紙幣運搬装置
【課題】本発明は紙幣の受取り、運搬、保管、及び分配を行う両替機及び自動販売機内で使用される紙幣両替機における紙幣の取込み及び整列に関する。
【解決手段】紙幣を運搬する移動可能な手段を備えた紙幣運搬装置であって、該手段は紙幣を駆動する力がその紙幣の剛性に依存するように少なくとも3つの地点で紙幣と摩擦係合する。紙幣はさらに該地点の1つの周囲で旋回して、紙幣を所望の経路と整列させる。紙幣を運搬するのに必要な力が所望の限界値を超えた場合に紙幣の移動を制限する手段及び運搬装置が使用されていないときに紙幣又は他の異物が挿入されるのを阻止する手段も提供される。
【解決手段】紙幣を運搬する移動可能な手段を備えた紙幣運搬装置であって、該手段は紙幣を駆動する力がその紙幣の剛性に依存するように少なくとも3つの地点で紙幣と摩擦係合する。紙幣はさらに該地点の1つの周囲で旋回して、紙幣を所望の経路と整列させる。紙幣を運搬するのに必要な力が所望の限界値を超えた場合に紙幣の移動を制限する手段及び運搬装置が使用されていないときに紙幣又は他の異物が挿入されるのを阻止する手段も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣又は単に紙幣と呼ばれる価値のある用紙の運搬に関する。本発明は紙幣の受取り、運搬、保管、及び分配を行う両替機及び自動販売機において使用される紙幣両替機に関連して説明される。
【0002】
特に、本発明は紙幣の取込み及び整列に関する。紙幣の取込みにはまず両替機の機構によって紙幣を整列させることを伴う。紙幣が照合される受取り器などの両替機の他の機能ユニットまで運ばれるときに紙幣が正確な配向を有するように、整列が必要となる。紙幣が整列していないと、両替機の機構に詰まりが生じ、照合が不正確になる恐れがある。
【背景技術】
【0003】
当該分野では紙幣の取込みのための多数の方法及び関連する装置が知られている。最も一般的な方法は2つのローラ間で紙幣を挟み、そのローラを回転させることによって紙幣を運搬することである。次に、紙幣は移動する紙幣に対する表面の作用によって紙幣を旋回させ、これにより基準面と整列されるように、基準面に対して運搬されることによって整列される。
【0004】
【特許文献1】WO−A−02/49945号
【特許文献2】US-A-4 106 767号
【特許文献3】EP-A-0 749 926号
【特許文献4】EP-A-1 167 260号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法には多数の不利がある。ローラによって紙幣上に及ぼされる力は紙幣の質にかかわらず一定である。紙幣の品質は変化に富み、品質の悪い紙幣は品質のよい紙幣よりも剛性が低い。場合によっては、品質の悪い紙幣が基準面に対して運搬されるときには取込み又は整列機構において詰まりが生じて紙幣を旋回させずに折り曲げてしまい、その結果として紙幣に不整列が生じて引き続き詰まりを発生させる。さらなる不利は、機構を詰まらせる恐れのあるクレジット・カードなどの硬い物体が取込み機構に挿入されるかもしれないことである。
【0006】
しかし、紙幣が適切に整列されることを確実にするためには、紙幣を運搬するときにできるだけ大きな力を使用することが好ましい。
【0007】
紙幣を取り込む別の方法には、ファンを用いて空気を移動させることによって吸引を生成することを伴う。次に、この吸引の力を用いて紙幣が駆動ベルトと係合される。この構成は詰まりの発生を減少させるが、皺になっているか、縦方向に折り目が付いている紙幣は依然として詰まりを生じさせるかもしれない。
【0008】
WO−A−02/49945号は、その剛性を増大させるために運搬されている紙幣が曲げられるように湾曲した運搬経路を備えた紙幣を運搬する装置を開示している。
【0009】
US-A-4 106 767号、EP-A-0 749 926号、及びEP-A-1 167 260号は、運搬工程を容易にするために書類が折り曲げられた書類を運搬する装置を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
硬い物体の挿入を阻止し、かつ品質の悪い紙幣の詰まりを回避する紙幣取込み及び整列機構を提供することが好ましい。
【0011】
本発明の態様は添付の特許請求の範囲に説明されている。
【0012】
本発明のさらなる態様では、紙幣運搬装置は紙幣を該紙幣の剛性に依存する力と係合させる。
【0013】
好適には、運搬装置は運搬装置と紙幣との間の摩擦力が紙幣の剛性に依存するように、紙幣と摩擦係合し、紙幣を屈曲させる。
【0014】
本紙幣運搬装置は紙幣を複数の地点で係合させてよい。
【0015】
本紙幣運搬装置は紙幣が回転して、複数の地点の少なくとも1つに対して動くように、第1の基準面に対して紙幣をさらに運搬してよい。
【0016】
該複数の地点は、回転の地点と紙幣が基準面と接触する地点との間の距離を最大にするように配置されることが好ましい。
【0017】
本紙幣運搬装置は2つの基準面のいずれか1つに対して紙幣を運搬してよく、該地点は運搬装置による力が回転されるときに紙幣の中間部分付近に印加されるように配置されてよい。
【0018】
本紙幣運搬装置は紙幣と係合する複数の接点を含む紙幣経路を定めてよく、該複数の接点のうち少なくとも2つは紙幣の反対側上で紙幣を係合させる。
【0019】
接触点は波状の表面の一部を形成してよい。好適な実施形態では、紙幣経路は離間した2つの相補的表面によって形成される。表面は、0.1〜0.3mmの範囲であってよく好適には1.5mmである紙幣経路を形成する間隙によって離間されてよい。この距離は特に接触点の数及び接触点の材料の摩擦係数に左右されることになる。
【0020】
本運搬装置は各々紙幣をある地点で係合させる少なくとも2つのカムを備えてよい。好適には、第1のカムは離間した2カ所で紙幣を係合させ、第2のカムは紙幣の反対の面に位置する第3の場所で紙幣を係合させて、カムが回転して紙幣を運搬する。
【0021】
本発明のまたさらなる態様では、本紙幣運搬装置は回転して紙幣を運搬する複数の波形のローラを備える。
【0022】
本発明のまたさらなる態様では、少なくとも一方が移動して紙幣を運搬する、通路を形成する対向する2つの相補的表面を含み、かつ少なくとも一方の表面が静止しているときに物体が該通路に挿入されるのを阻止する手段を含んだ紙幣運搬装置が提供される。
【0023】
本発明のまたさらなる態様では、紙幣を運搬する力が所定の限界値を超えたときに紙幣の移動を制限する手段を含んだ紙幣運搬装置が提供される。この運搬装置は該力を検出する手段、及び該検出された力が該所定の限界値を超えたときに紙幣の移動を阻止する手段をさらに備える。
【0024】
