説明

紙葉類の厚み検知装置、紙葉類処理装置、及び紙葉類取扱装置

【課題】挿入された紙幣等の紙葉類の厚みを検知することによって紙幣等の重送、真贋、不正行為の有無を判定する紙葉類の厚み検知装置において、真正紙幣に補修のためにテープを貼ったテープ貼り紙幣のように部分的に厚みが異なる異常紙幣を確実に検知する。
【解決手段】固定ローラ10と、揺動軸3により軸支された揺動部材15と、揺動部材によって回転自在に軸支されると共に揺動部材の揺動に伴って固定ローラの周面と接近、離間する厚み検知ローラ20と、厚み検知ローラが固定ローラと接近する方向へ常時揺動部材を弾性付勢する圧縮バネ5と、揺動部材との間の距離変化を検出する変位検出部25と、固定部材又は揺動部材に固定され、厚み検知ローラが固定ローラから離間する際には揺動部材又は固定部材から離間する一方で、厚み検知ローラが固定ローラへ向けて戻る際の反発力を揺動部材、又は固定部材と接することにより減衰する制振部材30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば紙幣を入金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機、印刷装置等の紙葉類取扱装置に装備される紙葉類処理装置の改良に関し、特に挿入された紙幣等の紙葉類の厚みを検知することによって紙幣等の重送、テープ貼りの有無、真贋等を判定することができる紙葉類の厚み検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣を引き込んで装置内部に搬送する過程でその紙幣の厚さ、真贋、金種を判定し、正規の紙幣である場合にはこれを受入れて更に奥部に配置された紙幣収納部に収納したり、釣銭や返却金銭を払い出す紙幣処理装置と、利用者が操作するための操作スイッチ類、ディスプレイを備えた操作ボードと、利用者との間の取引が成立した場合に物品やサービスの提供を行う物品等提供部と、を備える。紙幣処理装置は、紙幣の厚さ検知装置を備え、挿入された紙幣が重送状態であったり、厚みが異なる偽造紙幣であったり、或いは紙幣を補修する等のためにテープ等の異物が付着している場合にはこれを検知して装置外へ返却する等の処理を行う。
【0003】
図6は従来の厚み検知装置の概略構成を示す図である。
この厚み検知装置は、固定部材100により回転自在に軸支された固定ローラ110と、固定部材100に設けた揺動軸101によって上下方向へ揺動自在に軸支された揺動部材115と、揺動部材の下部によって回転自在に軸支され固定ローラ110とのニップ部に媒体Pを通過させる厚み検知ローラ120と、固定部材100に設けたブラケット102によって基端部を支持され他端部で揺動部材115の被押圧面115aを固定ローラ110へ向けて押圧することにより厚み検知ローラ120を固定ローラ110に圧接させる圧縮バネ105と、固定部材100に設けられた支持部103の下面に固定されたホール素子125a及び揺動部材の上面に固定された永久磁石125bからなり揺動部材上面(永久磁石)の変位を検知する変位検出部125と、を有する。
以上の構成において、固定ローラと厚み検知ローラとのニップ部に紙幣等の媒体Pが進入すると、媒体からの圧力により圧縮バネ105に抗して厚み検知ローラ120が跳ね上げられ、厚み検知ローラを搭載している揺動部材115が一体となって上方向へ回転運動する。揺動部材115が回転運動することにより、ホール素子125aが揺動部材(永久磁石125b)の変位量を検出する。
【0004】
一方、補修等のためのテープが貼られた紙幣がニップ部に進入すると、上記の検知動作によって、テープが貼られていない部分からは紙幣の正規の厚みの値のみが検出される一方で、テープが貼られている部分からは紙幣とテープの合計厚みが検出される。紙幣の厚み分とテープが貼られた部分の厚み分との間に閾値を設けることで、閾値を越えた出力を得られた場合にはテープ等の異物が貼られた紙幣であると判定する。なお、受け入れた紙幣を一旦装置内に保管しておき、後刻釣銭として払出すために利用する還流式の紙幣取扱装置においては、真贋判定では真正紙幣であると判定されたが厚み検知においてテープ貼り紙幣であると判定された場合には、その紙幣は釣銭として還流せずに保管庫に保管される。
