説明

紙幣鑑別装置

【課題】真券と偽券とを貼り合わせた変造紙幣を、貼り合わせ部の幅が狭い場合でも確実に判別する。
【解決手段】紙幣Pの搬送方向に対して垂直かつ紙幣の表面に平行な第1方向に沿って延在する複数の検知ローラ14及び15を備えていて、それぞれの検知ローラは、その回転軸の両端がブラケット14b及び15bに固定されており、ブラケットの紙幣に面した端面である紙幣側端面14b1及び15b1が、紙幣の表面に向かって凸の湾曲形状に形成されており、検知ローラが固定されたブラケットの紙幣側端面と、検知ローラに隣接する別の検知ローラが固定されたブラケットの紙幣側端面とは、可撓性と耐磨耗性とを有するシート状部材22で接続されていて、シート状部材が紙幣の表面に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テープや糊を用いて貼り合わされた変造紙幣を識別する紙幣鑑別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、真券の一部を切り取って、この切り取った部分にテープなどを用いて偽券を貼り合せた変造紙幣が増加している。この種の変造紙幣を識別する方法の一つとして、基準ローラと、この基準ローラに接触して直列に設けられる複数の検知ローラとで紙幣を挟持して搬送し、紙幣の厚みを検知ローラの位置変位として検出する紙幣鑑別装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の紙幣鑑別装置では、テープが貼られた部分における紙幣の厚みが、テープが貼られていない部分に比較して厚いことを利用し、変造に用いたテープを検出し、紙幣の真贋を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−258610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、検知ローラが基準ローラに沿って直列に配置されているために、隣り合った検知ローラの間に、構造上避けられない間隔が形成される。その結果、貼り付けに用いられているテープの幅が、上述した間隔よりも狭い場合には、テープがこの間隔に入り込んでしまい、変造紙幣を検出できない虞もある。
【0006】
以下、この点について、図面を参照して詳細に説明する。図6(A)〜(C)は、従来型の紙幣鑑別装置の構造を模式的に示す図であり、一部を断面図とする正面図である。図6(A)〜(C)において、従来型紙幣鑑別装置100は、複数の検知ローラ102及び104と、基準ローラ106と、検知ローラ102及び104の変位量を検知する変位センサ108及び110とを備えている。検知ローラ102及び104は、それぞれの回転軸102b及び104bが、コ字状のブラケット102a及び104aに固定されている。検知ローラ102及び104と基準ローラ106とは、紙幣Pを挟持している。そして、互いに隣り合った検知ローラ102及び104の間には、構造上避けられない間隔Wが存在している。
【0007】
この例では、真贋の鑑定をされるべき紙幣Pの表面には、テープTが貼付されており、真券部分p1と偽券部分p2とが、テープTで貼り合わされて一枚の紙幣Pを構成している。紙幣Pは、基準ローラ106と検知ローラ102及び104との間に挟み込まれて搬送される。尚、図中、紙幣Pは、図の紙面の表裏方向に搬送されていて、当該搬送方向に直交する横断面で示されている。
【0008】
図6(A)に示すように、検知ローラ102は、紙幣Pに貼付されたテープTに乗り上げることで、基準ローラ106からの距離が、検知ローラ104よりも離間する。この距離の変位は変位センサ108により検知され、結果として、紙幣Pが変造紙幣であると判定される。
【0009】
しかしながら、図6(B)に示したように、テープT1の幅が間隔Wの幅よりも狭い場合には、テープT1が、間隔Wに入り込んでしまう場合も存在する。この場合、検知ローラ102及び104はテープT1を検知することができず、変造紙幣の検出が困難となる。
【0010】
