説明

紙幣識別装置

【課題】モータが発生する磁気ノイズの影響の低減と、識別ユニットのコンパクト化との両立が可能な紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣識別装置1は、磁気ノイズの発生源となるモータ25と紙幣の磁気特性を検出する磁気センサ11とを距離d1だけ離して配置し、磁気ノイズの発生源となるモータ25と紙幣の磁気特性を検出する磁気センサ11との間に、非磁気センサである第1光学センサ受光部13、第1光学センサ発光部14を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣識別装置に関し、特に、駆動に磁界の変化を伴うアクチュエータと紙幣に含まれた磁性体の磁気特性を検出する磁気センサとを有する紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機などに用いられている紙幣識別装置では、投入された紙幣から紙幣の光学的、磁気的な特性を検出し、そこから紙幣の特徴を抽出することにより金種判定および真贋判定を行っている。紙幣の磁気的な特性は、紙幣が磁性体を含むインキで印刷されていることにより、金種により異なった磁気パタンを有している。
【0003】
紙幣に印刷された磁性体は、磁気ヘッドを用いて検出している。磁気ヘッドは、その検知面が紙幣搬送路に近接して配置され、紙幣を検知面に接触させながら紙幣を搬送することにより、紙幣に印刷された磁性体の量を検出している。磁性体の量は、磁気ヘッドが接触している側の面に印刷されたものしか検出できないので、その裏面の対応位置に印刷された磁性体を検出するには、裏面側にも別の磁気ヘッドを備える必要がある。
【0004】
また、磁気ヘッドは、検知面に接触した部分の磁性体だけを検出しているので、その他周辺の影響度合の少ない外部磁界変化を磁気ヘッドが感知することはなく、検知精度の安定化が図られていた。
【0005】
これに対し、磁気ヘッドよりも感度の高い磁気センサを用いた高精度な紙幣識別装置も知られている(たとえば、特許文献1参照)。この紙幣識別装置では、紙幣の磁気インピーダンス特性または紙幣の磁気抵抗特性を検出する磁気センサを用いている。このような磁気センサは、紙幣を着磁する着磁部と、着磁部により着磁された磁気インクの磁界を検出する磁気検出素子とから構成されている。このような高感度な磁気センサを使用したときの磁気センサ周辺の外部磁界変化の影響を低減させて磁気センサが識別紙幣の磁気パタンを安定して検出する必要がある。
【特許文献1】特開2000−105847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙幣識別装置では、紙幣搬送や紙幣収納のための電動機(モータ)や、搬送経路切替や不正対策のためのソレノイドを使用しているため、これら電動機やソレノイドは、磁気ノイズの発生源として磁気センサの検出精度に影響を及ぼすおそれを生じている。
【0007】
一方、紙幣識別装置は、自動販売機をはじめとした機械筐体に内蔵して備えられる場合が多く、機械筐体内の空間を本来の用途での使用(たとえば、飲料用自動販売機であれば、飲料の収納スペース)を制限することのないように、コンパクトであることが求められている。このような要請は、磁気センサの検出精度向上のために磁気ノイズ発生源を磁気センサから隔離するという要請と相反するものである。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成でありながら磁気ノイズ発生源からの影響を排除して磁気センサの検出精度向上が可能な紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記問題点を解決するために、駆動に磁界の変化を伴うアクチュエータと、紙幣に含まれた磁性体の磁気特性を検出する磁気センサと、を有する紙幣識別装置において、紙幣搬送路に臨んで前記紙幣を識別するための複数のセンサを配置するセンサ配置領域を備え、前記センサ配置領域は、前記アクチュエータと紙幣搬送方向に間隙を有して並設され、前記センサ配置領域の前記アクチュエータ側の領域を前記磁気センサ以外のセンサを配置する非磁気センサ配置領域とし、他側の領域を前記磁気センサを配置する磁気センサ配置領域としたことを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0010】