次に、両ローラのニップ部に進入した媒体Pからの衝撃により厚み検知ローラ120が跳ね上げられた際に、変位検出部125が揺動部材115の揺動運動による変位を検出するが、その際の変位検出部の出力は、厚み検知ローラ及び揺動部材が媒体の厚み分以上に跳ね上げられた結果としての出力となる。紙幣処理装置の高速化によって媒体の搬送速度が速くなれば、その分だけ媒体進入時の衝撃のエネルギーが増大するので、変位検出部125からの出力が更に大きくなる。
【0005】
図7は、媒体Pがニップ部に進入してから通過するまでの間における変位検出部からの出力波形を示しているが、ニップ部に紙幣先端が進入する時(t1)に厚み検知ローラは衝撃を受けて跳ね上がるため、その直後の時間t2において変位検出部の出力がピークに達し、その後は紙幣の厚み分の出力まで波形が減衰するのに長い時間(t2〜t3)がかかる。
紙幣進入時の衝撃が大きければ大きい程、その反動で厚み検知ローラは跳ね上がりと戻りを何度も繰り返し、振動が減衰するまでに長い時間がかかる。そのため、紙幣前半部分にテープが貼られていると、テープの厚みが加わったことにより増大した出力と衝撃の反動による出力との違いが判別できなくなる。
なお、紙幣がニップ部に進入する際の衝撃による変位検出部125の出力増大を抑えるには、圧縮バネ105の圧力を高めることが有効である。しかし、圧縮バネの圧力を高めてゆくと、媒体が固定ローラ110と厚み検知ローラ120とのニップ部に進入しにくくなり、媒体が損傷を受ける可能性も高まる。また、圧縮バネ105を支持しているブラケット102の撓みを防止するためにその剛性を高める必要があり、構造の複雑化、コストアップを招くという問題が発生する。
【0006】
特許文献1には、厚み検知ローラを回転自在に支持する揺動部材をコイルバネとゲル状シリコーンゴムとによって固定ローラに押圧することにより、ニップ部に紙幣が進入したときの厚み検知ローラの跳ね上がりを抑制するようにした厚み検知装置が開示されている。しかし、実際にはコイルバネからの加圧力にゲル状シリコーンゴムからの同方向への加圧力が付加されるため、紙幣進入時に厚み検知ローラを押し上げるのに要する力が大きくなり、ニップ部に進入する際に紙幣が受ける初期衝撃はコイルバネ単体の場合に比して大きくなるため、紙幣が損傷を受け易くなり、更に紙幣処理装置を高速化するためにニップ部への通紙速度を高速にした場合、紙幣がニップ部にてジャムする虞も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−1739公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、挿入された紙幣等の紙葉類の厚みを検知することによって紙幣等の重送、真贋、不正行為の有無を判定する紙葉類の厚み検知装置において、真正紙幣に補修のためにテープを貼ったテープ貼り紙幣のように部分的に厚みが異なる異常紙幣を確実に検知することができる紙葉類の厚み検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る紙葉類の厚み検知装置は、固定部材に設けた固定軸を中心として回転する固定ローラと、該固定軸と平行であり且つ前記固定部材に設けた揺動軸により一部を揺動自在に軸支された揺動部材と、該揺動部材の他の部位によって回転自在に軸支されると共に該揺動部材の揺動に伴って前記固定ローラの周面と接近、離間する厚み検知ローラと、前記固定部材に基端部を固定され前記厚み検知ローラが前記固定ローラと接近する方向へ常時前記揺動部材を弾性付勢する圧縮バネと、前記固定部材に配置されて前記揺動部材との間の距離変化を検出する変位検出部と、を備え、前記固定ローラと前記検知ローラとの間を通過する紙葉類の厚みを検知する装置であって、前記固定部材、又は前記揺動部材に固定され、前記厚み検知ローラが前記圧縮バネに抗して前記固定ローラから離間する際には前記揺動部材、又は前記固定部材から離間する一方で、該圧縮バネの原形復帰力により該厚み検知ローラが前記固定ローラへ向けて戻る際の反発力を前記揺動部材、又は前記固定部材と接することにより減衰する制振部材を更に備えたことを特徴とする。
