説明

紙葉類処理装置

【課題】受入れ口に投入された折り癖やシワのある紙葉類をジャムを発生させることなく回収して収容する紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】カセット(A、B又はC)に収納する搬送途中の鑑別部において取得された紙幣の画像データから紙幣の折れやシワを検出し、検出した折れ/シワによる変形量に応じてカセットの紙幣を支持する紙葉類支持台57を下降させて紙幣の収容領域を大きくすることにより後続の紙幣17が先行した折れ/シワの変形量の大きい紙幣1又は5に追突しないようにする。折れ/シワの大きい紙幣1又は5が連続したときは、1枚目をカセットに収納し、2枚目以降は損券としてリジェクト部Aに収納するようにして、収納処理を停滞させることなく行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受入れ口に投入された折り癖やシワのある紙葉類をジャムを発生させることなく回収して収容する紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類を自動的に収容する紙葉類処理装置がある。代表的なものとしては、例えば銀行や郵便局あるいはコンビニエンスストアなどに設置され、外部から紙幣出し入れ口に挿入される預け入れ金の紙幣を収容し、又は引き出し金の紙幣を払い出すなどの処理を自動的に行う現金自動取引装置(ATM:Automated Teller Machine)がある。
【0003】
このような現金自動取引装置では、顧客が所望の金額を引き下すときは、現金自動取引装置の入力操作パネルから、現金を引き出す旨と、その引き出し金額を入力すると、所望の金額に対応する枚数の紙幣が、紙幣出し入れ口から払い出されてくるようになっている。
【0004】
また、顧客が現金自動取引装置の紙幣出し入れ口から紙幣を投入すると、投入された紙幣は、搬送路の途中にある鑑別部によって画像認識されて、自動的に金種の識別やその他必要な鑑別の処理が施され、更に枚数を計数されて、所定の紙幣収納部に収容される。
【0005】
このとき紙幣収納部に紙幣を収容する場合、収納部の収納領域に上側から紙幣を収納する場合の収納部の動作に対する制御としては2通りの制御が行われている。1つは、紙幣の収納枚数、例えば10枚を収納するごとに、収納部の底部に配置されている紙葉類支持台を1mmだけ下げるという一定枚数毎下降の制御である。
【0006】
もう1つは、収納された紙幣の上端位置をセンサで監視し、上端位置が所定の位置よりも上になったとき紙葉類支持台を、ある一定量下降させて、収納に適した位置に紙幣上端がくるようにするという上端位置監視の制御である(例えば、特許文献1参照)。従来は、この2通りの制御が並行して行われていた。
【0007】
ところで、現金自動取引装置の紙幣出入口に預け入れで投入される紙幣は必ずしも全てきちんと引き伸ばされて紙幣出入口に挿入されるわけでない。例えば二つ折の財布から取り出したばかりの折癖の付いた紙幣は、通常そのまま紙幣出入口に挿入される。
【0008】
また、中には四つ折にきっちり折り目をつけて畳んだ紙幣を財布等に入れて持ち歩く人も居る。また財布を持たず、ポケットなどに紙幣をシワだらけにして持ち歩く人もいる。そのような紙幣を、四つ折れやシワを正しく伸ばすこともせずに、そのまま乱暴に紙幣出入口に挿入してしまう人がいる。
挿入された紙幣が贋紙幣である場合は別として、折れやシワがあっても真券と判別されたときは顧客に返却(紙幣出入口に逆搬送)せずに回収される。
【0009】
図11(a) は、例として、二つ折れが発生している紙幣の例を模式的に示す図、同図(b) 〜(d) は収納部内に収容された状態を矢印aで示す搬送方向に見た図である。同図(a) に示す紙幣1は、その表面には上下左右の区別が一目で分かるような人物の肖像画2が左端に印刷されている。そして同図(a) に示す例では、中央に折れ3が発生している。
【0010】
尚、二つ折りの財布から取り出された紙幣の場合は必ずしも図11(b),(c),(d) のように明確に折り目が付くものではなく、曲がり癖となる場合が多いが、以下の説明では本発明の実施例においても、曲がり癖も含めて「折れ」と表現する。
【0011】
図12(a) は、四つ折れが発生している紙幣の例を模式的に示す図、同図(b),(c) は収納部内に収容された状態を矢印aで示す搬送方向に見た図である。同図(a) に示す紙幣5は、正面からみて左から右へ、1本の谷折れ6と、2本の山折れ7、8が発生している。
【0012】
このような折れ3、6、7、8等の検出では、紙幣の画像から、濃度変換を行い、重み付けを行って折れ目の位置や折れの大きさを検出する方法や(例えば、特許文献2参照)、紙幣にLED光を当て、その反射の汚れや折れや折れの深さを検知する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0013】
ところで、上記のような折れやシワがある紙幣は、搬送中は搬送ベルトに上下から挟まれて伸びているが、収納部内に収容されると折れやシワが元に戻って、折れやシワが無い紙幣に比較して大きく盛り上がった形状で収納部内の最上部に収容される。
【0014】
図11(b) は、二つ折れの紙幣1が折れ3を上にして山折れの状態で収納部内に収容された状態を示しており、同図(c),(d) は、それぞれ折れ3を下にして谷折れの状態で収納部内に収容された状態を示している。
【0015】
また、図12(b) は、四つ折れの紙幣5が正面を上にして収納部内に収容された状態を示し、同図(c) は裏面を上にして収納部内に収容された状態を示している。尚、図11(b),(c),(d) 及び図12(b),(c) に示す収納部内に収容後の折れ紙幣の盛り上がり状態は、分かりやすいように誇張して示している。
【0016】
このままでは、後続の紙幣の先端が、図11(b) 〜(d) に示す紙幣1のc1、c2、c3及びc4に示す端部、又は図12(b),(c) に示す紙幣5のc5、c6、c7、c8、及びc9で示す端部に追突してジャムを引き起こすおそれが多分にある。
【0017】
図13(a),(b) は同図(c),(d) と比較する参考のために図11(a) 及び図12(a) を再掲した図、図13(c) は大きな横シワのある紙幣を示す図、図13(d) は大きな縦シワのある紙幣を示す図である。
【0018】
図14は、上記のような二つ折れ、四つ折れ、横シワ、又は縦シワの有る紙幣1、5、9a又は9bを収容した直後の収納部の不具合を示す側断面である。同図に示すように、収納部10は、繰入れ繰出し機構部11の下方に、収容領域を形成する収納容器12を着脱自在に備えている。
【0019】
収納容器12の下方には、不図示の昇降機構に連結する紙葉類支持台13が配置され、その紙葉類支持台13の上に多枚数の紙幣が堆積した紙幣束14が収容されている。紙幣束14の最上端の前後には、上端センサ(光透過センサ)15(15a、15b)が配設されている。
【0020】
