紙葉類真偽識別装置
【目的】 汚れ等によって反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を判定できる紙葉類真偽識別装置を提供することを目的とする。
【構成】 被検査紙葉類で反射した光のうち、特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタ15と、第1の波長選択性フィルタ15を通過した光の光量を検出する第1の検出手段17と、被検査紙葉類で反射した光のうち、他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタ16と、第2の波長選択性フィルタ16を通過した光の光量を検出する第2の検出手段18と、第1の検出手段17で検出した光量データから第2の検出手段18で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段23と、演算手段23で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段Bとを備えている。
【構成】 被検査紙葉類で反射した光のうち、特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタ15と、第1の波長選択性フィルタ15を通過した光の光量を検出する第1の検出手段17と、被検査紙葉類で反射した光のうち、他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタ16と、第2の波長選択性フィルタ16を通過した光の光量を検出する第2の検出手段18と、第1の検出手段17で検出した光量データから第2の検出手段18で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段23と、演算手段23で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段Bとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙幣、印紙、有価証券などの紙葉類の真偽を識別する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、紙幣、印紙、有価証券などの紙葉類には、偽造品を検出するための特別な処理が施されている。即ち、可視光以外の特別な波長の光に対して反射或いは吸収する特殊なインクを用いて紙葉類を印刷したり、可視光以外の特別な波長の光に対して反射或いは吸収する特殊な染料を用いて紙葉類の用紙を作成したりしている。
【0003】そして、このような特別な処理が施された紙葉類の真偽を識別する装置として、紫外線或いは赤外線のみを紙葉類に照射する光照射部と、この照射による反射光の光量を検出して紙葉類の真偽を判定する真偽判定部とを備えた紙葉類真偽識別装置が従来より存在する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の紙葉類真偽識別装置においては、紙葉類が汚れていると光照射部から照射された光は紙葉類の表面で十分に反射或いは吸収されないため、真偽判定部で紙葉類の真偽を正確に判定することは難しかった。また、紙葉類の可視光以外の特別な波長の光に対する反射感度或いは吸収感度が悪い場合には、真偽判定部で検出できる反射光の光量は真正品と偽造品とで僅かしか違わないため、真偽判定部で紙葉類の真偽を正確に判定することは難しかった。
【0005】本発明は、このような問題を解決し、汚れ等によって反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を判定できる紙葉類真偽識別装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の紙葉類真偽識別装置は、特定波長帯域の光反射率が他の波長帯域の光反射率と異なる特殊インクで印刷された被検査紙葉類の真偽を識別する装置において、特定波長帯域の波長成分と他の波長帯域の波長成分とを有する光を被検査紙葉類に照射する照射手段と、被検査紙葉類で反射した光を2方向に分岐させる光分岐手段と、光分岐手段で分岐した一方の光を入射して、この入射光の特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、光分岐手段で分岐した他方の光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、第1の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第1の検出手段と、第2の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第2の検出手段と、第1の検出手段で検出した光量データから第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、演算手段で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えることを特徴とする。
【0007】このような構成を有する本発明の紙葉類真偽識別装置によれば、照射手段から出射した光は被検査紙葉類の表面で反射して光分岐手段に入射する。光分岐手段に入射した光は2方向に分岐し、分岐した一方の光が第1の波長選択性フィルタを通過して特定波長帯域の光となる。そして、この特定波長帯域の光が第1の検出手段に入射して、第1の検出手段で特定波長帯域の光の光量が検出される。
【0008】また、光分岐手段で分岐した他方の光は、第2の波長選択性フィルタを通過して他の波長帯域の光となる。そして、この他の波長帯域の光が第2の検出手段に入射して、第2の検出手段で他の波長帯域の光の光量が検出される。
【0009】このように、被検査紙葉類で反射した光についての特定波長帯域における光量を第1の検出手段で検出し、他の波長帯域における光量を第2の検出手段で検出することにより、2つの波長帯域における光量データが同時に得られる。
【0010】第1及び第2の検出手段で検出した光量データは演算手段に与えられて、特定波長帯域における光量データが他の波長帯域における光量データを用いて補正される。そして、演算手段で得られた補正データは真偽識別手段に与えられて、この補正データに基づいて被検査紙葉類の真偽が判定される。このように補正データを用いて被検査紙葉類の真偽が判定されるので、汚れ等で反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を判定することができる。
【0011】即ち、反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類の特性劣化の程度は、特定波長帯域と他の波長帯域のでほぼ同じである。従って、特定波長帯域における光量データを他の波長帯域における光量データを用いて補正することにより、特性劣化の影響を除去することができる。このため、反射特性或いは吸収特性の優劣に関わらず高い精度で紙葉類の真偽を識別することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置1を示す斜視図である。また図2は、紙葉類真偽識別装置1を示す概略図である。紙葉類真偽識別装置1は、紙幣を高速処理する銀行用整理機の搬送部に組み込まれて、紙幣の真偽を瞬時に判定する装置である。なお、紙葉類真偽識別装置1は、紙幣以外にも印紙、有価証券、その他の紙葉類の真偽を識別することができる。
