説明

紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法

【課題】 容易に未登録券を処理することが出来る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法を提供する。
【解決手段】 紙葉類処理装置(1)は、予め1つまたは複数の既存標準パターンを記憶する標準パターン記憶部(506)を具備する。紙葉類処理装置は、搬送される紙葉類(P)から画像を読み取り、読み取った画像から特徴領域を検出する。紙葉類処理装置は、検出した特徴領域に基づいて未登録標準パターンを生成し、生成した未登録標準パターンと標準パターン記憶部により記憶されている既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンを評価する。紙葉類処理装置は、評価結果に基づいて、未登録標準パターンを前記標準パターン記憶部に登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣等の紙葉類を処理する紙葉類処理装置に用いられる紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の種々の紙葉類の計数鑑別を行う紙葉類処理装置が実用化されている。紙葉類処理装置は、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、紙葉類の検査部に搬送する。
【0003】
検査部は、紙葉類に対して種々の処理を行い紙葉類の状態を判別する。紙葉類処理装置は、検査部による検査の結果に基づいて、紙葉類の券種検知、真偽検知、及び再流通が可能な紙葉類であるか否かの判定(正損検知)などを行う。
【0004】
上記のような紙葉類処理装置は、予め作成される辞書に基づいて券種検知を行う。例えば、特許文献1に記載されている紙葉類処理装置は、紙葉類から読み取る画像(入力画像パターン)と、予め辞書に登録されている紙葉類の画像(標準パターン)との類似度を算出し、算出した類似度と所定の閾値とを比較することにより、紙葉類が辞書に登録されている紙葉類と同じ券種であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−288627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙葉類は、新たに種類が追加される、または券面のデザインが変更されるなどの可能性が有る。特許文献1に記載の装置は、予め作成される辞書に基づいて処理を行う為、このようなケースに対応することが出来ないという問題がある。
【0007】
上記の装置において新券、またはリニューアル券などの未登録券を処理する場合、未登録券から辞書作成ツールを用いて標準パターンを作成し、作成した標準パターンを辞書に登録する必要がある。この為、未登録券の対応が大変手間であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、容易に未登録券を処理することが出来る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態としての紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される紙葉類から画像を読み取る読取部と、前記読取部により読み取る画像から特徴領域を検出する領域検出部と、前記領域検出部により検出した特徴領域に基づいて未登録標準パターンを生成する標準パターン生成部と、予め1つまたは複数の既存標準パターンを記憶する標準パターン記憶部と、前記標準パターン生成部により生成した未登録標準パターンと前記標準パターン記憶部により記憶されている既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンを評価する標準パターン評価部と、前記標準パターン評価部による評価結果に基づいて、未登録標準パターンを前記標準パターン記憶部に登録する登録部と、を具備する。
【0010】
また、本発明の一実施形態としての紙葉類処理方法は、紙葉類を搬送し、前記搬送される紙葉類から画像を読み取り、前記読み取った画像から特徴領域を検出し、前記検出した特徴領域に基づいて未登録標準パターンを生成し、前記生成した未登録標準パターンと、予め記憶される1つまたは複数の既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンを評価し、前記評価の結果に基づいて、未登録標準パターンを登録する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の一形態によれば、容易に未登録券を処理することが出来る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置の構成例について説明するための説明図である。