また、図6(C)のように、紙幣Pの貼り合わせに糊が用いられた場合も、紙幣の厚みが厚くなる貼り合わせの接合部Hの幅がテープ貼り合わせの場合よりも狭くなる。この場合も、間隔Wに接合部Hが入り込んでしまう可能性が増加し、検知ローラ102及び104が接合部Hを検知することができず、変造紙幣の検出が困難となる。
【0011】
この発明の発明者は、鋭意検討の結果、互いに隣接する検知ローラ間を、紙幣の表面と接触するシート状部材で接続することにより、上述した課題を解決できることに想到した。
【0012】
従って、この発明の課題は、真券と偽券とを貼り合わせた変造紙幣を、貼り合わせ部において紙幣の厚みが厚くなることを利用して識別するに当たり、貼り合わせ部の幅が狭い場合でも確実に識別することができる紙幣鑑別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題の解決を図るために、この発明の紙幣鑑別装置は、紙幣の搬送方向に対して垂直かつ紙幣の表面に平行な第1方向に沿って延在する複数の検知ローラを備えている。
【0014】
そして、それぞれの検知ローラは、その回転軸の両端がブラケットに固定されており、ブラケットの紙幣に面した端面である紙幣側端面が、紙幣の表面に向かって凸の湾曲形状に形成されており、検知ローラが固定されたブラケットの紙幣側端面と、この検知ローラに隣接する別の検知ローラが固定されたブラケットの紙幣側端面とは、可撓性と耐磨耗性とを有するシート状部材で接続されていて、シート状部材が紙幣の表面に接触している。
【0015】
この紙幣鑑別装置によれば、検知ローラを支持するブラケットの紙幣側端面が、隣りのブラケットの紙幣側端面に可撓性と耐磨耗性を有するシート状部材により接続されている。
【0016】
その結果、このシート状部材は、紙幣表面に貼り付けられたテープ等の突起物により、上方に変位し、結果として、シート状部材の両側に位置する検知ローラを引きずるようにして上方に変位させる。よって、従来は、検知ローラ間の間隔よりも狭い幅のテープ等を検知できない場合があったが、この発明によれば、たとえ検知ローラの間の間隔よりも狭いテープ等であっても確実に検知できる。
【0017】
この紙幣鑑別装置の好適な実施態様によれば、紙幣側端面の湾曲形状において、紙幣の表面との距離が最も近い点と、紙幣の表面との距離が最も遠い点との、紙幣表面から測った高さの差が500μm以上であるのがよい。
【0018】
このようにすることにより、湾曲形状の高さを500μmとできるので、紙幣の角に紙幣側端面が引っかかることがない。
【0019】
この紙幣鑑別装置の好適な実施態様によれば、複数の検知ローラとの間で紙幣を挟持して搬送する、第1方向に沿って延在する基準ローラを備えるのがよい。
【0020】
このようにすることにより、紙幣を検知ローラと基準ローラとで安定して搬送することができる。
【0021】
この紙幣鑑別装置のさらに好適な実施態様によれば、それぞれの検知ローラの基準ローラに対する変位量を検知する厚み検知器を備えるのがよい。
【0022】
このようにすることにより、紙幣の厚みの変化に由来する個々の検知ローラの変位量を測定することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、真券と偽券とを貼り合わせた変造紙幣を、貼り合わせ部において紙幣の厚みが厚くなることを利用して識別するに当たり、貼り合わせ部の幅が狭い場合でも確実に識別することができる。
【0024】
また、この発明の好適な実施態様によれば、ブラケットの紙幣側端面の湾曲形状を500μmの高さとしているので、紙幣の角部が紙幣側端面に引っかかることがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この実施の形態の紙幣鑑別装置の要部拡大側面図である。
【図2】この実施の形態の紙幣鑑別装置の要部拡大正面図である。
【図3】この実施の形態の紙幣鑑別装置の動作の効果に供する模式図である。
【図4】この実施の形態の紙幣鑑別システムの機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【図5】この実施の形態の紙幣鑑別システムの動作の説明に供するフローチャートである。
