説明

紙幣識別装置

【課題】紙幣識別装置に投入された紙幣が返却される場合にその姿勢が傾かないようにしてその紙幣詰まりを防止し、信頼性の高い紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣の投入口5と、投入口5に連なって延設された紙幣の搬送通路15と、搬送通路15の幅方向に並設された一対の紙幣の搬送手段10a,10bと、搬送手段10a,10bを駆動する駆動手段と、駆動手段の動力を一対の搬送手段10a,10bの一方10aに伝達する第一の駆動伝達手段(51,57)と、駆動手段の動力を一対の搬送手段10a,10bの他方10bに伝達する第二の駆動伝達手段(41,51,52,53,55,56)と、投入口5から搬送通路15に導入された紙幣を識別する識別部3と、を備えた紙幣識別装置において、第一の駆動伝達手段または第二の駆動伝達手段のいずれか一方は、一対の搬送手段10a,10bを同期して駆動する駆動調整手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に搭載される紙幣識別装置に関し、特に投入された紙幣の詰まりを防止するようにした紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような紙幣識別装置としては、本出願人が先に出願し公開された特開2000‐133488号公報(特許文献1)に記載されるような紙幣識別装置が知られている。 この特許文献1に記載される紙幣識別装置は、フレームユニットと、識別ユニットと、プッシャユニットと、スタッカユニットとで構成され、その識別部分をユニット化し、着脱できるように構成したものである。そして、このような構成によれば、使用する紙幣に合わせた最小機能を持つ識別ユニットを用意し、これを用いることで安価で最適な構成が可能な紙幣識別装置を提供するとともに、新種の紙幣が発行されたり、偽造紙幣が出回ったりした場合には、これらに対応して識別ユニットを容易に交換可能な環境適応性の高い紙幣識別装置を提供することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は、この従来の紙幣識別装置を示す外観斜視図、図4はその従来の紙幣識別装置を模式的に示す側断面図である。図に示すように、この従来の紙幣識別装置1´は、フレーム部2に識別部3および収納部4を設けて構成される。このフレーム部2は、例えば自動販売機の正面の扉に内側から取り付けられるもので、紙幣を収納、排出するための紙幣投入口(投入口)5を有している。そして、紙幣投入口5から投入された紙幣は、縦に並べて配置された搬送ローラ7,10とその外周に当接して設けられたテンションローラ8,9,11,12により狭持され、識別部3に設けられる逆U字状の紙幣搬送路15を搬送される。また、識別部3には、その紙幣搬送路(搬送通路)15を挟んで対向する位置に配置される複数の光学センサー23,24(図5参照)およびその紙幣搬送路15に面して配置された磁気センサー25が設けられている。これらの光学センサー23,24及び磁気センサー25は、搬送されてくる紙幣の識別ライン(トレースライン)上にある紙幣の特徴を検出し、検出されたデータを処理して紙幣の金種および真贋を判定する。
【0005】
なお、この判定処理において紙幣を正しく識別できなかった場合、或いは判定処理が終了した後で投入された紙幣を返却する必要が生じた場合(例えば商品の購入がキャンセルされた場合等)は、投入された紙幣を紙幣投入口5に返却する。
識別部3による判定の結果、投入された紙幣を正しく識別できた場合には、収納部4において、その紙幣を識別部3の延長上にある紙幣搬送路16に取り込み、取り込んだ紙幣をプッシャ17と呼ばれる機構によって、紙幣搬送路16から紙幣収納庫18に押し込み、これによって紙幣収納庫18に積層状態で収納する。
【0006】
また、識別部3は、紙幣の詰まり、識別エラー等に対処するために、その内部を開放し、紙幣搬送路15を露出させて詰まった紙幣の除去あるいは清掃などの保守ができるように、固定側ユニット3aに対して開放側ユニット3bを矢印方向に開閉できる構造になっている。また、磁気センサー25により紙幣の磁気特性を好適に検出するため、紙幣を磁気センサー25に押し当てるように、センサー押え板27が磁気センサー25と対向する位置に配置されている。
【0007】