【図2】図2は、図1に示す券種検知部の構成例について説明する為のブロック図である。
【図3】図3は、図1に示す紙葉類処理装置により処理する紙葉類の例について説明する為の説明図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る券種検知部の構成例について説明する為のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法について詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る紙葉類処理装置1の構成例について説明するための説明図である。
紙葉類処理装置1は、操作員の操作に基づいて設定される識別対象(紙葉類の種類、以下券種と称す)の紙葉類Pを判別し、集積部に集積、又は施封する。
【0015】
紙葉類処理装置1は、供給部2、取り出し部3、搬送状態検知部4、紙葉類識別部5、厚さ検知部6、集積部7、制御部8、排除券集積部9、及び搬送部41を備える。さらに、紙葉類処理装置1は、紙葉類Pの搬送先を切り替える為の第1のゲートG1及び第2のゲートG2を備える。
【0016】
供給部2は、紙葉類処理装置1に取り込む紙葉類Pをストックする。供給部2は、重ねられた状態の紙葉類Pをまとめて受け入れる装填口を備える。
【0017】
取り出し部3は、分離ローラを備える。分離ローラは、供給部2の上端に設置される。供給部2に紙葉類Pが投入される場合、投入された紙葉類Pの集積方向の上端に接する。分離ローラは、回転することにより、供給部2に装填される紙葉類Pを集積方向の上端から1枚ずつ紙葉類処理装置1の内部に取り込む。
【0018】
分離ローラは、たとえば、1回転するごとに1枚の紙葉類Pを取出すように機能する。これにより、分離ローラは、紙葉類Pを一定のピッチで取り出す。分離ローラにより取り込まれた紙葉類Pは、搬送部41に導入される。
【0019】
搬送部41は、紙葉類Pを紙葉類処理装置1内の各部に搬送する搬送部である。搬送部41は、図示しない搬送ベルト及び図示しない駆動プーリなどを備える。搬送部41は、図示しない駆動モータにより駆動プーリを駆動する。搬送ベルトは、駆動プーリにより動作する。
【0020】
搬送部41は、取り出し部3の分離ローラにより取り込む紙葉類Pを搬送ベルトにより一定速度で搬送する。なお、搬送部41において取り出し部3に近い側を上流側、逆側を下流側として説明する。
【0021】
搬送状態検知部4は、搬送部41により搬送される紙葉類Pの搬送状態を検知する。搬送状態検知部4は、搬送される紙葉類の搬送路上における搬送位置、搬送スキュー量、及び搬送ギャップなどを検知する。
【0022】
搬送状態検知部4は、搬送される紙葉類Pの搬送中心位置を検出し、検出した搬送中心位置と搬送路の中心とに基づいて搬送位置のズレを算出する。
【0023】
また、搬送状態検知部4は、搬送される紙葉類Pの搬送方向に対する紙葉類Pの搬送傾きを検出し、搬送スキュー量を検知する。
【0024】
さらに、搬送状態検知部4は、搬送される紙葉類Pの先端と、1つ前に搬送された紙葉類Pの後端との距離を検出し、搬送ギャップを検知する。
【0025】
紙葉類識別部5は、真偽検知部51、正損検知部52、及び券種検知部53を備える。
真偽検知部51は、紙葉類Pが本物であるか偽者であるか(真偽)を検知する。真偽検知部51は、搬送部41により搬送される紙葉類Pが真券(本物の紙葉類)であるか、偽券(偽者の紙葉類)であるかを検知する。
【0026】
真偽検知部51は、搬送部41により搬送される紙葉類Pの物理的特性を検知する物理特性検知部、及び、磁気検知部などを備える。物理特性検知部は、紙葉類Pから蛍光特性、または赤外線特性などを検知する検知器を備える。磁気検知部は、紙葉類Pに含有される磁性体の量を検知する検知器を備える。真偽検知部51は、物理特性検知部、及び磁気検知部の検知結果に基づいて紙葉類Pの真偽を検知する。
【0027】
正損検知部52は、紙葉類Pが再流通可能な正券であるか、再流通不可能な損券であるか(正損)を検知する。例えば、正損検知部52は、搬送部41により搬送される紙葉類Pの物理的特性を検出し、検出結果に基づいて、紙葉類Pが正券であるか損券であるかを判定する。なお、正損検知部52は、真偽検知部51により真券であると判定した紙葉類Pに対して正損判定を行う。
