紙葉識別装置
【課題】本発明は、識別する紙葉の種別が変更されても、コストの上昇を抑えて真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【手段】紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段23,27と、可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段18と、紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段256cと、検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部256と、を有する紙葉識別装置を提供する。
【手段】紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段23,27と、可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段18と、紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段256cと、検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部256と、を有する紙葉識別装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣、クーポン券、商品券等、各種の商品やサービスと交換価値(経済価値)を有する紙葉類の有効性を識別する紙葉識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、紙幣、クーポン券、商品券等の紙葉類は、偽造を防止するために、様々な偽造防止策が施されている。例えば、そのような偽造防止策の一つとして、マイクロプリント(極めて微細な文字や模様など)を施しておき、このマイクロプリントの情報を読込んで真正なデータと比較することで、その有効性を識別(真贋判定)することが行われている。すなわち、このようなマイクロプリントは、線幅が微細であることから、光の干渉によって特有な模様(モアレ縞;モアレパターン)を呈することが知られており、このモアレ縞(モアレパターン)を取得して、正規データと比較することで、紙葉の有効性を識別することが行われている。
【0003】
例えば、特開2004−78620号公報(特許文献1)には、紙葉類としての情報記録体に、万線で構成される隠しパターンを形成しておき、この隠しパターンを光源で照射すると共に、その反射光を確認パターン(確認用の万線パターンが形成されている)を介して光センサで検知する技術が開示されている。この場合、光センサでは、隠しパターンの万線と確認パターンの万線が干渉することで、特有なモアレパターンを検知することが可能となり、それを標準モアレパターンと比較することで、真贋判定を行っている。
【0004】
また、特開平7−306964号公報(特許文献2)には、前記特開2004−78620号公報(特許文献1)と同様、マイクロプリントを有する紙葉にストロボ照明装置によって光を照射し、その反射光を、モアレ縞を発生させるモアレ縞発生手段(格子板)を介して画像検出手段(エリアセンサ)で検知する技術が開示されている。具体的には、マイクロプリントからの反射光が上記した格子板を通過することでモアレ縞が発生することから、このモアレ縞を画像検出手段であるエリアセンサで検知して、その周期成分fmの強度が予め設定されたしきい値Thを越えている場合は良、周期成分fmが前記しきい値Thを越えていない場合は否と判別するようにしている。
【0005】
上記した真贋判定技術を備えた紙葉識別装置では、真贋判定精度の向上を図るために、それまで使用しているセンサよりも解像度が高いセンサを用いる場合がある。このような場合、上記した公知文献に開示されている技術では、確認パターンを有するフィルタ(格子板)を、モアレパターンが発生するように再度調査し、かつそれに応じたフィルタ(格子板)を製造し直す必要があるため、コストの上昇を抑えることが難しくなってしまう。
【0006】
また、上記した紙葉類の真贋判定を行う紙葉識別装置は、マイクロプリント(モアレパターン)に関係なく、紙葉搬送路に、赤外線を照射する発光素子(赤外線帯域の波長を照射する発光素子)を設置しておき、搬送される紙葉に対して赤外線を照射し、その反射光や透過光を検知して、それを正規の紙葉データと比較することで、真贋判定を実施することもある。これは、紙葉に施されている印刷のインク独特の波長吸収特性を利用して、真贋判定を行う方式である。
【0007】
ところで、紙葉類として紙幣を例示すると、現状では、各国において、様々な印刷インクを用いて紙幣を作成することから、全ての紙幣に対し、これを単一波長のみで1台の識別装置で真贋判定することは困難である。すなわち、紙幣毎(国毎)に専用の紙幣識別装置を準備する必要性があり、これによって、紙幣識別装置のコストが高騰してしまう。また、将来的に、新たな額面の紙幣が登場したり、印刷デザインが変更されることもあり、現状の紙幣識別装置では、将来的に正確な識別ができなくなる可能性が生じ、新たに専用の紙幣識別装置を製造する等、同様にコストが高騰してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題に着目してなされたものであり、コストの上昇を抑え、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、識別する紙葉の種別が変更されても、コストの上昇を抑えて真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紙葉識別装置の一つの特徴は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、前記画像データの画素の数を増減する増減手段と、前記増減手段によって増減された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記した構成の紙葉識別装置によれば、取込んだ紙葉に関する画像データの画素の数を増減することにより、その紙葉固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、例えば、識別精度の向上を図るため、紙葉読取手段を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタを新たに製造する必要が無くなり、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0012】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記増減手段による画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において異なる比率で増減するようにしても良い。
【0013】
このような構成によれば、取込んだ紙葉に関する画像データの画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において、異なる比率で増減するだけで画像データにモアレ縞が発生し易くなり、モアレデータを容易に取得することが可能になる。
【0014】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記増減手段による画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において所定の増減比率で実行するよう、増減比率を設定するパラメータ設定部を有するようにしても良い。
【0015】
このような構成によれば、単にパラメータ(縦方向;50%、横方向;50%など)を変更するだけで、センサの解像度に応じた最適なモアレデータを取得することが可能となる。このため、記憶領域には、画像データを拡縮するためのパラメータを確保するだけで良く、無用な記憶領域を確保する必要が無くなり、コストの上昇を抑えることが可能になる。
【0016】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段を備えていても良い。
【0017】
このような構成によれば、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なる紙葉の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙葉毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、また、異なる紙葉が用いられても正確な識別を実施することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る紙葉識別装置の別の特徴は、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段と、前記可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段と、紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段と、前記検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による前記基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記した構成の紙葉識別装置では、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なる紙葉の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙葉毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、また、異なる紙葉が用いられても正確な識別を実施することが可能となる。
【0020】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内で、任意波長の光を紙葉に対して照射可能にすることができる。
【0021】
すなわち、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクは、その組成にもよるが、一般的には、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内のいずれかの波長で吸収特性や反射特性がピークになることから、上記した帯域内で発光手段の波長が変更できれば、用いられる紙葉の殆どに適用することが可能である。
【0022】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紙葉が搬送される間に、搬送される紙葉に対して異なる波長光を照射可能にすることができる。
【0023】
紙葉に対して照射される光については、可変波長帯域の中から特定の波長を選択し、これを搬送される紙葉に対して照射し続けることも可能であるが、上記のように、搬送されている最中に、波長を変更することで、読取方向に沿って異なる印刷インクが用いられている場合等、最適な紙葉読取情報を取得することができ、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0024】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紙葉の搬送方向に沿って配置され、紙葉に対して線状の光を照射可能にすることができる。
【0025】
このような構成では、検知手段としてラインセンサ(イメージセンサ)を配置することで、二次元的に画像情報(紙葉読取情報)を得ることが可能となり、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0026】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、面発光素子にすることが可能である。
【0027】
このような面発光素子では、可変波長発光手段が単一の発光素子の集合体である場合と比較して、発光素子間の照射ムラ(輝度の差)が生じないことから、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0028】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記記憶手段は、紙葉の基準紙葉データの書換えが可能にすることもできる。
【0029】
このように、記憶手段に記憶されている紙葉の基準紙葉データを書換えることで、1つの紙葉識別装置でありながら、多種類の紙葉の真贋判定処理に適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、コストの上昇を抑え、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供する。
【0031】
また、本発明は、識別する紙葉の種別が変更されても、コストの上昇を抑えて真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る紙幣識別装置の第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図である。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図である。
【図4】下部フレームの裏面図である。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図である。