図5の(a)、(b)は、識別部3の固定側ユニット3aを左右の異なる視点から見た斜視図である。図に示すように、搬送ローラ7,10は、紙幣搬送路15の幅方向中心から左右対称位置にそれぞれ一対ずつ搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ10a,10bが設けられている。そして、これらに対向してそれぞれ一対のテンションローラ8,9,11,12(図4参照)が設けられ、搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ10a,10bとテンションローラ8,9,11,12により狭持された紙幣は摩擦係合により紙幣搬送路15を搬送される。
【0008】
ところで、この従来の紙幣識別装置1´の識別部3は、これをなるべく安価で小型に構成するために、紙幣搬送路15の側方に搬送ローラ7a,7b、搬送ローラ10a,10bを駆動するための複数のギアからなる駆動伝達機構を備えている。この駆動伝達機構は、図示しない駆動モータにより駆動される駆動ギア51と、搬送ローラ7a,7bが左右に固着された連結回転軸41と、この連結回転軸41の一方端に固着され、駆動ギア51に噛合うように設けられた連結ギア52と、連結回転軸41の他方端に固着された連結ギア53と、搬送ローラ10bの側方にこれと同心に一体で設けられた連結ギア55と、連結ギア53と連結ギア55に噛み合うように設けられ、連結ギア53の回転を連結ギア55に伝達する伝達ギア56と、駆動ギア51噛み合うように搬送ローラ10aの側方にこれと一体で同心に設けられた連結ギア54と、を備えている。
【0009】
このように構成される従来の紙幣識別装置1´において、紙幣投入口5から紙幣が投入されると、それが図示しない紙幣投入検知センサーにより検知され、これにより図示しない駆動モータが駆動されて、駆動ギア51を介して搬送ローラ7a,7b、搬送ローラ10a,10bが紙幣の取込方向に駆動される。そして、紙幣投入口5に投入された紙幣は、搬送ローラ7a,7b、搬送ローラ10a,10bとテンションローラ8,9,11,12とに狭持され、逆U字状の紙幣搬送路15を搬送される。そして、紙幣が紙幣搬送路15に配置された磁気センサー25及び図示しない光学センサー23,24を通過すると、その紙幣の金種および真贋が判定される。ここで、紙幣が本物と判定されると、紙幣の後端が搬送ローラ10a,10bとテンションローラ12(図4参照)に狭持された状態で一旦搬送が停止される。そして、例えば自販機からの商品の販売が完了すると、その紙幣を識別部3の下方に設けられた紙幣搬送路16に搬送し、その紙幣搬送路16から紙幣収納庫18にこれを押し込んで積層状態で収納する。一方、ここで紙幣が贋物と判定された場合や、自販機からの商品の販売が取り消された場合には、搬送ローラ7a,7b、搬送ローラ10a,10bが紙幣の取り込み方向と逆の方向に回転駆動され、紙幣が紙幣投入口5に向けて返却される。
【0010】
ところで、搬送ローラ10a,10bが紙幣の取込方向と逆の方向に回転駆動される場合に、搬送ローラ10aは、これと一体に構成される連結ギア54が駆動ギア51と噛み合って回転することにより回転駆動されるが、搬送ローラ10bは、駆動ギア51と噛み合う連結ギア52と、これと回転軸41を介して一体に回転する連結ギア53と、連結ギア53に噛み合う伝達ギア56と、伝達ギア56と噛み合って搬送ローラ10bと一体に設けられる連結ギア55の回転により回転駆動される。すなわち、搬送ローラ10aと搬送ローラ10bは、それぞれが回転駆動されるときに介するギアの数が異なり、その間のガタ(例えばバックラッシュ)が異なるから、駆動のタイミングがずれる。すなわち、搬送ローラ10a,10bとテンションローラ12に狭持された状態で保持される紙幣が、返却される場合は、搬送ローラ10aより搬送ローラ10bが遅れて起動されるから、その姿勢が搬送路の幅方向に傾いて搬送される。そうすると、紙幣搬送路15の横幅を規制している紙幣搬送路側壁を擦りながら紙幣が搬送されるため、その搬送抵抗が大きく、紙幣詰まりが発生しやすいという問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に対応するため、紙幣識別装置に投入された紙幣が返却される場合に、紙幣搬送路の両側に設けられる搬送ローラを、タイミングを合わせて同時に駆動し、紙幣が返却される場合にその姿勢が傾かないようにしてその紙幣詰まりを防止することにより、信頼性の高い紙幣識別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、紙幣の投入口と、前記投入口に連なって延設された紙幣の搬送通路と、前記搬送通路の幅方向に並設された一対の紙幣の搬送手段と、前記搬送手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の動力を前記一対の搬送手段の一方に伝達する第一の駆動伝達手段と、前記駆動手段の動力を前記一対の搬送手段の他方に伝達する第二の駆動伝達手段と、前記投入口から前記搬送路に導入された紙幣を識別する識別部と、を備えた紙幣識別装置において、前記第一の駆動伝達手段または前記第二の駆動伝達手段のいずれか一方は、前記一対の搬送手段を同期して駆動する駆動調整手段を備えたものである。