紙幣の移動は、紙幣を減速させるか、紙幣の移動を停止するか、又は反転させることによって阻止されてよい。
【0025】
好適な実施形態では、本紙幣運搬装置は紙幣取込みとして働き、力が所定の限界値を超えると紙幣は拒絶される。
【0026】
好適には、移動を制限する手段は、偏向力を超えかつ第2のギヤから第1のギヤを分離させるのに必要な力によって所定の限界値が決定されるように、偏向手段によって第2のギヤと係合可能な第1のギヤを含む。
【0027】
該制限手段は第2のラチェットと係合される第1のラチェットを含んでよい。
【0028】
該制限手段は付加的又は代替的には、電気モータに印加される電流を制限することによって紙幣の移動が阻止される電気モータを備えてよい。
【0029】
さらなる好適な実施形態は紙幣取込み器及び紙幣整列器を組み入れており、この両方は本発明の態様を組み入れている。
【0030】
以下の図面及び付随する説明では、共通の機能を示すために同様の参照番号を用いている。
【0031】
ここで、本発明を具現化する構成を添付図面を参照して例示として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の紙幣運搬装置の動作を示す略図である。
【図2】第1のモードで動作するように配置された図1の装置の平面図である。
【図3】第2のモードで動作するように配置された図1の装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図5】本発明のさらなる実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図6】本発明のまたさらなる実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図7】支持体内に設置された図6の運搬装置を示す上面図である。
【図8】さらなる好適な実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図9】図8の紙幣運搬装置を示すさらなる略図である。
【図10】紙幣運搬装置と共に使用されるトルク・リミッタを示す略図である。
【図11】図6の機構を組み入れた本発明の紙幣取込み及び整列デバイスを示す端面図である。
【図12】図8のデバイスの上面図である。
【図13】図8のデバイスの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、紙幣運搬装置10は3つの要素14、16、及び18と紙幣12との摩擦係合によって動作する。要素14、16、及び18は紙幣12を所望の方向に運ぶために移動する。このような要素は該図の平面に対して垂直な平面内あるいは水平な平面内を移動して紙幣を運搬する。しかし、本発明の動作はこの移動の方向には依存しない。図2及び3を参照して動作の2つの形態を説明する。
【0034】
Xは、要素16と14との間の距離であり、Yは、要素14と18との間の距離であり、Dは、紙幣12によって定められた平面における要素14と要素16及び18との間の重なる部分の程度であり、紙幣が変形される量を定めるものである。要素14、16、及び18が紙幣12の上に及ぼす力の程度は、距離X、Y、及びDならびに紙幣12の剛性に左右される。距離X、Y、及びDが一定に保たれる場合、力は紙幣の剛性のみに依存することになる。
【0035】
図2は図1の装置を組み入れたベゼル20の平面図であり、装置の第1の動作モードを示している。要素14、16、及び18は図1の図の平面に対して垂直な平面において回転することによって動き、紙幣12は矢印22の方向に運搬される。これはベゼル20による紙幣12の取込みの工程の一部である。この移動によって紙幣の側部24は、ベゼルの角26などの基準面と接触させられる。紙幣が運搬されるとき、紙幣12に対する角26の作用が、紙幣がその周囲を旋回する角26と地点30との間の距離Rに依存する力によって紙幣が矢印28の方向に旋回するのを促進する。
【0036】
図3は整列器30内に設置された図1の装置を示している。この動作モードでは、要素14、16、及び18は図1の図の平面に対して平行な平面内で回転して紙幣12を矢印32の方向に移動する。この移動によって紙幣12の角34は基準面36と係合し、矢印38の方向に紙幣を旋回させる。
【0037】
紙幣12を地点40の周囲に旋回させる力は角34と地点40との間の距離R’に比例する。
【0038】
上記のように、要素14、16、及び18は紙幣を紙幣の剛性に依存する力と係合させ、これによってこれら地点のいずれかに対して紙幣は動くことができるようになって、紙幣の旋回が可能となる。紙幣がその周囲を旋回する地点30及び40の場所は変化する。このような場所は要素14、16、又は18のいずれか1つが紙幣と接触する地点に位置してよく、あるいは(紙幣が3つの要素すべてに対して動く場合には)そのような接触点の間にあってよい。
【0039】
したがって、任意の紙幣に関し、角26又は基準面36に対する回転力が要素14、16、及び18が及ぼす力を上回って該紙幣を地点の1つ又は複数に対して移動かつ回転させるように、角26又は基準面36に関連して距離X、Y、及びD(図1)のほか要素14、16、及び18の場所を配置することが可能となる。このようにして、紙幣の不所望の折り重なり又は曲がりが阻止され得る。
【0040】
図1及び2に示した構成のような所与の配置に関し、剛性の弱い紙幣は角26又は基準面36と接触するときにより剛性のある紙幣が受けるよりも、より弱い力を受ける。したがって、力を変えずにすべての紙幣を運ぶ配置の場合よりも、より弱い剛性の紙幣は不所望の折り重なり又は曲がりを受け難い。
【0041】
各構成に関し、紙幣が反応して回転を生じさせる2つ以上の基準面(又は角)が提供されることが可能である。さらに、この回転を促進するために、紙幣の移動の方向は所与の基準面に対して傾斜してよい。
【0042】
図1、2、及び3は紙幣12と係合した3つの要素14、16、及び18を示しているが、上記の原理は紙幣とのより多くの接触地点を含む紙幣運搬装置に同じく適用可能である。
【0043】
図4から10は上記の原理を組み入れた種々の実施形態を示している。
【0044】
図4は紙幣運搬装置50を示している。第1のカム52は矢印54の方向に回転し、第2のカム56は矢印58の方向に回転する。カム56はカム52の偏心部分の節64に相補的な節60及び62を含んだ偏心部分を有して形成される。節60、62、及び64は図1に関連して記載したように紙幣を変形させ、図1の要素14、16、及び18に相当する。図1の略図を参照すると、節60、62、及び64は図の平面に平行な方向に移動する。
【0045】
