説明

紙葉類の搬送状態を判別する判別装置

【課題】単一の光源を用いて複数の分岐光を生成し、紙葉類の搬送状態の検出精度を向上させること。
【解決手段】判別装置10において、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120は単一光源である光源100の光路上に配置されている。したがって、単一光源である光源100から放射される光を、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120によって複数の検出光に分岐することができる。分岐された複数の検出光は、複数の検出センサ130a、130bによって受光され、受光パターンに応じて紙葉類Pの搬送状態が判別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上を搬送される紙葉類の搬送状態を判別する判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送状態を判別するために、複数の光源と複数の受光素子をそれぞれ対向させて配置することで紙葉類の識別を行う装置が提案されている。例えば、紙葉類によって遮光された受光素子と光を受光している受光素子の比率から紙葉類の長さを検出し、また、受光素子の受光量の変化によりパターンデータを検出することで、検出したパターンデータと標準パターンデータとの比較により紙葉類を鑑別する装置が知られている。(例えば、特許文献1)。また、光源から放射された光をプリズムを介して受光素子に導く回帰反射型のフォトセンサを用いて紙葉類を検知する技術も知られている。
【0003】
さらに、光源から発せられた紫外線を紙葉類に照射し、紙葉類から発せられた蛍光を2つのダイクロイックミラーにより光の3原色に分岐して受光素子に受光させることで、紙葉類の真偽判別を行う技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−243234号公報
【特許文献2】特開2005−122392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の光源と受光素子とが対をなすように配置する構成では、複数の光源を実現するために複数の光学素子(光源回路)が必要となり、各光源回路の配置位置の確保が困難であったり、各光源回路に対する配線が繁雑になるという問題がある。また、回帰反射型のフォトセンサを用いた技術では、光源、受光素子がそれぞれ1つずつ備えられているに過ぎないため、光源側が遮光された場合と、受光素子側が遮光された場合との区別がつかず、紙葉類のスキュー等を検出できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされた発明であり、単一の光源を用いて複数の分岐光を生成し、紙葉類の搬送状態の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以下の種々の態様を採る。
【0008】
第1の態様は、紙葉類の搬送状態を判別する判別装置を提供する。第1の態様に係る判別装置は、単一の光源と、前記単一の光源から放射される光の光路上に配置されている全反射部と、前記光源と前記全反射部との間であって前記光路上に配置され、前記光源から放射された光の一部を前記紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する少なくとも1つの部分反射部と、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって反射された光に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する判別部とを備える。
【0009】
第1の態様に係る判別装置は、単一の光源から放射される光の光路上に配置されている全反射部と、光源と全反射部との間であって光路上に配置され、光源から放射された光の一部を紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する少なくとも1つの部分反射部を備え、少なくとも1つの部分反射部および全反射部によって反射された光に基づいて搬送路における紙葉類の搬送状態を判別するので、単一の光源を用いて複数の分岐光を生成し、紙葉類の搬送状態の検出精度を向上させることができる。
【0010】
第1の態様に係る判別装置はさらに、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部に対応して前記搬送路を挟んで配置され、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって反射された光を受光して検出信号を出力する複数の受光部を備え、前記判別部は前記受光部から出力された検出信号に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別しても良い。この場合には、受光部から出力される検出信号に基づいて紙葉類の搬送状態を判別することができる。
【0011】