【図6】(A)〜(C)は、従来型の紙幣鑑別装置の構造を模式的に示す、一部を断面とする正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0027】
(構造)
図1〜図3を参照して、実施の形態の紙幣鑑別装置の構造について説明する。図1は、この実施の形態の紙幣鑑別装置の、一部分を断面で示す要部拡大側面図で、図2のI−I線に沿って取って示してある。図2は、この実施の形態の紙幣鑑別装置の、一部分を断面で示す要部拡大正面図である。なお、以下説明するこの実施の形態では、紙幣Pの全幅に渡って多数設けられている検知ローラのうち、代表して2個の検知ローラ14及び15を示している。
【0028】
図1及び2を参照すると、紙幣鑑別装置10は、複数の検知ローラ14及び15と、基準ローラ12と、変位センサ18及び20とを備えており、検知ローラ14及び15と基準ローラ12とで挟持されて、搬送方向Aに沿って搬送される紙幣Pの厚みを変位センサ18及び20を用いて検知する。
【0029】
基準ローラ12は、弾力性を有する樹脂性又は硬い金属製の長尺なローラである。基準ローラ12は、不図示の回転機構により回転駆動される。そして、基準ローラ12は、検知ローラ14及び15との間で紙幣Pを挟み込んで搬送方向Aに沿って搬送する機能を有する。
【0030】
検知ローラ14及び15は、弾力性を有する樹脂性又は硬い金属製のローラであり、紙幣Pの搬送方向Aに対して垂直かつ紙幣Pの表面に平行な方向、つまり、基準ローラ12の延在する方向に沿って、複数個設けられている。検知ローラ14及び15は、従動回転ローラである。
【0031】
検知ローラ14の回転軸14aの両端は、検知ローラ14を支持する好ましくは例えば、コ字状のブラケット14bに固定されている。同様に、検知ローラ15の回転軸15aの両端もブラケット15bに固定されている。これらブラケット14b及び15bの形状は互いに等しく形成されている。
【0032】
図1及び2を参照すると明らかなようにブラケット14b及び15bは、それぞれローラ14及び15の両側に側壁を有している。図に示す構成例では、これらの側壁の端面すなわち紙幣に対向している下側端面つまり紙幣側端面14b1及び15b1は、紙幣Pの表面に向かって凸の湾曲した形状、好ましくは例えば船底形の形状に形成されている。ブラケット14bの紙幣側端面14b1と、このブラケット14bに隣接するブラケット15bの紙幣側端面15b1との間に、可撓性と耐磨耗性とを有する材料、好ましくは例えば樹脂製のシート状部材22が取り付けられている。そして、この湾曲した紙幣側端面へのシート状部材22の取り付けは、任意好適な方法で行えばよいが、例えば接着等で行うことができる。
【0033】
図1を参照すると明らかなように、シート状部材の22の船底形状の最下端部つまり、紙幣Pに対する最近接部は、検知ローラ14の周面と同じ高さとされている。その結果、紙幣Pが搬送される際に、シート状部材22の最下端部は紙幣Pの表面に接触することになる。
【0034】
また、紙幣側端面14b1及び15b1の湾曲形状において、紙幣Pの表面との距離が最も近い点と、紙幣の表面との距離が最も遠い点との、紙幣表面から測った高さの差が500μm以上とする。つまり、紙幣側端面の最下点と、最上点との高さの差を500μm以上とする。これは、紙幣側端面14b1及び15b1の湾曲形状が、厚さが100〜150μmである紙幣Pの角部に引っかからないようにするためである。
【0035】
シート状部材22を構成する材料は、可撓性つまりしなやかに撓む性質と、紙幣Pとの長時間にわたる接触にも磨耗しないような耐磨耗性とを有する材料であれば、樹脂には限定されない。例えば、このシート状部材22として薄い金属膜や、布等を用いて、これらを両側端面間に弛みなく延べ渡すことができる。これらシート状部材22の可撓性と耐磨耗性は、これが適用される紙幣鑑別装置で多くの試験を重ねて好適なものを選定すればよい。
【0036】