このような紙幣識別装置によれば、センサ配置領域は、紙幣搬送路に臨んで紙幣を識別するための複数のセンサを配置する。また、センサ配置領域は、アクチュエータと紙幣搬送方向に並設され、非磁気センサ配置領域と磁気センサ配置領域とに設定される。非磁気センサ配置領域は、アクチュエータ側の領域であり、磁気センサ以外のセンサが配置される。磁気センサ配置領域は、他側(アクチュエータと反対側)の領域であり、磁気センサが配置される。これにより、磁気センサとアクチュエータとが非磁気センサ配置領域により隔離される。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の紙幣識別装置は、コンパクトな構成でありながら磁気ノイズ発生源からの影響を排除して磁気センサの検出精度向上を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、紙幣識別装置の斜視図である。
紙幣識別装置1は、フレームユニット50にプッシャユニット2、識別ユニット3および収納ユニット4を設けて構成される。フレームユニット50は、自動販売機の正面の扉に内側から取り付けられるもので、紙幣を収納、排出するための紙幣投入口35(図6参照)を裏面側に有している。
【0013】
紙幣投入口35から投入された紙幣は、後述する二つの搬送ローラ5、6と4つのテンションローラ7、8、9、10により挟持され逆U字状の紙幣搬送路36を搬送される。
プッシャユニット2は、識別ユニット3による判定の結果、正しく識別できた投入された紙幣を、識別ユニット3の紙幣識別部の延長上にある紙幣搬送路38(図6参照)からプッシャ37(図6参照)によって収納ユニット4内の紙幣収納庫39に押し込む。
【0014】
識別ユニット3は、紙幣搬送路36を挟んで対向する位置に複数のセンサ、具体的には、後述する磁気センサ11および光学センサ13から18が設けられている。これらのセンサは、搬送されてくる紙幣の特定の識別ライン上にある紙幣の特徴を検出し、検出されたデータを処理して紙幣の金種および真贋を判定している。この判定処理の途中または判定処理が終了した後で投入された紙幣を正しく識別できなかった場合、投入された紙幣を紙幣投入口35へ返却する。
【0015】
収納ユニット4は、紙幣収納庫39に積層状態で紙幣を収納する。
次に、図2を用いて、搬送ローラ5、6とテンションローラ7、8、9、10、磁気センサ11および光学センサ13から18の配置について説明する。図2は、紙幣識別装置に装着された識別ユニットの開放状態を示す斜視図である。
【0016】
紙幣識別装置1に装着された識別ユニット3は、固定側サブユニット3aに対して開放側サブユニット3bを開閉できる構造になっている。レバー21の操作により、固定側サブユニット3aをフレームユニット50に固定した状態で、開放側サブユニット3bの下端を回転軸にして開放可能になる。これにより、識別ユニット3は、紙幣搬送路36を露出させて詰まった紙幣の除去あるいは清掃などの保守が容易であり、紙幣の詰まり、識別エラーなどのトラブルに迅速に対処することができる。
【0017】
搬送ローラ5は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対5a、5bが設けられ、対向する一対7a(図示せず)、7bのテンションローラ7とで紙幣を挟持する。搬送ローラ5とテンションローラ7により挟持された紙幣は摩擦係合により搬送される。
【0018】
磁気センサ11は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対11a、11bが設けられる。紙幣に印刷された磁気インクの紙幣搬送方向の磁気インク印刷パタンを検出して紙幣の識別を行うため、磁気センサ11a、11bは、紙幣の磁気インク印刷パタンの特徴を好適に検出できる位置に配置される。磁気センサ11a、11bと、紙幣との間隔を一定に保つため、センサ押さえ板12a、12bが磁気センサ11a、11bと対向する位置にそれぞれ配置される。