第1の態様に係る判別装置において、前記少なくとも1つの部分反射部の透過率または反射率は、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって前記搬送路に向けて反射される各光の光量が予め定められた範囲の値となるよう設定されていても良い。この場合には、各部分反射部および全反射部から反射される光量を予め定められた範囲内とすることができるので、紙葉類の搬送状態の判別精度を向上させることができる。
【0012】
第1の態様に係る判別装置において、前記紙葉類は長辺と短辺を有し、前記搬送路と前記長辺とが交差するように搬送され、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部は、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の長手方向の両端部に対して垂直な光を反射するようにそれぞれ配置されており、前記判別部は、前記複数の受光部からの検出信号に基づいて前記紙葉類の搬送状態を判別しても良い。この場合には、各部分反射部および全反射部と紙葉類Pとの間の距離を最短距離にすることができると共に、受光部に対して最も効率の良い検出光を放射することができる。
【0013】
第2の態様は、紙葉類の搬送状態を判別する判別装置を提供する。第2の態様に係る判別装置は、単一の光源と、前記単一の光源から放射される光の光路上に配置され、前記光源から放射された光の一部を前記紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する複数の部分反射部と、前記複数の部分反射部によって反射された光に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する判別部とを備える。
【0014】
第2の態様に係る判別装置は、単一の光源から放射される光の光路上に配置されている全反射部と、光源と全反射部との間であって光路上に配置され、光源から放射された光の一部を紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する複数の部分反射部を備え、複数の部分反射部によって反射された光に基づいて搬送路における紙葉類の搬送状態を判別するので、単一の光源を用いて複数の分岐光を生成し、紙葉類の搬送状態の検出精度を向上させることができる。
【0015】
第2の態様に係る判別装置はさらに、各前記部分反射部に対応して前記搬送路を挟んで配置され、前記各部分反射部によって反射された光を受光して検出信号を出力する複数の受光部を備え、前記判別部は前記受光部から出力された検出信号に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別しても良い。この場合には、受光部から出力される検出信号に基づいて紙葉類の搬送状態を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例における紙葉類の搬送状態を判別する判別装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】本実施例の判別装置において紙葉類が正しく搬送される状態を示す説明図である。
【図3】本実施例の判別装置において紙葉類が傾いて搬送される状態を示す説明図である。
【図4】本実施例の判別装置におけるスキュー角の算出概念を示すための説明図である。
【図5】本実施例の判別装置において一部が欠損した紙葉類が搬送される状態を示す説明図である。
【図6】本実施例の判別装置において折れた紙葉類が搬送される状態を示す説明図である。
【図7】本実施例の判別装置によって実行される判別処理における処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】本実施例に係る判別装置を含む紙葉類取引装置の内部概略構成を示す説明図である。
【図9】本実施例に係る判別装置の第1の他の態様を示す説明図である。
【図10】本実施例に係る判別装置の第2の他の態様を示す説明図である。
【図11】本実施例に係る判別装置の第3の他の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
紙葉類の搬送状態を判別する判別装置の構成:
図1は紙葉類の搬送状態を判別する判別装置の概略構成を示す説明図である。本実施例に係る紙葉類の搬送状態を判別する判別装置10(以下。「判別装置」という。)は、光源100、ビームスプリッタ110、全反射ミラー120、受光センサ130a、130b、制御部20を備えている。
【0018】
光源100は、搬送状態を判別するために用いられる検出光を照射する単一の光源である。光源100としては、例えば、発光ダイオード、ハロゲン電球、クリプトン電球、レーザー発振器(レーザー光)といった種々の光源を用いることができる。また、発光ダイオードとしては、白色発光ダイオード、赤外発光ダイオードを用いることができる。一般的に、赤外光を用いる場合には、光路上に存在する、ほこり等の影響による検出精度の低下を抑制できることが知られている。
【0019】
