説明

紙葉類処理装置及び搬送部材清掃装置

【課題】搬送部材に付着したインクを拭取ることにより紙葉類の汚れを防止することが可能な紙葉類処理装置及び搬送部材清掃装置を提供する。
【解決手段】印刷された紙葉類を挟持して搬送する搬送部材と、この搬送部材の近傍に回転可能に支持された円柱状の芯体、この芯体の表面に券回され、その表面が搬送部材における該紙葉類との接触面に接触可能に配置されるとともに、粘着性が付与された清掃クロスとを有する清掃ローラ3、及びこの清掃ローラ3を搬送部材と速度差を持たせて回転駆動せしめる回転駆動機構4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された紙葉類を搬送する搬送部材に付着したインクなどの汚れを取るための搬送部材清掃装置を備えた紙葉類処理装置及び搬送部材清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣処理装置では、紙幣を搬送ベルトやローラで挟持して搬送するが、印刷されたインクが充分に乾燥していない状態であると紙幣を搬送するベルトやローラなどの搬送部材にインクが付着し、その付着したインクが搬送ベルトやローラで搬送される他の紙幣等を汚すという問題があった。また、搬送ベルトやローラに付着したインクは、乾燥すると他の紙幣等に転写しなくなるが、一方で、搬送ベルトやローラの摩擦係数を低下させ、搬送性能を損なうという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、インクが付着した搬送ベルトやローラにクリーニングローラを接触させて、付着したインクをクリーニングローラに転写させて清掃する方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、紙幣処理装置においては、その処理量が膨大であるため、拭き取られたインクによって、クリーニングローラ表面が短時間で汚れてしまい、クリーニングローラの交換が頻繁となり、その交換に多大な時間とコストが必要となるという問題があった。
【0004】
その改善策として、クリーニングローラにクロスを巻きつけて、搬送ベルトやローラに接触させて、クロスにインクを拭き取らせ、汚れたクロスを交換するという方法が採用されている。
【0005】
このクリーニングクロスによるインクの拭取り性能は拭取り時の荷重が大きいほど上昇する。
【0006】
しかしながら、紙幣処理装置では、秒速数メートルの高速で紙幣が搬送されるので、搬送ベルトとクリーニングクロスを巻いたローラとを接触させる場合に、あまり接触圧を大きくすると、搬送ベルトの外れや紙幣のスキューや速度むらなどが発生する可能性がある。このため、高速で紙幣を搬送する装置では、クリーニングクロスを巻いたローラの接触圧を大きくすることが出来ず、その結果、クロス拭取り性能が低くなり、搬送ベルトやローラのインク汚れを充分に清掃することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−111456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、搬送部材に付着したインクを拭取ることにより紙葉類の汚れを防止することが可能な紙葉類処理装置及び搬送部材清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紙幣処理装置は、印刷された紙葉類を挟持して搬送する搬送部材と、この搬送部材の近傍に回転可能に支持された円柱状の芯体、この芯体の表面に券回され、その表面が前記搬送部材における該紙葉類との接触面に接触可能に配置されるとともに、粘着性が付与された清掃クロスとを有する清掃ローラ、及びこの清掃ローラを前記搬送部材と速度差を持たせて回転駆動せしめる回転駆動機構を有する搬送部材清掃装置とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の搬送部材清掃装置は、回転可能に支持された円柱状の芯体と、この芯体の表面に券回され、その表面が前記搬送部材における該紙葉類との接触面に接触可能に配置されるとともに、粘着性が付与された清掃クロスとを有する清掃ローラと、この清掃ローラを前記搬送部材と速度差を持たせて回転駆動せしめる回転駆動機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送部材に付着したインクを拭取ることにより紙葉類の汚れを防止することが可能な紙葉類処理装置及び搬送部材清掃装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す紙幣処理装置の概略図である。