カム52及び56が図示の方向に回転するとき、紙幣12は該紙幣の剛性に依存する力を用いて矢印66の方向に運搬される。
【0046】
図5は3つのローラ72、74、及び76が紙幣12と摩擦係合するさらなる紙幣運搬装置70を示している。ローラ72、74、及び76が各矢印78、80、及び82の方向に回転すると、紙幣12はその剛性に依存する力で矢印84の方向に運搬される。この実施形態では、ローラ72、74、及び76は図1の要素14、16、及び18に相当する。
【0047】
図6は本発明のさらなる実施形態を示している。2つの取込みローラ80及び82は、波形を形成するための隆起部分84及び歯溝部分86を備えて形成されている。取込みローラ80及び82は、一方のローラの個々の隆起部分84が他方のローラの歯溝部分86と相補的であるように配置されている。取込みローラ80及び82の個々の隆起した部分と低くなった部分との間にわずかの重なりが提供されている場合、紙幣12は図1に関して記載したように隆起部分及び歯溝部分によって摩擦係合される。ローラの隆起部分84及び歯溝部分86は図1の要素14、16、及び18に相当する。
【0048】
ローラ80及び82は紙幣12がそこを運搬される間隙D'を形成する。間隙D'の寸法を変えることによって、ローラが紙幣を係合させる力が変えられる。図示の本実施形態の間隙の寸法は0.2mmであるが、ローラ80及び82の摩擦係数など数多くの他の因子も紙幣を運搬する力に影響を及ぼすであろうことを理解すべきである。したがって、間隙D'の寸法はそのような他の因子を補償するように変えられてよい。
【0049】
取込みローラ80及び82は個々の矢印92及び94の方向に個々の軸88及び90の周囲に回転する。取込みローラ80及び82が回転するとき、紙幣はローラの相補的な隆起部分及び歯溝部分によって摩擦係合され、これによって運搬される。
【0050】
紙幣12との接触点は4カ所以上あるが、それにもかかわらず紙幣を運搬する力は紙幣の剛性に依存する。
【0051】
図7は図5の機構の平面図であり、取込みローラ82が回転するのに関し、支持体96内に設置された取込みローラ82を示している。ローラははめ歯98に対する動作によって回転される。支持体96はプレート100と取込みローラ82との間の隙間が最小になるように取込みローラ82の隆起部分84及び歯溝部分86と相補的になるように形成されたプレート100を備える。これによって、紙幣が取込みローラ82と摩擦係合されるのが阻止され、所望の場所に運搬されるのに反してローラの周囲に巻きつけられるのが阻止される。同じ幾何学的形状がローラ80に使用されている。
【0052】
図6及び7に示した取込み機構は、取込みローラ80と82との間の間隙によって形成された波状の紙幣経路がクレジット・カードなどの硬い物体が機構に挿入されるのを阻止するということにある。取込みローラ80と82は密閉を提供するように相互に接触されてもよい。特に高圧の水の噴射が使用される場合、これは清掃工程中に有用である。
【0053】
図8はローラ112及び114を備えた紙幣運搬装置110を示している。各ローラ112及び114は一方のローラの隆起部分118が他方のローラの歯溝部分116と相補的になるように、歯溝部分116及び隆起部分118を有している。これに対応する相互に係合するはめ歯120及び122が各ローラに取り付けられている。モータ126によって駆動されるウォーム歯車124がはめ歯122と係合する。
【0054】
モータ126は起動されるとウォーム歯車124を回転させ、次にはめ歯122及び124を回転させる。これによってローラ112及び114が回転する。ローラ112及び114が回転すると、紙幣12が矢印128の方向に運搬装置内に挿入され得、次にローラによって取り込まれ、矢印128で示した方向に運搬される。
【0055】
モータ126はモータ126が作動していないときにウォーム歯車124が回転しないように制動装置を備えている。したがって、紙幣はモータが起動しているときにだけ挿入され得る。これによって、運搬装置110が作動していないときに紙幣又は他の物体が不所望に挿入されるのが阻止される。
【0056】
運搬装置110は自動販売機又は紙幣の取込み及び/又は運搬が行われるような他のデバイスに設置されることが意図される。紙幣の不所望の挿入を阻止することによって、本装置へのユーザの接近は制御され得、例えば、自動販売機が監視されているか、あるいは自動販売機が紙幣の挿入を促す前にユーザが紙幣を挿入しようとするのを阻止する場合に限られてよい。
【0057】
図9は図8の運搬装置110のさらなる図であり、個々の隆起部分118及び歯溝部分116を備えたローラ112及び114を示している。隆起部分118には切欠き130が形成されている。紙幣12が矢印132の方向に運搬装置110に挿入され、かつローラ112及び114が回転しないとき(モータが起動されないとき)、切欠き130は紙幣12が挿入されるのを阻止するように働く。
【0058】
図示したように、切欠き部は引込み表面134及び棒状表面136によって定められた非対称の形状を有している。引込み表面134は、挿入されるときに棒状表面136に接触するように、紙幣の経路の向きを変えるように働く。棒状表面136は引込み表面に対して実質的に垂直な方向になっており、一旦紙幣の先端部が棒状表面136と接触したら紙幣が矢印132の方向にさらに動くのを阻止するように、ローラの一方の各切欠きはローラの他方の隆起部分118と協働する。切欠き130はクレジット・カードなどの他の物体が紙幣運搬装置110に挿入されるのを阻止するようにも働く。この切欠きも対称的形状を備えてよい。
【0059】
図10は本願明細書に記載の運搬装置又は他の任意の運搬装置と共に使用され、かつ紙幣の剛性に比例する力によって紙幣などの書類が運搬される場合に特に有用である一方向トルク・リミッタ140を示している。ラチェット142及び144は相互に係合し、ラチェット142及び144が所定の力で相互に係合するようにばね146は表面(図示せず)及びラチェット144に対して作用する。
【0060】
図10に示したように、ラチェット142及び144は各々、他方のラチェットに対して一方のラチェットが矢印150の方向よりも矢印148の方向により容易に回転するように非対称的に各々形成された相補的表面152及び154を有している。
【0061】
使用中、ラチェット144はローラ114に接続され、例えば、ラチェット142はローラ114及び112と係合した紙幣が矢印148の方向に駆動されるようにモータ(図示せず)によって駆動される。トルク・リミッタ140はクラッチとして働き、ばね146がラチェット142及び144を係合させる力が予め定められているので、矢印150の方向に印加された力が所定の限界値未満の場合に、ラチェット142はラチェット144と共に一体となって動くであろう。この力がその限界値を超える場合、ばね146の偏向力を上回ることになり、ラチェット142をラチェット144に対して動かし、これにより紙幣の移動を阻止する。
