説明

紙葉類処理装置

【課題】搬送路に存在する紙葉類を確実に検出可能な紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙葉類(紙幣)処理装置は、紙幣を搬送路に沿って搬送するように駆動可能な紙幣搬送機構用のモータ13と、紙幣搬送路に紙幣が存在するか否かを検出する排出検知センサ18と、搬送機構の駆動が停止された状態で、排出検知センサ18によって紙幣搬送路に紙幣が存在するか否かを検出し、紙幣が検出されなかった場合、紙幣搬送機構用のモータ13を駆動して、再度排出検知センサ18によって紙幣搬送路に紙幣が存在するか否かを検出する再検出処理を行う制御手段200と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、商品券、クーポン券等(以下、これらを紙葉類と総称する)を搬送処理する紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙葉類の一態様である紙幣を取扱う紙幣処理装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣の真贋を判定し、真正と判定された紙幣価値に応じて、各種の商品やサービスを提供するサービス機器、例えば遊技場に設置されている遊技媒体貸出機、或いは、公共の場に設置されている自動販売機や券売機等に組み込まれている。
【0003】
通常、利用者が紙幣挿入口から紙幣を挿入すると、その紙幣は、搬送ローラ等を含む搬送機構によって搬送路を移動し、その途中で紙幣情報を読取る読取りセンサを通過して真贋判定処理が実施される。また、紙幣挿入口から挿入された紙幣に関しては、常に、その位置が把握できるように、紙幣が移動する搬送路を規定するフレームには、搬送中の紙幣を検出する複数のセンサが配置されている。例えば、特許文献1には、搬送路に沿って紙葉類(紙幣)を検出する複数のセンサを配置しておき、各センサ同士の搬送路方向の設置間隔、搬送始端と最も搬送始端側に設置されたセンサとの間の搬送路方向の設置間隔、及び、搬送後端と最も搬送後端側に設置されたセンサとの間の搬送路方向の設置間隔を、紙葉類の搬送方向の長さ以下に設定することで、搬送路に残留した紙葉類を確実に検出できる紙葉類処理装置が開示されている。また、この特許文献1には、電源をオンした後、又はジャム処理をした後など、紙葉類の搬送が停止されている状態で、紙葉類の存在を検出することが開示されている。
【特許文献1】特開2008−120491号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙葉類処理装置に挿入される紙葉類の紙の材質として、一般的に麻や綿が使用されているが、従来の紙に代わり、透明な合成樹脂を使用し耐久性に優れたポリマー紙幣を発行する国が存在する(例えば、香港等)。このようなポリマー紙幣は、デザインによっては、印刷が施されていない透明部分が存在しており、このような透明部分がセンサの設置位置に停止すると、センサの設置間隔を問わず、搬送路に残留している紙葉類を検出できない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、搬送路に存在する紙葉類を確実に検出可能な紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送路に沿って搬送するように駆動可能な搬送機構と、前記搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出するセンサと、前記搬送機構の駆動が停止された状態で、前記センサによって搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出し、紙葉類が検出されなかった場合、前記搬送機構を駆動して、再度前記センサによって搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出する再検出処理を行う制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、搬送路で停止した状態にある紙葉類を検出するにあたり、搬送路に存在する紙葉類を検出するセンサによって紙葉類の存在が確認されなければ、搬送機構を駆動して、再度センサによって紙葉類の存在を確認するようにしている。このため、紙葉類に透明部分がある等、センサが紙葉類の存在を確認できなくても、紙葉類を検出可能な位置に移動させて、再度、検出処理を実施するため、確実に紙葉類の存在を検出することが可能になる。
【0008】
また、請求項2に係る発明においては、前記搬送路に搬送される紙葉類の真贋を判定する真贋判定部を備えており、前記真贋判定部による真贋判定後、前記搬送機構の駆動が停止されて搬送路に一時保留した紙葉類について、前記制御部による再検出処理を実施することを特徴とする。
【0009】
上記した構成の紙葉類処理装置によれば、真贋判定処理時において、搬送路に一時保留状態にある紙葉類が実際に存在しているにも拘らず、紙葉類引き抜きエラーとなってしまうような誤動作を確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送路に存在する紙葉類を確実に検出可能な紙葉類処理装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、紙葉類処理装置として、紙幣を処理する紙幣処理装置を例示して説明する。
【0012】
図1から図5は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図、図4は、紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図、そして、図5は、紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図である。
【0013】
本実施形態の紙幣処理装置1は、紙によって形成された通常の紙幣以外にも、上述したような透明な合成樹脂を使用した耐久性に優れたポリマー紙幣についても処理することが可能となっており、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機に組み込み可能に構成され、装置本体2と、この装置本体2に設けられ、多数の紙幣などを積層、収容することが可能な収容部(収容スタッカ;金庫)100とを備えている。
【0014】
この収容部100は、装置本体2に対して着脱可能であっても良く、例えば、図示されていないロック機構が解除された状態で、前面に設けられた取っ手101を引くことで、装置本体2から取り外すことが可能となっている。
【0015】
前記装置本体2は、図2に示すように、本体フレーム2Aと、本体フレーム2Aに対して一端部を回動中心として開閉されるように構成された開閉部材2Bとを有している。そして、これら本体フレーム2A及び開閉部材2Bは、図3に示すように、開閉部材2Bを本体フレーム2Aに対して閉じた際、両者の対向部分に紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路3)が形成されると共に、両者の前面露出側に、前記紙幣搬送路3に一致するようにして、紙幣挿入口5が形成されるよう構成されている。なお、前記紙幣挿入口5は、紙幣の短い辺側から装置本体2の内部に挿入できるようにスリット状の開口となっている。
