説明

紙葉類取扱装置及び現金自動取引装置

【課題】引き出された下部ユニットを金庫筐体に収納する際に、その下部ユニットの収納過程で高さ方向を高精度に位置決めしながら収納することを可能とし、これに基づいて下部ユニットの紙葉類の搬送接続性能を高めた紙葉類取扱装置及び現金自動取引装置を提供する。
【解決手段】下部ユニット1cを金庫筐体106の収納位置へと収納する収納過程で、該下部ユニット1cの水平搬送路ユニット1fをその上方の基準高さプレート202aに押し当てて基準高さが自然に得られるように構成し、該下部ユニット1cが収納位置に至った時点で上下方向の搬送接続部を高精度に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関やコンビニエンスストア等に設置される現金自動取引装置に備えられるような紙葉類取扱装置に関し、さらに詳しくは引き出し可能な下部ユニットの高さ方向の位置決め精度を高めた紙葉類取扱装置及び現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などで使用される現金自動取引装置には、紙幣を入出金取引用に扱う紙幣取扱装置が実装されている。この紙幣取扱装置には、利用者による紙幣の入出金を許容する入出金口と、紙幣を判別する紙幣判別部と、該紙幣判別部を通過した紙幣を搬送する紙幣搬送路と、入金された紙幣を一旦収納する一時保管庫とを集合させた上部ユニットが装置本体の上部に備えられている。さらに、装置本体の下部には、入出金兼用の紙幣を収納または繰り出すリサイクル庫と、リサイクル庫に収納しない入金紙幣を収納する入金庫とを備えた下部ユニットが備えられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここに用いられる下部ユニットのリサイクル庫は、利用者からの出金要求に応えるために金種別の紙幣を大量に収納している。したがって、大量の紙幣を収納しているリサイクル庫や入金庫を備えた下部ユニットはセキュリティ性を確保する必要があるため厚い鉄板等で構成されている。さらに、紙幣取扱装置内での紙幣の保管状態においても該装置内部の金庫内に収納させて安全に管理している。
【0004】
一方、上部ユニットでは利用者が入金した流通紙幣に部分的な破れや皺などで古くなった損傷紙幣であっても、その損傷紙幣を入金取引上、搬送処理及び集積処理する必要があるため搬送路上で紙詰り(ジャム)が発生しやすくなっていた。このため、ジャムが発生した場合は店舗の係員によって速やかにジャムを除去できるように上部ユニットを金庫の外側に配置して装置の稼動率を上げている。
【0005】
また、係員が下部ユニットに装填されているリサイクル庫にアクセスしたり、該下部ユニットで発生したジャムを除去して復旧できるように下部ユニットを金庫から外部に引き出せるように構成している。
【0006】
このように構成された紙幣取扱装置は、上部ユニットと下部ユニットのほかに、これら上下部のユニット間を接続する紙幣の受渡し搬送路が備えられている。さらに、該受渡し搬送路と、その下方の下部ユニットに収納されている入金庫やリサイクル庫との上下間を接続する水平搬送路ユニットが下部ユニットに実装されている。
【0007】
この受渡し搬送路と水平搬送路ユニットの接続部分では、紙幣を確実に受渡しすることに加えて下部ユニットを引き出せるように両ユニットの接続部分を離間可能に、且つ接続部分で精度の良い位置決めができるように凹凸対応させて接続している。
【0008】
また、係員が下部ユニットにアクセスする場合、金庫を開け、下部ユニットを金庫から引き出し、該下部ユニットの上面開口部を閉鎖している上面蓋としての水平搬送路ユニットを開けて、内方の入金庫やリサイクル庫を取り出している。
【0009】
この際、水平搬送路ユニットは入金庫とリサイクル庫との合計4〜5個が装填されており、これらに対応して接続される上面搬送部を備えるために水平長さが500mm以上の水平搬送路を構成している。さらに、この水平搬送路ユニットには搬送部品として十分な強度を確保するために多くの金属製の搬送ローラ軸等を必要としている。さらに、搬送ガイドや搬送ローラを保持するフレームは歪みを考慮して剛性の高い金属材で構成せざるを得ない。この結果、水平搬送路ユニットは、かなりの重量物となり、入金庫、リサイクル庫に係員がアクセスしようとする度にこの水平搬送路ユニットを係員が開閉する必要があり、この水平搬送路ユニットが重量物であるため操作性が悪いという問題を有していた。
【0010】
この種の問題を解消する一解決策として、ガススプリングで水平搬送路ユニットの開操作をサポートすることも可能であるが、ガススプリングが高価であるという問題に加えて、ガス抜けによるスプリング性能の低下、及びガス抜け時に水平搬送路ユニットと下部ユニット間で係員が指を挟んでしまうという安全上において問題を有していた。
【0011】
このほか、水平搬送路ユニットに、ねじりばねや引張りばねを備えて該水平搬送路ユニットの開操作力を補助する付勢機構が考えられるが、重量物である水平搬送路ユニットが開ききるところで該水平搬送路ユニットが下部ユニットに設けたストッパと衝突し、その時の衝撃力によりストッパ部の破損や他部品の不具合等が発生するおそれがあった。このため、水平搬送路ユニットは強固な部品を備える必要があり、この水平搬送路ユニットの構成が大型化し、さらに重くなり高価になってしまう問題があった。
【0012】
さらに、水平搬送路ユニットとその上方の受渡し搬送路とのお互いの搬送ガイド位置、また水平搬送路ユニットとその下方のリサイクル庫や入金庫との接続高さ位置がずれて接続不良が生じた場合、あるいは水平搬送路ユニットの開閉操作不良が生じると上下方向の接続部間が高さ方向にずれて搬送ジャムが発生する。このため、高さ方向の位置合わせには高精度の位置合せを要するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−172946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この種の問題を解決するには、金庫に収納される下部ユニットの高さ位置を予め高精度に調整して位置合わせしておく必要がある。ところが、下部ユニットをスライドさせて金庫から引き出し、また下部ユニットをスライドさせて金庫に収納させるスライド機構において、高さ方向に対しても位置調整可能な機構を加えることは構造が複雑化し、狭い金庫内で下部ユニットの高さ位置を高精度に調整するには制約を受け、さらに調整部分の機構が複雑なうえ高価で紙幣取扱装置の設置作業が難しくなっていた。