【図2】搬送部材清掃装置の一例を表す斜視図である。
【図3】図2の搬送部材体清掃装置の内部構成を表す一部切欠断面概略図である。
【図4】図3のY−Y’部分の断面図である。
【図5】本実施形態発明に用いられる搬送部材清掃装置の芯体の他の一例を表す断面図である。
【図6】本実施形態発明に用いられる搬送部材清掃装置の芯体のさらに他の一例を表す断面図である。
【図7】図5の溝加工の一例を表す斜視概略図である。
【図8】図5の溝加工の他の一例を表す斜視概略図である。
【図9】インクの拭取り実験を示す図である。
【図10】搬送部材清掃装置の効果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、紙幣処理装置100の構成例を示す。
紙幣処理装置100は、装置内部に、投入部112、取出部113、吸着ローラ114、搬送路115、検査部116、ゲート120乃至125、排除搬送路126、排除集積部127、集積・結束部128乃至131、裁断部133、及びスタッカ134を備える。また、紙幣処理装置100は、主制御部151を備える。主制御部151は、紙幣処理装置100の各部の動作を統合的に制御する。
【0015】
取出部113は、投入部の上部に設けられる。取出部113は、吸着ローラ114を備えている。吸着ローラ114は、投入部112にセットされた紙幣を集積方向の上端に接するように設けられている。即ち、吸着ローラ114は、回転することにより、投入部112にセットされた紙幣を集積方向の上端から1枚ずつ装置内部に取り込む。吸着ローラ114は、たとえば、1回転するごとに1枚の紙幣を取り込むように機能する。これにより、吸着ローラ114は、紙幣を一定のピッチで取り込む。吸着ローラ114により取り込まれた紙幣は、搬送路115に導入される。
【0016】
搬送路115は、紙幣を紙幣処理装置100内の各部に搬送する搬送手段である。搬送路115は、一対の搬送ベルト及び駆動プーリ(搬送ローラ)などを備えている。搬送路115は、図示しない駆動モータ及び駆動プーリにより搬送ベルトを動作させる。搬送路115は、吸着ローラ114により取り込まれた紙幣を一対の搬送ベルトにより挟持して一定速度で搬送する。なお、搬送路115における取出部113に近い側を上流側、スタッカ134に近い側を下流側として説明する。
【0017】
取出部113から延びた搬送路115上には、検査部116が設けられている。検査部116は、画像読取装置117、画像読取装置118、切れ検出装置135、及び厚み検査部119を備えている。検査部116は、紙幣の光学的特徴情報、機械的特徴、及び磁気的特長情報を検出する。これにより、紙幣処理装置100は、紙幣の種類、汚損度、及び真偽などを検知する。
【0018】
画像読取装置117、及び118は、それぞれ搬送路115を挟んで対面するように設けられている。画像読取装置117、及び118は、搬送路115を搬送される紙幣の両面の画像を読み取る。画像読取装置117、及び118は、それぞれ、Charge Coupled Device(CCD)カメラを備える。紙幣処理装置100は、画像読取装置117、及び118により撮像した画像に基づいて、紙幣の表面及び裏面の模様画像を取得する。
【0019】
画像読取装置117、及び118は、読み取った画像を検査部116内の図示しないメモリに一時的に記憶する。紙幣処理装置100は、このメモリに記憶されている画像を操作入力に応じて操作表示部137に表示する。
【0020】
厚み検査部119は、搬送路115を搬送される紙幣の厚みを検査する。例えば、検出した厚みが規定値以上である場合、紙幣処理装置100は、紙幣の2枚取りを検出する。
