説明

紙葉類の厚さ検出装置及び紙幣取扱装置

【課題】
紙幣取扱装置に搭載可能なテープなどを貼った変造紙幣などを高精度に検出できる紙葉類の厚さ検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
回転駆動される基準ローラ1a、1bと、基準ローラに押し付けられ従動回転する検知ローラ5a、5bと、紙葉類の厚みに応じて上方向に移動する外輪8の動きを検出する変位検出センサ9a、9bと、変位検出信号10a、10bと紙幣の姿勢信号とからテープなどが貼られた変造券を判定する判定処理部11からなる。判定処理部11は、変位検出信号から紙幣の厚さを減算したテープ厚さ信号と、隣接の前記テープ厚さ信号を加算したテープ厚さ加算信号とから変造券を判定する。これにより、テープの端部が片乗りして検知ローラが軸方向へ倒れ変位検出信号が低下した場合においてもテープを高精度に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の変造を検出する紙葉類の厚さ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置に備えられる紙幣取扱装置や自動販売機等のように紙幣を取り扱う装置では、テープ、紙等で変造された紙幣を鑑別することが重要であり、そのために紙幣判別装置が備えられている。
【0003】
特に近年は、その変造技術は巧妙化かしており、例えば紙幣、有価証券、切手及び小切手などをテープ、紙、シール等で変造したものが出回っている。
【0004】
このようにテープ、紙等で変造された紙幣等を鑑別する紙幣判別装置として例えば、実開平6−49442号公報に記載された従来技術がある。
この従来技術における紙葉類の厚さ検出装置は、回転駆動される基準ローラと、基準ローラに外輪が押圧され外輪と回転軸との間を弾性部材で接続し従動回転する検知ローラと、基準ローラと検知ローラの間に紙葉類を搬送させて、外輪の変位量からテープ等の盛り上がり(以下、隆起という)を検出するものである。
【0005】
【特許文献1】実開平6−49442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の装置は、検知ローラに紙葉類やテープ等の端部が片乗りして通過した場合に、弾性部材が均一に収縮しないため検知ローラが回転軸方向に傾き正確に紙葉類やテープ等による隆起を検出できない問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決することを目的とするものであり、検知ローラに紙葉類やテープ等の端部が片乗りして通過した場合でも、紙葉類やテープ等の隆起を正確に検出できる紙葉類の厚さ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記検知ローラの変位量を加算した変位量から前記紙葉類の隆起部分を検出することにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、前記検知ローラの外輪は円筒状の硬質部材であり、この硬質部材と前記検知ローラの回転軸との間は弾性部材が介在されてなることにより達成される。
【0010】
また、上記目的は、前記検知ローラは複数設けられ、これら検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起を検出し、隣接同士の前記検知ローラの変位量を加算した変位量から前記紙葉類の隆起を検出することにより達成される。
【0011】
また、上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記検知ローラの変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した隆起高さを求め、隣接同士の検知ローラの変位量から求めた前記隆起高さを加算した隆起高さから前記紙葉類の隆起を検出することにより達成される。
【0012】
また、上記目的は、前記検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起を検出し、隣接する前記検知ローラの変位量から求めた前記隆起高さを加算した隆起高さから前記紙葉類の隆起を検出することにより達成される。
【0013】
また、上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、隣接する前記検知ローラどうしの変位量を加算した紙幣位置に対する変位量を微分し、この微分値から前記紙葉類の隆起高さを検出することにより達成される。
【0014】