変位センサ18及び20は、検知ローラ14及び15ごとに設けられている。変位センサ18及び20は、ブラケット14b及び15bの上空において所定の高さに設けられた、例えば渦電流センサである。変位センサ18及び20は、検知ローラ14及び15の基準ローラ12からの距離の変位を検出する。
【0037】
(動作及び効果)
続いて、図3を参照して、紙幣鑑別装置10の動作及び効果について説明する。
【0038】
図3は、この紙幣鑑別装置10の動作の効果に供する模式図である。
【0039】
上述の図6(A)〜(C)を用いて説明した従来型紙幣鑑別装置100では、紙幣Pの接合部HやテープT1の幅が狭いときには、変造紙幣の鑑別が困難となる場合が存在する。しかし、この実施の形態の紙幣鑑別装置10では、たとえ紙幣Pの接合部HやテープT1の幅が狭くとも確実に変造紙幣を検出することができる。
【0040】
以下、図3を参照して、この点について詳細に説明する。図3は、図6(C)に示した糊で貼り合せた変造紙幣Pをこの実施の形態の紙幣鑑別装置10で測定した場合の模式図である。特に、シート部材21,22及び23については簡略化して示してある。
【0041】
紙幣鑑別装置10には、4個の検知ローラ13,14,15及び16が設けられており、これらの検知ローラの間は、既に説明したシート状部材21,22及び23で接続されている。図3においては、紙幣Pに設けられた接合部Hが検知ローラ14及び15の間隔Wの間に位置している。従来型紙幣鑑別装置100であれば、図3(C)に示したように間隔Wに位置する接合部Hを検出することは出来ない。しかし、この実施の形態の紙幣鑑別装置10では、間隔Wの位置には、検知ローラ14及び15を接続するシート状部材22が設けられている。
【0042】
その結果、接合部Hに由来する出っ張りは、このシート状部材22が可撓性を有しかつ弛み無く延べ渡されているので、シート状部材22を上方に押し上げることとなる。その結果、シート状部材22の両側に接続されている検知ローラ14及び15は、可撓性を有するシート状部材22に引っ張られて上方に変位する。つまり、検知ローラ14及び15と基準ローラ12との距離が変化している。この距離の変化は変位センサ18及び20により検出される。つまり、この紙幣鑑別装置10では、それぞれ検知ローラ間をシート状部材で接続しているので、従来型紙幣鑑別装置100では検出できなかった、幅の狭いテープで貼り付けられた変造紙幣や、糊で貼り付けられた変造紙幣を検出することができる。
【0043】
(紙幣鑑別システム)
以下、図4及び5を参照して、上述した紙幣鑑別装置10を用いた紙幣鑑別システム50について説明する。図4は紙幣鑑別システム50の機能的な構成を示す機能ブロック図である。図5は、紙幣鑑別システム50の動作の説明に供するフローチャートである。
【0044】
図4を参照すると、紙幣鑑別システム50は、鑑別すべき紙幣Pを受け入れる紙幣受入部52と、紙幣受入部52に紙幣Pが投入されたことを検出して、紙幣Pの全体画像を撮像する画像取得部54と、画像取得部54の画像取得と同時に、紙幣Pの厚みを測定して紙幣Pの鑑別を行う、この実施の形態の紙幣鑑別装置10とを備えている。
【0045】
さらに紙幣鑑別システム50は、画像取得部54が取得した画像をA/D変換する画像A/D変換部56aを備えている。同様に紙幣鑑別システム50は、紙幣鑑別装置10が測定した厚みデータをA/D変換する厚みA/D変換部56bを備えている。画像A/D変換部56aで変換された紙幣Pの全体画像データと、厚みA/D変換部56bで変換された紙幣P全体の厚みデータとは、コンピュータ58の記憶装置64に読み出し自在に記憶される。
【0046】
紙幣鑑別システム50は、紙幣鑑別システム50の全体的な動作を制御するコンピュータ58を備えている。コンピュータ58は、従来周知のCPU(Central Processing Unit)62と、ハードディスクやROM(Read Only Memory)やRAM(Random Accses Memory)等からなる記憶装置64と、キーボードやマウス等の入力装置66と、ディスプレイやプリンタ等の出力装置68が、互いにBUSライン70で接続されて構成されている。