図14は、収納部10において、繰り入れ繰り出し口16から取り込まれた紙幣1又は5が収納容器12の紙幣束14の最上部に収容され、その直後に後続の紙幣17の先端が、紙幣1又は5の盛り上がった後端部のc1、c2、又はc3、又はc4、又はc5、c6、又はc7、c8、c9に追突した例を示している。
【0021】
図13(c),(d) に示した紙幣9a又は9bの場合も、収納部10において、繰り入れ繰り出し口16から取り込まれて収納容器12の紙幣束14の最上部に収容されたとき、その直後に後続の紙幣17の先端がシワの部分に追突することは、特には図示しないが、紙幣1又は5の場合と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平07−187472号公報
【特許文献2】特開2002−373357号公報
【特許文献3】特開2004−246681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来、確かに上記のように紙幣束14の最上端に光透過センサ15が上端センサとして配置されている。しかしながら、センサ監視時間の関係などから、上端センサが紙幣位置の異常を検知して紙葉類支持台を下げ始めるまでに僅かではあるが若干の時間を要する。そして、通常、紙幣収納装置は毎秒12枚程度の速い搬送速度で紙幣を搬送するが一般的である。
【0024】
したがって、上端センサによる監視のみの従来技術では、収納する紙幣が折り癖やシワ等によって、紙幣の変形量が大きかった場合、上端センサが紙幣の大きな変形による紙幣位置の異常を検知して紙葉類支持台を下げる間に、3枚程度の紙幣が収納部に入ってくることになる。
【0025】
従来、これらの紙幣がまだ十分に下げきらない変形紙幣の後端に図14に示したように追突してジャムが発生するという問題がある。そして、このような問題が従来の技術ではしばしば発生するという解決すべき課題がある。
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明は、折り癖やシワのある紙葉類が受入れ口に投入されてもジャムを発生させることなく投入され紙葉類を収容する紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の紙葉類処理装置は、搬送部により搬送され鑑別部により鑑別される紙葉類を、上記鑑別部の鑑別に従って所定の紙葉類収納部へ収納するよう搬送する紙葉類処理装置において、上記鑑別部において取得された上記紙葉類の画像から該紙葉類の折れ又は曲がりを検出する折れ検出部と、上記紙葉類の上記画像から上記紙葉類のシワを検出するシワ検出部と、上記折れ又は曲がりによる変形量、又は上記シワによる変形量、に応じて上記紙葉類収納部の収容領域を大きくするよう上記紙葉類収納部の紙葉類支持台を降下させる支持台昇降部と、を有して構成される。
【0028】
上記折れ検出部又は上記シワ検出部は、例えば、上記鑑別部により取得された上記紙葉類の上記画像に現れているスジの濃淡から上記紙葉類の折れ又は曲がり、又はシワ、の有無と上記変形量を決定するように構成される。
【0029】
また、上記搬送部は、例えば、上記折れ又は曲がりによる変形量及び/又は上記シワによる変形量が所定の閾値以下の上記紙葉類の後に続いて、上記搬送部により前後して連続して搬送される上記紙葉類がいずれも上記折れ又は曲がりによる変形量及び/又は上記シワによる変形量が所定の閾値を超えているとき、先行の上記紙葉類を上記収容領域を大きくした上記紙葉類収納部に収納するよう搬送し、後続の上記紙葉類をリジェクト部に収納するよう搬送するように構成される。
【0030】
また、上記構成において、例えば、上記折れ検出部により検出された上記折れ又は曲がりによる上記紙葉類の上記変形量、及び上記シワ検出部により検出された上記シワによる上記紙葉類の上記変形量を示すデータは、上記鑑別部により上記搬送部に対し発行される鑑別データに付加される、ように構成される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の紙葉類処理装置は、折り癖やシワのある紙葉類が紙幣出し入れ口に投入されてもジャムを発生させることなく投入された紙葉類を収容するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係る紙葉類処理装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。
【図2】実施例1に係る紙幣処理装置の制御部が処理する処理システムの構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る紙幣処理装置の鑑別部で作成される判定データと鑑別データで構成される変数Kのデータ構成を示す図である。
【図4】実施例1に係る紙幣処理装置の鑑別部で作成される鑑別データに関る変数C及び変数S[C]のデータ構成と鑑別部で用いられる閾値のデータ構成を示す図である。
【図5】紙幣受入れ時において紙幣を各収納容器に収容する搬送処理の動作を示すメインフローチャートである。
【図6】メインフローチャートの紙幣鑑別処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】紙幣鑑別処理の折れ/シワ判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】メインフローチャートの収納安定化制御の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】メインフローチャートの追突ジャム防止制御の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】図1のカセットの内部構造を示す側断面図である。
【図11】(a) は例として二つ折れが発生している紙幣の例を模式的に示す図、(b) 〜(d) は収納部内に収容された状態を矢印aで示す搬送方向に見た図である。
【図12】(a) は四つ折れが発生している紙幣の例を模式的に示す図、(b),(c) は収納部内に収容された状態を矢印aで示す搬送方向に見た図である。
【図13】(a),(b) は参考のため図11(a) 及び図12(a) を再掲した図、(c) は大きな横シワのある紙幣を示す図、(d) は大きな縦シワのある紙幣を示す図である。
【図14】二つ折れ又は四つ折れの有る紙幣を収容した直後の収納部の不具合を示す側断面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、実施例1に係る紙葉類処理装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。同図に示す紙葉類処理装置20は、例えば銀行等で対顧客用として使用されている現金自動取引装置と同様の構成を示している。
【0035】