本実施例では、入射された光の一部を透過して出射光として放射し、一部を反射する特性を有する部分反射部として、ビームスプリッタ110が用いられる。部分反射部は、光分岐器、光分離器と呼ぶことも可能であり、板状または直方(立方)体状の形状を有し得る。ビームスプリッタ110は、入射面に対して約45度の角度で入射光が入射するように配置されており、入射光の光軸と出射光(反射光)の光軸とは約90度で交差する。本実施例に係るビームスプリッタ110は、例えば、透明な一対のガラス板または樹脂板の一方の接合面に誘電体多層膜、金属薄膜をコーティングすることによって得ることができ、ハーフミラーと呼ぶこともできる。あるいは、接合面に薄膜処理が施された2つのプリズムを接合することによっても、ビームスプリッタをえることができる。また、薄膜の特性を調整することによって、ビームスプリッタ110が有する透過率および反射率の割合を任意の割合に変更することができる。なお、透過率および反射率はそれぞれ独立して規定することができる。本実施例では、検出精度を向上させるため、ビームスプリッタ110による反射光R1の光量と、ビームスプリッタ110を透過した透過光T1に基づく全反射ミラー120による反射光R2の光量とが等しくなるように、入射光E1に対するビームスプリッタ110の反射率・透過率が調整されている。また、後述する、複数のビームスプリッタ110が備えられる態様においては、各ビームスプリッタ110による反射光と、全反射ミラー120による反射光の光量とが、それぞれ等しくなるように各ビームスプリッタ110の反射率・透過率が調整されている。
【0020】
本実施例では、入射光の全量を反射して出射光として放射可な全反射部として、全反射ミラー120を用いている。全反射ミラーは、入射光の全量を反射して出射光として放射可能なミラーであり、ガラス板または樹脂板に対して金属薄膜を接合・蒸着形成することによって得ることができる。すなわち、全反射ミラーは、損失を考慮しない場合、透過率0%・反射率100%のミラーということができる。全反射ミラー120は、入射面に対して45度の角度で入射光が入射するように配置されており、入射光の光軸と出射光(反射光)の光軸とは約90度で交差する。なお、全反射部としては、この他に鏡面加工された金属板を用いることができる。
【0021】
本実施例では、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120は単一光源である光源100の光路(光軸)上に配置されている。また、ビームスプリッタ110は、光源100と全反射ミラー120との間に配置されている。すなわち、単一光源である光源100から放射される光を、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120によって複数の光(検出光)に分岐することができる。本実施例では、光源100により形成される光路(ビームスプリッタ110と全反射ミラー120とを結ぶ線)が、被検出物、すなわち、紙葉類の搬送方向と交差、より具体的には直交するように配置されている。また、ビームスプリッタ110と全反射ミラー120との間隔は、搬送方向と交差する紙葉類の寸法よりも小さくなるように設定されている。
【0022】
受光センサ130a、130bは、それぞれ、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120から出射される反射光が90度の角度にて入射するように、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120の直下に配置されている。受光センサ130a、130bは、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタといった光電変換素子であり、入射光の強度(光量)に応じた電流値を出力する。本実施例では、紙葉類Pは長手方向が搬送方向Dと直交するように搬送されるので、受光センサ130a、130bは、それぞれ、紙葉類Pの長手方向の両端部の通過を検出する。なお、受光センサ130a、130bは、便宜上、第1の受光センサ130a、第2の受光センサ130bと呼んでも良い。
【0023】
制御部20は、光源100の点灯制御、受光センサ130a、130bからの検出信号に基づいた紙葉類の搬送状態の判別、その他判別装置の動作を制御する。制御部20は、A/D変換器21と判別部22とを備えている。
【0024】
A/D変換器21は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。すなわち、本実施例において、受光センサ130a、130bから制御部20に入力される検出信号はアナログ信号であり、一方、判別部22は離散値を扱うデジタル回路であるからアナログ信号は、例えば、8ビット(0〜255)の離散値を有するデジタル信号に変換されなければならない。A/D変換器21によって変換されたデジタルな検出信号は判別部22に入力される。
【0025】
