説明

紙葉類処理装置、および識別アルゴリズム更新プログラム

【課題】紙葉類の真偽を識別する識別精度を確保し、且つ、偽券リストの肥大化、および記番号による真偽の識別にかかる処理効率の低下を抑えることができる紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】主制御部10は、CDドライブ18にセットされたCDから識別アルゴリズムを読み出し(s21)、この識別アルゴリズムをインストールする(s22)。また、主制御部10は、CDドライブ18にセットされているCDに削除リストが記録されていると、その削除リストをCDから読み出す(s24)。主制御部10は、読み出した削除リストに登録されている記番号、金種を1つずつ読み出し、記番号、および金種が一致するものが記番号ブラックリストに登録されていれば、その記番号を記番号ブラックリストから削除する(s25〜s28)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣、小切手、証券等の紙葉類の真偽を、紙葉類の光学パターンや磁気パターン等の特徴量、および、その紙葉類に表記されている記番号、で判別する紙葉類処理装置、および、紙葉類の特徴量で真偽を識別する識別アルゴリズムを更新する識別アルゴリズム更新プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣、小切手、証券等の紙葉類を処理する紙葉類処理装置がある。紙葉類処理装置は、取り扱う紙葉類毎に、その紙葉類が真券であるか、偽造券(以下、偽券と言う。)であるかを識別している。例えば、銀行等の金融機関の店舗に設置されている現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)は、取り扱う紙幣毎に、その紙幣の光学パターンや磁気パターンを特徴量として検出し、検出した特徴量により紙葉類の真偽を識別している。
【0003】
また、ATMは、その紙幣から検出した光学パターンや磁気パターンにかかる特徴量を用いて偽券であると識別できない紙幣(偽券)であっても、偽券として識別するために記番号による識別を行っている。具体的には、ATMは、偽券に表記されている記番号を登録した偽券ブラックリストを記憶し、紙幣に表記されている記番号を偽券ブラックリストに登録されている記番号と照合して真偽を識別することを行っている。
【0004】
なお、警察等の関係機関が発見された偽券の記番号を金融機関に通知する。金融機関は、記番号が通知された紙幣(偽券)が、その時点において、その紙幣から検出した光学パターンや磁気パターンにかかる特徴量によって偽券であると識別できない場合、その記番号を偽券ブラックリストに登録する。
【0005】
さらに、紙幣に表記されている記番号に基づき、盗難紙幣であるかどうかを判定する装置(特許文献1参照)、紙幣に表記されている2つの記番号を読み取り、これら2つの記番号の文字列、および記番号の一致を判定する装置(特許文献2参照)、同じ記番号の紙葉類が複数の装置内に同時に存在しているかどうかをチェックし、偽券ブラックリストに登録されていない記番号の偽券をも識別可能とした装置(特許文献3参照)等もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−250546号公報
【特許文献2】特開2010−117803号公報
【特許文献3】特開2003−303367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金融機関は、上述したように、発見された時点において、その紙幣から検出した光学パターンや磁気パターンにかかる特徴量によって偽券であると識別できない偽券の記番号を偽券ブラックリストに追加登録するだけでなく、この偽券から検出した光学パターンや磁気パターンにかかる特徴量を用いて偽券であると適正に識別できる識別アルゴリズムの開発を行っている。そして、ATMにインストールされている識別アルゴリズムを、開発した識別アルゴリズムに更新することを行っている。したがって、ATMでは、偽券ブラックリストに登録されている記番号は、その記番号の偽券が光学パターンや磁気パターンにかかる特徴量を用いて偽券であると適正に識別できる識別アルゴリズムに更新されると不要になる。
【0008】
偽券ブラックリストは、登録されている不要になった偽券の記番号を削除することがなく、記番号が蓄積的に増加するだけであった。すなわち、偽券ブラックリストは、無駄な記番号(不要になった記番号)も登録されているので、そのサイズが無駄に大きい(肥大化する。)という問題があった。
【0009】