【0015】
そこでこの発明は、上述した問題に鑑み、下部ユニットを金庫筐体に収納する際に、下部ユニットの収納過程で高さ方向を高精度に位置決めしながら収納することを可能とし、これに基づいて下部ユニットの搬送接続性能を高めた紙葉類取扱装置及び現金自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、金庫筐体に搭載されて紙葉類を受入処理または紙葉類を放出処理する上部ユニットと、前記金庫筐体の内部に収納され、前記上部ユニットから供給された紙葉類を収納する収納庫への収納処理または前記収納庫に収納された紙葉類を前記上部ユニットへと繰出処理する下部ユニットと、前記上部ユニットと前記下部ユニットを接続して紙葉類を上下方向に受渡し搬送する搬送路を離間可能に接続して構成した受渡し搬送路と、前記下部ユニットを前記金庫筐体からスライドさせて引き出し、または前記下部ユニットを前記金庫筐体の内部へとスライドさせて収納させるスライド機構とを備えた紙葉類取扱装置であって、前記下部ユニットを、前記収納庫を上方より出し入れ自由に収納する収納庫トレイと、前記収納庫トレイの上面開口部を開閉し、該上面開口部を閉鎖したとき前記収納庫と前記受渡し搬送路との間を紙葉類受渡し用に接続する水平搬送路ユニットとを備えて構成し、前記水平搬送路ユニットで前記収納庫トレイの上面開口部を閉鎖したとき、前記収納庫トレイ側に設けられたトレイ係止部に、前記水平搬送路ユニット側に設けられたユニット係止部を上下方向に係止させるとともに、前記ユニット係止部を上向きに付勢させて互いの係止部間における係止接触状態を維持させる係止手段と、前記下部ユニットを前記金庫筐体の内部に収納したとき、前記水平搬送路ユニットが前記受渡し搬送路への接続に適した高さ位置になるように前記金庫筐体が前記水平搬送路ユニットを基準高さ位置に押し下げる位置決め手段とを備えて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、下部ユニットを金庫筐体に収納する際に、下部ユニットの収納過程で高さ方向を高精度に位置決めしながら収納することを可能としたことにより下部ユニットの搬送接続性能を高める紙葉類取扱装置及び現金自動取引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】現金自動取引装置の外観を示す斜視図。
【図2】現金自動取引装置の制御部を示すブロック図。
【図3】紙幣入出金機の制御関係を示すブロック図。
【図4】紙幣入出金機の内部構造を示す概略側面図。
【図5】水平搬送路ユニットの上下の搬送接続構造を示す要部正面図。
【図6】紙幣入出金機における下部ユニットの引出状態を示す側面図。
【図7】水平搬送路ユニットのロック構造を示した一部破断側面図。
【図8】下部ユニットを引き出した際の水平搬送路ユニットのロック構造を示す要部側面図。
【図9】下部ユニットを収納した際の水平搬送路ユニットのロック構造を示す要部側面図。
【図10】下部ユニットを収納した際の水平搬送路ユニットとロックピンとの当接状態を示す要部側面図。
【図11】下部ユニットの開放状態を示す斜視図。
【図12】基準高さプレートと水平搬送路ユニットとの対応状態を示す要部縦断側面図。
【図13】押えローラの要部拡大斜視図。
【図14】水平搬送路ユニットの閉鎖時の付勢機構を示す正面図。
【図15】水平搬送路ユニットの開口時の付勢機構を示す正面図。
【図16】衝撃吸収機構のスライド部を示す要部拡大正面図。
【図17】水平搬送路ユニットが開ききった状態での衝撃吸収機構の衝撃吸収状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は紙葉類取扱装置として扱われる紙幣入出金機1を搭載した現金自動取引装置101を示す外観斜視図である。この現金自動取引装置101は縦長の直方体状を有する装置筐体101bにより構成されている。
【0020】
この装置筐体101bの上部左側には、取引内容を表示及び入力させる顧客操作部105が備えられ、上部右側には、該装置筐体101bの上部正面板101aに設けられたカードスロット102aと連通して利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構102が備えられている。
【0021】
さらに、装置筐体101bの上部正面板101aには、入出金口(紙幣スロット)21が設けられている。さらに、現金自動取引装置101の内部には、この発明を適用した紙幣を処理する紙幣入出金機1が備えられている。
【0022】
この紙幣入出金機1は、数十mmの厚い鉄板で囲まれた金庫筐体106で構成されている。この金庫筐体106は装置筐体101bよりもさらに堅固な構造にしてセキュリティを高めている。ここで、現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を取引媒体とし、紙幣の預入、支払、振込等の処理を行うことができる。
【0023】
図2は現金自動取引装置101の制御内容を示す制御ブロック図である。この現金自動取引装置101はカード・明細票処理機構102、顧客操作部105及び紙幣入出金機1が備えられており、バス107aを介して本体制御部107と接続され、この本体制御部107の制御に基づいて必要な処理動作が実行される。
【0024】
本体制御部107は、インターフェース部107b、係員操作部107c、外部記憶装置107dがバス107aを介して接続されており、必要なデータのやりとりを行う。なお、図2に示す101eは、前記した各機構、構成部分に電力を供給する電源部である。
【0025】
図3は紙幣入出金機1の制御内容を示す制御ブロック図である。