判別部22は、CPU(演算部)およびCPUによって実行される搬送状態の判別プログラムを格納するメモリ、A/D変換器21および他の回路と信号をやりとりするための入出力インターフェースを備えている。判別部22は、例えば、検出信号が所定のしきい値よりも大きな値の場合には、紙葉類が受光センサ130a、130bを通過して(覆って)反射光R1、R2を遮断したと判断し、検出信号が所定のしきい値以下の値の場合には、紙葉類が受光センサ130a、130bを通過しておらず(覆っておらず)反射光R1、R2を遮断していないと判断する。なお、以下では、検出信号が所定のしきい値よりも大きな値の場合を検出信号がダークな状態、検出信号が所定のしきい値以下の値の場合を検出信号がライトな状態、と呼ぶ。ここで、判別部22はハードウェア的な論理回路によって構成されていても良い。
【0026】
判別部22から出力される搬送状態の判別結果は、例えば、判別装置10が備える図示しない表示装置に判別結果を表示するために用いられ、判別装置10が備える図示しないログ記憶部に格納され、あるいは、判別装置10が備える搬送異常を修正するための修正手段を作動させるために用いられる。
【0027】
紙葉類の搬送状態:
図2は本実施例の判別装置において紙葉類が正しく搬送される状態を示す説明図である。図3は本実施例の判別装置において紙葉類が傾いて搬送される状態を示す説明図である。図4は本実施例の判別装置におけるスキュー角の算出概念を示すための説明図である。
本実施例における紙葉類Pは、長辺と短辺とを有する長方形の形状を有しており、図2に示すように、長辺が搬送方向と交差する向きで搬送路30を搬送される。より具体的には、搬送路30は、例えば、図示しない一対の駆動輪に懸架されている平行なベルト31a、31bを備えている。なお、駆動輪は、例えば、モータによって直接または間接的に駆動される。紙葉類Pはベルト31a、31b上に載置されて搬送される。受光センサ130a、130bは、搬送路30の下方に配置されており、搬送路30における紙葉類Pの搬送を検出することができる。本実施例では、既述のように、紙葉類Pの長手方向両端部の通過の有無が、受光センサ130a、130bによって検出される。なお、紙葉類Pの長手方向両端部とは、紙葉類Pの最両端部のみを意味するものでなく、紙葉類Pの中心よりも端部よりの任意の部分を意味することはいうまでもない。
【0028】
図2から理解されるように、本実施例において、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120、並びに対応する受光センサ130a、130bは、紙葉類Pの長手方向に平行に配置されている。あるいは、紙葉類Pは、その長手方向が、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120、並びに対応する受光センサ130a、130bに対して平行をなすように搬送される。
【0029】
紙葉類Pは、搬送途中で、図3に示すように、その長手方向が、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120、並びに対応する受光センサ130a、130bに対して平行でなくなることがある(符号P’で示す)。すなわち、紙葉類Pは、一般的にスキューと呼ばれる搬送状態P’を取ることがある。
【0030】
搬送時にスキューが発生した場合、各受光センサ130a、130bによる紙葉類Pの通過検出タイミングに時間差が生じる。すなわち、図3の例では、端部P1が先に受光センサ130bに入射している検出光を遮るため、制御部20は受光センサ130bからの検出信号としてダークな検出信号を受信する。遅れて、端部P2が先に受光センサ130aに入射している検出光を遮るため、制御部20は受光センサ130aからの検出信号としてダークな検出信号を受信する。また、端部P1が先に受光センサ130bを通過し終わるため、制御部20は受光センサ130bからの検出信号としてライトな検出信号を受信する。遅れて、端部P2が先に受光センサ130aを通過し終わるため、制御部20は受光センサ130aからの検出信号としてライトな検出信号を受信する。したがって、受光センサ130aおよび130bにおけるライトからダークへの検出信号の変化の時間差に基づいてスキューの発生、すなわち、紙葉類Pの搬送状態としてスキュー状態が発生していることを、判別することができる。
【0031】
更に、受光センサ130aおよび受光センサ130bの少なくともいずれか一方におけるダークからライトへの検出信号の変化に要した時間を用いることによって、図4に示すスキュー角θを算出することができる。具体的には、スキューが発生していない状態(正常な搬送状態)では、受光センサ130a、130bを横切る紙葉類Pの長さL1は、紙葉類Pの短辺長さに相当する。これに対して、スキューが発生している搬送状態では、受光センサ130a、130bを横切る紙葉類Pの長さL2は長くなる。したがって、正常時における基準長さL1を予め用意しておき、受光センサ130a、130bにおける検出信号がダークからライトへ変化するために要する時間と搬送速度とから算出された長さL2とを用いることで、コサイン角、すなわち、スキュー角θが求められる。なお、受光センサ130a、130bの双方を用いてスキュー角θを求め、その平均を取ることによって更にスキュー角θの検出精度を向上させることができる。
【0032】
