説明

紙幣識別処理装置

【課題】入口センサ機能と識別センサ機能を兼ね備えるとともに、受光素子の受ける光量に応じて発光素子の発光量を調整する自動調整機能を備えた紙幣識別処理装置であって、該光センサが装置外部からの光を受けるようなことがあっても、入口センサ機能と識別センサ機能のいずれにおいても誤った判別あるいは識別をしてしまう不都合を解消させた紙幣識別処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣の待機状態において発光素子が発光していない時の受光素子の受光量を測定し、この受光量が第1の受光量と札有検知レベルの間の値として設定した第1の閾値より大きいときに、前記自動調整機能における発光素子の発光量を低下させることを禁止する。そして、発光素子が発光していない時の受光素子の受光量が第1の受光量と第1の閾値の間の値として設定した第2の閾値より大きいときに前記自動調整機能を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別処理装置に係り、特に、紙幣挿入口から挿入される紙幣の挿入を検知する入口センサ機能と、その後、搬送手段によって搬送される該紙幣の種別等を識別する識別センサ機能を兼ね備えた光センサを具備する紙幣識別処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣識別処理装置は、その紙幣挿入口から紙幣が挿入された際に、その挿入を検知することにより搬送手段を駆動させ、これによって搬送される紙幣の種別等を識別するようになっている。また、紙幣の種別等の識別の際において、該紙幣が真券でないと判断された場合、該紙幣を紙幣挿入口にまで戻す動作もさせるようになっている。
【0003】
この場合、紙幣挿入口からの紙幣の挿入は、その挿入路を挟んで対向配置される一対の発光素子および受光素子からなる光センサを入口センサとして機能させ、発光素子が発光した際の受光素子の受光量があるレベル(札有検知レベル)まで低下した際に、該紙幣の挿入を検知するようになっている。
【0004】
また、紙幣の種別等は、該紙幣の挿入路あるいは搬送路を挟んで対向配置される一対の発光素子および受光素子からなる光センサを識別センサとして機能させ、受光素子から得られるデータを、予め記憶させた紙幣の外形、模様、透かし等の特徴データと比較することによって、識別するようになっている。この場合、受光素子からのデータが、予め記憶された特徴データのいずれとも異なる場合は、該紙幣は真券でないと判断されるようになっている。
【0005】
なお、上述した入口センサ機能および識別センサ機能を有する各光センサには、いずれも、紙幣が挿入されていない状態で、発光素子から受ける受光素子の受光量が一定のレベル(第1の受光量)になるように、発光素子からの発光量を自動的に調整させるいわゆる自動調整機能を具備させたものが知られている。この自動調整機能によって、たとえば、受光素子の表面に塵埃等が付着するようなことがあっても、発光素子の発光量が自動的に多くなり、受光素子に該塵埃が付着していない場合と同等の受光量を得ることができるようになっている。
【0006】
また、近年、いままで入口センサとして機能させてきた光センサにおいて、識別センサとしての機能を兼ね備えるようにしたものが知られるに至り、このように構成された光センサによって、紙幣挿入口から挿入される紙幣の挿入を検知させ、さらに、該紙幣の種別を識別させるようにしている。このように構成することによって、識別センサ機能のみを有する他の光センサの数を減らすことができ、装置全体を小型化できる効果を奏する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このように入口センサ機能と識別センサ機能を兼ね備えた光センサは、紙幣挿入口のすぐ背部に設置せざるを得ず、この箇所はたとえば太陽光あるいは他の外来光が該紙幣挿入口を通して光センサに照射され易くなっている。このような現象は、紙幣挿入口と、該紙幣挿入口に連通する紙幣搬送路がほぼ直線上に配置されている場合において顕著になっている。
【0008】