また、ATMは、読み取った紙幣の記番号を、偽券リストに登録されている全ての記番号と照合することにより、記番号による真偽の識別を行うので、偽券ブラックリストに登録されている記番号が増加するにつれて、真偽の識別に要する時間が増大する。すなわち、ATMは、不要になった記番号を偽券ブラックリストに登録していると、記番号による真偽の識別に要する時間が増大し、処理効率を低下させるという問題があった。
【0010】
この発明の目的は、紙葉類の真偽を識別する識別精度を確保し、且つ、偽券リストの肥大化、および記番号による真偽の識別にかかる処理効率の低下を抑えることができる紙葉類処理装置、および識別アルゴリズム更新プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の紙葉類処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0012】
特徴量検出部が、紙葉類の特徴量を検出する。特徴量検出部は、例えば、紙葉類の光学パターン(反射光パターン、透過光パターン)や、磁気パターンを特徴量として検出する。識別部は、特徴量検出部で検出した特徴量を用いて、インストールされている識別アルゴリズムにより当該紙葉類の真偽を識別する。識別部は、例えば、紙葉類から検出した特徴量と、予め記憶している真券の特徴量と、の類似度や、紙葉類から検出した特徴量と、予め記憶している偽券の特徴量と、の類似度を算出し、算出したそれぞれの類似度に基づいて紙葉類の真偽を識別する。
【0013】
記番号認識部が、紙葉類に表記されている記番号を認識する。判定部が、記番号認識部で認識した記番号が記憶部に記憶する偽券の記番号を登録した偽券リストに登録されているかどうかを判定する。
【0014】
したがって、紙葉類の特徴量からインストールされている識別アルゴリズムで偽券であると識別できない紙葉類(偽券)であっても、記番号が偽券リストに登録されている偽券については、偽券であると識別できる。
【0015】
また、識別アルゴリズム更新部が、識別アルゴリズムを更新したとき、この更新した識別アルゴリズムにより、識別部で偽券であることが識別できるようになった紙葉類(偽券)について、偽券リストに登録されている記番号を削除する。すなわち、紙葉類から検出した光学パターンや磁気パターン等にかかる特徴量を用いて真偽を識別する識別アルゴリズムを更新したときに、この更新した識別アルゴリズムで偽券であることが識別できる偽券の記番号を偽券リストから削除する。したがって、偽券リストに不要になった記番号が無駄に登録されつづけるのを防止し、偽券リストの肥大化、および記番号による真偽の識別にかかる処理効率の低下が抑えられる。
【0016】
識別アルゴリズム更新部は、例えば、更新する識別アルゴリズムとともに、偽券リストから削除する記番号を登録した削除リストを取得し、この削除リストを用いて偽券リストに登録されている不要な記番号を削除すればよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、偽券リストに不要になった記番号が無駄に登録されつづけるのを防止し、偽券リストの肥大化、および記番号による真偽の識別にかかる処理効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】銀行等の金融機関における自動入出金システムを示す概略図である。
【図2】ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。
【図4】紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】記番号ブラックリストを示す図である。
【図6】記番号ブラックリストに対する偽券の追加処理を示すフローチャートである。
【図7】紙幣識別処理を示すフローチャートである。
【図8】削除リストを示す図である。
【図9】識別アルゴリズムの更新時の動作を示すフローチャートである。
【図10】別の例のATMにかかる削除リストを示す図である。
【図11】別の例のATMにかかる識別アルゴリズムの更新時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、銀行等の金融機関における自動入出金システムを示す概略図である。この自動入出金システムは、ネットワーク6を介して、複数台の現金自動預け払い機1(以下、ATM1と言う。)をホスト装置5に接続している。ATM1は、金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置している。ATM1が、この発明で言う紙葉類処理装置に相当する。ホスト装置5は、金融機関のセンタに設置している。各ATM1は、ネットワーク6を介してホスト装置5と通信できる。