同図に示す紙葉類処理装置20は、装置前方(図の右方)のやや傾斜して形成されている上面に入力操作表示部21を備え、入力操作表示部21の下方の装置底部には制御部22が配設されている。
【0036】
入力操作表示部21より左方の装置内部には、顧客が外部から紙葉類を出し入れする入出金部23を備えている。入出金部23は上下に開閉するシャッタ24を備えている。
更に本体内部には、入出金部23に直接連結された返却保留部25が配置されている。また、入出金部23の繰入れ繰出し機構部26から先には、収納搬送路a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、kが形成されている。
【0037】
収納搬送路dには、テスト券セット部27からのテスト搬送路mが合流する。この合流点より先の収納搬送路eは鑑別部28の内部を通過し、鑑別部28を出て続く収納搬送路f、gより先は、収納搬送路h、i、j、kにそれぞれ分岐している。
【0038】
収納搬送路hは、取忘れ回収部29、リジェクト部A31、及びリジェクト部B32にそれぞれ連結する3つの分岐路を形成している。尚、取忘れ回収部29は、紙幣払い出し時に顧客が取り残した紙幣を一時的に回収する回収部であり、紙幣預け入れ時に用いられることはない。
【0039】
収納搬送路iは繰入れ繰出し機構部33を介してカセットA34に連結され、収納搬送路jは繰入れ繰出し機構部35を介してカセットB36に連結され、収納搬送路kは繰入れ繰出し機構部37を介してカセットC38に連結されている。
【0040】
また、収納搬送路fとgの中間で2つの分岐路が形成されている。上流側では一時保留部39に繰入れ繰出し機構部41を介して連絡する保留搬送路nが形成され、下流側で前述した返却保留部25に連絡する返却搬送路pが形成されている。
【0041】
上記の入力操作表示部21は、顧客と紙葉類処理装置20とのマン・マシン・インターフェースであり、顧客から例えば紙幣の引き出し又は預け入れ等の紙幣の取引をいまから行う旨の入力が行われる入力スイッチを備えている。
【0042】
入力スイッチは、例えば不図示の表示装置の近傍に配設されたボタンスイッチでもよく、あるいは表示装置上に重ねて配設されているタッチパネル(登録商標)式の入力装置であってもよい。
【0043】
一時保留部39には、紙幣預け入れ時に顧客から入出金部23に投入された紙幣が一枚ごとに取り出されて収納搬送路a、b、c、d、e、f、及び保留搬送路nを通って一時的に収容される。
【0044】
そして、鑑別部28で計数された全紙幣の枚数又は額面と、顧客が入力操作表示部21から入力した紙幣の枚数又は額面とが一致すると、一時保留部39から紙幣が一枚ごとに取り出されて保留取出搬送路qから収納搬送路b、c、dを経由して再び鑑別部28を通過する。
【0045】
鑑別部28は、通過する紙幣を詳しくは後述するように鑑別して、その鑑別結果を鑑別データとしてシステム管理部47に通知する。
システム管理部47は、鑑別データに基づいて、紙幣の搬送先を、カセットA34、B36、又はC38、又はリジェクト部A31、B32、又は返却保留部25等に仕分けして、各収納搬送路の分岐路に設けられている不図示の切換装置を制御する。
【0046】
それらの切換装置は、システム管理部47からの制御によって、搬送途上の紙幣を通過させる方向又は構成部内に収納する方向のいずれかに搬送方向を切り替える。
この搬送方向の切り替えにより、紙幣が例えば贋紙幣の場合、又は受付外金種の場合は不良券として返却保留部25に返却される。また、贋紙幣では無いが、例えば大きな汚れ等があり今後の使用に支障が考えられ使用可能な他の紙幣と交換する必要があるときも返却保留部25に返却される。
【0047】
損傷が大きく今後の使用に支障が考えられるものは損券として、また旧券も、後刻行内で正常券と交換するために、リジェクト部B32に収納される。そして、正常券であると鑑別された紙幣は、金種ごとに仕分けされて、カセットA34、B36、又はC38に収納される。
【0048】
尚、折れ/シワの有る紙幣の仕分け、及びリジェクト部A31の使用方法については後述する。また、紙幣払い出し時の出金搬送路は、上述した各収納搬送路が示す矢印とは反対向きの矢印で示されているが、出金時の処理は、本発明の主旨ではないので説明は省略する。
【0049】
図2は、上記の紙幣処理装置20の制御部22が処理する処理システムの構成を示すブロック図である。尚、図2には、図1に示した構成部分と同一の機能部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0050】
図2に示すように、制御部22には配線44を介してBRU(Bill Recycle Unit) 45が接続されている。BRU45は、通信制御部46、システム管理部47、鑑別部28、搬送制御部48、メカ制御部49等から成る。
【0051】
BRU45の通信制御部46は制御部22との通信を処理する。制御部22は、配線44及びBRU45の通信制御部46を介してBRU45と通信し、BRU45に対し、コマンドを送信して動作の指示を行う。
【0052】
システム管理部47は、通信制御部46を介して制御部22から入力されるコマンドを解析して搬送制御部48やメカ制御部49等の動作を指示し、この指示結果が正常に終了したか異常終了したかを示す応答信号であるレスポンスを通信制御部46を介して制御部22に送信する。
【0053】
鑑別部28は、システム管理部47からの指示に従って、収納搬送路eを通過する紙幣の鑑別を行う。この鑑別では、例えば正常券、損券、不良券、又は旧券か否かが鑑別される。これらの鑑別は、通常の紙葉類処理装置で行われる通常の鑑別である。
【0054】
千円、五千円、一万円、旧券等の形状は、画像処理部において紙幣を撮像して得られた画像データを、辞書比較部において辞書として予め記憶されている各種紙幣の画像データと比較することによって鑑別される。
【0055】
本例の紙葉類処理装置20におけるBRU45では、更に鑑別部28において、特別な鑑別として、紙幣に発生している折れの有無とその程度、シワの有無とその程度も鑑別される。これらの鑑別結果はセンサにより画像の濃度が所定値以上に変化している部分を抽出することによって取得される。
【0056】
これら通常の鑑別の結果と特別な鑑別の鑑別結果は、鑑別データとしてシステム管理部47に送信される。システム管理部47は、その鑑別データに基づいて、搬送制御部48及びメカ制御部49の制御を行う。
【0057】
搬送制御部48は、各収納搬送路の搬送ベルトを駆動するモータ、それらの収納搬送路を通過する紙幣を検知するセンサ、所望の分岐路に到達した紙幣を所定の収納部方向に搬送すべく分岐路の方向を切り替える切替部を動作させるマグネットを備えている。
【0058】
メカ制御部49は、カセットA34、B36、及びC38の動作部を制御する。カセットA34、B36、及びC38は、図1に示したのと同様の構成であり、それらの動作部には、図10に示した繰入れ繰出し機構部11と同様な構成をした図1に示す繰入れ繰出し機構部33、35、及び37が含まれる。