また、上記目的は、前記検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起部分を検出し、隣接する前記検知ローラ同士の変位量を加算した紙幣位置に対する変位量を微分し、その微分値から前記紙葉類の隆起高さを検出することにより達成される。
【0015】
また、上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記外輪の両端部から第1の変位量と第2の変位量を検出し、この第1の変位量と第2の変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した第1の隆起高さと第2の隆起高さを求め、この第1の隆起高さと第2の隆起高さ減算したローラ傾斜量から前記紙葉類の隆起高さを検出することにより達成される。
【0016】
また、上記目的は、前記外輪の両端部から第1の変位量と第2の変位量から隆起を有する前記紙葉類の検出と、この第1の変位量と第2の変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した第1の隆起高さと第2の隆起高さを求め、この第1の隆起高さと第2の隆起高さを減算したローラ傾斜量から前記紙葉類の隆起高さを検出することにより達成される。
【0017】
また、上記目的は、前記ローラ傾斜量は、隣接同士の検知ローラのローラ傾斜量を加算したローラ傾斜量であることにより達成される。
【0018】
また、上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記検知ローラの回転軸方向の投影光を検出して前記検知ローラの変位量を求めて前記紙葉類の隆起高さを検出することにより達成される。
【0019】
また、上記目的は、回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記検知ローラの変位量から隆起を有する前記紙葉類の検出と、前記検知ローラの回転軸方向の倒れ量を検出して隆起を有する前記紙葉類の検出とから隆起を有する前記紙葉類を検出することをにより達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、現金自動取扱装置などに適用し、紙幣が二枚以上重なっている重送およびテープ、紙等で変造された紙幣を高精度に検出できる紙幣取扱装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面によって説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の一実施例を備えた紙葉類厚さ検出装置を図1を用いて説明する。
図1において、回転駆動機構(図示せず)によって回転する基準ローラ軸2と、この基準ローラ軸2に設けられた基準ローラ1aと1bと、検知ローラ軸6に設けられた検知ローラ5aと5bが基準ローラ1aと1bに押し付けられて従動回転する検知ローラ軸6と、紙葉類の厚みに応じて上方向に移動する検知ローラの動きを検出する渦電流変位センサなどの変位検出センサ9aと9bが配置される。
【0023】
前記検知ローラ5aと5bは、金属などの円筒状部材からなる外輪8と、この外輪8と検知ローラ軸6との間にはゴムなどの柔らかい弾性部材7が充填されている。前記弾性部材7と外輪8は、接着または非接着とすることができる。これにより、基準ローラ1aと1bと検知ローラ5aと5bと間に紙幣3(紙葉類)が噛み込まれると弾性部材7が紙葉類の厚み分だけ変形して外輪8が上方向に移動する。この移動量を変位検出センサ9aと9bで検出して紙幣3(紙葉類)の厚みに応じた検出信号10aと10bを出力する。検出信号10aと10bは、判定処理部11に送られる。判定処理部11は、検出信号10aと10bと、紙幣3が検知ローラを通過した時のスキュー(搬送方向の傾き)、シフト(横方向の位置)の姿勢信号13から紙幣3が二枚以上重なった重送か、テープ等が貼られた変造券かを判定し、その判定信号12を出力する。
【0024】
なお、姿勢信号13は、紙幣のスキューがない状態に検出信号を修正するためと、紙幣3が検知ローラを通過した位置を求めるために使用する。また、紙幣3に貼られたテープ4を示す。紙幣3は、紙面の垂直方向に搬送される。
【0025】
また図1は、検知ローラ5aと5bにテープ4の両端部が片乗りして通過し、弾性部材が均一に収縮しないため検知ローラ5aと5bが回転軸方向に傾いた状態を示す。このような状態の時、変位センサ9aと9bの変位出力は、紙幣3の厚さにテープ4の厚さを加算した隆起より小さい値となる。ここでは、変位センサの検出部中心と外輪との距離に対応した変位出力となる。