【0021】
ATM1は、利用者の入力操作に応じて、入金取引、出金取引等の各種取引を処理する。ホスト装置5は、金融機関に開設されている口座毎に、その口座にかかる口座情報を管理する。口座情報は、口座開設者の住所、氏名、連絡先電話番号、暗証番号、口座残高、取引履歴等である。また、ホスト装置5は、偽造紙幣(以下、偽券と言う。)の記番号を、ネットワーク6を介して接続されている各ATM1に通知する処理等も行う。
【0022】
図2は、ATMの主要部の構成を示すブロック図である。ATM1は、主制御部10と、表示・操作部11と、紙幣処理部12と、硬貨処理部13と、カード・明細書処理部14と、通帳処理部15と、生体情報読取部16と、通信部17と、CDドライブ18と、記憶部19と、を備えている。主制御部10は、ATM1本体各部の動作を制御する。
【0023】
表示・操作部11は、本体正面に設けた表示器、およびこの表示器の画面上に貼付したタッチパネル等を有している。表示・操作部11は、利用者に対する操作案内画面を表示器に表示する。また、表示・操作部11は、タッチパネルの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を検出する。また、表示・操作部11は、係員等が保守点検時に操作する表示デバイスや入力デバイスも備えている。
【0024】
紙幣処理部12は、入出金紙幣を処理する。本体正面には、入出金紙幣を収納する紙幣入出金口12aを設けている。この紙幣入出金口12aには、シャッタが設けられている。また、紙幣入出金口12aには、入金紙幣、出金紙幣、および返却紙幣の収納場所を区別する仕切り板が設けられている。紙幣処理部12は、このシャッタの開閉により、紙幣入出金口12aに対する紙幣の投入や取り出しを制限する。紙幣処理部12の詳細な構成については、後述する。
【0025】
硬貨処理部13は、本体正面に設けた硬貨紙幣入出金口と、本体内部に収納されている硬貨カートリッジと、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する。また、硬貨処理部13は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、および真偽を識別する硬貨識別部を有している。
【0026】
カード・明細書処理部14は、本体正面に設けたカード挿入口に挿入されたキャッシュカード(以下、単にカードと言う。)を取り込み、このカードの磁気ストライプに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。また、挿入されたカードがICカードである場合には、必要に応じて、そのカードのICチップに記録されているデータの読み取りや、書き換えを行う。ICチップには、このカードの所有者である利用者の生体情報(登録情報)等が記録されている。さらに、カード・明細書処理部14は、取引内容を明細書に印字する印字部を有する。カード・明細書処理部14は、取引内容を印字した明細書を本体正面に設けた明細書放出口に放出する。
【0027】
通帳処理部15は、本体正面に設けた通帳挿入口に挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部を有している。また、通帳処理部15は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。
【0028】
生体情報読取部16は、本体正面に設けた生体情報読取センサを有している。この生体情報読取センサは、利用者の指静脈パターンを読み取る。ここでは、生体情報読取センサとして、指静脈パターンを読み取るセンサを例にしているが、掌静脈、虹彩、網膜等の他の種類の生体情報を読み取るセンサとしてもよい。生体情報読取部16は、生体情報読取センサで読み取った利用者の生体情報(読取情報)と、カードのICチップに記録されている生体情報(登録情報)と、を照合し、その類似度から利用者とカードの所有者とが同一人物であるかどうかを認証する。
【0029】
通信部17は、ネットワーク6を介して、金融機関のホスト装置5との通信を制御する。CDドライブ18は、セットされたCDに記録されているプログラムやデータ等にかかるファイルを読み出す。また、セットされたCDに対して、本体に記憶しているプログラムやデータ等にかかるファイルを書き込む。
【0030】