そして、このような入口センサ機能と識別センサ機能とを兼用する光センサを備えた紙幣識別処理装置に、上述した自動調整機能を付加すると、外来光が光センサに到達した場合に、外来光の影響により発光素子の発光量を低下させるように自動調整をしてしまい、この状態において光センサが受けていた外来光が何らかの原因で消えた場合には、受光素子が受ける受光量が札有検知レベル以下になって、紙幣が挿入されていると誤判別する虞があった。また前記自動調整機能は発光量を低下させるために、紙幣の特徴データの取得が出来ず、紙幣の識別精度が低下する(誤った識別をする)虞があった。このように、入口センサ機能と識別センサ機能とを兼用する光センサを備えた紙幣識別処理装置では、自動調整機能があることによって、かえって、紙幣挿入口からの紙幣の挿入の有無において誤った検出が生じるとともに、該紙幣の種別の識別においても適格な選別ができないとの不都合が見いだされるに至った。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上述のように入口センサ機能と識別センサ機能を兼ね備えた光センサを備えるとともに、受光素子の受ける光量に応じて発光素子の発光量を調整する自動調整機能を備えた紙幣識別処理装置であって、該光センサが外来光を受けるようなことがあっても、入口センサ機能と識別センサ機能のいずれにおいても誤った判別あるいは識別をしてしまう不都合を解消させた紙幣識別処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明の紙幣識別処理装置は、紙幣挿入口に連通する紙幣搬送路がほぼ直線上に配置され、紙幣挿入口付近の紙幣搬送路に配置される発光素子と受光素子からなる光センサを具備し、該受光素子が受光した受光量に基づいて、前記紙幣の挿入の有無を判別するとともに、紙幣を識別する紙幣識別処理装置であって、
紙幣が挿入されていない待機状態において、前記発光素子を、所定間隔を有してメモリに記憶されている第1の発光量で発光するように制御し、前記受光素子が受ける受光量を予め定められた札有検知レベルと比較することにより前記紙幣の挿入の有無を判別する制御部と、 前記待機状態において前記発光素子の発光時に、前記受光素子が受ける受光量が予め設定されている第1の受光量と異なる場合に、記第1の受光量となるように前記発光素子の発光量を上昇あるいは低下させて前記第1の受光量とし、その際の前記発光量を新たな第1の発光量として前記メモリを更新する自動調整を行う光量自動調整部とを有し、
前記光量自動調整部は、さらに前記待機状態において前記発光素子が発光していない時の前記受光素子の受光量を測定し、この受光量が前記第1の受光量と前記札有検知レベルの間の値として設定した第1の閾値より大きいときに、前記自動調整において前記発光素子の発光量を低下させることを禁止し、前記発光素子が発光していない時の前記受光素子の受光量が前記第1の受光量と前記第1の閾値の間の値として設定した第2の閾値より大きいときに、前記自動調整を禁止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光量自動調整部が、紙幣の待機状態において光センサの発光素子が発光していない時の受光素子の受光量を測定して、受光素子が発光素子から照射された光以外の光(外来光)を受けているか否かを判別し、さらにこの外来光の光の量に基づいて発光素子の発光量の調整をするので、受光素子が受けていた外来光が何らかの原因で遮光等された場合に、紙幣が挿入されていると誤判別することを防止できる。また外来光を受光素子が受けていても紙幣の識別精度が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の紙幣識別処理装置の概略的な構成を示した図である。
【図2】本発明の紙幣識別処理装置に具備される光センサにおいて、発光素子の発光量の調整と、この調整に基づく受光素子の受光量との関係等を示したタイミング図である。
【図3】本発明の紙幣識別処理装置に具備される発光素子の発光量の自動調整機能を示したタイミング図である。
【図4】図3において外来光の発生による弊害を示したタイミング図である。
【図5】本発明の紙幣識別処理装置に具備される光センサにおいて、発光素子の発光量の調整と、この調整に基づく受光素子の受光量との関係等を示したタイミング図である。
【図6】本発明の紙幣識別処理装置の全体の動作を示すフロー図である。
【図7】本発明の紙幣識別処理装置においてなされる発光素子の自動調整機能動作を行うフロー図である。
【図8】本発明の紙幣識別処理装置においてなされる自動調整機能の禁止、発光素子の発光量の下降(ダウン)の禁止の動作を行うフロー図である。
【図9】本発明の紙幣識別処理装置において、紙幣の識別を行う際の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施態様1)
【0014】
図1は、本発明の紙幣識別処理装置の概略的な構成を示した図である。図1に示す本発明の紙幣識別処理装置100は、紙幣挿入口1と紙幣挿入口1につながる紙幣搬送路10を備え、この紙幣挿入口1から挿入された紙幣2を、搬送ベルト3によって装置の内部に搬送するようになっている。