【0026】
ところで、上記説明では、二組の基準ローラと検知ローラについて説明したが、基準ローラと検知ローラは、紙幣の全面を検出できるように、紙幣搬送方向と直角方向に多数配置されている。
【0027】
次に、判定処理部11における紙幣に貼ったテープの判定方法を図2、図3、図4を用いて説明する。
【0028】
図2は、仮に図1に示した検知ローラ5aと5bとのい間をテープ4を貼った変造券が通過した場合の変位検出センサ9aと9bからの変位検出信号15、19の変化を示す。
ず2において、縦軸は、変位出力を示す。横軸は、紙幣の移動距離を示す。紙幣部の出力を符号16、20で示し、テープ部の出力は、符号17,21で示す。また、変位加算信号23は、変位検出信号15、19を加算した信号である。同様に、紙幣部とテープ部の出力を符号24、25で示し、判定処理のための閾値を符号18,22、26で示す。
【0029】
これらの閾値は、紙幣の厚さが場所により異なるため、紙幣が検知ローラを通過した位置に対応してあらかじめ記憶してあるデータから選定する。そして、変位検出信号15、19および変位加算信号23が閾値以上であれば、テープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
【0030】
図3は、図1に示す検知ローラに紙幣3に貼ったテープ4の右端が検知ローラを通過した位置ごとに、変位検出センサの検出信号から通過位置ごとの紙幣厚さを減算したテープ4の厚さをプロットしたテープ厚さ信号29を示すものである。
図3において、図1に示した基準ローラ1aの左右端部を符号36、37で示す。同様に、基準ローラ1bの左右端部を符号38、39で示す。テープ厚さ信号31は、変位検出センサ9aで検出したテープ4の厚さを示し、テープ厚さ信号32は、変位検出センサ9bで検出したテープ4の厚さを示す。符号33は、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過した位置であって、検知ローラが傾きテープ4の厚さが小さく測定される状態を示している。
【0031】
また、テープ厚さ加算信号30は、隣接する変位検出センサ9aと9bから得られたテープ厚さ31と32を加算したテープ厚さを示す。
なお、判定処理のための閾値を符号34で示す。そして、テープ厚さ信号31、33およびテープ厚さ加算信号30が閾値34以上であれば、テープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
【0032】
図4は、変位検出センサの変位検出信号から通過位置ごとの紙幣厚さを減算したテープ厚さ信号波形を示す。
図4において、テープ厚さ信号40は、変位検出センサ9aで検出した変位検出信号から通過位置ごとの紙幣厚さを減算した波形を示す。テープ厚さ波形41は、変位検出センサ9bで検出した変位検出信号から通過位置ごとの紙幣厚さを減算した波形を示す。また、テープ厚さ加算信号42は、隣接する変位検出センサ9aと9bから得られたテープ厚さ信号40と41を加算した波形を示す。
【0033】
符号17、21、24は、テープ部の厚さを示す波形である。
なお、判定処理のための閾値を符号34で示す。そして、テープ厚さ信号40、41およびテープ厚さ加算信号42が閾値34以上であれば、テープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
【0034】
このように図1に示した検知ローラ5a、5bが傾いた場合には、変位検出センサの出力が低下し、図2に示す変位検出センサから得られた変位検出信号15、19では、判定閾値18、19以下となりテープを検出できない。
【0035】
同様に、図3に示すテープ厚さ信号31、32では、判定閾値34以下となりテープを検出できない。
同様に、図4に示すテープ厚さ信号40、41では、判定閾値34以下となりテープを検出できない。
【0036】
このように本発明によれば、図2に示す隣接する変位検出センサ9aと9bから得られた変位検出信号15と19を加算した変位加算信号23を用いれば、テープ部の検出信号が大きくなり、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過し、検知ローラが傾いた場合にもテープを検出できる効果がある。
【0037】
また、図3に示す変位検出センサ9aと9bから得られたテープ厚さ信号31と32を加算したテープ厚さ加算信号30を用いれば、テープ部の検出信号が大きくなり、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過し、検知ローラが傾いた場合にもテープを検出できる効果がある。