【0059】
更に動作部としては、図1には示していないが図10に示したと同様の収納容器12の下方に配置される紙葉類支持台57を昇降させる昇降機も含まれている。また、動作部にはカセットA34、B36、及びC38に対する搬入路と搬出路を切り替える切替部も含まれる。
メカ制御部49は、上記の各動作部の動作を制御するための複数のモータ、マグネット、センサを備えている。
【0060】
図3は、上述した鑑別部28で作成される判定データと鑑別データで構成される変数Kのデータ構成を示す図である。同図には、最上部に変数K60を示し、その下に変数K60のデータ構成である判定データからなるビット部61と鑑別データ62を示し、その下にビット部61のデータ構成を示している。
【0061】
更に、その下方には、上記の鑑別データ62と、鑑別データ62の三大分類63と、三大分類63のそれぞれの詳細なデータ構成を示している。三大分類63は、紙幣世代64、方向65、鑑別コード66の各データ部で構成される。
【0062】
上記のビット部61は、BIT0(0番目ビット)からBIT7(7番目ビット)まで8ビットのビット列で構成される。判定紙幣結果67に示すように、紙幣の判定は、図の例では正常券、不良券、損券、折れ券(折れ目の大きな紙幣)、シワ券(大きなシワのある紙幣)の5通りで判定される。
【0063】
上記のBIT0は紙幣が正常券であるか否かを示すビットであり、データ構成68に示すように、正常券であれば「1」、正常券でないときは「0」の値をとる。また、BIT1は紙幣が不良券であるか否かを示すビットであり、不良券であれば「1」、不良券でないときは「0」の値をとる。
【0064】
また、BIT2は紙幣が損券であるか否かを示すビットであり、損券であれば「1」、損券でないときは「0」の値をとる。また、BIT3は紙幣が折れ券であるか否かを示すビットであり、折れ券であれば「1」、折れ券でないときは「0」の値をとる。
【0065】
また、BIT4は紙幣がシワ券であるか否かを示すビットであり、シワ券であれば「1」、シワ券でないときは「0」の値をとる。また、BIT5〜BIT7は予備領域であり、後日、紙幣判定の判定種類を増やす必要が生じた場合にデータ領域として用いられる。
【0066】
また、鑑別データ62の三大分類63の、紙幣世代64は、旧券と新券の2通りに分類され、旧券の場合は「0」、新券の場合は「1」の値をとる。また、方向65は、紙幣表面と紙幣裏面の2通りに分類され、紙幣表面のときは「0」、紙幣裏面のときは「1」の値をとる。
【0067】
また、鑑別コード66は、正常券、損券、不良券の3通りに大別される。正常券の場合は、千券(千円紙幣)の場合は「1000」、2千券(二千円紙幣)の場合は「2000」5千券(五千円紙幣)の場合は「5000」、万券(一万円紙幣)の場合は「A000」でのデータが格納される。
【0068】
また、損券の場合は、千券の場合は「1001」、2千券の場合は「2001」5千券の場合は「5001」、万券の場合は「A001」でのデータが格納される。不良券の場合は破損や汚れが大きくて金種が不明の場合が多く、データ無しを示す「FFFF」が格納される。
【0069】
図4は、上記と同じく鑑別部28で作成される鑑別データに関る紙幣収納先を示す変数C、及び各カセットにおける紙幣の折れ/シワ収納状態を示す変数S[C]のデータ構成と鑑別部で用いられる閾値のデータ構成を示す図である。
【0070】
同図には、最上部に変数C70を示し、その下に変数C70の具体的データ構成を示している。同図では、紙幣の収納先がカセットA34である場合は変数C70は「1」の値をとる。
【0071】
同様にして、紙幣の収納先がカセットB36である場合は「2」の値、カセットC38である場合は「3」の値、リジェクト部A31の場合は「−1」の値、リジェクト部B32の場合は「−2」の値を、それぞれとるようになっている。
【0072】
また、図4の変数C70の下方に示される変数S[C]71は、その下方に具体的にデータ構成を示しているように、S[C]71の変数Cは「1」「2」「3」の3通りの値をとり、いずれの場合も各カセットにおける紙幣の折れシワ収納状態を示す1ビットのデータを伴っている。
【0073】
変数S[C]71が変数S[1]となったときはカセットA34に対応する変数であり、カセットA34に収納する紙幣の折れシワ収納状態を示す1ビットのデータは、折れシワ紙幣が収納されたときは1ビットデータは「1」の値となり、折れシワ状態以外の紙幣が収納されたときは1ビットデータは「0」の値となる。
【0074】
同様に、変数S[C]71が変数S[2]となったときはカセットB36に対応する変数となり、そのカセットB36に収納された紙幣の折れシワ状態によって、1ビットデータは「1」又は「0」の値となる。
【0075】
同様に、変数S[C]71が変数S[3]となったときはカセットC38に対応する変数となり、そのカセットC38に収納された紙幣の折れシワ状態によって、1ビットデータは「1」又は「0」の値となる。
【0076】
また、変数S[C]の下方に示される鑑別部で用いられる閾値すなわち鑑別部閾値72は、千券の金種を判定するための閾値である千券金種パターンデータ、2千券の金種を判定するための閾値である2千券金種パターンデータ、5千券の金種を判定するための閾値である5千券金種パターンデータ、万券の金種を判定するための閾値である万券金種パターンデータを予め不図示のイメージメモリに備えている。
【0077】
更に、鑑別部閾値72には、紙幣の汚れの程度が再使用可能か損券に相当するかを鑑別するための汚れ閾値、折れの状態がパターン1であるか否かを鑑別するための折れパターン1閾値、折れの状態がパターン2であるか否かを鑑別するための折れパターン2閾値を予め不図示のデータメモリに備えている。
【0078】
折れパターン1閾値は、紙幣の折れの状態が2つ折れの場合の状態を示す閾値であり、2つ折れの状態が閾値より小さい場合は、たとえ折れ癖がある場合でも正常券に近く流通に問題はないと判定し、この場合はカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいと判定する。
【0079】
一方、紙幣の2つ折れの状態を示す値が折れパターン1閾値よりも大きい場合は、流通に問題はなくとも折れ癖が強いため、1枚だけならカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいが、連続する場合は2枚目以降を損券とする。
【0080】
また、折れパターン2閾値は、紙幣の折れの状態が4つ折れの場合の状態を示す閾値であり、4つ折れの状態が閾値より小さい場合は、たとえ折れ癖がある場合でも正常券に近く流通に問題はないと判定し、この場合はカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいと判定する。
【0081】