【0028】
券種検知部53は、紙葉類Pの券種を検知する。券種検知部53は、紙葉類Pの両面から光学的特徴を検知する光学検知器と、紙葉類Pの標準パターンを券種毎に記憶する辞書とを備える。
【0029】
光学検知器は、紙葉類Pの表面から画像を読み取るセンサと、紙葉類Pの裏面から画像を読み取るセンサと、を備える。各センサは、それぞれ搬送部41を挟んで互いに対抗する位置に配置される。
【0030】
センサは、例えば、Charge Coupled Device(CCD)などの受光素子と、光学系とを備える。センサは、搬送される紙葉類Pに対して光を投光し、反射光または透過光を光学系により受光する。センサは、光学系により受光した光を受光素子に結像させ、電気信号(画像)を取得する。
【0031】
券種検知部53は、紙葉類Pから画像を読み取る。券種検知部53は、紙葉類Pから読み取った画像と辞書に記憶されている標準パターンとに基づいて、紙葉類Pの券種を検知する。さらに、券種検知部53は、読み取った画像の表/裏、正向き/逆向きを検知する。
【0032】
また、券種検知部53は、紙葉類Pから読み取った画像に基づいて標準パターンを作成する。券種検知部53は、作成した辞書パターンを辞書に記憶する。
【0033】
厚さ検知部6は、搬送部41により搬送される紙葉類Pの厚さを検知する。厚さ検知部6は、紙葉類Pの厚さに基づいて、紙葉類Pが複数枚重なっている旨、及び紙葉類Pの折れなどを検知する。
【0034】
集積部7は、搬送される紙葉類Pを紙葉類識別部5により検知する券種毎に区別して集積して格納する。集積部7は、正券集積部71と損券集積部72とを備える。正券集積部71は、紙葉類識別部5により真券であり、且つ正券であると判定された紙葉類Pを集積する。さらに、正券集積部71は、集積した紙葉類Pの枚数が所定枚数に達する場合、紙葉類Pを所定枚数毎に施封する。また、損券集積部72は、紙葉類識別部5により真券であり、且つ損券であると判定された紙葉類Pを集積する。
【0035】
制御部8は、紙葉類処理装置1の各部の動作を統合的に制御する。制御部8は、主制御部81、総合判定部82、及び操作部83などを備える。主制御部81は、総合判定部82による判定結果に基づいて、搬送部41、第1のゲートG1、及び第2のゲートG2の動作を制御する。
【0036】
総合判定部82は、搬送状態検知部4、紙葉類識別部5、及び厚さ検知部6の検知結果に基づいて、紙葉類Pの搬送先を総合的に判定する。
【0037】
例えば、総合判定部82は、真偽検知部51により真券と判定し、正損検知部52により正券であると判定した場合、紙葉類Pの搬送先を正券集積部71に決定する。主制御部81は、紙葉類Pを正券集積部71に搬送するように第1のゲートG1及び第2のゲートG2を制御する。
【0038】
また、総合判定部82は、真偽検知部51により真券と判定し、正損検知部52により損券であると判定した場合、紙葉類Pの搬送先を損券集積部72に決定する。主制御部81は、紙葉類Pを損券集積部72に搬送するように第1のゲートG1及び第2のゲートG2を制御する。
【0039】
またさらに、総合判定部82は、真偽検知部51により偽券と判定した場合、紙葉類Pの搬送先を排除券集積部9に決定する。主制御部81は、紙葉類Pを排除券集積部9に搬送するように第1のゲートG1を制御する。
【0040】
またさらに、総合判定部82は、厚さ検知部6により紙葉類Pが複数枚重なっている事、または、紙葉類Pの折れを検知する場合、紙葉類Pの搬送先を排除券集積部9に決定する。主制御部81は、紙葉類Pを排除券集積部9に搬送するように第1のゲートG1を制御する。
【0041】
操作部83は、例えばキーボード、表示部と一体に形成されるタッチパネル、または操作者による操作に応じた操作信号を受け付ける入力部などを備える。主制御部81は、操作部83により入力される操作信号に基づいて、処理対象の券種などを設定する。
【0042】
排除券集積部9は、紙葉類識別部5の真偽検知部51により偽券と判定された紙葉類P、厚さ検知部6により複数枚重なっていると判定された紙葉類P、及び、厚さ検知部6により折れが存在すると判定された紙葉類Pを集積する。
【0043】
図2は、図1に示す券種検知部53の構成例について説明する為のブロック図である。
【0044】
券種検知部53は、センサ501、データ記憶部502、動作切替部507、識別処理部520、及び登録処理部530を備える。
【0045】