この紙幣入出金機1の制御部35は、現金自動取引装置101の本体制御部107とバス107aを介して通信接続され、本体制御部107からの指令及び紙幣入出金機1の状態を検出した結果に応じて紙幣入出金機1の制御を実行する。また、紙幣入出金機1の取引状態や処理状態を適宜、本体制御部107に送信する。
【0026】
紙幣入出金機1は、入出金口機構20、紙幣識別部30、一時保管庫40、紙幣搬送路501、入金庫60、取忘回収庫61、リサイクル庫80等を備え、これらの図示しない駆動モータや電磁ソレノイド及びセンサと電気的に接続されている。そして、取引に応じてセンサで処理状態を監視しながらアクチュエータを駆動制御する。
【0027】
図4は紙幣入出金機1の内部構造を示す構成図である。
この紙幣入出金機1は、利用者が紙幣を投入または取り出しを行わせるための入出金口機構20と、紙幣の識別を行う紙幣識別部30と、入金した紙幣を取引成立するまでの間、一旦収納して保管する一時保管庫40と、入金時取引が成立した紙幣を収納する入金庫60と、入金時及び出金時に利用者が取り忘れた紙幣を回収する取忘回収庫61と、入出金兼用のリサイクル庫80と、紙幣識別部30を通り、入出金口機構20、一時保管庫40、取忘回収庫61、リサイクル庫80に対し、紙幣を搬送する紙幣搬送路501と、その制御部35(図3)とから構成されている。
【0028】
また、紙幣搬送路501は、紙幣識別部30を双方向に通過し、入出金口機構20、一時保管庫40、取忘回収庫61、入金庫60、リサイクル庫80を接続している。なお、図4において、紙幣搬送路501を示している各矢印のうち、片方向矢印は、紙幣を矢印方向にのみ搬送する一方向紙幣搬送路であることを示している。また、両方向の矢印は、紙幣を双方向のいずれかに切り替えて搬送する双方向搬送路であることを示している。
【0029】
これらの紙幣搬送路501は、図示しない駆動モータで駆動し、取引処理毎に応じて駆動モータの回転方向を切り替える。さらに、紙幣搬送路501の分岐位置には、切り替えゲートをそれぞれ配置している。これらの分岐位置では振分方向を、符号aと符号bを付けて502aの紙幣搬送方向と、502bの紙幣搬送方向のように2方向を区分して表わしている。他の切り替えゲートについても、同様に503a,503bと、504a,504bと、505a,505bとのように表記して分岐した2方向の紙幣搬送方向を表わしている。
【0030】
紙幣入出金機1の内部に備えられている上部の搬送機構として扱われる上部ユニット1aは、入出金口機構20と、紙幣識別部30と、一時保管庫40と、取忘回収庫61と、紙幣搬送路501とを備えて構成される。
【0031】
また、紙幣入出金機1の内部に備えられている下部の搬送機構として扱われる下部ユニット1cは金庫筐体106の内部に実装されている。この下部ユニット1cは、入金庫60と、リサイクル庫80と、これらの上面に設置され、後述する金庫搬送機構として扱われる受渡し搬送路1bとの間を接続する水平搬送路1fと、金庫筐体106より下部ユニット1cを外部に引き出し、収納可能な引出機構1dとを備えて構成される。
【0032】
上述の受渡し搬送路1bは、上部ユニット1aと下部ユニット1cとの間を接続する搬送路であり、金庫筐体106の上面一側に上下方向に貫通して開けられた紙幣挿通孔304に配置されている。
【0033】
次に、利用者が入出金取引した際の紙幣入出金機1での入出金動作について説明する。
入金取引時の紙幣入出金機1は、入出金口21に投入された紙幣を、入出金口機構20により一枚ずつ分離し、紙幣識別部30に導いて紙幣の金種、真偽を判定する。識別できた場合は、搬送路上の切り替えゲート502b,503bを切り替え、紙幣を一時保管庫40まで搬送して一旦収納する。紙幣識別部30で識別できなかった場合や、紙幣の傾き異常や紙幣間の間隔異常となった場合については、当該紙幣を入金リジェクト紙幣とし、一時保管庫40には取り込まず、切り替えゲート502aを切り替えて入出金口21に戻し、利用者に返却する。
【0034】
取引が確定すると、一時保管庫40に保管された紙幣を、保管搬送時とは逆の方向に送り出し、紙幣識別部30を通過させ、搬送路上の切り替えゲート504a,505aを切り替え、入金庫60、リサイクル庫80へと搬送して紙幣を収納し、入金動作を終了する。
【0035】
出金取引時の紙幣入出金機1は、リサイクル庫80の金種毎の金庫から紙幣を繰り出し、紙幣識別部30で繰り出された紙幣の金種を識別し、出金される紙幣の確認をとって入出金口21に導き、利用者に紙幣を支払う。
【0036】
また、利用者が紙幣を取り忘れた際の自動回収動作について説明する。
紙幣入出金機1では、入金取引時及び出金取引時に、一定時間経過しても入出金口21より紙幣が取り出されない場合、本体制御部107は取忘れ紙幣の発生と判定し、その入出金口21に残された紙幣を一括して取忘回収庫61に自動的に回収する。
【0037】
次に、下部ユニット1cの概略構造を図5及び図6を参照して説明する。
図5は下部ユニット1cと受渡し搬送路1bを金庫筐体106に実装したときの接続部分を拡大して示した正面図であり、図6は下部ユニット1cを金庫筐体106より引出、収納可能にスライド支持した状態を示す概略側面図である。
【0038】
上部ユニット1aと受渡し搬送路1bと下部ユニット1cには、その上下方向の接続部分で互いに紙幣を受け渡す必要がある。このため、紙幣を上下方向に受け渡す接続部分では紙幣の受渡しに適した搬送ガイド板や搬送ローラ等の搬送部材を配置している。
【0039】
上述の搬送部材の配置に際して、例えば上部ユニット1aの接続部分には紙幣受渡し用の上部ユニット搬送ガイド板404を、また受渡し搬送路1bの接続部分には受渡し搬送路上搬送ガイド板301と受渡し搬送路下搬送ガイド板302を、さらに下部ユニット1cの接続部分には下部ユニット搬送ガイド板212をそれぞれ搬送ローラ(図面省略)とともに上下方向に配置している。また、下部ユニット1cの水平搬送路ユニット1fと収納庫トレイ1tとの間は水平搬送路ユニット下ガイド板602と収納庫ガイド板601を配置して接続している。
【0040】
このため、紙幣入出金機1の上部では上部ユニット搬送ガイド板404と受渡し搬送路上搬送ガイド板301とが上下に対応し、下部では受渡し搬送路下搬送ガイド板302と下部ユニット搬送ガイド板212とが上下に対応して紙幣を搬送ガイドする役目を持たせている。