【0016】
また、前記装置本体2内には、前記紙幣搬送路3に沿って、紙幣を搬送する紙幣搬送機構6と、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知する挿入検知センサ7と、挿入検知センサ7の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段8と、この紙幣読取手段8に対して、紙幣を正確に位置決めして搬送するスキュー補正機構10と、紙幣がスキュー補正機構を構成する一対の可動片を通過したことを検知する可動片通過検知センサ12と、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知する排出検知センサ18とが設けられている。
【0017】
以下、上記した各構成部材について、詳細に説明する。
前記紙幣搬送路3は、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出しており、第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度、下方側に向けて傾斜した第2搬送路3Bとを備えている。この第2搬送路3Bの下流側は、鉛直方向に向けて屈曲しており、その下流側端部には、紙幣収容部100に紙幣を排出する排出口3aが形成されて、ここから排出される紙幣は、鉛直方向に向けて、紙幣収容部100の導入口(受入口)103に送り込まれる。
【0018】
前記紙幣搬送機構6は、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能にすると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口5に向けて差し戻し搬送可能とする機構である。この紙幣搬送機構6は、装置本体2内に設置された駆動源であるモータ(パルスモータ;図5参照)13と、このモータ13によって回転駆動され、紙幣搬送路3に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送部材を構成する搬送ローラ対(14A,14B)、(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)を備えている。
【0019】
前記搬送ローラ対は、紙幣搬送路3に一部が露出するように設置されて、いずれも紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bがモータ13によって駆動されるローラとなっており、上側に設置される搬送ローラ14A,15A,16A及び17Aが、これらのローラに対して従動するピンチローラとなっている。なお、紙幣挿入口5から挿入された紙幣を最初に挟持して奥側に搬送する搬送ローラ対(14A,14B)は、図2に示すように、紙幣搬送路3の中心位置に1箇所設置されており、その下流側に順次配置される搬送ローラ対(15A,15B)、(16A,16B)、及び(17A,17B)については、紙幣搬送路3の幅方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。
【0020】
また、上記した紙幣挿入口5の近傍に配置される搬送ローラ対(14A,14B)については、通常は、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bから離間した状態となっており、紙幣の挿入が挿入検知センサ7によって検知されると、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、挿入された紙幣を挟持するようになっている。
【0021】
すなわち、上側の搬送ローラ14Aについては、駆動源であるローラ昇降用モータ70(図7参照)によって、下側の搬送ローラ14Bに対して、当接/離間するように駆動制御される。この場合、スキュー補正機構10によって、挿入された紙幣の傾きを無くし紙幣読取手段8に対して位置合わせする処理(スキュー補正処理)が行われる際には、上側の搬送ローラ14Aは、下側の搬送ローラ14Bから離間して紙幣に対する負荷を解除し、スキュー補正処理が終了すると、再び、上側の搬送ローラ14Aが下側の搬送ローラ14Bに向けて駆動され、紙幣を挟持する。なお、駆動源については、モータ以外にもソレノイド等によって構成されていても良い。
【0022】
また、前記スキュー補正機構10は、スキューの補正を果たす左右一対の可動片10A(片側のみ図示)を備えており、スキュー補正機構用のモータ40を駆動することで、左右一対の可動片10Aを接近するように移動させ、これにより、紙幣に対するスキューの補正処理が成される。
【0023】
上記した紙幣搬送路3の下側に設置される搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは、図5に示すように、モータ13、及び各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cを介して回転駆動される。すなわち、モータ13の出力軸には、駆動プーリ13Aが設置されており、上記した各搬送ローラの駆動軸の端部に設置されるプーリ14C,15C,16C及び17Cには、駆動プーリ13Aとの間で駆動ベルト13Bが巻回されている。なお、駆動ベルト13Bには、適所にテンションプーリが係合しており、弛みを防止している。
【0024】
上記した構成により、モータ13が正転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送し、モータ13が逆転駆動されると、前記搬送ローラ14B,15B,16B及び17Bは同期して逆転駆動され、紙幣を紙幣挿入口5側に向けて搬送する。
【0025】
前記挿入検知センサ7は、紙幣挿入口5に挿入された紙幣を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13が正転駆動され、紙幣を挿入方向に向けて搬送する。本実施形態の挿入検知センサ7は、搬送ローラ対(14A,14B)と、スキュー補正機構10との間に設置されており、光学式のセンサ、例えば、回帰反射型フォトセンサによって構成されているが、それ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0026】
また、前記可動片通過検知センサ12は、紙幣の先端が、スキュー補正機構10を構成する左右一対の可動片10Aを通過したことを検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、スキュー補正処理が成される。本実施形態の可動片通過検知センサ12は、前記紙幣読取手段8の上流側に設置されており、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0027】
また、前記排出検知センサ18は、通過する紙幣の後端を検知して、紙幣が紙幣収容部100に排出されたことを検知するものであり、第2搬送路3Bの下流側において、紙幣収容部100の受入口103の直前に配設されている。排出検知センサ18から検知信号が発せられると、モータ13の駆動が停止され、紙幣の搬送処理が終了する。この排出検知センサ18についても、前記挿入検知センサと同様、光学式のセンサや機械式のセンサによって構成される。
