説明

紙葉類搬送用ゴム部材

【課題】 帯電防止性能と粘着防止性能に優れ、耐湿度性に優れた紙葉類搬送用ゴム部材を提供する。
【解決手段】 ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動改札機、現金預金支払機、両替機等において、磁気カードやコイン等を搬送する紙葉類搬送用無端ベルトや搬送用ゴムロールなどの紙葉類搬送用ゴム部材に関する。なお、紙葉類とは、各種用紙、PPC、各種フィルム、磁気カード、切符、紙幣、コイン等を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
自動改札機、現金預金支払機、両替機等において、磁気カードやコイン等を搬送する紙葉類搬送用無端ベルトや搬送用ゴムロールなどの紙葉類搬送用ゴム部材は、紙幣、フィルム、磁気カード、切符等を装置内で円滑に移送するため、表面が円滑で粘着性がないこと、充分な弾性力を有すること、装置内での外の部分に接触して裂けることがないよう充分な引き裂き力を有すること、また、プーリ間の軸間距離の許容範囲を大きくとることができるよう伸びが大きく且つ初期張力が小さいこと、充分な耐湿度性能を有すること、さらに、静電気によるトラブルを防止することなどが必要である。
【0003】
そこで、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とポリプロピレングリコール(PPG)とを所定の割合で配合した紙送りロール用ウレタン組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、本出願人は、ポリ−ε−カプロラクトン系ジオールにおけるカプロラクトン連鎖の平均値を所定の範囲に制御した混練型ポリウレタンからなる紙葉類搬送用無端ベルトを提案している(特許文献2参照)。
【0004】
これらよりもさらに耐湿度性が向上し、粘着防止性能に優れた紙葉類搬送用ゴム部材が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−068515号公報
【特許文献2】特開平10−17173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、帯電防止性能及び粘着防止性能に優れ、耐湿度性に優れた紙葉類搬送用ゴム部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成する本発明の第1の態様は、ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形することを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記粘着防止剤が硫黄サブ、塩化硫黄サブ及び無硫黄サブからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記帯電防止剤が界面活性剤及びグリコール類の群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の態様に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記加水分解防止剤がポリカルボキシイミド系及び4−t−ブチルカテコールからなる群から
選択される少なくとも一種であることを特徴とする使用類搬送用ゴム部材にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記紙葉類搬送用ゴム部材は相対向するベルト間の挟み力により紙葉類を搬送する紙葉類搬送用無端ベルトであることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材にある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記紙葉類搬送用ゴム部材は紙葉類搬送用ゴムロールであることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウレタンゴムに対して、加水分解防止剤、帯電防止剤及び粘着防止材を所定量配合することにより、帯電防止性能及び粘着防止性能に優れるだけでなく、耐湿度性に優れた紙葉類搬送用ゴム部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の紙葉類搬送用ゴム部材は、ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形するものである。本発明は、ウレタンゴムに対して、所定量の加水分解防止剤、帯電防止剤、及び粘着防止剤を配合することにより、帯電防止性能と粘着防止性能に優れると共に耐湿度性に優れた紙葉類搬送用ゴム部材が得られることを知見し、完成させたものである。
【0015】
本発明では、加水分解防止剤と共に、帯電防止剤及び粘着防止剤を併用している。これらを併用して配合量を規定することにより、加水分解防止性能、帯電防止性能及び粘着防止性能を低減させることなく、すべての特性を効果的に発現させるように設計したものである。
【0016】
紙葉類搬送用ゴム部材は、ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形するものである。これにより、加水分解防止性能、帯電防止性能及び粘着防止性能を効果的に発現するものとなる。すなわち、帯電防止性能及び粘着防止性能に優れると共に、ウレタンゴムの加水分解が効果的に防止されて耐湿度性に優れた紙葉類搬送用ゴム部材となる。加水分解防止剤を2質量部未満とすると十分な加水分解防止効果が得られず、8質量部より多くしても加水分解防止性能は顕著には向上しない。また、帯電防止剤及び粘着防止剤は配合量が前記範囲よりも少ないと、帯電防止効果又は粘着防止効果が十分に得られず、配合量が前記範囲よりも多くなると、加水分解防止剤と反応して加水分解防止性能を低減させてしまう。また、加水分解防止剤と帯電防止剤の総量が多くなりすぎると、粘着防止性能が低下してしまう。
【0017】
加水分解防止剤としては、カルボジイミド系、4−t−ブチルカテコール、アゾジカルボナミッド、アゾジカルボキシリック酸エステル、脂肪酸アマイドなどが挙げられる。加水分解防止効果の面からは、カルボジイミド系が好ましい。特にカルボジイミド系の加水分解防止剤は加水分解により生じたカルボン酸と効率良く反応するためカルボン酸が加水分解の酸触媒として働くのを効果的に阻止することが出来る。