【図6】紙幣識別装置の構成を模式的に示した図である。
【図7】紙幣の概略構成を示す図である。
【図8】紙幣識別装置の制御系を示すブロック図である。
【図9】(a)〜(e)を含み、画素データ増減処理部における画像データの画素を増減する一手順例を説明する図である。
【図10】(a)及び(b)は、夫々、画素数の増減処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示す図である。
【図11】モアレ縞の発生原理を説明する模式図であり、モアレ縞が発生しない条件を説明する図である。
【図12】モアレ縞の発生原理を説明する模式図であり、モアレ縞が発生する条件を説明する図である。
【図13】紙幣を読取る場合において、画素数を間引く処理をした際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図である。
【図14】紙幣を読取る場合において、画素数を増加処理した際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図である。
【図15】紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施形態に関する紙幣識別装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。
【0034】
図1から図4は、紙幣識別装置(紙葉識別装置)の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0035】
本実施形態の紙幣識別装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣識別装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣識別装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣識別装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0036】
紙幣識別装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、ベース側となる下部フレーム2Bと、これを覆うように下部フレーム2Bに対して開閉可能な上部フレーム2Aとを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、基部を回動中心として開閉されるように構成されている。
【0037】
前記下部フレーム2Bは、略直方体形状を有しており、紙幣が搬送される紙幣搬送面3aと、その紙幣搬送面3aの両サイドに形成される側壁部3bとを備えている。また、上部フレーム2Aは、紙幣搬送面3cを備えたプレート状に構成されており、上部フレーム2Aが下部フレーム2Bの両サイドの側壁部3b間に入り込むように閉塞された際、紙幣搬送面3aと紙幣搬送面3cとの対向部分に、紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成される。
【0038】
そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、夫々紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成し、図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0039】
また、前記上部フレーム2Aの先端側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト4が配設されている。このロックシャフト4には、操作部4aが設けられており、操作部4aを、付勢バネ4bの付勢力に抗して回動操作することで、ロックシャフト4は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0040】
前記下部フレーム2Bには、紙幣搬送機構8、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50、並びに、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50等の構成部材の駆動を制御すると共に、読取った紙幣の有効性を識別する(真贋判定処理を行う)制御手段(制御基板100)が設けられている。
【0041】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0042】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。これらの駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0043】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0044】
なお、ローラ対12と同様、上記した搬送ローラ対13,14も、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c,14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0045】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、下部フレーム2Bの一方の側壁部3bに回転可能に配設されるギヤトレインによって構成される。具体的には、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0046】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0047】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0048】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0049】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで紙幣情報の読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光をフォトダイオード等の受光素子で検知することで紙幣の読取を行うようになっている。
【0050】
この場合、紙幣から得られる透過光と反射光の内、反射光については、後述するように、受光部を有するラインセンサによって所定の大きさを1単位とする画素毎に読取が実行され、このように読取られた複数の画素によって構成される紙幣の画像データは記憶手段に記憶されると共に、ここで記憶された画像データは画像処理部において、画素の数を増加及び/又は減少するように画像処理が施される。そして、このように画素数が増減処理された画像データは、予め格納されている真券の画像データと比較することで真贋の判定処理が実行される。
【0051】
なお、紙幣を透過した透過光については、反射光と同様な手法によって真贋の判定処理を行っても良いし、別の手法を用いて真贋の判定処理を行うようにしても良い。
【0052】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0053】
具体的にシャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、支軸55の幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの紙幣搬送面3aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0054】
また、前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定された紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動する。これにより、シャッタ機構を構成する回動片52は、駆動軸54aに連動する支軸55を介して紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0055】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0056】
前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0057】
次に、上部フレーム2A及び下部フレーム2Bに設置される紙幣読取手段20の構成について図2〜図4及び図6を参照して説明する。
【0058】
前記紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側で搬送路幅方向に亘ってスリット状の光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設されたラインセンサ25とを有している。
【0059】
前記下部フレーム2B側に設置されるラインセンサ25は、紙幣を挟むようにして、前記第1発光部23と対向するように配設される受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、スリット状の光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0060】
前記ラインセンサ25の受光部26と対向配置された第1発光部23は、透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子23aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0061】
なお、前記ラインセンサ25の受光部26は、導光体である第1発光部23と平行にライン状に配設されており、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。具体的には、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォック(登録商標)レンズアレイ26aを配置した構成となっている。
【0062】
前記ラインセンサ25の第2発光部27は、反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子27aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0063】
なお、前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣識別装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0064】
上記したラインセンサ25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面3aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24もラインセンサ25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0065】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。なお、ここでは、上記したように、反射光を利用した真贋判定処理について説明する。
【0066】
通常、紙幣には、偽造防止の1つの手段として、マイクロプリント(再現が困難となるような極めて微細な文字や模様など)が形成されている。このマイクロプリントは、図7に模式的に示すように、単位幅内に多数の細線200を形成することで構成されており、例えば、彫刻凹版によって形成することが可能である。マイクロプリントの構成については、ここでは詳細に説明しないが、図では分かり易いように、単位幅内に多数の直線状の細線を描画することで構成されている。もちろん、細線は、図に示す直線状以外にも、曲線状としたり、直線と曲線を組み合わせたものであっても良い。また、これらの細線によって、別途、文字や模様を構成しても良い。
【0067】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定手法は、まず、紙幣Mが紙幣搬送機構8によって搬送された状態で、前記ラインセンサ25における第2発光部27から紙幣に照射され、その反射光を受光部26で受光して紙幣の読取を実行する。この読取は、紙幣の搬送処理中、所定の大きさを1単位とする画素毎に実行され、このようにして読取られた多数の画素(複数の画素)によって構成される紙幣の画像データは、RAMなどの記憶手段に記憶される。そして、ここで記憶された複数の画素によって構成される画像データは、画像処理部において、画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施される。
【0068】
上記したように画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施された紙幣の画像データには、上記したマイクロプリント部分において、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。このモアレデータは、画素の数を、拡大又は縮小することで、その拡縮率特有のものが得られることから、予め格納されている真券のモアレデータと比較することで、真贋判定を行うことが可能となる。
【0069】