【0028】
なお、排出検知センサ18は、後述するように、搬送された紙幣に対して紙幣読取手段8で紙幣情報が読取られた後、真贋判定処理を実施する際、所定の位置(エスクロ位置と称する)で一時的に保留されている紙幣を検知する機能を備えている。
【0029】
前記紙幣読取手段8は、スキュー補正機構10によってスキューが補正された状態で搬送される紙幣について、その紙幣情報を読取り、その有効性(真贋)を識別する。本実施形態では、紙幣読取手段8は、搬送される紙幣の両面側から光を照射し、その透過光と反射光を受光素子で検知することで読取を行うラインセンサを備えた構成になっており、前記第1搬送路3Aに設置されている。
【0030】
そして、実際の真贋判定処理は、上記した紙幣読手段を利用して、例えば、搬送される紙幣の印刷部分に光を照射し、その透過光及び反射光を受光して、印刷部分における特徴点(特徴点の領域、抽出の仕方は任意である)が真正のものと一致するか否かを判定することで成される。
【0031】
この場合、真正の紙幣には、照射する光の波長(例えば、可視光や赤外光)によって、取得される画像データが異なる領域があることから、前記真贋判定処理では、この点に着目し、複数の光源によって異なる波長(本実施形態では、赤色光及び赤外光を照射する)の光を紙幣に照射し、その透過光と反射光を検出することで、真贋の識別精度をより高めるようにしている。すなわち、赤色光と赤外光では、波長が異なることから、波長の異なる複数の光による透過光データや反射光データを紙幣の真贋判定に用いると、真券と偽札との特定領域を通過する透過光や特定領域から反射する反射光では、透過率、反射率がそれぞれ異なるという性質がある。このため、複数の波長の光源を用いることで、紙幣の真贋の識別精度をより高めるようにしている。
【0032】
なお、具体的な紙幣の真贋判定方法については、紙幣に照射する光の波長や照射領域により、様々な受光データ(透過光データ、反射光データ)を取得できるため、詳細に説明しないが、例えば、紙幣の透かし領域では、異なる波長の光でその領域の画像を見た場合、画像が大きく異なって見えることから、この部分を特定領域とし、当該特定領域における透過光データや反射光データを取得して、予め記憶手段(ROM)に記憶してある真券の同じ特定領域における正規データと比較して、識別対象となる紙幣が真券であるか偽札であるかを識別することが考えられる。このとき、金種に応じて特定領域を定めておき、この特定領域における透過光データや反射光データに所定の重み付けを設定しておき、真贋識別精度のさらなる向上を図ることも可能である。
【0033】
また、上記した真贋判定方法に加え、紙幣読取手段8によって、例えば、紙幣搬送方向に沿った画素情報として紙幣両面の画像情報を取得し、その搬送方向に沿った画素情報から、各面における印刷長を導き出して、この印刷長によって真贋の判定処理を実施しても良い。このような真贋判定処理は、印刷長が真正の紙幣とは異なっているものについては偽物として排除するものであり、このような処理を行うことで、紙幣の識別精度を、より高めることが可能となる。
【0034】
上記した紙幣読取手段8は、後述するように、発光部を所定の間隔で点灯制御し、紙幣が通過する際の透過光及び反射光をラインセンサによって検知するものであることから、ラインセンサによって、所定の大きさを1単位とした複数の画素情報に基づいた画像データを取得することが可能となる。
【0035】
この場合、ラインセンサによって取得される画像データは、後述する変換部によって、画素毎に、明度を有する色情報を含んだデータに変換される。なお、変換部において変換される明度を有する画素毎の色情報とは、輝度値に対応するものであって、例えば、1バイト情報として、その明度に応じて、0から255の数値(0:黒〜255:白)が各画素に割り当てられている。
【0036】
このため、上記した真贋判定処理では、紙幣の所定の領域を抽出し、その領域に含まれる画素情報と、真券の同じ領域の画素情報とを用い、これらを適宜の相関式に代入して演算した相関係数により、真贋を識別することが可能である。或いは、上記した以外にも、透過光データや反射光データから、例えばアナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で、真贋を識別することも可能である。
【0037】
ここで、上記した紙幣読取手段8の構成について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。
【0038】
上記した紙幣読取手段8は、開閉部材2B側に配設され、搬送される紙幣の上側に赤外光及び赤色光を照射可能とした第1発光部80aを具備した発光ユニット80と、本体フレーム2A側に配設された受発光ユニット81とを有している。
【0039】
この受発光ユニット81は、紙幣を挟むようにして第1発光部80aと対向する受光センサを具備した受光部81aと、受光部81aの紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、赤外光及び赤色光を照射可能とした第2発光部81bとを有している。
【0040】
前記受光部81aと対向配置された第1発光部80aは透過用の光源として機能する。この第1発光部80aは、図2に示すように、一端に取り付けたLED素子80bからの光を、内部に設けた導光体80cを通して発光する合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。このような構成の第1発光部は、受光部81a(受光センサ)と平行にライン状に配設されており、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して全体的に均一に照射することが可能となる。
【0041】
前記受発光ユニット81の受光部81aは、紙幣搬送路3に対して交差方向に伸延し、かつ受光部81aに設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。なお、前記受光センサは、受光部81aの厚み方向の中央に、複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にグリンレンズアレイ81cを配置した所謂ラインセンサとして構成されている。このため、真贋判定対象となる紙幣に向けて照射された第1発光部80aや第2発光部81bからの赤外光や赤色光の透過光あるいは反射光を受光し、受光データとして、その明度に応じた画素データ(明度を有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素データ)や、この画素データから二次元画像を生成することが可能となっている。
【0042】
また、受発光ユニット81の第2発光部81bは反射用の光源として機能する。この第2発光部81bは、第1発光部80aと同様、一端に取り付けたLED素子81dからの光を、内部に設けた導光体81eを通して全体的に均一に照射可能とした合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。この第2発光部81bについても、受光部81a(ラインセンサ)と平行にライン状に配設して構成されている。
【0043】