記憶部19は、ハードディスク等の大容量の記憶媒体を有し、ATM1本体の動作制御に必要な各種プログラムや、後述する記番号ブラックリスト(この発明で言う偽券リストに相当する。)を記憶する。また、ATM1本体各部は、CPUや不揮発性のメモリを有する制御部を備え、動作時に必要なプログラムがインストールされている。主制御部10が、ATM1本体各部へのプログラムのインストールを行う。インストーラは、記憶部19に記憶されている。
【0031】
次に、紙幣処理部12の構成について説明する。図3は、紙幣処理部の内部構成を示す概略図である。紙幣処理部12は、金種別カートリッジ21〜24と、回収カートリッジ25とを内部に収納している。金種別カートリッジ21〜24、および回収カートリッジ25は、本体に対して着脱自在である。金種別カートリッジ21、22は、1万円紙幣を収納する。金種別カートリッジ23は、千円紙幣を収納する。金種別カートリッジ24は、2千円紙幣、および5千円紙幣を収納する。回収カートリッジ25は、取引に使用できないと判断した紙幣を収納する。金種別カートリッジ24に収納している紙幣(2千円紙幣、および5千円紙幣)、および回収カートリッジ25に収納している紙幣は出金紙幣として利用しない。このため、金種別カートリッジ24、および回収カートリッジ25については、紙幣の繰り出し機構を有していない構成であってもよい。
【0032】
また、紙幣処理部12は、入金紙幣等を一時的に収納し、保留する一時保留部26を有している。さらに、紙幣入出金口12a、金種別カートリッジ21〜24、回収カートリッジ25、一時保留部26を結ぶ紙幣搬送路27を有している。紙幣処理部12は、この紙幣搬送路27に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送部(不図示)を有している。また、紙幣搬送部は、紙幣搬送路27の分岐点等に設けられているフラッパを制御し、搬送している紙幣の搬送先を制御する。さらに、紙幣処理部12は、紙幣搬送路27に沿って搬送されている紙幣の金種、および真偽を識別する紙幣識別ユニット30を有している。紙幣識別ユニット30は、紙幣搬送路27に沿って搬送されている紙幣毎に、その紙幣から読み取った光学パターンや磁気パターン等の特徴量を用いて、その真偽を識別する。また、紙幣識別ユニット30は、紙幣に表記されている記番号の認識も行う。この紙幣識別ユニット30が、この発明で言う特徴量検出部、識別部、および記番号認識部を備える。
【0033】
図4は、紙幣識別ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。紙幣識別ユニット30は、制御部31と、光学センサ32と、磁気センサ33と、記番号認識部34と、識別部35と、記憶部36と、入出力部37と、を備えている。
【0034】
光学センサ32は、紙幣に照射した光の反射光、または透過光を検出し、紙幣の光学パターンを取得するとともに、その紙幣の画像を取得する。画像は、紙幣に記番号が表記されている領域が含まれていればよく、紙幣全体でなくてもよい。紙幣識別ユニット30は、光学パターンの取得と、画像の取得とを同じ光学センサ32で行う構成であってもよいし、光学パターンの取得を行う光学センサ32と画像の取得を行う光学センサ32とを個別に設けた構成であってもよい。
【0035】
磁気センサ33は、紙幣に使用されている磁気インクによる、紙幣の磁気パターンを取得する。
【0036】
記番号認識部34は、光学センサ32より取得した紙幣の画像(記番号が表記されている領域野画像)を処理し、紙幣に表記されている記番号を認識する。
【0037】
識別部35は、光学センサ32により取得した紙幣の光学パターン、および磁気センサ33により取得した紙幣の磁気パターンを用い、インストールされている識別アルゴリズムで、その紙幣の真偽を識別する。
【0038】
記憶部36は、紙幣の真偽の識別に用いるパラメータ等を記憶している。この紙幣の真偽の識別に用いるパラメータとしては、真券の光学パターン、および磁気パターンの特徴量や、偽券の光学パターン、および磁気パターンの特徴量等である。
【0039】
入出力部37は、識別部35における識別結果を紙幣処理部12に通知する。
【0040】
この紙幣識別ユニット30は、紙幣から読み取った光学パターン、および磁気パターンにより、その紙幣の金種、および真偽を識別するが、記番号に基づく真偽の識別については、主制御部10で行う。
【0041】
図5は、記番号ブラックリストを示す図である。この記番号ブラックリストは、記憶部19に記憶している。図5に示すように、この記番号ブラックリストは、偽券毎にその偽券に表記されている記番号と、金種と、を対応づけて登録している。金種は、ISO4217で定義される通過コード(日本円の場合:JPY)と金額との組合せである。
【0042】
以下、この実施形態のATM1の動作について説明する。