センサ501は、CCDなどの受光素子と、光学系とを備える。センサ501は、搬送部41により矢印Aの方向(搬送方向)に搬送される紙葉類Pに対して光を投光し、反射光または透過光を光学系により受光する。センサ501は、光学系により受光した光を受光素子に結像させ、紙葉類Pの画像を取得する。センサ501は、取得した画像をデータ記憶部502に入力する。
【0046】
データ記憶部502は、センサ501から入力される画像を一時的に記憶する画像メモリである。
【0047】
動作切替部507は、制御部8から入力される制御信号に基づいて、券種検知部53の動作を切り替える。例えば、紙葉類Pの識別処理を示す制御信号を制御部8から受信する場合、動作切替部507は、識別処理を行うようにデータ記憶部502を制御する。即ち、動作切替部507は、データ記憶部502に記憶されている画像を識別処理部520に入力するようにデータ記憶部502を制御する。
【0048】
また、例えば、未登録券の登録処理を示す制御信号を制御部8から受信する場合、動作切替部507は、登録処理を行うようにデータ記憶部502を制御する。即ち、動作切替部507は、データ記憶部502に記憶されている画像を登録処理部530に入力するようにデータ記憶部502を制御する。
【0049】
制御部8は、操作部83に入力される操作に基づいて操作信号を生成し、生成した操作信号を主制御部81に入力する。主制御部81は、入力される操作信号に基づいて、動作切替手段に入力する制御信号を生成する。
【0050】
識別処理部520は、データ記憶部502から入力される画像データに基づいて、紙葉類Pの券種を検知する識別処理を行う。識別処理部520は、特徴抽出部503、類似度演算部504、判定部505、及び標準パターン記憶部(辞書)506を備える。
【0051】
特徴抽出部503は、データ記憶部502から入力される画像データに基づいて紙葉類Pの特徴情報を抽出する。データ記憶部502から入力される画像データは、二次元的に画素が配列された画像である。各画素は、濃淡値を有する。特徴抽出部503は、画像データの濃淡値を特徴情報として抽出する。なお、特徴抽出部503は、画像の濃淡値の微分値を特情報として抽出する構成であってもよい。また、特徴抽出部503は、画像から抽出した特徴情報をデータ記憶部502に一時的に格納する。
【0052】
類似度演算部504は、特徴抽出部503により抽出した特徴情報と、標準パターン記憶部506に記憶されている標準パターンとの類似度を算出する。類似度演算部504は、例えば、単純類似度法、または複合類似度法などを用いることにより類似度を算出する。
【0053】
標準パターン記憶部506は、複数種類の券種の標準パターンを保持する。標準パターン記憶部506は、正向き表面、正向き裏面、逆向き表面、逆向き裏面のそれぞれのケースの標準パターンを各券種毎に保持する。即ち、標準パターン記憶部506は、券種毎に4パターンの標準パターンを有する。
【0054】
例えば、類似度演算部504は、特徴抽出部503により抽出した特徴情報と、標準パターン記憶部506に記憶されている各券種毎の標準パターンとでそれぞれ類似度を算出する。
【0055】
判定部505は、類似度演算部504により算出された類似度に基づいて、紙葉類Pの券種を判定する。例えば、判定部505は、類似度演算部504により算出された類似度のうち、最も類似度の高い結果を特定する。
【0056】
判定部505は、特定した類似度が予め設定されている閾値以上であるか否かを判定する。判定部505は、特定した類似度が予め設定されている閾値以上であると判定する場合、この類似度の算出に用いられた標準パターンの券種と紙葉類Pの券種とが同一であると判定する。この結果、判定部505は、紙葉類Pの券種を特定することが出来る。
【0057】
判定部505は、特定した紙葉類Pの券種を示す情報を券種検知結果として制御部8に送信する。また、判定部505は、閾値を超える類似度が複数存在する場合、類似度の高い順に、第1の券種候補情報、第2の券種候補情報・・・を作成し、券種候補情報を制御部8に通知する。
【0058】
総合判定部82は、券種検知部53から送信される券種検知結果に基づいて、紙葉類Pを排除するか否かの判定を行う。例えば、紙葉類Pが操作部83により設定された券種でない場合、総合判定部82は、紙葉類Pを排除券と判定する。この場合、主制御部81は、第1のゲートG1を制御する。これにより、紙葉類Pは、排除券集積部9に搬送される。
【0059】
登録処理部530は、データ記憶部502から入力される画像データに基づいて、標準パターンを作成し、識別処理部520の標準パターン記憶部506に登録する。登録処理部530は、領域検出部508、標準パターン生成部509、及び標準パターン評価部510を備える。