【0019】
第1光学センサは、発光素子からなる第1光学センサ発光部14と受光素子からなる第1光学センサ受光部13の対で構成される透過型光学センサであり、磁気センサ11と同一のトレースライン(特定の識別ライン)上に配置される。第1光学センサ発光部14は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対14a、14bが設けられ、第1光学センサ受光部13は、紙幣搬送路36を挟んで第1光学センサ発光部14a、14bと対向する一対13a、13bが設けられる。第1光学センサは、紙幣搬送路36を搬送される紙幣の光学的特性から受光素子への入光量の変化に伴う電流量の変化として紙幣の光学的特徴を検出する。
【0020】
第2光学センサは、発光素子からなる第2光学センサ発光部16と受光素子からなる第2光学センサ受光部15の対で構成される透過型光学センサであり、磁気センサ11とは異なるトレースライン上に配置される。第2光学センサ発光部16は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対16a、16bが設けられ、第2光学センサ受光部15は、紙幣搬送路36を挟んで第2光学センサ発光部16a、16bと対向する一対15a、15bが設けられる。第2光学センサは、紙幣搬送路36を搬送される紙幣の光学的特性から受光素子への入光量の変化に伴う電流量の変化として紙幣の光学的特徴を検出する。
【0021】
第3光学センサは、発光素子からなる第3光学センサ発光部18と受光素子からなる第3光学センサ受光部17の対で構成される透過型光学センサであり、第1光学センサ、第2光学センサとは異なるトレースライン上に配置される。第3光学センサ発光部18は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対18a、18bが設けられ、第3光学センサ受光部17は、紙幣搬送路36を挟んで第3光学センサ発光部18a、18bと対向する一対17a、17bが設けられる。第3光学センサは、紙幣搬送路36を搬送される紙幣の光学的特性から受光素子への入光量の変化に伴う電流量の変化として紙幣の光学的特徴を検出する。
【0022】
搬送ローラ6は、紙幣搬送路36の幅方向中心から左右対称位置に一対6a、6b(図示せず)が設けられ、対向する一対8a、8bのテンションローラ8とで紙幣を挟持する。搬送ローラ6とテンションローラ8により挟持された紙幣は摩擦係合により搬送される。
【0023】
このように搬送ローラ5とテンションローラ7の挟持部と、搬送ローラ6とテンションローラ8の挟持部との間に、磁気センサ11、光学センサ13から18が配置されたセンサ配置領域を備える。
【0024】
なお、これら各種センサで真贋判定のされた紙幣の抜き取り防止のため、各種センサによる真贋判定後、シャッタ19が紙幣搬送路36に臨みシャッタ嵌合部20と嵌合する。これらシャッタ19およびシャッタ嵌合部20は、糸状または帯状の紙幣引抜具を検出するため、紙幣搬送方向に斜めに複数設けられて紙幣幅方向での異物挿入を検出可能にしている。このように、シャッタ19およびシャッタ嵌合部20は、紙幣搬送路を閉じる(紙幣搬送路上の紙幣の移動を制限する)紙幣搬送路閉塞機能を有する。また、シャッタ19およびシャッタ嵌合部20の傾きを紙幣搬送路36の中心から幅方向に対称にしたことで、搬送される紙幣がシャッタ19およびシャッタ嵌合部20との接触抵抗により片側に偏ることを防止している。
【0025】
次に、図3、図4、図5を用いて、識別ユニット3内のモータ25、ソレノイド26、磁気センサ11および光学センサ13から18の配置について説明する。図3は、識別ユニットの斜視図である。図4は、識別ユニットの分解斜視図である。図5は、開放側サブユニットの箱体内部を示す図4のA矢視正面図である。
【0026】
識別ユニット3を構成する開放側サブユニット3bは、モータ25、ソレノイド26を内部に備える箱体41と、各種部品を支持するホルダ22と、各センサや電子部品を実装した基板23と、蓋体となるカバー24との4層構造からなる。