【0014】図1に示すように、紙葉類真偽識別装置1は上面10aに読取窓11が設けられた直方体形状の遮光ケース10を備えている。この遮光ケース10の側部には、平板状の側面板10bがネジによって固定されている。遮光ケース10の内部には、ビームスプリッタ12,13と、水銀ランプ14と、紫外フィルタ15と、紫外カットフィルタ16と、フォトセンサ17,18とが設けられている。
【0015】次に、遮光ケース10の内部の各構成部材を具体的に説明する。まず、読取窓11の下方にはビームスプリッタ12が配置されている。ビームスプリッタ12は側方からの入射光をほぼ50%反射させると共に、上方からの入射光をほぼ50%透過させるように機能する。このビームスプリッタ12の側方には管状の水銀ランプ(照射手段)14が配置されている。水銀ランプ14はビームスプリッタ12に向けて光を照射する。
【0016】ここで、水銀ランプ14は、図3に示すように紫外帯域と可視帯域とにスペクトルを有する光を出射することができる。また、ビームスプリッタ12の下方にはビームスプリッタ(光分岐手段)13が配置されている。ビームスプリッタ13は上方から入射する可視光の約50%を透過させると共に約50%を反射させるように機能する。
【0017】ビームスプリッタ13の側方には、ビームスプリッタ13で反射した光を入射させる円盤状の紫外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)16が配置されている。図4に示すように紫外カットフィルタ16は紫外帯域の光を遮断して可視帯域の光のみを通過させるように機能する。さらに紫外カットフィルタ16の後方には、紫外カットフィルタ16を通過した可視光を入射させてこの可視光の光量を検出するフォトセンサ(第2の検出手段)18が配置されている。
【0018】また、ビームスプリッタ13の下方には、ビームスプリッタ13を透過した光を入射させる円盤状の紫外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)15が配置されている。図5に示すように紫外フィルタ15は紫外帯域の光のみを通過させるように機能する。さらに、紫外フィルタ15の下方には、紫外フィルタ15を通過した紫外光を入射させてこの紫外光の光量を検出するフォトセンサ(第1の検出手段)17が配置されている。ここで、フォトセンサ17,18は、図6に示すように紫外帯域から可視帯域までの分光感度を有している。
【0019】図2に示すように、フォトセンサ17,18で検出された各光量データは真偽判定部20に入力される。真偽判定部20は、フォトセンサ17,18から光量データとして出力された電流信号を各々増幅し、且つ電圧信号に変換させる増幅器21,22と、増幅器21,22から出力された2つの電圧信号の差を取って、光量データの補正を行う差動増幅器(演算手段)23とを備えている。さらに、真偽判定部20は、差動増幅器23から出力された電圧信号を入力して、所定レベル以上になると出力を反転させるコンパレータ24と、コンパレータ24の出力信号を入力して、この出力信号に基づいて紙幣の真偽を判定する識別回路25とを備えている。なお、コンパレータ24と識別回路25とで真偽識別手段Bを構成する。
【0020】次に、本実施形態に係る紙葉類真偽識別装置1の動作について、図1及び図2を用いて説明する。
【0021】紙葉類真偽識別装置1は紙幣搬送路(図示せず)の途中に組み込まれており、紙幣搬送路の搬送面と遮光ケース10の上面10aとが一致するように紙葉類真偽識別装置1が配置されている。そして、紙幣搬送路を移動する紙幣(被検査紙葉類)Aが遮光ケース10の上面10aに到達して、紙幣Aが読取窓11を覆った際に、紙葉類真偽識別装置1は識別動作を開始する。
【0022】即ち、紙幣Aが読取窓11の上に到達したことが、読取窓11の手前に配置された到達検出センサ(図示せず)によって検出されて、到達検出センサからの検出信号を受けた水銀ランプ14は光を出射する。水銀ランプ14から出射した光はビームスプリッタ12で反射して、読取窓11に向けて直進する。読取窓11上には紙幣Aが存在するので、ビームスプリッタ12で反射した光は紙幣Aの表面で反射する。
【0023】反射光は下方に直進して、ビームスプリッタ12を透過する。ビームスプリッタ12を透過した光はビームスプリッタ13に入射して2方向に分岐する。即ち、ビームスプリッタ13に入射した光の約半分がビームスプリッタ13を透過して下方に直進し、残りの光がビームスプリッタ13で反射して側方に直進する。ビームスプリッタ13を透過した光は紫外フィルタ15に入射して、紫外帯域(特定波長帯域)の光のみが紫外フィルタ15を通過する。そして、紫外フィルタ15を通過した紫外光がフォトセンサ17に入射して、この紫外光の光量がフォトセンサ17で検出される。
【0024】図7に示すように、真正紙幣は紫外帯域(特定波長帯域)の光反射率が高い特殊インクで作成されている。これに対して、偽造紙幣は紫外帯域の光反射率が低い一般のインクで作成されている。このため、紙幣Aが真正紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における紫外帯域の光量が多く、これらの紫外帯域の光が紫外フィルタ15を通過してフォトセンサ17に入射する。よって、フォトセンサ17で検出される入射光の光量は多い。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における紫外帯域の光量が少なく、多くの光が紫外フィルタ15で反射する。よって、フォトセンサ17で検出される入射光の光量は少ない。
【0025】一方、ビームスプリッタ13で反射した光は紫外カットフィルタ16に入射して、可視帯域(他の波長帯域)の光のみが紫外カットフィルタ16を通過する。そして、紫外カットフィルタ16を通過した可視光がフォトセンサ18に入射して、この可視光の光量がフォトセンサ18で検出される。特殊インクと一般のインクとで可視帯域における光反射率はほぼ等しいので(図7参照)、紙幣Aが真正紙幣と偽造紙幣のいずれであっても、フォトセンサ18で検出される光量はほぼ同じである。
【0026】フォトセンサ17で入射光の光量が検出されると、この光量データ(特定波長帯域における光量データ)に対応した電流信号がフォトセンサ17から出力される。そして、フォトセンサ17から出力された電流信号は増幅器22に入力されて、この電流信号は増幅され、且つ電圧信号に変換される。同様に、フォトセンサ18で入射光の光量が検出されると、この光量データ(他の波長帯域における光量データ)に対応した電流信号がフォトセンサ18から出力される。そして、フォトセンサ18から出力された電流信号は増幅器21に入力されて、この電流信号は増幅される。
【0027】増幅器21,22は、紙幣Aが真正紙幣の場合に出力レベルが同じになるように増幅度が調整されている。その結果、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21の出力と増幅器22の出力とは同一レベルになる。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、真正紙幣と比較して、フォトセンサ17で検出される光量が少なく、フォトセンサ18で検出される光量が同じであるため、増幅器22の出力は増幅器21の出力よりも低くなる。