【0060】
領域検出部508は、データ記憶部502から入力される画像データに基づいて標準パターンを作成するための特徴的な領域を検出する。領域検出部508は、紙葉類Pの画像中から紙葉類P上の特徴的な領域を検出し、検出した領域の画像を抽出する。
【0061】
図3は、図1に示す紙葉類処理装置1により処理する紙葉類Pの例について説明する為の説明図である。
センサ501は、紙葉類Pの表面、及び裏面からそれぞれ表面画像と裏面画像とを読み取る。
【0062】
紙葉類Pの表面には、金額の印刷301、金額の印刷302、肖像画の印刷303、及び透かし304などが施された領域が存在する。また、紙葉類Pの裏面には、透かし304、金額の印刷305、及び建造物または風景画の印刷306が施された領域が存在する。さらに、紙葉類Pには模様などの印刷が施されている。
【0063】
領域検出部508は、例えば、「英数字による金額」、「肖像画」、「建造物」、「風景画」、及び「背景の模様」などが印刷された領域を検出する。さらに、領域検出部508は、紙葉類Pの「透かし領域」などを検出する。
【0064】
この為に、領域検出部508は、上記のような特徴領域を特定する為の情報(特徴領域特定情報)を予め記憶する特徴領域辞書508aを備える。領域検出部508は、操作部83に入力される操作に基づいて、特徴領域辞書508aに登録されている複数の特徴領域特定情報から1つまたは複数の特徴領域特定情報を選択する。領域検出部508は、データ記憶部502から入力される画像と、選択した特徴領域特定情報とに基づいて、特徴領域を検出する。
【0065】
特徴領域辞書508aは、例えば、上記したようなオブジェクト(「英数字による金額」、「肖像画」、「建造物」、「風景画」、及び「背景の模様」)を検出する為のテンプレート画像を記憶する。
【0066】
テンプレート画像は、「英数字による金額」、「肖像画」、「建造物」、「風景画」、及び「背景の模様」などのオブジェクトの画像に基づいて作成する模範的な画像である。
【0067】
領域検出部508は、例えば、文献1(「最小分類誤り学習による特徴選択型文字認識」 著:河村、新田 信学会論文誌Vol.J81-D2 No.12,1998)などに記載されている技術に基づいて、英数字による金額が印刷されている特徴領域を検出する。
【0068】
この場合、特徴領域辞書508aは、例えば、「英数字による金額」のテンプレートとして、英数字の画像を記憶する。領域検出部508は、特徴領域辞書508aに「英数字による金額」のテンプレートとして記憶されている画像とデータ記憶部502から入力される画像とで部分的に類似度を算出する。領域検出部508は、所定の閾値以上の類似度が算出される領域を、英数字による金額が印刷されている特徴領域として検出する。
【0069】
また、領域検出部508は、例えば、文献2(「微小な差異を含む画像の認証に適した空間差分確率テンプレートの提案」 著:三田、金子、堀 第9会画像センシングシンポジウム講演論文集.SS2 03.2003)などに記載されている技術に基づいて、肖像画が印刷されている特徴領域を検出する。
【0070】
この場合、特徴領域辞書508aは、例えば、「肖像画」のテンプレートとして、模式的な人物の画像を記憶する。模式的な人物の画像は、複数枚の人物の画像に対して平均化などを行うことにより作成される画像である。領域検出部508は、特徴領域辞書508aに「肖像画」のテンプレートとして記憶されている画像とデータ記憶部502から入力される画像とで部分的に類似度を算出する。領域検出部508aは、所定の閾値以上の類似度が算出される領域を、肖像画が印刷されている特徴領域として検出する。
【0071】
また、領域検出部508は、例えば、文献3(「Visual categorization with bags of keypoints」 著:Csurak、他 ECCV Workshop on Statistical Learning in Computer Vision,pp.1-22,2004)などに記載されている技術に基づいて、建造物、または風景画が印刷されている特徴領域を検出する。
【0072】
この場合、特徴領域辞書508aは、例えば、「建造物」及び「風景画」のテンプレートとして、模式的な建造物及び風景画の全体、または一部を示す画像を記憶する。「建造物」及び「風景画」のテンプレートは、複数の画像を分解、または平均化などを行うことにより作成される画像である。領域検出部508は、特徴領域辞書508aに「建造物」又は「風景画」のテンプレートとして記憶されている画像とデータ記憶部502から入力される画像とで部分的に類似度を算出する。領域検出部508aは、所定の閾値以上の類似度が算出される領域を、建造物又は風景画が印刷されている特徴領域として検出する。