【0043】
図6は、記番号ブラックリストに対する偽券の追加処理を示すフローチャートである。警察等の関係機関が発見された偽券の記番号および金種を金融機関に通知する。金融機関は、ホスト装置5に接続されている全てのATM1で、発見された偽券が識別できるように、ホスト装置5からネットワーク6を介して全てのATM1に対して偽券の記番号および金種を含む追加登録要求の一斉送信を行う。
【0044】
ATM1は、通信部17において、ホスト装置5から送信されてきた追加登録要求を受信すると(s1)、今回受信した追加登録要求に含まれている、偽券の記番号および金種を1つ読み出し(s2)、この偽券が記番号ブラックリストに未登録であるかどうかを判定する(s3)。ATM1は、記番号ブラックリストに未登録である偽券であれば、s2で読み出した偽券の記番号および金種を記番号ブラックリストに登録する(s4)。ATM1は、記番号ブラックリストに登録されている偽券であれば、s2で読み出した偽券の記番号および金種を記番号ブラックリストに登録しない(s4にかかる処理を行わない。)。ATM1は、今回受信した追加登録要求に含まれている、全ての偽券の記番号および金種について、上述したs2以降の処理を実行したかどうかを判定する(s5)。ATM1は、s5で未処理の偽券の記番号および金種があると判定すると、s2に戻り、上述した処理を繰り返す。ATM1は、s5で未処理の偽券の記番号および金種がないと判定すると、本処理を終了する。
【0045】
なお、この追加登録要求は、すでにATM1に対して記番号および金種が送信済である偽券については送信しなくてもよい。すなわち、警察等の関係機関から最近通知され、この時点で、ATM1に対して記番号および金種が未送信である偽券についてのみ、記番号および金種を送信すればよい。
【0046】
ATM1における入金取引、出金取引等の各種取引処理については公知であるので、ここでは詳細な説明については省略するが、紙幣の識別処理についてのみ簡単に説明しておく。
【0047】
図7は、識別処理を示すフローチャートである。紙幣処理部12は、紙幣識別ユニット30において、紙幣搬送路27に沿って搬送されてきた紙幣毎に、その紙幣の光学パターン、および磁気パターンを読み取る(s11)。紙幣識別ユニット30は、光学センサ32で紙幣の光学パターンを読み取り、磁気センサ33で紙幣の磁気パターンを読み取る。
【0048】
紙幣識別ユニット30は、インストールされている識別アルゴリズムに基づき、紙幣の金種、および真偽を識別する(s12)。s12では、s11で読み取った紙幣の光学パターン、および磁気パターンを、それぞれ予め登録されている真券の光学パターン、および磁気パターンと照合し、これらの類似度を算出する。そして、光学パターンの類似度が予め定めている光学閾値を超えており、且つ磁気パターンの類似度が予め定めている磁気閾値を超えている場合、真券であると識別する。また、s12は、予め登録されている偽券の光学パターン、および磁気パターンとの照合も行い、その類似度から偽券でないと識別できたことを条件に、真券であると識別する処理としてもよい。
【0049】
紙幣識別ユニット30は、s12で紙幣の特徴量から真券であると識別すると、記番号認識部34において、光学センサ32で読み取った紙幣の画像から、その紙幣に表記されている記番号を認識する(s13、s14)。紙幣識別ユニット30は、s14で認識した記番号を主制御部10に通知する。主制御部10は、紙幣識別ユニット30から通知された記番号が、記番号ブラックリストに登録されているかどうかを判定し(s15)、登録されていなければ真券であると識別する(s16)。反対に、登録されていると、偽券であると識別する(s17)。
【0050】
なお、s12で紙幣の特徴量から真券でないと識別すると、s17で偽券であると識別する(s17)。
【0051】
このように、インストールされている識別アルゴリズムが、紙幣の光学パターン、および磁気パターンで真偽を精度良く識別できない偽券であっても、記番号が記番号ブラックリストに登録されている偽券については、その紙幣に表記されている記番号によって偽券であると識別することができる。
【0052】
また、光学パターン、および磁気パターンの照合で偽券であると識別した紙幣については、表記されている記番号を認識しないので、記番号認識部34における処理負荷も低減できる。
【0053】
次に、識別アルゴリズムの更新時の動作について説明する。ここでは、更新する識別アルゴリズムがCDに記録されている場合を例にして説明する。このCDには、更新する識別アルゴリズムに加えて、図8に示す削除リストが記録されている。この削除リストは、この識別アルゴリズムで真偽を識別することができる偽券の金種と、記番号と、を対応づけたリストである。