図8は、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50、紙幣の真贋判定処理を実行する真贋判定部150等を備えた紙幣識別装置1を制御する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【0070】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板100を備えており、この制御基板100上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only
Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、画像処理部116とが実装されている。
【0071】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、及び画像処理部116にける画素データ増減処理部116aにて実行される画素データを拡大するか、等倍するか、間引くかを決定するデータからなる変換テーブル等、恒久的なデータが記憶されている。
【0072】
前記CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識別装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18や通過検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、駆動モータ10の駆動制御、並びに、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0073】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、判定対象となる紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される紙幣の画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を有する。
【0074】
また、前記画像処理部116は、前記RAM114に格納された紙幣の画像データに関し、その画素の増減処理を行う画素データ増減処理部116aと、紙幣に関する基準のデータを格納している基準データ記憶部116cと、画素データ増減処理部116aにおいて画素の増減処理が成された画像データと、基準データ記憶部116cに格納されている基準データとを比較し、紙幣の判定処理を行う判定処理部116bを備えている。この場合、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116cに記憶させているが、これを上記したROM112に記憶させておいても良い。すなわち、画像データの拡縮率を特定する変換テーブルに関連付けして、その真券データを格納しておいても良い。また、真券の基準データについては、基準データ記憶部116cに予め記憶させても良いが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させても良い。
【0075】
さらに、CPU110には、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部(導光体)23と、ラインセンサ25における受光部26及び第2発光部(導光体)27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、画像処理部116と共に、紙幣の真贋判定部150を構成し、紙幣識別装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。なお、本実施形態では、真贋判定部150については、紙幣の駆動系を制御する制御部と共通化されているが、真贋判定処理を行う機能を、それ専用のハード構成としても良い。
【0076】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣識別装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置300に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0077】
ここで、上記した画素データ増減処理部116aにおける画像データの画素を増減する一手順例について、図9の概念図を参照して説明する。
【0078】
図9(a)は、最初に読取手段20を介して読取られた紙幣の画像データを画素毎にした元データを模式的に示している(縦方向:横方向=1:1とし、画素の数を少なくして示す)。1つの四角は1画素に対応しており、各四角内に付されている数字は、読取った紙幣のその画素における色の明るさを示している。なお、実際には、各画素では、RGBのフィルタ制御によって各RGBの明るさが制御されているため、画素毎に異なる明るさの色情報を含んだものとなっている(図9(a)では、全ての画素が夫々異なる明るさの色情報で構成されている)。
【0079】
このように紙幣読取手段20によって読取られる紙幣の元データは、記憶手段であるRAM114に格納された後、画像データ増減処理部116aにおいて画素データの増減処理が施される。例えば、縦方向はそのままで横方向を2倍(縦方向:横方向=1:2)となるように画素の数を増加させる場合、まず、図9(b)に示すように、各画素の横方向に1つの画素を補完し、次いで、図9(c)に示すように、補完された画素部分に、その横の画素の色情報と同じ色情報の割り当て処理を行う。これにより、縦方向はそのままで、横方向に等倍処理された画像データを生成することが可能となる。なお、等倍処理でない場合は、例えば、変換テーブルにおいて、何番目の画素データについて色情報の割り当て処理を実行させるかを予め定める等しておけば良い。
【0080】
一方、元データに対して、例えば、縦方向はそのままで横方向を0.25倍(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させる場合、例えば、図9(d)に示すように、横方向の全画素を平均して1/4づつ分割し、間の画素(空白で示す画素)を間引く方法で縮小処理を行えば良い(図9(e))。これにより、縦方向はそのままで、横方向には1/4に縮小された画像データを生成することが可能となる。
【0081】
図10は、上記したように画素数の増減処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示している。図10(a)に示すように、(縦方向:横方向=1:2)となるように画素の数を増加させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その増加率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Aが得られるようになる。また、図10(b)に示すように、(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その減少率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Bが得られるようになる。
【0082】
ここで、上記したモアレ縞の発生原理、及び発生条件について、図11〜図14を参照して説明する。図11に示すように、紙幣Mに形成されている細線(隣接する黒いバーで示す)200の間隔をbとした場合、その間隔bが、上述した紙幣読取手段20を構成するラインセンサ25が1画素を読取る間隔dよりも広ければ(b>d)、紙幣の細線200を正確に読取ることができるため、読取画像データ(a)は、そのまま紙幣の細線を再現した状態となり、モアレ縞が発生することはない。
【0083】
これに対して、図12に示すように、紙幣Mに形成されている細線200の間隔bが、ラインセンサ25が1画素を読取る間隔dと同一か、それ以下になると(b≦d)細線である黒いバーは、図11で示すような画像データ(a)として再現できなくなり、その読取画像データは、全て黒い状態として読取ってしまう。すなわち、b≦dになると、紙幣の細線200を正確に読取ることができなくなって、微細な線が粗くなってしまい、これによりモアレ縞が発生する原因となる。
【0084】
上述したように、画素数の減少処理を行う場合、例えば、図13に示すように、紙幣本来の細線の間隔bが、画素データを間引いたことによって得られる画素間の間隔d以下となったとき(画素数の減少率がb≦dの条件を満足する)、隣接する細線同士が明確に区別することが困難となり(読取った細線データの線が粗くなってしまう)、粗くなった状態の細線同士によってモアレ縞が発生するようになる。
【0085】
一方、図14に示すように、取込んだ画像データの細線200の間隔がbであった状態で、画素数の増加処理を行うと、拡大後の画像データによって得られる細線200の間隔は拡大処理によってb´となる。この拡大後の画像データによって得られる細線200の間隔b´が、1画素を読取る間隔d以下であれば(増加率がb´≦dの条件を満足する)、上記した原理と同様、モアレ縞が発生するようになる。
【0086】
以上のように、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数の増減を、紙幣の取込み方向及びこれに直交する方向において、異なる比率で行うことで、画像データにモアレ縞を発生させることが可能となり、モアレデータを容易に取得することが可能になる。
【0087】
この結果、判定処理部116bにおいて、基準データ記憶部116cに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋判定処理を行うことが可能となる。具体的には、例えば、モアレ縞が生じている部分の各画素について、明るさ(濃度)に関する画素データを検出し、それを基準データと比較して、その違いが所定の値以下である場合、その画素部分については等しいとみなし、これをモアレ縞が生じている部分の全ての画素について実行することで、真贋判定を行うことが可能である。
【0088】
図15は、上記した紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る紙幣識別装置の処理動作について説明する。
【0089】
最初、紙幣識別装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、駆動モータ10が駆動されて、紙幣搬送機構8を介して紙幣の搬送処理が行われる(ステップS02)。なお、このとき、LED70が点灯処理され、利用者に対して紙幣処理中であることを知らせて追加の紙幣挿入が防止される。
【0090】
この紙幣の搬送処理と同期して、紙幣読取手段20において紙幣の読取処理を実行する(ステップS03)。この紙幣の読取処理は、CPU110が、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から紙幣に向けて照射光を照射し、受光部26において、その反射光を受光することで成される。なお、紙幣の識別処理に用いられるモアレデータは、上述したように、発光部27から照射した光の反射光に基づいて取得される。
【0091】
紙幣の装置内への搬送により、前記紙幣読取手段20がその情報を読取り、上記した制御手段30において、真贋判定処理が実行される。上記した紙幣の読取は、ラインセンサ25の受光部26において、第2発光部27から照射され、搬送状態にある紙幣からの反射光を受光することで成される。この読取時においては、上述したように、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙幣の画像情報が取得される。また、第1発光部23から照射されて、紙幣を透過する透過光については、別の真贋判定処理(濃淡データ等による真贋判定処理など)に用いることが可能である。
【0092】
なお、この真贋判定処理が実行されている際に、紙幣検知センサ18が搬送状態にある紙幣の後端を検知すると(紙幣検知センサ18がOFF)ソレノイド54が通電され、これにより、回動片52が回動駆動されて紙幣挿入口6を閉塞し、紙幣の追加投入を防止する。
【0093】
上記したように、画素毎に読取られた紙幣情報は、複数の画素によって紙幣全体の画像データを構成することとなり、この画像データは、記憶手段であるRAM114に格納される(ステップS04)。そして、引き続いて、RAM114に記憶された画像データは、画像処理部116において、画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施される(ステップS05)。なお、画素の数の増減処理は、ROM112に格納されている変換テーブルに基づいて実行され、この処理によって得られる紙幣の画像データには、上述したように、増減比率に応じて、マイクロプリント部分において特有のモアレデータが得られる。
【0094】
そして、引き続き、ステップS06で紙幣の真贋判定処理を行う。上述したように、ROMに格納されている変換テーブルによる増減率によって、特有のモアレデータ(モアレ縞)が得られることから、これを、判定処理部116bにおいて、基準データ記憶部116cに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋が判定される。
【0095】
上記した真贋判定処理において、搬送された紙幣が真券であると判定された場合(ステップS07のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS08)。この処理は、例えば、紙幣をそのまま下流側にあるスタッカに向けて搬送する処理、下流側に向けて搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階で駆動モータ10の駆動を停止する処理、及び、これに伴い、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませて、紙幣挿入口6を開放状態にすると共にLED70を消灯する処理等が該当する。