【0073】
また、例えば、特徴領域辞書508aは、「背景模様」のテンプレートとして、複数の異なる背景の画像を記憶する。領域検出部508は、特徴領域辞書508aに「背景模様」のテンプレートとして記憶されている画像とデータ記憶部502から入力される画像とで部分的に類似度を算出する。領域検出部508aは、所定の閾値以上の類似度が算出される領域を、背景模様が印刷されている特徴領域として検出する。
【0074】
またさらに、領域検出部508は、例えば、データ記憶部502から入力される画像において、濃淡値が低い画素が所定数以上連続した領域を透かしが施されている特徴領域として検出する。
【0075】
なお、紙葉類Pには、一般的に金額が印刷されている可能性が高い。この為、特徴領域を検出する為のオブジェクトとして、「英数字による金額」と「肖像画」、「英数字による金額」と「建造物」、または、「英数字による金額」と、「風景画」などの組み合わせで選択されることが望ましい。
【0076】
また、領域検出部508は、選択するオブジェクトを標準パターン評価部510の結果に基づいて変更することが出来る構成であってもよい。例えば、領域検出部508は、初期段階で「英数字による金額」を選択する。領域検出部508は、標準パターン評価部510の評価結果に応じて、「英数字による金額」と他のオブジェクトとを組み合わせて選択する。
【0077】
標準パターン生成部509は、領域検出部508により検出した特徴領域の画像に基づいて標準パターンを生成する。標準パターン生成部509は、領域検出部508により検出した特徴領域を対象に、データ記憶部502から入力される画像から特徴情報を抽出し、標準パターン(未登録標準パターン)を生成する。
【0078】
また、標準パターン生成部509は、領域検出部508により検出した特徴領域を対象に、予め標準パターン記憶部506に記憶されている標準パターンから特徴情報を抽出し、標準パターン(既存標準パターン)を生成する。
【0079】
標準パターン生成部509は、画像の濃淡値を特徴情報として標準パターンを生成する。なお、標準パターン生成部509は、画像の濃淡値の微分値を特徴情報として標準パターンを生成する構成であってもよい。さらに、標準パターン生成部509は、領域検出部508により検出した特徴領域を分割する構成であってもよい。この場合、標準パターン生成部509は、分割した領域毎に濃淡値、または微分値を算出し、算出した濃淡値または微分値を特徴情報として標準パターンを生成する。
【0080】
標準パターン評価部510は、標準パターン生成部509により生成した未登録標準パターンと、既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンの評価を行う。
【0081】
標準パターン評価部510は、標準パターン生成部509により生成した未登録標準パターンと、既存標準パターンとの間で類似度を算出する。標準パターン評価部510は、例えば、単純類似度法、または複合類似度法により類似度を算出する。なお、既存標準パターンが複数存在する場合、標準パターン評価部510は、未登録標準パターンと全ての既存標準パターンとの間で類似度を算出する。
【0082】
標準パターンの評価結果には、未登録標準パターンと既存標準パターンとの類似度差、及び紙葉類Pの画像上における特徴領域をオーバレイ表示した画像などが用いられる。
【0083】
標準パターン評価部510は、算出した類似度の内の最小値を特定する。標準パターン評価部510は、特定した最小値と予め設定される閾値とを比較する。
【0084】
特定した最小値が予め設定される閾値以上である場合、標準パターン評価部510は、未登録標準パターンの生成に用いた特徴領域が辞書に適していないと判断する。この場合、標準パターン評価部510は、他の特徴領域について処理を行う。
【0085】
なお、標準パターン評価部510は、特徴領域を検出するために用いたパラメータと、標準パターンを生成する為に用いたパラメータとを図示しないメモリなどに保持する。標準パターン評価部510は、メモリに保持したパラメータを変更し、評価処理を再度行う。
【0086】
特徴領域を検出する為のパラメータは、例えば、検出するオブジェクトを示すパラメータ、検出するオブジェクトのサイズを示すパラメータ、及び、検出評価閾値を示すパラメータなどがある。
【0087】