図5は本実施例の判別装置において一部が欠損した紙葉類が搬送される状態を示す説明図である。一部が欠損した紙葉類Pa、すなわち、破損した紙葉類Paに対する受光センサ130a、130bの検出パターンは、一方の受光センサ130aにおいて紙葉類Paの通過が検出された(破損した紙葉類Paの先端部による検出光の遮断:検出信号のライトからダークへの変化、破損した紙葉類Paの後端部による検出光の遮断終了:制御信号のダークからライトへの変化)にもかかわらず、他方の受光センサ130bにおいてスキュー状態時に見込まれる時間遅れを超えて、紙葉類Paの通過を検出できない(検出信号がライトのまま)パターンとなる。したがって、図5の例において、一方の受光センサ130aによって紙葉類Paの通過が検出されたにもかかわらず、他方の受光センサ130bによって紙葉類Paの通過を検出できない場合には、破損状態にある紙葉類が搬送されていると判別することができる。
【0033】
図6は本実施例の判別装置において折れた紙葉類が搬送される状態を示す説明図である。紙葉類Pbが折れ曲がった状態で搬送されている場合、折れ曲がった紙葉類Pbに対する受光センサ130a、130bの検出パターンは、一方の受光センサ130bにおける紙葉類Paによる検出光の遮断、他方の受光センサ130aにおける紙葉類Pbによる遅れた検出光の遮断、両受光センサ130a、130bにおける、同一タイミングでの紙葉類Pbによる検出光の遮断終了というパターンとなる。したがって、図6の例において、受光センサ130a、130bによる紙葉類Pbの先端部の通過が時間差で検出され、紙葉類Pbの後端部の通過完了が同時に検出された場合には、折れ曲がり状態にある紙葉類が搬送されていると判別することができる。
【0034】
なお、スキューの場合には、各受光センサ130a、130bによるライトからダーク状態への変化検出後、ダークからライト状態への変化検出までに要する時間は同じであるのに対し、折れ曲がりの場合には、各受光センサ130a、130bによるライトからダーク状態への変化検出後、ダークからライト状態への変化検出までに要する時間が異なる。したがって、搬送状態がスキュー状態であるか折れ曲がり状態であるかを判別することができる。
【0035】
図7は本実施例の判別装置によって実行される判別処理における処理ルーチンを示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、紙葉類の搬送開始信号の入力を待って、制御部20の判別部22によって実行される。なお、紙葉類の搬送開始信号は、例えば、紙葉類投入部に対する紙葉類の投入の検出により、あるいが、紙葉類の投入を指示するための操作パネルからの指示入力によって、制御部20に入力される。
【0036】
判別部22は、受光センサ130a、130bからの検出信号の入力を待機し(ステップS100:No)、受光センサ130a、130bから検出信号が入力されると(ステップS100:Yes)、搬送状態の判別を実行する(ステップS110)。検出信号の入力の有無は、例えば、受光センサ130a、130bのいずれか一方から判別部22に対して入力される検出信号がライトからダーク状態へ変化の有無を判断することによって実現される。すなわち、紙葉類Pが搬送されているか(存在するか)否かを検出しているということができる。
【0037】
判別部22による搬送状態の判別は、受光センサ130a、130bのいずれか一方から入力された検出信号がライトからダークへ変化した後に、各受光センサ130a、130bから判別部22に入力される検出信号が示すパターンに基づいて実行される。検出信号が示すパターンを取得、判別するため、判別部22は、少なくとも、ライトからダークへ変化した検出信号を出力した受光センサから、再びライト状態を示す検出信号が入力されるまでの時間を計測する。判別部22はまた、他方の受光センサからもライトからダークへ変化する検出信号が入力された場合には、当該受光センサについても、再びライト状態を示す検出信号が入力されるまでの時間を計測する。
【0038】
判別部22による具体的な判別処理について説明する。検出信号が示すパターンの一例は上述の通りであり、各受光センサ130a、130bから入力される検出信号が、同様のタイミングにてライト−ダーク−ライトと変化する場合には、判別部22は、紙葉類Pの搬送状態は正常であると判別する。各受光センサ130a、130bから入力される検出信号が、異なるタイミングにてライト−ダーク−ライトと変化する場合には、判別部22は、紙葉類Pの搬送状態はスキュー状態にあると判別すると共に、スキュー角θを算出する。
【0039】
受光センサ130a、130bのうち、一方のみから検出信号が入力され、入力された検出信号がライト−ダーク−ライトと変化する場合には、判別部22は、紙葉類Pの搬送状態は破損紙葉類の搬送状態にあると判別する。各受光センサ130a、130bから入力される検出信号が、異なるタイミングにてライト−ダークと変化し、同様のタイミングにてダーク−ライトと変化する場合には、判別部22は、紙葉類Pの搬送状態は折れ曲がり紙葉類の搬送状態にあると判別する。
【0040】