固定ローラと厚み検知ローラのニップ部に紙葉類が進入する際に厚み検知ローラが跳ね上がりを起こすと、その後の反動によって厚み検知ローラが暫く上下振動を繰り返すため、振動が終了するまで紙幣の厚みを正しく検知できない。本発明では、跳ね上がった後の反動による振動を制振部材により吸収緩和することができるので、振動の終了に要する時間を短縮化して、厚み測定精度を高めることができる。
請求項2の発明は、請求項1において、前記厚み検知ローラを間に挟んで前記固定ローラと反対側に前記圧縮バネを配置し、前記揺動軸を前記固定ローラと前記厚み検知ローラのニップ部よりも通紙方向下流側に配置し、前記制振部材は前記圧縮バネの前記通紙方向下流側且つ前記圧縮バネを間に挟んで前記厚み検知ローラとは反対側において前記揺動部材に設けた前記対向部と対向配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、前記厚み検知ローラを間に挟んで前記固定ローラと反対側に前記圧縮バネを配置し、前記固定部材の天板に前記圧縮バネの基端部を固定し該圧縮バネの他端部により前記揺動部材を前記圧接方向へ付勢し、前記制振部材は前記揺動軸の前記通紙方向下流側において前記天板、或いは前記揺動部材に固定されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、前記制振部材は、ウレタン系スポンジゴム、或いはシリコーンゴム等の振動を吸収する機能を備えた材料から構成されていることを特徴とする。
請求項5の発明に係る紙葉類処理装置は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類の厚み検知装置を備えたことを特徴とする。
請求項6の発明に係る紙葉類取扱装置は、請求項5に記載の紙葉類処理装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定ローラと厚み検知ローラとのニップ部に紙幣等が進入する際の衝撃によって厚み検知ローラが跳ね上がった後で、反動によって厚み検知ローラが上下振動を継続する不具合を解消する制振部材を備えたので、真正紙幣に補修のためにテープを貼ったテープ貼り紙幣のように部分的に厚みが異なる異常紙幣を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類の厚み検知装置の要部構成を示す正面図である。
【図2】(a)及び(b)はこの厚み検知装置を備えた紙幣処理装置の一部ユニットの外観斜視図、及び通紙状態を示すユニットの外観斜視図である。
【図3】本ユニットの正面図である。
【図4】紙幣先端が厚み検知装置に進入してから紙幣後端が通過するまでの過程における変位検出部の出力波形を示す図である。
【図5】本発明の厚み検知装置の他の構成例を示す略図である。
【図6】従来の厚み検知装置の概略構成を示す図である。
【図7】従来例において媒体がニップ部に進入してから通過するまでの間における変位検出部からの出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る紙葉類の厚み検知装置の要部構成を示す正面図であり、図2(a)及び(b)はこの厚み検知装置を備えた紙葉類処理装置(紙幣処理装置)の一部ユニットの外観斜視図、及び通紙状態を示すユニットの外観斜視図であり、図3はこのユニットの正面図である。
【0014】
厚み検知装置1は、紙幣、その他の紙葉類を処理する紙葉類処理装置に適用することができる。
厚み検知装置1は、紙幣を搬送する搬送経路50上に紙幣搬送方向と直交する幅方向に沿って複数個(本例では二個)配置されており、搬送経路50上を矢印A方向へ搬送される紙幣(紙葉類)Sを受入れてその厚みを検知し、厚みを検知した信号は制御手段60へ出力される。制御手段60は、正規紙幣の厚みについての基本情報と実際に検知した紙幣の厚みとを比較し、検知した紙幣厚みが正規紙幣の厚みと一致しない場合には重送、真贋、テープ貼り紙幣等の異常がある旨を判定し、リジェクトによる返却等の必要な措置を実施するための制御を行う。