紙幣挿入口1の背部(紙幣挿入口1付近であって紙幣搬送路10の上流)から搬送ベルト3の中途部にかけて、複数の光センサ4(図ではたとえば2個の光センサ41、42が示されている)が配置され、紙幣2はこれら光センサ41、42の設置箇所を順次通過するようになっている。
【0015】
光センサ41は、挿入される紙幣2を間にして対向配置される発光素子41Aと受光素子41Bを備えて構成されている。同様に、光センサ42は、搬送される紙幣2を間にして対向配置される発光素子42Aと受光素子41Bを備えて構成されている。
【0016】
紙幣挿入口1の背部に設置される光センサ41は、紙幣2の挿入の有無を検出する入口センサとして機能できるようになっているともに、後段に設置される光センサ42と同様に紙幣2の種類を識別する識別センサとしての機能も兼ね備えたものとして構成されている。搬送ベルト3の箇所に設置される光センサ42は、紙幣2の種類を識別する識別センサとしての機能のみを備えたものとして構成されている。
【0017】
なお、この実施態様の場合、紙幣挿入口1と、該紙幣挿入口1に連通する紙幣搬送路(搬送ベルト3の上面に相当する)がほぼ直線上に配置されて構成され、これにより、光センサ41の設置箇所には、紙幣挿入口1を通して比較的太陽光等の外来光が照射されやすくなっている。
【0018】
光センサ41の発光素子41Aおよび光センサ42の発光素子42Aは、制御部6とD/A変換部9を介して接続され、制御部6によって発光量が制御される。光センサ41の受光素子41Bの出力する受光量(電圧値)はA/D変換部5を介して制御部6に入力される。この受光量の変化に基づいて制御部6は、紙幣の受入を検知する。次に、制御部6は駆動部7’に制御信号を出力させて搬送ベルト3を駆動させ、紙幣2を搬送ベルト3の下流側へと導くようになっている。なお、制御部6は、駆動部7’からタコメータ8を介してフィードバック信号を受けて、搬送状態を監視するようになっている。なお、制御部6は、マイコン等の電子部品から構成される制御ボードであって、この制御部6には、後述する光センサの発光量を調整する自動調整機能を行う光量自動調整部62と紙幣の真贋や金種を判別する紙幣識別処理を行う紙幣識別部63を含んでいる。
【0019】
紙幣2の先端部が光センサ41の設置箇所に到達すると、制御部6は、該紙幣2の到達を検出するともに、光センサ42、光センサ41のそれぞれから紙幣2の特徴データのサンプリングを行い、この特徴データに基づいて紙幣の種類の識別処理を実行するようになっている。この識別処理は、紙幣2の後端部が光センサ42の設置箇所を通過するまで行われるようになっている。なお、上記特徴データに基づく識別処理は、記憶部7に予め記憶された金種別閾値データ(複数の閾値、正規データ等)72との比較によって行われるようになっている。この識別処理は、紙幣識別部63が実行する。
【0020】
制御部6の紙幣識別部63が紙幣2を真券と判別した場合、その旨の信号(真券信号)を図示しない外部装置の主制御部へ出力させるようになっている。また、紙幣2が真券でないと判別した場合、搬送ベルト3を逆転し、紙幣2を紙幣挿入口1へ戻す動作を行うようになっている。
【0021】
なお、図1に示すように、紙幣識別処理装置100は、光センサ41、42において、紙幣が挿入されていない状態(待機状態)で、発光素子41A、42Aから受ける受光素子41B、42Bの受光量が一定のレベル(第1の受光量)になるように、受光素子41B、42Bの受光量に基づいて発光素子41A、42Aからの発光量を自動的に調整するいわゆる自動調整機能を備える。この自動調整機能は、制御部6の光量自動調整部62によって行われ、たとえば、受光素子41B、42Bの表面に塵埃等が付着しても、発光素子41A、42Aの発光量が多くなるように制御され、受光素子41B、42Bに該塵埃が付着していない場合と同等の受光量を得ることができるようになっている。
【0022】
図2は、本発明の紙幣識別処理装置に具備される光センサ41において、発光素子41Aの発光量の調整と、この調整に基づく受光素子41Bの受光量との関係等を示したタイミング図である。
【0023】
図2において、図2(a)は、発光素子41Aの発光のタイミングを示すパルスP1を示し、図2(b)は、該パルスP1のタイミングに基づく発光素子41Aの発光における発光量を示し、図2(c)は、外来光が照射されている状態をその外光量とともに示し、図2(d)は、受光素子41Bの受光のタイミングのパルスを示し、図2(e)は、該パルスP2のタイミングに基づく受光素子41Bの受光における受光量を示している。