【0062】
トルク・リミッタは紙幣がその剛性に依存する力で運搬される紙幣運搬装置と共に働く。したがって、ばね146の偏向強度は運搬装置が単に所定の剛性未満の紙幣を運搬するよう働くように選択され得る。これによって不適当な紙幣及びクレジット・カードなどの好ましくない物体が不所望に挿入されるのを阻止する。
【0063】
上記のトルク・リミッタは有利には図8及び9を参照して記載した運搬装置110と共に使用されてよいことを理解すべきである。つまり、ローラ112及び114の切欠き130は運搬装置が作動していないときに不所望の物体の挿入を阻止するように働き、トルク・リミッタ140は運搬装置の作動中に同じ機能を有する。
【0064】
紙幣を運搬するの必要な力が該所定の限界値を超えたことを検出するために検出器が使用されてよい。一旦この限界値に達すると、ラチェット142を駆動しているモータは停止かつ反転され得る。反転される場合、ラチェット142は再びラチェット144と係合し、紙幣は矢印150とは反対方向に移動して、運搬装置から排出される。
【0065】
上記トルク・リミッタは紙幣運搬装置の動作が紙幣を運搬するのに必要な力に関連して制限され得る1つの様式である。この紙幣を運搬するのに必要な力は知られている力検出器によって検出されてよい。この後、ローラ112及び114(あるいは他の知られている運搬装置)を駆動するモータへの電流は、検出された力とは関係なく制限又は反転され得る。
【0066】
図11、12、及び13を参照すると、紙幣取込み及び整列デバイス160は、係合取込みローラ80及び82を備え、該ローラは取込みローラ80及び82が同じ速度で駆動されるように相互に係合する個々のはめ歯98及び162を有するベゼル(図示せず)と共に紙幣の通路を形成する。図示の取込み及び整列デバイスは図6及び7に関して記載した形態のローラ80及び82を有しているが、図8及び9に関して記載したローラ112及び114が有利には図示したデバイス160と共に使用されてもよい。
【0067】
デバイス160は把持ローラ164及び3つの整列ローラ166、168、及び170をさらに備えている。ローラ170は図5に示した構成では下方に向いており、ローラ166と168との間にある。モータ172はベルト174を用いて整列ローラ166、168、及び170を駆動する。デバイス160は付加的な2つの把持ローラ176及び178も備える。
【0068】
第2のモータ180はベルト182を駆動し、該ベルトは軸184、186、及び188を用いて個々のローラ164、176、及び178を駆動する。ベルト182ははめ歯190を駆動し、次に該はめ歯は取込みローラ80のはめ歯98を駆動するはめ歯192と係合する。同じく、はめ歯190も取込みローラ82のはめ歯162と係合するはめ歯194を駆動し、これにより取込みローラ82が駆動される。したがって、モータ180は取込みローラ80及び82の動作のほか把持ローラ164、176、及び178も制御する。
【0069】
ここでデバイス160の動作を説明する。紙幣12(図12)は矢印196の方向に挿入される。センサ(図示せず)は紙幣が挿入されたことを感知し、取込みローラ80及び82を回転させるモータ180を起動させる。取込みローラは紙幣と摩擦係合し、ローラ80及び82の相補的表面によって生じる紙幣の変形に起因する紙幣の剛性に依存する力により紙幣をさらに矢印196の方向に運搬する。ローラ80及び82が紙幣と接触する地点があることも、ローラに対して紙幣が滑るのを促進する。したがって、紙幣12がその経路がデバイス90の角200と衝突を生じるように挿入される場合、紙幣12への角200の作用によって紙幣が旋回し、これによりその経路が補正される。これにより、結果的に紙幣の詰まり又は不正確な照合を引き起こし得る紙幣の折り重なりの可能性が阻止される。これは図2に関して上記した動作モードに相当する。
【0070】
一旦紙幣が取込みローラ80及び82を通過し、かつ紙幣の長手方向の中間部分が整列要素166、168、及び170の場所に達すると、モータ180は停止され、モータ172が起動されて整列ローラ166、168、及び170を駆動し、紙幣を矢印198の方向に運搬する。これによって、紙幣12の角202は基準面204と係合され、紙幣はその側部206が基準面204に対して整列されるまでこの角の周囲で旋回する。これは図3に関して記載した動作モードに相当する。
【0071】
ローラ164及び176は下降し、ローラ114が紙幣と係合するように紙幣を運搬する。ローラ164は紙幣12を取込みローラから整列ローラまで運搬し、ローラ176及び178が紙幣12をさらに運搬する。デバイス160は一般に、自動販売機(図示せず)に設置された紙幣両替機(図示せず)内に設けられる。紙幣は紙幣保管庫又は自動販売機の他の機能エリアまでさらに運搬される。
【0072】
さらなる実施形態では、図10に関して記載したトルク・リミッタ110は、ローラ80又は82のいずれかに接続されたデバイス160で使用されてよいか、あるいはさらなる実施形態では図8及び9のローラ112又は114がローラ80及び82の代わりに使用されてよい。
【0073】
さらに、トルク・リミッタ110は、紙幣を運搬する力がその紙幣の剛性に比例する本願明細書に記載の任意の運搬構成と共に使用されてよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣又は単に紙幣と呼ばれる価値のある用紙の運搬に関する。本発明は紙幣の受取り、運搬、保管、及び分配を行う両替機及び自動販売機において使用される紙幣両替機に関連して説明される。
【0002】
特に、本発明は紙幣の取込み及び整列に関する。紙幣の取込みにはまず両替機の機構によって紙幣を整列させることを伴う。紙幣が照合される受取り器などの両替機の他の機能ユニットまで運ばれるときに紙幣が正確な配向を有するように、整列が必要となる。紙幣が整列していないと、両替機の機構に詰まりが生じ、照合が不正確になる恐れがある。
【背景技術】
【0003】
当該分野では紙幣の取込みのための多数の方法及び関連する装置が知られている。最も一般的な方法は2つのローラ間で紙幣を挟み、そのローラを回転させることによって紙幣を運搬することである。次に、紙幣は移動する紙幣に対する表面の作用によって紙幣を旋回させ、これにより基準面と整列されるように、基準面に対して運搬されることによって整列される。
【0004】
【特許文献1】WO−A−02/49945号