【0021】
主制御部151は、画像読取装置117、118、切れ検出装置135、厚み検査部119、及び磁気センサなどによる検出結果に基づいて、各種の判定を行う。例えば、主制御部151は、紙幣の種類(category)、及び/又は券種(denomination)を判定する。
【0022】
また、主制御部151は、紙幣の正損(fitness)を検知する。即ち、主制御部151は、紙幣が再流通可能(recirculatable)な正券(fit sheet)であるか、再流通不可能(unrecirculatable)な損券(unfit sheet)であるかを判定する。
【0023】
紙幣処理装置100は、正券と判定した紙幣を集積・結束部128乃至131に搬送する。また、紙幣処理装置100は、損券と判定した紙幣を裁断部133に搬送する。裁断部133は、搬送される損券を裁断する。なお、紙幣処理装置100は、損券をスタッカ134に搬送し集積してもよい。スタッカ134は、集積した損券が例えば100枚に到達するごとに施封を行う。
【0024】
紙幣処理装置100は、排除券と判定した紙幣を排除集積部127に搬送する。排除券は、例えば、2枚取り券などの搬送異常券、折れまたは破れなどが存在する不良券、及び適用外券種または偽券などの判別不能券を含む。
【0025】
検査部116の下流側の搬送路115上には、ゲート120乃至125が順に配設されている。ゲート120乃至125は、それぞれ、主制御部151により制御される。主制御部151は、検査部116による検査の結果に基づいて各ゲート120乃至125の動作を制御する。これにより、主制御部151は、搬送路115を搬送されている紙幣を所定の処理部に搬送するように制御する。
【0026】
検査部116の直後に配設されたゲート120は、搬送路115を排除搬送路126に分岐する。即ち、ゲート120は、検査部116による検査の結果、真券ではないと判定された排除券、または、検査部116による検査を行うことができない検査不能券等を排除搬送路126に搬送するように切り替えられる。
【0027】
排除搬送路126の終端部には、排除集積部(排除部)127が設けられている。排除集積部127は、取出部113にて取出した姿勢のまま、上記したような排除券、及び検査不能券を集積する。排除集積部127に集積された紙幣は、取出口139から取り出すことができる。
【0028】
また、ゲート121乃至124により分岐される先には、集積・結束部128乃至131(総じて集積結束部132と称する)がそれぞれ設けられている。集積・結束部132には、再流通可能であると判定された紙幣が種類及び表裏毎に区別されて集積される。集積・結束部132は、集積した紙幣を所定枚数毎に結束して格納する。
【0029】
ゲート125により分岐される先には、裁断部133が配設されている。裁断部133は、紙幣を裁断して収納する。ゲート125には、正規の紙幣であり、且つ、再流通が不可能であると判定された紙幣(損券)が搬送される。
【0030】
また、ゲート125により分岐される他方の搬送路の先には、スタッカ134が配設されている。主制御部151は、損券裁断モードが選択されている場合、紙幣を裁断部133に搬送するようにゲート125を制御する。また、主制御部151は、損券裁断モードが選択されていない場合、紙幣をスタッカ134に搬送するようにゲート125を制御する。
【0031】
なお、取出し部113の直後には後述するように搬送ベルトに接触した搬送ベルト清掃装置1が設けられている。
【0032】
図2に搬送ベルト清掃装置(搬送部材清掃装置)1の一例を表す斜視図を示し、図3に搬送ベルト清掃装置1の一部切欠断面図を示す。
【0033】
この搬送ベルト清掃装置1は、ベルトBの搬送面に外周を接する状態で支持体2上に支持されている清掃ローラ3を図2に示すX1、X2方向に変位させつつ回転させることができる。すなわち、螺旋状に回転駆動可能なローラ駆動機構4を有している。
【0034】