また、標準パターンを生成する為のパラメータは、例えば、特徴領域の平行移動を示すパラメータ、ならびに、特徴領域内の分割数及び特徴次元数を示すパラメータなどがある。
【0088】
特定した最小値が予め設定される未満である場合、標準パターン評価部510は、未登録標準パターンの生成に用いた特徴領域が辞書に適していると判断する。この場合、標準パターン評価部510は、生成した未登録標準パターンと評価結果とを制御部8に出力する。さらに標準パターン評価部510は、生成した未登録標準パターンを標準パターン記憶部506に登録する。
【0089】
上記したように、券種検知部53は、紙葉類Pから読み取る画像から、予め記憶されるテンプレートに近いパターンを有する領域を特徴領域として検出する。券種検知部53は、検出した領域から標準パターンを生成する。また、券種検知部53は、既存の標準パターンと生成した標準パターンとを比較することにより、既存の標準パターンとの類似度が低い標準パターンを特定する。券種検知部53は、特定した標準パターンを辞書として記憶する。この結果、券種検知部53は、未登録の紙葉類Pに対しても識別処理を行うことができるようになる。
【0090】
これにより、容易に新たな券種の紙葉類Pを処理することが出来るようになる。また、未登録の券種の対応に必要なコスト及び時間を削減することができる。この結果、容易に未登録券を処理することが出来る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法を提供することができる。
【0091】
次に、他の実施形態について説明する。
図4は、本発明の他の実施形態に係る券種検知部53の構成例について説明する為のブロック図である。
【0092】
図4に示す券種検知部53は、センサ501、データ記憶部502、動作切替部507、識別処理部520、及び登録処理部530を備える。なお、識別処理部520は、上記の実施形態と同様の構成である為、図示しない。また、上記の実施形態と同様の構成には同じ参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0093】
図4に示す登録処理部530は、領域修正部511をさらに具備する。また、制御部8は、表示部84をさらに具備する。表示部84は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置を備える。表示部84は、主制御部81の制御に基づいて種々の情報を表示する。
【0094】
例えば、主制御部81は、標準パターン評価部510から送信される未登録標準パターンの画像、及び評価結果を表示部84に表示するように制御する。操作者は、表示部84に表示される標準パターン及び評価結果を確認することにより、特徴領域の妥当性を判断することが出来る。
【0095】
領域修正部511は、操作者が操作部83により入力する操作に基づいて、領域検出部508により検出した特徴領域を修正する。例えば、主制御部81は、未登録標準パターンの画像と評価結果とに加えてさらに特徴領域を切り出す為のツールなどを表示する。これにより、操作者は、表示部84を確認することにより容易に特徴領域を切り出す為の操作を行うことができる。
【0096】
領域修正部511は、修正した特徴領域を示す情報及び画像を標準パターン生成部509に出力する。標準パターン生成部509は、受信する特徴領域及び画像に基づいて標準パターン(未登録標準パターン)を生成する。標準パターン評価部510は、生成された未登録標準パターンと既存の標準パターンとに基づいて評価処理を再度行う。
【0097】
上記したように、領域修正部511は、入力される操作に基づいて特徴領域を修正する。さらに、表示部84に標準パターン及び評価結果などを表示することにより、操作者は、容易に特徴領域を修正する為の操作を行うことができる。この結果、容易に未登録券を処理することが出来る紙葉類処理装置、及び紙葉類処理方法を提供することができる。さらに、生成される標準パターンの精度を高める事ができる。
【0098】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…紙葉類処理装置、2…供給部、3…取り出し部、4…搬送状態検知部、5…紙葉類識別部、6…検知部、7…集積部、8…制御部、9…排除券集積部、41…搬送部、51…真偽検知部、52…正損検知部、53…券種検知部、71…正券集積部、72…損券集積部、81…主制御部、82…総合判定部、83…操作部、84…表示部、501…センサ、502…データ記憶部、503…特徴抽出部、504…類似度演算部、505…判定部、506…標準パターン記憶部、507…動作切替部、508…領域検出部、508a…特徴領域辞書、509…標準パターン生成部、510…標準パターン評価部、511…領域修正部、520…識別処理部、530…登録処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される紙葉類から画像を読み取る読取部と、