【0027】
箱体41は、上部にモータ25とソレノイド26とを並設して収納している。モータ25は、出力軸30を横向きにして備え付けられ、ギア42やシャフトなどの動力伝達部材を介して搬送ローラ5、6を駆動している。ソレノイド26は、プランジャ(可動鉄心)31を下向きにして備え付けられ、リンク43などの動力伝達部材を介してシャッタベース44を紙幣搬送路36に進出、または紙幣搬送路36から退避させて、シャッタ19の開閉をする。これら動力伝達部材を含む可動部材を配設した領域(図7のシャッタ領域40)を間に挟むようにして、箱体41の下方には、センサ配置領域を設定している。
【0028】
センサ配置領域のうち最も上側(アクチュエータ側)に、第1光学センサ発光部窓32a、32b、第2光学センサ発光部窓33a、33bを有する。なお、これら窓部は、基板に実装された第1光学センサ発光部14a、14b、第2光学センサ発光部16a、16bが紙幣搬送路36を臨む開口であるが、単なる開口に限らず、レンズ部材などで構成してもよい。
【0029】
そして、センサ配置領域のうち下側にセンサ押さえ板ガイド穴27を有する。センサ押さえ板12は、センサ押さえ板ガイド穴27を通して紙幣搬送路36を臨み、付勢ばね28により付勢されて紙幣を対向する磁気センサ11に押さえつける。これにより、紙幣と磁気センサ11との距離が一定に保持されて、磁気センサ11の磁気検出精度が向上する。なお、左側のセンサ押さえ板12は、図4中のA矢視より後方に位置するため、図5では、図示されていない。
【0030】
また、センサ配置領域のうち下側には、第3光学センサ受光部窓34a、34bを有する。なお、第3光学センサ受光部窓34a、34bは開口をスリット状にすることで解像度の高い光学的特徴検出をする。
【0031】
ホルダ22は、センサ押さえ板ガイド穴27とともに、付勢ばね28により付勢されたセンサ押さえ板12を保持する。また、基板23に実装されたセンサ類の位置を固定する。また、モータカバー部29は、箱体41とともに、モータ25を支持してモータ25の駆動時の振動を抑制し、振動を原因とする各センサの検出精度低下を防止する。
【0032】
基板23は、コネクタや電子部品のほかに、第1光学センサ発光部14a、14b、第2光学センサ発光部16a、16b、第3光学センサ受光部17a、17bなどのセンサ類が実装される。
【0033】
なお、センサは、開放側サブユニット3bの備える基板23のほかに、固定側サブユニット3aの備える図示しない基板に実装される。具体的には、固定側サブユニット3aの備える基板には、第1光学センサ受光部13a、13b、第2光学センサ受光部15a、15b、第3光学センサ発光部18a、18b、磁気センサ11a、11bが備えられる。
【0034】
カバー24は、基板23を保護するとともに、箱体41とともに内蔵部品や各種機構を保護する。
次に、図6を用いて各構成部品の垂直方向の位置関係を説明する。図6は、紙幣識別装置の断面図である。
【0035】
紙幣投入口35から紙幣が投入されると、図示しないセンサが紙幣の投入を検知し、モータ25を駆動して、搬送ローラ5、6を紙幣受入方向に回転させる。紙幣は、搬送ローラ6とテンションローラ10に挟持されて、摩擦係合により紙幣搬送路36を搬送される。紙幣搬送路36は、逆U字形状でその折り返し部45内側に搬送ローラ5が位置する。紙幣搬送路36を搬送された紙幣は、搬送ローラ5とテンションローラ9に挟持されて、摩擦係合により紙幣搬送路36をさらに搬送される。そして、紙幣搬送路36の折り返し部45を折り返した紙幣は、搬送ローラ5とテンションローラ7に挟持されて、摩擦係合により紙幣搬送路36をさらに搬送され、紙幣識別部(センサ配置領域R1、R2)に至る。そして、紙幣識別部で正しく識別された紙幣は、搬送ローラ6とテンションローラ8に挟持されて、摩擦係合により紙幣搬送路36をさらに搬送され、識別ユニット3の紙幣識別部の延長上にある紙幣搬送路38に取り込み、取り込んだ紙幣をプッシャ37によって紙幣搬送路38から収納ユニット4内の紙幣収納庫39に押し込み、紙幣収納庫39に積層状態で収納する。
【0036】