【0028】増幅器21,22から出力された電圧信号は差動増幅器23に入力される。差動増幅器23では、増幅器22から入力された電圧信号(特定波長帯域における光量データ)を増幅器21から入力された電圧信号(他の波長帯域における光量データ)で減算する。そして、差動増幅器23から出力された電圧信号(補正信号)はコンパレータ24に入力されて、コンパレータ24ではこの電圧信号が所定レベル以上になると出力を反転させる。コンパレータ24からの出力信号は識別回路25に入力されて、識別回路25ではこの出力信号のレベルに基づいて紙幣Aの真偽を判定する。
【0029】即ち、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが同じなので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは低くなる。このローレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からローレベルの信号が出力される。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが異なるので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは高くなる。このハイレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からハイレベルの信号が出力される。
【0030】そして、識別回路25ではコンパレータ24からの入力信号がローレベルの場合に紙幣Aが真正紙幣であると判定し、コンパレータ24からの入力信号がハイレベルの場合に紙幣Aが偽造紙幣であると判定する。このような判定によって、紙幣Aの真偽を正確に識別することができる。
【0031】ところで、手垢などで汚れていたり、特殊インクの質が悪いために紫外光の反射率が低い真正紙幣は、紫外光の反射光量が偽造紙幣とあまり変わらないために識別精度が悪い。そこで、紙葉類真偽識別装置1では、可視から紫外までの波長帯域の光を紙幣に照射して、その反射光の紫外帯域(特定波長帯域)における光の光量と、可視帯域(他の波長帯域)における光の光量との差を取ることによって、紫外光の反射率が低下した真正紙幣に対して補正を行っている。
【0032】即ち、手垢などで汚れた真正紙幣や質の悪い特殊インクで印刷された真正紙幣は、通常の真正紙幣に比べて紫外帯域の光反射率が低いが、可視帯域の光反射率も紫外帯域の光反射率と同様の比率で低くなる。従って、紫外帯域の光の光量データと可視帯域の光の光量データとの差を取ることによって、光反射率低下による光量の減少分を互いの光量データで打ち消し合うことになり、光反射率低下の影響を除去することができる。このため、手垢などで汚れた紙幣や質の悪い特殊インクで印刷された紙幣であっても、通常の紙幣と同様に高い精度で真偽を識別することができる。
【0033】(第2の実施形態)図8は、本発明の第2の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置2を示す概略図である。この第2の実施形態が図2に示す第1の実施形態と異なるのは、(1) 水銀ランプ14の代わりにタングステン光源30が設けられている点と、(2) フォトセンサ17,18の代わりにフォトセンサ50,51が設けられている点と、(3) 紫外フィルタ15の代わりに赤外フィルタ40と、紫外カットフィルタ16の代わりに赤外カットフィルタ41が設けられている点と、(4) 赤外帯域でも光反射率が高い特殊黒インクで真正紙幣が作成されている点である。その他の構成については第1の実施形態と同一又は同等である。
【0034】ここで、図9に示すように、タングステン光源(照射手段)30は可視から赤外までの波長帯域の光を照射することができる。また、図10に示すように、フォトセンサ40,41は可視から赤外までの波長帯域に分光感度を有している。さらに、図11に示すように、真正紙幣は、赤外帯域(特定波長帯域)の光反射率が一般の黒インクの光反射率に比べて高い特殊黒インクで作成されており、偽造紙幣は一般の黒インクで作成されている。このため、紙幣Aが真正紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における赤外帯域の光量が多い。また、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における赤外帯域の光量が少ない。なお、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0035】図8に示すように、紙幣Aの表面で反射した光は、ビームスプリッタ12を透過してビームスプリッタ13に入射する。そして、ビームスプリッタ13に入射した光は、ビームスプリッタ13を透過或いは反射して2方向に分岐する。ビームスプリッタ13を透過した光は赤外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)40に入射する。赤外フィルタ40は、図12に示すように赤外帯域(特定波長帯域)の光のみを透過させる特性を有している。このため、赤外帯域の光のみが赤外フィルタ40を通過してフォトセンサ(第1の検出手段)50に入射し、この赤外帯域の光の光量がフォトセンサ50で検出される。上述したように、紙幣Aが真正紙幣の場合には赤外帯域の光量が多いので、フォトセンサ50で検出される光量は多い。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には赤外帯域の光量が少ないので、フォトセンサ50で検出される光量は少ない。
【0036】また、ビームスプリッタ13で反射した光は赤外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)41に入射する。赤外カットフィルタ41は、図13に示すように赤外帯域(特定波長帯域)の光を遮断させる特性を有している。このため、可視帯域(他の波長帯域)の光のみが赤外カットフィルタ41を通過してフォトセンサ(第2の検出手段)51に入射し、この可視帯域の光の光量がフォトセンサ51で検出される。ここで、特殊インクと一般のインクとで可視帯域における光反射率はほぼ等しいので(図11参照)、紙幣Aが真正紙幣と偽造紙幣のいずれであっても、フォトセンサ51で検出される光量はほぼ同じである。
【0037】フォトセンサ50,51で入射光の光量が検出されると、これらの光量データに対応した電流信号がフォトセンサ50,51から出力される。そして、フォトセンサ50,51から出力された電流信号は増幅器21,22に入力されて、これらの電流信号は増幅される。増幅器21,22は、紙幣Aが偽造紙幣の場合に出力レベルが同じになるように増幅度が調整されている。その結果、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21の出力と増幅器22の出力とは同一レベルになる。これに対して、紙幣Aが真正紙幣の場合には、フォトセンサ40で検出される光量が多く、フォトセンサ41で検出される光量が同じであるために、増幅器22の出力は増幅器21の出力よりも高くなる。