【0047】
CPU62は、制御部62aと演算部62bと内部記憶部62cとを備えている。制御部62aは、CPU62の全体動作を制御する。演算部62bは、制御部62aの制御の下で、コンピュータ58の記憶装置64から、紙幣鑑別システム50の動作に係わるプログラムを読み出してきて、各種機能手段として実現される。なお、これらの機能手段については後述する。内部記憶部62cは、CPU62の動作において発生する変数等が一時的に読み出し自在に記憶される。
【0048】
CPU62の演算部62bにより実現される機能手段としては、システム制御部72、紙幣領域厚み抽出部74、特徴算出部76及び判定部78が挙げられる。
【0049】
システム制御部72は、紙幣鑑別システム50の全体動作を制御する。例えば、紙幣受入部52に紙幣Pが投入されると、システム制御部72はそれを検知して、画像取得部54及び紙幣鑑別装置10に指令を出し、紙幣Pの測定を開始させる。
【0050】
紙幣領域厚み抽出部74は、記憶装置64に記憶されている紙幣Pの画像データと厚みデータとを位置的に対応付ける機能を有する。これにより、画像データ中の任意の位置における紙幣Pの厚みデータを得ることが可能となる。
【0051】
特徴算出部76は、紙幣領域厚み抽出部74により紙幣Pの全体画像と対応付けられた厚みデータより、紙幣領域内で最小の値を示す厚みデータ(以下、「最小厚みデータ」と称する。)と、紙幣領域内で最大の厚みを示す厚みデータ(以下、「最大厚みデータ」と称する。)とを抽出する機能を有する。
【0052】
判定部78は、特徴算出部76により抽出された最大厚みデータと最小厚みデータとを比較して、両者の差が、記憶装置64から読み出されてきた予め定められている閾値よりも大きい場合には、その紙幣は貼り合わせられた変造紙幣と判定する。そして、紙幣Pを紙幣受入部52に返却する。
【0053】
一方、最大厚みデータと最小厚みデータとを比較して、両者の差が、予め定められている上述の閾値よりも小さい場合には、その紙幣は真券であるとして、金庫80に受け入れる。
【0054】
なお、真券と変造紙幣とを判別するための閾値は、変造紙幣を作成するために用いられるテープの厚み程度の値とすることが好ましい。具体的には、30〜50μmの値とすることが好ましい。
【0055】
(紙幣鑑別システムの動作)
以下、図5のフローチャートを参照して、紙幣鑑別システム50の動作について説明する。なお、記号Sは処理ステップを表す。
【0056】
まず、S1において、紙幣受入部52に紙幣Pが投入されたかどうかが判断される。紙幣受入部52に紙幣Pが投入されていないと判断された場合(No)、処理は紙幣Pが投入されるまでS1で待機する。
【0057】
紙幣受入部52に紙幣Pが投入されたと判断された場合(Yes)、それを検知したシステム制御部72は、S2において、画像取得部54に指令を出して、紙幣Pの全体画像を撮像させる。このようにして撮像された紙幣Pの全体画像は、画像A/D変換部56aでデジタルデータに変換されて、記憶装置64に読み出し自在に記憶される。
【0058】
紙幣Pの全体画像の撮影と共に、システム制御部72は、S3において、紙幣鑑別装置10に対して指令を出して、紙幣Pを上述した基準ローラ12と検知ローラ13〜16との間で搬送して、紙幣Pの全面における厚みデータを測定させる。このようにして測定された紙幣P全面の厚みデータは、厚みA/D変換部56bでデジタルデータに変換されて、記憶装置64に読み出し自在に記憶される。
【0059】
続いて、S4において、紙幣領域厚み抽出部74は、記憶装置64に記憶されている画像データと厚みデータとを読み出してきて、両者の対応付けを行う。これは画像データにおいて、紙幣が撮影されている領域を、厚みデータに対して1対1で関係付けるためである。これにより、紙幣Pの各座標に対して測定された厚みが定まり、その結果を記憶装置64に読み出し自在に格納する。
【0060】