一方、紙幣の4つ折れの状態を示す値が折れパターン2閾値よりも大きい場合は、流通に問題はなくとも折れ癖が強いため、1枚だけならカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいが、連続する場合は2枚目以降を損券とする。
【0082】
但しこの損券は、後刻取り出して流通用紙幣として取扱うためにリジェクト部A31に収納すべきものと判定する。尚、このように折れの状態が折れパターン1又は2閾値より大きい紙幣を、以下単に「折れ紙幣、又は折れ券」ということにする。
【0083】
また、折れパターン1または2以外の不特定な折れの判定は、以下のシワ判定により行う。
更に、鑑別部閾値72には、紙幣のシワの状態がパターン1であるか否かを鑑別するためのシワパターン1閾値、シワの状態がパターン2であるか否かを鑑別するためのシワパターン2閾値を予め不図示のデータメモリに備えている。
【0084】
シワパターン1閾値は、紙幣のシワの状態が横シワの場合の状態を示す閾値であり、横シワが閾値より小さい場合は、たとえ横シワはある場合でも正常券に近く流通に問題はないと判定し、この場合はカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいと判定する。
【0085】
一方、紙幣の横シワの状態を示す値がシワパターン1閾値よりも大きい場合は、流通に問題はなくとも折れ癖が強いため、1枚だけならカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいが、連続する場合は2枚目以降を損券とする。
【0086】
また、シワパターン2閾値は、紙幣のシワの状態が縦シワの場合の状態を示す閾値であり、縦シワが閾値より小さい場合は、たとえ縦シワがある場合でも正常券に近く流通に問題はないと判定し、この場合はカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいと判定する。
【0087】
一方、紙幣の縦シワの状態を示す値がシワパターン2閾値よりも大きい場合は、流通に問題はなくともシワ癖が強いため、1枚だけならカセットA34、B36、C38のいずれかに収納してよいが、連続する場合は2枚目以降を損券とする。
【0088】
但しこの場合も、この損券は、後刻取り出して流通用紙幣として取扱うためにリジェクト部A31に収納すべきものと判定する。尚、このようにシワの状態がシワパターン1又は2閾値より大きい紙幣を、以下単に「シワ紙幣、又はシワ券」ということにする。
【0089】
また、鑑別部閾値72には、斜行閾値が予めイメージメモリに格納されている。搬送中の紙幣の画像イメージの鑑別結果が斜行閾値よりも大きいときは不良券と判定する。
次に、上記の鑑別に関る変数K、変数C、及び変数S[C]の値を設定し、その設定した値に基づいて紙幣の搬送を仕分けながらカセットA34、B36、C38、リジェクト部A31、又はリジェクト部B32の各収納容器に収容する搬送処理について説明する。
【0090】
図5は、以上のハード構成及びデータ構成を有する紙葉類処理装置20において、制御部22によりBRU45の各部を制御して、顧客から預け入れられた紙幣を収納する紙幣受入れ時において、紙幣を各収納容器に収納する搬送処理の動作を示すメインフローチャートである。
【0091】
図6は上記メインフローチャートの紙幣鑑別処理の詳細を示すフローチャートである。
図7は上記紙幣鑑別処理の折れ/シワ判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図8はメインフローチャートの収納安定化制御の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0092】
図9はメインフローチャートの追突ジャム防止制御の処理の詳細を示すフローチャートである。
図10は、上記の搬送処理において紙幣の収納先となるカセット(A34、B36又はC38)の内部構造を示す側断面図である。尚、図10に示すカセット(A34、B36又はC38)は、図14に示した従来の収納部10の構成とは、紙葉類支持台57の動作が異なるだけで、他の構成は同一であるので、紙葉類支持台57以外の構成部分には図14と同一の番号を付与して示している。
【0093】
図5に示す処理において、入金受け付けした紙幣を金種別に収納する搬送処理が開始されると、システム管理部47は、図5には特には図示していないが、先ず、機構部動作の準備処理を行う。
【0094】
すなわち、システム管理部47は、先ず、メインDCモータを起動する。なお、メインDCモータの起動に失敗した時は、異常終了となり、異常終了を示す異常終了データが設定される。
【0095】
メインDCモータの起動に続いて、システム管理部47は、紙幣の収納先にカセット(A34、B36又はC38)が有る場合は、そのカセットの収納準備を行い、紙幣を繰出す場所(入出金部23又は一時保留部39)の繰出し準備を行う。
【0096】
次に、システム管理部47は、搬送パラメータのセットを行う。この処理では、搬送処理で必要となる搬送速度や、図3及び図4に示したように、正常券の場合、損券の場合、不良券の場合、異金種の場合、旧券の場合等に仕分るパラメータや、仕分けされた紙幣に対応する収納先を指定するパラメータとして、変数K、変数C、変数S[C]等が鑑別部28に通知するための情報として設定される。
【0097】
続いて行われる本例の紙幣搬送処理では、紙幣収納時のジャムを防止するために、詳しくは後述するように、3つの制御が行われる。
第1には、紙幣鑑別において、折れやシワの情報を紙幣鑑別情報に付加する制御、第2には、追突ジャムを防止するために折れやシワによる形状変形量の大きな紙幣の場合にリアルタイムで収納先カセットの紙葉類支持台を下降させる制御、第3には、常に安定した収納を行うために折れやシワによる形状変形量の大きな紙幣を収納先カセットに連続収納させない制御である。
【0098】
この搬送処理の詳細では、図5に示すように、システム管理部47は、先ず、紙幣搬送用の判断に用いられる搬送処理用変数を初期化する処理を行う(S501)。
この処理では、BRU45において、紙幣搬送処理で使用するレジスタ領域における折れやシワの判定用のビット列情報である変数K、変数C、の「0」初期化、紙幣繰出し元の決定データの設定、鑑別部への繰出し元データの設定などの初期化処理が行われる。
【0099】
尚、変数S[1〜3]の初期化については、装置の電源投入時に「0」が設定される。
また、カセットが脱着された場合は当該カセット[C]に対応する変数Sに「0」が設定される。
【0100】
上記の処理に続いてシステム管理部47は、詳しくは後述する紙幣鑑別処理を行う(S502)。この処理は、搬送される紙幣が鑑別部28を通過するときに、システム管理部47の制御の下にBRU45の鑑別部28で行われる処理である。また、このとき通常に行われる紙幣鑑別の結果の情報に更に加えて、折れやシワの情報も付加される。
【0101】
続いて、システム管理部47は、収納決定の処理を行う(S503)。この処理では、システム管理部47は、鑑別の結果の情報に含まれる金種に基づき、収納すべきカセット番号を変数Cにセットする。