なお、搬送経路50上における厚み検知装置1の配置個数、配置箇所は、検出対象となる紙幣面上の検知部位の違いに応じて種々変更することができる。
厚み検知装置1は、図1、図2に示すように固定部材2と、固定部材2に設けた固定軸10aにより回転自在に軸支された固定ローラ10と、固定軸10aと平行であり、且つ固定部材2に設けた揺動軸3によって左下部を揺動自在に軸支された揺動部材15と、揺動部材15の下部に設けた回転軸20aによって回転自在に軸支されると共に該揺動部材の揺動に伴って固定ローラの周面と接近、離間する厚み検知ローラ20と、固定部材2に設けたブラケット6によって基端部を支持され他端部で揺動部材15の被押圧面15aを固定ローラ10へ向けて押圧することにより厚み検知ローラ20を固定ローラ10に圧接させる圧縮バネ(コイルバネ)5と、固定部材2に設けられた支持部4の下面に固定されたホール素子25a及び揺動部材の上面に固定された永久磁石25bからなり揺動部材上面(永久磁石)の変位を検知する変位検出部25と、固定部材2(ブラケット6)、又は揺動部材15に固定され、厚み検知ローラ20が圧縮バネ5に抗して固定ローラ10から離間する際には揺動部材、又は固定部材から離間する一方で、圧縮バネの原形復帰力により厚み検知ローラが固定ローラへ向けて戻る際の反発力を揺動部材、又は固定部材と接することにより減衰する制振部材30と、を備える。
制振部材30としては、例えばウレタン系スポンジゴム、或いはシリコーンゴム等の振動を吸収する機能を備えた材料を使用する。
【0015】
本例では、厚み検知ローラ20を間に挟んで固定ローラ10とは反対側位置に圧縮バネ5を配置し、揺動軸3を固定ローラと厚み検知ローラのニップ部よりも通紙方向下流側に配置し、更に制振部材30は圧縮バネ5の通紙方向下流側、且つ圧縮バネを間に挟んで厚み検知ローラ20とは反対側(上側)において揺動部材15に設けた対向部15bと対向配置されている。このため、図示した常時(非通紙時)においては、制振部材30は揺動部材の対向部15bと接触しているが、通紙によって揺動部材15が揺動軸3を中心として反時計回りに揺動すると、ブラケット6に固定された制振部材30に対して揺動部材の対向部15bは離間する。
即ち、紙幣がニップ部に進入していないときには、固定ローラ10と厚み検知ローラ20は圧縮バネ5からの圧力により圧接してニップ部を形成しており、このニップ部に紙幣Sが通過する際には少なくとも紙幣の厚み分だけ厚み検知ローラ20が押し上げられて揺動部材15は揺動軸3を中心として反時計回りに回動する。しかし、実際には紙幣先端部がニップ部に進入する際に厚み検知ローラ20と衝突してこれを上方に跳ね上げるため、紙幣の厚みを越えた高さ分、厚み検知ローラ20は固定ローラ10から離間する。
制振部材30は紙幣進入当初には対向部15bから離間するため、その時点では厚み検知ローラ20の跳ね上がりを阻止する機能は有していないが、一旦跳ね上がった厚み検知ローラ20が固定ローラ10の周面に向けて戻ってくる際に、揺動部材の対向部15bが制振部材30と接触して緩衝されるため、衝撃による反動が吸収される。このため、厚み検知ローラが跳ね上がったことによる衝撃の後に続く振動を早期に減衰させることができる。
従って、ニップ部を紙幣が通過している最中に制振部材30が対向部15bとの間で十分な緩衝機能を発揮し得るように、制振部材30の肉厚、弾性等を適切に設定する。
【0016】
図4は紙幣先端が厚み検知装置に進入してから紙幣後端が通過するまでの過程における変位検出部25の出力波形を示しており、紙幣進入時は衝突の衝撃によって出力が大きくなるが(t1〜t2)、その後は制振部材30によって反動が吸収されるため、出力は早い段階で減衰され(t2〜t3)、減衰を完了した時点以降は一枚の紙幣の厚み分を検出できる状態となる(t3〜t4)。このように紙幣進入直後の短い時間を除けば、早い段階で出力が安定するので、紙幣先頭部にテープが貼られることにより部分的に厚みが大きくなっている紙幣からの出力と、厚みが正常な真正紙幣からの出力とを区別し、両者の違いを明確に識別することができる。