判別部22は紙葉類の搬送状態の判別を完了すると、判別結果を出力する。制御部20は、出力された判別結果に応じた処理を実行して(ステップS120)、本処理ルーチンを終了する。出力された判別結果に応じた処理としては、判別装置10が備える図示しない表示装置に判別結果を表示するために用いられ、判別装置10が備える図示しないログ記憶部に格納され、紙葉類Pの搬送の停止判断に用いられ、あるいは、判別装置10が備える搬送異常を修正するための修正手段を作動させるために用いられる。表示装置に表示される場合、ログとして記憶される場合には、保守担当者によって、搬送路30の調整、清掃等が行われ、ジャムの発生が未然に防止される。紙葉類Pの搬送の停止(中断)は、例えば、算出されたスキュー角θが基準角度よりも大きく、良好な紙葉類Pの搬送を継続できない可能性がある場合に、搬送路30を停止させることによって実行される。判別装置10が備える修正手段が作動される場合には、例えば、紙葉類Pのスキュー角θが基準値よりも大きい場合に、搬送路30を構成する一方のベルト31a、31bの搬送速度の調整等を実行して紙葉類のスキューを直す処理が実行される。
【0041】
この他にも、搬送路30を逆向きに作動させて、紙葉類を紙葉類の投入光まで逆向きに搬送する処理が実行されても良い。また、紙葉類の搬送状態が破損紙葉類の搬送状態にある場合には、正常な紙葉類とは異なる場所(収容部)に搬送しても良い。さらに、紙葉類の搬送状態が折れ曲がり紙葉類の搬送状態にある場合には、搬送状態に異常があるとして、搬送路30を停止させ、紙葉類の搬送を停止させても良い。なお、紙葉類の搬送状態として複数の正常でない搬送状態が発生している場合には、上記各処理から必要な処理を選択して実行するようにしても良い。加えて、紙葉類Pの搬送状態が、小さなスキュー角状態、軽微な折れ曲が状態である場合、紙幣類P搬送を停止することなく、正常な紙葉類として搬送を継続しても良い。
【0042】
本実施例に係る判別装置の適用例:
図8は本実施例に係る判別装置を含む紙葉類取引装置の内部概略構成を示す説明図である。本実施例に係る判別装置10は、例えば、紙葉類取引装置に対して適用することができる。図8に示す紙葉類取引装置60は、搬送路30によって接続されている、紙葉類投入部61、判別装置10および紙葉類収納部62を備えている。紙葉類投入部61が備える投入口に投入された紙葉類は、送り出し機構によって搬送路30に導かれる。搬送路30に導かれた紙葉類は、搬送路上を搬送された状態で判別装置10を通過し、紙葉類収納部62に収容される。
【0043】
なお、紙葉類取引装置60が、現金自動預け払い機である場合には、紙葉類取引装置60は、紙葉類P、すなわち、紙幣の鑑別装置63を備えていても良い。また、この場合には、紙葉類投入部61は、紙幣の投入(預け入れ)および紙幣の払い出しを実行する紙幣預け払い出し部となる。
【0044】
以上説明した本実施例に係る判別装置10によれば、単一の光源100を用いて複数の検出光生成し、紙葉類Pの搬送状態を検出することができる。したがって、複数の検出光を用いて検出された検出信号のパターンに応じて紙葉類Pの搬送状態を判別することが可能となり、検出精度を向上させることができる。
【0045】
また、単一の光源100を用いるので、複数の光源を用いる場合に必要とされる各光源に対する配線、配置用部材が削減され、また、各光源を制御する制御回路が削減されるので、コンパクトで構成の簡易であると共に検出精度の高い判別装置10を実現することができる。したがって、判別装置10の実装にあたって、実装スペースの制約を受けることなく実装することが可能となり、判別装置10の実装機会を増大させることができる。この結果、従来、判別装置10を実装できなかった紙葉類取扱装置における紙葉類Pの搬送トラブルを低減させることができる。
【0046】
その他の実施例:
(1)図9は本実施例に係る判別装置の第1の他の態様を示す説明図である。なお、ビームスプリッタ110bおよび対応する受光センサ130cを備える点を除いて図1に示す判別装置10と同様の構成を備えているので、同一の構成に対しては図1における符号と同一の符号を付すことでその説明を省略する。上記実施例では、一のビームスプリッタ110が用いられる場合について説明したが、図9に示すように、複数のビームスプリッタ110a、110bが用いられても良い。なお、図9では説明簡単にするため、2個のビームスプリッタを用いているが、3個以上であっても良いことはいうまでもない。ビームスプリッタの数を増やすことは、受光センサの数を増やすことにもなり、結果として検出点が増加して搬送状態に関する判別結果を向上させることができる。この態様では、光源100から放射された入射光E1は、ビームスプリッタ110aによって反射光R1と透過光T1とに分離される。ビームスプリッタ110aからビームスプリッタ110bに入射された透過光T1は、ビームスプリッタ110bによって反射光R3と透過光T2とに分離される。ビームスプリッタ110bから全反射ミラー120に入射された透過光T2は、全反射ミラー120によって反射光R1として反射される。この態様を採る場合、各ビームスプリッタ110a、110bおよび全反射ミラー120によって反射されることによって得られる各検出光の光量が同様になるように、反射率および透過率が調整(設定)された各ビームスプリッタ110a、110bが用いれる。複数のビームスプリッタ110を備えることによって、検出ポイントが増大することとなり、紙葉類の搬送状態をより精度良く判別することができる。なお、ビームスプリッタ110a、110bは、便宜上、第1のビームスプリッタ110a、第2のビームスプリッタ110bと呼んでも良い。