このように紙幣搬送路36の途中に紙幣識別部があるため、磁気センサ11が紙幣のトレースライン上の磁気特性を検出する際に、紙幣は搬送状態にあり、モータ25は駆動状態にある。モータ25は、磁界と電流の相互作用による回転運動を出力するものであるから、このとき、モータ25は、磁気ノイズの発生源となり磁気センサ11の磁気特性の検出精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
そこで、磁気センサ11をモータ25と距離d1だけ離して配置することで、磁気特性の検出精度にモータ25の磁気ノイズの影響を受けないよう(または、磁気ノイズの影響を無視できる程度)にしている。なお、ここで距離d1は、磁気センサ11の端部からモータ25の端部までの垂直方向の距離を表す。
【0038】
ここで、磁気ノイズの影響を無視できる程度に距離d1を確保したうえで、なおかつ識別ユニット3をコンパクトに構成したいという要求を満たすため、センサ配置領域R1、R2のうち、センサ配置領域R1(非磁気センサ配置領域)を磁気センサ11とモータ25の間隔の内側に設定している。
【0039】
また、さらに、センサ配置領域R1を十分に確保するため、半径が大径の搬送ローラ5と搬送ローラ5の半径に比較して小径のテンションローラ7との半径の差分の範囲内(距離d2)で、折り返し部45からモータ25を磁気センサ側に近づけている。これにより、識別ユニットのコンパクト化、センサ配置領域R1の十分な確保をも実現している。
【0040】
また、紙幣搬送路36の折り返し部45に沿って搬送ローラ5を設けていること、言い換えれば、略U字状の紙幣搬送路36の折り返し部45に搬送ローラ5が位置することにより、モータ25を水平方向において搬送ローラ5と距離d3だけ重なる位置に配置することができ、水平方向においても識別ユニット3のコンパクト化がされている。
【0041】
なお、ここでセンサ配置領域R1とは、磁気センサ以外のセンサを配置する領域であり、モータ25などの磁気ノイズ発生源と近接配置しても磁気ノイズの影響を受けない、もしくは受けにくいセンサ類を配置対象とする領域である。ここには、たとえば、光や超音波など、紙幣の非磁気特性を検出対象としたセンサを配置できる。
【0042】
具体的には、第1光学センサ受光部13、第1光学センサ発光部14が磁気センサ11と同一のトレースライン上に、第2光学センサ受光部15、第2光学センサ発光部16が磁気センサ11と異なるトレースライン上に備えられる。
【0043】
特に、第1光学センサ受光部13、第1光学センサ発光部14は、磁気センサ11と同一のトレースライン上に配置され、1つのトレースラインについて光学特性の検出と磁気特性の検出の双方をする。光学特性と磁気特性の双方検出により、紙幣の識別を高精度に行うことができ、紙幣識別の信頼性が向上する。また、第1光学センサ受光部13、第1光学センサ発光部14と磁気センサ11とを近接配置したことで、同一箇所(ポイント)での光学特性と磁気特性の特徴パタンの比較が容易になる。これにより、識別途中での紙幣受入不可の判定をより速いタイミングで下すことが可能となり、オペレーション時間の短縮が図れる。このような同一のトレースライン上へのセンサ類の複数配置は、識別ユニットが大型化する要因となるが、上述したモータ25の配置による識別ユニットのコンパクト化により識別ユニットを大型化することなくセンサ配置領域R1の確保をしている。
【0044】
また、センサ配置領域R2(磁気センサ配置領域)とは、磁気センサを含むセンサを配置する領域であり、モータ25などの磁気ノイズ発生源と十分な距離が確保されていることで磁気ノイズの影響を受けない、もしくは影響を無視できるセンサ類を配置する。ここには、検出対象を磁気特性に限定しないセンサを配置できる。
【0045】
また、磁気センサ11は、紙幣搬送路36を挟んで対向するセンサ押さえ板12とで紙幣を挟持して磁気検出をしている。ここで磁気センサ11は、紙幣搬送路36に対して対向する搬送面側にモータ25が位置するように設けられる。これにより、磁気センサ11とモータ25の間隔が同じ水平距離であっても実距離を大きくとることができる。
【0046】