【0102】
例えば、カセットA34が1万円紙幣用、カセットB36も1万円紙幣用、カセットC38が千円紙幣用としたとき、鑑別結果が1万円紙幣ならば変数Cに「1」をセットする、又はカセットA34が1万円紙幣で満杯ならば「2」をセットする。
【0103】
鑑別結果が5千円紙幣又は2千円紙幣ならば該当する収納用カセットが無いので変数Cに「−2」をセットする。鑑別結果が千円紙幣ならば変数Cに「3」をセットする。
そして、システム管理部47は、変数Cにより指定されるカセット(A34、B36又はC38)の不図示の加速ローラを起動し、繰入れ繰出し機構部(33、35又は37)の不図示の搬送路ゲートを搬入方向に切り替えるようマグネットを起動する。
【0104】
尚、加速ローラの起動に失敗した時、又はマグネットの起動に失敗した時は、異常終了となり、異常終了を示す異常終了データが設定される。
また、このように5千円紙幣又は2千円紙幣を再出金用のカセットに収容しないのは、流通数量が少ないためであり、顧客が5千円紙幣又は2千円紙幣を必要とするときは、専用の両替機が使用される。
【0105】
上記に続いて、システム管理部47は、詳しくは後述する収納安定化の制御を行う(S504)。この処理は、折れ又はシワの変形量が大きい紙幣が続けてカセットに収納されないようにする制御である。
【0106】
次に、システム管理部47は、変数Cが「−1」、「−2」または変数KのBIT1またはBIT2が「1」か否かを判別する(S505)。そして、いずれも否(S505の判別がNo)なら、当該紙幣は正常券として仕分けされた紙幣であるので、変数Cで指定されているカセットA、B、Cのいずれかに収納する(S506)。
【0107】
更に、システム管理部47は、詳しくは後述する追突ジャム防止の制御を行う(S507)。この処理は、折れやシワの変形量の大きい紙幣が収納された場合に所定の適正値分だけ収納先のカセットの紙葉類支持台57を下降させてる処理である。
【0108】
続いて、システム管理部47は、規定枚数を収納毎に、当該カセットの紙葉類支持台57を一定量下降させる(S508)。この処理では、収納先のカセットの繰入れ繰出し機構部(33、35又は37)の搬送路ゲートに設けられている不図示のセンサによる割り込み処理で紙幣の収納枚数を計数する。
【0109】
そして、規定枚数に達したら紙葉類支持台57を下降駆動するステッピングモータを一定ステップ回転させて、紙葉類支持台57を一定量下降させる。
続いて、システム管理部47は、紙幣収納中のカセット(A34、B36又はC38)のセンサの出力を監視する(S509)。この処理では、カセット(A34、B36又はC38)の紙幣束14の上端を検知する上端センサ15(15a、15b)の出力の監視が行われる。
【0110】
上端センサ15が連続遮蔽した場合は上端センサ15が透過を示すまで紙葉類支持台57を下降させる。
ここで、システム管理部47は、紙幣の指定枚数(顧客が入出金部23に投入した紙幣の枚数)の収納動作が完了したか否か判別する(ステップS510)。尚、上記ステップS505の判別がYesなら、その場合は当該紙幣をリジェクト部に収納してから(ステップS511)、ステップS510の判別処理に移行する。
【0111】
尚、上記ステップS505の判別がYesの場合は、当該紙幣は損券又は不良券であり、ステップS511の処理では、損券はリジェクト部A31に収納され、不良券はリジェクト部B32に収納される。
【0112】
上記ステップS510の判別で、指定枚数の紙幣に対する収納動作が完了でないなら(S510の判別がNo)、ステップS501に戻って、ステップS501〜S510を繰り返す。
【0113】
他方、完了なら(S510の判別がYes)、メインDCモータを停止させて紙幣搬送処理を終了する。この紙幣搬送処理が終了すると、レスポンスの編集を行って処理を全て終了する。
【0114】
このレスポンスの編集は、搬送処理が正常に終了したか、異常で終了したか、異常で終了した場合は、どの処理で異常が起きたかを示すデータの編集処理である。この編集されたレスポンスのデータは、処理終了後に保守作業のために行員に通知される情報である。
【0115】
図6は、上記メインフローチャートの紙幣鑑別処理の詳細を示すフローチャートである。図6において、先ず、システム管理部47は、搬送される紙幣をスキャンニングする(ステップS601)。この処理では、例えばラインセンサを用いて紙幣画像をイメージスキャンする。
【0116】
また、この処理では、システム管理部47は、鑑別する紙幣の画像データを辞書比較部で辞書の画像データとマッチングできる形に加工する画像処理を行う。
そして、システム管理部47の制御の元に、鑑別部28の辞書比較部において辞書の画像データとのマッチングがおこなわれ、例えば正常券、金種、偽造券、損券、不良券、旧券等の通常の鑑別処理と折れ/シワ鑑別による判定が行われる。
【0117】
続いて、システム管理部47は、いまスキャンした紙幣が斜行しているか否かの斜行判定を行う(ステップS602)。この処理では、鑑別した紙幣の斜行量(例えば搬送方向に対する角度)を判定する。
【0118】
つまり、鑑別結果と辞書比較部における辞書の画像データの斜行量の閾値とを比較して、鑑別結果が閾値より大きい場合は、変数KのBIT1を「1」にする。この場合は当該紙幣が不良券に設定されたことになる。
【0119】
また、鑑別結果が閾値より大きくない場合は、変数KのBIT1は初期値のまま「0」である。この場合は当該紙幣が少なくとも不良券ではないと判定されたことになる。
次に、システム管理部47は、変数KのBIT1が「1」か否か判別する(ステップS603)。そして、変数KのBIT1が「1」でないなら(S603の判別がNo)、その場合はシステム管理部47は、続いて金種判定を行う(ステップS604)。
【0120】
この処理では、スキャンして辞書の画像データとマッチングできる形に画像処理した 画像データと辞書比較部の辞書の金種パターンとを比較して、該当金種が見つからない場合は、変数KのBIT1を「1」にする。この場合も当該紙幣が不良券に設定されたことになる。
【0121】
また、該当金種が見つかった場合は、変数KのBIT1は初期値のまま「0」である。この場合も当該紙幣が少なくとも不良券ではないと判定されたことになる。
続いて、システム管理部47は、変数KのBIT1が「1」か否か判別し(ステップS605)、変数KのBIT1が「1」でないなら(S605の判別がNo)、その場合はシステム管理部47は、続いて汚れ判定を行う(ステップS606)。
【0122】
この処理では、スキャンして辞書の画像データとマッチングできる形に画像処理した 画像データと辞書比較部の辞書の金種毎の汚れ閾値とを比較し、閾値より大きい場合は、変数KのBIT2を「1」にする。この場合は当該紙幣が損券に設定されたことになる。
【0123】