【特許文献2】US-A-4 106 767号
【特許文献3】EP-A-0 749 926号
【特許文献4】EP-A-1 167 260号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法には多数の不利がある。ローラによって紙幣上に及ぼされる力は紙幣の質にかかわらず一定である。紙幣の品質は変化に富み、品質の悪い紙幣は品質のよい紙幣よりも剛性が低い。場合によっては、品質の悪い紙幣が基準面に対して運搬されるときには取込み又は整列機構において詰まりが生じて紙幣を旋回させずに折り曲げてしまい、その結果として紙幣に不整列が生じて引き続き詰まりを発生させる。さらなる不利は、機構を詰まらせる恐れのあるクレジット・カードなどの硬い物体が取込み機構に挿入されるかもしれないことである。
【0006】
しかし、紙幣が適切に整列されることを確実にするためには、紙幣を運搬するときにできるだけ大きな力を使用することが好ましい。
【0007】
紙幣を取り込む別の方法には、ファンを用いて空気を移動させることによって吸引を生成することを伴う。次に、この吸引の力を用いて紙幣が駆動ベルトと係合される。この構成は詰まりの発生を減少させるが、皺になっているか、縦方向に折り目が付いている紙幣は依然として詰まりを生じさせるかもしれない。
【0008】
WO−A−02/49945号は、その剛性を増大させるために運搬されている紙幣が曲げられるように湾曲した運搬経路を備えた紙幣を運搬する装置を開示している。
【0009】
US-A-4 106 767号、EP-A-0 749 926号、及びEP-A-1 167 260号は、運搬工程を容易にするために書類が折り曲げられた書類を運搬する装置を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
硬い物体の挿入を阻止し、かつ品質の悪い紙幣の詰まりを回避する紙幣取込み及び整列機構を提供することが好ましい。
【0011】
本発明の態様は添付の特許請求の範囲に説明されている。
【0012】
本発明のさらなる態様では、紙幣運搬装置は紙幣を該紙幣の剛性に依存する力と係合させる。
【0013】
好適には、運搬装置は運搬装置と紙幣との間の摩擦力が紙幣の剛性に依存するように、紙幣と摩擦係合し、紙幣を屈曲させる。
【0014】
本紙幣運搬装置は紙幣を複数の地点で係合させてよい。
【0015】
本紙幣運搬装置は紙幣が回転して、複数の地点の少なくとも1つに対して動くように、第1の基準面に対して紙幣をさらに運搬してよい。
【0016】
該複数の地点は、回転の地点と紙幣が基準面と接触する地点との間の距離を最大にするように配置されることが好ましい。
【0017】
本紙幣運搬装置は2つの基準面のいずれか1つに対して紙幣を運搬してよく、該地点は運搬装置による力が回転されるときに紙幣の中間部分付近に印加されるように配置されてよい。
【0018】
本紙幣運搬装置は紙幣と係合する複数の接点を含む紙幣経路を定めてよく、該複数の接点のうち少なくとも2つは紙幣の反対側上で紙幣を係合させる。
【0019】
接触点は波状の表面の一部を形成してよい。好適な実施形態では、紙幣経路は離間した2つの相補的表面によって形成される。表面は、0.1〜0.3mmの範囲であってよく好適には1.5mmである紙幣経路を形成する間隙によって離間されてよい。この距離は特に接触点の数及び接触点の材料の摩擦係数に左右されることになる。
【0020】
本運搬装置は各々紙幣をある地点で係合させる少なくとも2つのカムを備えてよい。好適には、第1のカムは離間した2カ所で紙幣を係合させ、第2のカムは紙幣の反対の面に位置する第3の場所で紙幣を係合させて、カムが回転して紙幣を運搬する。
【0021】
本発明のまたさらなる態様では、本紙幣運搬装置は回転して紙幣を運搬する複数の波形のローラを備える。
【0022】
本発明のまたさらなる態様では、少なくとも一方が移動して紙幣を運搬する、通路を形成する対向する2つの相補的表面を含み、かつ少なくとも一方の表面が静止しているときに物体が該通路に挿入されるのを阻止する手段を含んだ紙幣運搬装置が提供される。
【0023】
本発明のまたさらなる態様では、紙幣を運搬する力が所定の限界値を超えたときに紙幣の移動を制限する手段を含んだ紙幣運搬装置が提供される。この運搬装置は該力を検出する手段、及び該検出された力が該所定の限界値を超えたときに紙幣の移動を阻止する手段をさらに備える。
【0024】
紙幣の移動は、紙幣を減速させるか、紙幣の移動を停止するか、又は反転させることによって阻止されてよい。
【0025】
好適な実施形態では、本紙幣運搬装置は紙幣取込みとして働き、力が所定の限界値を超えると紙幣は拒絶される。
【0026】
好適には、移動を制限する手段は、偏向力を超えかつ第2のギヤから第1のギヤを分離させるのに必要な力によって所定の限界値が決定されるように、偏向手段によって第2のギヤと係合可能な第1のギヤを含む。
【0027】
該制限手段は第2のラチェットと係合される第1のラチェットを含んでよい。
【0028】
該制限手段は付加的又は代替的には、電気モータに印加される電流を制限することによって紙幣の移動が阻止される電気モータを備えてよい。
【0029】
さらなる好適な実施形態は紙幣取込み器及び紙幣整列器を組み入れており、この両方は本発明の態様を組み入れている。
【0030】
以下の図面及び付随する説明では、共通の機能を示すために同様の参照番号を用いている。
【0031】
ここで、本発明を具現化する構成を添付図面を参照して例示として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の紙幣運搬装置の動作を示す略図である。
【図2】第1のモードで動作するように配置された図1の装置の平面図である。
【図3】第2のモードで動作するように配置された図1の装置の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図5】本発明のさらなる実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図6】本発明のまたさらなる実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図7】支持体内に設置された図6の運搬装置を示す上面図である。
【図8】さらなる好適な実施形態の紙幣運搬装置を示す略図である。
【図9】図8の紙幣運搬装置を示すさらなる略図である。
【図10】紙幣運搬装置と共に使用されるトルク・リミッタを示す略図である。
【図11】図6の機構を組み入れた本発明の紙幣取込み及び整列デバイスを示す端面図である。
【図12】図8のデバイスの上面図である。