【0041】
詳しくは、これらの搬送ガイド板404,301,302,212の互いに対向する上下方向の接合部分を櫛歯状に凹凸対応させて紙幣を上部のユニット1aと下部ユニット1cとの間で円滑に受渡しする構成を有している。
【0042】
さらに、金庫筐体106に固定された受渡し搬送路1bに対し、上部ユニット1aと下部ユニット1cを金庫筐体106の前後方向に引出、収納可能にスライドさせるために各ユニット1a,1cとの搬送接続部分で離間可能に構成している。このうち、上部ユニット1aは略直方体に構成され、図6に示すように、金庫筐体106の上面両側に固定されているL形状の上部ユニットトレイ201の内側面に、図示しないレールを介して該上部ユニット1aが走行自由に支持されている。これにより、上部ユニット1aはレールに沿って金庫筐体106の前後方向に水平にスライド許容されている。
【0043】
そして、金庫筐体106の上面壁を上下方向に貫通させて開口した紙幣搬送孔304内に受渡し搬送路1bを介在させている。この受渡し搬送路1bは上部ユニットトレイ201に固定されており、この受渡し搬送路1bに対して上部ユニット1aと下部ユニット1cが適切な高さ位置に位置決めされて接続される。
【0044】
下部ユニット1cは、該下部ユニット1cの上部を構成する水平搬送路ユニット1fと下部を構成する収納庫トレイ1tとで略直方体に構成される。
【0045】
水平搬送路ユニット1fは収納庫トレイ1tの上面開口部1g(図11)を開閉する蓋体として設けられ、該上面開口部1gを閉鎖したとき、その下方の収納庫トレイ1t内の入金庫60とリサイクル庫80との各対応する収納庫(カセット)60,80との間をそれぞれ接続して紙幣を出し入れさせる役目と、上方の受渡し搬送路1bとの間を接続して紙幣を受け渡す役目を有している。
【0046】
一方、下部の収納庫トレイ1tは上面を開口した箱形状を有し、この箱形状の内方に各収納庫60,80を仕切プレート726(図11)で一定間隔に仕切って収納している。そして、各収納庫60,80を上面開口部1gより出し入れするように構成している。
【0047】
さらに、収納庫トレイ1tの両外側面にはスライド機構としての下部ユニットレール204を付設している。この下部ユニットレール204を介して下部ユニット1cは金庫筐体106の前後方向にスライド許容されている。前記下部ユニットレール204は、金庫筐体106の内部両側面の下部に設置されているL形状の下部レールブラケット205にスライド可能に支持されている。また、下部ユニットレール204は入金庫60、リサイクル庫80の出し入れ動作の操作性の観点から金庫下面に配置されている。
【0048】
このようにして下部ユニット1cは水平搬送路ユニット1fと収納庫トレイ1tとで構成されている。さらに、下部ユニット1cの取扱いに際しては、水平搬送路ユニット1fでのジャム除去処理、入金庫60やリサイクル庫80でのジャム除去処理、入金庫60からの紙幣の取り出し、リサイクル庫80への紙幣の装填もしくは取り出しのために、金庫筐体106の前後方向にスライド許容させて、紙幣入金機1の前方または後方に引出可能となっている。
【0049】
また、水平搬送路ユニット1fは、ジャム除去処理などで係員が水平搬送路ユニット1fあるいは入金庫60やリサイクル庫80にアクセスする必要があるために、図5及び図11に示すように、収納庫トレイ1tの一端部に備えられた開閉支点軸701を回動支点に水平搬送路ユニット1fを開閉自由に操作できるようにしている。
【0050】
次に、図7〜図11を用いて水平搬送路ユニット1fを閉じた際のロック構造について説明する。
図7は水平搬送路ユニット1fを閉じた際のロック状態を示す要部側面図、図8は下部ユニット1cが金庫筐体106から引き出された時の水平搬送路ユニット1fのロック状態を示す要部側面図、図9は下部ユニット1cが金庫筐体106に収納された時の水平搬送路ユニット1fのロック状態を示す要部側面図、図10は水平搬送路ユニット1fとロックピン703との当接状態を示す要部側面図、図11は水平搬送路ユニット1fの開操作状態を示す斜視図である。
【0051】
前記水平搬送路ユニット1fは、開閉支点軸701を回動支点として収納庫トレイ1tの上部に回動自由に軸支されている。そして、この水平搬送路ユニット1fが収納庫トレイ1tの上面開口部1gを水平に閉じた水平位置と、これより90度回動して開口した垂直位置との間で回動する片開き式に構成している。この片開き式の水平搬送路ユニット1fを、下部の収納庫トレイ1t側よりその上方の開方向に向けて図14〜図17で後述するリンク片706及び開操作補助用のユニット付勢ばねとしての開閉ばね709により付勢している。
【0052】
これにより、水平搬送路ユニット1fは開操作補助用としての上向き付勢力が常に付与されることになる。したがって、係員が水平搬送路ユニット1fを上方に開ける際に、該開閉ばね709の上向きの付勢力を補助的に受けるため、係員は少ない力で円滑に水平搬送路ユニット1fを開操作できるようにしている。
【0053】
通常は、収納庫トレイ1tの上面開口部1gを開閉ばね709の付勢力に抗して水平搬送路ユニット1fが閉鎖し、その閉鎖状態を維持するように後述するロック機構700が備えられている。
【0054】
上述のロック機構700は、上述の開閉ばね709と、ユニット係止部としてのロックレバー702と、トレイ係止部としてのロックピン703とを備えて構成される。
ロックレバー702は水平搬送路ユニット1fの開閉側端面の長手方向全長に沿って長く、且つロック位置とロック解除位置との間で僅かにスライド可能に配設され、その両端部にL形状のフック部720を垂設している。
【0055】
図7ではロックレバー702の両端部に垂設した各フック部720をそれぞれ同じ左向きに屈曲して形成している。これにより、ロックレバー702を水平方向にスライドした時に左右両側で各フック部720がロックピン703と係脱対応して同時にロック、ロック解除するようにしている。また、図7ではロックレバー702の右側端部に該ロックレバー702がスライドした時のロックピン703との当接を回避する逆凹形逃がし部721を切欠き形成している。さらに、ロックレバー702は水平搬送路ユニット1fの内部に備えられている図示しないスライド支持機構によりスライド可能に支持されている。