【0038】増幅器21,22から出力された電圧信号は差動増幅器23に入力される。差動増幅器23では、増幅器22から入力された電圧信号(特定波長帯域における光量データ)を増幅器21から入力された電圧信号(他の波長帯域における光量データ)で減算する。そして、差動増幅器23から出力された電圧信号(補正信号)はコンパレータ24に入力されて、コンパレータ24ではこの電圧信号が所定レベル以上になると出力を反転させる。コンパレータ24からの出力信号は識別回路25に入力されて、識別回路25ではこの出力信号のレベルに基づいて紙幣の真偽を判定する。
【0039】即ち、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが異なるので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは高くなる。このハイレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からハイレベルの信号が出力される。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが同じなので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは低くなる。このローレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からローレベルの信号が出力される。
【0040】そして、識別回路25では、コンパレータ24からの入力信号がハイレベルの場合に紙幣Aが真正紙幣であると判定し、コンパレータ24からの入力信号がローレベルの場合に紙幣Aが偽造紙幣であると判定する。このような判定によって、紙幣Aの真偽を正確に識別することができる。
【0041】このように紙葉類真偽識別装置2では、赤外帯域(特定波長帯域)における光の光量と、可視帯域(他の波長帯域)における光の光量との差を取って、赤外光の反射率が低下した紙幣に対して補正を行っている。このため、手垢で汚れるなどして赤外光の反射率が低下した紙幣であっても、通常の紙幣と同様に高い精度で真偽を識別することができる。
【0042】なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において、例えば以下のように変更することも可能である。
【0043】(1)上記実施形態では、紫外帯域或いは赤外帯域の光反射率が高い特殊インクで印刷した真正紙幣を識別対象としているが、紫外帯域の光反射率が一般の用紙と異なる特殊用紙を用いた真正紙幣を識別対象としてもよい。また、赤外帯域の光反射率が一般の用紙と異なる特殊用紙を用いた真正紙幣を識別対象としてもよい。
【0044】(2)上記実施形態では、差動増幅器23を用いて2つの電圧信号の差に基づいて光量データの補正を行っているが、差動増幅器23の代わりに既知の回路を用いて、2つの電圧信号の比に基づいて光量データの補正を行ってもよい。
【0045】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の紙葉類真偽識別装置は、被検査紙葉類で反射した光を入射して、この入射光の特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、第1の波長選択性フィルタを通過した光の光量を検出する第1の検出手段と、被検査紙葉類で反射した光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、第2の波長選択性フィルタを通過した光の光量を検出する第2の検出手段と、第1の検出手段で検出した光量データから第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、演算手段で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えている。
【0046】このように真偽識別手段では、補正データを用いて被検査紙葉類の真偽が判定されるので、汚れ等で反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を識別することができる。即ち、反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類の特性劣化の程度は、特定波長帯域と他の波長帯域とでほぼ同じである。従って、特定波長帯域における光量データを他の波長帯域における光量データを用いて補正することにより、特性劣化の影響を除去することができる。このため、反射特性或いは吸収特性の優劣に関わらず高い精度で紙葉類の真偽を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す概略図である。
【図3】水銀ランプの発光特性を示す図である。
【図4】紫外カットフィルタの光透過特性を示す図である。
【図5】紫外フィルタの光透過特性を示す図である。
【図6】フォトセンサの分光感度を示す図である。
【図7】特殊インクと一般のインクとの分光反射特性を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す概略図である。
【図9】タングステン光源の発光特性を示す図である。
【図10】フォトセンサの分光感度を示す図である。
【図11】特殊インクと一般のインクとの分光反射特性を示す図である。
【図12】赤外フィルタの光透過特性を示す図である。
【図13】赤外カットフィルタの光透過特性を示す図である。
【符号の説明】
1,2…紙葉類真偽識別装置、13…ビームスプリッタ(光分岐手段)、14…水銀ランプ(照射手段)、15…紫外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)、16…紫外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)、17,50…フォトセンサ(第1の検出手段)、18,51…フォトセンサ(第2の検出手段)、20…真偽判定部、23…差動増幅器(演算手段)、25…識別回路、30…タングステン光源(照射手段)、40…赤外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)、41…赤外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)、A…紙幣(被検査紙葉類)、B…真偽識別手段。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙幣、印紙、有価証券などの紙葉類の真偽を識別する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、紙幣、印紙、有価証券などの紙葉類には、偽造品を検出するための特別な処理が施されている。即ち、可視光以外の特別な波長の光に対して反射或いは吸収する特殊なインクを用いて紙葉類を印刷したり、可視光以外の特別な波長の光に対して反射或いは吸収する特殊な染料を用いて紙葉類の用紙を作成したりしている。