続いて、S5において、特徴算出部76が、測定された紙幣領域内における最大厚みデータと最小厚みデータとを抽出して、判定部78に出力するとともに、記憶装置64に読み出し自在に格納する。このデータの抽出は、多数のデータから最大値及び最小値を抽出する公知の方法、例えば、逐次比較法等により行うことができる。
【0061】
続いて、S6において、判定部78がS5において求められた最大厚みデータと最小厚みデータとの差分を計算し、この差分を、予め定められた上述の閾値と比較する。そして、S7において、閾値<差分の場合(No)には、紙幣Pは変造紙幣であると判定し、紙幣Pを紙幣受入部52に戻す。
【0062】
それに対し、S8において、閾値≧差分の場合(Yes)には、紙幣Pは真券であると判定し、紙幣Pを金庫80に受け入れる。
【0063】
これら双方の判定結果は、記憶装置64に読み出し自在に格納される。
【0064】
(変形例)
この実施の形態に示す例では、紙幣鑑別システム50が、真券と偽券とを張り合わせた変造紙幣の鑑別に用いられる例について説明した。しかし、この紙幣鑑別システム50は、一部分が破けて破損した紙幣(以下、「損券」と称する。)の破損部をテープにより補修した損券の検出にも応用することが出来る。この場合には、画像取得部54により撮像された紙幣Pの全体画像において、テープが一部分に貼られているか、それとも紙幣Pを横断するように貼られているかを区別することにより、変造紙幣か、損券かを見分けるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0065】
10 紙幣鑑別装置
12 基準ローラ
13,14,15,16 検知ローラ
14a,15a 回転軸
14b,15b ブラケット
14b1,15b1 紙幣側端面
18,20 変位センサ
21,22,23 シート状部材
50 紙幣鑑別システム
52 紙幣受入部
54 画像取得部
56a 画像A/D変換部
56b 厚みA/D変換部
58 コンピュータ
62 CPU
62a 制御部
62b 演算部
62c 内部記憶部
64 記憶装置
66 入力装置
68 出力装置
70 BUSライン
72 システム制御部
74 紙幣領域厚み抽出部
76 特徴算出部
78 判定部
80 金庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の搬送方向に対して垂直かつ紙幣の表面に平行な第1方向に沿って延在する複数の検知ローラを備えていて、
それぞれの前記検知ローラは、該検知ローラの回転軸の両端がブラケットに固定されており、該ブラケットの前記紙幣に面した端面である紙幣側端面が、該紙幣の表面に向かって凸の湾曲形状に形成されており、
前記検知ローラが固定されたブラケットの前記紙幣側端面と、該検知ローラに隣接する別の検知ローラが固定されたブラケットの紙幣側端面とは、可撓性と耐磨耗性とを有するシート状部材で接続されていて、該シート状部材が前記紙幣の表面に接触していることを特徴とする紙幣鑑別装置。
【請求項2】
前記紙幣側端面の湾曲形状において、前記紙幣の表面との距離が最も近い点と、前記紙幣の表面との距離が最も遠い点との、前記紙幣表面から測った高さの差が500μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙幣鑑別装置。
【請求項3】
複数の前記検知ローラとの間で前記紙幣を挟持して搬送する、前記第1方向に沿って延在する基準ローラを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙幣鑑別装置。
【請求項4】
それぞれの前記検知ローラの前記基準ローラに対する変位量を検知する厚み検知器を備えることを特徴とする請求項3に記載の紙幣鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237851(P2011−237851A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106133(P2010−106133)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】