【0038】
また、図4に示す変位検出センサ9aと9bから得られたテープ厚さ信号40と41を加算したテープ厚さ加算信号42を用いれば、テープ部の検出信号が大きくなり、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過し、検知ローラが傾いた場合にもテープを検出できる効果がある。
【実施例2】
【0039】
図5は、判定処理部11における紙幣に貼ったテープを判定する方法の他の実施例を示す。
図5において、テープ厚さ微分信号43は、図4のテープ厚さ加算信号42を微分した信号を示す。符号44、45は、判定処理のための閾値を示す。そして、テープ厚さ微分信号43の絶対値が閾値44以上(閾値44=閾値45の絶対値)であれば、テープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
また、図2の隣接同士の変位検出信号を加算した変位加算信号23を微分しても同様な結果が得られる。
【0040】
このように本発明によれば、変位検出センサ9aと9bから得られたテープ厚さ信号40と41を加算したテープ厚さ加算信号42を微分したテープ厚さ微分信号43を用いれば、テープ部の微分信号が大きくなり、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過し、検知ローラが傾いた場合にもテープを検出できる効果がある。
【0041】
また、上記発明では、検出した隣接同士の変位検出信号を加算した信号、隣接同士のテープ厚さを加算した信号および隣接同士の加算した信号の微分信号からテープを検出する方法について述べたが、検出ローラごとの検出した変位検出信号と、検出した隣接同士の変位検出信号を加算した信号、隣接同士のテープ厚さを加算した信号および隣接同士の加算した信号の微分信号の両方の判定結果を組み合わせて変造券を検出することもできる。
また、上記発明では、一つの検知ローラに一つの変位検出センサの場合の適用について述べたが、図6に示すような一つの検知ローラに複数の変位検出センサを用いる場合にも適用できる。
【実施例3】
【0042】
図6は、一つの検知ローラに二つの変位検出センサを用いた紙葉類厚さ検出装置の他の実施例を示す。
図6において、検知ローラ50a、50bの外輪53両端部の変位を変位検出センサ54a、54bおよび54c、54dを用いて計測して、紙葉類の厚みを検出することを除いては、図1の紙葉類の厚さ検出装置と同じ構成である。
【0043】
検知ローラ軸51に設けられた検知ローラ50aと50bが基準ローラ1aと1bに押し付けられて従動回転する検知ローラ軸51と、紙葉類の厚みに応じて上方向に移動する検知ローラの動きを検出する渦電流変位センサなどの変位検出センサ54a、54bおよび54c、54dが配置される。
【0044】
前記検知ローラ50a、50bは、金属などの円筒状部材からなる外輪53と、外輪53の両端と検知ローラ軸51との間にはゴムなどの柔らかい弾性部材52aと52bが分離されて充填されている。前記弾性部材52a、52bと外輪53は、接着または非接着とすることができる。これにより、基準ローラ1aと1bと検知ローラ50a、50b間に紙葉類が噛み込まれると弾性部材52a、52bが紙葉類の厚み分だけ変形して外輪53が上方向に移動する。この移動量を変位検出センサ54a、54bおよび54c、54dで検出して紙葉類の厚みに応じた検出信号を出力する。
【0045】
検出信号は、判定処理部55に送られる。判定処理部55は、検出信号と紙幣が検知ローラを通過した時のスキュー(搬送方向の傾き)、シフト(横方向の位置)の姿勢信号57から紙幣が二枚以上重なった重送か、テープ等が貼られた変造券かを判定し、その判定信号56を出力する。なお、姿勢信号56は、紙幣のスキューがない状態に検出信号を修正するためと、紙幣が検知ローラを通過した位置を求めるために使用する。また、紙幣3に貼られたテープ4を示す。紙幣は、紙面の垂直方向に搬送される。
【0046】
図6は、検知ローラ50a、50bにテープ4の両端部が片乗りして通過し、弾性部材が均一に収縮しないため検知ローラ50a、50bが回転軸方向に傾いた状態を示すが、このような状態の時、変位センサ54a、54bおよび54c、54dの変位出力は、紙幣3の厚さにテープ4の厚さを加算した厚みより小さい値となる。ここでは、変位センサの検出部中心と外輪との距離に対応した変位出力となる。
【0047】
図7は、図6に示す検知ローラに紙幣3に貼ったテープ4の右端が検知ローラを通過した位置ごとに、変位検出センサの検出信号から通過位置ごとの紙幣厚さを減算したテープ4の厚さをプロットしたものである。
