説明

紙葉類処理装置、紙葉類仕分け装置及び紙葉類仕分けシステム

【課題】金融自動機等の紙葉類処理装置で一度識別した際に得られる紙幣の固有特徴量と識別結果とを、紙葉類処理装置の外部で精査する際には有効活用して正券紙幣と損券紙幣とを分離することができる紙葉類処理装置、紙葉類仕分け装置及び紙葉類仕分けシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】現金自動取引装置100を、紙幣Sを取引処理する紙幣処理部110と、少なくともひとつの収納部118と、紙幣Sの記番号を認識する記番号読取センサ1と、紙幣Sの損券レベルを予め定めた正損判定基準情報に基づいて判定する損券検知センサ2と、紙幣Sの損券レベル情報と記番号を紙幣S毎に関連付けて記憶する格納部24とを備え、紙幣S毎の記番号情報及び損券レベル情報を取引処理時情報として、収納部118の搬出に応じて、紙幣仕分け装置200に移送した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣などの紙葉類の正損を判別して仕分け処理するための紙葉類処理装置、紙葉類仕分け装置及び紙葉類仕分けシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の現金運用において、支店の窓口に保管している紙幣や現金自動預払機(ATM)等の金融自動機内の紙幣は現金管理の観点から、金融機関の本支店のバックヤードや現金管理業務の委託先である警備会社の現金センタに定期的に回収され精査される。
【0003】
精査の際には、精査機と称される処理装置にて枚数の確認と帯封処理以外に、正券紙幣と損券紙幣とを仕分けする正損分離処理を行っている。ここで、正券紙幣とは精査処理後、再度市場に流通させても問題のない綺麗な紙幣を示し、損券紙幣とは汚れや破れなどがある損傷紙幣のことを示している。なお、損券紙幣は再流通させず紙幣の発行元へ輸送返却後、廃棄処分される。
【0004】
現金自動預払機では利用者が入金を行う場合、現金自動預払機に紙幣が投入されると、内部に備えた識別部によって、紙幣の真偽判定と合わせて当該紙幣が正券紙幣であるか損券紙幣であるかを正損判定基準に従って判別する。当該紙幣が損券紙幣である場合、当該取引以降の取引で損券紙幣が出金されることのないよう正券紙幣とは分けて装置内で管理する。
【0005】
一方、精査機では定められた正損分離基準に従って正券紙幣と損券紙幣を分離する。したがって、処理される回収紙幣に綺麗な紙幣が多いと正券比率が高くなり、汚れた紙幣が多いと損券比率60が高くなる。損券比率60が高くなると損券返却時の輸送手間の増加や発行元における再発行費用の増加等、損券比率の変動が問題となる。このような問題に対し、特許文献1では、精査機における正損分離基準を変更できる方法が提案されている。
【0006】
詳しくは、特許文献1では予め設定された損券比率に基づいて、回収された紙幣の程度に関わらず返却すべき損券紙幣の比率が一定となるよう正損分離基準を設定する方法が提案されている。
【0007】
また、金融自動機内の現金を回収する際に、移送の完了まで当該紙幣を確実に管理する方法として、紙幣に印刷された記番号に基づいて、金融自動機内で登録された記番号と精査時に認識した記番号とを照合して一致を確認する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−87219号公報
【特許文献2】特許第4586135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術によれば、現金自動預払機内で一度識別された結果、正損分離処理したにも関わらず金融機関の本支店に回収された紙幣について精査機により再度、正損分離処理を行う必要がある。
【0010】
これは、現金自動預払機による正損判定基準と精査機による正損分離基準が異なることに起因していると考えられる。具体的には、現金自動預払機の正損判定基準は、入金紙幣と出金紙幣を効率よく流用(還流)させ、できる限り現金を補充することなく装置の稼動時間を延長することを目的としている。
これに対し、精査機の正損分離基準は金融機関の現金運用方針に従い、少しでも損傷した紙幣は損券紙幣として返却するために損券紙幣を検出することを目的としている。
【0011】
さらには、上述したように、正損分離処理における本質的な目的が異なるだけでなく、金融機関によっては正損分離の区分を単純に正券紙幣と損券紙幣の2種類だけでなく、現金自動預払機や現金自動支払機(CD)などの自動機の稼動品質を安定させることを目的として、自動機用正券紙幣、主に窓口業務で扱う窓口用正券紙幣、返却処理用の損券紙幣の3種類に分類することもある。
【0012】
特許文献1に提案された方法によれば、金融機関の実運用に従い、正損分離処理される紙幣の損券比率の変動を抑えることができる。しかしながら、正損分離処理に用いられる精査機等の装置としては、現金自動預払機に搭載された識別部と同様に、枚数検出用センサや真偽判定用センサに加えて正損分離処理用のセンサを備える必要があり、装置としては複雑で高価にならざるを得ない。また、精査機として、正損分離処理を行うデータ処理負荷は少なくとも自動預払機と同程度存在し、高速処理を行う場合には制御部でのデータ処理能力を十分に確保する必要がある。
【0013】
また、特許文献2によれば、現金自動預払機等の金融自動機から回収する紙幣Sを記番号により管理し、精査時に記番号を確認することで、枚数を確実に管理できるだけでなく、例えば、移送途中に盗難等が発生した場合にも被害にあった紙幣を特定できるという利点がある。しかしながら、正損分離処理の観点では、従来技術と同様に正損分離用センサを搭載した精査機にて再度正損分離処理を行わなければならない。
【0014】
本発明の目的は、上記問題点を解決するものであって、金融自動機等の紙葉類処理装置で一度識別した際に紙幣の持つ固有特徴量と識別結果とを、精査の際には有効活用して正券紙幣と損券紙幣とを分離することができる紙葉類処理装置、紙葉類仕分け装置及び紙葉類仕分けシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するために、本発明は、紙葉類を取引処理する取引処理手段と、内部に前記紙葉類を収納する少なくともひとつの収納手段と、前記取引処理に応じて前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する取引処理時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類の損券レベルを予め定めた正損判定基準情報に基づいて判定する損券レベル判定手段と、該損券レベル判定手段で判定した紙葉類の損券レベル情報、及び前記取引処理時固有特徴量認識手段で認識した取引処理時固有特徴量情報とを前記紙葉類毎に関連付けて記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前記紙葉類毎の前記取引処理時固有特徴量情報及び前記損券レベル情報を取引処理時情報として、前記収納手段の搬出に応じて、外部に移送する情報移送手段とを備え、該情報移送手段を、搬出された前記収納手段に収納された前記紙葉類を確認する際に前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する確認時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類を正損分離する正損分離手段とを備えた紙葉類仕分け装置に対して、移送することを特徴とする。
【0016】
ここで、紙葉類とは少なくとも紙幣と有価証券を含む。また、固有特徴量情報とは少なくとも紙幣の記番号を含み、個体を特定するためのユニークな情報を指し、バーコードやICチップへ記録された個体情報であってもよい。
【0017】
また、正損判定基準情報とは、正券紙幣と損券紙幣と判定するための検出項目の定義を指し、正損分離基準情報とは、正券紙幣と損券紙幣を分離して仕分けするための検出項目の定義を指し、例えば、汚れや破れといった損傷要素の種類と、それぞれの損傷要素に対応した検出結果でもよいし、あるいは、損券検知用に定められた複数のセンサと、それぞれのセンサによる検出結果でもよい。
【0018】
また、取引処理時情報を収納手段の搬出に応じて外部に移送する情報移送手段は、接続した通信回線に対して上記情報を送信出力する送信出力手段、例えば、USBメモリ等の外部記憶手段に上記情報を書き出す情報書出し手段、あるいは、収納手段に備えた記憶手段に上記情報を書き出して、収納手段ごと情報を移送する手段等、紙葉類仕分け装置や管理端末等の外部装置に対して、上記情報を移送することのできる手段とすることができる。