前記第2発光部81bは、例えば45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部81aで受光するように配設されている。この場合、第2発光部81bから照射された光が受光部81aへ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、紙幣の表面に対して濃淡なく均一に光が照射できれば、その設置状態については適宜設定することができる。このため、第2発光部81b、受光部81aの配置については、紙幣処理装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部81bについては、受光部81aを挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部81bについては、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0044】
なお、上記した発光ユニット80、受発光ユニット81の構成や配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変形することが可能である。
【0045】
また、上記した発光ユニット80、及び受発光ユニット81における各第1発光部80a、及び第2発光部81bでは、紙幣の読取り時、図6のタイミングチャートに示すように赤外光と赤色光が、所定の間隔で点灯制御される。すなわち、第1発光部80a及び第2発光部81bにおける赤色光と赤外光の透過用の光源と、赤色光と赤外光の反射用の光源からなる4つの光源は、一定の間隔(所定の点灯間隔)で点灯、消灯を繰り返し、各光源の位相を重ねることなく、2つ以上の光源が同時に点灯することがないように点灯制御される。換言すれば、ある光源が点灯しているときには、他の3つの光源は消灯するように点灯制御される。これにより、本実施形態のように、1つの受光部81aであっても、各光源の光を一定間隔で検出し、赤色光の透過光及び反射光、赤外光の透過光及び反射光による紙幣の印刷領域の明度を有する画素データを取得することができ、また、両面の印刷長を測定することが可能となる。この場合、点灯間隔が短くなるように制御することで、解像度を高めることも可能である。
【0046】
また、上述した紙幣などを収容する紙幣収容部100は、上記した紙幣読取手段8で真性と識別された紙幣を順次、積層、収容する。
【0047】
図3から図5に示すように、紙幣収容部100を構成する本体フレーム100Aは、略直方体形状に構成されており、その前壁102aの内側には、付勢手段(付勢バネ)106の一端が取り付けられ、その他端には、上記した受入口103を介して送り込まれる紙幣を順次、積層する載置プレート105が設けられている。このため、載置プレート105は、前記付勢手段106を介して、後述する押圧板115側に向けて付勢された状態になっている。
【0048】
本体フレーム100A内には、受入口103に連続するように、落下する紙幣をそのまま待機、保持させる押圧待機部108が設けられている。押圧待機部108の載置プレート側の両サイドには、鉛直方向に延出して一対の規制部材110が配置されている。この一対の規制部材110の間には、載置プレート105上に紙幣が順次、積層されるに際して、押圧板115が通過するように、開口部が形成されている。
【0049】
また、本体フレーム100A内の両サイド壁には、載置プレート105が付勢手段106によって押圧された際、載置プレートが当て付くように、突出壁が形成されている。この突出壁は、載置プレート105上に紙幣が順次、積層されて、前記付勢手段106によって載置プレートが付勢された際、最上の紙幣の両サイドを当て付け、積層される紙幣を安定して保持する役目を果たす。
【0050】
さらに、本体フレーム100A内には、受入口103から押圧待機部108に落下した紙幣を載置プレート105に向けて押圧する押圧板115が配設されている。この押圧板115は、前記一対の規制部材110の間に形成された開口部を往復移動できる程度の大きさに構成されており、この開口部内に入り込んで、紙幣を載置プレート105に押し付ける位置(押圧位置)と、前記押圧待機部108を開放する位置(初期位置)との間で往復駆動される。この場合、押圧板115の押し込み動作によって、紙幣は撓みながら開口部を通過して、載置プレート105上に載置される。
【0051】
前記押圧板115は、本体フレーム100A内に配設される押圧板駆動機構120を介して、上記したように往復駆動される。押圧板駆動機構120は、押圧板115を図3及び図4の矢印A方向に往復移動可能となるように、両端が押圧板115に軸支された一対のリンク部材115a,115bを備えており、これらのリンク部材115a,115bはX字状に連結され、それぞれの反対側の端部は、垂直方向(矢印B方向)に移動可能に設置された可動部材122に軸支されている。この可動部材122には、ラックが形成されており、このラックには、押圧板駆動機構120を構成するピニオンが噛合している。
【0052】
このピニオンには、図4に示すように、押圧板駆動機構120を構成する収容部側ギヤトレイン124が連結されている。この場合、本実施形態においては、図45に示すように、上述した装置本体2内に、駆動源(モータ20)と、このモータ20に順次噛合する本体側ギヤトレイン21が配設されており、紙幣収容部100を装置本体2に装着すると、本体側ギヤトレイン21が収容部側ギヤトレイン124に連結するようになっている。すなわち、収容部側ギヤトレイン124は、ピニオンと同軸上に配設されるギヤ124B、及びこれに順次噛合するギヤ124C,124Dを備えており、紙幣収容部100を装置本体2のフレーム2Aに対して着脱する際、ギヤ124Dが、本体側ギヤトレイン21の最終ギヤ21Aと噛合、離間するよう構成されている。
【0053】
この結果、上記した押圧板115は、装置本体2に設けられたモータ20が回転駆動されることで、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b等)を介して、矢印A方向に往復駆動される。
【0054】
また、本体フレーム100Aには、前記受入口103から搬入される紙幣に対して接触可能な搬送部材150が設置されている。この搬送部材150は、搬入される紙幣に接触して、安定して紙幣を押圧待機部108の適正位置(押圧板115で紙幣を押圧した際、紙幣が左右に片寄ることなく、安定して押圧できる位置)に案内する役目を果たす。本実施形態では、この搬送部材は、押圧待機部108に臨むように設置されたベルト状の部材(以下、ベルト150とする)によって構成されている。
【0055】
この場合、ベルト150は、紙幣に対して搬入方向に沿って延在するように設置されており、搬入方向の両端部に回転可能に支持された一対のプーリ150A,150Bに巻回されている。また、ベルト150は、受入口103の領域に回転可能に支持された軸方向に延出する搬送ローラ150Cと当接しており、受入口103に搬入された紙幣を挟持して、紙幣をそのまま押圧待機部108に案内するようにしている。さらに、本実施形態では、前記ベルト150は、紙幣の両サイドの表面に接触可能となるように、上記した押圧板115を挟むようにして左右一対設けられている。なお、ベルト150は、両端におけるプーリ150A,150Bの巻回以外に、中間位置でテンションプーリを当て付け、弛みを防止するようにしても良い。
