説明

紙葉類取扱い装置

【構成】紙葉類取扱い装置1において、紙葉類の厚さ検知センサ13と通過検知センサ12の情報を基にして、搬送中の紙葉類の位置,種類,枚数を把握し、ジャムの発生時に、搬送路上に残留した紙葉類の位置,枚数を状態表示回路28により表示する。また、ジャムの発生時に、搬送路から除去したこれらの紙葉類の枚数,種類をジャム時情報記録回路29により記録する。
【効果】ジャムが発生した時の搬送路に残留した紙葉類を、効率的に捜し除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、現金自動取引装置に係り、特に、搬送中に紙幣のジャムが発生した場合に、搬送路に残ったこれらの紙幣を取り残しが発生しないように除去するのに好適な装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の技術では、例えば、特開平2−230493 号公報にあるように、搬送路を数個の独立した駆動手段を用いて駆動し、ジャムが発生した時はジャム発生部所よりも後流側の搬送路にある紙幣はそのまま送り出し、ジャム発生部所よりも前流側の搬送路にある紙幣は、逆送して回収部に回収することにより、ジャムが発生した場合の復旧作業を簡素化している。しかし、この方法では、どこで発生するかわからないジャム時に紙幣を逆送して回収しなければならず、紙幣を安定して搬送するという意味では必ずしもやさしい技術とは言えない。
【0003】また、特開平1−104544 号公報にあるように、搬送路で発生した紙葉のジャムは、搬送路を用いて人手によって取り除いていた。この方法では、搬送路上に取り残しの紙葉があることに気づかずに、取り除き作業を終える場合が発生する。その結果、次の取引きで、再びジャムを生じさせる原因となるなどの障害が発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ジャムが発生した時に、搬送路に紙幣を残すことなく取り除くことを目的とする。そのために、ジャムの発生時に、搬送路上に残っている紙幣の種類及び枚数を表示することにより、係員が時間をかけて捜すことなくジャムの発生時の復旧を出来る装置を提供することにある。また、ジャムの発生時に装置内に内蔵されている紙幣の残高を正確に把握することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】紙葉類を一枚ずつに分離する分離手段と、分離された紙葉類の搬送手段と、搬送されて来る紙葉類の種類の鑑別手段と、搬送されて来た紙葉類の集積手段と、分離されて搬送されて来る紙葉類の状態検出手段と、前記紙葉類の厚さ検知手段と、搬送されて来る紙葉類の枚数識別手段と、搬送されて来る紙葉類への位置監視手段と、ジャムを発生した時の紙葉類の位置及び枚数を表示する状態表示手段とを備えている。
【0006】また、分離され搬送されて来る紙葉類の種類を記憶する種類記憶手段と、ジャムの発生時に搬送路上に残留している紙葉類の種類及び枚数を記録するジャム時情報記録手段を備えている。
【0007】
【作用】分離手段は、集積した紙葉類を一枚ずつに分離する。搬送手段は、一枚ずつに分離された紙葉類を搬送する。鑑別手段は、搬送されて来る紙葉類に表記されている情報を読み取り、その種類を判定する。集積手段は、搬送されて来る紙葉類を集積する。状態検出手段は、搬送されて来る紙葉類が斜行したり重送したりしているその状態を検出する。厚さ検知手段は、搬送されて来る紙葉類の厚さを検知する。枚数識別手段は、状態検出手段と厚さ検知手段からの情報をもとにして搬送されて来る紙葉類の枚数を識別する。即ち、例えば、状態検出手段からの情報により二枚が一部分重なって搬送されて来ていると判断された状態の紙葉類の厚さを、厚さ検知手段から求めて、これらの紙葉類が完全に二枚重なった紙葉類と、これらの紙葉類に対してずれた位置に重なっている他の一枚の紙葉類の計三枚であることを、識別するものである。位置監視手段は、搬送路上を搬送している紙葉類の位置を紙葉類の搬送速度と紙葉類の分離タイミング等から演算して求める。状態表示手段は、ジャム時に搬送路上に残留した紙葉類の位置と枚数をプリントアウトまたはCRT上に表示する。