【0013】
これによれば、前記搬送通路の幅方向に並設された一対の紙幣の搬送手段は、それぞれその駆動手段の動力を伝達する第一の駆動伝達手段と、第二の駆動伝達手段とによって別々に駆動される構造であるから、これらの駆動伝達手段を自在に構成することが可能であり、それらを備える紙幣識別装置の識別部の構造を集約的に構成することができる。また、前記搬送通路の幅方向に並設された一対の紙幣の搬送手段は、それぞれ異なる駆動伝達手段により駆動されるものの、前記駆動調整手段により同期して駆動されるから、前記一対の紙幣の搬送手段により搬送される紙幣が、その駆動時に前記紙幣搬送路の幅方向に傾かないようにすることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の紙幣識別装置において、前記一対の紙幣の搬送手段は一対の搬送ローラであり、前記駆動手段は駆動モータであり、前記第一の駆動伝達手段、および前記第二の駆動伝達手段は複数のギアを噛合せたギア列であり、前記駆動調整手段は、前記ギア列のいずれか一方の一つのギアが所定量の空転する遊びを有し前記搬送ローラを駆動するものである。
【0015】
これによれば、前記第一の駆動伝達手段、および前記第二の駆動手段をギア列により簡易に構成することができる。また、前記ギア列のいずれか一方の一つのギアが所定量の空転する遊びを有し前記搬送ローラが駆動されるから、前記第一の駆動伝達手段、および前記第二の駆動手段を成す前記ギア列の噛合いガタをこれにより同等に調整し、前記一対の搬送ローラを確実に同期して駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、紙幣識別装置の識別部の構造を集約的に構成することができるから、小型で取り扱いの容易な紙幣識別装置を提供することができる。また、一対の紙幣の搬送手段により搬送される紙幣が、その駆動時に紙幣搬送路の幅方向に傾かないようにすることができるから、その紙幣詰まりを防止することができる。すなわち、これにより信頼性の高い紙幣識別装置を提供することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、第一の駆動伝達手段、および第二の駆動手段をギア列により簡易に構成することができるから、コストの安い紙幣識別装置を提供することができる。また、第一の駆動伝達手段、および第二の駆動手段を成すギア列の噛合いガタを、そのギア列のいずれか一方の一つのギアが所定量の空転する遊びを有することで同等に調整し、一対の搬送ローラを確実に同期して駆動することができるから、紙幣詰まりを防止し、コストの安い信頼性の高い紙幣識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の紙幣識別装置を構成する識別部の固定側ユニットを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の紙幣識別装置の駆動伝達機構を構成する連結ギアと搬送ローラの連結状態を示す分解斜視図である。
【図3】従来の実施形態の紙幣識別装置を示す外観斜視図である。
【図4】従来の実施形態の紙幣識別装置を模式的に示す側断面図である。
【図5】従来の実施形態の紙幣識別装置を構成する識別部の固定側ユニットを示す図であって、(a),(b)は、それぞれこの固定側ユニットを異なる視点から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図を参照して説明する。本発明の実施形態の紙幣識別装置の外観および内部構造は、図3,4に示す従来の紙幣識別装置と同様であるので、その説明を省略する。図1は本発明の実施形態の紙幣識別装置1を構成する識別部3の固定側ユニット3aを示す斜視図である。なお、従来と同様または同等の機能を有する構成には、従来と同符号を付す。図に示すように、紙幣を(テンションローラ8,9,11,12との間に狭持して)搬送する搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ(搬送手段)10a,10bは、従来の紙幣識別装置1´と同様に紙幣搬送路(搬送通路)15の幅方向中心から左右対称位置にそれぞれ一対が設けられている。