【0056】
上述のロックピン703は円柱状のピンであり、収納庫トレイ1tの上部両側に、前記ロックレバー702のフック部720と対応する高さ位置及び横位置に位置決めして突設させている。これにより、ロックレバー702が水平方向の一方にスライドしたとき、該ロックレバー702の各L形状のフック部720がロックピン703を抱え込むように対応してロックし、また他方にスライドすることでロック解除される。
【0057】
このとき、ロックレバー702と一体の水平搬送路ユニット1fは開閉ばね709により上向きに付勢されているため、この付勢力を受けてロックレバー702には上向きに付勢力がかかる。これにより、ロックレバー702は図8に示すようにフック部720の上面がロックピン703の下面を上向きに係止してロックレバー702とロックピン703とは上下方向でロックする。
【0058】
通常、下部ユニット1cが金庫筐体106より引き出されて外力を受けていない状態では、水平搬送路ユニット1fは開閉ばね709で開く方向(図7の上向き矢印906方向)に引っ張られているので、ロックレバー702のフック部がロックピン703の下面に当たって係止されている。
【0059】
この際、ロックしているときのロックピン703の下面とフック部720の上面との上下間の係止隙間S1は0となる。一方、このロックピン703の上面とその上方に対向する水平搬送路ユニット下面の突き当て凹部704(図9)との間は後述する高さ調整用の隙間S2を確保するように設定している。
【0060】
これに対し、図8に想像線で示すようにロックレバー702が右側のロック解除方向にスライドしたとき、該ロックレバー702のフック部720がロックピン703との係止対応が外れて上下方向が非ロック位置となるためロック解除される。ロック解除されると水平搬送路ユニット1fは開閉ばね709の上向きの付勢力を受けているため、それまで収納庫トレイ1tの上面を閉鎖していた水平搬送路ユニット1fは水平姿勢から回動して起立した垂直姿勢の開位置へと至る。
【0061】
このように、水平搬送路ユニット1fが収納庫トレイ1tの上面開口部1gを閉鎖している状態では、ロック機構700の係止面間における係止接触状態、つまりロック状態を維持させることができるロック構造を有している。
【0062】
さらに、水平搬送路ユニット1fの下面には、図9及び図10に示すように、ロックピン703の上面と対応して水平搬送路ユニット1fを下動基準位置で規制する下動規制手段として逆凹形状に設けられた突き当て凹部704を有している。この突き当て凹部704を備えることにより、水平搬送路ユニット1fは金庫筐体106に収納された位置で後述する基準高さプレート202a(図12)による高さ規制作用を受けて、突き当て凹部704がロックピン703の上面に突き当たり、水平搬送路ユニット1fの下動が規制される下方向へのストッパ位置となっている。
【0063】
このストッパ機能により、水平搬送路ユニット1fは上面が基準高さプレート202aと対向し、下面がロックピン703と対向して上下面間が挟持された状態に上下方向が位置決め規制される。この結果、水平搬送路ユニット1fの高さを基準位置に高精度に位置決めすることができるとともに、水平搬送路ユニット1fは上下方向のぐらつきがなくなり水平搬送路ユニット1fの半ロック状態を回避することができる。
【0064】
このとき、ロックレバー702は水平搬送路ユニット1fに支持されているため同じく下動する。このため、図9に示すようにロック部分の係止隙間S1は押し下げられた分の隙間が生じる。この際、水平搬送路ユニット1fは上方から後述する基準高さプレート202aが該水平搬送路ユニット1fを押下して水平姿勢を維持させるためロック機能の役割を果たす。このため、水平搬送路ユニット1fが金庫筐体106に収納された位置ではロックレバー702によるロック作用はしなくても支障はない。一方、水平搬送路ユニット1fは下動規制されたことにより、高さ調整用の隙間S2は0となる。つまり、水平搬送路ユニット1fが高さ基準位置に精度よく位置決めされて高さ調整が完了したことになる。
【0065】
図11は収納庫トレイ1tの上面開口部1gを開操作した際の水平搬送路ユニット1fを示している。ここで、水平搬送路ユニット1fの下面には、各収納庫60,80の上面とそれぞれ接続対応する各搬送接続口723を有している。さらに、収納庫トレイ1tに収納される各収納庫60,80の上面、例えばリサイクル庫80の上面には上述の水平搬送路ユニット1fの搬送接続口723と接続対応する搬送接続口724を有している。また、収納庫トレイ1tの一側面上部には収納庫取出促進用の上面凹部707を切欠き形成している。これにより、重量のある各収納庫60,80を上面凹部707に沿わせて傾斜させて取り出せるようにしている。
【0066】
また、収納庫60,80の中間高さ位置の手前側の一側面には収納庫位置決め用のストッパピン708を突設させている。該ストッパピン708は重量のあるリサイクル庫80を収納庫トレイ1tへ装填する時に、該リサイクル庫80のストッパピン708が下部ユニット1cの上面凹部707に引っ掛かって停止すると同時に、上下方向の位置決めできるようにしている。
【0067】
前記水平搬送路ユニット1fを開閉、及び入金庫60やリサイクル庫80にアクセスする場合について説明すると、まず図6に示すように下部ユニット1cを金庫筐体106から引き出した後、ロック機構700をロック解除する。詳しくは、図7に示すように、ロックレバー702を水平矢印904のロック解除方向に動かして、ロックレバー702の位置をロックピン703のロック位置から外してロック解除する。その後、ロック解除された水平搬送路ユニット1fを持ち上げるように上方に90度回動させて開く。これにより、入金庫60やリサイクル庫80の取り出しが可能になり、これらの入金庫60やリサイクル庫80を垂直矢印(図11)902a方向、続いて手前側に取り出す斜め矢印902b方向に持ち上げて取り出す。
【0068】