【0054】
図9は、識別アルゴリズムの更新時の動作を示すフローチャートである。この識別アルゴリズムの更新を行うプログラムは、記憶部19に記憶している。主制御部10は、CDドライブ18にセットされたCDから、このCDに記録されている識別アルゴリズムを読み出し(s21)、この識別アルゴリズムをインストールする(s22)。主制御部10は、識別アルゴリズムのインストールが完了すると、CDドライブ18にセットされているCDに削除リストが記録されているかどうかを確認し(s23)、削除リストが記録されていなければ本処理を終了する。
【0055】
主制御部10は、CDドライブ18にセットされているCDに削除リストが記録されていると、その削除リストをCDから読み出す(s24)。主制御部10は、読み出した削除リストに登録されている記番号、金種を1つ読み出し(s25)、記番号、および金種が一致するものが記番号ブラックリストに登録されているかどうかを判定する(s26)。主制御部10は、一致するものが記番号ブラックリストに登録されていれば、その記番号を記番号ブラックリストから削除する(s27)。主制御部10は、削除リストに登録されている全ての記番号についてs25以降の処理を実行したかどうかを判定する(s28)。主制御部10は、s28で未処理の記番号があると判定すると、s2に戻り、上述した処理を繰り返す。主制御部10は、s28で未処理の記番号がないと判定すると、本処理を終了する。
【0056】
したがって、更新した識別アルゴリズムで真偽の判別が行える偽券については、記番号ブラックリストから、その記番号が削除される。このため、記番号ブラックリストが、偽券の記番号を無駄に記憶するのを防止できる。すなわち、記番号ブラックリストの肥大化が防止できる。また、記番号による紙幣の真偽判別に要する時間の無駄を抑え、処理効率の低下を抑えることができる。
【0057】
また、上記の例における削除リストを図10に示すものとしてもよい。この削除リストは、偽券の金種、記番号、に加えて識別アルゴリズムのバージョンを対応づけている。この識別アルゴリズムのバージョンは、対応づけている偽券の識別が行えるバージョンである。
【0058】
図11は、この例にかかる識別アルゴリズムの更新時の動作を示すフローチャートである。主制御部10は、識別アルゴリズムの更新に先立ち、インストールされている識別アルゴリズムのバージョンを判断する(s31)。その後、主制御部10は、CDドライブ18にセットされたCDから、このCDに記録されている識別アルゴリズムを読み出し(s32)、この識別アルゴリズムをインストールする(s33)。主制御部10は、識別アルゴリズムのインストールが完了すると、CDドライブ18にセットされているCDに削除リストが記録されているかどうかを確認し(s34)、削除リストが記録されていなければ本処理を終了する。
【0059】
主制御部10は、CDドライブ18にセットされているCDに削除リストが記録されていると、その削除リストをCDから読み出す(s35)。主制御部10は、s35で読み出した削除リストに登録されている記番号の中で、更新前のバージョンの識別アルゴリズムで偽券であることができず、更新後のバージョンの識別アルゴリズムで偽券であることができる、記番号、およびこの記番号に対応づけられている金種を全て抽出する(s36)。
【0060】
s36では、対応づけられているバージョンXが、以下の条件を満たす、記番号、および金種を全て抽出する。
【0061】
条件: 更新前のバージョン<X≦更新後のバージョン
例えば更新前の識別アルゴリズムのバージョンが「3」で更新後の識別アルゴリズムのバージョンが「4」であれば、バージョン「4」が対応づけられている記番号、および金種を全て抽出する。また、更新前の識別アルゴリズムのバージョンが「2」で更新後の識別アルゴリズムのバージョンが「4」であれば、バージョン「3」または「4」が対応づけられている記番号、および金種を全て抽出する。ここでは、識別アルゴリズムのバージョンは、整数で示されるものとしている。
【0062】
主制御部10は、s36で抽出した記番号、金種を1つ読み出し(s37)、記番号、および金種が一致するものが記番号ブラックリストに登録されているかどうかを判定する(s38)。主制御部10は、一致するものが記番号ブラックリストに登録されていれば、その記番号を記番号ブラックリストから削除する(s39)。主制御部10は、s36で抽出した全ての記番号についてs37以降の処理を実行したかどうかを判定する(s40)。主制御部10は、s40で未処理の記番号があると判定すると、s2に戻り、上述した処理を繰り返す。主制御部10は、s28で未処理の記番号がないと判定すると、本処理を終了する。