次に、図7を用いて各構成部品の紙幣搬送面を俯瞰した位置関係を説明する。図7は、紙幣搬送面における各構成部品の配置を表した図である。
モータ25、ソレノイド26の磁気ノイズ発生源が最上部に位置する。モータ25は、紙幣搬送時に搬送ローラ5、6を駆動することで、ソレノイド26は、シャッタ19を駆動することで、磁気ノイズを発生する。磁気センサ11は、搬送される紙幣について磁気特性を検出するため、磁気センサ11が磁気検出をするタイミングにおいて、モータ25は、駆動中であり磁気ノイズ発生源である。ソレノイド26は、紙幣を識別後に紙幣の抜き取り防止のために紙幣搬送路36に突出させるシャッタ19を駆動する。したがって、紙幣識別中においてソレノイド26は、駆動状態ではなく、通常は磁気ノイズ発生源とならない。しかし、電源遮断時において紙幣搬送路36を閉塞する運用をした場合は、紙幣識別中にソレノイド26を駆動状態とすることもできる。したがって、これらノイズ発生源となるアクチュエータは、柔軟な制御内容に対応可能に磁気センサ11から遠ざけた位置に配置される。なお、識別ユニットのコンパクト化のため、これら複数のアクチュエータは、横方向(紙幣搬送路36の幅方向)に並べて配置される。
【0047】
磁気センサ11a、11bは、アクチュエータと距離d1だけ遠ざけられて配置される。ここで、磁気センサ33について説明する。磁気センサ33は、紙幣の搬送方向に着磁部111(111a、111b、111c)および磁気検出部112が併置されている。着磁部111は、紙幣に印刷された磁性体を着磁する。このとき、着磁部111の磁力線は紙幣を貫通するので、磁性体の着磁は、紙幣の両面に印刷されている磁性体に対して同時に行われる。このようにして着磁された磁性体は、その直後に、磁気検出部112によって検出される。磁気検出部112は、磁気ヘッドよりも検出深度が深く、高感度な磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス効果素子、またはフラックスゲートセンサを用いた素子とすることができる。これにより、磁気センサ33は、紙幣の表裏両面の磁性体の量を検出することができる。この磁気センサ11a、11bについては、アクチュエータから遠い側に磁気検出部112が位置する向きで配置される。これにより、磁気検出部112とアクチュエータとの距離を大きくしている。
【0048】
磁気センサ11とアクチュエータの間には、センサ配置領域R1の他に、シャッタ領域(紙幣搬送路閉塞領域)40をアクチュエータ側に備える。シャッタ領域40には、シャッタ19およびシャッタ嵌合部20が紙幣搬送路36に臨む。これにより、距離d1の間の領域の有効利用が図られている。センサ配置領域R1には、磁気を検出するセンサではない第1光学センサ13a、13bが、それぞれ磁気センサ11a、11bと同一のトレースラインL1、L2上に配置される。
【0049】
アクチュエータから距離d2だけ離れたセンサ配置領域R2には、磁気センサ11a、11bの他に、第3光学センサ発光部18a、18b、図示しない第2光学センサ受光部15a、15bが備えられる。
【0050】
次に、図8を用いて、磁気センサと磁気ノイズ発生源となるモータ25との距離変化と磁気センサ11のセンサ出力の関係を説明する。図8は、距離変化とセンサ出力の関係を表したグラフである。
【0051】
磁気センサ11のセンサ出力を好適に得るため、バイアスをかけて基準電位v1のセンサ出力を得るようにしている。このとき、モータ25と磁気センサ11の距離が近い場合には、センサ出力Vが受ける磁気ノイズの影響が大きいが、所定の距離以上離れると、磁気ノイズの影響は無視できる程度に収束する。そこで実験値より距離d1が求められている。
【0052】
以上、本発明の紙幣識別装置1を図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、紙幣識別装置1の各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】紙幣識別装置の斜視図である。
【図2】紙幣識別装置に装着された識別ユニットの開放状態を示す斜視図である。
【図3】識別ユニットの斜視図である。