【0003】そして、このような特別な処理が施された紙葉類の真偽を識別する装置として、紫外線或いは赤外線のみを紙葉類に照射する光照射部と、この照射による反射光の光量を検出して紙葉類の真偽を判定する真偽判定部とを備えた紙葉類真偽識別装置が従来より存在する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の紙葉類真偽識別装置においては、紙葉類が汚れていると光照射部から照射された光は紙葉類の表面で十分に反射或いは吸収されないため、真偽判定部で紙葉類の真偽を正確に判定することは難しかった。また、紙葉類の可視光以外の特別な波長の光に対する反射感度或いは吸収感度が悪い場合には、真偽判定部で検出できる反射光の光量は真正品と偽造品とで僅かしか違わないため、真偽判定部で紙葉類の真偽を正確に判定することは難しかった。
【0005】本発明は、このような問題を解決し、汚れ等によって反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を判定できる紙葉類真偽識別装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の紙葉類真偽識別装置は、特定波長帯域の光反射率が他の波長帯域の光反射率と異なる特殊インクで印刷された被検査紙葉類の真偽を識別する装置において、特定波長帯域の波長成分と他の波長帯域の波長成分とを有する光を被検査紙葉類に照射する照射手段と、被検査紙葉類で反射した光を2方向に分岐させる光分岐手段と、光分岐手段で分岐した一方の光を入射して、この入射光の特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、光分岐手段で分岐した他方の光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、第1の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第1の検出手段と、第2の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第2の検出手段と、第1の検出手段で検出した光量データから第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、演算手段で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えることを特徴とする。
【0007】このような構成を有する本発明の紙葉類真偽識別装置によれば、照射手段から出射した光は被検査紙葉類の表面で反射して光分岐手段に入射する。光分岐手段に入射した光は2方向に分岐し、分岐した一方の光が第1の波長選択性フィルタを通過して特定波長帯域の光となる。そして、この特定波長帯域の光が第1の検出手段に入射して、第1の検出手段で特定波長帯域の光の光量が検出される。
【0008】また、光分岐手段で分岐した他方の光は、第2の波長選択性フィルタを通過して他の波長帯域の光となる。そして、この他の波長帯域の光が第2の検出手段に入射して、第2の検出手段で他の波長帯域の光の光量が検出される。
【0009】このように、被検査紙葉類で反射した光についての特定波長帯域における光量を第1の検出手段で検出し、他の波長帯域における光量を第2の検出手段で検出することにより、2つの波長帯域における光量データが同時に得られる。
【0010】第1及び第2の検出手段で検出した光量データは演算手段に与えられて、特定波長帯域における光量データが他の波長帯域における光量データを用いて補正される。そして、演算手段で得られた補正データは真偽識別手段に与えられて、この補正データに基づいて被検査紙葉類の真偽が判定される。このように補正データを用いて被検査紙葉類の真偽が判定されるので、汚れ等で反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を判定することができる。
【0011】即ち、反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類の特性劣化の程度は、特定波長帯域と他の波長帯域のでほぼ同じである。従って、特定波長帯域における光量データを他の波長帯域における光量データを用いて補正することにより、特性劣化の影響を除去することができる。このため、反射特性或いは吸収特性の優劣に関わらず高い精度で紙葉類の真偽を識別することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置1を示す斜視図である。また図2は、紙葉類真偽識別装置1を示す概略図である。紙葉類真偽識別装置1は、紙幣を高速処理する銀行用整理機の搬送部に組み込まれて、紙幣の真偽を瞬時に判定する装置である。なお、紙葉類真偽識別装置1は、紙幣以外にも印紙、有価証券、その他の紙葉類の真偽を識別することができる。
【0014】図1に示すように、紙葉類真偽識別装置1は上面10aに読取窓11が設けられた直方体形状の遮光ケース10を備えている。この遮光ケース10の側部には、平板状の側面板10bがネジによって固定されている。遮光ケース10の内部には、ビームスプリッタ12,13と、水銀ランプ14と、紫外フィルタ15と、紫外カットフィルタ16と、フォトセンサ17,18とが設けられている。
【0015】次に、遮光ケース10の内部の各構成部材を具体的に説明する。まず、読取窓11の下方にはビームスプリッタ12が配置されている。ビームスプリッタ12は側方からの入射光をほぼ50%反射させると共に、上方からの入射光をほぼ50%透過させるように機能する。このビームスプリッタ12の側方には管状の水銀ランプ(照射手段)14が配置されている。水銀ランプ14はビームスプリッタ12に向けて光を照射する。
【0016】ここで、水銀ランプ14は、図3に示すように紫外帯域と可視帯域とにスペクトルを有する光を出射することができる。また、ビームスプリッタ12の下方にはビームスプリッタ(光分岐手段)13が配置されている。ビームスプリッタ13は上方から入射する可視光の約50%を透過させると共に約50%を反射させるように機能する。
【0017】ビームスプリッタ13の側方には、ビームスプリッタ13で反射した光を入射させる円盤状の紫外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)16が配置されている。図4に示すように紫外カットフィルタ16は紫外帯域の光を遮断して可視帯域の光のみを通過させるように機能する。さらに紫外カットフィルタ16の後方には、紫外カットフィルタ16を通過した可視光を入射させてこの可視光の光量を検出するフォトセンサ(第2の検出手段)18が配置されている。
【0018】また、ビームスプリッタ13の下方には、ビームスプリッタ13を透過した光を入射させる円盤状の紫外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)15が配置されている。図5に示すように紫外フィルタ15は紫外帯域の光のみを通過させるように機能する。さらに、紫外フィルタ15の下方には、紫外フィルタ15を通過した紫外光を入射させてこの紫外光の光量を検出するフォトセンサ(第1の検出手段)17が配置されている。ここで、フォトセンサ17,18は、図6に示すように紫外帯域から可視帯域までの分光感度を有している。