【0018】
帯電防止剤は特に限定されず、従来から使用されているものを使用することができ、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性の界面活性剤やグリコール類を挙げることができる。帯電防止剤としてアニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性の界面活性剤やグリコール類を用いると、カーボンブラックの配合により材料の電気抵抗を下げて静電気を逃がしやすくする方法に比べてベルトのモジュラス上昇を抑えることができる。帯電防止剤は、1種類配合しても、2種類以上配合してもよいが、2種以上配合する場合は帯電防止剤の総量が1〜6質量部となるようにする。帯電防止剤を2種以上配合する場合は、アルキル鎖長の異なるものを2種類以上配合するのがより好ましく、帯電防止剤のゴム部材表面へのブリードが大きいが帯電防止効果が高まるアルキル鎖長の短いものと、ブリードしにくく比較的帯電防止効果の小さいアルキル鎖長の長いものを用いるのが特に好ましい。紙葉類の搬送性を維持し、より帯電を防止することができる。
【0019】
帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤が好ましく、特に四級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、特に限定されず、モノアルキル型、ジアルキル型等が挙げられる。さらに、2種以上配合する場合は、四級アンモニウム塩のうち少なくとも1種類がアルキル鎖長C16以上で、少なくとも1種類がアルキル鎖長C15以下であることが好ましい。アルキル鎖長C16以上のものとしては、例えば、セチル基、ステアリル基、アラキニル基、ベヘシル基等が挙げられ、アルキル鎖長C15以下のものとしては、例えば、ノニル基、ラウリル基、ミリスチル基等が挙げられる。比較的帯電防止効果は小さいがブリードしにくいアルキル鎖長がC16以上の四級アンモニウム塩と、ブリードしやすいが比較的帯電防止効果の大きいC15以下の四級アンモニウム塩を用いることで、紙葉類の搬送性を維持し、帯電を防止した紙葉類搬送用ゴム部材とすることができる。
【0020】
粘着防止剤としては、硫黄サブ、塩化硫黄サブ、無硫黄サブ等が挙げられ、粘着防止効果と有機過酸化物架橋を阻害しないという点から特に無硫黄サブが好ましい。粘着防止剤として硫黄サブ、塩化硫黄サブ、無硫黄サブ等のサブを用いるとカーボンブラックや炭酸カルシウムによる粘着防止に比べてベルトの弾性低下やモジュラス上昇を抑えることが出来る。
【0021】
また、ウレタンゴムは、高分子量ポリオール、イソシアネート化合物、鎖延長剤及び架橋剤を含有するものである。
【0022】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールなどを挙げることができる。また、イソシアネート化合物としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4−ジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などが挙げられる。また、架橋剤は、少なくとも短鎖ジオールと短鎖トリオールとを用いる必要がある。短鎖ジオールに特に限定はないが、プロパンジオール(PD)及びブタンジオール(BD)の少なくとも一方を有することが好ましい。ここで、プロパンジオールとしては1,3−プロパンジオールが、ブタンジオールとしては1,4−ブタンジオールが代表的なものであり、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールは性能及びコスト面で好適であるが、これに限定されるものではない。また、短鎖トリオールにも特に限定はないが、トリメチロールエタン(TME)及びトリメチロールプロパン(TMP)の少なくとも一方を有することが好ましい。勿論、短鎖ジオールも短鎖トリオールもそれぞれ二種以上混合して用いてもよい。
【0023】
ウレタンゴムは、注型タイプでもミラブルタイプでもよい。ウレタンゴムとしてミラブルウレタンを用いる場合は、特に、カプロラクトン系のミラブルウレタンが好ましい。ベルト表面の摩耗および摩耗に伴う粘着性をほぼなくすことができ、紙葉類の搬送を長期に亘って安定して行うことができるからである。また、ウレタンゴムとして注型ポリウレタンを用いる場合は、ゴム状弾性体は耐磨耗性に優れたものとなり、紙葉類搬送用無端ゴム部材は耐湿度性に優れたものとなる。
【0024】
なお、紙葉類搬送用無端ベルトの場合、必要に応じて、補強芯体をベルト内に埋設することもできる。補強芯体としてはヤング率の高いものを使用するのが好ましく、例えば、綿糸、ナイロン糸、ポリエステル糸、芳香族ポリアミド糸、ガラス繊維等を挙げることができる。また、ナイロン仮撚糸を編立機により編んだ0.1mm〜1.0mm厚さの伸縮性の大きい筒状体等を芯体として用いることができる。
【0025】
また、紙葉類搬送用ゴム部材は、導電性付与剤、例えば、導電性カーボンやイオン性導電性付与剤を添加して導電性を付与してもよい。なお、導電性付与剤の添加量はその種類によって異なるが、導電性カーボンを用いた場合には、ウレタンゴム100質量部に対して10質量部添加されるのが好ましい。十分な導電性を付与して帯電した静電気の除去を促進するためである。
【0026】
本発明の紙葉類搬送用ゴム部材は、自動改札機、現金預金支払機、両替機等において、磁気カードやコイン等を搬送する紙葉類搬送用無端ベルトや搬送用ゴムロールなどに用いて好適なものである。特にこれらは、相対向して用いるのに好適なものである。このとき、紙葉類は、相対向して配置されたベルト間に挟持されて当該ベルト間の挟み力により搬送される。
【0027】
図1に、本発明の紙葉類搬送用ゴム部材の一例である紙葉類搬送用無端ベルトの使用状態の一例を概念的に示す。例えば、図1に示すように、紙葉類搬送ベルト01および02は、それぞれ一対のプーリ03a,03bおよび04a,04bに張架されて相対向して配置されており、紙葉類05は回転駆動される一対の紙葉類搬送ベルト01および02間の挟み力により搬送される。
【0028】
以下、具体的な実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0029】