【図4】識別ユニットの分解斜視図である。
【図5】開放側サブユニットの箱体内部を示す図4のA矢視正面図である。
【図6】紙幣識別装置の断面図である。
【図7】紙幣搬送面における各構成部品の配置を表した図である。
【図8】距離変化とセンサ出力の関係を表したグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 紙幣識別装置
3 識別ユニット
4 収納ユニット
5、6 搬送ローラ
7、8、9、10 テンションローラ
11 磁気センサ
12 センサ押さえ板
13 第1光学センサ受光部
14 第1光学センサ発光部
25 モータ
35 紙幣投入口
36、38 紙幣搬送路
37 プッシャ
d1、d2、d3 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動に磁界の変化を伴うアクチュエータと、紙幣に含まれた磁性体の磁気特性を検出する磁気センサと、を有する紙幣識別装置において、
紙幣搬送路に臨んで前記紙幣を識別するための複数のセンサを配置するセンサ配置領域を備え、
前記センサ配置領域は、前記アクチュエータと紙幣搬送方向に間隙を有して並設され、前記センサ配置領域の前記アクチュエータ側の領域を前記磁気センサ以外のセンサを配置する非磁気センサ配置領域とし、他側の領域を前記磁気センサを配置する磁気センサ配置領域としたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記間隙に、前記紙幣を搬送する搬送ローラと、付勢されて前記紙幣を前記搬送ローラとの間で挟持するテンションローラとを備えることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記搬送ローラは、略U字状の前記紙幣搬送路の折り返し部に位置することを特徴とする請求項2記載の紙幣識別装置。
【請求項4】
前記テンションローラと前記搬送ローラとは、異なる半径のローラであり、
前記アクチュエータは、前記テンションローラの半径と前記搬送ローラの半径の差分を上限にして、前記紙幣搬送路の折り返し部よりも前記センサ配置領域側に配置されることを特徴とする請求項3記載の紙幣識別装置。
【請求項5】
前記センサ配置領域と前記アクチュエータとの間に、前記紙幣搬送路を閉じる紙幣搬送路閉塞領域を備えることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項6】
前記アクチュエータと前記磁気センサとの間に前記紙幣搬送路が位置する関係にあることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項7】
前記非磁気センサ配置領域には、前記磁気センサ配置領域に配置された磁気センサが前記紙幣の磁気特性を検出するのと同一トレースライン上に、前記紙幣の光学特性を検出する光学センサを配置したことを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項8】
前記磁気センサは、前記磁性体を着磁する着磁部と、着磁された前記磁性体の磁気特性を検出する磁気検出部とを有し、
前記アクチュエータ側に前記着磁部が位置することを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項9】
前記磁気検出部は、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス効果素子、またはフラックスゲートセンサを用いたことを特徴とする請求項8記載の紙幣識別装置。
【請求項10】
前記磁気センサは、紙幣の両面に印刷された磁性体の磁気特性を検出することを特徴とする請求項9記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−146162(P2010−146162A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320912(P2008−320912)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】