【0008】種類記憶手段は、搬送されて来る紙葉類の種類がどこの収納場所から分離されたものかを追跡して記憶している。ジャム時情報記録手段は、ジャムの発生時に搬送路上に残っている紙葉類の枚数と種類を、記録して残す。
【0009】
【実施例】本発明の一実施例を、図1ないし図5を用いて説明する。
【0010】図1は、紙幣の入出金取引を行う現金自動取引装置に内蔵された紙幣取扱い装置1のブロック図を示す。図中の矢印は紙幣の送られる方向を示している。紙幣の入出金口2は、顧客が紙幣の入金,出金を行う場所である。この入出金口2へ入金された紙幣は、分離部3により一枚ずつに分離されて、鑑別部4へ送られる。この鑑別部4で紙幣の真偽,金種等が判別される。リジェクトボックス5は、入金された紙幣の汚れがひどいためとかの理由で、再び出金用に活用するには不適と鑑別部4で判断したものを、貯えることろである。金種ボックス6は、金種毎に分けた紙幣を収納する。集積部7は、一枚ずつ送られて来た紙幣を、金種ボックス6へ集積する。分離部8は、金種ボックス6に収納された紙幣を再び一枚ずつに分離するためのものであり、分離部3と同様の機構を備えている。集積部9は、一枚ずつ送られて来た紙幣を集積し、入出金口2へ放出する。
【0011】これらの紙幣処理部への紙幣の搬送は、対向して走行するゴム製の搬送ベルトで構成された搬送路10により行われている。ゲート11は、搬送路10の岐路に設けられており、紙幣の搬送方向を切り換える。紙幣の搬送されてくるタイミングを検知する通過検知センサ12は、搬送路のつなぎ目の近傍に配置している。これらの通過検知センサ12は発光素子と受光素子からなり、これらの素子は紙幣の通過する搬送路の両側に設置している。搬送路10は、図2に示すように、いくつかのブロックに分けて駆動しており、それぞれのブロックにおける搬送路は、それぞれ独立した駆動源によって駆動されている。即ち、例えば、ブロック18,19に分けられた搬送路14a,14bは、歯車22,23,24,25を介してそれぞれのパルスモータ20,21によって駆動される。
【0012】また、図3にも示すように、本装置1には、分離部8の後流側に状態検出手段である紙幣の通過検知センサ12と、厚さ検知手段である厚さ検知センサ13を配置している。図示していないが他の金種ボックス6にも同様の各種センサを配置している。前記通過検知センサ12は、一次元配列の光学式ラインセンサであり、紙幣の搬送方向に直角方向に一列に配置している。ライセンサは、発光部と受光部を備えた市販のセンサであり、搬送して来る紙幣の片面側から発光した光が紙幣から反射されてくるのを受光センサで受ける。厚さ検知センサ13は、公知の厚さ検知センサであり、搬送中の紙幣を両側からローラで押圧し、押圧方向のロ−ラの変位量を計測し、その値から紙幣の搬送方向への厚さ分布を求める。
【0013】種類記憶回路17は、搬送中の紙幣の種類を記憶する。このため、種類記憶回路17では、通過検知センサ12からの出力を捕らえて、紙幣がどの金種ボックスから分離されたかを記憶する。この情報を基に、搬送されている紙幣の種類は、金種ボックスの紙幣であることがわかる。位置監視回路16は、搬送中の紙幣の位置を監視するものであり、通過検知センサ12からの出力から紙幣の通過タイミングを検出し、その後の搬送距離を搬送路の搬送速度から演算して求めるとともに、ゲート11の位置の選択により決定された搬送ルート上を紙幣が搬送距離分搬送したとして、紙幣のその後の位置を搬送ルート上に求める。枚数識別回路17は、搬送されている紙幣の枚数を識別するものであり、重なり状態分析回路26と枚数推定回路27から構成されている。重なり状態分析回路29は、前述通過検知センサ12の出力から、搬送されて来た紙幣の重なり状態を分析するものであり、図4に示すように、通過検知センサ12からの情報を基にして紙幣の搬送姿勢を図式化する。即ち、図の上段に示すように、通過検知センサ12の出力は紙幣が通過した時に表れ、時間の経過とともに紙幣の形態を表すものとして得られる。この領域は紙幣が通過した領域であり、紙幣の搬送状態をそのまま示すものである。紙幣の重なり状態の分析は、搬送方向をよぎる図中のコーナを有する直線A,B,Cに紙幣のコーナを合わせて順番に重ねることにより得られる。