図7において、基準ローラ1aの左右端部を符号69、70で示す。同様に、基準ローラ1bの左右端部を符号71、72で示す。テープ厚さ信号61は、図6に示した変位検出センサ54aで検出したテープ4の厚さを示す。また、テープ厚さ信号62は、同じく変位検出センサ54bで検出したテープ4の厚さを示す。テープ厚さ信号63は、変位検出センサ54cで検出したテープ4の厚さを示す。テープ厚さ信号64は、変位検出センサ54dで検出したテープ4の厚さを示す。また、判定処理のための閾値を符号59で示す。
【0048】
そして、テープ厚さ信号61、62、63,64が閾値59以上であれば、テープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
なお、67はテープ4の両端部が検知ローラ50a、50bを同時に片乗りして通過した位置であって、検知ローラが傾きテープ4の厚さが小さく測定される状態を示している。
【0049】
また、ローラ傾斜信号60は、ローラの傾きを表した信号である。ローラ傾斜信号65は、隣接する変位検出センサ54a、54bから得られたテープ厚さ61と62を減算した値の絶対値であってローラの傾きを示す。同様に、ローラ傾斜信号66は、隣接する変位検出センサ54c、54dから得られたテープ厚さ63と64を減算した値の絶対値であってローラの傾きを示す。なお、判定処理のための閾値を符号68で示す。そして、ローラ傾斜信号65、67が閾値68以上であれば、ローラの傾きが大きいのでテープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
【0050】
また、ローラ傾斜加算信号73は、隣接するローラ傾斜信号65とローラ傾斜信号66を加算したものである。なお、判定処理のための閾値を符号74で示す。そして、ローラ傾斜加算信号73が閾値74以上であれば、ローラの傾きが大きいのでテープ有りと判定し、閾値未満であれば、テープなしと判定する。
【0051】
このように本発明によれば、テープ厚さ信号61、62、63,64とローラ傾斜信号65、67を用いれば、テープ4の両端部が検知ローラ5aと5bを同時に片乗りして通過し、検知ローラが傾いた場合でもテープを検出できる効果がある。
【0052】
また、テープ厚さ信号61、62、63,64とローラ傾斜加算信号73の両方の判定結果を組み合わせて用いれば、テープ4が検知ローラの何処を通過した場合でもテープを検出できる効果がある。
【実施例4】
【0053】
図8は、紙葉類の厚さ検出装置における他の一実施例を示す。
図8において、検知ローラ5a、5bの変位を測定する変位センサに光学式センサを用いたことを除いては、図1の紙葉類の厚さ検出装置と同じ構成である。
変位センサは、対向する投光部76、受光部78および投光部79と受光部81からなり、検知ローラ5a、5bのローラ上部が帯状の光線77、80の一部を遮るように設ける。そして、投光部の帯状の光線を受光部で検出し、受光量またはライン状に配置した受光素子の受光位置により変位を検出する。したがって本発明は、検知ローラの投影光を検出することによって検知ローラの変位を検出し、紙葉類の厚さを検出するものである。
なお、一対の投光部と受光部を複数の検知ローラを挟んで対向して配置し、複数の検知ローラの最大変位を検出することもできる。
【0054】
このように本発明によれば、検知ローラの投影光を検出するため、検知ローラが傾いた場合においても検出出力の低下がないので高精度にテープを検出できる効果がある。
【実施例5】
【0055】
図9は、紙葉類の厚さ検出装置における他の一実施例を示す。
図9において、検知ローラ5a、5bの回転軸方向の傾きを検出する静電容量式変位センサ85、86を用いたことを除いては、図1の紙葉類の厚さ検出装置と同じ構成である。
【0056】
静電容量式変位センサ85は、電極88と電極87間の静電容量を検出する。これは、検知ローラが傾くと検知ローラと電極との距離が変化するため静電容量の変化となって検出できる。
このように本発明によれば、検知ローラの傾きを検出することにより、検知ローラにテープが片乗りして検知ローラが傾いた場合に、テープ等に乗り上げたと判断できるので高精度にテープを検出できる効果がある。
【0057】
図10は、本発明の紙葉類の厚さ検出装置における現金自動取扱装置の一実施例を示す。
【0058】