入金庫60やリサイクル庫80は紙幣が満杯になった場合、非常に重くなることから上面凹部707を設けている。これにより、入金庫60やリサイクル庫80を上方まで持ち上げることなく、上面凹部707まで持ち上げた後、斜め方向に引き出させ易いようにしている。入金庫60やリサイクル庫80を戻すときは、逆の手順で1cに差し込むとよい。このとき、ストッパピン708が上面凹部707に突き当たり、収納高さ位置で停止される。
【0069】
次に、下部ユニット1cを金庫筐体106に収納したとき、水平搬送路ユニット1fが受渡し搬送路1bへの接続に適した高さ位置になるように、金庫筐体106には水平搬送路ユニット1fを基準高さに位置きめする位置決め手段としての基準高さプレート202a(図12)を備えている。
【0070】
図12は金庫筐体106の内部に基準高さプレート202aを備えた要部縦断側面図を示している。この基準高さプレート202aは、水平搬送路ユニット1fの上面に平面対向する大きさを有する平板であり、箱形状の金庫筐体106の内部空間の上面に沿って平面的に配置している。
【0071】
この基準高さプレート202aの取り付けに際しては、金庫筐体106の上面に搭載されている上部ユニットトレイ201の底部に複数の連結シャフト206を垂設させ、垂設させた各連結シャフト206の下端を金庫筐体106の上面壁を貫通させて金庫筐体106の内部に臨ませ、その連結シャフト206の下端に基準高さプレート202aを水平に固定して金庫筐体106の内部上面に取り付けている。
【0072】
このようにして取り付けられた基準高さプレート202aは、金庫内の上面に支持されているため連結シャフト206の長さが短く、また連結シャフト206の加工上の観点から長さ精度が良く、さらに受渡し搬送路1bも上部ユニットトレイ201に固定されていることから、基準高さプレート202aの上下方向の位置は、受渡し搬送路1bの高さ位置に対しても精度の良い高さ位置となって取り付けられている。
【0073】
すなわち、この基準高さ位置に設定された基準高さプレート202aの下面で水平搬送路ユニット1fの上面を支持して、該水平搬送路ユニット1fの高さを基準高さに設定するものである。
【0074】
水平搬送路ユニット1fの上面には、その前後方向(引出、収納方向)の両側上部に上向き矢印908方向に付勢した押えローラ705を設置している。
前記押えローラ705は、図13にも示すように両端部にローラ131を備えたローラ軸132をローラ支持台133に水平に軸支させている。さらに、ローラ131を上下動可能にローラ軸132を縦長の長孔134内に挿通させた状態で、該ローラ軸132の下方に上ばね座135を介して上下方向に伸縮するコイルばね136を圧縮させた状態に内蔵させてローラ131をローラ支持台133の上部で上向きに付勢支持している。また、ローラ131の回転方向を水平搬送路ユニット1fの引出、収納方向に設定している。
【0075】
そして、この押えローラ705を上向きに突設させ、且つ上向きに付勢させることにより、基準高さプレート202aの下面にローラ131の上面が付勢対接して水平搬送路ユニット1fの円滑なスライド移動を可能にし、また基準高さプレート202aとの安定した接触圧を確保する役目を有している。
【0076】
つまり、下部ユニット1cをスライドさせて金庫筐体106に収納する収納時に、該下部ユニット1cの上部を構成している水平搬送路ユニット1fの上面に搭載されている押えローラ705が基準高さプレート202aの下面に付勢対接しながら収納される。このため、基準高さプレート202aへの上向きの片当たりなどの不安定な接触圧を押えローラ705の部分で吸収して、水平搬送路ユニット1fに掛かる過剰な接触圧を回避する役目を有している。このため、基準高さプレート202aと水平搬送路ユニット1fとの接触圧を常に安定した接触圧に設定することができる。したがって、水平搬送路ユニット1fの高さ方向が不安定に変動せず、受渡し搬送路1bとの上下方向の接続部分が常に一定高さで接続されることになる。この際、押えローラ705のコイルばね136は開閉ばね709の付勢力よりも強い付勢力に設定して、開閉ばね709の押し上げ力に十分に抗した状態に保ち、急激な上下変動を抑制した動きを確保している。
【0077】
前記押えローラ705は、基準高さプレート202aと水平搬送路ユニット1fとの上下面間で均一な接触が得られるように例えば前後左右の4箇所に分散してバランスよく配置する。また、下部ユニット1cを金庫筐体106に収納した際に、これらの分散された該押えローラ705の全てに対応するように、これらの押えローラ705と接触対応する大きさの基準高さプレート202aを用いる。
【0078】
次に、水平搬送路ユニット1fの上向きの付勢機構を図14〜17を用いて説明する。
図14は水平搬送路ユニット1fを閉じた際の付勢機構725の正面図であり、図15は水平搬送路ユニット1fを開けた際の付勢機構725の正面図であり、図16はスライドプレート710の拡大図であり、図17は水平搬送路ユニット1fを開いた際の衝撃吸収状態を示す正面図である。
【0079】
まず、図14において上下に対向する水平搬送路ユニット1fと収納庫トレイ1tとの開閉構成について説明する。
上部の水平搬送路ユニット1fと下部の収納庫トレイ1tは長尺のリンク片706で結合されており、このリンク片706の上端は一端側の開閉支点軸701を回動基準とする水平搬送路ユニット1fの他端側に配設されたリンク支点軸719に軸支させて接続している。また、リンク片706の下端は収納庫トレイ1tに固定されているスライドピン711にスライド可能に係合させて取り付けている。
【0080】
このリンク片706には長手方向に沿ってスライド溝712が設けられており、このスライド溝712に収納庫トレイ1tのスライドピン711が係合した状態に結合されている。このため、水平搬送路ユニット1fを開閉方向に回動させると、その回動に連動してリンク片706は追従して上下方向に回動する。つまり、開閉支点軸701を回動支点として水平搬送路ユニット1fが回動する際のリンク支点軸719の回動を許容するようにスライドピン711にスライド溝712を摺動ガイドさせている。
【0081】