【0019】
さらに、紙葉類仕分け装置に対して情報を移送する情報移送手段は、紙葉類仕分け装置に対して情報を直接移送する情報移送手段や、例えば管理端末等を介して紙葉類仕分け装置に対して情報を間接的に移送する情報移送手段とすることができる。
【0020】
また、本発明は、紙葉類処理装置から搬出された前記収納手段に収納された前記紙葉類を確認する際に前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する確認時固有特徴量認識手段、外部からの情報を入力する情報入力手段、及び前記紙葉類を正損分離するための正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する正損分離手段を備え、前記情報入力手段を、前記紙葉類処理装置から、該損券レベル判定手段で判定した紙葉類の前記損券レベル情報と、前記取引処理時固有特徴量認識手段で認識した取引処理時固有特徴量情報とを前記紙葉類毎に関連付けた情報形式で出力された取引処理時情報を入力する構成とするとともに、前記正損分離手段を、前記情報入力手段から入力された前記取引処理時情報を利用し、前記確認時固有特徴量認識手段が認識した確認時固有特徴量情報に対応する前記取引処理時固有特徴量情報に関連付けられた前記損券レベル情報と、前記正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する構成とした紙葉類仕分け装置である。
さらに、本発明は、紙葉類処理装置、及び紙葉類仕分け装置で構成する紙葉類仕分けシステムである。
【0021】
上述のような構成としたことで、紙葉類仕分け装置では固有特徴量を認識することで損券レベルを検知することなく、紙葉類処理装置で検出した損券レベル情報に基づき正損分離処理を実施することができ、紙葉類仕分け装置を簡素なセンサ構成で実現可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金融自動機等の紙葉類処理装置で一度識別した際に紙幣の持つ固有特徴量と識別結果とを、精査の際には有効活用して正券紙幣と損券紙幣とを分離することができる紙葉類処理装置、紙葉類仕分け装置及び紙葉類仕分けシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】紙幣仕分けシステムの概略構成図。
【図2】現金自動取引装置の制御ブロック図。
【図3】紙幣処理部の概略構成図。
【図4】損券紙幣の一例を示す概略説明図。
【図5】損券レベルを評価指標にした紙幣の分布グラフについての概略説明図。
【図6】紙幣識別情報のデータフォーマットの一例を示す図。
【図7】ホストコンピュータの制御ブロック図。
【図8】紙幣仕分け装置の制御ブロック図。
【図9】正損分離基準を設定する設定画面を示す表示図。
【図10】紙幣仕分け装置の概略構成図。
【図11】入金取引処理時の処理動作を示すフローチャート。
【図12】出金取引処理時の処理動作を示すフローチャート。
【図13】自動精査時の処理動作を示すフローチャート。
【図14】紙幣仕分け装置による正損分離処理手順を示すフローチャート。
【図15】正損分離基準情報の一例を示す図。
【図16】正損分離基準を2つ持つ場合の正損分離処理手順を示すフローチャート。
【図17】紙幣処理部で正損分離基準情報を算出する場合の処理動作を示すフローチャート。
【図18】ホストコンピュータにて正損分離基準を変更する手順を示すフローチャート。
【図19】正損判定結果を含む紙幣識別情報のデータフォーマットの一例を示す図。
【図20】紙幣処理部の回収庫及び収納庫にメモリを搭載した場合の概略構成図。
【図21】ICチップを実装した紙幣を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例としての紙幣仕分けシステム150の全体像を概略的に示すシステム構成図である。
【0025】
紙葉類仕分けシステムに対応する本実施例の紙幣仕分けシステム150は、銀行の本支店に設置され利用者による入出金取引処理に対応する現金自動取引装置100と、銀行の本店あるいは支店のバックヤードに設置され、現金自動取引装置100内の紙幣Sを回収し、回収する紙幣Sを精査する紙幣仕分け装置200と、例えば本店等の銀行統括店に設置され、現金自動取引装置100を統括管理するサーバーとして機能するホストコンピュータ300とで構成され、それぞれが通信回線400にて接続されている。
【0026】
紙幣仕分けシステム150のそれぞれの構成要素について、以下において、紙葉類処理装置に対応する現金自動取引装置100、管理端末に対応するホストコンピュータ300、紙葉類仕分け装置に対応する紙幣仕分け装置200の順に説明する。
【0027】
まず、紙幣仕分けシステム150を構成する現金自動取引装置100の電気的な概略構成を示すブロック図である図2にとともに、現金自動取引装置100について説明する。
【0028】
現金自動取引装置100は、図2に示すように、表示操作部120、カード受付部130、紙幣処理部110、通信部23、格納部24、時計27、並びに、ROM21及びRAM22が接続された主制御部20で構成している。
【0029】
なお、表示操作部120、カード受付部130及び紙幣処理部110は、装置筐体部に備えられ、紙幣の入出金取引処理を行うための利用者の入力操作や利用者への表示、紙幣やカードの受渡に関与している。
【0030】
取引処理手段に対応する紙幣処理部110は、後述する装置前面に設置されたシャッター111の開閉を経て、紙幣入金の受け入れ、返却紙幣や出金紙幣の払い出しを行う処理部である。
【0031】
表示操作部120は、タッチパネルとして機能する液晶ディスプレイで構成され、液晶ディスプレイに種々の文字情報と画像情報を表示するとともに、利用者による入出金取引処理に伴う入力操作を受け付ける構成である。
【0032】
カード受付部130は、カード搬送機器とカード読取機器を備え、入出金取引処理に際して利用者によって挿入された磁気ストライプカードやIC内蔵カードを受け付け、入出金取引処理後にカードを利用者に返却する。このカード受付部130には、明細帳票に入出金明細事項を記入して帳票を排出する明細書発行機器が併設されている。
【0033】
紙幣処理部110、表示操作部120及びカード受付部130は後述する主制御部20に接続され、紙幣処理部110におけるシャッター開閉や、表示操作部120での表示、カード受付部130でのカード受付・返却は、主制御部20からの制御信号に基づいて実行される。
【0034】
記憶手段に対応する格納部24は、紙幣処理部110から得られる紙幣識別情報25や、カードリーダ受付部130にて読み取られた入出金取引者情報や時計27から得られる取引日時情報などの取引管理情報26が記録される。
情報移送手段に対応する通信部23は、格納部24に格納される紙幣識別情報25及び取引管理情報26を、取引処理時情報として、通信手段に対応する通信回線400を介して送信する。
【0035】
主制御部20は、コンピュータを用いて構成され、各種装置の統括制御を担い、主制御部20の動作プログラム等を記録したROM21、主制御部20が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAM22が接続されている。
【0036】
主制御部20は、これら機器との間でデータ通信しながら、紙幣の入出金はもとより、紙幣入出金に伴うカードや通帳の受付・払出、後述の紙幣の真偽判定等の制御を行うとともに、通信回線400を介してホストコンピュータ300に取引処理時情報を送信する。
【0037】
続いて、紙幣処理部110の機構を示す構造図である図3を用いて構成要素の説明と紙幣搬送の仕組みについて説明する。
図3に示すように、紙幣処理部110は、識別部10、シャッター111の下方の入金口112、出金返却口113、並びに収納手段に対応する一時保留部115及び収納部118で構成し、入金口112及び出金返却口113と一時保留部115、収納部118との間において、紙葉類に対応する紙幣Sを搬送する。
【0038】
損券レベル判定手段に対応する識別部10は、紙幣Sの真偽を判別する真偽判別センサ3(識別手段に対応)、紙幣Sに印刷され、固有特徴量情報に対応する記番号を読み取るための記番号読取センサ1(取引処理時固有特徴量認識手段に対応)、及び紙幣Sの正損分離処理を行うための損券検知センサ2(損券レベル判定手段に対応)を内蔵している。この実施例では、真偽判定センサ3、記番号読取センサ1、損券検知センサ2を分けて構成しているが、同一センサにより構成してもよい。