【0096】
一方、上記したステップS07の処理において、搬送された紙幣が偽札であると判定された場合(紙幣が著しく汚損しているような場合も含む)、紙幣判定NG処理が実行される(ステップS09)。この処理は、例えば、挿入された紙幣を返却すべく、駆動モータ10の逆転処理、或いは上位装置300に対して警報信号を出力する処理等が該当する。
【0097】
以上のように構成される紙幣識別装置1によれば、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数を、増減させることにより、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、例えば、識別精度向上を図るため、紙幣読取手段20を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタ等、新たに製造する必要が無くなって、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0098】
また、上記した構成では、画素データ増減処理部116aにおける画素の数の増減については、紙幣の取込み方向及びこれに直交する方向において、所定の増減比率で実行するように、ROM112に格納されている変換テーブルに基づいて設定するようになっている。従って、単にパラメータ(縦方向;50%、横方向;50%など)を変更するだけでセンサの解像度に応じた最適なモアレデータを取得することが可能になることから、ROMの記憶領域には、画像データを拡縮するためのパラメータを確保するだけで良くなり、無用な記憶領域を確保する必要が無くなって、コストの上昇を抑えることが可能になる。
【0099】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、この実施形態においても、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。また、紙幣識別装置の概略構成については、図1から図6に示したものと同一であるため、異なる部分について説明すると共に、図16に示すブロック図を参照しながら、その動作を説明する。
【0100】
本実施形態では、図1から図6に示した紙幣識別装置における発光素子(第1発光部23及び第2発光部27)を、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段で構成している。このような可変波長発光手段は、例えば、LED(発光ダイオード)、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor
Optical Amplifier)、LD(レーザダイオード)等を用いることが可能であり、このような可変波長発光素子は、紙幣識別装置内に1つ設置しても良いし、複数個設置しても良い。或いは、紙幣識別精度を向上が図れるように、紙幣に対して搬送方向と直交する方向に線状の光を照射できるように線状に配置しても良い。
【0101】
また、上記したタイプ以外にも、有機EL/SED/FEDのように、面発光が可能な発光素子を用いることが可能である。このような面発光素子では、可変波長発光手段が単一の発光素子の集合体である場合と比較すると、発光素子間の照射ムラ(輝度の差)が生じないことから、紙幣の識別精度をより向上することが可能になる。
【0102】
上記したような可変波長発光素子は、例えば、CPU110によって制御される波長可変駆動回路250により、波長制御信号、具体的には、電圧値や電流値を変化させた波長制御信号を、夫々の第1発光部23及び第2発光部27に入力することで、各発光部23,27から所望の波長の光を照射することができる。
【0103】
なお、一般的に、検知手段として受光部を構成するセンサは、ある程度広い範囲の波長の光に対して感知することが可能であり、可変波長発光手段が発光できる範囲の波長を感知(検知)できるのが望ましいのは言うまでもない。このような可変波長を検知するセンサは、素子自体で、可変波長光を受光できるように制御しても良いし、或いは、素子にフィルタ(例えば、レンズフィルタ)を用いることで達成できる。もちろん、ラインセンサを用いた場合においても、同様に構成することが望ましい。
【0104】
一方、制御手段30を構成する制御基板100には、真贋判定部256が設けられており、この真贋判定部256は、検知紙幣データ記憶部256aと、基準データ記憶部256cと、実際に紙葉の真贋を判定する判定処理部256bと、を有している。
【0105】
前記検知紙幣データ記憶部256aは、上記した可変波長発光手段である第1発光部23及び第2発光部27から発光される任意波長の光に関し、紙幣から得られる透過光及び反射光を受光部26で検知し、その検知紙幣データを記憶する機能を有する。
【0106】
また、前記基準データ記憶部256cは、紙幣に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙幣の基準紙葉データを記憶する機能を有する。この基準データ記憶部256cには、予め、適用可能である紙幣に関し、識別に適した波長の光を照射した際に得られる基準紙幣データ(紙幣の種別毎に対応付けされた波長、及びその波長の光を照射した際に得られる基本となる基準データ)が格納されている。
【0107】
なお、この基準データ記憶部256cに記憶される基準紙幣データについては、予め、適用可能な紙幣について格納されているが、事後的に新たなタイプの紙幣を処理するような場合では、通信管理部270を介して基準紙幣データを入力(書換え)することも可能である。このような基準紙幣データの書換えは、例えば、接続ユニットにコネクタを接続して書換える場合と、ネットワーク(インターネットや、所定の地域内で構築されるLAN等のネットワークなど)を経由して処理することが可能である。すなわち、書換え処理に伴う新たな基準紙幣データは、所定の通信プロトコルに対応させてネットワークを介して入力しても良いし、所定の入力ポートを介して外部記憶媒体等から入力しても良い。或いは、基準データ記憶部がROMのような記憶手段であれば、それ自体を交換するようにしても良い。このように、記憶手段に記憶されている紙幣の基準紙幣データを書換えることで、1つの識別装置でありながら、容易に多種類の紙幣の真贋判定処理に適用することが可能になる。
【0108】
また、前記紙葉の真贋を判定する判定処理部256bは、前記検知紙幣データ記憶部256aに記憶された実際に検知した紙幣データと、基準データ記憶部256cに照射された光の波長に関連付けされて記憶されている基準紙葉データとを比較し、その紙幣の真贋を判定する機能を有する。
【0109】
以上のように構成される紙幣識別装置では、紙幣の印刷領域に対して、第1発光部23及び第2発光部27から、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なるタイプの紙幣の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙幣に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙幣毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、例えば、1台の装置で、複数の国に流通している紙幣をまとめて識別処理することが可能になる。また、異なるタイプの紙幣が用いられても、正確な識別を実施することが可能となる。
【0110】
また、一般的に、様々な国で用いられる紙幣、或いは、今後、新たに発行される紙幣に用いられる印刷インクは、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内のいずれかで、透過光や反射光のピークが生じると考えられることから、上記した帯域内で第1発光部23及び第2発光部27から照射される光の波長が変更できれば、殆どの国の紙幣に対応することが可能である。
【0111】
また、上記した第1発光部23及び第2発光部27から照射される光は、紙幣が紙幣搬送機構によって搬送される際、所定の波長光を照射するものであっても良いが、紙幣搬送機構によって搬送される間に、搬送される紙幣に対して異なる波長光を照射するようにしても良い。例えば、紙幣の搬送領域に沿って、異なる波長の光を照射するようにすれば、読取方向に沿って異なる印刷インクが用いられている場合等、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0112】
また、光を照射する領域に関しては、搬送される紙幣の一部をスポット状に照射し、紙幣搬送方向に沿った線情報としてデータの読取を行っても良いし、幅方向全体をスリット状に照射して面情報としてデータの読取を行っても良い。このように、面情報としてデータを取得することで、二次元的な画像情報を得ることが可能となり、紙幣の識別精度をより向上することが可能になる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態では、搬送される紙幣を読取るに際して、読取られた画像データの画素数を増減させることでモアレデータを取得し、そのモアレデータを有する紙幣の画像データに基づいて紙幣の真贋を識別する構成であれば良く、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、紙幣の読取を行う読取手段(センサ)の構成や配置態様については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【0114】
また、上述した第2の実施形態では、紙幣に光を照射する発光素子について、波長が可変制御できる構成であれば良く、波長の制御方法や、用いられる発光素子の構成については、特に限定されることはない。また、もちろんこのような波長が可変できる発光素子(面発光素子や、紙葉に対して線状の光を照射可能な発光素子を含む)を、第1の実施形態における第1発光部23や第2発光部27に適用しても良いし、第1の実施形態における基準データ記憶部に記憶されている紙葉基準データについては、書換え処理できるように構成しても良い。
【0115】
また、異なる波長の光を照射することを可能にする可変波長発光手段については、上述したように、電圧制御等することで、1つの発光素子が複数の波長の光を照射する構成以外にも、例えば、特定の波長の光を照射する複数の発光素子(例えば、紫外光領域の光を照射する発光素子、可視光領域の光を照射する発光素子、赤外光領域の光を照射する発光素子など)を用いた構成であっても良い。すなわち、これらの複数の発光素子のいずれかを選択的に発光させたり、各発光素子の光量を変えたりすることで、制御回路のプログラム上で、波長を可変させた光を照射させることも可能である。
【0116】
また、例えば、紫外光領域から可視光領域の範囲を1つの発光素子でカバーし、可視光領域から赤外光領域の範囲を別の発光素子でカバーする等、短い波長帯域で可変波長が可能な複数個の発光素子を用いて、紫外光領域から赤外光領域の範囲をカバーするようにしても良い。
【0117】
さらに、上述した第1及び第2の実施形態では、紫外線帯域から赤外線帯域の内、特定の帯域を指定して用いることが可能である。また、可変波長発光素子を複数個設置しておき、一方を赤外光帯域、他方を紫外光帯域で用いるなど、実際に発光する波長については、適宜組み合わせることが可能である。このように構成することで、照射する波長が限定されることから、基準紙葉データを波長に正確に対応付けすることができ、真贋判定時における整合性の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の紙葉識別装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本発明の紙葉識別装置として、上記した実施形態では、紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、紙幣以外にも、金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2004−78620号公報
【特許文献2】特開平7−306964号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣、クーポン券、商品券等、各種の商品やサービスと交換価値(経済価値)を有する紙葉類の有効性を識別する紙葉識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、紙幣、クーポン券、商品券等の紙葉類は、偽造を防止するために、様々な偽造防止策が施されている。例えば、そのような偽造防止策の一つとして、マイクロプリント(極めて微細な文字や模様など)を施しておき、このマイクロプリントの情報を読込んで真正なデータと比較することで、その有効性を識別(真贋判定)することが行われている。すなわち、このようなマイクロプリントは、線幅が微細であることから、光の干渉によって特有な模様(モアレ縞;モアレパターン)を呈することが知られており、このモアレ縞(モアレパターン)を取得して、正規データと比較することで、紙葉の有効性を識別することが行われている。
【0003】
