説明

紙葉類の重なり検知装置

【目的】 1個のセンサで、複数位置での紙厚異常を見ることができ、構成、制御が簡単な低コストの紙葉類の重なり検知装置を得る。
【構成】 基準ローラ1には、検知ローラ21が接触しており、さらに、検知ローラ21の中心軸である中心軸シャフト3にはもう1個の検知ローラ22が取付けられる。中心軸シャフト3には変換レバー4が取り付けられ、該レバー4は角度センサ5と連結され、中心軸シャフト3は角度センサ5の軸を中心に揺動可能である。変換レバー4の一端には、押付バネ6が設けられ、各検知ローラを基準ローラ1に一定の力で押付ける。また、角度センサ5、変換レバー4、中心軸シャフト3によって形成するリンク機構は、十分に剛とし、揺動によって、各検知ローラの相対位置は変化しない。紙幣8は搬送ベルト7に挟持され搬送される。これにより、各ローラ下の紙厚が相違しても、常に厚い方の紙厚が検知される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば現金自動取引装置に用いられる、紙幣鑑別装置等において、紙幣の搬送状態が、正常な状態なのか、重なり状態なのかを検知する。紙葉類の重なり検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術においては、例えば特開昭59−60592公報記載の様に、1ケ所の厚さ計測部位に対して、常に1個の厚さ検出手段を有し、検出のために基準ローラに接する検出ローラ、検出レバーの幅も検出精度を上げるため紙幣の幅に比べて十分小さなもの(例えば、1cm以下)であった。しかしながら、実際の使用条件において、搬送される紙葉類の状態、たとえば半折れ(図2、図3の紙幣の重なり状態81、82参照)などを考慮した場合、厚さ検知部位が1ケ所の場合には必ずしも確実な重なり検知が行えない。一方、検知部位に配される検出ローラの幅を大きくすれば検出精度を上げることができず、また、厚さ検知部位を複数設けた場合においては、厚さの計測手段も同数設けなければならないため、構成、制御が複雑になるという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、紙葉類の重なり検知をより確実にするために、厚さの計測部位を複数箇所設けた場合においても、変位計測手段の個数を増加させることのない、構成、制御の簡単な、紙葉類の重なり検知装置を得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、厚さ基準部材と、前記厚さ基準部材に対して変位可能な中心軸を共有する複数の検知ローラ設け、その複数の検知ローラの相対位置が不変となるようにしている。また、複数の検知ローラの内の一端の検知ローラと厚さ基準部材との間に取扱紙葉の最小厚さ以下の隙間が設けられるように検知ローラの位置を調整している。
【0005】
【作用】本発明は、上記のような構成としたため、各々の検知ローラに異なった厚さ(状態)の紙葉類が進入してきた場合、常に最大の紙厚が計測され、これにより紙葉類の重なりが検知される。また、一端の検知ローラについてはその検出精度を考慮しなくてもよいため、検知装置の検出精度の向上を容易に行なうことができる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施例である紙幣の重なり検知装置の概略図である。厚さ基準部材として基準ローラ1が用いられ、その外周面を紙幣厚さの基準面とするローラであり、紙幣8を搬送する搬送ベルト7が掛渡され、この搬送ベルト7の走行にしたがって回転する。この基準ローラ1には、検知ローラ21が接触しており、さらに、前記検知ローラ21の中心軸である中心軸シャフト3にはもう1個の検知ローラ22が取付けられている。中心軸シャフト3には変換レバー4が取り付けられ、中心軸シャフト3は、変換レバー4を介して角度センサ5と連結され、角度センサ5の軸を中心に揺動可能となっている。変換レバー4の一方の端には、押付バネ6が設けられ、検知ローラ21、22を基準ローラ1に一定の力で押付けている。また、角度センサ5、変換レバー4、中心軸シャフト3によって形成するリンク機構は、十分に剛となるようにし、揺動によって、検知ローラ21,22の相対位置は変化しない。搬送ベルト7は、紙葉類8(以下、紙葉類を紙幣として説明する)を挟持して搬送する。
【0007】上記の構成による紙幣の厚さ計測について説明する。紙幣8が搬送ベルト7によって、基準ローラ1と検知ローラ21,22の間に送り込まれると、進入してきた紙幣の厚み分だけ中心軸シャフト3が移動する。このとき検知ローラ21と22との位置関係は不変である。この中心軸シャフト3の移動によって、変換レバー4が傾き、この傾きに応じて角度センサ5の軸が回転し、これにより電圧出力が角度センサ5より出力され、この出力により厚さ計測が行なわれる。実施例で検知ローラを2個設けているが、対象となる種々の紙葉類の寸法に応じて3個以上の検知ローラを設けてもよい。
【0008】図2は、検知ローラ21側で2ツ折れ券と通常券とが重なった紙幣81が進入した場合、図3は、検知ローラ22側で2ツ折れ券と通常券が重なった紙幣82が進入した場合を示した概略図である。このときの角度センサ5の出力は、いずれの場合においても紙幣3枚分の厚さに相当する出力となる。すなわち、紙幣搬送路の幅方向において紙幣の重なりが異なる状態が生じても、常に重なりの大きな状態に相当する出力がえられ、紙幣の重なりを見落とすことがなくなる。