【0039】
入金口112は、入金時に利用者によって投入された入金紙幣を受け入れる受入口である。
出金返却口113は、利用者への返却紙幣が搬送されるとともに、出金時には出金紙幣が出金返却口113に払い出される排出口である。
【0040】
一時保留部115は、識別部10による紙幣読取の結果、後述するように真券紙幣と判別された紙幣Sを一時的に保管する保留部である。
回収庫116は、入金取引処理時や出金取引処理時に識別部10により損券紙幣と判別された紙幣Sを収納・保管する回収用の収納庫である。
【0041】
収納部118は、回収庫116と収納庫117A〜117Cとで構成している。
収納庫117A〜117Cは、現金自動取引装置100が取り扱う紙幣の金種毎に装備され、入金紙幣を金種毎に収納・保管する収納庫である。なお、本実施例では、三種類の金種の紙幣を取り扱うことを想定しているので、三つの収納庫117A〜117Cを装備している。
【0042】
上記構成の紙幣処理部110において、紙幣Sを入金する場合について説明する。
紙幣処理部110の入金口112に紙幣Sが投入されると、入金口112から紙幣Sを1枚ずつ分離して識別部10に搬送する。
【0043】
識別部10では紙幣Sの真偽や金種等の複数項目の判定が行われ、それらの判定結果から紙幣Sが正常な真券紙幣であるか、異常な偽券紙幣であるか、正常である場合には更に正券紙幣であるか損券紙幣であるか識別する。識別部10による真偽判定の結果、金種判定が不可であった紙幣Sや、例えば、寸法異常などによって真偽判定で偽券紙幣と判定された紙幣Sは、振り分けゲート114によって出金返却口113まで返却搬送される。これにより、上記紙幣Sは利用者に返却される。
【0044】
その一方、真券紙幣であると判定された紙幣Sは、一時保留部115まで搬送される。
一時保留部115に搬送された入金紙幣Sは、表示操作部120(図1)に表示された入金金額を確認した利用者によって入金確定指示操作が入力されると、一時保留部115から1枚ずつ繰出され、改めて識別部10を通過し、収納部118へ搬送される。
【0045】
識別部10による再度の識別により正券紙幣と判別された紙幣Sは、振り分けゲート114の駆動により、金種情報に従って対応する収納庫117A〜117Cのいずれかに収納され、紙幣に汚れや破れがあり次取引以降の出金取引処理には適さない損傷紙幣は損券紙幣と判定され、回収庫116に搬送されて保管される。
【0046】
一方、紙幣Sを出金する場合には、収納庫117A〜117Cのいずれかから紙幣Sが1枚ずつ分離され、識別部10へ搬送される。識別部10は紙幣Sの状態を確認し、正常な正券紙幣と判定された紙幣Sを出金返却口113へ搬送する。それ以外の損券紙幣は一時保管庫115へ一旦搬送され、その後に再び識別部10を経由し、識別部10の識別結果情報によって収納庫117A〜117Cへ収納されるか、或いは回収庫116に回収される。
【0047】
ここで、識別部10で判別する損券紙幣及び正損分離処理について、損券紙幣の代表例を示す図4、及び損券レベルを評価指標にした紙幣の分布グラフを示す図5とともにさらに詳しく説明する。
なお、現金自動取引装置100で実施する正損分離処理とは、真偽判定により真券紙幣と偽券紙幣に区分された紙幣のうち真券紙幣を、予め定められた正損判定基準に基づいて正券紙幣であるか損券紙幣であるかを判定し、物理的に正券紙幣と損券紙幣を区分することを指す。
【0048】
損券紙幣は、図4(a)に示すように、紙幣表面に汚れ50がある汚れ損券紙幣S0、図4(b)に示すように、紙幣の一部に破れ51がある破れ損券紙幣S1、図4(c)に示すように、紙幣の一部に折れ52がある折れ損券紙幣S2、図4(d)に示すように、紙幣の一部に穴53がある穴損券紙幣S3などが代表される。
【0049】
現金自動取引装置100の識別部10は、損券検知センサ2によって汚れ50、破れ51、折れ52、穴53を検知し、損傷の程度を損券レベル(損券レベル情報に対応)として検出する。
損券レベルは、例えば、破れ51の大きさ、穴53の大きさ等を数値で評価する指標であり、数値が大きくなるほど損傷の程度が悪くなることを示している。
【0050】
例えば、汚れ損券紙幣S0について損券レベル毎に紙幣Sを計数した際の分布グラフである図5(a)に示すように、汚れ損券紙幣S0に対する正損判定基準を損券レベル7とすると、斜線で示す損券比率60の範囲に含まれる紙幣Sは汚れ損券紙幣S0として判別される。
【0051】
破れ損券紙幣51の場合の分布グラフである図5(b)、穴損券紙幣52の場合の分布グラフである図5(c)、折れ損券紙幣53の場合の分布グラフである図5(d)、上記の4種類の損券紙幣について総合評価した結果についての分布グラフである図5(e)に示すように、損券紙幣の種類毎に紙幣分布及び損券比率60の範囲は異なり、損券紙幣を定量的に分離する場合には損券紙幣の種類毎に正損判定基準を設定する必要があることが分かる。なお、上述の四種類に加えて、損券紙幣の種類としてはテープ損券紙幣や落書き損券紙幣などがあるが、ここで示した損券紙幣以外の場合も同様に適用可能である。
【0052】
次に、上述のような損券レベルを損券レベル情報として、格納部24に記憶する紙幣識別情報25のデータフォーマット(情報形式に対応)について、紙幣識別情報25のデータフォーマットの一例を示す図6とともに説明する。
【0053】
取引処理時情報に対応する紙幣識別情報25は、現金自動取引装置100が設置されている支店の管理番号を示す支店管理番号情報30、支店内の現金自動取引装置の管理番号を示す装置管理番号情報31、認識した紙幣Sの記番号を示す記番号情報32(取引処理時固有特徴量情報に対応)、当該紙幣Sの真偽判定結果を示す真偽判定結果情報33(真偽識別結果情報に対応)、当該判定を行った日時に関する日時情報35(時間情報に対応)、及び上述した損券検知センサ2の出力に基づく各損券判定要素の損券レベルを示す損券レベル情報34で構成している。
【0054】
このようなデータフォーマットで各種データ情報を紙幣識別情報25として記憶することにより、紙幣Sの記番号情報と、真偽判定結果情報及び損券レベル情報とを関連付けて管理することができる。
【0055】
なお、上述の説明では、汚れ50や折れ52などの各損券判定要素の損券レベル情報34を紙幣識別情報25としたが、例えば、光学センサの透過率や反射率等の損券検知センサ2毎のセンサ出力情報を紙幣識別情報としてもよい。
【0056】
次に、紙幣仕分けシステム150の構成要素であるホストコンピュータ300について、ホストコンピュータ300のブロック図を示す図7とともに説明する。
ホストコンピュータ300は、主制御部350、データを格納するデータ格納部310、データの受け渡しを行う通信部351(受信手段及び送信手段に対応)、主制御部350の動作プログラム等を記録したROM352、主制御部350が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAM353、管理者が紙幣識別情報25の集計結果を視認するための表示部354、及び管理者による指示操作を入力許容する管理者入力部355を備えている。
【0057】
主制御部350は、データ格納部310、通信部351、ROM352、RAM353、表示部354、及び管理者入力部355がそれぞれ接続され、ROM352に記憶した動作プログラムによって、これらを制御する。また、主制御部350は、各支店の現金自動取引装置100から紙幣識別情報25と取引管理情報26とを関連付けた取引処理時情報を、通信部351を介して受信し、データ格納部310に格納して管理する。
【0058】
管理者入力部355は、例えば、後述の正損分離基準情報を作成するためにデータ集計管理を行う際における管理者による指示情報の入力操作を許容する入力部である。
【0059】
続いて、紙幣仕分けシステム150の構成要素である紙幣仕分け装置200について、紙幣仕分け装置200の電気的構成を示したブロック図である図8、及び紙幣仕分け装置200の機構を示す構造図である図10とともに説明する。
【0060】
紙幣仕分け装置200は、本店あるいは特定の支店のバックヤード等、現金自動取引装置100から紙幣Sが回収される場所に設置され、回収された紙幣Sの計数、真偽判定、正損分離処理といった精査業務を行う装置である。
【0061】