【0024】
ここで、図3のタイミング図の動作を明確に理解できるように、他の対応するタイミング図(図3、図4)を用いて順を追って説明する。
【0025】
まず、図3は、いわゆる発光素子41Aの発光量の自動調整を行う従来の自動調整機能を備えた発光素子41Aと受光素子41Bとの発光量・受光量の関係を示したタイミング図である。
【0026】
図3において、図3(a)は、発光素子41Aの発光および受光素子41Bの受光のタイミングを示すパルスP1を示し、図3(b)は、該パルスP1のタイミングに基づく発光素子41Aの発光における発光量を示し、図3(e)は、該パルスP1のタイミングに基づく受光素子41Bの受光における受光量を示している。図3(a)は図2(a)に対応し、図3(b)は図2(b)に対応し、図3(e)は図2(e)に対応する関係にある。
【0027】
図3に示すように、発光素子41Aは、その寿命を延ばすため装置の電源投入から定期的(たとえば50msごと)に発光させ、受光素子41BはそのタイミングT1、T2、T3、T4に応じて受光するようになっている。
【0028】
制御部6は、発光素子41Aが発光するタイミングにおける受光素子41Bの受光量を受けて、この受光量と予め定められた札有検知レベル(図2のBDL)と比較する。そして受光量が札有検知レベルBDLよりも小さい時、幣2を受け入れたと判別する(紙幣の受入を検知する)。また、受光量が札有検知レベルBDL以上の時、光量自動調整部62は、受光量と予め定められた第1の受光量(図2のRL1)とを比較し、受光量が第1の受光量RL1と異なる場合には、受光量が第1の受光量RL1に一致するように発光素子41Aの発光量を増加させる、または低下させる自動調整を実行するようになっている。
【0029】
ここで、最初のタイミングT1では、発光素子41Aの発光量に対して受光素子41Bの受光量は予め設定された第1の受光量RL1に達していることから該発光素子41Aの発光量の調整はなされていない。しかし、次のタイミングT2では、受光素子41Bの受光量は第1の受光量RL1に達していないので、発光素子41Aの発光量を所定の発光量(1レベル)ずつ段階的に上昇させ(図ではたとえば3段階)、これにより、受光素子41Bの受光量が第1の受光量RL1に達した場合、その際の発光素子41Aの発光量を第1の発光量DL1としてメモリ(たとえば光量基準データ71)に記憶させ、その後のタイミング(タイミングT3)において発光素子41Aを第1の発光量DL1で発光させるようにしている。そして、タイミングT4の際に紙幣2が挿入された場合、受光素子41Bが受光する受光量は予め設定された札有検知レベルBDLよりも低い値となり、確実に紙幣が挿入されたことを検知できるようになる。
【0030】
このような発光素子41Aの発光において自動調整機能を具備させることにより、たとえば、発光素子41Aあるいは受光素子41Bに、特性ばらつき、劣化、汚れが生じた際に、受光素子41Bの受光量がたとえ札有検知レベルBDLよりも少なく検知され、実際に紙幣が挿入されていないにも拘わらず誤った判断がなされる不都合を解消できるようになっている。
【0031】
しかし、図3に示す発光素子41Aの自動調整機能を具備する紙幣識別処理装置において、たとえば紙幣挿入口1から侵入される太陽光等の外来光によって、受光素子41Bの受ける受光量が増大してしまう不都合が配慮されていないものとなっている。すなわち、受光素子41Bが外来光を受光した場合、発光素子41Aの発光における発光量が少なくなるように制御されてしまい、この状態で、外来光が何等かの原因で遮光等された場合に、受光素子41Bが受ける受光量が札有検知レベルBDL以下になって、紙幣が挿入されていると誤判別されてしまう不都合が生じることになる。
【0032】
図4は、このような不都合が生じる場合を示したタイミング図で、図3と対応させて描画している。図4において、図4(a)は、発光素子41Aの発光および受光素子41Bの受光のタイミングを示すパルスP1を示し、図4(b)は、該パルスP1のタイミングに基づく発光素子41Aの発光における発光量を示し、図4(c)は、外来光が照射されている状態をその外光量とともに示し、図4(e)は、前記パルスP1のタイミングに基づく受光素子41Bの受光における受光量を示している。ここで、図4(a)は図2(a)に対応し、図4(b)は図2(b)に対応し、図4(c)は図2(c)に対応し、図4(e)は図2(e)に対応している。
【0033】