そして、紙幣搬送路15の両側に、搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ10a,10bを駆動するための複数のギアからなる駆動伝達機構を備えている。そして、この駆動伝達機構は、図示しない駆動モータ(駆動手段)により駆動される駆動ギア51と、駆動ギア51と噛み合うように搬送ローラ10aの側方に設けられ、これと同心に連結された連結ギア57とから成る第一の駆動伝達手段と、搬送ローラ7a,7bが左右に固着された連結回転軸41と、この連結回転軸41の一方端に固着され、駆動ギア51に噛合うように設けられた連結ギア52と、連結回転軸41の他方端に固着された連結ギア53(図5参照)と、搬送ローラ10bの側方にこれと同心に一体で設けられた連結ギア55と、連結ギア53の回転を連結ギア55に伝達する伝達ギア56とから成る第二の駆動伝達手段と、を備えている。なお、第一の駆動伝達手段を構成する連結ギア57はこれを支持する支軸45の回りに回動自在に装着されている。
【0020】
ここで、紙幣搬送路15の幅方向に並設された一対の搬送ローラ10a,10bは、図に示すようにそれぞれ図示しない駆動モータの動力を伝達する別々の駆動伝達手段を成すギア列により駆動される。そして、これらのギア列は紙幣搬送路15の両側に配設され、その間の紙幣搬送路15に光学センサー23,24や磁気センサー25が蜜に配置されている。すなわち、紙幣搬送路15に並設された一対の搬送ローラ10a,10bは、それぞれ別々の駆動伝達手段を成すギア列により駆動されるから、これらのギア列を自在に構成することが可能であり、これにより、他の構成部品を効率良く配置することができるから、これらのギア列を備える紙幣識別装置1の識別部3の構造を集約的に構成することが可能である。
【0021】
図2は、連結ギア57と搬送ローラ10aの連結状態を示す分解斜視図である。図に示すように連結ギア57の側方には、搬送ローラ10aの中心部に嵌め込まれる円筒部57aが設けられ、この円筒部57aの外周にはその軸心に沿って3箇所のリブ部57bが形成されている。また、搬送ローラ10aはその中心部に連結ギア57の円筒部57aが挿入される貫通穴10aaが設けられ、その貫通穴10aaの周囲には連結ギア57の円筒部57aに設けられた3箇所のリブ部57bに対応して、これを挿通可能な3ヶ所の溝部10abが設けられている。また、搬送ローラ10aは連結ギア57の円筒部57aの回りに回動可能に装着され、連結ギア57のリブ部57bが挿通される溝部10abは、搬送ローラ10aに対して連結ギア57が所定の回転角度で空転可能な「遊び」(駆動調整手段)が設けられている。
【0022】
このように構成される紙幣識別装置1において、紙幣が紙幣投入口5から投入されると、図示しない駆動モータが駆動されて、駆動ギア51を介して搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ10a,10bが紙幣の取込方向に駆動される。そして、紙幣投入口5に投入された紙幣は、これらにより逆U字状の紙幣搬送路15を搬送される。そして、紙幣が紙幣搬送路15に配置された磁気センサー25および光学センサー23,24を通過すると、その紙幣の金種および真贋が判定される。そして、その後に紙幣の後端が搬送ローラ10a,10bとそれに対応して設けられた一対のテンションローラ12に狭持された状態で保持される。ここで、その紙幣が本物と判定され、さらに、例えば自販機からの商品の販売が完了すると、従来と同様に紙幣が識別部3の下方に設けられた紙幣収納庫18に向けて搬送され収納される。一方、ここで紙幣が贋物と判定された場合や、自販機からの商品の販売が取り消された場合には、搬送ローラ7a,7b、および搬送ローラ10a,10bが紙幣の取り込み方向と逆の方向に回転駆動され、紙幣が紙幣投入口5に向けて返却される。
【0023】
ここで、搬送ローラ10a,10bが紙幣の取込方向と逆の方向に回転駆動され、紙幣が返却される場合に、搬送ローラ10aは、これと連結される連結ギア57が駆動ギア51と噛み合って回転することにより回転駆動されるが、搬送ローラ10bは、駆動ギア51と噛み合う連結ギア52と、これと回転軸41を介して一体に回転する連結ギア53と、連結ギア53に噛み合う伝達ギア56と、伝達ギア56と噛み合って搬送ローラ10bと一体に設けられる連結ギア55の回転により回転駆動される。すなわち、搬送ローラ10aは駆動ギア51に対して一つのギアを介して駆動されるが、搬送ローラ10bは複数のギアを介して駆動されるから、その間のギアのガタ(バックラッシュ等)が異なる。しかしながら、搬送ローラ10aは連結ギア57の円筒部57aの回りに回動自在に装着され、連結ギア57のリブ部57bが挿通される溝部10abは、搬送ローラ10aに対して連結ギア57が所定の回転角度で空転可能な「遊び」が設けられているから、その「遊び」を適宜に設定することにより、駆動ギア51と搬送ローラ10a,10b間のそれぞれのガタを同等に調整することができる。したがって、搬送ローラ10a,10bが紙幣の取込方向と逆の方向に回転駆動される場合に、これらを同期して駆動することができる。すなわち、これによりその返却紙幣の幅方向の傾きを防止し、紙幣の詰まりを防止することができる。