前記読取部により読み取る画像から特徴領域を検出する領域検出部と、
前記領域検出部により検出した特徴領域に基づいて未登録標準パターンを生成する標準パターン生成部と、
予め1つまたは複数の既存標準パターンを記憶する標準パターン記憶部と、
前記標準パターン生成部により生成した未登録標準パターンと前記標準パターン記憶部により記憶されている既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンを評価する標準パターン評価部と、
前記標準パターン評価部による評価結果に基づいて、未登録標準パターンを前記標準パターン記憶部に登録する登録部と、
を具備することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記領域検出部は、1つまたは複数のオブジェクトの領域を特定する為の特徴領域特定情報を記憶する特徴領域辞書を具備し、
前記読取部により読み取る画像と、前記特徴領域辞書に記憶される特徴領域特定情報とに基づいて前記特徴領域を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記特徴領域辞書は、特徴領域特定情報としてオブジェクトのテンプレート画像を記憶し、
前記領域検出部は、前記読取部により読み取る画像と前記テンプレート画像とで類似度を算出し、算出した類似度が予め設定される閾値以上である領域を前記特徴領域として検出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記特徴領域辞書は、英数字、肖像画、建造物、風景画、または背景模様の中から1つ、または複数のテンプレート画像を記憶することを特徴とする請求項3に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記領域検出部は、前記読取部により読み取る画像において濃淡値が低い画素が所定数以上連続した領域を透かし施されている特徴領域として検出することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記標準パターン評価部は、前記未登録標準パターンと、前記標準パターン記憶部により記憶されている1つまたは複数の既存標準パターンとの間でそれぞれ類似度を算出し、
前記登録部は、前記標準パターン評価部により算出した類似度の最小値が予め設定される閾値未満である場合に未登録標準パターンを前記標準パターン記憶部に登録する、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記標準パターン生成部により生成される未登録標準パターンと前記標準パターン評価部により算出される類似度とを併せて表示する表示部と、
操作が入力される操作部と、
前記操作部により入力される操作に基づいて前記領域検出部により検出する特徴領域を修正し、修正した特徴領域の画像に基づいて未登録標準パターンを生成するように制御する領域修正部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記読取部により読み取る画像と、前記標準パターン記憶部に記憶されている既存標準パターンとに基づいて前記紙葉類の券種を識別する識別部と、
操作が入力される操作部と、
前記操作部により入力される操作に基づいて、前記紙葉類の券種を識別する識別処理と、前記未登録標準パターンを前記標準パターン記憶部に登録する登録処理とを切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
紙葉類を搬送し、
前記搬送される紙葉類から画像を読み取り、
前記読み取った画像から特徴領域を検出し、
前記検出した特徴領域に基づいて未登録標準パターンを生成し、
前記生成した未登録標準パターンと、予め記憶される1つまたは複数の既存標準パターンとに基づいて未登録標準パターンを評価し、
前記評価の結果に基づいて、未登録標準パターンを登録する、
ことを特徴とする紙葉類処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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