清掃ローラ3は、円柱状でその中心部に図3に示すように長さ方向に沿って雌ねじ5aを取付けると共に、一方の端部側に一定長のギア16を取り付けた芯体5で構成される。ギア16はローラ駆動機構4に連結しており、これにより清掃ローラ3は回転駆動される。
【0035】
また、芯体5の外周全域に亘って円筒状のクリーニングパッド6が取り付けられている。
【0036】
図4に、図3のY−Y’断面図を示す。
【0037】
図3及び図4に示すように、クリーニングパッド6のさらに外周に清掃クロス18が巻かれている。
【0038】
ベルトBは清掃クロス18との摺動により表面の汚れが拭取られる構成になっている。
【0039】
ローラ駆動機構4は、支持体2から水平方向に設置された駆動モータ8とカップリング21で連結された減速機構部10とで構成され、清掃ローラ3の端部に設けられたギア16に連結している。一方、清掃ローラのもう一端は芯体の内径に設けられた雌ねじ5aが支持体2に取付けられた雄ねじ7にねじ込まれている。駆動モータ8の回転駆動が清掃ローラ3に減速して伝達されて回転すると、清掃ローラ3がX1−X2方向に変位する。この変位は図示しないリミットスイッチにより規制され得る。
【0040】
以上の構成の搬送ベルト清掃装置1により、搬送ベルトBは清掃クロス18と摺動し、搬送ベルトの汚れが清掃クロス18に転移する。清掃クロス18の搬送ベルトBとの接触位置は雌ねじ5aと雄ねじ7との勘合により少しずつ移動するため清掃クロス18の汚れ転移は清掃ローラ3の回転に伴い、少しずつ新規の清掃クロス面に移行していく。これにより清掃クロス側の汚れが一部の領域に集中することを防止する。ある規定以上に汚れた清掃クロス18は定期的に新規のものに交換される。
【0041】
本実施形態では、清掃クロスに粘着性を付与するために、接触すると付着する性質を有する接着剤をスプレーすることができる。粘着性を付与する接着剤として、例えばアクリルゴム系接着剤を含有するスプレーのりを使用することができる。スプレーのりの噴霧を20cm×20cmの面積当たり1秒以上、好ましくは3ないし5秒行ない、スプレー後、所定時間例えば10秒以上経過した清掃クロスを使用することができる。
【0042】
紙幣処理装置の搬送速度は数m/sと高速であるため搬送ベルトに荷重をかけると搬送ベルトの軌道がズレてプーリから外れたり、摩擦熱によって高温になるといった問題が発生する。例えば高速で動いている搬送ベルトに少しでも不均等な荷重が掛かるとその後に続くプーリで搬送ベルトが外れるといった現象が起こり得る。そのため、高速の紙幣処理装置においては搬送ベルトに掛ける荷重は低く設定することになる。
【0043】
清掃クロスのみによる拭取りでは、清掃クロスとインク汚れとに機械的な力だけが作用するので高い荷重が必要となるが、本実施形態では、清掃クロスに粘着性を付与する接着剤を適用することで粘着力を付与させ、インク汚れとの結合力を高めることにより、低い荷重においてもインクが清掃クロスに移動することができる。このように、本実施形態を用いると、機械的荷重だけでなく、粘着性を加えることで軽荷重でも飛躍的に拭取り性能を高めることができるため、高速搬送が行われる紙幣処理装置における搬送ベルトやローラといった搬送部材のインク汚れに対する搬送ベルト清掃装置の拭取り性能を、搬送効率を低下させることなく大きく改善することができる。
【0044】
本実施形態の他の態様によれば、その表面に凹凸が付与されている芯体を使用することが出来る。
【0045】
図5及び図6に、本実施形態に用いられる搬送ベルト清掃装置の芯体の他の一例を各々表す外観図を示す。
【0046】
高速の紙幣処理装置において搬送ベルトやローラなどの搬送部材の汚れを拭取り清掃するのに低荷重であることは必要条件であるが、清掃ローラと搬送ベルトの全体的接触荷重は低いが、接触面の荷重分布を不均一にすると、部分的に高荷重とすることができる。清掃ローラ表面の不均一荷重は、例えば図5に示すように溝加工219を施した芯体5aや図6に示すような凸部220を付与した芯体5bを用いることにより実現できる。これに清掃クロスを巻きつけると不均一な荷重、すなわち部分的に荷重を大きくすることができる。その場合は溝部や突起の周辺は荷重が大きく低下した領域となるため拭取り作用は期待できないが、全体を平均すると高い拭取り効果を得ることができる。