紙幣仕分け装置200は、図8に示すように、紙幣仕分け装置200の各部を制御する主制御部250、主制御部250の動作プログラム等を記録したROM251、主制御部250が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAM252、操作者による入力操作を受け付ける場合に使用する表示操作部253、情報の送受信を行う通信部254、及び各種情報を格納する格納部255を備えるとともに、紙幣仕分け装置200の内部には、紙幣Sを投入するホッパ220、紙幣識別部210、収納手段に対応するリジェクトスタッカ240、スタッカ245A〜245B、精査した紙幣Sを振り分ける振り分けゲート230を内蔵している。
【0062】
紙幣仕分け装置200は、情報入力手段として機能する通信部254及び通信回線400を介して、ホストコンピュータ300と接続されている。また、正損分離手段に対応する識別部210は、確認時固有特徴量認識手段に対応する記番号読取センサ201及び、枚数検出センサ203を搭載し、回収する紙幣Sに対して正損分離処理を行う。
【0063】
紙幣仕分け装置200で実施する正損分離処理とは、真偽判定により真券紙幣と偽券紙幣に区分された紙幣のうち真券紙幣を、正損分離基準に基づいて正券紙幣であるか損券紙幣であるかを判定し、物理的に正券紙幣と損券紙幣を区分することを指す。なお、正損分離基準は、予め設定された基準、処理の際に設定する基準、処理する紙幣の損券レベルに応じて算定した基準とすることができる。
【0064】
また、格納部255には、上述したホストコンピュータ300から受信した回収する紙幣Sに関する取引処理時情報を紙幣識別情報256として格納するとともに、正損分離基準を示す正損分離基準情報257を格納している。
【0065】
操作者による入力操作を受け付ける場合に使用する表示操作部253は、例えば、図9に示すように、正損分離基準情報257を設定する際の設定画面260を表示する。
【0066】
分離基準設定手段に対応する設定画面260は、正損分離基準情報として各損券分離要素の損券レベルを入力する入力領域261と、入力後に数値を有効とする設定ボタン262を表示し、正損分離作業前に、作業者によって、設定画面260から正損分離基準情報の入力を受け付ける。
【0067】
このように構成された紙幣仕分け装置200の説明と紙幣搬送の仕組みについて、図8〜10とともに説明する。
作業者によって、現金自動取引装置100から回収された紙幣Sがホッパ220に装填されると、紙幣Sを1枚ずつ分離して、ホッパ220から識別部210に搬送する。
識別部210は、枚数検出センサ203によって紙幣枚数を検出するとともに、記番号読取センサ201により紙幣Sの記番号を読み取る。
【0068】
主制御部250は、読み取った記番号情報(確認時固有特徴量認識情報に対応)から記番号を認識し、認識された記番号に基づいて、格納部255内の紙幣識別情報256を参照し、当該紙幣Sに関する真偽判別情報と損券レベル情報を得る。
【0069】
詳しくは、紙幣識別情報256は、ホストコンピュータ300から受信した回収する紙幣Sに関する取引処理時情報であり、取引処理時情報は紙幣識別情報25と取引管理情報26とを関連付けて現金自動取引装置100から受信した情報である。したがって、主制御部250は、紙幣Sの記番号情報と真偽判定結果情報及び損券レベル情報を関連付けて管理する紙幣識別情報25に基づく紙幣識別情報256から当該紙幣Sに関する真偽判別情報と損券レベル情報を得ることができる。
【0070】
続いて、主制御部250は、設定画面260から設定された正損分離基準を示す正損分離基準情報257(設定正損分離基準情報に対応)と、取得した紙幣識別情報256による当該紙幣Sの損券レベル情報とを比較し、当該紙幣Sが損券紙幣であれば振り分けゲート230の駆動によりリジェクトスタッカ240へ搬送し、当該紙幣Sが正券紙幣であれば振り分けゲート230の駆動により特定のスタッカ(例えば245A)へ振り分ける。
【0071】
次に、このように、回収する紙幣Sを振り分けするための基となる真偽判別情報や損券レベル情報を、現金自動取引装置100内の紙幣処理部110に搭載された識別部10において、紙幣識別情報25を記録する手順について図2,3,10〜12を用いて説明する。なお、図11,12は、現金自動取引装置100の入金及び出金動作手順を示したフローチャートであって、各ステップは現金自動取引装置100の主制御部20が実行する処理である。
【0072】
まず、入金取引処理時の手順について、入金取引処理時の動作手順を示したフローチャートである図11とともに説明する。
カード受付部130への利用者によるカード挿入操作や表示操作部120への利用者による入力操作によって入金取引処理が開始すると、入金口112に投入された紙幣Sを1枚ずつ分離して識別部10へ搬送する(ステップS10)。
【0073】
識別部10へ搬送された入金紙幣Sは、識別部10の真偽判別センサ3によって、真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS11)。
【0074】
また、識別部10では、真偽判別センサ3による真偽判定等に伴って、識別部10は記番号読取センサ1により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS12)とともに、損券検知センサ2により紙幣Sの損券レベルを検出する(ステップS13)。
【0075】
主制御部20は、識別部10によって紙幣Sが入金受付可能であると識別されたか否か、つまり真券紙幣と識別されたか偽券紙幣と識別されたかを判定し(ステップS14)、入金受付可能な真券紙幣と識別されると(ステップS14:YES)、紙幣Sを識別部10から一時保留部115へ搬送する(ステップS15)。
【0076】
逆に、ステップS14において、識別部10によって紙幣Sが入金受付不可能な偽券紙幣と識別されると(ステップS14:NO)、紙幣Sを識別部10から出金返却口113へ搬送して返却する(ステップS16)。
【0077】
そして、紙幣の搬送(ステップS15,16)の後、主制御部20は、入金口112の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS17)、入金口112にまだ紙幣Sがあれば(ステップS17:NO)、ステップS10へ移行して、入金口112から紙幣Sを繰り出して識別部10へ搬送し、上述したように識別部10で紙幣Sを識別する。
【0078】
なお、このように識別部10によって入金受付不可能な偽券紙幣と識別された紙幣Sは、複数の判定項目のうち少なくとも1つの項目を満足しなかった紙幣であって、例えば、紙幣処理部110で取り扱い不可能な金種の紙幣やレシート等の紙幣以外の媒体であるために識別部10では真券紙幣と判定できなかった紙葉類が含まれている。
【0079】
また、主制御部20が、入金口112に紙幣Sが全てなくなったことを判定すると(ステップS17:YES)、入金口112からの繰出しを終了し、表示操作部120に紙幣Sの金種、枚数、合計金額を表示する。
【0080】
そして、表示操作部120に表示された紙幣Sの金種、枚数、合計金額を確認した利用者により入金確定処理操作が行われると(ステップS18:YES)、識別部10により正券紙幣と識別された紙幣Sを、金種情報に従って一時保留部115から収納庫117A〜117Cのうちいずれかの対応する収納庫117に収納する。
【0081】
これに対し、紙幣Sに汚れ50や破れ53等があり、正損判定基準に従って次取引以降の出金取引処理には適さない等の理由で損券紙幣と判定された紙幣Sは、一時保留部115から回収庫116に搬送され、保管される(ステップS19)。
【0082】
更に、一時保留部115から収納庫117A〜117Cあるいは回収庫116に搬送された紙幣Sに関して、ステップS11〜S13で取得した真偽判定結果、記番号認識結果、損券レベル検出結果を紙幣識別情報25として、図6で示したデータフォーマットに従い、格納部24に記録し(ステップS20)、入金取引処理を終了する。
【0083】
一方、表示操作部120に表示された紙幣Sの金種、枚数、合計金額を確認した利用者により入金取引処理について取り消し操作が入力されると(ステップS18:NO)、一時保留部115に集積した紙幣Sを出金返却口113へ搬送して利用者に紙幣Sを返却し(ステップS21)、入金取引処理を終了する。
【0084】
次に、出金取引処理時の手順について、出金取引処理時の動作手順を示したフローチャートである図12とともに説明する。
前述の入金取引処理と同様に、カード受付部130への利用者によるカード挿入操作や表示操作部120への利用者による入力操作によって出金取引処理が開始すると、利用者から指定された金額情報に従って、当該収納庫117A〜117Cから該当する紙幣Sを1枚ずつ分離して識別部10へ搬送する(ステップS30)。