なお、本実施形態では、制振部材30を固定部材2、即ちブラケット6の立ち上げ部6aに固定したが、制振部材30を揺動部材15の対向部15bに固定してブラケット6との間で緩衝作用を発揮するように構成してもよい。
【0017】
次に、図5は本発明の厚み検知装置の他の構成例を示す略図である。
本実施形態に係る厚み検知装置1は、固定部材2に設けた固定軸10aにより回転自在に軸支された固定ローラ10と、固定軸10aと平行であり、且つ固定部材2に設けた揺動軸3によって左下部を揺動自在に軸支された揺動部材15と、揺動部材15の下部に設けた回転軸20aによって回転自在に軸支されると共に該揺動部材の揺動に伴って固定ローラの周面と接近、離間する厚み検知ローラ20と、固定部材2の天板2aによって基端部を支持され他端部で揺動部材15の被押圧面15aを固定ローラ10へ向けて押圧することにより厚み検知ローラ20を固定ローラ10に圧接させる圧縮バネ(コイルバネ)5と、固定部材2に固定されて揺動部材上面(永久磁石)の変位を検知する変位検出部(ホール素子、永久磁石)25と、固定部材2の天板2a、又は揺動部材15の左側上面に固定され、厚み検知ローラ20が圧縮バネ5に抗して固定ローラ10から離間する際には揺動部材、又は天板から離間する一方で、圧縮バネの原形復帰力により厚み検知ローラが固定ローラへ向けて戻る際の反発力を揺動部材15、又は天板2aと接することにより減衰する制振部材30と、を備える。
圧縮バネ5は、厚み検知ローラ20を間に挟んで固定ローラ10と反対側に配置されている。
制振部材30は、揺動軸3の通紙方向下流側(左側)において天板2a、或いは揺動部材15に固定されている。即ち、制振部材30は、その一端を天板2aに固定してもよいし、揺動部材の左側上面(対向部)15cに固定してもよいが、本例では天板2a側に固定した場合を一例として説明する。
【0018】
本実施形態に係る厚み検知装置1では、揺動軸3の右側(紙幣搬送方向上流側)の揺動部材の部位に圧縮バネ5を配置する一方で、揺動軸3の左側(紙幣搬送方向下流側)の揺動部材の部位に制振部材30を配置している。このため、ニップ部に紙幣が進入した衝撃によって厚み検知ローラ20及び揺動部材15が揺動軸3を中心として反時計回り方向へ揺動する際には、天板2aに固定された制振部材30の他端は揺動部材の上面15cから離間する一方で、前記衝撃の反動によって厚み検知ローラ20及び揺動部材15が揺動軸3を中心として時計回り方向へ戻る際には制振部材30が揺動部材15の上面と弾性的に圧接してその勢いを緩衝、減衰する。
このため、図4に示したように反動に起因した変位検出部25からの出力のばらつきを短時間で解消して正常な出力を得ることができるので、紙幣先頭部にテープが貼られることにより部分的に厚みが大きくなっている紙幣からの出力と、厚みが正常な真正紙幣からの出力とを区別し、両者の違いを明確に識別することができる。
本発明の厚み検知装置1によれば、高速に搬送されてくる紙幣を十数枚/sec程度のペースで処理することができた。因みに、図6の従来装置において紙幣を高速に通紙すると、厚み検知ローラが跳ね上がることによる衝撃が大きく、跳ね上がった後の反動が収まるまでに時間を要することになり、正確な厚み検知ができなかった。また、特許文献1の装置に於いて紙幣を高速に通紙すると、厚み検知ローラが跳ね上がることは抑えられるものの、紙幣とローラのニップ部との衝突によりジャム、紙幣破損が発生し易くなり、実用的には搬送速度を低下させざるを得なかった。結果的には、これら従来の装置では、最大でも数枚/sec程度が処理の限界であった。
【0019】
このように本発明の厚み検知装置によれば、固定ローラ10と厚み検知ローラ20とのニップ部に紙幣が進入した際に厚み検知ローラが跳ね上がることによる衝撃を阻止しない一方で、跳ね上がった後の反動による厚み検知ローラの振動を制振部材30によって吸収緩和するように構成したので、変位検出部25の出力を早い時期に安定させることができる。このため、テープ等の異物が付着することによって部分的に厚みが異なる紙幣を正常な紙幣と正確に区別することが可能となる。
