納装置において、前記制御部は、少なくとも前記正しい紙幣長のデータを利用して紙幣の種類を識別すると共に、前記収納室から搬出される紙幣が出金すべき正規の紙幣と異なる異券であると判断した際、出金せずにその異券のみを保留するリジェクト処理を行うことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の紙幣収納装置において、前記センサーを4個備え、前記制御部は、その内の任意に選んだ2個のセンサーからの検知信号を基に算出した第一の正しい紙幣長のデータと、残りの2個のセンサーからの検知信号を基に算出した第二の正しい紙幣長のデータとを利用して、第三の正しい紙幣長を算出することを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の紙幣収納装置において、前記センサーは、発光素子と受光素子とから構成される透過型光センサーであることを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項5】
請求項4記載の紙幣収納装置において、前記センサーの発光素子および受光素子の内少なくともいずれか一方は、センサーカバーを備えていることを特徴とする紙幣収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【公開番号】特開2009−46314(P2009−46314A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293839(P2008−293839)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願平10−334929の分割
【原出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】