【0056】
前記一対のベルト150は、装置本体2内に設置される上述した複数の搬送ローラを駆動するモータ13によって駆動されるようになっている。具体的には、図5に示すように、モータ13によって駆動される上述した駆動ベルト13Bは、駆動力伝達用のプーリ13Dに巻回されており、このプーリ13Dに順次設置される動力伝達用のギヤトレイン13Eには、受入口103側に回転可能に支持されているプーリ150Aの支軸の端部に設置されたギヤトレイン153が噛合するようになっている。すなわち、紙幣収容部100が装置本体2に装着された際、ギヤトレイン13Eの最終ギヤには、ギヤトレイン153の入力ギヤが噛合するようになっており、一対のベルト150は、モータ13の回転駆動により、上述した紙幣搬送用の搬送ローラ14B,15B,16B,17Bと一体的に回転駆動されるようになっている。
【0057】
上述したように、紙幣が紙幣挿入口5を介して内部に挿入されると、紙幣は、上記した紙幣搬送機構6によって、紙幣搬送路3内で移動して行く。紙幣搬送路3は、図3に示すように、紙幣挿入口5から奥側に向けて延出した第1搬送路3Aと、前記第1搬送路3Aから下流側に向けて延出し、第1搬送路3Aに対して所定角度傾斜した第2搬送路3Bとを備えており、この第2搬送路3Bには、不正行為等により、紙幣挿入口5側に向けて紙幣の搬送を阻止するシャッタ部材170が設置されている。
【0058】
次に、上述した紙幣搬送機構6、紙幣読取手段8等の駆動部材の駆動を制御する制御手段200について、図7のブロック図を参照して説明する。
【0059】
図7のブロック図に示す制御手段200は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板210を備えており、この制御基板210上には、各駆動装置の駆動を制御する制御部としての機能を備えると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)220と、ROM(Read Only Memory)222と、RAM(Random
Access Memory)224と、真贋判定部230とが実装されている。
【0060】
前記ROM222には、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定部230における真贋判定プログラム等の各種プログラム等、恒久的なデータが記憶されている。また、前記ROM222には、紙幣の存在を検知可能なセンサによって紙幣の存在を検出できなかった場合、再度、そのセンサからの検知信号を受信して紙幣の存在を検出する再検出処理のためのプログラムが格納されている。具体的に、本実施形態では、真贋判定処理を実施するにあたり、紙幣がエスクロ位置に保留されている際に、排出検知センサ18が紙幣を検知できなければ(ROM222が紙幣の検知信号を受信できないことで紙幣の存在を検出できなければ)、前記モータ13を所定量駆動(正転駆動)して紙幣を移動させ、再度、排出検知センサ18で紙幣を検知するためのプログラムが記憶されている。
【0061】
このような処理を行うことで、例えば、上述したように、ポリマー紙幣を搬送処理する場合において、排出検知センサ18の検知位置に透明な部分が位置しても、紙幣搬送路に紙幣が存在していない、と認識してしまうことが防止される。すなわち、紙幣が存在するにも拘らず、制御部において、紙幣が存在しないと認識すると、例えば、紙幣引き抜きエラー処理を実行する等、誤動作が生じてしまう可能性があるが、上記したような再検出処理を実行することで、そのような誤動作を防止することが可能となる。また、ポリマー紙幣のような透明部を備えている紙幣以外にも、孔等が開いた損傷紙幣であっても、そのような誤動作を防止することが可能となる。
【0062】
前記CPU220は、ROM222に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート240を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣処理装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU220には、I/Oポート240を介して、紙幣搬送機構用のモータ13、押圧板駆動用のモータ20、スキュー補正機構用のモータ40、ローラ昇降用のモータ70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM222に格納された作動プログラムに従って、CPU220からの制御信号により動作が制御される。
【0063】
また、CPU220には、I/Oポート240を介して、挿入検知センサ7、可動片通過検知センサ12、排出検知センサ18からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、上記した各種駆動装置の駆動制御が行われる。また、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における受光部81aから、識別対象物に照射された光の透過光や反射光に基づく検知信号が入力されるようになっている。
【0064】
さらに、CPU220には、I/Oポート240を介して、上述した紙幣読取手段8における第1発光部80aと、第2発光部81bが接続されている。これら第1発光部80a及び第2発光部81bは、上記したROM222に格納された動作プログラムに従い、CPU220からの制御信号によって、発光制御回路260を介して、点灯間隔、及び消灯が制御される。
【0065】
前記RAM224には、CPU220が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、識別対象物である紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を備えている。
【0066】
前記真贋判定部230は、搬送される紙幣について上記した真贋判定処理を実施し、その紙幣の真贋を識別する機能を有する。この真贋判定部230は、前記RAM224に格納された識別対象物の受光データに関し、画素毎に、明度を有する色情報を含んだ画素情報に変換する変換部232と、前記変換部232で変換された画素情報を元にして、搬送された紙幣の印刷長を特定する等、反射光及び透過光から得られる紙幣に関する画像データを処理する機能を備えたデータ処理部231とを有する。
【0067】
また、真贋判定部230は、真正な紙幣に関する基準データを格納した基準データ記憶部233と、前記データ処理部231において真贋対象となる紙幣についての各種のデータ処理が施された比較データと、基準データ記憶部233に格納されている基準データとを比較し、真贋判定の処理を行う比較判定部235と、を備えている。この場合、前記基準データ記憶部233には、例えば、上記した真贋判定処理を実施するに際して用いられる真正紙幣に関する画像データや、それ以外にも、例えば、真正紙幣に関する印刷長の理論値等が記憶されている。なお、上記した基準データについては、専用の基準データ記憶部233に記憶させているが、これを上記したROM222やRAM224に記憶させておいても良い。
【0068】