この厚み検知装置によれば、紙幣を痛めることなく、紙幣処理装置の高速化に対応して正確な検知結果を得ることが可能となる。
本発明の厚み検知装置は、紙幣のみならず、各種紙葉類の重送、異物付着、真贋の判定に適用することができる。また、この厚み検知装置を備えた紙葉類処理装置は、各種自動販売機、入出金装置、両替機、印刷装置等の紙葉類取扱装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…検知装置、2…固定部材、2a…天板、3…揺動軸、4…支持部、5…圧縮バネ、6…ブラケット、10…固定ローラ、10a…固定軸、15…揺動部材、15a…被押圧面、15b…対向部、15c…上面、20…検知ローラ、20a…回転軸、25…変位検出部、25a…ホール素子、25b…永久磁石、30…制振部材、50…搬送経路、60…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に設けた固定軸を中心として回転する固定ローラと、該固定軸と平行であり且つ前記固定部材に設けた揺動軸により一部を揺動自在に軸支された揺動部材と、該揺動部材の他の部位によって回転自在に軸支されると共に該揺動部材の揺動に伴って前記固定ローラの周面と接近、離間する厚み検知ローラと、前記固定部材に基端部を固定され前記厚み検知ローラが前記固定ローラと接近する方向へ常時前記揺動部材を弾性付勢する圧縮バネと、前記固定部材に配置されて前記揺動部材との間の距離変化を検出する変位検出部と、を備え、前記固定ローラと前記検知ローラとの間を通過する紙葉類の厚みを検知する装置であって、前記固定部材、又は前記揺動部材に固定され、前記厚み検知ローラが前記圧縮バネに抗して前記固定ローラから離間する際には前記揺動部材、又は前記固定部材から離間する一方で、該圧縮バネの原形復帰力により該厚み検知ローラが前記固定ローラへ向けて戻る際の反発力を前記揺動部材、又は前記固定部材と接することにより減衰する制振部材を更に備えたことを特徴とする紙葉類の厚み検知装置。
【請求項2】
前記厚み検知ローラを間に挟んで前記固定ローラと反対側に前記圧縮バネを配置し、前記揺動軸を前記固定ローラと前記厚み検知ローラのニップ部よりも通紙方向下流側に配置し、前記制振部材は前記圧縮バネの前記通紙方向下流側且つ前記圧縮バネを間に挟んで前記厚み検知ローラとは反対側において前記揺動部材に設けた前記対向部と対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類の厚み検知装置。
【請求項3】
前記厚み検知ローラを間に挟んで前記固定ローラと反対側に前記圧縮バネを配置し、前記固定部材の天板に前記圧縮バネの基端部を固定し該圧縮バネの他端部により前記揺動部材を前記圧接方向へ付勢し、
前記制振部材は前記揺動軸の前記通紙方向下流側において前記天板、或いは前記揺動部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類の厚み検知装置。
【請求項4】
前記制振部材は、ウレタン系スポンジゴム、或いはシリコーンゴム等の振動を吸収する機能を備えた材料から構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の紙葉類の厚み検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類の厚み検知装置を備えたことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の紙葉類処理装置を備えたことを特徴とする紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−184124(P2011−184124A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49681(P2010−49681)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】