図4において、タイミングT1から引き続き、タイミングT2においても発光素子41Aからの光を受光素子41Bが受光するが、外来光OLをも受光するため、第1の受光量RL1よりも大きな受光量となるため、発光素子41Aの発光量を所定の発光量(1レベル)ずつ段階的に下降(ダウン)させ(図ではたとえば2段階)、これにより、受光素子41Bの受光量が第1の受光量RL1に達した場合、発光素子41Aの発光量を第1の発光量DL1としてメモリ(たとえば光量基準データ71)に記憶させ、次のタイミング(タイミングT3)において発光素子41Aを第1の発光量DL1で発光させるようにしている。
【0034】
外来光の外光量が多くなるに従い、タイミングT3、およびタイミングT4においても、タイミングT2の場合と同様の調整がなされる。この場合、タイミングT4における調整で、たとえば4段階目で受光素子41Bの受光量が第1の受光量RL1に達し、発光素子41Aの発光量が第1の発光量DL1としてメモリ(たとえば光量基準データ71)に記憶され、次のタイミング(タイミングT5)において発光素子41Aが第1の発光量DL1で発光されるようになるが、この場合における発光量は大幅に小さくなっている。このため、タイミングT5において、外来光OLが何等かの原因で消えた場合(例えば遮られた場合)に、発光素子41Aからのみ受ける受光素子41Bの受光量は、札有検知レベルBDLよりも小さくなり、紙幣2が挿入されたと誤判別してしまうことになる。
【0035】
そして、図2に戻り、図2は、図4に示した不都合を解消したタイミング図となっている。図2において、図4と比較して異なる部分は、まず、図2(d)に示すように、受光素子41Bの受光のタイミングのパルスP2にあり、発光素子41Aの発光するタイミング(パルスP1のタイミング)に合わせて受光素子41Bの受光を行うとともに、発光素子41Aが発光していない区間においても複数の連続した受光素子41Bの受光量を取得するようになっている。
【0036】
また、受光素子41Bの受光における受光量に関して、前述した第1の受光量RL1の他に、第1の閾値TRS1を設け、この第1の閾値TRS1は該第1の受光量RL1と札有検知レベルBDLの間の値に設定するようになっている。
【0037】
そして、光量自動調整部62は、この第1の閾値TRS1と発光素子41Aが発光していない際の受光素子41Bが受光する受光量とを比較し、該受光素子41Bが受光する受光量が第1の受光量RL1よりも大きくなった場合に、たとえ、その後において受光素子41Bの受光における受光量が第1の受光量PL1よりも大きくなったとしても、発光素子41Aの発光量を下降(ダウン)させる調整を禁止する。
【0038】
図2において、発光素子41Aの発光のタイミングT1、T2、T3において、図4に示したタイミングT1、T2、T3で示したと同様な発光素子41Aの発光量の調整がなされるようになっている。この場合、タイミングT1とタイミングT2の間、タイミングT2とタイミングT3の間においても、図2(d)のパルスに同期した受光素子41Bの受光量が検出され、第1の閾値TRS1と比較されるようになっている。
【0039】
タイミングT1とタイミングT2の間、タイミングT2とタイミングT3の間では、いずれも、受光素子41Bの受光量は、第1の閾値TRS1よりも大きくなっていないことから、発光素子41Aの発光量の調整は上述したようになされることになる。しかし、タイミングT3の直後において、受光素子41Bの受光における受光量は第1の閾値TRS1より大きくなることから、タイミングT4において発光素子41Aの発光量を下降(ダウン)させる調整が禁止されるようになっている(受光素子41Bの受光における受光量は第1の受光量RL1よりも大きくなっているにも拘わらず)。この場合、受光素子41Bの受光において、発光素子41Aからの光の受光量(外来光OLからの光の受光量を除いた受光量)は、札有検知レベルBDLより大きくなっている。
【0040】
タイミングT4における発光素子41Aの発光量の下降(ダウン)の禁止により、タイミングT5においても発光素子41Aの発光量はタイミングT4における場合と同様となっている。
【0041】
ここで、外来光OLが何等かの原因で遮光等された場合でも、タイミングT6において、発光素子41Aからの発光量はタイミングT5における場合と同様となっており、受光素子41Bの受光における受光量は札有検知レベルBDLよりも大きくなっていることから、紙幣2が挿入されたと誤判別してしまうことを回避することができる。その後は、タイミングT6において、受光素子14Bの受光量は第1の受光量RL1よりも小さくなっていることから、発光素子41Aの発光量を所定の発光量(1レベル)ずつ段階的に増大させ(図ではたとえば6段階)、これにより、受光素子41Bの受光量が第1の受光量RL1に達した場合、発光素子41Aの発光量を第1の発光量DL1としてメモリに記憶させ、次のタイミング(タイミングT7)において発光素子41Aを第1の発光量で発光させるようになっている。