例えば、特開2004−78620号公報(特許文献1)には、紙葉類としての情報記録体に、万線で構成される隠しパターンを形成しておき、この隠しパターンを光源で照射すると共に、その反射光を確認パターン(確認用の万線パターンが形成されている)を介して光センサで検知する技術が開示されている。この場合、光センサでは、隠しパターンの万線と確認パターンの万線が干渉することで、特有なモアレパターンを検知することが可能となり、それを標準モアレパターンと比較することで、真贋判定を行っている。
【0004】
また、特開平7−306964号公報(特許文献2)には、前記特開2004−78620号公報(特許文献1)と同様、マイクロプリントを有する紙葉にストロボ照明装置によって光を照射し、その反射光を、モアレ縞を発生させるモアレ縞発生手段(格子板)を介して画像検出手段(エリアセンサ)で検知する技術が開示されている。具体的には、マイクロプリントからの反射光が上記した格子板を通過することでモアレ縞が発生することから、このモアレ縞を画像検出手段であるエリアセンサで検知して、その周期成分fmの強度が予め設定されたしきい値Thを越えている場合は良、周期成分fmが前記しきい値Thを越えていない場合は否と判別するようにしている。
【0005】
上記した真贋判定技術を備えた紙葉識別装置では、真贋判定精度の向上を図るために、それまで使用しているセンサよりも解像度が高いセンサを用いる場合がある。このような場合、上記した公知文献に開示されている技術では、確認パターンを有するフィルタ(格子板)を、モアレパターンが発生するように再度調査し、かつそれに応じたフィルタ(格子板)を製造し直す必要があるため、コストの上昇を抑えることが難しくなってしまう。
【0006】
また、上記した紙葉類の真贋判定を行う紙葉識別装置は、マイクロプリント(モアレパターン)に関係なく、紙葉搬送路に、赤外線を照射する発光素子(赤外線帯域の波長を照射する発光素子)を設置しておき、搬送される紙葉に対して赤外線を照射し、その反射光や透過光を検知して、それを正規の紙葉データと比較することで、真贋判定を実施することもある。これは、紙葉に施されている印刷のインク独特の波長吸収特性を利用して、真贋判定を行う方式である。
【0007】
ところで、紙葉類として紙幣を例示すると、現状では、各国において、様々な印刷インクを用いて紙幣を作成することから、全ての紙幣に対し、これを単一波長のみで1台の識別装置で真贋判定することは困難である。すなわち、紙幣毎(国毎)に専用の紙幣識別装置を準備する必要性があり、これによって、紙幣識別装置のコストが高騰してしまう。また、将来的に、新たな額面の紙幣が登場したり、印刷デザインが変更されることもあり、現状の紙幣識別装置では、将来的に正確な識別ができなくなる可能性が生じ、新たに専用の紙幣識別装置を製造する等、同様にコストが高騰してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題に着目してなされたものであり、コストの上昇を抑え、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、識別する紙葉の種別が変更されても、コストの上昇を抑えて真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紙葉識別装置の一つの特徴は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、前記画像データの画素の数を増減する増減手段と、前記増減手段によって増減された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記した構成の紙葉識別装置によれば、取込んだ紙葉に関する画像データの画素の数を増減することにより、その紙葉固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、例えば、識別精度の向上を図るため、紙葉読取手段を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタを新たに製造する必要が無くなり、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0012】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記増減手段による画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において異なる比率で増減するようにしても良い。
【0013】
このような構成によれば、取込んだ紙葉に関する画像データの画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において、異なる比率で増減するだけで画像データにモアレ縞が発生し易くなり、モアレデータを容易に取得することが可能になる。
【0014】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記増減手段による画素の数の増減を、紙葉の取込み方向及びこれに直交する方向において所定の増減比率で実行するよう、増減比率を設定するパラメータ設定部を有するようにしても良い。
【0015】
このような構成によれば、単にパラメータ(縦方向;50%、横方向;50%など)を変更するだけで、センサの解像度に応じた最適なモアレデータを取得することが可能となる。このため、記憶領域には、画像データを拡縮するためのパラメータを確保するだけで良く、無用な記憶領域を確保する必要が無くなり、コストの上昇を抑えることが可能になる。
【0016】
また、上記した構成の紙葉識別装置は、前記紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段を備えていても良い。
【0017】
このような構成によれば、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なる紙葉の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙葉毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、また、異なる紙葉が用いられても正確な識別を実施することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る紙葉識別装置の別の特徴は、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段と、前記可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段と、紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段と、前記検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による前記基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部と、を有することを特徴とする。
【0019】
上記した構成の紙葉識別装置では、紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なる紙葉の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙葉毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、また、異なる紙葉が用いられても正確な識別を実施することが可能となる。
【0020】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内で、任意波長の光を紙葉に対して照射可能にすることができる。
【0021】
すなわち、真贋判定する紙葉に用いられている印刷インクは、その組成にもよるが、一般的には、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内のいずれかの波長で吸収特性や反射特性がピークになることから、上記した帯域内で発光手段の波長が変更できれば、用いられる紙葉の殆どに適用することが可能である。
【0022】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紙葉が搬送される間に、搬送される紙葉に対して異なる波長光を照射可能にすることができる。
【0023】
紙葉に対して照射される光については、可変波長帯域の中から特定の波長を選択し、これを搬送される紙葉に対して照射し続けることも可能であるが、上記のように、搬送されている最中に、波長を変更することで、読取方向に沿って異なる印刷インクが用いられている場合等、最適な紙葉読取情報を取得することができ、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0024】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、紙葉の搬送方向に沿って配置され、紙葉に対して線状の光を照射可能にすることができる。
【0025】
このような構成では、検知手段としてラインセンサ(イメージセンサ)を配置することで、二次元的に画像情報(紙葉読取情報)を得ることが可能となり、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0026】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記可変波長発光手段は、面発光素子にすることが可能である。
【0027】
このような面発光素子では、可変波長発光手段が単一の発光素子の集合体である場合と比較して、発光素子間の照射ムラ(輝度の差)が生じないことから、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0028】
また、上記した構成の紙葉識別装置においては、前記記憶手段は、紙葉の基準紙葉データの書換えが可能にすることもできる。
【0029】
このように、記憶手段に記憶されている紙葉の基準紙葉データを書換えることで、1つの紙葉識別装置でありながら、多種類の紙葉の真贋判定処理に適用することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、コストの上昇を抑え、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供する。
【0031】
また、本発明は、識別する紙葉の種別が変更されても、コストの上昇を抑えて真贋判定を可能にする紙葉識別装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る紙幣識別装置の第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図である。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図である。
【図4】下部フレームの裏面図である。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図である。
【図6】紙幣識別装置の構成を模式的に示した図である。
【図7】紙幣の概略構成を示す図である。
【図8】紙幣識別装置の制御系を示すブロック図である。
【図9】(a)〜(e)を含み、画素データ増減処理部における画像データの画素を増減する一手順例を説明する図である。
【図10】(a)及び(b)は、夫々、画素数の増減処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示す図である。
【図11】モアレ縞の発生原理を説明する模式図であり、モアレ縞が発生しない条件を説明する図である。
【図12】モアレ縞の発生原理を説明する模式図であり、モアレ縞が発生する条件を説明する図である。
【図13】紙幣を読取る場合において、画素数を間引く処理をした際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図である。
【図14】紙幣を読取る場合において、画素数を増加処理した際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図である。
【図15】紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施形態に関する紙幣識別装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。
【0034】
図1から図4は、紙幣識別装置(紙葉識別装置)の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0035】
本実施形態の紙幣識別装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣識別装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣識別装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣識別装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0036】
紙幣識別装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、ベース側となる下部フレーム2Bと、これを覆うように下部フレーム2Bに対して開閉可能な上部フレーム2Aとを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、基部を回動中心として開閉されるように構成されている。
【0037】