【0063】
この構成によれば、上述した例と同様の効果が得られるとともに、記番号ブラックリストから不要になった偽券の記番号を削除する処理にかかる時間の短縮が図れる。
【0064】
また、上記の例では、更新する識別アルゴリズム、および削除リストをCDに記録し、CDドライブ18にセットすることで、ATM1に読み取らせるとしたが、更新する識別アルゴリズム、および削除リストについては、ホスト装置5が各ATM1に対して配信する構成としてもよい。
【0065】
なお、本願発明は、紙幣に限らず、小切手、証券等の他の種類の紙葉類を処理する紙葉類処理装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…ATM(現金自動預け払い機)
10…主制御部
11…操作部
12…紙幣処理部
13…硬貨処理部
14…明細書処理部
15…通帳処理部
16…生体情報読取部
17…通信部
18…CDドライブ
19…記憶部
30…紙幣識別ユニット
31…制御部
32…光学センサ
33…磁気センサ
34…記番号認識部
35…識別部
36…記憶部
37…入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の特徴量を検出する特徴量検出部と、
前記特徴量検出部で検出した特徴量を用いて、インストールされている識別アルゴリズムにより当該紙葉類が偽券であるかどうか識別する識別部と、
紙葉類に表記されている記番号を認識する記番号認識部と、
偽券の記番号を登録した偽券リストを記憶する記憶部と、
前記記番号認識部が認識した記番号が前記記憶部に記憶する前記偽券リストに登録されているかどうかに基づいて偽券であるかどうかを判定する判定部と、
前記識別アルゴリズムを更新する識別アルゴリズム更新部と、を備え、
前記識別アルゴリズム更新部は、前記識別アルゴリズムの更新とともに、前記識別部が更新した識別アルゴリズムで偽券であると識別できる偽券の記番号を、前記偽券リストから削除する、紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記識別アルゴリズム更新部は、更新する前記識別アルゴリズムとともに、前記偽券リストから削除する偽券の記番号を登録した削除リストを取得する、請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記削除リストは、偽券の記番号と、その偽券を偽券であると適正に識別することができる前記識別アルゴリズムのバージョンと、を対応づけており、
前記識別アルゴリズム更新部は、更新前の前記識別アルゴリズムのバージョンで偽券であることが識別できない偽券の記番号であって、更新後の前記識別アルゴリズムのバージョンで偽券であることが識別できる偽券の記番号を前記削除リストから抽出し、ここで抽出した偽券の記番号を前記偽券リストから削除する、請求項2に記載紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記記番号認識部は、前記識別部が偽券であると識別した紙葉類については、この紙葉類に表記されている記番号を認識する処理を行わない、請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
紙葉類の特徴量を検出する特徴量検出部と、
前記特徴量検出部で検出した特徴量を用いて、インストールされている識別アルゴリズムにより当該紙葉類が偽券であるかどうか識別する識別部と、
紙葉類に表記されている記番号を認識する記番号認識部と、
偽券の記番号を登録した偽券リストを記憶する記憶部と、
前記記番号認識部が認識した記番号が前記記憶部に記憶する前記偽券リストに登録されているかどうかに基づいて偽券であるかどうかを判定する判定部と、を備えた紙葉類処理装置のコンピュータに、
前記識別アルゴリズムを更新する更新ステップと、
前記更新ステップによる前記識別アルゴリズムの更新とともに、前記識別部が更新した識別アルゴリズムで偽券であると識別できる偽券の記番号を、前記偽券リストから削除する削除ステップと、を実行させる識別アルゴリズム更新プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242868(P2012−242868A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108930(P2011−108930)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】