【0042】
また、本発明の紙幣識別処理装置は、光センサ41を入口センサとして機能させた後において、紙幣2の種別等の識別を行う識別センサとして機能させる場合において、次のように動作させるようになっている。
【0043】
すなわち、図5は、図1と対応させて描いたタイミング図であり、第1の閾値TRS1と第1の受光量RL1の間の値として第2の閾値TRS2を設けていることを示している。そして、光量自動調整部62は、この第2の閾値TRS2と発光素子41Aが発光していない際の受光素子41Bが受光する受光量とを比較し、該受光素子41Bが受光する受光量が第2の閾値TRS2よりも大きくなった場合に、発光素子41の発光量の前記自動調整を禁止する。
【0044】
このように発光素子41の発光量の自動調整を禁止する理由は次の通りである。すなわち、図5から明らかなように、外来光が照射されている場合において、受光素子41Bが受ける受光量は、外来光が照射されていない場合よりも外来光の分だけ多くなる。これに対して、自動調整によって発光量を低下させると、紙幣の識別時に、紙幣挿入口1へと侵入する外来光は紙幣2によってある程度遮られる為に受光素子41Bの受光量が低すぎて(暗すぎて)紙幣の特徴データが取得できなくなる不都合が生じる。このため、外来光の光量が第2の閾値TRS2以上となった場合に、自動調整を禁止して発光素子41Aの発光量の低下抑えることで、特徴データが取得できなくならないようにする。
【0045】
このように構成した場合、たとえ自動調整機能を禁止させても、紙幣識別処理装置は通常通りに駆動するようになる。この場合、紙幣2が紙幣挿入口1から挿入され、受光素子41Aの受光量は札有検知レベルBDLまで低下せずに、紙幣の挿入を検知できなかったりする可能性はあるが、その確率は極めて少ないものとなる。その理由は、たとえば、利用者が自動調整機能を利用する場合、その前面に立って外光が遮られる可能性が高くなるからである。このため、自動調整機能を止めても、光センサ41として識別センサ機能が発揮できるようになる。
【0046】
また、紙幣識別処理装置は、いたずらで紙幣挿入口に光を照射される場合があるが、このような場合において、自動調整機能を止めることにより、いたずらによる誤判別の発生も防ぐことができるので、いたずら対策としての効果も奏するようになる。
【0047】
次に、本発明の紙幣識別処理装置において、図1および図5に示した動作を行うための制御フローを以下に示す。図6は、本発明の紙幣識別処理装置の全体の動作を示すフロー図である。図6において、まず、紙幣識別処理装置100に電源が投入されると本フローの処理はスタートする。次に初期動作を実行後、タイマをクリアし、タイマを0msに設定する(ステップS1)。
【0048】
次に、発光素子41Aの発光開始タイマが経過しているか否か判定する(ステップS2)。発光素子41Aの発光開始タイマが経過していない場合(タイマ=0ms以外、ステップS2でNO)、外来光を受光素子41Bにより受光して発光素子41Aが発光していないタイミングにおける受光量に基づいて発光素子41Aの発光量の下降(ダウン)を禁止するか否かの判別と自動調整を禁止するか否かを判別する処理を実行するステップである(ステップS3)へ進み、その後、ステップS1に戻る。
【0049】
ステップS2にて、発光素子41Aの発光開始タイマが経過していると判断した場合(タイマ=0ms、ステップS2でYES)、発光素子41Aを発光させる。この場合、メモリに予め記憶された前記第1の発光量DL1で発光する(ステップS4)。
【0050】
そして、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が札有検知レベルBDLより小さいか否か判定する(ステップS5)。受光素子41B(あるいは42B)の受光量が札有検知レベルBDL以上の場合(ステップS5でNO)、自動調整処理をし(ステップS6)、その後、ステップS2に戻る。ステップS5にて、受光素子41Bの受光量が札有検知レベルBDLより小さい場合(ステップS5でYES)、紙幣2の挿入を検知し、該紙幣2の種類の識別を行う(ステップS7)。そして、該紙幣2の種類の識別が終了したらステップS1に戻る。
【0051】
図7は、発光素子41A(42A)から受ける受光素子41B(42B)の受光量が一定のレベル(第1の受光量RL1)になるように、発光素子からの発光量を自動的に調整させる自動調整機能動作を行うフロー図である。このフローは、図6のステップS6で行われるようになっている。