前記下部フレーム2Bは、略直方体形状を有しており、紙幣が搬送される紙幣搬送面3aと、その紙幣搬送面3aの両サイドに形成される側壁部3bとを備えている。また、上部フレーム2Aは、紙幣搬送面3cを備えたプレート状に構成されており、上部フレーム2Aが下部フレーム2Bの両サイドの側壁部3b間に入り込むように閉塞された際、紙幣搬送面3aと紙幣搬送面3cとの対向部分に、紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成される。
【0038】
そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、夫々紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成し、図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0039】
また、前記上部フレーム2Aの先端側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト4が配設されている。このロックシャフト4には、操作部4aが設けられており、操作部4aを、付勢バネ4bの付勢力に抗して回動操作することで、ロックシャフト4は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0040】
前記下部フレーム2Bには、紙幣搬送機構8、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50、並びに、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50等の構成部材の駆動を制御すると共に、読取った紙幣の有効性を識別する(真贋判定処理を行う)制御手段(制御基板100)が設けられている。
【0041】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0042】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。これらの駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0043】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0044】
なお、ローラ対12と同様、上記した搬送ローラ対13,14も、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c,14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0045】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、下部フレーム2Bの一方の側壁部3bに回転可能に配設されるギヤトレインによって構成される。具体的には、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0046】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0047】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0048】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0049】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで紙幣情報の読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光をフォトダイオード等の受光素子で検知することで紙幣の読取を行うようになっている。
【0050】
この場合、紙幣から得られる透過光と反射光の内、反射光については、後述するように、受光部を有するラインセンサによって所定の大きさを1単位とする画素毎に読取が実行され、このように読取られた複数の画素によって構成される紙幣の画像データは記憶手段に記憶されると共に、ここで記憶された画像データは画像処理部において、画素の数を増加及び/又は減少するように画像処理が施される。そして、このように画素数が増減処理された画像データは、予め格納されている真券の画像データと比較することで真贋の判定処理が実行される。
【0051】
なお、紙幣を透過した透過光については、反射光と同様な手法によって真贋の判定処理を行っても良いし、別の手法を用いて真贋の判定処理を行うようにしても良い。
【0052】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0053】
具体的にシャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、支軸55の幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの紙幣搬送面3aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0054】
また、前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定された紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動する。これにより、シャッタ機構を構成する回動片52は、駆動軸54aに連動する支軸55を介して紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0055】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0056】
前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0057】
次に、上部フレーム2A及び下部フレーム2Bに設置される紙幣読取手段20の構成について図2〜図4及び図6を参照して説明する。
【0058】
前記紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側で搬送路幅方向に亘ってスリット状の光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設されたラインセンサ25とを有している。
【0059】
前記下部フレーム2B側に設置されるラインセンサ25は、紙幣を挟むようにして、前記第1発光部23と対向するように配設される受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、スリット状の光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0060】
前記ラインセンサ25の受光部26と対向配置された第1発光部23は、透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子23aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0061】
なお、前記ラインセンサ25の受光部26は、導光体である第1発光部23と平行にライン状に配設されており、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。具体的には、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォック(登録商標)レンズアレイ26aを配置した構成となっている。
【0062】
前記ラインセンサ25の第2発光部27は、反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子27aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0063】
なお、前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣識別装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0064】
上記したラインセンサ25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面3aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24もラインセンサ25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0065】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。なお、ここでは、上記したように、反射光を利用した真贋判定処理について説明する。
【0066】
通常、紙幣には、偽造防止の1つの手段として、マイクロプリント(再現が困難となるような極めて微細な文字や模様など)が形成されている。このマイクロプリントは、図7に模式的に示すように、単位幅内に多数の細線200を形成することで構成されており、例えば、彫刻凹版によって形成することが可能である。マイクロプリントの構成については、ここでは詳細に説明しないが、図では分かり易いように、単位幅内に多数の直線状の細線を描画することで構成されている。もちろん、細線は、図に示す直線状以外にも、曲線状としたり、直線と曲線を組み合わせたものであっても良い。また、これらの細線によって、別途、文字や模様を構成しても良い。
【0067】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定手法は、まず、紙幣Mが紙幣搬送機構8によって搬送された状態で、前記ラインセンサ25における第2発光部27から紙幣に照射され、その反射光を受光部26で受光して紙幣の読取を実行する。この読取は、紙幣の搬送処理中、所定の大きさを1単位とする画素毎に実行され、このようにして読取られた多数の画素(複数の画素)によって構成される紙幣の画像データは、RAMなどの記憶手段に記憶される。そして、ここで記憶された複数の画素によって構成される画像データは、画像処理部において、画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施される。
【0068】
上記したように画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施された紙幣の画像データには、上記したマイクロプリント部分において、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。このモアレデータは、画素の数を、拡大又は縮小することで、その拡縮率特有のものが得られることから、予め格納されている真券のモアレデータと比較することで、真贋判定を行うことが可能となる。
【0069】
図8は、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50、紙幣の真贋判定処理を実行する真贋判定部150等を備えた紙幣識別装置1を制御する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【0070】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板100を備えており、この制御基板100上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only
Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、画像処理部116とが実装されている。
【0071】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、及び画像処理部116にける画素データ増減処理部116aにて実行される画素データを拡大するか、等倍するか、間引くかを決定するデータからなる変換テーブル等、恒久的なデータが記憶されている。
【0072】
前記CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識別装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18や通過検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、駆動モータ10の駆動制御、並びに、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0073】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、判定対象となる紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される紙幣の画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を有する。
【0074】
また、前記画像処理部116は、前記RAM114に格納された紙幣の画像データに関し、その画素の増減処理を行う画素データ増減処理部116aと、紙幣に関する基準のデータを格納している基準データ記憶部116cと、画素データ増減処理部116aにおいて画素の増減処理が成された画像データと、基準データ記憶部116cに格納されている基準データとを比較し、紙幣の判定処理を行う判定処理部116bを備えている。この場合、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116cに記憶させているが、これを上記したROM112に記憶させておいても良い。すなわち、画像データの拡縮率を特定する変換テーブルに関連付けして、その真券データを格納しておいても良い。また、真券の基準データについては、基準データ記憶部116cに予め記憶させても良いが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させても良い。