(実施例1)
ポリ−ε−カプロラクトン系ジオールとMDI(4,4′−ジフェニルメタンジイソシ
アネート)からなるミラブルウレタン100質量部に、加水分解防止剤としてポリカルボジイミド(ポリカルボキシイミド系加水分解防止剤:以下、加水分解防止剤Aとする。)を3質量部、帯電防止剤としてアルキル鎖長C16の四級アンモニウム塩(カチオン系界面活性剤:以下、帯電防止剤Aとする。)を2質量部、アルキル鎖長C12の四級アンモニウム塩(カチオン系界面活性剤:以下、帯電防止剤Bとする。)を1質量部、粘着防止剤として無硫黄サブ(以下、粘着防止剤Aとする。)10質量部を配合し、150℃で50分硬化させた。その後、脱型し、所定の幅に突っ切りして外径φ143mm×幅10mm×厚さ0.7mmの紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0030】
(実施例2)
加水分解防止剤Aを7質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0031】
(実施例3)
加水分解防止剤Aを5質量部、帯電防止剤Aを1質量部、帯電防止剤Bを0.5質量部、粘着防止剤Aを5質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0032】
(実施例4)
加水分解防止剤Aを4質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0033】
(実施例5)
加水分解防止剤Aを2質量部、帯電防止剤Aを4質量部、帯電防止剤Bを2質量部、粘着防止剤Aを15質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0034】
(実施例6)
加水分解防止剤Aを2質量部、帯電防止剤Aを0.7質量部、帯電防止剤Bを0.35質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0035】
(実施例7)
加水分解防止剤Aを8質量部、帯電防止剤Aを0.7質量部、帯電防止剤Bを0.35質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0036】
(実施例8)
加水分解防止剤Aを8質量部、帯電防止剤Aを4質量部、帯電防止剤Bを2質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0037】
(実施例9)
帯電防止剤Bを用いず、加水分解防止剤Aを2質量部、帯電防止剤Aを6質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例9の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0038】
(実施例10)
加水分解防止剤Aを8質量部、帯電防止剤Aを4質量部、帯電防止剤Bを2質量部、粘着防止剤Aを3質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例10の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0039】
(実施例11)
加水分解防止剤Aを2質量部、帯電防止剤Aを0.7質量部、帯電防止剤Bを0.35質量部、粘着防止剤Aを15質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例11の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0040】
(実施例12)
加水分解防止剤Aを8質量部、帯電防止剤Aを0.7質量部、帯電防止剤Bを0.35質量部、粘着防止剤Aを15質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例12の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0041】
(実施例13)
加水分解防止剤Aを8質量部とした以外は、実施例5と同様にして、実施例13の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0042】
(実施例14)
帯電防止剤Aを2質量部、帯電防止剤Bを4質量部とした以外は、実施例13と同様にして、実施例14の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0043】
(実施例15)
帯電防止剤A及びBの代わりに、帯電防止剤としてグリコール(ノニオン系界面活性剤:以下、帯電防止剤Cとする。)を6質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例15の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0044】
(実施例16)
加水分解防止剤Aの代わりに、加水分解防止剤として4−t−ブチルカテコール(以下、加水分解防止剤Bとする。)を8質量部とした以外は、実施例13と同様にして、実施例16の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0045】
(実施例17)
帯電防止剤A及びBの代わりに、帯電防止剤としてアルキル鎖長C18の四級アンモニウム塩(カチオン系界面活性剤:以下、帯電防止剤Dとする。)を4質量部、C10の四級アンモニウム塩(カチオン系界面活性剤:以下、帯電防止剤Eとする。)を2質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例17の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0046】
(実施例18)
粘着防止剤Aの代わりに、粘着防止剤として粉末タイプの硫黄サブ(以下、粘着防止剤Bとする。)を15質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例18の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0047】
(実施例19)
加水分解防止剤Bを2質量部とした以外は実施例16と同様にして、実施例19の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0048】