【0052】
図7において、まず、自動調整が禁止されているか否かをチェックする(ステップS1)。自動調整が禁止されている場合(ステップS1でYES)ステップS4に進んで発光開始タイマに50msをセットし、次にステップS5に進んで発光素子41Aを消灯する。(エンドへ進んで自動調整処理を終える)。
【0053】
自動調整機能が禁止されていない場合(ステップS1でNO)、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の受光量RL1より小さいか否かを判定する(ステップS2)。
【0054】
受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の受光量RL1より小さい場合(ステップS2でYES)、発光素子41A(あるいは42B)の発光量を1レベル上昇させる(ステップS3)。次に、発光素子41A(あるいは42B)を消灯する(ステップS5)。
【0055】
ステップS2にて、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の受光量以上である場合(ステップS2でNO)、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の受光量RL1より大きいか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6にて、受光素子41B(あるいは42B)の受光量レベルが第1の受光量RL1以下の場合(ステップS6でNO)、ステップS4へ進み発光開始タイマに50msをセットし、次にステップS5で発光素子41Aを消灯して終了する(エンドへ進んで自動調整処理を終える)。
【0056】
ステップS6にて、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の受光量RL1より大きい場合(ステップS6でYES)、発光素子41A(あるいは42B)の発光量の下降(ダウン)が禁止されているか否かをチェックする(ステップS7)。
【0057】
ステップS7で、発光素子41A(あるいは42B)の発光量の下降(ダウン)が禁止されている場合、ステップS4に進み発光開始タイマに50msをセットし、次にステップS5で発光素子41Aを消灯して終了する(エンドへ進んで自動調整処理を終える)。ステップS7で、発光素子41A(あるいは42B)の発光量の下降(ダウン)を禁止しない場合、発光素子41A(あるいは42B)の発光量を1レベルだけ下降させる(ステップS8)。その後、ステップS5に進み発光素子41Aは消灯して終了する。(エンドへ進んで自動調整処理を終える)
【0058】
図8は、外来光OLの光量によって、自動調整を禁止するか否かを判別する処理と、また、発光素子41Aの発光量の下降(ダウン)を禁止するか否かを判別する処理とを示すフロー図である。このフローは図6のステップS3で行われけるようになっている。
【0059】
図8において、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第2の閾値TRS2よりも大きいか否かを判定する(ステップS1)。受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第2の閾値TRS2以下の場合(ステップS1でNO)、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の閾値TRS1よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。そして、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の閾値TRS1以下の場合(ステップS2でNO)、発光素子41A(あるいは42B)の発光開始タイマをたとえば2msだけ減算させる(ステップS3)。
【0060】
また、ステップS1にて、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第2の閾値TRS2よりも大きい場合(ステップS1でYES)、自動調整を禁止し(自動調整禁止のフラグを立てる)(ステップS4)、ステップS3に行く。
【0061】
ステップS2にて、受光素子41B(あるいは42B)の受光量が第1の閾値TRS1よりも大きい場合(ステップS2でYES)、受光素子41B(あるいは42B)の受光量の下降(ダウン)を禁止し(受光量の下降禁止のフラグを立てる)(ステップS5)、ステップS3に行く。