【0024】
以上のように、本発明の紙幣識別装置1においては、紙幣搬送通路15の幅方向に並設された一対の搬送ローラ10a,10bは、それぞれ図示しない駆動モータの動力を伝達する別個のギア列により、別々に駆動される構造であるから、これらの駆動伝達手段の構成を自在にすることを可能にする。これにより、これらを備える紙幣識別装置1の識別部3の構造を集約的に構成することができるから、小型で取り扱いの容易な紙幣識別装置を提供することができる。また、紙幣搬送通路15の幅方向に並設された一対の搬送ローラ10a,10bは、その一方の搬送ローラ10aに対して連結ギア57が所定の回転角度で空転可能な「遊び」が適宜に設けられることにより、それぞれを駆動するギア列の噛合いガタが同等に調整され、それらが同期して駆動されるから、一対の搬送ローラ10a,10bにより搬送される紙幣が、その駆動時に紙幣搬送路15の幅方向に傾かないようにすることができる。すなわち、これにより紙幣詰まりを防止して、信頼性の高い紙幣識別装置を提供することができる。
【0025】
また、搬送ローラ10a,10bをそれぞれ別々に駆動する駆動伝達手段は、ギア列により成され、そのギア列の一方の一つの連結ギア57が所定量の空転する「遊び」を有することで、それぞれのギア列の噛合いガタを同等に調整するから、簡易な構成で一対の搬送ローラ10a,10bを確実に同期して駆動し、紙幣詰まりを防止することができる。したがって、これによりコストの安い信頼性の高い紙幣識別装置を提供することができる。
【0026】
なお、本発明は、言うまでもなく本実施の形態に示す装置にのみ限定されず、その趣旨の包含する範囲で応用変更が可能である。例えば、識別部3に設けられる紙幣搬送路15、搬送ローラ7a,7b、搬送ローラ10a,10bの形状、連結ギア57と搬送ローラ10aの連結構造、あるいは、磁気センサー25、光学センサーの配置構成等は、この実施形態に示すものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 紙幣識別装置
3 識別部
3a 固定側ユニット
5 紙幣投入口(投入口)
7a 搬送ローラ
7b 搬送ローラ
10a 搬送ローラ(搬送手段)
10aa 貫通穴
10ab 溝部
10b 搬送ローラ(搬送手段)
15 紙幣搬送路(搬送通路)
41 連結回転軸
51 駆動ギア
52 連結ギア
53 連結ギア
55 連結ギア
56 伝達ギア
57 連結ギア
57a 円筒部
57b リブ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の投入口と、前記投入口に連なって延設された紙幣の搬送通路と、前記搬送通路の幅方向に並設された一対の紙幣の搬送手段と、前記搬送手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の動力を前記一対の搬送手段の一方に伝達する第一の駆動伝達手段と、前記駆動手段の動力を前記一対の搬送手段の他方に伝達する第二の駆動伝達手段と、前記投入口から前記搬送路に導入された紙幣を識別する識別部と、を備えた紙幣識別装置において、前記第一の駆動伝達手段または前記第二の駆動伝達手段のいずれか一方は、前記一対の搬送手段を同期して駆動する駆動調整手段を備えたことを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記一対の紙幣の搬送手段は一対の搬送ローラであり、前記駆動手段は駆動モータであり、前記第一の駆動伝達手段、および前記第二の駆動伝達手段は複数のギアを噛合せたギア列であり、前記駆動調整手段は、前記ギア列のいずれか一方の一つのギアが所定量の空転する遊びを有し前記搬送ローラを駆動するものであることを特徴とする請求項1に記載の紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−224586(P2010−224586A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67781(P2009−67781)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】