【0009】次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例である紙幣の重なり検知装置の構成は、第1の実施例の紙幣の重なり検知装置の構成とほぼ同じであるが、次のような違いがある。すなわち、第1の実施例では、検知ローラ21と検知ローラ22は共に基準ローラ1に接しているが、第2の実施例では、検知ローラ21は基準ローラ1に接するように配置されるが、検知ローラ22は、基準ローラ1との間に取扱紙幣の最小厚さ以下の隙間を持つように調整され配置される。こうすることにより、第1の実施例では、検出精度を上げるために、検知ローラ21と基準ローラ1との接触面および検知ローラ22と基準ローラ1との接触面において生ずる所謂“ガタ”を共に無くさなければならないが、第2の実施例では、検知ローラ21と基準ローラ1との接触面において生ずる“ガタ”を無くせばよく、検出精度の向上を容易に行なうことができる。
【0010】第2の実施例では、紙幣が、その両端部が搬送ベルトにかかった状態で搬送された場合には、紙幣が正常に1枚搬送されても、複数枚重なった状態で搬送されても、角度センサ5の出力は、検知ローラ21に進入した紙幣の紙厚に相当する出力となり、紙幣の重なりを確実に検出することができる。次に、検知ローラ21と検知ローラ22に、それぞれ異なった状態(厚さ)の紙幣が進入した場合について説明する。ローラ21側に進入した紙幣の状態(厚さ)が、ローラ22に進入した紙幣の状態(厚さ)と隙間との差よりも大きな場合、角度センサ5の出力は、検知ローラ21に進入した紙幣の紙厚に相当する出力となる。逆にローラ21側に進入した紙幣の状態(厚さ)がローラ22側に進入した紙幣の状態(厚さ)と隙間との差よりも小さい場合には、角度センサ5の出力は、検知ローラ22側に進入した紙幣の紙厚と隙間との差に相当する出力となる。
【0011】図4は、検知ローラ21側で2ツ折れ券と通常券とが重なった紙幣81が進入した場合、図5は、検知ローラ22側で2ツ折れ券と通常券が重なった紙幣82が進入した場合を示した概略図である。このときの角度センサ5の出力は、前者が紙厚の3倍に相当する出力であるのに対し、後者は、紙厚の3倍から、隙間分を差し引いた量に相当する出力値となる。このセンサ出力を図6、図7に示す。ただし、ここで隙間は紙厚以下に調整しており、後者の出力が紙厚の2倍相当分より小さくなることはない。よって、後者の場合、2枚重ねとして認識が可能となる。4枚以上の重なりがある場合にもその重なりを検出することができることはいうまでもない。紙幣がジャムを起こすこと無く紙幣の重なり検知部を通過し、かつ検知ローラ21側での紙厚と検知ローラ22側での紙厚とに相違が生ずるケースは図2〜図5に示す2ツ折れ券と通常券が重なるケースがほとんどであり、このようなケースにおいて検知ローラ22側での紙厚の方が大きいときには、上記のように、2枚重ねとして認識が可能である。したがって、紙幣の重なりは、第2の実施例により充分検出することができる。なお、第1の実施例と同様に検知ローラを3個以上にしてもよく、この場合には、いずれかの端部の検知ローラと基準ローラの間に隙間を設ければよい。また、検知ローラ22と、基準ローラ1との隙間調整は、角度センサ5を取付ける調整ブラケット9を傾けることで調整を行う。調整部の概略図を図8に示す。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、紙葉類の半折れ等の状態が生じても、確実な重なり検知を行なうことができる。また、可動の検知ローラを複数箇所に設けた場合でも、検知ローラの変位量を測定するセンサの個数を1個とすることができ、構成、制御を簡単にすることができる。また、一端の検知ローラについてはその検出精度を考慮しなくてもよいため、検知装置の検出精度の向上を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である紙幣の重なり検知装置の概略図である。
【図2】重なり検知部に、半折れ券と通常券の重なり紙幣が進入した場合の概念図である。
【図3】重なり検知部に、半折れ券と通常券の重なり紙幣が進入した場合の概念図である。
【図4】重なり検知部に、半折れ券と通常券の重なり紙幣が進入した場合の第2の実施例の概念図である。
【図5】重なり検知部に、半折れ券と通常券の重なり紙幣が進入した場合の第2の実施例の概念図である。
【図6】第2の実施例におけるセンサ出力を表す図である。
【図7】第2の実施例におけるセンサ出力を表す図である。
【図8】隙間の調整部分の構造を示した図である。
【符号の説明】
1 基準ローラ
21,22 検知ローラ
3 中心軸シャフト
4 変換レバー
5 角度センサ
6 押付バネ
7 搬送ベルト
8 紙幣
9 調整ブラケット
10 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 厚さ基準部材と、検知ローラと、該検知ローラが一端に取り付けられた変換レバーと、該変換レバーと係合した角度センサと、検知ローラを厚さ基準部材に押し付ける部材を備え、前記厚さ基準部材と検知ローラの間を搬送される紙葉類の厚さを測ることにより紙葉類の重なりを検知する紙葉類の重なり検知装置において、前記変換レバーの一端にシャフトを取付け、該シャフトを中心軸として複数の前記検知ローラを間隔をあけて取付け、前記角度センサと変換レバーとシャフトによって形成されるリンク機構を十分に剛としたことを特徴とする紙葉類の重なり検知装置。
【請求項2】 請求項1記載の紙葉類の重なり検知装置において、前記シャフトに取付けられた複数の検知ローラの内の一端の検知ローラと前記厚さ基準部材との間に取扱紙葉の最小厚さ以下の隙間が設けられるよう前記一端の検知ローラの位置を調整したことを特徴とする紙葉類の重なり検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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