【0062】
図9は、紙幣2が光センサ41によって検知された後の紙幣2の識別処理を示すフロー図である。このフローは、図6のステップS7で行われるようになっている。
【0063】
図9において、紙幣2の挿入を検知した後、記憶部7にある識別用RAMをクリアする(ステップS1)。そして、搬送ベルト3を駆動させる(ステップS2)。次に、光センサ41(42)によって紙幣2の特徴データのサンプリングを行う(ステップS3)。次に、紙幣2が光センサ41(42)の設置箇所を通過しているか否かの判断を行う(ステップS4)。紙幣2が当該箇所を通過していない場合(ステップS4でNO)、すなわち紙幣がまだ光センサ41,42を通過中、紙幣2の真偽の判定を行う(ステップS5)。紙幣2が真札の場合、ステップS3に戻り、真札でない場合には、紙幣2の返却処理を行う(ステップS6)。この返却は搬送ベルト3を所定時間逆転した後に停止させることにより行う。ステップS4で、紙幣2が光センサ41(42)の設置箇所を通過したと判断した場合、特徴データのサンプリングを終了する(ステップS7)。そして、搬送ベルト3の駆動を停止する(ステップS8)。次に、収取された特徴データによって紙幣2の金券の別を判定する(ステップS9)。ここで、紙幣2が真札でないと判断された場合にはステップS6へいく。ステップS9で、紙幣2の金種別の判定がなされた場合、その旨の信号(金種信号)を装置外部へ出力させる(ステップS10)。そして、装置外部からの制御に基づいて紙幣3を自装置の収納部に収納、あるいは返却処理を行う(ステップS11)。
【0064】
以上説明したことから明らかなように、本発明による紙幣識別処理装置によれば、入口センサ機能と識別センサ機能を兼ね備えるとともに、受光素子の受ける光量に応じて発光素子の発光量を調整する自動調整機能を備えた光センサを具備するものであって、該光センサが装置外部からの光を受けるようなことがあっても、入口センサ機能と識別センサ機能のいずれにおいても誤った判別あるいは識別をしてしまう不都合を解消させることができるようになる。
【0065】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0066】
1……紙幣挿入口、2……紙幣、3……搬送ベルト、4、41、42……光センサ、41A、42A……発光素子、42A、42B……受光素子、5……A/D変換部、6……制御部、61……発光・受光制御部、62……光量自動調整部、63……紙幣識別部、7……記憶部、7‘……駆動部、71……光量基準データ、72……金種別閾値データ、8……タコメータ、9……D/A変換部、10……紙幣搬送路、100……紙幣識別処理装置、RL1……第1の受光量、DL1……第1の発光量、BDL……札有検知レベル、OL……外来光、TRS1……第1の閾値、TRS2……第2の閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣挿入口に連通する紙幣搬送路がほぼ直線上に配置され、紙幣挿入口付近の紙幣搬送路に配置される発光素子と受光素子からなる光センサを具備し、該受光素子が受光した受光量に基づいて、前記紙幣の挿入の有無を判別するとともに、紙幣を識別する紙幣識別処理装置であって、
前記紙幣が挿入されていない待機状態において、前記発光素子を、所定間隔を有してメモリに記憶されている第1の発光量で発光するように制御するともに、前記受光素子が受ける受光量を予め定められた札有検知レベルと比較することにより前記紙幣の挿入の有無を判別する制御部と、
前記待機状態において、前記発光素子の発光時に、前記受光素子が受ける受光量が予め設定されている第1の受光量と異なる場合に、前記発光素子の発光量を上昇あるいは低下させて前記第1の受光量とし、その際の前記発光素子の発光量を新たな第1の発光量として前記メモリを更新する自動調整を行う光量自動調整部を有し、
前記光量自動調整部は、さらに前記待機状態において前記発光素子が発光していない時の前記受光素子の受光量を測定し、この受光量が前記第1の受光量と前記札有検知レベルの間の値として設定した第1の閾値より大きいときに、前記自動調整において前記発光素子の発光量を低下させることを禁止し、
前記発光素子が発光していない時の前記受光素子の受光量が前記第1の受光量と前記第1の閾値の間の値として設定した第2の閾値より大きいときに、前記自動調整を禁止することを特徴とする紙幣識別処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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