図10において、現金自動取扱装置に搭載される紙幣取扱装置90は、現金預け入れ時に供給された紙幣96aを収納するための紙幣の分離と現金払い出し時に利用者が指定した金額を払い出すための紙幣供給受取機構91と、紙幣搬送路92a、92bと、紙幣の絵柄を検出する画像センサと、紙幣の磁気パターンを検出する磁気センサと、紙幣の蛍光画像を検出する蛍光センサからなる紙幣の金種又は真偽を判定する真偽判定装置と、紙幣が二枚以上重なっている重送およびテープ、紙等で変造された紙幣を検出する本発明の紙葉類の厚さ検出装置を用いて紙幣の真偽を判定する紙幣鑑別装置97と、紙幣の収納時と払い出し時に一時的に紙幣を蓄積しておく一時スタッカ93と、機械処理ができない紙幣を収納するための紙幣回収箱94と、金種別に紙幣96bを収納し払い出すための金種収納箱95a、95b、95cと、で構成される。
【0059】
この現金自動取扱装置の動作について説明する。
現金預け入れ時は紙幣供給受取機構91に供給された紙幣96aは一枚づつ分離され搬送路92aに供給される。紙幣鑑別装置97において紙幣が真券であるか偽券であるかを鑑別し、また、紙幣が一枚か二枚以上かを判別する。紙幣が真券であり一枚及び折れ券の場合は一時スタッカ93に蓄積され取引金額を表示する。一方、供給した紙幣に問題がある場合は供給した全ての紙幣は紙幣供給受取機構91に戻される。
【0060】
取引が成立した場合は再び紙幣鑑別装置97を通り紙幣が一枚か二枚以上かをチェックしてそれぞれの金種収納箱95に収納する。現金払い出し時には金種収納箱95の紙幣96bを一枚づつ分離し搬送路92bに供給する。紙幣鑑別装置97において紙幣が一枚か二枚以上かを判別する。紙幣が一枚の場合は紙幣供給受取機構91に払い出される。二枚以上及び折れ券の場合は一時スタッカに蓄積され、その後、紙幣回収箱94に収納される。なお、紙幣鑑別装置97は往復どちらの方向から紙幣が搬送されても鑑別可能なように構成されている。
【0061】
このように本実施例によれば、本発明の紙葉類の厚さ検出装置を用いた紙幣鑑別装置を用いることにより、紙幣が二枚以上重なっている重送およびテープ、紙等で変造された紙幣を高精度に検出できる効果がある。
【0062】
これまでの説明では、変位検出器に渦電流式変位センサを用いているが、静電容量式変位センサ、光学式変位センサ、接触式変位センサなどが使用できる。また、現金自動取扱装置に使用する紙葉類の厚さ検出装置について述べたが、自動販売機の紙葉類の厚さ検出装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の紙葉類の厚さ検出装置の一実施例を示す。
【図2】本発明図1の変位検出信号と、隣接の変位検出信号を加算した変位加算信号およびテープ判定閾値を示す。
【図3】本発明図1のテープ厚さ検出信号と、隣接のテープ厚さ検出信号を加算したテープ厚さ加算信号およびテープ判定閾値を示す。
【図4】本発明図1のテープ厚さ検出信号と、隣接のテープ厚さ検出信号を加算したテープ厚さ加算信号およびテープ判定閾値を示す。
【図5】本発明図1の隣接のテープ厚さ検出信号を加算したテープ厚さ加算信号の微分信号およびテープ判定閾値を示す。
【図6】本発明の一つの検知ローラに二個の変位センサを設けた紙葉類の厚さ検出装置装置の他の一実施例を示す。
【図7】本発明図6のテープ厚さ検出信号と、隣接のテープ厚さ検出信号を減算したローラ傾斜信号と、隣接のローラ傾斜信号を加算したローラ傾斜信号およびテープ判定閾値を示す。
【図8】本発明の検知ローラの投影光を検出する光学式変位センサを設けた紙葉類の厚さ検出装置の他の一実施例を示す。
【図9】本発明の検知ローラの傾きを検出する傾斜センサを設けた紙葉類の厚さ検出装置の他の一実施例を示す。
【図10】本発明の紙葉類の厚さ検出装置を用いた現金自動取扱装置の一実施例を示す。
【符号の説明】
【0064】
1a、1b…基準ローラ、2…基準ローラ軸、3…紙幣、4…テープ、5a、5b…検知ローラ、6…検知ローラ軸、7…弾性部材、8…外輪、9a、9b…変位検出センサ、10a、10b…変位検出信号、11…判定処理部、12…判定信号、13…紙幣のスキュー、シフト姿勢信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラの変位量を加算した変位量から前記紙葉類の隆起部分を検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラの外輪は円筒状の硬質部材であり、この硬質部材と前記検知ローラの回転軸との間は弾性部材が介在されてなることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラは複数設けられ、これら検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起を検出し、隣接同士の前記検