【0047】
図7、及び図8に、図5の溝加工の一例を表す概略図を各々示す。
【0048】
図7は、芯体5cの表面上にスパイラル状の溝221を形成した例である。
【0049】
図8は、芯体5dの表面上に円筒形の芯体の中心軸方向に平行な複数の溝222を形成した例である。
【0050】
スパイラル溝であれば、芯体の回転のすべての部分においてベルトとの接触面に溝が存在し得る。
【0051】
溝が軸に平行の場合は、清掃クロスが搬送ベルトに面接触しない部分が生じる。
【0052】
溝の深さは清掃クロスの厚さtに対して1t〜5tであることが好ましい。この場合には、適切なエッジ効果すなわちエッジの集中荷重による拭取り性能の増大が得られる。1t未満では清掃クロスにより段差が消され、5tを超えて深すぎても効果の上昇は少ない。
【0053】
溝の幅は清掃クロスの厚さtに対して5t〜10tであることが好ましい。5t未満ではエッジへの集中荷重が小さく、10tを超えた幅でも拭取り空白領域が大きくなる傾向がある。
【0054】
本実施形態に用いられる清掃クロスとして、例えば繊維径が10μm以下の微細繊維で織られた布を用いることが出来る。
【0055】
清掃クロスの種類としてはどの清掃クロスにおいても再剥離性接着糊をスプレーすることでインク汚れの拭取り性能は改善されるが、清掃クロスとして望ましくは繊維径が微細であるほうが良く、平均径2μm〜10μmの繊維が好ましい。繊維径が2μm未満の細い繊維では繊維の腰が低すぎてインクの固化膜を破る応力を伝達できない傾向があり、10μmを超えた径では繊維の目が粗くなりインク汚れとの接触頻度が低くなるために拭取り効率が落ちる傾向がある。
【0056】
また、織布であれば平織りよりはニット織りやサテン織りが好ましい。これは、平織りの場合、清掃クロスの面粗さが粗大になるため搬送ベルトとの接触面積が低下する傾向があるためである。不織布の場合は繊維密度が大きいほうが好ましい。繊維の種類としてはポリエステル繊維やナイロン繊維が多いが、極微細径繊維であるのはポリエステル繊維が容易に入手できる。
【0057】
繊維材質の親水性と親油性の区別は接着糊を用いる場合は大きな差異はない。
【0058】
実施例
以下、実施例を示し、本実施形態を具体的に説明する。
【0059】
実施例1
図2及び図3に示す搬送ベルト清掃装置と同様の構成を有する搬送ベルト清掃装置の清掃ローラに巻きつける清掃クロスとして、種々の清掃クロスを用意した。各清掃クロスに、アクリルゴム系接着剤 Trree’s社製 スプレー糊 SPRAY GLUE(成分:アクリルゴム8%、ノルマルヘキサン51%、DMEガス41%)を約1秒間スプレーして、清掃ローラに適用し、自動拭取りを100g/cmの荷重をかけて、2分間行った。
【0060】
参考例として、スプレー糊を使用せずに、100g/cm、200g/cm,300g/cm,400g/cmの荷重をかけた場合についても2分間自動拭取りを行った。
【0061】
その後、各清掃クロスを取り外し、その平均輝度を計測することにより、清掃クロス側に転写したインク量を相対比較した。具体的には、清掃クロスをスキャナーで読み取った画像を画像処理ソフト(Adobe Photoshop Element:登録商標)のヒストグラムで解析した。この画像処理ソフトでのヒストグラムは画像を構成するピクセル値の分布を示す棒グラフであり、最も暗いレベル(シャドウ)は0で表示し、最も明るいレベル(ハイライト)は255が表示される。全ピクセルの平均レベルが平均輝度として表示される。この平均輝度が低いほど転写したインク量が多いことを意味するので、各種クロスの拭取り性能の相対比較をすることができる。
【0062】
このようにして求めた拭取り後の清掃クロスの輝度を図9に示す。
【0063】
清掃クロスとして、繊維径が5μmの極細繊維清掃クロス PKクリーンクロス(登録商標)(東レ株式会社製)、繊維径が5μmの極細繊維清掃クロス CCクリーンクロス(登録商標)(東レ株式会社製)、繊維径が2μmの極細繊維清掃クロス CCクリーンクロス(登録商標)(東レ株式会社製)、繊維径が5μmの極細繊維清掃クロス ソリブ(登録商標)(ハイテック株式会社製)、及び繊維径が1μmの極細繊維清掃クロス サブィーナミニマックス(登録商標)(KBセーレン株式会社製)を使用し他場合の記号を図9のグラフにそれぞれ101,102,103,104,105で示した。