次に、上述した制御手段200によって実行される紙幣処理装置1における紙幣の処理動作について、図8〜図13のフローチャートに従って説明する。
【0069】
操作者が紙幣を紙幣挿入口5に挿入する際、紙幣挿入口の近傍に設置される搬送ローラ対(14A,14B)は、初期状態において離間した状態にある(後述するST16,ST56参照)。また、押圧板115は、押圧板115を駆動する一対のリンク部材115a,115bが押圧待機部108に位置しており、紙幣が一対のリンク部材115a,115bによって受入口103から押圧待機部108に搬入できない待機位置に設定されている。すなわち、この状態では、一対の規制部材110の間に形成された開口部に押圧板115が入り込んでいるため、開口部を介して紙幣収容部内に収容されている紙幣を抜き取ることができない状態となっている。
【0070】
さらに、搬送ローラ対(14A,14B)の下流側に位置するスキュー補正機構10を構成する一対の可動片10Aは、初期状態において、あらゆる紙幣の引き抜きができないように最小幅(例えば一対の可動片10Aの間隔が52mm;後述するST15,ST57参照)に移動した状態にある。
【0071】
上記した搬送ローラ対(14A,14B)の初期状態では、皺のある紙幣であっても、操作者は容易に挿入することができる。そして、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されると(ST01)、上述した押圧板115の駆動用のモータ20を所定量逆転駆動し(ST02)、押圧板115を初期位置に移動させる。すなわち、挿入検知センサ7によって紙幣の挿入が検知されるまでは、前記押圧板115は、一対の規制部材110の間に形成された開口部に移動された状態となっており、開口部を介して紙幣が通過できないように設定されている。
【0072】
押圧板115が待機位置から初期位置に移動されると、押圧待機部108は開放状態となり(図4参照)、紙幣は、紙幣収容部100内に搬入可能な状態となる。すなわち、モータ20を所定量逆転駆動することで、押圧板115は、本体側ギヤトレイン21、及び押圧板駆動機構120(収容部側ギヤトレイン124、可動部材122に形成されるラック、及びリンク部材115a,115b)を介して、前記待機位置から初期位置に移動される。
【0073】
また、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させる。これにより、挿入された紙幣は搬送ローラ対(14A,14B)によって挟持される(ST03)。
【0074】
次いで、紙幣搬送路の開放処理が成される(ST04)。この開放処理は、図11に示すフローチャートに示すように、述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに離間する方向に駆動することで成される(ST100)。このとき、一対の可動片10Aの位置を検知する可動片検知センサによって、一対の可動片10Aが所定位置(最大幅位置)に移動したことが検知されると(ST101)、モータ40の逆転駆動が停止される(ST102)。この搬送路開放処理により、一対の可動片10A内に紙幣が進入できる状態になっている。なお、このST04の前段階では、紙幣搬送路3は、後述する搬送路閉鎖処理(ST15,ST57)によって閉鎖された状態にあるが、このように、紙幣挿入前に紙幣搬送路3を閉じておくことで、例えば、不正目的などで紙幣挿入口から板状の部材を挿入して、ラインセンサなどの素子を破損させることを防止することができる。
【0075】
次いで、紙幣搬送用のモータ13が正転駆動される(ST05)。紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)によって装置内部に搬送され、スキュー補正機構10よりも下流側に配設されている可動片通過検知センサ12が紙幣の先端を検知すると、紙幣搬送用のモータ13は停止される(ST06,ST07)。このとき、紙幣は、スキュー補正機構10を構成する一対の可動片10A間に位置している。
【0076】
引き続き、上述したローラ昇降用モータ71を駆動し、紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる(ST08)。このとき、紙幣には、何等、負荷が作用していない状態となる。
【0077】
そして、この状態でスキュー補正作動処理を行う(ST09)。このスキュー補正作動処理は、上述したスキュー補正機構用のモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを互いに接近する方向に駆動することで成される。すなわち、このスキュー補正作動処理は、図12のフローチャートに示すように、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST110)。この可動片の移動は、制御手段における基準データ記憶部に登録されている紙幣の最小幅(例;幅62mm)となるまで実行され、これにより、紙幣は、両側に当て付く可動片10Aによって、スキューが補正され、正確な中心位置となるように位置決めされる。
【0078】
上述したようなスキュー補正作動処理が終了すると、引き続き、搬送路開放処理が実行される(ST10)。これは、上述したスキュー補正機構用のモータ40を逆転駆動することで、一対の可動片10Aを離間する方向に移動することで成される(図11のST100〜ST102参照)。
【0079】
続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、上側の搬送ローラ14Aを下側の搬送ローラ14Bに当接するように移動させ、紙幣を搬送ローラ対(14A,14B)に挟持させる(ST11)。その後、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動して紙幣を装置内部に向けて搬送し、紙幣が紙幣読取手段8を通過する際に、紙幣の読取処理を開始する(ST12,ST13)。
【0080】
紙幣の読取処理においては、図6のタイミングチャートに示すように、上記した第1発光部80a及び第2発光部81bにおける赤色光と赤外光の透過用の光源と、赤色光と赤外光の反射用の光源からなる4つの光源が、一定の間隔で点灯、消灯を繰り返し、しかも、各光源の位相を重ねることなく、2つ以上の光源が同時に点灯することがないように点灯制御する。換言すれば、ある光源が点灯しているときには、他の3つの光源は消灯するように点灯制御する。これにより、本実施形態のように、1つの受光部81aであっても、各光源の光を一定間隔で検出し、赤色光の透過光及び反射光、赤外光の透過光及び反射光による識別対象物の印刷領域の濃淡データからなる画像を読取ることができる。
【0081】
そして、搬送される紙幣が紙幣読取手段8を通過して、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知されると(ST14)、紙幣搬送路3の閉鎖処理が実行される(ST15)。この処理においては、まず、図13のフローチャートに示すように、紙幣の後端が、可動片通過検知センサ12によって検知された後、上述したモータ40を正転駆動することで、一対の可動片10Aを、互いに接近する方向に移動する(ST130)。次に、可動片検知センサによって、可動片10Aが所定位置(最小幅位置、例えば52mm)に移動したことが検知されると(ST131)、モータ40の正転駆動が停止される(ST132)。