【0085】
識別部10では、真偽判別センサ3を用い、搬送された紙幣Sの真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS31)。
【0086】
また、識別部10では、真偽判別センサ3による真偽判定等に伴って、識別部10は記番号読取センサ1により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS32)とともに、損券検知センサ2により紙幣Sの損券レベルを検出する(ステップS33)。
【0087】
主制御部20は、識別部10によって紙幣Sが出金払出可能であると識別されたか否か、つまり真券紙幣と識別されたか偽券紙幣と識別されたかを判定し(ステップS34)、出金払出可能な真券紙幣と識別されると(ステップS34:YES)、紙幣Sを識別部10から出金返却口113へ搬送する(ステップS35)。
【0088】
逆に、ステップS34において、識別部10によって紙幣Sが出金払出不可能な偽券紙幣と識別されると(ステップS34:NO)、一時保留部115へ搬送する(ステップS36)。
【0089】
そして、紙幣の搬送(ステップS35,36)の後、主制御部20は、出金要求枚数が全て繰出されたか否かを判定し(ステップS37)、出金要求枚数を満たしていなければ(ステップS37:NO)、ステップS30へ移行して、当該収納庫117A〜117Cから紙幣Sを繰り出して識別部10へ搬送し、上述したように識別部10で紙幣Sを識別する。
【0090】
また、主制御部20が、出金要求枚数が全て繰出されたことを判定すると(ステップS37:YES)、当該収納庫117A〜117Cからの繰出しを終了し、一時保留部115に収納された紙幣Sを回収庫116に収納する(ステップS38)。
【0091】
このとき、ステップS31〜S33で取得された真偽判定結果、記番号認識結果、損券レベル検出結果を紙幣識別情報25として、図6で示したデータフォーマットに従って、格納部24に記録する。しかし、既に同じ記番号の紙幣識別情報が存在する場合には、損券判定日時35に基づいて新しい情報を紙幣識別情報25として上書き更新する(ステップS39)。また、正常に出金された紙幣Sに関する紙幣識別情報25を格納部24から削除し(ステップS40)、出金取引処理を終了する。
【0092】
以上の処理フローによると、入金取引処理及び出金取引処理において識別部10を通過した紙幣Sについて、紙幣処理部110内に存在すべき紙幣Sについての紙幣識別情報25を確実に記録することができる。
これにより、紙幣識別情報25に基づいて紙幣処理部110内の紙幣枚数管理も同時に行うことが可能となる。
【0093】
なお、入出金取引処理開始前に、収納庫117A〜117Cに事前に装填された紙幣Sも含めて、紙幣識別情報25の管理を行うためには、紙幣処理部110において充填された紙幣Sに対して自動精査を実施すればよい。
【0094】
自動精査処理時の手順では、自動精査処理時の動作手順のフローチャートである図13に示すように、まず回収庫116や一時保留部115など、収納庫117(117A〜117C)以外の場所に紙幣Sが無いか否かを判定し(ステップS79)、紙幣Sがあれば取り除く(ステップS79:NO)。収納庫117以外の場所に紙幣Sがない場合(ステップS79:YES)、格納部24に登録されている紙幣識別情報25をクリアする(ステップS80)。
【0095】
その後、収納庫117のうちのいずれから紙幣Sを1枚ずつ分離して識別部10へ搬送する(ステップS81)。なお、本説明では、収納庫117Aから紙幣Sを搬送する構成について説明する。
【0096】
識別部10へ搬送された紙幣Sは、識別部10の真偽判別センサ3によって、真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS82)。
【0097】
また、識別部10では、真偽判別センサ3による真偽判定等に伴って、識別部10は記番号読取センサ1により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS83)とともに、損券検知センサ2により紙幣Sの損券レベルを検出する(ステップS84)。
【0098】
主制御部20は、識別部10によって紙幣Sが正常に識別されたか否か、つまり真券紙幣と識別されたか偽券紙幣と識別されたかを判定し(ステップS85)、正常な真券紙幣と識別されると(ステップS85:YES)、紙幣Sを識別部10から一時保留部115へ搬送する(ステップS86)。逆に、ステップS85において、識別部10によって紙幣Sが正常でない偽券紙幣と識別されれば(ステップS85:NO)、紙幣Sを識別部10から出金返却口113へ搬送する(ステップS87)。
【0099】
この処理(ステップS81〜87)を、一時保留部115の集積容量が満になるまで繰り返し、満になると一時保留部115の紙幣Sを全て回収庫116に収納する(ステップS88)。
【0100】
また、主制御部20は、収納庫117A内の紙幣Sが全て繰出されたか否かを判定し(ステップS89)、残り紙幣があれば(ステップS89:NO)、ステップS81へ移行して、繰出しを再開し、上述したように識別部10における紙幣Sの識別を実行する。
【0101】
これに対して、収納庫117Aが空になると(ステップS89:YES)、収納庫117Aからの繰出しを終了し、先ほどまでの手順と逆に、回収庫116内の紙幣Sを全て、一時保留部115を経由して元の収納庫117Aへ収納させる。(ステップS90)。
【0102】
この際、収納庫117Aに収納した紙幣についてステップS82〜S84で取得した真偽判定結果、記番号認識結果、損券レベル検出結果を紙幣識別情報25として、図6で示したデータフォーマットに従い、格納部24に記録する(ステップS91)。
【0103】
なお、収納庫117Bまたは収納庫117C内の紙幣Sについても同様の手順に従い、紙幣識別情報25を登録する(ステップS92)。最後に出金返却口113に集積された紙幣Sを取り除き、自動精査処理を終了する。
以上の手順による自動精査処理を行うことによって、紙幣処理部110に装填された全ての紙幣Sについて紙幣識別情報25を確実に登録することができる。
【0104】
このように、上述の入出金取引処理及び自動精査処理において判定し、記憶した紙幣識別情報25は、紙幣Sを回収するための収納庫117や回収庫116の搬出に伴って、通信部23及び通信回線400を介してホストコンピュータ300に送信され、紙幣識別情報25を受信したホストコンピュータ300は、データ格納部310に格納し、管理する。
【0105】
次に、紙幣仕分け装置200において、上述の処理フローで登録された紙幣識別情報25に基づいて正損分離処理を行う手順について図8〜10及び図14を用いて説明する。
【0106】
なお、図14は紙幣仕分け装置200による正損分離処理手順を示したフローチャートであり、各ステップは紙幣仕分け装置200の主制御部250が実行する処理である。
【0107】
まず、銀行の支店にある現金自動取引装置100から回収された紙幣Sについて、関連する紙幣識別情報25をホストコンピュータ300のデータ格納部310から受信し、格納部255の紙幣識別情報256として登録する(ステップS49)。
【0108】
具体的な方法としては、紙幣仕分け装置200の表示操作部253への作業者による入力操作によって、ホストコンピュータ300に対して受信要求を入力してもよいし、回収した紙幣Sのうち、後述する手順に従って少数枚をまず紙幣仕分け装置200にて認識させ、関連する紙幣識別情報25をホストコンピュータ300から自動的に受信させてもよい。
【0109】
次に、正損分離基準として損券判定要素毎の正損分離基準情報257について設定画面260からの設定を受け付ける(ステップS50)。この正損分離基準は現金自動取引装置100の正損判定基準と合わせてもよいし、現金運用手順に従い、紙幣仕分け装置200側で独自に設定してもよい。さらには、この正損分離処理を行う際にあらかじめ設定してもよい(正損分離基準情報に対応)。
【0110】
その後、回収された紙幣Sをホッパ220から1枚ずつ分離し、識別部210へ搬送し(ステップS51)、識別部210に搭載された枚数検出センサ203により紙幣の枚数をカウントするとともに、記番号読取センサ201により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS52)。
【0111】
主制御部250は、認識した記番号に基づいて格納部255に格納した紙幣識別情報256と比較照合し、当該紙幣Sに対応した紙幣識別情報256(真偽判別情報,損券レベル情報)を得る(ステップS53)。