【図13】図8のデバイスの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、紙幣運搬装置10は3つの要素14、16、及び18と紙幣12との摩擦係合によって動作する。要素14、16、及び18は紙幣12を所望の方向に運ぶために移動する。このような要素は該図の平面に対して垂直な平面内あるいは水平な平面内を移動して紙幣を運搬する。しかし、本発明の動作はこの移動の方向には依存しない。図2及び3を参照して動作の2つの形態を説明する。
【0034】
Xは、要素16と14との間の距離であり、Yは、要素14と18との間の距離であり、Dは、紙幣12によって定められた平面における要素14と要素16及び18との間の重なる部分の程度であり、紙幣が変形される量を定めるものである。要素14、16、及び18が紙幣12の上に及ぼす力の程度は、距離X、Y、及びDならびに紙幣12の剛性に左右される。距離X、Y、及びDが一定に保たれる場合、力は紙幣の剛性のみに依存することになる。
【0035】
図2は図1の装置を組み入れたベゼル20の平面図であり、装置の第1の動作モードを示している。要素14、16、及び18は図1の図の平面に対して垂直な平面において回転することによって動き、紙幣12は矢印22の方向に運搬される。これはベゼル20による紙幣12の取込みの工程の一部である。この移動によって紙幣の側部24は、ベゼルの角26などの基準面と接触させられる。紙幣が運搬されるとき、紙幣12に対する角26の作用が、紙幣がその周囲を旋回する角26と地点30との間の距離Rに依存する力によって紙幣が矢印28の方向に旋回するのを促進する。
【0036】
図3は整列器30内に設置された図1の装置を示している。この動作モードでは、要素14、16、及び18は図1の図の平面に対して平行な平面内で回転して紙幣12を矢印32の方向に移動する。この移動によって紙幣12の角34は基準面36と係合し、矢印38の方向に紙幣を旋回させる。
【0037】
紙幣12を地点40の周囲に旋回させる力は角34と地点40との間の距離R’に比例する。
【0038】
上記のように、要素14、16、及び18は紙幣を紙幣の剛性に依存する力と係合させ、これによってこれら地点のいずれかに対して紙幣は動くことができるようになって、紙幣の旋回が可能となる。紙幣がその周囲を旋回する地点30及び40の場所は変化する。このような場所は要素14、16、又は18のいずれか1つが紙幣と接触する地点に位置してよく、あるいは(紙幣が3つの要素すべてに対して動く場合には)そのような接触点の間にあってよい。
【0039】
したがって、任意の紙幣に関し、角26又は基準面36に対する回転力が要素14、16、及び18が及ぼす力を上回って該紙幣を地点の1つ又は複数に対して移動かつ回転させるように、角26又は基準面36に関連して距離X、Y、及びD(図1)のほか要素14、16、及び18の場所を配置することが可能となる。このようにして、紙幣の不所望の折り重なり又は曲がりが阻止され得る。
【0040】
図1及び2に示した構成のような所与の配置に関し、剛性の弱い紙幣は角26又は基準面36と接触するときにより剛性のある紙幣が受けるよりも、より弱い力を受ける。したがって、力を変えずにすべての紙幣を運ぶ配置の場合よりも、より弱い剛性の紙幣は不所望の折り重なり又は曲がりを受け難い。
【0041】
各構成に関し、紙幣が反応して回転を生じさせる2つ以上の基準面(又は角)が提供されることが可能である。さらに、この回転を促進するために、紙幣の移動の方向は所与の基準面に対して傾斜してよい。
【0042】
図1、2、及び3は紙幣12と係合した3つの要素14、16、及び18を示しているが、上記の原理は紙幣とのより多くの接触地点を含む紙幣運搬装置に同じく適用可能である。
【0043】
図4から10は上記の原理を組み入れた種々の実施形態を示している。
【0044】
図4は紙幣運搬装置50を示している。第1のカム52は矢印54の方向に回転し、第2のカム56は矢印58の方向に回転する。カム56はカム52の偏心部分の節64に相補的な節60及び62を含んだ偏心部分を有して形成される。節60、62、及び64は図1に関連して記載したように紙幣を変形させ、図1の要素14、16、及び18に相当する。図1の略図を参照すると、節60、62、及び64は図の平面に平行な方向に移動する。
【0045】
カム52及び56が図示の方向に回転するとき、紙幣12は該紙幣の剛性に依存する力を用いて矢印66の方向に運搬される。
【0046】
図5は3つのローラ72、74、及び76が紙幣12と摩擦係合するさらなる紙幣運搬装置70を示している。ローラ72、74、及び76が各矢印78、80、及び82の方向に回転すると、紙幣12はその剛性に依存する力で矢印84の方向に運搬される。この実施形態では、ローラ72、74、及び76は図1の要素14、16、及び18に相当する。
【0047】
図6は本発明のさらなる実施形態を示している。2つの取込みローラ80及び82は、波形を形成するための隆起部分84及び歯溝部分86を備えて形成されている。取込みローラ80及び82は、一方のローラの個々の隆起部分84が他方のローラの歯溝部分86と相補的であるように配置されている。取込みローラ80及び82の個々の隆起した部分と低くなった部分との間にわずかの重なりが提供されている場合、紙幣12は図1に関して記載したように隆起部分及び歯溝部分によって摩擦係合される。ローラの隆起部分84及び歯溝部分86は図1の要素14、16、及び18に相当する。
【0048】
ローラ80及び82は紙幣12がそこを運搬される間隙D'を形成する。間隙D'の寸法を変えることによって、ローラが紙幣を係合させる力が変えられる。図示の本実施形態の間隙の寸法は0.2mmであるが、ローラ80及び82の摩擦係数など数多くの他の因子も紙幣を運搬する力に影響を及ぼすであろうことを理解すべきである。したがって、間隙D'の寸法はそのような他の因子を補償するように変えられてよい。
【0049】
取込みローラ80及び82は個々の矢印92及び94の方向に個々の軸88及び90の周囲に回転する。取込みローラ80及び82が回転するとき、紙幣はローラの相補的な隆起部分及び歯溝部分によって摩擦係合され、これによって運搬される。
【0050】
紙幣12との接触点は4カ所以上あるが、それにもかかわらず紙幣を運搬する力は紙幣の剛性に依存する。
【0051】
図7は図5の機構の平面図であり、取込みローラ82が回転するのに関し、支持体96内に設置された取込みローラ82を示している。ローラははめ歯98に対する動作によって回転される。支持体96はプレート100と取込みローラ82との間の隙間が最小になるように取込みローラ82の隆起部分84及び歯溝部分86と相補的になるように形成されたプレート100を備える。これによって、紙幣が取込みローラ82と摩擦係合されるのが阻止され、所望の場所に運搬されるのに反してローラの周囲に巻きつけられるのが阻止される。同じ幾何学的形状がローラ80に使用されている。