また、鑑別結果が閾値より大きくない場合は、変数KのBIT2は初期値のまま「0」である。この場合は当該紙幣が少なくとも損券ではないと判定されたことになる。
上記に続いてシステム管理部47は、変数KのBIT2が1か否かを判別する(ステップS607)。そして、変数KのBIT2が「1」でないなら(S607の判別がNo)、その場合はシステム管理部47は、詳しくは後述する、折れ/シワ判定を行う(ステップS608)。
【0124】
そして、システム管理部47は、上記の折れ/シワ判定を終了した時点で、上記の鑑別データを変数Kに再格納して(ステップS609)、紙幣鑑別処理を終了して図5の処理に戻り、ステップS503の処理に進む。
【0125】
尚、上記ステップS603の判別がYesなら、当該紙幣は不良券であり、不良券の場合は、金種判定、汚れ判定、及び折れ/シワ判定をするまでもなく無条件でリジェクト部B32に収納すべき紙幣となるので、この場合はただちに紙幣鑑別処理を終了して図5の処理に戻る。
【0126】
図7は、上記紙幣鑑別処理における折れ/シワ判定処理の詳細を示すフローチャートである。この処理では、紙幣に折れがあるか無いかを優先して判定し、次にシワがあるか無いかを判定する。これは折れのある紙幣の方がシワのある紙幣よりも変形量が大きい傾向にあるからである。
【0127】
尚、ここでは、シワは紙幣をクシャクシャに丸めたような状態から顧客がその紙幣を引き伸ばして入出金部23に挿入した場合の紙幣の状態を指している。折れとシワの違いについては、図13(a),(b) 及び同図(c),(d) に示した通りである。
【0128】
また、紙幣の折れとシワについては、特には図示しないが、反射型センサ又は透過型センサを使用して搬送中の紙幣に光を当て、それにより取得した画像データにより判断するようにしている。
【0129】
また、この処理では、図4の鑑別部閾値72で説明したように、図13(a) に示した2つ折れ紙幣1の状態を折れパターン1閾値で判定し、図13(b) に示した4つ折れ紙幣5の状態を折れパターン2閾値で判定する。
【0130】
更に、この処理では、図4の鑑別部閾値72で説明したように、図13(c) に示した横シワ紙幣9aの状態をシワパターン1閾値で判定し、図13(d) に示した縦シワ紙幣9bの状態をシワパターン2閾値で判定する。
【0131】
図7において、システム管理部47は、先ず、画像データの折れの状態が、折れパターン1閾値より大きいか否か判別する(ステップS701)。そして、折れパターン1閾値より大きくないときは(S701の判別がNo)、続いて、システム管理部47は、画像データの折れの状態が折れパターン2閾値より大きいか否か判別する(ステップS702)。
【0132】
ここで、折れの状態が折れパターン2閾値より大きくないときは(S702の判別がNo)、続いて、システム管理部47は、画像データのシワの状態がシワパターン1閾値より大きいか否か判別する(ステップS703)。
【0133】
そして、シワの状態がシワパターン1閾値より大きくないときは(S703の判別がNo)、続いて、システム管理部47は、画像データのシワの状態がシワパターン2閾値より大きいか否か判別する(ステップS704)。
【0134】
そして、シワの状態がシワパターン2閾値より大きくないときは(S704の判別がNo)、上記4つの判別でいずれもNoであるということは、たとえ折れやシワがあったとしても正常券として流通に支障の無い紙幣であることを示している。
【0135】
したがって、この場合は、システム管理部47は、変数KのBIT0に、正常券であることを示す「1」をセットして(ステップS705)、この折れ/シワ判定の処理を終了し、図6の紙幣鑑別処理に戻って、ステップS609の処理に進む。
【0136】
一方、上記ステップS704の判別で、シワの状態がシワパターン2閾値より大きいとき(S704の判別がYes)、又は上記ステップS703の判別で、シワの状態がシワパターン1閾値より大きいときは(S703の判別がYes)、いずれの場合も、システム管理部47は、変数KのBIT4に、当該紙幣がシワ券であることを示す「1」をセットして(ステップS706)、この折れ/シワ判定の処理を終了し、図6の紙幣鑑別処理に戻って、ステップS609の処理に進む。
【0137】
また、上記ステップS702の判別で、折れの状態が折れパターン2閾値より大きいとき(S702の判別がYes)、又は上記ステップS701の判別で、折れの状態が折れパターン1閾値より大きいときは(S701の判別がYes)、いずれの場合も、システム管理部47は、変数KのBIT3に、当該紙幣が折れ券であることを示す「1」をセットして(ステップS707)、この折れ/シワ判定の処理を終了し、図6の紙幣鑑別処理に戻って、ステップS609の処理に進む。
【0138】
図8は、メインフローチャートの収納安定化制御の処理の詳細を示すフローチャートである。この処理は、折れ/シワ紙幣(折れ紙幣又はシワ紙幣)を2枚連続でカセットに収納するとジャムを誘発するため、各カセット毎に折れ/シワ紙幣の収納状況を管理し、折れ/シワ紙幣の連続収納を抑止するために行われる。
【0139】
すなわち、搬送先カセットが既に「折れ/シワ状態」(折れ/シワ紙幣を収納した直後の状態)の場合には、その紙幣の直後に連続して搬送される紙幣が折れ/シワ紙幣である場合は該当紙幣をリジェクト部A31に搬送する。
【0140】
図8において、先ず、システム管理部47は、変数KのBIT3が「0」かつBIT4が「0」であるか否かを判別する(ステップS801)。そして、変数KのBIT3が「0」かつBIT4が「0」であれば(S801の判別がYes)、当該紙幣は折れ/シワ無しであるので、システム管理部47は、変数S[C]を「0」クリアして当該カセットの折れ/シワ状態を解除して(ステップS805)、この収納安定化制御の処理を終了し、図5のメインフローチャートの処理に戻って、ステップS505の判別処理に進む。
【0141】
一方、ステップS801の判別処理において、変数KのBIT3が「1」又はBIT4が「1」であるときは(S801の判別がNo)、当該紙幣は折れ紙幣又はシワ紙幣である。
【0142】
この場合は、システム管理部47は、更に、変数S[C]が「1」か否か判別する(ステップS802)。そして、変数S[C]が「1」であれば(S802の判別がYes)、当該紙幣は先行する折れ紙幣又はシワ紙幣に連続して搬送されてきた折れ紙幣又はシワ紙幣である。
【0143】
したがって、この場合は、システム管理部47は、折れ紙幣又はシワ紙幣が連続収納されてジャムが発生することを避けるため、変数KのBIT2を「1」にして当該紙幣をリジェクト部A31に搬送する損券扱いの対象紙幣に設定し、他のBITは全て「0」にして(ステップS804)、この収納安定化制御の処理を終了し、図5のメインフローチャートの処理に戻って、ステップS505の判別処理に進む。
【0144】
他方、ステップS802の判別で、変数S[C]が「1」でないときは(S8の判別がNo)、ステップS801で判別された折れ紙幣又はシワ紙幣には、先行する折れ紙幣又はシワ紙幣が無い、すなわち収納先のカセットは折れ/シワ状態ではないので、折れ又はシワ状態の当該紙幣を収納可能である。