【0112】
そして、主制御部250は、ステップS50で設定した正損分離基準情報257と、ステップS53で取得した紙幣識別情報256のうちの損券レベル情報とを比較し、紙幣Sが正券紙幣であるか損券紙幣であるかを判定する(ステップS54)。
【0113】
正券紙幣であると判定した場合(ステップS54:NO)、紙幣Sをスタッカ(例えば245A)に集積し(ステップS55)、損券紙幣であると判定した場合(ステップS54:YES)、紙幣Sをリジェクトスタッカ240へ集積する(ステップS57)。また、紙幣識別情報256の真偽判別情報を参照した結果、偽券紙幣であると判定した場合も紙幣をリジェクトスタッカ240に集積する。
【0114】
上記の手順(ステップS51〜S57)をホッパ220に紙幣Sがなくなるまで繰り返し(ステップS56)、紙幣仕分け装置200における正損分離処理を終了する。
以上の手順によると、紙幣仕分け装置200において、真偽判別センサ3と損券検知センサ2を搭載していなくとも現金自動取引装置100と同等の真偽判定及び正損分離処理が実施できる。
【0115】
また、紙幣仕分け装置200は、記番号読取センサ1を備えるという簡素なセンサ構成で実現できるばかりでなく、紙幣仕分け装置200でのデータ処理負荷が少なくなる分、高速処理を容易に実現することが可能となる。
【0116】
また、正損分離処理については紙幣識別情報25にある損券レベル情報を参照することによって、紙幣仕分け装置200で設定された正損分離基準に従って、改めて正券紙幣と損券紙幣を分離することができる。
【0117】
なお、上述の説明では、紙幣識別情報256をホストコンピュータ300から受信する形式について説明したが、ステップS52で認識した記番号に基づいて、リアルタイムで通信回線400を経由してホストコンピュータ300と通信し、該当する紙幣Sの紙幣識別情報25を取得してもよい。
【0118】
また、上述の説明では、回収する紙幣Sを単純に正券紙幣と損券紙幣の2種類に正損分離処理したが、銀行の運用によっては正損分離の区分を単純に正券紙幣と損券紙幣の2種類だけでなく、ATMやCDなどの自動機の稼動品質を安定させることを目的とした自動機用正券紙幣、主に窓口業務で扱う窓口用正券紙幣、返却処理用の損券紙幣との3種類に分類することがある。このように正損分離基準が複数ある場合の正損分離処理手順を次に説明する。なお、以下の説明では、正損分離基準を2つ持つ場合の正損分離処理手順を示したフローチャートである図16に基づいて説明する。
【0119】
まず、上述したように、銀行の支店にある現金自動取引装置100から回収された紙幣Sについて、関連する紙幣識別情報25をホストコンピュータ300のデータ格納部310から受信し、格納部255の紙幣識別情報256として登録する(ステップS59)。
【0120】
次に、回収する紙幣Sを3つに区分するための正損分離基準として損券判定要素毎に正損分離基準情報257を設定する(ステップS60)。
具体的には、例えば、回収する紙幣Sを、自動機用正券紙幣、主に窓口業務で扱う窓口用正券紙幣、返却処理用の損券紙幣との3種類に分類する場合の正損分離基準情報257の一例である図15に示すように、窓口用正券紙幣及び自動機用正券紙幣等の損券要素36と、損券要素毎に正券紙幣と判別する下限の損券レベル37とを規定する。
【0121】
その後、回収された紙幣Sをホッパ220から1枚ずつ分離し、識別部210へ搬送し(ステップS61)、識別部210に搭載された枚数検出センサ203により紙幣の枚数をカウントするとともに、記番号読取センサ201により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS62)。
主制御部250は、認識した記番号に基づいて格納部255に格納した紙幣識別情報256と比較照合し、当該紙幣Sに対応した紙幣識別情報256を得る(ステップS63)。
【0122】
そして、主制御部250は、ステップS60で設定した正損分離基準情報257と、ステップS63で取得した紙幣識別情報256のうちの損券レベル情報とを比較し、紙幣Sが正券紙幣であるか損券紙幣であるかを判定する(ステップS64)。
【0123】
正券紙幣であると判定した場合(ステップS64:NO)において、当該紙幣Sについてさらに、最も程度の良い自動機用正券紙幣であるか、通常の程度である窓口用正券紙幣であるかを正損分離基準情報257に従って判定し(ステップS65)、紙幣Sが自動機用正券紙幣であれば(ステップS65:YES)、紙幣Sを第1スタッカ245Aに集積し(ステップS67)、紙幣Sが窓口用正券紙幣であれば(ステップS65:No)、第2スタッカ245Bに集積する(ステップS66)。
【0124】
また、紙幣Sを損券紙幣と判定した場合には(ステップS64:YES)、リジェクトスタッカ240に集積する(ステップS69)。また、紙幣識別情報256の真偽判別情報を参照した結果、偽券紙幣であると判定した場合も紙幣をリジェクトスタッカ240に集積する。
上記の手順(ステップS61〜S67)をホッパ220に紙幣Sがなくなるまで繰り返し(ステップS68)、紙幣仕分け装置200における正損分離処理を終了する。
【0125】
以上の手順によると、紙幣仕分け装置200において、例えば、ATMやCDなどの自動機の稼動品質を安定させることを目的として自動機用正券紙幣、主に窓口業務で扱う窓口用正券紙幣、返却処理用の損券紙幣との3種類に分類することができる。
【0126】
これまで、図5に示すように固定された正損分離基準に基づいて正損分離処理を行う手順について説明したが、この場合、処理すべき紙幣Sの損傷程度によって損券比率60が変動する。そこで回収される紙幣Sの損傷の程度に依らず、損券比率60が一定となるように、正損分離基準情報257を算出する場合について、以下の実施例2、3で説明する。
【実施例2】
【0127】
この実施例2は、上述の実施例1と比較し、紙幣仕分け装置200における制御プログラムの一部が異なるのみであるため、異なる制御プログラムの部分について説明する。
【0128】
なお、この制御プログラムは、正損分離処理時に正損分離基準情報257を、ホストコンピュータ300のデータ格納部310から受信した紙幣識別情報25に基づいて、一定の損券比率60となるように主制御部250によって算出する機能(算出手段に対応)を備えている。
【0129】
このように構成することによって、回収した紙幣Sの損傷程度が紙幣回収の度に変化したとしても、正損分離処理において一定量の損券紙幣を分離することができ、正損分離処理に関わる業務負荷を平坦化することが可能となる。
【0130】
紙幣仕分け装置200において正損分離基準を損券比率60が一定となるように変更する手順についてのフローチャートである図17とともに、具体的に説明する。なお、各ステップは紙幣仕分け装置200の主制御部250が実行する処理である。
【0131】
まず、銀行の支店にある現金自動取引装置100から回収された紙幣Sについて、関連する紙幣識別情報25をホストコンピュータ300のデータ格納部310から受信し、格納部255の紙幣識別情報256として登録する(ステップS100)。
【0132】
次に、希望する損券比率60について表示操作部253からの入力を受け付ける(ステップS101)。主制御部250は、紙幣識別情報256に基づいて、入力された損券比率60となるよう正損分離基準を算出し(ステップS102)、正損分離基準情報257(算定正損分離基準情報に対応)として記憶する。なお、損券比率60についての表示操作部253からの入力受付けは、この正損分離処理を行う際に、前もって受け付けてもよい。
【0133】
算出方法としては、各損券分離要素の損券レベルを変更し、入力された損券比率60に最も近くなる組み合わせを算出する方式でもよいし、損券判定要素によって重みを付け、例えば、汚れ損券紙幣を主体に、入力された損券比率60付近で汚れ損券比率60が最も多くなるように算出してもよい。
【0134】
その後、回収された紙幣Sをホッパ220から1枚ずつ分離し、識別部210へ搬送し(ステップS103)、識別部210に搭載された枚数検出センサ203により紙幣Sの枚数をカウントするとともに、記番号読取センサ201により紙幣Sの記番号画像を取得し、記番号の認識処理を行う(ステップS104)。
【0135】
主制御部250は、認識した記番号に基づいて格納部255に格納した紙幣識別情報256と比較照合し、当該紙幣Sに対応した紙幣識別情報256を得る(ステップS105)。
【0136】