【0052】
図6及び7に示した取込み機構は、取込みローラ80と82との間の間隙によって形成された波状の紙幣経路がクレジット・カードなどの硬い物体が機構に挿入されるのを阻止するということにある。取込みローラ80と82は密閉を提供するように相互に接触されてもよい。特に高圧の水の噴射が使用される場合、これは清掃工程中に有用である。
【0053】
図8はローラ112及び114を備えた紙幣運搬装置110を示している。各ローラ112及び114は一方のローラの隆起部分118が他方のローラの歯溝部分116と相補的になるように、歯溝部分116及び隆起部分118を有している。これに対応する相互に係合するはめ歯120及び122が各ローラに取り付けられている。モータ126によって駆動されるウォーム歯車124がはめ歯122と係合する。
【0054】
モータ126は起動されるとウォーム歯車124を回転させ、次にはめ歯122及び124を回転させる。これによってローラ112及び114が回転する。ローラ112及び114が回転すると、紙幣12が矢印128の方向に運搬装置内に挿入され得、次にローラによって取り込まれ、矢印128で示した方向に運搬される。
【0055】
モータ126はモータ126が作動していないときにウォーム歯車124が回転しないように制動装置を備えている。したがって、紙幣はモータが起動しているときにだけ挿入され得る。これによって、運搬装置110が作動していないときに紙幣又は他の物体が不所望に挿入されるのが阻止される。
【0056】
運搬装置110は自動販売機又は紙幣の取込み及び/又は運搬が行われるような他のデバイスに設置されることが意図される。紙幣の不所望の挿入を阻止することによって、本装置へのユーザの接近は制御され得、例えば、自動販売機が監視されているか、あるいは自動販売機が紙幣の挿入を促す前にユーザが紙幣を挿入しようとするのを阻止する場合に限られてよい。
【0057】
図9は図8の運搬装置110のさらなる図であり、個々の隆起部分118及び歯溝部分116を備えたローラ112及び114を示している。隆起部分118には切欠き130が形成されている。紙幣12が矢印132の方向に運搬装置110に挿入され、かつローラ112及び114が回転しないとき(モータが起動されないとき)、切欠き130は紙幣12が挿入されるのを阻止するように働く。
【0058】
図示したように、切欠き部は引込み表面134及び棒状表面136によって定められた非対称の形状を有している。引込み表面134は、挿入されるときに棒状表面136に接触するように、紙幣の経路の向きを変えるように働く。棒状表面136は引込み表面に対して実質的に垂直な方向になっており、一旦紙幣の先端部が棒状表面136と接触したら紙幣が矢印132の方向にさらに動くのを阻止するように、ローラの一方の各切欠きはローラの他方の隆起部分118と協働する。切欠き130はクレジット・カードなどの他の物体が紙幣運搬装置110に挿入されるのを阻止するようにも働く。この切欠きも対称的形状を備えてよい。
【0059】
図10は本願明細書に記載の運搬装置又は他の任意の運搬装置と共に使用され、かつ紙幣の剛性に比例する力によって紙幣などの書類が運搬される場合に特に有用である一方向トルク・リミッタ140を示している。ラチェット142及び144は相互に係合し、ラチェット142及び144が所定の力で相互に係合するようにばね146は表面(図示せず)及びラチェット144に対して作用する。
【0060】
図10に示したように、ラチェット142及び144は各々、他方のラチェットに対して一方のラチェットが矢印150の方向よりも矢印148の方向により容易に回転するように非対称的に各々形成された相補的表面152及び154を有している。
【0061】
使用中、ラチェット144はローラ114に接続され、例えば、ラチェット142はローラ114及び112と係合した紙幣が矢印148の方向に駆動されるようにモータ(図示せず)によって駆動される。トルク・リミッタ140はクラッチとして働き、ばね146がラチェット142及び144を係合させる力が予め定められているので、矢印150の方向に印加された力が所定の限界値未満の場合に、ラチェット142はラチェット144と共に一体となって動くであろう。この力がその限界値を超える場合、ばね146の偏向力を上回ることになり、ラチェット142をラチェット144に対して動かし、これにより紙幣の移動を阻止する。
【0062】
トルク・リミッタは紙幣がその剛性に依存する力で運搬される紙幣運搬装置と共に働く。したがって、ばね146の偏向強度は運搬装置が単に所定の剛性未満の紙幣を運搬するよう働くように選択され得る。これによって不適当な紙幣及びクレジット・カードなどの好ましくない物体が不所望に挿入されるのを阻止する。
【0063】
上記のトルク・リミッタは有利には図8及び9を参照して記載した運搬装置110と共に使用されてよいことを理解すべきである。つまり、ローラ112及び114の切欠き130は運搬装置が作動していないときに不所望の物体の挿入を阻止するように働き、トルク・リミッタ140は運搬装置の作動中に同じ機能を有する。
【0064】
紙幣を運搬するの必要な力が該所定の限界値を超えたことを検出するために検出器が使用されてよい。一旦この限界値に達すると、ラチェット142を駆動しているモータは停止かつ反転され得る。反転される場合、ラチェット142は再びラチェット144と係合し、紙幣は矢印150とは反対方向に移動して、運搬装置から排出される。
【0065】
上記トルク・リミッタは紙幣運搬装置の動作が紙幣を運搬するのに必要な力に関連して制限され得る1つの様式である。この紙幣を運搬するのに必要な力は知られている力検出器によって検出されてよい。この後、ローラ112及び114(あるいは他の知られている運搬装置)を駆動するモータへの電流は、検出された力とは関係なく制限又は反転され得る。
【0066】
図11、12、及び13を参照すると、紙幣取込み及び整列デバイス160は、係合取込みローラ80及び82を備え、該ローラは取込みローラ80及び82が同じ速度で駆動されるように相互に係合する個々のはめ歯98及び162を有するベゼル(図示せず)と共に紙幣の通路を形成する。図示の取込み及び整列デバイスは図6及び7に関して記載した形態のローラ80及び82を有しているが、図8及び9に関して記載したローラ112及び114が有利には図示したデバイス160と共に使用されてもよい。
【0067】