さらに、収納庫トレイ1tには、長尺のコイルスプリングにより形成された開閉ばね709を配設している。この開閉ばね709は一端を収納庫トレイ1tの下端に形成されている収納庫トレイフック部716bに連結し、他端をリンク片706の下端に形成されているリンク片下フック部716aに連結し、その中間部を収納庫トレイ1tの上部に軸支されているばね支持ローラ718で逆U字形に張設支持している。これにより、開閉ばね709は収納庫トレイフック部716bを付勢支点としてリンク片下フック部716aを上向きに付勢している。このため、リンク片706は上向き矢印911の付勢力が与えられている。
【0082】
そして、図14に示すように、水平搬送路ユニット1fを閉じている時は、リンク片706は垂直方向に対し、ある傾斜角度αをもって収納庫トレイ1t内に配置されており、収納庫トレイ1tの高さH及び収納庫トレイ1tの幅Wが小さい場合でも開閉ストロークに必要な長いリンク片706を配置することができる。この結果、水平搬送路ユニット1fを図17に示すように起立させて90度以上開いた時でも係員がアクセスする収納庫トレイ1tの上方空間を確保して入金庫60またはリサイクル庫80を図11に示す上向き矢印902a方向に容易に引き抜き、または装填することができる。
【0083】
また、リンク片706の下端部には、該リンク片706の長手方向に沿って2個のガイド軸713を突設している。また、これらのガイド軸713に係合する長孔のガイド溝714を備えたL形状のスライドプレート710を備えている。
【0084】
このスライドプレート710は、図16に示すように、上部にスライドプレートフック部716cを有し、このスライドプレートフック部716cとリンク片706の中間部に備えたリンク片上フック部716dとの間に掛け渡されたリンクばね715により該スライドプレート710を張設支持している。
【0085】
これにより、スライドプレート710は図14に示すように、水平搬送路ユニット1fが閉じられている状態ではリンクばね715の付勢力により上向きに引っ張られており、下側のガイド軸713に上動規制された状態にある。また、このとき、スライドプレート710のスライドプレート突き当て部717がスライド溝712の下端より上方に待機している。
【0086】
そして、水平搬送路ユニット1fが開位置に回動したとき、図15に示すように、スライドプレート710のスライドプレート突き当て部717がスライドピン711に突き当たるが、そのときの当接衝撃力を図17に示すようにスライドプレート710が後退して吸収する。これにより、回動停止時の回動衝撃をスライドプレート710が吸収して円滑な開操作及び寿命延長が図れるという衝撃吸収機能を持たせている。
【0087】
詳しくは、ロック機構700のロックを解除して水平搬送路ユニット1fを開ける際、開閉ばね709の付勢力によりリンク片706が上向き矢印(図14)911の方向に動き、水平搬送路ユニット1fが図17に示す開矢印912方向に開く。
【0088】
このとき、図16に示すようにスライドプレート710のスライドプレート突き当て部717が図15に示すようにスライドピン711に突き当たった状態になると、リンクばね715の付勢力により開操作方向の衝撃力を吸収する。これにより、水平搬送路ユニット1fは一旦停止して開状態を維持する。
【0089】
その後、図17に示すようにリンクばね715の力より大きい力で引き続き水平搬送路ユニット1fを開方向矢印912方向に開いた場合、スライドプレート710がスライドピン711によって斜め下向き矢印913方向に押され、スライドピン711がスライド溝712の下端部に突き当たって停止する。
【0090】
また、水平搬送路ユニット1fを閉じる時は開閉ばね709の付勢力に抗して閉じるため水平搬送路ユニット1fが重くても開閉ばね709の上向きの付勢力により水平搬送路ユニット1fは安定して閉操作することができる。
【0091】
この水平搬送路ユニット1fを閉じた後は、図7に示すように係員がロックレバー702をロックする水平矢印907方向に動かす。この動作はロックする水平矢印907方向に付勢する図示しない引張りばねを備えて動作させてもよい。また、ロックレバー702をロック方向に動作させる場合は、ロックレバー702がロックピン703と衝突しないように水平搬送路ユニット1fを閉じた後で動作させる。このとき、ロックピン703とロックレバー702の間には十分な係止隙間S1を確保しており、水平搬送路ユニット1fを完全に締め切る必要がない状態で動作させて閉じる構造となっている。
【0092】
次に、図12を用いて下部ユニット1cを金庫筐体106に収納する時の手順について説明する。
下部ユニット1cを図12に示す収納矢印910方向に押して金庫筐体106に収納する場合、係員が下部ユニット1cを収納方向にスライドさせて金庫筐体106に押し込む収納過程で押えローラ705が固定されている基準高さプレート202aに接触する。このとき、押えローラ705はその上方に固定されている基準高さプレート202aに押し付けられて下向き矢印909方向の接触圧を受ける。
【0093】
下部ユニット1cが金庫筐体106の収納完了位置に収納されたときは、水平搬送路ユニット1fは図9及び図10に示すように収納庫トレイ1tに突出しているロックピン703の上面に、そのストッパ部である水平搬送路ユニット1fの下面に形成されている突き当て部704が上方から突き当たることで停止し、それ以上は下方向に押されることはない。
【0094】
これにより、水平搬送路ユニット1fの上下方向の位置関係、つまり、図5に示すように、水平搬送路ユニット下ガイド板602と収納庫ガイド板601の上下方向の位置関係が精度よく保たれる。同時に水平搬送路ユニット1fと受渡し搬送路1bの上下方向の位置関係、つまり、水平搬送路ユニット上ガイド板212と受渡し搬送路下搬送ガイド板302の上下方向の位置関係が精度よく保たれる。
【0095】
以上説明したように、水平搬送路ユニット1fが開いている状態から閉じるときは、完全に閉じるため、大きな力を付加する必要がなくなり操作性が良くなる。一方で水平搬送路ユニット1fを閉じて下部ユニット1cを金庫筐体106内に収納する時に水平搬送路ユニット1fが基準高さプレート202aによって精度の良い位置に保持されるので、受渡し搬送路1bと水平搬送路ユニット1fの搬送路のつなぎ、水平搬送路ユニット1fと入金庫60やリサイクル庫80との搬送路のつなぎを精度よく位置決めすることができる。