そして、主制御部250は、ステップS102で算出した正損分離基準情報257と、ステップS105で取得した紙幣識別情報256のうち損券レベル情報とを比較し、紙幣Sが正券紙幣であるか損券紙幣であるかを判定する(ステップS106)。
【0137】
正券紙幣であると判定した場合(ステップS106:NO)、紙幣Sをスタッカ(例えば245A)に集積し(ステップS107)、損券紙幣であると判定した場合(ステップS106:YES)、紙幣Sをリジェクトスタッカ240へ集積する(ステップS109)。また、紙幣識別情報256の真偽判別情報を参照した結果、偽券紙幣であると判定した場合も紙幣をリジェクトスタッカ240に集積する。
【0138】
上記の手順(ステップS103〜S107,S109)をホッパ220に紙幣Sがなくなるまで繰り返し(ステップS108)、紙幣仕分け装置200における正損分離処理を終了する。
以上の手順によると、紙幣Sの損傷の程度に依らず希望した損券比率60で正損分離処理を行うことが可能である。
【0139】
なお、本実施例では、紙幣仕分け装置200で正損分離基準情報257を変更する手順を説明したが、ホストコンピュータ300で設定してもよい。詳しくは、例えば、現金管理業務を請け負う警備会社の現金センタなどでは複数の現金自動取引装置100を対象とし、大量に集められた紙幣Sを複数の紙幣仕分け装置200で正損分離処理を行う。このような場合には、紙幣仕分け装置200上ではなく、ホストコンピュータ300上で一定の損券比率60となるように正損分離基準情報257を算出するという実行プログラムを採用してもよい。その手順について、以下の実施例3で説明する。
【実施例3】
【0140】
実施例3では、実施例1と比較してホストコンピュータ300と紙幣仕分け装置200の制御プログラムが一部異なるのみである。このため、異なる制御プログラムの部分について説明する。
【0141】
なお、この制御プログラムは、ホストコンピュータ300において、ホストコンピュータ300のデータ格納部310上にある紙幣識別情報25に基づいて一定の損券比率60となるように正損分離基準を算出し、紙幣仕分け装置200では算出された正損分離基準を正損分離基準情報257(算定正損分離基準情報に対応)として受信する機能を備えている(算出手段に対応)。
【0142】
このように構成することによって、回収した紙幣Sの損傷程度が紙幣回収のたびに変化したとしても、複数の紙幣仕分け装置200を用い、回収する大量の紙幣Sを処理する正損分離処理において一定量の損券紙幣を分離することができ、正損分離処理に関わる業務負荷を平坦化することが可能となる。
【0143】
複数の紙幣仕分け装置200においても、損券比率60が一定となるように正損分離基準を変更する手順を示したフローチャートである図18とともに、具体的に説明する。なお、各ステップはホストコンピュータ300の主制御部350が実行する処理である。
【0144】
まず、管理者による管理者入力部355からの希望する損券比率60の入力を受け付け、設定する(ステップS70)。
なお、損券比率60の設計は、ホストコンピュータ300における管理者入力部355から入力を受け付けてもよいし、紙幣仕分け装置200の表示操作部253からの設定を受け付け、ホストコンピュータ300に送信し、設定してもよい。
【0145】
次に、主制御部350は、ホストコンピュータ300に集約されている紙幣識別情報25に基づいて、ステップS70で設定された損券比率60となるように紙幣仕分け装置200で使用される正損分離基準情報257を作成する(ステップS71)。
【0146】
そして、紙幣仕分け装置200にて正損分離処理を行う際に、紙幣識別情報25をホストコンピュータ300から受信するとともに(ステップS72)、ステップS71で、ホストコンピュータ300にて作成した正損分離基準情報257をホストコンピュータ300から紙幣仕分け装置200の格納部255へ受信する(ステップS73)。以下の処理は、実施例2におけるステップS103乃至S108と同様の手順を行う。
【0147】
以上の手順によると、集約された紙幣識別情報25に基づいて正損分離基準を定めるため、個別の紙幣仕分け装置200毎に正損分離基準を定めるよりも、確実に損券比率60の変動をより抑えることができる。
【0148】
また、上述の実施例3ではホストコンピュータ300から紙幣識別情報25と、設定、あるいは算定された正損分離基準情報257を紙幣仕分け装置200で受信したが、ホストコンピュータ300で設定した正損分離基準情報257に基づいて、主制御部350によって正損分離判定を行った判定結果を紙幣識別情報25に含めて紙幣仕分け装置200で受信し、ホストコンピュータ300で行った正損分離判定結果に応じて、紙幣仕分け装置200で正損分離処理を行ってもよい。
【0149】
この場合、紙幣識別情報のデータフォーマットの一例である図19に示すように、ホストコンピュータ300にて正損判定を行った判定日時情報38、及び正損判定結果情報39をホストコンピュータ300から受信し、紙幣仕分け装置200は、認識した記番号に対応した紙幣Sの正損判定結果を参照することで、容易に正損分離することができる。
【0150】
また、判定日時情報38(時間情報に対応)を合わせて付与することで、ホストコンピュータ300にて正損分離判定を行ったタイミングが明らかとなり、ホストコンピュータ300の正損分離基準が更新されたとしても、更新の日時と判定日時情報38を比較することで誤った判定結果に基づいて正損分離処理を行う惧れを回避することができる。
【0151】
ところで、紙幣仕分け装置200により窓口用正券紙幣あるいは自動機用正券紙幣と判定された紙幣Sは市場へ再度流通することとなる。流通紙幣についてはホストコンピュータ300上の紙幣識別情報25を再利用してもよい。具体的には現金自動取引装置100においても記番号読取センサ1のみを使用するだけでホストコンピュータ300上の紙幣識別情報25を参照すれば損券レベルを検出することができる。紙幣Sの損傷レベルは時間の経過と共に変化するが、紙幣識別情報25の損券判定日時35の情報を利用し、有効期限を設けることで、一旦判定した後も信頼性のある情報として識別情報を利用することができる。
【0152】
一方、紙幣仕分け装置200の正損分離処理において、損券紙幣もしくは偽券紙幣と判定された紙幣Sは発行元へ回収されるが、回収されたタイミングでホストコンピュータ300上の紙幣識別情報25を消去すれば、データ格納部310を効率よく活用することができる。
【0153】
また、上述の説明では、現金自動取引装置100、ホストコンピュータ300及び紙幣仕分け装置200の相互間の情報伝達手段として通信回線400を用いたが、オフラインでもこのシステムは実現可能である。
【0154】
例えば、図20に示すように、紙幣処理部110において各回収庫116及び収納庫117A〜117Cにメモリ119(記憶手段、取引処理時情報出力手段及び取引処理時情報出力手段に対応)を搭載し、収納された紙幣Sに関する紙幣識別情報25をメモリ119に記憶させてもよい。この場合、紙幣回収の際には収納庫ごと運搬し、紙幣回収先での正損分離処理の際にはメモリ119に記憶した紙幣識別情報25を読み取り、紙幣仕分け装置200に入力すればよい。
【0155】
また、本実施例では記番号を紙幣Sの持つ固有特徴量として取扱い、真偽判定結果と損券レベルとを関連付ける場合について説明したが、紙幣Sの固有特徴量としては記番号に限定されず、例えば、バーコードやICチップ等、紙幣Sが個別に認識可能な情報であればよい。
【0156】
また、記番号やバーコード等の固有特徴量が文字あるいはコードとして認識処理できない場合には、記番号やバーコードの画像情報を当該紙幣の固有特徴量として扱ってもよい。この場合には、紙幣仕分け装置200で読み取った画像情報と紙幣識別情報256として記憶されている画像情報との画像照合処理を行えばよい。
【0157】
さらには、図21で示したように、例えば、紙幣S自体にICチップ70を搭載した場合においては、紙幣処理部110で検出されたそれぞれの紙幣識別情報25をそれぞれのICチップ70へ書き込み、紙幣仕分け装置200による正損分離処理の際にはICチップ70の情報を読み取ればよい。
【0158】
また、上述の説明では、本発明に関わる紙葉類処理装置及び紙葉類仕分けシステムを、紙幣Sを正損分離処理する紙幣仕分け装置200を用いた場合について説明したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外に商品券や小切手などの有価証券など、固有の特徴量を持つ媒体を正損分離処理する仕分け装置としてもよい。
【符号の説明】
【0159】