【0064】
スプレーのりを使用せずに、50g/cm、100g/cm,150g/cm,200g/cm2、300g/cmの荷重をかけた場合を、図9に実線でそれぞれ101,102,103,104,105で示している。インク汚れの固化した表面膜を破壊するために機械的力を加える必要があるため、清掃工程の荷重が大きいほど拭取り性能は上昇していることが判る。
【0065】
一方、これらの清掃クロスにスプレー糊を塗布し、50g/cm、100g/cm,150g/cmの荷重をかけた場合を、図9に破線でそれぞれ101‘,102’,103‘,104’,105‘で示している。
【0066】
図9の100g/cmでスプレー糊無しと、100g/cmでスプレー糊を塗布した結果を比較すると、全ての清掃クロスでスプレー糊を塗布したほうが清掃能力が高いことが判る。先に説明したように高速で搬送している場合には軽荷重しか適用できないが、本実施例のようにスプレー糊を用いると、100g/cmの軽荷重でも、スプレー糊無しの場合の200g/cmの高荷重を掛けた場合と同等の清掃能力が得られることが判る。
【0067】
また、清掃クロスに塗布する接着剤が、使用中及び保管中に乾燥して固化すると拭取り効果は低下し、一方、搬送ベルトやローラに移行するとかえって搬送ベルトのインク汚れを促進する。このことから、本実施例に適用する粘着性を付与する接着剤としては、固化するまでの時間が十分に長く、かつ剥離性がよく接着剤残りしない接着剤を選択することが出来る。
【0068】
このような接着剤は多種開発されており、最も多用されているものにアクリルゴム系接着糊がある。
【0069】
本実施例ではTrree’s社製 スプレー糊 SPRAY GLUE(成分:アクリルゴム8%、ノルマルヘキサン51%、DMEガス41%)を用いた。このほかにも住友スリーエム「スプレー糊55カラー」などが使用可能である。これを清掃クロスに少量スプレーすることにより本実施例の清掃クロスを作成することができる。これであれば、事前に製作し、剥離紙をつけて保管することができる。接着面を触っても手に糊がつくことは無く、搬送ベルトやローラにも糊は移行しない。この接着糊をクロスではなくビニールシートに適用した場合は、拭き取ったインクが搬送ベルトに再転写する現象が見られる。
【0070】
なお、ここでは、清掃クロスは織布を意味し、不織布は含まないものとする。
【0071】
アクリルゴム糊をスプレーするのが織布の清掃クロスである理由は採取したインクなどを繊維間に取り込み、搬送ベルトへの再転写を防止する作用があるためである。
【0072】
本実施例に用いられる清掃クロスを用いた搬送ベルトやローラの清掃装置は、高速の紙幣処理装置において軽荷重でも効率よくインク汚れを拭き取ることができる。特に、秒速数mの高速の紙幣処理装置の搬送ベルトやローラなどの搬送部材に付着するインク汚れを拭取る搬送ベルト清掃装置では、高速であるために搬送ベルトの拭取りにおける摺動荷重が限定されているが、清掃クロスに再剥離性粘着剤をスプレーしたことにより効率よくインク汚れを拭取ることができる。
【0073】
実施例2
実施例1で使用された清掃ローラの代わりに、SUS304ステンレス鋼ローラの表面に幅1mm、深さ2mmの溝を間隔6mmで螺旋状に加工したローラを用いて、ローラの外周に2μmの極微細ポリエステル繊維のニット織りと平織りの2種類の清掃クロスを装着し、アクリルゴム系接着剤 Trree’s社製 スプレー糊 SPRAY GLUE(成分:アクリルゴム8%、ノルマルヘキサン51%、DMEガス41%)を約3秒間スプレーして、各ローラに適用し、自動拭取りを100g/cmの荷重をかけて、2分行った。
【0074】
また、実施例1で使用された清掃ローラの代わりに、SUS304ステンレス鋼ローラの表面に高さ約1mmの突起を1cmに5個形成するエンボス加工を施したローラを用いること以外は、実施例1と同様にして自動清掃を行った。