(実施例20)
粘着防止剤Bを3質量部とした以外は実施例18と同様にして、実施例20の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0049】
(実施例21)
帯電防止剤Cを1質量部とした以外は実施例15と同様にして、実施例21の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0050】
(実施例22)
帯電防止剤A及びBの代わりに、帯電防止剤としてモノアルキル硫酸塩(アニオン系活性剤:以下、帯電防止剤Fとする。)を6質量部用いた以外は、実施例1と同様にして実施例22の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0051】
(実施例23)
帯電防止剤Fを1質量部とした以外は実施例22と同様にして、実施例23の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0052】
(実施例24)
帯電防止剤A及びBの代わりに、帯電防止剤としてアルキルカルボキシベタイン(両性系界面活性剤:以下、帯電防止剤Gとする。)を6質量部用いた以外は、実施例1と同様にして実施例24の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0053】
(実施例25)
帯電防止剤Gを1質量部とした以外は実施例24と同様にして、実施例25の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0054】
(比較例1)
加水分解防止剤Aを1質量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0055】
(比較例2)
帯電防止剤Aを5質量部、帯電防止剤Bを2.5質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0056】
(比較例3)
粘着防止剤Aを20質量部とした以外は比較例2と同様にして、比較例3の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0057】
(比較例4)
粘着防止剤Aを2質量部とした以外は比較例2と同様にして、比較例4の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0058】
(比較例5)
帯電防止剤Aを0.5質量部、帯電防止剤Bを0.25質量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0059】
(比較例6)
粘着防止剤Aを2質量部とした以外は比較例5と同様にして、比較例6の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0060】
(比較例7)
粘着防止剤Aを20質量部とした以外は比較例5と同様にして、比較例7の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0061】
(比較例8)
粘着防止剤Aを2質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例8の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0062】
(比較例9)
粘着防止剤Aを20質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例9の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0063】
(比較例10)
加水分解防止剤Aを10質量部、粘着防止剤Aを2質量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例10の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0064】
(比較例11)
加水分解防止剤Bを1質量部とした以外は実施例16と同様にして、比較例11の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0065】
(比較例12)
加水分解防止剤Bを10質量部とした以外は実施例16と同様にして、比較例12の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0066】
(比較例13)
粘着防止剤Bを2質量部とした以外は実施例18と同様にして、比較例13の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0067】
(比較例14)
粘着防止剤Bを20質量部とした以外は実施例18と同様にして、比較例14の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0068】
(比較例15)
帯電防止剤Cを8質量部とした以外は実施例21と同様にして、比較例15の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0069】
(比較例16)
帯電防止剤Cを0.75質量部とした以外は実施例21と同様にして、比較例16の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0070】
(比較例17)
帯電防止剤Fを8質量部とした以外は実施例22と同様にして、比較例17の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0071】
(比較例18)
帯電防止剤Fを0.75質量部とした以外は実施例22と同様にして、比較例18の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0072】
(比較例19)
帯電防止剤Gを8質量部とした以外は実施例24と同様にして、比較例19の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0073】
(比較例20)