デバイス160は把持ローラ164及び3つの整列ローラ166、168、及び170をさらに備えている。ローラ170は図5に示した構成では下方に向いており、ローラ166と168との間にある。モータ172はベルト174を用いて整列ローラ166、168、及び170を駆動する。デバイス160は付加的な2つの把持ローラ176及び178も備える。
【0068】
第2のモータ180はベルト182を駆動し、該ベルトは軸184、186、及び188を用いて個々のローラ164、176、及び178を駆動する。ベルト182ははめ歯190を駆動し、次に該はめ歯は取込みローラ80のはめ歯98を駆動するはめ歯192と係合する。同じく、はめ歯190も取込みローラ82のはめ歯162と係合するはめ歯194を駆動し、これにより取込みローラ82が駆動される。したがって、モータ180は取込みローラ80及び82の動作のほか把持ローラ164、176、及び178も制御する。
【0069】
ここでデバイス160の動作を説明する。紙幣12(図12)は矢印196の方向に挿入される。センサ(図示せず)は紙幣が挿入されたことを感知し、取込みローラ80及び82を回転させるモータ180を起動させる。取込みローラは紙幣と摩擦係合し、ローラ80及び82の相補的表面によって生じる紙幣の変形に起因する紙幣の剛性に依存する力により紙幣をさらに矢印196の方向に運搬する。ローラ80及び82が紙幣と接触する地点があることも、ローラに対して紙幣が滑るのを促進する。したがって、紙幣12がその経路がデバイス90の角200と衝突を生じるように挿入される場合、紙幣12への角200の作用によって紙幣が旋回し、これによりその経路が補正される。これにより、結果的に紙幣の詰まり又は不正確な照合を引き起こし得る紙幣の折り重なりの可能性が阻止される。これは図2に関して上記した動作モードに相当する。
【0070】
一旦紙幣が取込みローラ80及び82を通過し、かつ紙幣の長手方向の中間部分が整列要素166、168、及び170の場所に達すると、モータ180は停止され、モータ172が起動されて整列ローラ166、168、及び170を駆動し、紙幣を矢印198の方向に運搬する。これによって、紙幣12の角202は基準面204と係合され、紙幣はその側部206が基準面204に対して整列されるまでこの角の周囲で旋回する。これは図3に関して記載した動作モードに相当する。
【0071】
ローラ164及び176は下降し、ローラ114が紙幣と係合するように紙幣を運搬する。ローラ164は紙幣12を取込みローラから整列ローラまで運搬し、ローラ176及び178が紙幣12をさらに運搬する。デバイス160は一般に、自動販売機(図示せず)に設置された紙幣両替機(図示せず)内に設けられる。紙幣は紙幣保管庫又は自動販売機の他の機能エリアまでさらに運搬される。
【0072】
さらなる実施形態では、図10に関して記載したトルク・リミッタ110は、ローラ80又は82のいずれかに接続されたデバイス160で使用されてよいか、あるいはさらなる実施形態では図8及び9のローラ112又は114がローラ80及び82の代わりに使用されてよい。
【0073】
さらに、トルク・リミッタ110は、紙幣を運搬する力がその紙幣の剛性に比例する本願明細書に記載の任意の運搬構成と共に使用されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に紙幣を係合させ、かつ移動して該紙幣を運搬する少なくとも2つの相補的表面を含んだ紙幣運搬装置であって、該表面の少なくとも一方は該表面が静止状態のときに物体が該運搬装置に挿入されるのを阻止する阻止手段を含んだ紙幣運搬装置。
【請求項2】
該阻止手段は該相補的表面の少なくとも一方に形成された切欠きを含む請求項1に記載の紙幣運搬装置。
【請求項3】
該運搬装置が使用されていないときに該表面の移動を阻止する手段を備えた請求項1又は2の1に記載の紙幣運搬装置。
【請求項4】
紙幣を運搬する方法であって、
該紙幣の剛性に依存する力を用いて該紙幣を運搬する工程と、
該力が所定の限界値を超えたときに該紙幣の移動を阻止する工程とを含む方法。
【請求項5】
該紙幣の移動を阻止するためにトルク・リミッタが使用される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該紙幣の移動を阻止するためにクラッチが使用される請求項4に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも部分的に紙幣を係合させ、かつ移動して該紙幣を運搬する少なくとも2つの相補的表面を含んだ紙幣運搬装置であって、該表面の少なくとも一方は該表面が静止状態のときに物体が該運搬装置に挿入されるのを阻止する阻止手段を含んだ紙幣運搬装置。
【請求項2】
該阻止手段は該相補的表面の少なくとも一方に形成された切欠きを含む請求項1に記載の紙幣運搬装置。
【請求項3】
該運搬装置が使用されていないときに該表面の移動を阻止する手段を備えた請求項1又は2の1に記載の紙幣運搬装置。
【請求項4】
紙幣を運搬する方法であって、
該紙幣の剛性に依存する力を用いて該紙幣を運搬する工程と、
該力が所定の限界値を超えたときに該紙幣の移動を阻止する工程とを含む方法。
【請求項5】
該紙幣の移動を阻止するためにトルク・リミッタが使用される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該紙幣の移動を阻止するためにクラッチが使用される請求項4に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−205299(P2010−205299A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129879(P2010−129879)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2004−561425(P2004−561425)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(506258187)エムイーアイ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2004−561425(P2004−561425)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(506258187)エムイーアイ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】
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