【0075】
さらに、CPU110には、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部(導光体)23と、ラインセンサ25における受光部26及び第2発光部(導光体)27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、画像処理部116と共に、紙幣の真贋判定部150を構成し、紙幣識別装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。なお、本実施形態では、真贋判定部150については、紙幣の駆動系を制御する制御部と共通化されているが、真贋判定処理を行う機能を、それ専用のハード構成としても良い。
【0076】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣識別装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置300に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0077】
ここで、上記した画素データ増減処理部116aにおける画像データの画素を増減する一手順例について、図9の概念図を参照して説明する。
【0078】
図9(a)は、最初に読取手段20を介して読取られた紙幣の画像データを画素毎にした元データを模式的に示している(縦方向:横方向=1:1とし、画素の数を少なくして示す)。1つの四角は1画素に対応しており、各四角内に付されている数字は、読取った紙幣のその画素における色の明るさを示している。なお、実際には、各画素では、RGBのフィルタ制御によって各RGBの明るさが制御されているため、画素毎に異なる明るさの色情報を含んだものとなっている(図9(a)では、全ての画素が夫々異なる明るさの色情報で構成されている)。
【0079】
このように紙幣読取手段20によって読取られる紙幣の元データは、記憶手段であるRAM114に格納された後、画像データ増減処理部116aにおいて画素データの増減処理が施される。例えば、縦方向はそのままで横方向を2倍(縦方向:横方向=1:2)となるように画素の数を増加させる場合、まず、図9(b)に示すように、各画素の横方向に1つの画素を補完し、次いで、図9(c)に示すように、補完された画素部分に、その横の画素の色情報と同じ色情報の割り当て処理を行う。これにより、縦方向はそのままで、横方向に等倍処理された画像データを生成することが可能となる。なお、等倍処理でない場合は、例えば、変換テーブルにおいて、何番目の画素データについて色情報の割り当て処理を実行させるかを予め定める等しておけば良い。
【0080】
一方、元データに対して、例えば、縦方向はそのままで横方向を0.25倍(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させる場合、例えば、図9(d)に示すように、横方向の全画素を平均して1/4づつ分割し、間の画素(空白で示す画素)を間引く方法で縮小処理を行えば良い(図9(e))。これにより、縦方向はそのままで、横方向には1/4に縮小された画像データを生成することが可能となる。
【0081】
図10は、上記したように画素数の増減処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示している。図10(a)に示すように、(縦方向:横方向=1:2)となるように画素の数を増加させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その増加率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Aが得られるようになる。また、図10(b)に示すように、(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その減少率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Bが得られるようになる。
【0082】
ここで、上記したモアレ縞の発生原理、及び発生条件について、図11〜図14を参照して説明する。図11に示すように、紙幣Mに形成されている細線(隣接する黒いバーで示す)200の間隔をbとした場合、その間隔bが、上述した紙幣読取手段20を構成するラインセンサ25が1画素を読取る間隔dよりも広ければ(b>d)、紙幣の細線200を正確に読取ることができるため、読取画像データ(a)は、そのまま紙幣の細線を再現した状態となり、モアレ縞が発生することはない。
【0083】
これに対して、図12に示すように、紙幣Mに形成されている細線200の間隔bが、ラインセンサ25が1画素を読取る間隔dと同一か、それ以下になると(b≦d)細線である黒いバーは、図11で示すような画像データ(a)として再現できなくなり、その読取画像データは、全て黒い状態として読取ってしまう。すなわち、b≦dになると、紙幣の細線200を正確に読取ることができなくなって、微細な線が粗くなってしまい、これによりモアレ縞が発生する原因となる。
【0084】
上述したように、画素数の減少処理を行う場合、例えば、図13に示すように、紙幣本来の細線の間隔bが、画素データを間引いたことによって得られる画素間の間隔d以下となったとき(画素数の減少率がb≦dの条件を満足する)、隣接する細線同士が明確に区別することが困難となり(読取った細線データの線が粗くなってしまう)、粗くなった状態の細線同士によってモアレ縞が発生するようになる。
【0085】
一方、図14に示すように、取込んだ画像データの細線200の間隔がbであった状態で、画素数の増加処理を行うと、拡大後の画像データによって得られる細線200の間隔は拡大処理によってb´となる。この拡大後の画像データによって得られる細線200の間隔b´が、1画素を読取る間隔d以下であれば(増加率がb´≦dの条件を満足する)、上記した原理と同様、モアレ縞が発生するようになる。
【0086】
以上のように、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数の増減を、紙幣の取込み方向及びこれに直交する方向において、異なる比率で行うことで、画像データにモアレ縞を発生させることが可能となり、モアレデータを容易に取得することが可能になる。
【0087】
この結果、判定処理部116bにおいて、基準データ記憶部116cに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋判定処理を行うことが可能となる。具体的には、例えば、モアレ縞が生じている部分の各画素について、明るさ(濃度)に関する画素データを検出し、それを基準データと比較して、その違いが所定の値以下である場合、その画素部分については等しいとみなし、これをモアレ縞が生じている部分の全ての画素について実行することで、真贋判定を行うことが可能である。
【0088】
図15は、上記した紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る紙幣識別装置の処理動作について説明する。
【0089】
最初、紙幣識別装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、駆動モータ10が駆動されて、紙幣搬送機構8を介して紙幣の搬送処理が行われる(ステップS02)。なお、このとき、LED70が点灯処理され、利用者に対して紙幣処理中であることを知らせて追加の紙幣挿入が防止される。
【0090】
この紙幣の搬送処理と同期して、紙幣読取手段20において紙幣の読取処理を実行する(ステップS03)。この紙幣の読取処理は、CPU110が、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から紙幣に向けて照射光を照射し、受光部26において、その反射光を受光することで成される。なお、紙幣の識別処理に用いられるモアレデータは、上述したように、発光部27から照射した光の反射光に基づいて取得される。
【0091】
紙幣の装置内への搬送により、前記紙幣読取手段20がその情報を読取り、上記した制御手段30において、真贋判定処理が実行される。上記した紙幣の読取は、ラインセンサ25の受光部26において、第2発光部27から照射され、搬送状態にある紙幣からの反射光を受光することで成される。この読取時においては、上述したように、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙幣の画像情報が取得される。また、第1発光部23から照射されて、紙幣を透過する透過光については、別の真贋判定処理(濃淡データ等による真贋判定処理など)に用いることが可能である。
【0092】
なお、この真贋判定処理が実行されている際に、紙幣検知センサ18が搬送状態にある紙幣の後端を検知すると(紙幣検知センサ18がOFF)ソレノイド54が通電され、これにより、回動片52が回動駆動されて紙幣挿入口6を閉塞し、紙幣の追加投入を防止する。
【0093】
上記したように、画素毎に読取られた紙幣情報は、複数の画素によって紙幣全体の画像データを構成することとなり、この画像データは、記憶手段であるRAM114に格納される(ステップS04)。そして、引き続いて、RAM114に記憶された画像データは、画像処理部116において、画素の数が増加及び/又は減少するように画像処理が施される(ステップS05)。なお、画素の数の増減処理は、ROM112に格納されている変換テーブルに基づいて実行され、この処理によって得られる紙幣の画像データには、上述したように、増減比率に応じて、マイクロプリント部分において特有のモアレデータが得られる。
【0094】
そして、引き続き、ステップS06で紙幣の真贋判定処理を行う。上述したように、ROMに格納されている変換テーブルによる増減率によって、特有のモアレデータ(モアレ縞)が得られることから、これを、判定処理部116bにおいて、基準データ記憶部116cに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋が判定される。
【0095】
上記した真贋判定処理において、搬送された紙幣が真券であると判定された場合(ステップS07のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS08)。この処理は、例えば、紙幣をそのまま下流側にあるスタッカに向けて搬送する処理、下流側に向けて搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階で駆動モータ10の駆動を停止する処理、及び、これに伴い、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませて、紙幣挿入口6を開放状態にすると共にLED70を消灯する処理等が該当する。
【0096】
一方、上記したステップS07の処理において、搬送された紙幣が偽札であると判定された場合(紙幣が著しく汚損しているような場合も含む)、紙幣判定NG処理が実行される(ステップS09)。この処理は、例えば、挿入された紙幣を返却すべく、駆動モータ10の逆転処理、或いは上位装置300に対して警報信号を出力する処理等が該当する。
【0097】
以上のように構成される紙幣識別装置1によれば、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数を、増減させることにより、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、例えば、識別精度向上を図るため、紙幣読取手段20を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタ等、新たに製造する必要が無くなって、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0098】
また、上記した構成では、画素データ増減処理部116aにおける画素の数の増減については、紙幣の取込み方向及びこれに直交する方向において、所定の増減比率で実行するように、ROM112に格納されている変換テーブルに基づいて設定するようになっている。従って、単にパラメータ(縦方向;50%、横方向;50%など)を変更するだけでセンサの解像度に応じた最適なモアレデータを取得することが可能になることから、ROMの記憶領域には、画像データを拡縮するためのパラメータを確保するだけで良くなり、無用な記憶領域を確保する必要が無くなって、コストの上昇を抑えることが可能になる。
【0099】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、この実施形態においても、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。また、紙幣識別装置の概略構成については、図1から図6に示したものと同一であるため、異なる部分について説明すると共に、図16に示すブロック図を参照しながら、その動作を説明する。
【0100】
本実施形態では、図1から図6に示した紙幣識別装置における発光素子(第1発光部23及び第2発光部27)を、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段で構成している。このような可変波長発光手段は、例えば、LED(発光ダイオード)、SLD(Super Luminescent Diode)、SOA(Semiconductor