【0082】
この搬送路閉鎖処理により、一対の可動片10Aは、挿入可能なあらゆる紙幣の幅よりも狭い最小幅位置(幅52mm)に移動されており、これにより、紙幣の引き抜きを効果的に防止するようにしている。すなわち、このような紙幣搬送路の閉鎖処理を実行することで、挿入された紙幣の幅よりも、可動片10A間の距離が狭くなり、操作者が不正目的で紙幣を挿入口方向に向けて引き抜く等の行為を効果的に防止することが可能となる。
【0083】
なお、この状態で、上述した可動片検知センサが、可動片10Aの移動を検知した際、操作者が何らかの不正行為を行っているとみなし、所定の処理を実行するようにしても良い。例えば、紙幣処理装置の動作を管理する上位装置に対して不正操作信号(異常検知信号)を送信したり、紙幣処理装置に報知ランプを設けておき、これを点滅させる等の処理を実行しても良い。或いは、紙幣処理装置の動作を無効(例えば、処理の停止処理、紙幣の排出処理など)にする等、適正な処理を行うようにしても良い。
【0084】
また、上記した搬送路閉鎖処理(ST15)に引き続いて、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持可能な状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる搬送ローラ対離間処理が行われる(ST16)。この搬送ローラ対離間処理を行うことで、操作者が誤って紙幣を追加投入(二重投入)しても、紙幣は、搬送ローラ対(14A,14B)による送り動作を受けることはなく、また、ST15において接近した状態にある一対の可動片10Aの前端に突き当たることから、紙幣の二重投入動作を確実に防止することができる。
【0085】
上記した紙幣搬送路の閉鎖処理と共に、紙幣読取手段8が紙幣の後端までデータを読取ると(ST17)、上述した制御手段200の真贋判定部230において、基準データ記憶部233に記憶されている基準データを参照し、比較判定部235において、所定の真贋判定プログラムに従って紙幣の真贋判定処理を実行する(ST18)。また、この紙幣の真贋判定処理を実施している間に、紙幣搬送用のモータ13を予め特定された所定量だけ駆動し、紙幣を所定の位置(エスクロ位置;紙幣読取手段8の中心位置から13mm紙幣が下流側に搬送された位置とされる)で一時保留する(ST19,ST20)。
【0086】
このように、真贋判定処理を実行するに際して紙幣を一時保留することにより、真贋判定終了後、真正と判定された紙幣について、操作者の操作を待つ状態を確保することが可能となる。或いは、真贋判定処理を実行するに際して紙幣を一時保留することにより、真贋判定処理が完了する前に、紙幣が紙幣収容部100に搬入されるのを防ぐことが可能となる。
【0087】
なお、紙幣がこのようなエスクロ位置に一時保留されているとき、紙幣の後端は、図3に示す紙幣読取手段の受光部81aであるラインセンサ(紙幣読取手段の中心位置)から13mm下流側に位置し、かつ紙幣の先端領域は、排出検知センサ18によって検知可能となっている。ここで制御部であるCPU220は、排出検知センサ18から検知信号を検出することで、紙幣搬送路3に紙幣が存在していることを確認してから、以後の処理を実行するようにしている。
【0088】
以下、紙幣がエスクロ位置に一時保留されている際に、紙幣の存在を検出する検出処理の手順について説明する。
【0089】
上記したST18の真贋判定処理において、紙幣が真券であると判定されると(ST21;Yes)、引き続き、排出検知センサ18によって紙幣を検知しているか否かを判断する(ST22)。このとき、紙幣が検知されていれば(ST22;YES)、そのまま、紙幣を紙幣収容部100に搬送すべく、後述するST25の処理に移行する。
【0090】
また、上記ST22の判断において、紙幣の存在が検知されていない場合(ST22;No)、紙幣搬送用のモータ13を所定量、正転駆動し(ST23)、再び、排出検知センサ18によって紙幣が検知されているか否かを判断する(ST24;紙幣の再検出処理)。このとき、紙幣が検知されていれば(ST24;YES)、そのまま、紙幣を紙幣収容部100に搬送すべく、後述するST25以降の処理を実施する。
【0091】
このように紙幣を所定量搬送して、紙幣の再検出処理を行うことで、上述したようなポリマー紙幣を処理するに際して、透明部分が排出検知センサ18の部分に位置して、検知信号を受信できずに、その存在が確認できないような事態が生じても、紙幣引き抜きエラー処理を実行してしまう等の誤動作が発生することを防止できる。また、ポリマー紙幣に限らず、通常の紙幣に孔等の損傷が生じていても、同様に誤動作が発生することを防止できる。
【0092】
一方、上記したST24の紙幣の再検出処理において、紙幣が検知されなければ(ST24;NO)、ジャム等によって紙幣がエスクロ位置に到達していないか、或いは、実際に紙幣の引き抜き行為が行われているものとみなし、所定の処理を実施する。この場合、本実施形態では、後述するST51以降の処理(紙幣の排出処理)を実行して、装置全体を初期状態に戻して再び紙幣を受け入れ可能な状態にする。
【0093】
上記したST22の処理、又はST24の処理において、排出検知センサ18によって紙幣が検知されていれば、引き続き、この状態で紙幣搬送用のモータ13を正転駆動し、紙幣を紙幣収容部100に向けて搬送する(ST25)。
【0094】
このST25の処理における紙幣の搬送に際しては、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されるまでは紙幣搬送用のモータ13は正転駆動され(ST26)、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知されてから、紙幣搬送用のモータ13は所定量だけ正転駆動される(ST27,ST28)。
【0095】
このST27、及びST28における紙幣搬送用のモータ13の正転駆動処理は、紙幣が、装置本体2の紙幣搬送路3の下流側にある排出口3aから紙幣収容部100の受入口103に搬入され、前記一対のベルト150が、搬入される紙幣の両側表面に接触し、安定して押圧待機部108に案内される駆動量に対応している。すなわち、紙幣の後端が排出検知センサ18によって検知された後、更に、所定量、紙幣搬送用のモータ13を正転駆動することで、前記一対のベルト150は、搬入される紙幣に接触しつつ送り方向に駆動され、紙幣を安定した状態で押圧待機部108に案内する。
【0096】
そして、上記した紙幣搬送用のモータ13が停止した後、紙幣を載置プレート105上に載置すべく押圧板115の駆動処理を実行する(ST29)。この押圧板115の駆動処理は、紙幣を載置プレート105上に押圧しながら載置し、収容動作が終了した段階で押圧板115を再び待機位置に移動させて停止することで成される。また、ST29における押圧板115の駆動処理を実行する際には、載置プレート105の移動を検知手段(図示せず)によって検知し、検知手段が載置プレート105の移動を検知した段階で、搬送された紙幣の課金処理が併せて実行される。この課金処理は、紙幣読取手段8で読取った紙幣の具体的な価値情報を、スロットマシン等の上位装置に送信することで成される。
【0097】