知ローラの変位量を加算した変位量から前記紙葉類の隆起を検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項4】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラの変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した隆起高さを求め、隣接同士の検知ローラの変位量から求めた前記隆起高さを加算した隆起高さから前記紙葉類の隆起を検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起を検出し、隣接する前記検知ローラの変位量から求めた前記隆起高さを加算した隆起高さから前記紙葉類の隆起を検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項6】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
隣接する前記検知ローラどうしの変位量を加算した紙幣位置に対する変位量を微分し、この微分値から前記紙葉類の隆起高さを検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラごとの変位量から前記紙葉類の隆起部分を検出し、隣接する前記検知ローラ同士の変位量を加算した紙幣位置に対する変位量を微分し、その微分値から前記紙葉類の隆起高さを検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項8】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記外輪の両端部から第1の変位量と第2の変位量を検出し、この第1の変位量と第2の変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した第1の隆起高さと第2の隆起高さを求め、この第1の隆起高さと第2の隆起高さ減算したローラ傾斜量から前記紙葉類の隆起高さを検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項9】
請求項8記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記外輪の両端部から第1の変位量と第2の変位量から隆起を有する前記紙葉類の検出と、この第1の変位量と第2の変位量からあらかじめ記憶してある前記紙葉類の厚さを減算した第1の隆起高さと第2の隆起高さを求め、この第1の隆起高さと第2の隆起高さを減算したローラ傾斜量から前記紙葉類の隆起高さを検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項10】
請求項8および9記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記ローラ傾斜量は、隣接同士の検知ローラのローラ傾斜量を加算したローラ傾斜量であることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項11】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラの回転軸方向の投影光を検出して前記検知ローラの変位量を求めて前記紙葉類の隆起高さを検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項12】
回転する軸に取り付けられた基準ローラと、この基準ローラの外輪が接触して回転する検知ローラと、この両ローラと前記外輪との接触部間に紙葉類を挟持搬送させて、前記検知ローラの変位量から前記紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記検知ローラの変位量から隆起を有する前記紙葉類の検出と、前記検知ローラの回転軸方向の倒れ量を検出して隆起を有する前記紙葉類の検出とから隆起を有する前記紙葉類を検出することを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の紙葉類検出装置を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−4206(P2006−4206A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180399(P2004−180399)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】