Optical Amplifier)、LD(レーザダイオード)等を用いることが可能であり、このような可変波長発光素子は、紙幣識別装置内に1つ設置しても良いし、複数個設置しても良い。或いは、紙幣識別精度を向上が図れるように、紙幣に対して搬送方向と直交する方向に線状の光を照射できるように線状に配置しても良い。
【0101】
また、上記したタイプ以外にも、有機EL/SED/FEDのように、面発光が可能な発光素子を用いることが可能である。このような面発光素子では、可変波長発光手段が単一の発光素子の集合体である場合と比較すると、発光素子間の照射ムラ(輝度の差)が生じないことから、紙幣の識別精度をより向上することが可能になる。
【0102】
上記したような可変波長発光素子は、例えば、CPU110によって制御される波長可変駆動回路250により、波長制御信号、具体的には、電圧値や電流値を変化させた波長制御信号を、夫々の第1発光部23及び第2発光部27に入力することで、各発光部23,27から所望の波長の光を照射することができる。
【0103】
なお、一般的に、検知手段として受光部を構成するセンサは、ある程度広い範囲の波長の光に対して感知することが可能であり、可変波長発光手段が発光できる範囲の波長を感知(検知)できるのが望ましいのは言うまでもない。このような可変波長を検知するセンサは、素子自体で、可変波長光を受光できるように制御しても良いし、或いは、素子にフィルタ(例えば、レンズフィルタ)を用いることで達成できる。もちろん、ラインセンサを用いた場合においても、同様に構成することが望ましい。
【0104】
一方、制御手段30を構成する制御基板100には、真贋判定部256が設けられており、この真贋判定部256は、検知紙幣データ記憶部256aと、基準データ記憶部256cと、実際に紙葉の真贋を判定する判定処理部256bと、を有している。
【0105】
前記検知紙幣データ記憶部256aは、上記した可変波長発光手段である第1発光部23及び第2発光部27から発光される任意波長の光に関し、紙幣から得られる透過光及び反射光を受光部26で検知し、その検知紙幣データを記憶する機能を有する。
【0106】
また、前記基準データ記憶部256cは、紙幣に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙幣の基準紙葉データを記憶する機能を有する。この基準データ記憶部256cには、予め、適用可能である紙幣に関し、識別に適した波長の光を照射した際に得られる基準紙幣データ(紙幣の種別毎に対応付けされた波長、及びその波長の光を照射した際に得られる基本となる基準データ)が格納されている。
【0107】
なお、この基準データ記憶部256cに記憶される基準紙幣データについては、予め、適用可能な紙幣について格納されているが、事後的に新たなタイプの紙幣を処理するような場合では、通信管理部270を介して基準紙幣データを入力(書換え)することも可能である。このような基準紙幣データの書換えは、例えば、接続ユニットにコネクタを接続して書換える場合と、ネットワーク(インターネットや、所定の地域内で構築されるLAN等のネットワークなど)を経由して処理することが可能である。すなわち、書換え処理に伴う新たな基準紙幣データは、所定の通信プロトコルに対応させてネットワークを介して入力しても良いし、所定の入力ポートを介して外部記憶媒体等から入力しても良い。或いは、基準データ記憶部がROMのような記憶手段であれば、それ自体を交換するようにしても良い。このように、記憶手段に記憶されている紙幣の基準紙幣データを書換えることで、1つの識別装置でありながら、容易に多種類の紙幣の真贋判定処理に適用することが可能になる。
【0108】
また、前記紙葉の真贋を判定する判定処理部256bは、前記検知紙幣データ記憶部256aに記憶された実際に検知した紙幣データと、基準データ記憶部256cに照射された光の波長に関連付けされて記憶されている基準紙葉データとを比較し、その紙幣の真贋を判定する機能を有する。
【0109】
以上のように構成される紙幣識別装置では、紙幣の印刷領域に対して、第1発光部23及び第2発光部27から、異なる波長の光を照射することができるため、1つの装置で、異なるタイプの紙幣の真贋判定を行うことが可能になる。すなわち、紙葉の印刷領域に用いられている印刷インクは、その種類によって特定の波長光(1つ以上あると考えられる)を吸収、或いは反射するという特性があることから、真贋判定する紙幣に用いられている印刷インクに最適な波長光を選択することが可能となる。このため、紙幣毎に、それ専用の識別装置を準備する必要がなく、例えば、1台の装置で、複数の国に流通している紙幣をまとめて識別処理することが可能になる。また、異なるタイプの紙幣が用いられても、正確な識別を実施することが可能となる。
【0110】
また、一般的に、様々な国で用いられる紙幣、或いは、今後、新たに発行される紙幣に用いられる印刷インクは、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内のいずれかで、透過光や反射光のピークが生じると考えられることから、上記した帯域内で第1発光部23及び第2発光部27から照射される光の波長が変更できれば、殆どの国の紙幣に対応することが可能である。
【0111】
また、上記した第1発光部23及び第2発光部27から照射される光は、紙幣が紙幣搬送機構によって搬送される際、所定の波長光を照射するものであっても良いが、紙幣搬送機構によって搬送される間に、搬送される紙幣に対して異なる波長光を照射するようにしても良い。例えば、紙幣の搬送領域に沿って、異なる波長の光を照射するようにすれば、読取方向に沿って異なる印刷インクが用いられている場合等、紙葉の識別精度をより向上することが可能になる。
【0112】
また、光を照射する領域に関しては、搬送される紙幣の一部をスポット状に照射し、紙幣搬送方向に沿った線情報としてデータの読取を行っても良いし、幅方向全体をスリット状に照射して面情報としてデータの読取を行っても良い。このように、面情報としてデータを取得することで、二次元的な画像情報を得ることが可能となり、紙幣の識別精度をより向上することが可能になる。
【0113】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態では、搬送される紙幣を読取るに際して、読取られた画像データの画素数を増減させることでモアレデータを取得し、そのモアレデータを有する紙幣の画像データに基づいて紙幣の真贋を識別する構成であれば良く、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、紙幣の読取を行う読取手段(センサ)の構成や配置態様については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【0114】
また、上述した第2の実施形態では、紙幣に光を照射する発光素子について、波長が可変制御できる構成であれば良く、波長の制御方法や、用いられる発光素子の構成については、特に限定されることはない。また、もちろんこのような波長が可変できる発光素子(面発光素子や、紙葉に対して線状の光を照射可能な発光素子を含む)を、第1の実施形態における第1発光部23や第2発光部27に適用しても良いし、第1の実施形態における基準データ記憶部に記憶されている紙葉基準データについては、書換え処理できるように構成しても良い。
【0115】
また、異なる波長の光を照射することを可能にする可変波長発光手段については、上述したように、電圧制御等することで、1つの発光素子が複数の波長の光を照射する構成以外にも、例えば、特定の波長の光を照射する複数の発光素子(例えば、紫外光領域の光を照射する発光素子、可視光領域の光を照射する発光素子、赤外光領域の光を照射する発光素子など)を用いた構成であっても良い。すなわち、これらの複数の発光素子のいずれかを選択的に発光させたり、各発光素子の光量を変えたりすることで、制御回路のプログラム上で、波長を可変させた光を照射させることも可能である。
【0116】
また、例えば、紫外光領域から可視光領域の範囲を1つの発光素子でカバーし、可視光領域から赤外光領域の範囲を別の発光素子でカバーする等、短い波長帯域で可変波長が可能な複数個の発光素子を用いて、紫外光領域から赤外光領域の範囲をカバーするようにしても良い。
【0117】
さらに、上述した第1及び第2の実施形態では、紫外線帯域から赤外線帯域の内、特定の帯域を指定して用いることが可能である。また、可変波長発光素子を複数個設置しておき、一方を赤外光帯域、他方を紫外光帯域で用いるなど、実際に発光する波長については、適宜組み合わせることが可能である。このように構成することで、照射する波長が限定されることから、基準紙葉データを波長に正確に対応付けすることができ、真贋判定時における整合性の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の紙葉識別装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本発明の紙葉識別装置として、上記した実施形態では、紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、紙幣以外にも、金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2004−78620号公報
【特許文献2】特開平7−306964号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段と、
前記可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段と、
紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段と、
前記検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による前記基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部と、
を有することを特徴とする紙葉識別装置。
【請求項2】
前記可変波長発光手段は、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内で、任意波長の光を紙葉に対して照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項3】
前記可変波長発光手段は、紙葉が搬送される間に、搬送される紙葉に対して異なる波長光を照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項4】
前記可変波長発光手段は、紙葉の搬送方向に沿って配置され、紙葉に対して線状の光を照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項5】
前記可変波長発光手段は、面発光素子を有することを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、紙葉の基準紙葉データの書換えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項1】
紙葉の印刷領域に対して、異なる波長の光を照射することが可能な可変波長発光手段と、
前記可変波長発光手段から発光される光に関し、紙葉から得られる透過光及び反射光の内、少なくともいずれか一方を検知する検知手段と、
紙葉に対して照射する光の波長に応じて、その波長の光で得られる紙葉の基準紙葉データを記憶する記憶手段と、
前記検知手段によって検知された紙葉データを、照射された光の波長による前記基準紙葉データと比較し、その紙葉の真贋を判定する真贋判定部と、
を有することを特徴とする紙葉識別装置。
【請求項2】
前記可変波長発光手段は、紫外線帯域から赤外線帯域の範囲内で、任意波長の光を紙葉に対して照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項3】
前記可変波長発光手段は、紙葉が搬送される間に、搬送される紙葉に対して異なる波長光を照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項4】
前記可変波長発光手段は、紙葉の搬送方向に沿って配置され、紙葉に対して線状の光を照射可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項5】
前記可変波長発光手段は、面発光素子を有することを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、紙葉の基準紙葉データの書換えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−58258(P2013−58258A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272627(P2012−272627)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−537427(P2008−537427)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−537427(P2008−537427)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
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