【0047】
(2)図10は本実施例に係る判別装置の第2の他の態様を示す説明図である。なお、ビームスプリッタ110bおよび対応する受光センサ130cを備え、全反射ミラー120に代えてビームスプリッタ110cを備える点を除いて図1に示す判別装置10と同様の構成を備えているので、同一の構成に対しては図1における符号と同一の符号を付すことでその説明を省略する。上記実施例では、単一の光源100から放射される光束は、最遠端に配置されている全反射ミラー120によって最終的に全反射されていたが、全反射ミラー120に代えて、ビームスプリッタ110cが用いられても良い。なお、図10では説明簡単にするため、3個のビームスプリッタを用いているが、4個以上であっても良いことはいうまでもない。ビームスプリッタの数を増やすことは、受光センサの数を増やすことにもなり、結果として検出点が増加して搬送状態に関する判別結果を向上させることができる。この態様では、光源100から放射された入射光E1は、ビームスプリッタ110aによって反射光R1と透過光T1とに分離される。ビームスプリッタ110aからビームスプリッタ110bに入射された透過光T1は、ビームスプリッタ110bによって反射光R3と透過光T2とに分離される。ビームスプリッタ110bからビームスプリッタ110cに入射された透過光T2は、ビームスプリッタ110cによって反射光R4と透過光T3とに分離される。例えば、光源100を種々の判別装置間で共通して用いる場合、光源100から出力される光量と受光センサが許容する光量との関係から、最終段である全反射ミラーにおける反射光の光量が多すぎる場合がある。このような場合には、最終段にビームスプリッタ110cを適用することによって、ビームスプリッタ110cに入力された光の一部(透過光T3)を透過し(外部系に放出し)、必要な光量の反射光を得ることができる。この場合には、光源100を種々の判別装置に対する共通モジュールとして用いることが可能となり、判別装置毎に適した光量を実現するために光源回路を調整する必要がないという利点を有する。なお、ビームスプリッタ110a〜110cは、便宜上、第1のビームスプリッタ110a、第2のビームスプリッタ110b、第3のビームスプリッタ110cと呼んでも良い。
【0048】
(3)図11は本実施例に係る判別装置の第3の他の態様を示す説明図である。上記実施例では、その長手方向が搬送方向と交差する向きで紙葉類Pが搬送される場合を例にとって説明したが、紙葉類Pは、長手方向と搬送方向とが平行(一致)するように搬送されても良い。この場合には、紙葉類Pの通過の有無、紙葉類Pの長さを検出することができる。また、紙葉類Pの長さに応じて紙葉類Pの種別を判別することもできる。
【0049】
(4)上記実施例では、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120を用いて説明したが、反射率と透過率を調整できる光学部材、入射光の全量を反射光として出力可能な光学部材であれば他の部材が用いられても良い。すなわち、各受光センサ130に対する検出光としての入射光の光量が同一または同等となれば良い。
【0050】
(5)上記実施例では、紙葉類Pの長手方向と、光源100の光路(光束、光軸)が直角に交差する場合を例にとって説明したが、紙葉類Pの長手方向と、光源100の光路(光束、光軸)が直角以外の角度で交差するように、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120、搬送路30が配置されても良い。この場合には、各受光センサ130のオフセット量に応じた検出信号の応答遅れを予め求めておくことで、上述した各判別パターンに対応することができる。したがって、実装スペースに応じて判別装置10を配置することができる。
【0051】
(6)上記実施例では、各受光センサ130a、130bが搬送路30の下方、すなわち、紙葉類Pによって検出光が遮られる位置に配置され、ビームスプリッタ110および全反射ミラー120からの入射光を直接受光している。しかしながら、各受光センサ130a、130bをビームスプリッタ110および全反射ミラー120側、すなわち、搬送路30の上方に配置して、紙葉類Pから反射される反射光を受光するようにしても良い。この場合には、検出光を出力するビームスプリッタ110および全反射ミラー120と、検出光が入力される受光センサ130a、130bとを一体のモジュールとすることが可能となり、例えば、搬送路30の下方に受光センサ130a、130bを配置する十分なスペースが存在しない等といった実装スペースに応じた判別装置10の組み込みを容易にすることができる。なお、紙葉類Pからの反射光光量と搬送路30下方の面からの反射光光量との光量差を十分な差とするために、搬送路30下方の面には反射防止処理(光吸収処理)または反射率の低い部材が用いられることが望ましい。