S…紙幣,1…記番号読取センサ,2…損券検知センサ,3…真偽判別センサ,10…識別部,20…主制御部,23…通信部,24…格納部,25…紙幣識別情報,32…記番号,33…真偽判定結果,34…各損券判定要素の損券レベル,35…損券判定日時,37…各紙幣区分の損券レベル,38…正券判定日時,39…正損判定結果,70…ICチップメモリ,100…現金自動取引装置,110…紙幣処理部,115…一時保留部,116…回収庫,117A〜117C…収納庫,118…収納部,119…メモリ,150…紙幣仕分けシステム,200…紙幣仕分け装置,201…記番号読取センサ,203…枚数検出センサ,240…リジェクトスタッカ,245A…第1スタッカ,245B…第2スタッカ,250…主制御部,254…通信部,255…格納部,256…紙幣識別情報,257…正損分離基準情報,260…正損分離基準情報の設定画面,300…ホストコンピュータ,310…データ格納部,350…主制御部,351…通信部,400…通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を取引処理する取引処理手段と、
内部に前記紙葉類を収納する少なくともひとつの収納手段と、
前記取引処理に応じて前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する取引処理時固有特徴量認識手段と、
前記紙葉類の損券レベルを予め定めた正損判定基準情報に基づいて判定する損券レベル判定手段と、
該損券レベル判定手段で判定した紙葉類の損券レベル情報、及び前記取引処理時固有特徴量認識手段で認識した取引処理時固有特徴量情報とを前記紙葉類毎に関連付けて記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記紙葉類毎の前記取引処理時固有特徴量情報及び前記損券レベル情報を取引処理時情報として、前記収納手段の搬出に応じて、外部に移送する情報移送手段とを備え、
該情報移送手段を、
搬出された前記収納手段に収納された前記紙葉類を確認する際に前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する確認時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類を正損分離する正損分離手段とを備えた紙葉類仕分け装置に対して、移送することを特徴とする
紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記情報移送手段を、
前記紙葉類仕分け装置において、前記確認時固有特徴量認識手段が認識した確認時固有特徴量情報に対応する前記取引処理時固有特徴量情報に関連付けられた前記損券レベル情報及び前記紙葉類を正損分離するための正損分離基準情報に基づいて前記正損分離手段が前記紙葉類を正損分離可能な情報形式で移送する構成とした
請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記収納手段に、前記記憶手段を備えた
請求項1又は2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記紙葉類を取引処理する取引処理手段と、内部に前記紙葉類を収納する少なくともひとつの収納手段と、前記固有特徴量情報を前記取引処理に応じて認識する取引処理時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類の損券レベルを予め定めた正損判定基準情報に基づいて判定する損券レベル判定手段とを有する紙葉類処理装置から搬出された前記収納手段に収納された前記紙葉類を確認する際に前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する確認時固有特徴量認識手段、
外部からの情報を入力する情報入力手段、及び
前記紙葉類を正損分離するための正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する正損分離手段を備え、
前記情報入力手段を、
前記紙葉類処理装置から、該損券レベル判定手段で判定した紙葉類の前記損券レベル情報と、前記取引処理時固有特徴量認識手段で認識した取引処理時固有特徴量情報とを前記紙葉類毎に関連付けた情報形式で出力された取引処理時情報を入力する構成とするとともに、
前記正損分離手段を、
前記情報入力手段から入力された前記取引処理時情報を利用し、前記確認時固有特徴量認識手段が認識した確認時固有特徴量情報に対応する前記取引処理時固有特徴量情報に関連付けられた前記損券レベル情報と、前記正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する構成とした
紙葉類仕分け装置。
【請求項5】
前記正損分離基準情報を設定する分離基準設定手段を有し、
該分離基準設定手段で設定した設定正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する
請求項4に記載の紙葉類仕分け装置。
【請求項6】
前記損券レベル情報に基づいて前記正損分離基準情報を算定する算定手段を有し、
該算定手段で算定した算定正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する
請求項4に記載の紙葉類仕分け装置。
【請求項7】
紙葉類を取引処理する取引処理手段と、内部に前記紙葉類を収納する収納手段と、前記取引処理に応じて前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する取引処理時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類の損券レベルを予め定めた正損判定基準情報に基づいて判定する損券レベル判定手段と、該損券レベル判定手段で判定した紙葉類の損券レベル情報と、前記取引処理時固有特徴量認識手段で認識した取引処理時固有特徴量情報とを前記紙葉類毎に関連付けて記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前記紙葉類毎の前記取引処理時固有特徴量情報及び前記損券レベル情報を、前記収納手段の搬出に応じて、取引処理時情報として外部に移送する情報移送手段とを備えた紙葉類処理装置、及び
搬出された前記収納手段に収納された前記紙葉類を確認する際に前記紙葉類の固有特徴量情報を認識する確認時固有特徴量認識手段と、前記紙葉類処理装置の前記情報移送手段によって移送された前記取引処理時情報を入力する情報入力手段と、該情報入力手段から入力された前記取引処理時情報を利用し、前記確認時固有特徴量認識手段が認識した確認時固有特徴量情報に対応する前記取引処理時固有特徴量情報に関連付けられた前記損券レベル情報及び前記紙葉類を正損分離するための正損分離基準情報に基づいて前記紙葉類を正損分離する正損分離手段とを備えた紙葉類仕分け装置で構成する
紙葉類仕分けシステム。
【請求項8】
前記紙葉類を管理する管理端末を備え、
前記紙葉類処理装置、前記紙葉類仕分け装置及び前記管理端末を通信手段で接続し、
前記管理端末に、
前記通信手段を介して、前記取引処理時情報を受信する受信手段と、
該受信した前記取引処理時情報の前記損券レベル情報に基づいて前記紙葉類を正損分離するための正損分離基準情報を算定する算定手段と、
該算定手段で算定した算定正損分離基準情報を、前記紙葉類仕分け装置に対して前記通信手段を介して送信する送信手段とを備えた
請求項7に記載の紙葉類仕分けシステム。
【請求項9】
前記紙葉類処理装置に、前記紙葉類の真偽を識別する識別手段を備え、
該識別手段で識別した真偽識別結果情報を、
前記取引処理時情報において、前記紙葉類毎の前記損券レベル情報及び前記固有特徴量情報に関連付けて前記記憶手段に記憶した
請求項7又は8に記載の紙葉類仕分けシステム。
【請求項10】
前記取引処理時情報に、
前記紙葉類を、前記紙葉類の損券レベルを予め定めた前記正損判定基準情報に基づいて判定した時の時間情報を含む
請求項7乃至9のうちいずれかひとつに記載の紙葉類仕分けシステム。
【請求項11】
前記収納手段に、
内部に収納された紙葉類の各々に対して、前記取引処理時情報を記憶する取引処理時情報記憶手段と、
該取引処理時情報記憶手段で記憶した前記取引処理時情報を外部装置に対して出力する取引処理時情報出力手段とを備えた
請求項7乃至10のいずれかひとつに記載の紙葉類仕分けシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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