【0019】図2に示すように、フォトセンサ17,18で検出された各光量データは真偽判定部20に入力される。真偽判定部20は、フォトセンサ17,18から光量データとして出力された電流信号を各々増幅し、且つ電圧信号に変換させる増幅器21,22と、増幅器21,22から出力された2つの電圧信号の差を取って、光量データの補正を行う差動増幅器(演算手段)23とを備えている。さらに、真偽判定部20は、差動増幅器23から出力された電圧信号を入力して、所定レベル以上になると出力を反転させるコンパレータ24と、コンパレータ24の出力信号を入力して、この出力信号に基づいて紙幣の真偽を判定する識別回路25とを備えている。なお、コンパレータ24と識別回路25とで真偽識別手段Bを構成する。
【0020】次に、本実施形態に係る紙葉類真偽識別装置1の動作について、図1及び図2を用いて説明する。
【0021】紙葉類真偽識別装置1は紙幣搬送路(図示せず)の途中に組み込まれており、紙幣搬送路の搬送面と遮光ケース10の上面10aとが一致するように紙葉類真偽識別装置1が配置されている。そして、紙幣搬送路を移動する紙幣(被検査紙葉類)Aが遮光ケース10の上面10aに到達して、紙幣Aが読取窓11を覆った際に、紙葉類真偽識別装置1は識別動作を開始する。
【0022】即ち、紙幣Aが読取窓11の上に到達したことが、読取窓11の手前に配置された到達検出センサ(図示せず)によって検出されて、到達検出センサからの検出信号を受けた水銀ランプ14は光を出射する。水銀ランプ14から出射した光はビームスプリッタ12で反射して、読取窓11に向けて直進する。読取窓11上には紙幣Aが存在するので、ビームスプリッタ12で反射した光は紙幣Aの表面で反射する。
【0023】反射光は下方に直進して、ビームスプリッタ12を透過する。ビームスプリッタ12を透過した光はビームスプリッタ13に入射して2方向に分岐する。即ち、ビームスプリッタ13に入射した光の約半分がビームスプリッタ13を透過して下方に直進し、残りの光がビームスプリッタ13で反射して側方に直進する。ビームスプリッタ13を透過した光は紫外フィルタ15に入射して、紫外帯域(特定波長帯域)の光のみが紫外フィルタ15を通過する。そして、紫外フィルタ15を通過した紫外光がフォトセンサ17に入射して、この紫外光の光量がフォトセンサ17で検出される。
【0024】図7に示すように、真正紙幣は紫外帯域(特定波長帯域)の光反射率が高い特殊インクで作成されている。これに対して、偽造紙幣は紫外帯域の光反射率が低い一般のインクで作成されている。このため、紙幣Aが真正紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における紫外帯域の光量が多く、これらの紫外帯域の光が紫外フィルタ15を通過してフォトセンサ17に入射する。よって、フォトセンサ17で検出される入射光の光量は多い。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における紫外帯域の光量が少なく、多くの光が紫外フィルタ15で反射する。よって、フォトセンサ17で検出される入射光の光量は少ない。
【0025】一方、ビームスプリッタ13で反射した光は紫外カットフィルタ16に入射して、可視帯域(他の波長帯域)の光のみが紫外カットフィルタ16を通過する。そして、紫外カットフィルタ16を通過した可視光がフォトセンサ18に入射して、この可視光の光量がフォトセンサ18で検出される。特殊インクと一般のインクとで可視帯域における光反射率はほぼ等しいので(図7参照)、紙幣Aが真正紙幣と偽造紙幣のいずれであっても、フォトセンサ18で検出される光量はほぼ同じである。
【0026】フォトセンサ17で入射光の光量が検出されると、この光量データ(特定波長帯域における光量データ)に対応した電流信号がフォトセンサ17から出力される。そして、フォトセンサ17から出力された電流信号は増幅器22に入力されて、この電流信号は増幅され、且つ電圧信号に変換される。同様に、フォトセンサ18で入射光の光量が検出されると、この光量データ(他の波長帯域における光量データ)に対応した電流信号がフォトセンサ18から出力される。そして、フォトセンサ18から出力された電流信号は増幅器21に入力されて、この電流信号は増幅される。
【0027】増幅器21,22は、紙幣Aが真正紙幣の場合に出力レベルが同じになるように増幅度が調整されている。その結果、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21の出力と増幅器22の出力とは同一レベルになる。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、真正紙幣と比較して、フォトセンサ17で検出される光量が少なく、フォトセンサ18で検出される光量が同じであるため、増幅器22の出力は増幅器21の出力よりも低くなる。
【0028】増幅器21,22から出力された電圧信号は差動増幅器23に入力される。差動増幅器23では、増幅器22から入力された電圧信号(特定波長帯域における光量データ)を増幅器21から入力された電圧信号(他の波長帯域における光量データ)で減算する。そして、差動増幅器23から出力された電圧信号(補正信号)はコンパレータ24に入力されて、コンパレータ24ではこの電圧信号が所定レベル以上になると出力を反転させる。コンパレータ24からの出力信号は識別回路25に入力されて、識別回路25ではこの出力信号のレベルに基づいて紙幣Aの真偽を判定する。
【0029】即ち、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが同じなので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは低くなる。このローレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からローレベルの信号が出力される。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが異なるので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは高くなる。このハイレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からハイレベルの信号が出力される。
【0030】そして、識別回路25ではコンパレータ24からの入力信号がローレベルの場合に紙幣Aが真正紙幣であると判定し、コンパレータ24からの入力信号がハイレベルの場合に紙幣Aが偽造紙幣であると判定する。このような判定によって、紙幣Aの真偽を正確に識別することができる。
【0031】ところで、手垢などで汚れていたり、特殊インクの質が悪いために紫外光の反射率が低い真正紙幣は、紫外光の反射光量が偽造紙幣とあまり変わらないために識別精度が悪い。そこで、紙葉類真偽識別装置1では、可視から紫外までの波長帯域の光を紙幣に照射して、その反射光の紫外帯域(特定波長帯域)における光の光量と、可視帯域(他の波長帯域)における光の光量との差を取ることによって、紫外光の反射率が低下した真正紙幣に対して補正を行っている。