【0145】
この場合は、システム管理部47は、連続する後続の折れ紙幣又はシワ紙幣の収納を防止するために変数S[C]に1をセットして(ステップS803)、この収納安定化制御の処理を終了し、図5のメインフローチャートの処理に戻って、ステップS505の判別処理に進む。
【0146】
図9は、メインフローチャートの追突ジャム防止制御の処理の詳細を示すフローチャートである。尚、この処理では、紙葉類支持台57の下降量を折れ紙幣用とシワ紙幣用の2種類を用意する。
【0147】
その理由は、折れ癖の強い紙幣とシワの多い紙幣を比較すると、折れ癖の強い紙幣の方がシワの多い紙幣よりも変形量が多い傾向にあるからである。そのため、折れ紙幣用の紙葉類支持台57の下降量を、シワ紙幣用の下降量よりも下降量を多くとるようにしている。
【0148】
図9において、先ず、システム管理部47は、変数KのBIT3が「1」か否か判別する(ステップS901)。変数KのBIT3が「1」であれば(S901の判別がYes)、当該紙幣は折れ紙幣である。
【0149】
この場合は、システム管理部47は、ステッピングモータを「折れ用step」分だけ回転させて、紙葉類支持台57を、予め設定されている折れ紙幣用の下降量の分だけ下降させて(ステップS904)、この追突ジャム防止制御の処理を終了し、図5のメインフローチャートの処理に戻って、ステップS508の処理に進む。
【0150】
上記ステップS901の判別で、変数KのBIT3が「0」のときは(S901の判別がNo)、当該紙幣は折れ紙幣ではないので、続いてシステム管理部47は、変数KのBIT4が「1」か否か判別する(ステップS902)。
【0151】
そして、変数KのBIT4が「1」なら(S902の判別がYes)、当該紙幣はシワ紙幣である。この場合は、システム管理部47は、ステッピングモータを「シワ用step」分だけ回転させて、紙葉類支持台57を、予め設定されているシワ紙幣用の下降量の分だけ下降させて(ステップS903)、この追突ジャム防止制御の処理を終了し、図5のメインフローチャートの処理に戻って、ステップS508の処理に進む。
【0152】
このように、本発明の紙葉類処理装置によれば、折れ/シワ紙幣であっても1枚のみはカセットに収納し、折れ/シワ紙幣が連続した場合はリジェクト部に収納して、追突ジャムの発生を防止すると共に、受入れ紙幣の収容を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、折り癖やシワのある紙葉類が受入れ口に投入されてもジャムを発生させることなく投入された紙葉類を収容する紙葉類処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0154】
1 紙幣
2 肖像画
3 折れ
5 紙幣
6 谷折れ
7、8 山折れ
9a、9b 紙幣
a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k 収納搬送路
m テスト搬送路
n 保留搬送路
p 返却搬送路
q 保留取出搬送路
10 収納部
11 繰入れ繰出し機構部
12 収容容器
13 紙葉類支持台
14 紙幣束
15(15a、15b) 上端センサ(光透過センサ)
16 繰入れ繰出し口
17 後続紙幣
20 紙葉類処理装置
21 入力操作表示部
22 制御部
23 入出金部
24 シャッタ
25 返却保留部
26 繰入れ繰出し機構部
27 テスト券セット部
28 鑑別部
29 取忘れ回収部
31 リジェクト部A
32 リジェクト部B
33、35、37、41 繰入れ繰出し機構部
34 カセットA
36 カセットB
38 カセットC
39 一時保留部
41 繰入れ繰出し機構部
44 配線
45 BRU(Bill Recycle Unit)
46 通信制御部
47 システム管理部
48 搬送制御部
49 メカ制御部
50 鑑別データ
51 通常データ領域
52 特別データ領域
52−0、52−1〜52−9 4ビットのビット列のフラグ配置(ビット列情報)
53 0番目のビット
54 1番目のビット
55 2番目のビット
56 3番目のビット
57 紙葉類支持台
58 折れ/シワ判定用のビット列情報(4ビットのビット列のフラグ配置)
60 変数K
61 ビット部
62 鑑別データ
63 三大分類
64 紙幣世代
65 方向
66 鑑別コード
70 変数C
71 変数S[C]
72 鑑別部閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部により搬送され鑑別部により鑑別される紙葉類を、前記鑑別部の鑑別に従って所定の紙葉類収納部へ収納するよう搬送する紙葉類処理装置において、
前記鑑別部において取得された前記紙葉類の画像から該紙葉類の折れ又は曲がりを検出する折れ検出部と、
前記紙葉類の前記画像から前記紙葉類のシワを検出するシワ検出部と、
前記紙葉類の折れ又は曲がりによる変形量、又は前記シワによる変形量、に応じて前記紙葉類収納部の収容領域を大きくするよう前記紙葉類収納部の紙葉類支持台を降下させる支持台昇降部と、
を有することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記折れ検出部又は前記シワ検出部は、前記鑑別部により取得された前記紙葉類の前記画像に現れているスジの濃淡から前記紙葉類の折れ又は曲がり、又はシワ、の有無と前記変形量を決定する、ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記折れ又は曲がりによる変形量及び/又は前記シワによる変形量が所定の閾値以下の前記紙葉類の後に続いて、前記搬送部により前後して連続して搬送される前記紙葉類がいずれも前記折れ又は曲がりによる変形量及び/又は前記シワによる変形量が所定の閾値を超えているとき、先行の前記紙葉類を前記紙葉類収納部に収納するよう搬送し、後続の前記紙葉類をリジェクト部に収納するよう搬送すると共に、前記支持台昇降部は前記紙葉類収納部の収容領域を大きくするよう前記紙葉類収納部の紙葉類支持台を降下させる、ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記折れ検出部により検出された前記折れ又は曲がりによる前記紙葉類の前記変形量及び前記シワ検出部により検出された前記シワによる前記紙葉類の前記変形量を示すデータは、前記鑑別部により前記搬送部に対し発行される鑑別データに付加される、ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−78981(P2012−78981A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222019(P2010−222019)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】