帯電防止剤Gを0.75質量部とした以外は実施例24と同様にして、比較例20の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0074】
(比較例21)
帯電防止剤Aを6質量部、帯電防止剤Bを3質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例21の紙葉類搬送用無端ベルトを得た。
【0075】
(試験例1)加水分解防止性能評価
各実施例及び各比較例のテストサンプルを作成し、85℃、95%RHの雰囲気下で30日後の硬度保持率を測定し、以下に示す1〜10段階で評価した。点数が小さいほど硬度保持率が低く、使用上好ましくない。なお、1〜10段階で3以下は実機使用が不可とする。
【0076】
【表1】

【0077】
(試験例2)帯電防止性能評価
図2に示した摩擦帯電圧測定機を用い、シート状に成形されたゴム部材1として、各実施例及び各比較例の紙葉類搬送用無端ベルトを用い、20℃、40%RHで、試験開始から1分後までの帯電圧を測定し、その平均値を求めた。この平均値を以下に示す1〜10段階で評価した。ここで帯電圧が高いほど紙葉類の搬送・収納性が悪化し使用上好ましくない。なお、1〜10段階で3点以下は実機使用不可とする。
【0078】
【表2】

【0079】
(試験例3):粘着防止性能評価
また、各実施例及び各比較例の無端ベルトをベルト走行試験機に搭載し、粘着防止効果について検討した。
【0080】
図3に示すように、ベルト走行試験機は、1つの駆動ロール31と、複数の従動ロール32を有している。各実施例及び各比較例の紙葉類搬送用無端ベルトをベルト走行試験機の駆動ベルト10A及び従動ベルト10Bとしてセットし、ベルト張り率10%となるようにした。このベルト走行試験機を、紙葉類を搬送せず24時間走行させた後これを24時間放置し走行前のベルト駆動トルクと走行・放置後のベルト駆動トルクの比から駆動トルク上昇率を算出した。この値を以下に示す1〜10段階でベルト同士の密着性から粘着防止性能を評価した。ここでベルト同士の密着性が高いほど走行後の駆動トルク上昇率は高くなり、使用上好ましくない。なお、1〜10段階で3点以下は実機使用不可とする。
【0081】
【表3】

【0082】
試験例1〜3の結果を表4〜8に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
【表8】

【0088】
(結果のまとめ)
ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形した実施例1〜25の紙葉類搬送用無端ベルトは、いずれも加水分解防止性能が4点以上、帯電防止性能が4点以上、粘着防止性能が5点以上であり、加水分解防止性能、帯電防止性能及び粘着防止性能すべてに優れるものであった。すなわち、帯電防止性能及び粘着防止性能に優れ、耐湿度性に優れたものであった。
【0089】
加水分解防止剤を1質量部とした比較例1及び比較例11の紙葉類搬送用無端ベルトは加水分解性能が低かった。また、帯電防止剤を7.5質量部とした比較例2〜4の紙葉類搬送用無端ベルト、帯電防止剤を8質量部とした比較例15、17及び19、並びに帯電防止剤を9質量部とした比較例21の紙葉類搬送用ベルトは加水分解防止性能が低かった。粘着防止剤を20質量部とした比較例3、7、9、14の紙葉類搬送用無端ベルトは、加水分解防止性能が低かった。これより、加水分解防止剤が2質量部未満の場合、又は帯電防止剤や粘着防止剤の配合量が多い場合は、加水分解防止性能が低下することがわかった。
【0090】
また、帯電防止剤が0.75質量部であった比較例5〜7、16、18、20の紙葉類搬送用無端ベルトは、帯電防止性能が低かった。また、粘着防止剤を2質量部とした比較例4、6、8、10及び13の紙葉類搬送用無端ベルトは、粘着防止性能が低かった。
【0091】
また、加水分解防止剤と帯電防止剤の総量が16質量部である比較例12及び比較例15の紙葉類搬送用無端ベルトは、粘着防止性能が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】紙葉類搬送用ゴム部材の使用状態の一例を概念的に示す概略図である。
【図2】本発明にかかる摩擦帯電圧測定方法を説明するための図である。
【図3】試験例のベルト走行試験機を示す概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ゴム部材
10 搬送用無端ベルト
10A 駆動ベルト
10B 従動ベルト
31 駆動ロール
32 従動ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンゴム100質量部に対して、加水分解防止剤を2〜8質量部、帯電防止剤を1〜6質量部、粘着防止剤を3〜15質量部配合して成形することを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記粘着防止剤が硫黄サブ、塩化硫黄サブ及び無硫黄サブからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記帯電防止剤が界面活性剤及びグリコール類の群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記加水分解防止剤がポリカルボキシイミド系及び4−t−ブチルカテコールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする使用類搬送用ゴム部材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記紙葉類搬送用ゴム部材は相対向するベルト間の挟み力により紙葉類を搬送する紙葉類搬送用無端ベルトであることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の紙葉類搬送用ゴム部材において、前記紙葉類搬送用ゴム部材は紙葉類搬送用ゴムロールであることを特徴とする紙葉類搬送用ゴム部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−111493(P2010−111493A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287161(P2008−287161)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】