【0032】即ち、手垢などで汚れた真正紙幣や質の悪い特殊インクで印刷された真正紙幣は、通常の真正紙幣に比べて紫外帯域の光反射率が低いが、可視帯域の光反射率も紫外帯域の光反射率と同様の比率で低くなる。従って、紫外帯域の光の光量データと可視帯域の光の光量データとの差を取ることによって、光反射率低下による光量の減少分を互いの光量データで打ち消し合うことになり、光反射率低下の影響を除去することができる。このため、手垢などで汚れた紙幣や質の悪い特殊インクで印刷された紙幣であっても、通常の紙幣と同様に高い精度で真偽を識別することができる。
【0033】(第2の実施形態)図8は、本発明の第2の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置2を示す概略図である。この第2の実施形態が図2に示す第1の実施形態と異なるのは、(1) 水銀ランプ14の代わりにタングステン光源30が設けられている点と、(2) フォトセンサ17,18の代わりにフォトセンサ50,51が設けられている点と、(3) 紫外フィルタ15の代わりに赤外フィルタ40と、紫外カットフィルタ16の代わりに赤外カットフィルタ41が設けられている点と、(4) 赤外帯域でも光反射率が高い特殊黒インクで真正紙幣が作成されている点である。その他の構成については第1の実施形態と同一又は同等である。
【0034】ここで、図9に示すように、タングステン光源(照射手段)30は可視から赤外までの波長帯域の光を照射することができる。また、図10に示すように、フォトセンサ40,41は可視から赤外までの波長帯域に分光感度を有している。さらに、図11に示すように、真正紙幣は、赤外帯域(特定波長帯域)の光反射率が一般の黒インクの光反射率に比べて高い特殊黒インクで作成されており、偽造紙幣は一般の黒インクで作成されている。このため、紙幣Aが真正紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における赤外帯域の光量が多い。また、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、紙幣Aの表面で反射した反射光における赤外帯域の光量が少ない。なお、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0035】図8に示すように、紙幣Aの表面で反射した光は、ビームスプリッタ12を透過してビームスプリッタ13に入射する。そして、ビームスプリッタ13に入射した光は、ビームスプリッタ13を透過或いは反射して2方向に分岐する。ビームスプリッタ13を透過した光は赤外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)40に入射する。赤外フィルタ40は、図12に示すように赤外帯域(特定波長帯域)の光のみを透過させる特性を有している。このため、赤外帯域の光のみが赤外フィルタ40を通過してフォトセンサ(第1の検出手段)50に入射し、この赤外帯域の光の光量がフォトセンサ50で検出される。上述したように、紙幣Aが真正紙幣の場合には赤外帯域の光量が多いので、フォトセンサ50で検出される光量は多い。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には赤外帯域の光量が少ないので、フォトセンサ50で検出される光量は少ない。
【0036】また、ビームスプリッタ13で反射した光は赤外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)41に入射する。赤外カットフィルタ41は、図13に示すように赤外帯域(特定波長帯域)の光を遮断させる特性を有している。このため、可視帯域(他の波長帯域)の光のみが赤外カットフィルタ41を通過してフォトセンサ(第2の検出手段)51に入射し、この可視帯域の光の光量がフォトセンサ51で検出される。ここで、特殊インクと一般のインクとで可視帯域における光反射率はほぼ等しいので(図11参照)、紙幣Aが真正紙幣と偽造紙幣のいずれであっても、フォトセンサ51で検出される光量はほぼ同じである。
【0037】フォトセンサ50,51で入射光の光量が検出されると、これらの光量データに対応した電流信号がフォトセンサ50,51から出力される。そして、フォトセンサ50,51から出力された電流信号は増幅器21,22に入力されて、これらの電流信号は増幅される。増幅器21,22は、紙幣Aが偽造紙幣の場合に出力レベルが同じになるように増幅度が調整されている。その結果、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21の出力と増幅器22の出力とは同一レベルになる。これに対して、紙幣Aが真正紙幣の場合には、フォトセンサ40で検出される光量が多く、フォトセンサ41で検出される光量が同じであるために、増幅器22の出力は増幅器21の出力よりも高くなる。
【0038】増幅器21,22から出力された電圧信号は差動増幅器23に入力される。差動増幅器23では、増幅器22から入力された電圧信号(特定波長帯域における光量データ)を増幅器21から入力された電圧信号(他の波長帯域における光量データ)で減算する。そして、差動増幅器23から出力された電圧信号(補正信号)はコンパレータ24に入力されて、コンパレータ24ではこの電圧信号が所定レベル以上になると出力を反転させる。コンパレータ24からの出力信号は識別回路25に入力されて、識別回路25ではこの出力信号のレベルに基づいて紙幣の真偽を判定する。
【0039】即ち、紙幣Aが真正紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが異なるので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは高くなる。このハイレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からハイレベルの信号が出力される。これに対して、紙幣Aが偽造紙幣の場合には、増幅器21,22から差動増幅器23に入力された電圧信号のレベルが同じなので、差動増幅器23から出力される電圧信号のレベルは低くなる。このローレベルの電圧信号がコンパレータ24に与えられ、コンパレータ24からローレベルの信号が出力される。
【0040】そして、識別回路25では、コンパレータ24からの入力信号がハイレベルの場合に紙幣Aが真正紙幣であると判定し、コンパレータ24からの入力信号がローレベルの場合に紙幣Aが偽造紙幣であると判定する。このような判定によって、紙幣Aの真偽を正確に識別することができる。
【0041】このように紙葉類真偽識別装置2では、赤外帯域(特定波長帯域)における光の光量と、可視帯域(他の波長帯域)における光の光量との差を取って、赤外光の反射率が低下した紙幣に対して補正を行っている。このため、手垢で汚れるなどして赤外光の反射率が低下した紙幣であっても、通常の紙幣と同様に高い精度で真偽を識別することができる。
【0042】なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において、例えば以下のように変更することも可能である。
【0043】(1)上記実施形態では、紫外帯域或いは赤外帯域の光反射率が高い特殊インクで印刷した真正紙幣を識別対象としているが、紫外帯域の光反射率が一般の用紙と異なる特殊用紙を用いた真正紙幣を識別対象としてもよい。また、赤外帯域の光反射率が一般の用紙と異なる特殊用紙を用いた真正紙幣を識別対象としてもよい。