次に、枚数推定回路27では、図5に示すように、重なり状態分析回路26により得られる紙幣の重なり状態と、これらの紙幣の厚さを検知する厚さ検知センサ13の出力値から、重なった状態の各々の紙幣の厚さを演算により求める。これにより、各々の紙幣が何枚ずつ重なっているかを推定する。すなわち、直線A,B,Cが通過したときの厚さ検知センサ13の出力は、時間とともに変化し、その出力値Lは紙幣Cの厚さを示し、値mは紙幣Bと紙幣Cの厚さの和、値nは紙幣A,B,Cの厚さの和を示す。従って、これらの値から、紙幣A,B,Cの厚さ、tA ,tB ,tC を演算により求めることが出来る。そして、それらの値が紙幣の厚さの何倍分であるかによってそれぞれの紙幣A,B,Cがそれぞれ何枚ずつ重なったものかを推定する。ここで、tmin は紙幣の厚さのばらつきのうち一番薄いものの値を示す。紙幣にはしわや折れぐせなどのついたものがあり、厚さに約2割のばらつきが生じるが、これらの紙幣が一枚か二枚かはばらつき量を考慮して決めている。
【0014】状態表示回路28は、ジャムが発生した時に搬送路に残留している紙幣の枚数と位置を、CRT上に表示させるためのものである。即ち、枚数推定回路28からの紙幣の枚数情報と、位置監視回路16からの紙幣の位置情報を基に、ジャムの発生時のこれらの情報をCRT上に表示させる。図示していないが、CRT上には、搬送路の概略経路と、その経路上の各々の位置に残留している紙幣を模式的に表示する。
【0015】ジャム時情報記録回路29は、ジャムの発生時に搬送路上に残留していた紙幣の枚数と金額を記録する。これらの情報は、種類記憶回路15と枚数推定回路28から得る。
【0016】以上の構成と動作により、以下の効果が得られる。
【0017】本装置により、紙幣の入出金などの取引きが自動で行えるのはもちろんであるが、ジャムの発生時に、搬送路上に残留した紙幣がどこに存在するのかを、CRTを見ることによって判断することが出来る。これにより、ジャムの発生時に搬送路に残っている紙幣を捜すことなく、効率的に、かつ、残すところなく除去することが出来る。また、ジャムの発生時に、取り除いたこれらの紙幣の枚数と金額を記録出来るので、ジャムの発生時にも紙幣取扱い装置内の金額を正確に把握出来る。
【0018】
【発明の効果】本発明により、ジャムが発生した時に、搬送路に残留した紙幣の枚数と位置を的確に知ることが出来、これらの紙幣の除去作業を効率的に行える。また、これらの搬送路から除去した紙幣の枚数と金額を自動で記録出来るので、装置内の金額が正確に把握出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の紙葉類取扱い装置のブロック図。
【図2】搬送路の駆動機構の斜視図。
【図3】ジャム時の紙幣情報処理方法の説明図。
【図4】重なり状態分析回路の処理動作の説明図。
【図5】枚数推定回路の処理動作の説明図。
【符号の説明】
1…紙幣取扱い装置、2…入出金口、4…鑑別部、8…分離部、12…通過検知センサ、15…種類記憶回路、16…位置監視回路、17…枚数識別回路、27…状態表示回路、29…ジャム時情報記録回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】紙葉類を一枚ずつに分離,搬送,鑑別,集積するための各々の手段を備えた紙葉類取扱い装置において、分離手段により分離された後、搬送手段により搬送されて来た紙葉類の搬送状態を検出するための状態検出手段と、前記搬送されて来た紙葉類の厚さ検知手段と、前記状態検出手段と前記厚さ検知手段による情報を基にして、紙葉類が何枚ずつ搬送されているかを識別する枚数識別手段と、分離後に搬送されている前記紙葉類が搬送路上のどの位置にあるのかを監視するための位置監視手段と、搬送中の紙葉類がジャムを発生した場合に、搬送路に残留している前記紙葉類の枚数及び位置を表示する表示手段を備えたことを特徴とする紙葉類取扱い装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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