【0052】
この構成を取る場合、搬送路30の下方に、全反射ミラーを配置することによって、紙葉類Pが存在しない場合における全反射ミラーからの反射光と、紙葉類Pが存在する場合における紙葉類Pからの反射光とを用いて、判別処理が実行されても良い。この構成を取ることによって、紙葉類Pが存在しない場合の反射光光量と、紙葉類が存在する場合の反射光光量との差を十分な差にすることができるので検出精度を向上させることができると共に、上述した実施例と同様の判別フローを採用することができる。
【0053】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10…判別装置
20…制御部
21…A/D変換器
22…判別部
30…搬送路
31a、31b…ベルト
60…紙葉類取引装置
61…紙葉類投入部
62…紙葉類収納部
63…鑑別装置
100…光源
110…ビームスプリッタ
110a…ビームスプリッタ
110c…ビームスプリッタ
120…全反射ミラー
130a、130b、130c…受光センサ
D…搬送方向
P、P’、Pa、Pb…紙幣類
P1…端部
P2…端部
E1…入射光
R1…反射光
R2…反射光
T1…透過光
θ…スキュー角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送状態を判別する判別装置であって、
単一の光源と、
前記単一の光源から放射される光の光路上に配置され、全入射光を反射光として放射する全反射部と、
前記光源と前記全反射部との間であって前記光路上に配置され、前記光源から放射された光の一部を前記紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する少なくとも1つの部分反射部と、
前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって反射された光に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する判別部と
を備える判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判別装置はさらに、
前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部に対応して前記搬送路を挟んで配置され、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって反射された光を受光して検出信号を出力する複数の受光部を備え、
前記判別部は前記受光部から出力された検出信号に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する、判別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の判別装置において、
前記少なくとも1つの部分反射部の透過率または反射率は、前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部によって前記搬送路に向けて反射される各光の光量が予め定められた範囲の値となるよう設定されている、判別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の判別装置において、
前記紙葉類は長辺と短辺を有し、前記搬送路と前記長辺とが交差するように搬送され、
前記少なくとも1つの部分反射部および前記全反射部は、前記搬送路を搬送される前記紙葉類の長手方向の両端部に対して垂直な光を反射するようにそれぞれ配置されており、
前記判別部は、前記複数の受光部からの検出信号に基づいて前記紙葉類の搬送状態を判別する、判別装置。
【請求項5】
紙葉類の搬送状態を判別する判別装置であって、
単一の光源と、
前記単一の光源から放射される光の光路上に配置され、前記光源から放射された光の一部を前記紙葉類が搬送される搬送路に向けて反射する複数の部分反射部と、
前記複数の部分反射部によって反射された光に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する判別部と
を備える判別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の判別装置はさらに、
各前記部分反射部に対応して前記搬送路を挟んで配置され、前記各部分反射部によって反射された光を受光して検出信号を出力する複数の受光部を備え、
前記判別部は前記受光部から出力された検出信号に基づいて前記搬送路における前記紙葉類の搬送状態を判別する、判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−246239(P2011−246239A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121441(P2010−121441)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】