また、上記した処理手順のST21において、挿入された紙幣が真券でないと識別された場合、その紙幣を排出して装置を初期状態(紙幣の挿入が可能な状態)に戻す処理を実行する。具体的に、搬送路開放処理を実行し(ST51、図11のST100〜ST102参照)、その後、紙幣搬送用のモータ13を逆転駆動し、搬送ローラ対(14A,14B)の挟持処理を実行した後、エスクロ位置に待機している紙幣を紙幣挿入口5に向けて搬送する(ST52,53)。なお、この紙幣の搬送処理(排出処理)に際しては、紙幣の搬送速度を高めるように紙幣搬送用のモータ13を制御しても良い。
【0098】
そして、挿入検知センサ7が、紙幣挿入口5に向けて差し戻される紙幣の後端を検知した際に、紙幣搬送用のモータ13の逆転駆動を停止すると共に、上述したローラ昇降用モータ70を駆動し、紙幣を挟持した状態となっている搬送ローラ対(14A,14B)を離間させる(ST54〜ST56)。その後、搬送路閉鎖処理を実施(ST57,図13のST130〜ST132参照)すると共に、押圧板115の駆動用のモータ20を所定量正転駆動することで(ST58)、初期位置にある押圧板115を待機位置に駆動して一連の処理が終了する。なお、最終的に挿入検知センサ7が、排出される紙幣を検知しなければ、内部でジャム等が生じたものとして所定のエラー処理を実行するようにしても良い。
【0099】
また、上記したST24の紙幣の再検出処理において、紙幣の存在が検出されなかった場合、上記したような紙幣の排出処理(ST51〜ST58)を実施するが、仮に、紙幣の引き抜き行為が行われていたとしても、上記したST29の課金処理が実行されていないため、不正行為によって損害などが生じることはない。もちろん、このような紙幣の排出処理以外にも、例えば、ホストコンピュータや報知装置等、外部装置に対して警報信号を送信したり、紙幣装置自体を停止処理するようにしても良い。
【0100】
上記した構成の紙幣処理装置1によれば、ポリマー紙幣の透かし部分や、通常の紙幣に孔が存在する等、排出検知センサ18による紙幣の検知位置に、光を透過してしまうような領域が存在することで紙幣の存在が確認できなくても、紙幣を検出可能な位置に移動させて再検出処理を実行するため、確実に紙幣の存在を検出することが可能となる。この結果、紙幣引き抜きエラー処理を実行する等、装置の誤動作を確実に防止することが可能となる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することが可能である。
【0102】
本発明は、センサによって紙幣搬送路3上に存在する紙幣を検出するに際し、紙幣の存在が確認できなければ、再検出処理を実行することに特徴があり、それ以外の構成については、上記した実施の形態に限定されることはない。このため、上記した真贋判定処理における具体的な識別方法、紙幣読取手段の構成(ラインセンサ以外の構成であっても良い)、及び各種駆動部材を駆動するための機構については、適宜変形することが可能である。
【0103】
また、紙幣の存在を検出する検知センサの配置箇所については、特に限定されることはない。例えば、上記した実施形態において、挿入検知センサ7や可動片通過検知センサ12を利用して、同様な再検出処理を実行しても良い。この場合、紙幣を、紙幣収容部側(下流側)に向けて所定量搬送したが、紙幣挿入口側(上流側)に向けて所定量搬送しても良い。
【0104】
さらに、上記した実施形態では、紙幣搬送機構6を駆動することで停止状態にある紙幣を搬送し、これにより紙幣の存在を再検出するよう構成したが、紙幣搬送路3を移動している紙幣に対しても、センサによる検知信号を再検出するように制御することで、ポリマー紙幣や損傷のある紙幣の存在を確実に検出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、例えば、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能であり、上記した紙幣処理装置以外にも、クーポン券やサービス券など、各種の紙葉類を処理する装置に組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、全体構成を示す斜視図。
【図2】開閉部材を装置本体の本体フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】挿入口から挿入される紙幣の搬送経路を概略的に示した右側面図。
【図4】紙幣収容部に配設される押圧板を駆動するための動力伝達機構の概略構成を示す右側面図。
【図5】紙幣搬送機構を駆動するための駆動源及び駆動力伝達機構の概略構成を示す左側面図。
【図6】紙幣読取手段における発光部の点灯制御を示しており、紙幣を読取る際の発光部の点灯制御を示すタイミングチャート。
【図7】紙幣搬送機構、紙幣読取手段等の駆動部材の駆動を制御する制御手段の構成を示すブロック図。
【図8】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その1)。
【図9】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その2)。
【図10】本実施形態の紙幣処理装置における紙幣の処理動作を説明するフローチャート(その3)。
【図11】搬送路開放処理手順を説明するフローチャート。
【図12】スキュー補正作動処理手順を説明するフローチャート。
【図13】搬送路閉鎖処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0107】
1 紙幣処理装置
2 装置本体
3 紙幣搬送路
5 紙幣挿入口
6 紙幣搬送機構
8 紙幣読取手段
10 スキュー補正機構
80 発光ユニット
80a 第1発光部
81 受発光ユニット
81a 受光部
81b 第2発光部
200 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送路に沿って搬送するように駆動可能な搬送機構と、
前記搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出するセンサと、
前記搬送機構の駆動が停止された状態で、前記センサによって搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出し、紙葉類が検出されなかった場合、前記搬送機構を駆動して、再度前記センサによって搬送路に紙葉類が存在するか否かを検出する再検出処理を行う制御部と、
を有することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記搬送路に搬送される紙葉類の真贋を判定する真贋判定部を備えており、
前記真贋判定部による真贋判定後、前記搬送機構の駆動が停止されて搬送路に一時保留した紙葉類について、前記制御部による再検出処理を実施することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−79376(P2010−79376A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244030(P2008−244030)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】