【0075】
図10に、芯体の他の例を用いた搬送ベルト清掃装置の効果を表すグラフを示す。
【0076】
図中、201は凹凸のない芯体にニットクロス(サブィーナミニマックス)を巻回した例、202は溝を形成した芯体にニットクロス(CCクリーンクロス)を巻回した例、203はエンボスを形成した芯体にニットクロスを巻回した例をそれぞれ示している。また、301は凹凸のない芯体に平織りクロス巻回した例、302は溝を形成した芯体に平織りクロスを巻回した例、303はエンボスを形成した芯体に平織りクロスを巻回した例をそれぞれ示している。
【0077】
清掃クロスだけの場合の平均輝度は平織りのほうがニット織よりも輝度が低く、インク汚れ拭取り性能が若干高い。これは、100g/cm程度の軽荷重の拭取り条件の場合に見られる傾向であり、平織りの織り目が不均一荷重の役目をなすために拭取り性能が高い。これに比べて溝を形成した芯体とエンボスを形成した芯体の平均輝度はニット織り、平織りのいずれの場合でも、凹凸のない芯体の場合に比べて低く、拭取り性能がより改善されている。
【0078】
また、溝を形成した芯体とエンボスを形成した芯体の平均輝度はニット織りのほうが平織りよりも拭取り性能がよいことが判る。
【0079】
本実施形態によれば、軽荷重拭取り条件であっても溝を形成した芯体やエンボスを形成した芯体のように不均一な荷重を加えることで平均清掃性能を改善することができる。しかも、粘着性を付与する接着剤を適用した清掃クロスを適用することができ、初期投資として、表面に凹凸がない芯体を、表面に凹凸加工された芯体に変更するだけの改善であり、経済的な性能向上を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…搬送ベルト清掃装置、3…清掃ローラ、4…ローラ駆動機構、5…芯体、6…クリーニングパッド、18…清掃クロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷された紙葉類を挟持して搬送する搬送部材と、
この搬送部材の近傍に回転可能に支持された円柱状の芯体、この芯体の表面に券回され、その表面が前記搬送部材における該紙葉類との接触面に接触可能に配置されるとともに、粘着性が付与された清掃クロスとを有する清掃ローラ、及びこの清掃ローラを前記搬送部材と速度差を持たせて回転駆動せしめる回転駆動機構を有する搬送部材清掃装置と、
を有することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記清掃クロスは、接着剤をスプレーすることにより粘着性が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記接着剤は、アクリルゴム系接着のりであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記清掃クロスは、繊維径が10μm以下の微細繊維で織られていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記芯体は、その表面に凹凸が付与されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
印刷された紙葉類を挟持して搬送する搬送部材を清掃するものであって、
回転可能に支持された円柱状の芯体と、この芯体の表面に券回され、その表面が前記搬送部材における該紙葉類との接触面に接触可能に配置されるとともに、粘着性が付与された清掃クロスとを有する清掃ローラと、
この清掃ローラを前記搬送部材と速度差を持たせて回転駆動せしめる回転駆動機構と、を有することを特徴とする搬送部材清掃装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−188192(P2012−188192A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51432(P2011−51432)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】