【0096】
また、水平搬送路ユニット1fのロックレバー702が半ロック状態など完全に閉じていなくても押えローラ705で完全に位置決めする構成を有していることから搬送路のつなぎが確実に行われる。これにより、受渡し搬送路1bと水平搬送路ユニット1fとのつなぎ目での搬送ジャムの発生を確実に少なくすることができる。
【0097】
一方で、水平搬送路ユニット1fを開くときは一旦スライドプレート710のスライドプレート突き当て部717にスライドピン711が突き当たって停止し、その後にスライドピン711とスライド溝712の端部が衝突するために、スライドピンに対する衝突力が緩和され、操作性がよくなり、同時にスライドピンの脱落などの破損の心配がなくなる。さらには、複雑な構成を要せず、簡単な部品で下部ユニット1cの高さ方向の位置合わせ精度に優れた構成が得られる。
【0098】
この発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて多くの実施の形態を得ることができる。例えば、上述の実施例では紙幣のみを取引する現金自動取引装置101を例にとって示したが、紙幣のほかに、明細票、金券、有価証券、用紙、カード等の価値情報を備えた紙葉類についても同様に取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0099】
1…紙幣入出金機
1a…上部ユニット
1b…受渡し搬送路
1c…下部ユニット
1f…水平搬送路ユニット
1t…収納庫トレイ
101…現金自動取引装置
106…金庫筐体
202a…基準高さプレート
204…下部ユニットレール
700…ロック機構
702…ロックレバー
703…ロックピン
704…突き当て凹部
709…開閉ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金庫筐体に搭載されて紙葉類を受入処理または紙葉類を放出処理する上部ユニットと、
前記金庫筐体の内部に収納され、前記上部ユニットから供給された紙葉類を収納する収納庫への収納処理または前記収納庫に収納された紙葉類を前記上部ユニットへと繰出処理する下部ユニットと、
前記上部ユニットと前記下部ユニットを接続して紙葉類を上下方向に受渡し搬送する搬送路を離間可能に接続して構成した受渡し搬送路と、
前記下部ユニットを前記金庫筐体からスライドさせて引き出し、または前記下部ユニットを前記金庫筐体の内部へとスライドさせて収納させるスライド機構とを備えた紙葉類取扱装置であって、
前記下部ユニットを、
前記収納庫を上方より出し入れ自由に収納する収納庫トレイと、
前記収納庫トレイの上面開口部を開閉し、該上面開口部を閉鎖したとき前記収納庫と前記受渡し搬送路との間を紙葉類受渡し用に接続する水平搬送路ユニットとを備えて構成し、
前記水平搬送路ユニットで前記収納庫トレイの上面開口部を閉鎖したとき、前記収納庫トレイ側に設けられたトレイ係止部に、前記水平搬送路ユニット側に設けられたユニット係止部を上下方向に係止させるとともに、前記ユニット係止部を上向きに付勢させて互いの係止部間における係止接触状態を維持させる係止手段と、
前記下部ユニットを前記金庫筐体の内部に収納したとき、前記水平搬送路ユニットが前記受渡し搬送路への接続に適した高さ位置になるように前記金庫筐体が前記水平搬送路ユニットを基準高さ位置に押し下げる位置決め手段とを備えて構成した
紙葉類取扱装置。
【請求項2】
前記水平搬送路ユニットを、
前記収納庫トレイの上部に一端を回動支点として軸支し、他端を回動自由なリンク片で当該水平搬送路ユニットと前記収納庫トレイとの上下間を接続して片開き式に構成し、
前記片開き式の水平搬送路ユニットを、前記リンク片を介して前記収納庫トレイよりその上方の開方向に向けて付勢する開操作補助用のユニット付勢手段を備えて構成した
請求項1に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項3】
前記係止手段を、
前記ユニット付勢手段と、
前記水平搬送路ユニットで前記収納庫トレイの上面開口部を閉鎖したとき、前記トレイ係止部が前記ユニット係止部を係止して前記ユニット付勢手段により該水平搬送路ユニットが上向きに回動するのを規制する規制手段とで構成した
請求項2に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項4】
前記位置決め手段を、
前記下部ユニットを前記金庫筐体の内部に収納したとき、前記水平搬送路ユニットが前記受渡し搬送路への接続に適した高さ位置になるように前記金庫筐体が前記水平搬送路ユニットを基準高さ位置へと均一に押し下げる基準高さプレートと、
前記基準高さプレートにより押し下げられた前記水平搬送路ユニットの下面を、前記収納庫トレイに設けられたトレイ係止部の上面に当接させて前記水平搬送路ユニットを下動規制する下動規制手段とで構成した
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項5】
前記水平搬送路ユニットが開位置または閉位置に回動したときの回動停止時の回動衝撃を吸収する衝撃吸収手段を備えた
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項6】
前記水平搬送路ユニットの上面には、
前記基準高さプレートの下面に付勢対接して該基準高さプレートの接触圧を緩和する付勢接触体を上向きに突設させて構成した
請求項4項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置を備えた現金自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−150744(P2012−150744A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10439(P2011−10439)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】