【0044】(2)上記実施形態では、差動増幅器23を用いて2つの電圧信号の差に基づいて光量データの補正を行っているが、差動増幅器23の代わりに既知の回路を用いて、2つの電圧信号の比に基づいて光量データの補正を行ってもよい。
【0045】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の紙葉類真偽識別装置は、被検査紙葉類で反射した光を入射して、この入射光の特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、第1の波長選択性フィルタを通過した光の光量を検出する第1の検出手段と、被検査紙葉類で反射した光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、第2の波長選択性フィルタを通過した光の光量を検出する第2の検出手段と、第1の検出手段で検出した光量データから第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、演算手段で求めた補正データに基づいて、被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えている。
【0046】このように真偽識別手段では、補正データを用いて被検査紙葉類の真偽が判定されるので、汚れ等で反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類であっても高い精度で真偽を識別することができる。即ち、反射特性或いは吸収特性が悪い紙葉類の特性劣化の程度は、特定波長帯域と他の波長帯域とでほぼ同じである。従って、特定波長帯域における光量データを他の波長帯域における光量データを用いて補正することにより、特性劣化の影響を除去することができる。このため、反射特性或いは吸収特性の優劣に関わらず高い精度で紙葉類の真偽を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す概略図である。
【図3】水銀ランプの発光特性を示す図である。
【図4】紫外カットフィルタの光透過特性を示す図である。
【図5】紫外フィルタの光透過特性を示す図である。
【図6】フォトセンサの分光感度を示す図である。
【図7】特殊インクと一般のインクとの分光反射特性を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る紙葉類真偽識別装置を示す概略図である。
【図9】タングステン光源の発光特性を示す図である。
【図10】フォトセンサの分光感度を示す図である。
【図11】特殊インクと一般のインクとの分光反射特性を示す図である。
【図12】赤外フィルタの光透過特性を示す図である。
【図13】赤外カットフィルタの光透過特性を示す図である。
【符号の説明】
1,2…紙葉類真偽識別装置、13…ビームスプリッタ(光分岐手段)、14…水銀ランプ(照射手段)、15…紫外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)、16…紫外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)、17,50…フォトセンサ(第1の検出手段)、18,51…フォトセンサ(第2の検出手段)、20…真偽判定部、23…差動増幅器(演算手段)、25…識別回路、30…タングステン光源(照射手段)、40…赤外フィルタ(第1の波長選択性フィルタ)、41…赤外カットフィルタ(第2の波長選択性フィルタ)、A…紙幣(被検査紙葉類)、B…真偽識別手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 特定波長帯域の光反射率が他の波長帯域の光反射率と異なる特殊インクで印刷された被検査紙葉類の真偽を識別する紙葉類真偽識別装置において、前記特定波長帯域の波長成分と前記他の波長帯域の波長成分とを有する光を被検査紙葉類に照射する照射手段と、前記被検査紙葉類で反射した光を2方向に分岐させる光分岐手段と、前記光分岐手段で分岐した一方の光を入射して、この入射光の前記特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、前記光分岐手段で分岐した他方の光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、前記第1の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第1の検出手段と、前記第2の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段で検出した光量データから前記第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、前記演算手段で求めた前記補正データに基づいて、前記被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えることを特徴とした紙葉類真偽識別装置。
【請求項1】 特定波長帯域の光反射率が他の波長帯域の光反射率と異なる特殊インクで印刷された被検査紙葉類の真偽を識別する紙葉類真偽識別装置において、前記特定波長帯域の波長成分と前記他の波長帯域の波長成分とを有する光を被検査紙葉類に照射する照射手段と、前記被検査紙葉類で反射した光を2方向に分岐させる光分岐手段と、前記光分岐手段で分岐した一方の光を入射して、この入射光の前記特定波長帯域の光のみを通過させる第1の波長選択性フィルタと、前記光分岐手段で分岐した他方の光を入射して、この入射光の他の波長帯域の光のみを通過させる第2の波長選択性フィルタと、前記第1の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第1の検出手段と、前記第2の波長選択性フィルタを通過した光を入射して、この入射光の光量を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段で検出した光量データから前記第2の検出手段で検出した光量データを減算して補正データを求める演算手段と、前記演算手段で求めた前記補正データに基づいて、前記被検査紙葉類の真偽を識別する真偽識別手段とを備えることを特徴とした紙葉類真偽識別装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図13】
【公開番号】特開平9−231436
【公開日】平成9年(1997)9月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−40013
【出願日】平成8年(1996)2月27日
【出願人】(000001225)株式会社コパル (755)
【公開日】平成9年(1997)9月5日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)2月27日
【出願人】(000001225)株式会社コパル (755)
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