紙葉類認識装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流通媒体である紙幣や有価証券等の各種紙葉類からそのイメージを読み取って、券種あるいは真偽を判別する紙葉類認識装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紙幣、証券、商品券のような紙葉類を取り扱う、両替機、金融自動預払機、券売機等の機械には、取り扱うべき紙葉類の券種の判別あるいは真偽の判別を行う紙葉類認識装置が組み込まれている。この紙葉類認識装置では、券の模様、図形の光学的な反射/透過パタンあるいは磁気的な反射パタンをセンサまたはイメージリーダにより読み取り、このパタンを多数の画素の集合体からなる画像データとして電気信号に変換し、この画像データを構成する多数の画素の情報に基づいて、券種あるいは真偽の判別を行う。
【0003】ところで、紙葉類の真偽の判別では、高解像度の画像データを得て判別精度を高めることが理想である。しかしながら、解像度を高くする程、画像データを構成する画素の数は増し、この多数の画素情報についての処理時間が増大する。これに対し、一般の利用者にとっては、この処理時間は短いほど利便性が高まる。
【0004】このような判別精度を高めるための高解像度化と、利便性を高めるための高速処理化との相反する要求を満たす従来技術が、手島昌一および嘉数侑昇の両氏により、「ニューラルネットワークを用いた紙幣識別に関する研究−最適センシングライン配置問題−」として、情報処理学会第46回(平成5年前期)全国大会、予稿集、2C-2に開示されている。この従来技術による紙幣識別では、紙幣の搬送方向と直角なライン状領域をセンシングラインとして、紙幣の汚れあるいは傷等による付加雑音の少ないライン位置を求め、付加雑音の少ない予め特定された所定のセンシングライン位置の画素情報に基づいて、識別が行われる。従って、この従来技術によれば、判別精度を高めるために画像データの解像度を高めても、画像データの全ての画素について識別処理を施す必要はなく、判別作業の高精度化および高速処理化が達成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のような従来の技術では、紙幣のセンシングライン位置が固定的であることから、この帯状に連続するセンシングライン位置を試行錯誤的に探知することが可能である。このため、この探知したセンシングライン位置にのみ真券の対応する帯状部分を張り付けた偽造券が作られると、この偽造券の使用行使を排除することはできない。そのため、このような偽造券の使用を拒否し得るより安全性に優れた紙葉類認識装置の出現が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、基本的には、画像データを構成する画素の内、処理すべき画素を固定的に特定することなく、紙葉類の券種あるいは真偽の判定毎に、異なる画素群を使用するという構想に立脚する。図1は、本発明の構想を示す図面であり、数字(1)〜(L)で示される各矩形は、それぞれ判別を受ける例えば紙幣のような複数の被検査体の画像データに対応する。各画像データ(1〜L)は、多数の画素に区画されており、図中に黒塗りで表された画素は選択された検査を受ける画素すなわち選択画素を示し、同様に白塗りで表された画素は非検査画素を示す。
【0007】各画像データ(1〜L)で示された白黒の選択画素パタンの変化から明らかなように、検査毎に検査を受ける選択画素すなわち黒塗りで表された画素の位置が変化する。この選択画素パタンの変化を図1に示すように(1)〜(L)の間で循環し、あるいは無秩序に選択することにより、検査毎に検査を受ける画素群のパタンを変えることができる。各選択画素パタンにおいて、選択画素である黒塗りの画素を画像データ内に均等に分散させることが望ましい。検査を受ける選択画素は、検査毎に異なり、しかも選択画素は帯状に単純に連続することがないことから、検査位置を探るために従来のような試行錯誤を繰り返しても、この検査部位を探知することは、実質上、不可能となる。
【0008】本発明は、前記した構想を実現するために、次の構成を採用する。
〈構成〉本発明の紙葉類認識装置は、被検査体である紙葉類の画像データを構成する画素群の画素情報の処理により、紙葉類の券種または真偽を判別する紙葉類認識装置であって、画素群から予め選択された複数の画素の組み合わせからなる複数の画素配列パタンをそれぞれ特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段と、選択画素リストから判別処理毎に異なる画素配列パタンを選択する画素配列パタン選択手段とを含み、選択された画素配列パタンの画素群の画素情報に基づいて、紙葉類の券種または真偽を判別することを特徴とする(請求項1に対応)。以下、各構成要素について説明する。
【0009】(選択画素リスト記憶手段)選択画素とは、被検査体の画像データを構成する、例えば画素番号によりそれぞれが特定される多数の画素の内、検査を受けるために予め選択された複数の画素である。このような例えば画素番号に基づいて選択された選択画素の組み合わせである画素群が、画素配列パタンである。一部の画素が複数の画素配列パタンで重複して選択されていても良い。複数の画素配列パタンにより、図1で示したような選択画素配列パタン群(1〜L)が構成され、このような複数の選択画素パタンを特定する選択画素リストについての情報が、選択画素リスト記憶手段に格納される。
【0010】(画素配列パタン選択手段)画素配列パタン選択手段とは、複数の選択画素パタンを特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段からある一つの選択画素パタンを特定する画素配列パタンについての情報を、例えば配列パタン番号として選択する手段である。
【0011】〈作用〉本発明の紙葉類認識装置では、画素配列パタン選択手段が選択画素リスト記憶手段に格納された複数の画素配列パタンからある一つの画素配列パタンを選択する。複数の画素配列パタンは、重複して選択された一部の画素を除き、全体的にはそれぞれ異なる画素の組み合わせからなる画素群を構成することから、選択された画素配列パタンに応じて、検査を受ける選択画素が異なる。そのため、検査を受ける選択画素は、検査毎に異なることから、検査部位を探るために従来のような試行錯誤を繰り返しても、この検査部位を探知することは、実質上、不可能となる。
【0012】本発明の紙葉類認識装置の具体的な構造として、紙葉類の真偽を判別するための基準データを格納する真偽判別基準データ記憶手段を設け、真偽判別装置として利用することが望ましい(請求項2に対応)。また、画素配列パタン選択手段による選択画素配列パタンの選択を乱数表に基づいて、無秩序に行うことが望ましい(請求項3に対応)。この乱数表に基づく選択画素パタンの無秩序な選択により、選択画素パタンの繰り返しの予測すなわち検査部位の予測を一層困難にすることができる。さらに、各選択画素配列パタンにより特定される画素すなわち各選択画素パタンの選択画素を画像データ内に均等に分散させることが望ましい(請求項4に対応)。選択画素を均等に分散させることにより、選択画素が帯状に単純に連続することを確実に防止することができることから、検査部位の探知のための試行錯誤に対して、より有効な対抗策となり得る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態について詳細に説明する。図2は、本発明に係る紙葉類認識装置のような、紙葉類取り扱い装置の一般的な紙葉類認識処理工程を全体的に示す概略図である。紙葉類認識工程では、先ず、被検査体である紙幣の平面画像がセンサのような画像読み取り手段により、画素の集合体である画像データとして電気信号に変換され、画像データを構成する各画素信号が入力情報として取り扱われる。この入力情報により得られる画像データは、前処理を受ける(ステップS1)。この前処理は、センサの特性あるいは劣化等による画像の濃淡補正であるシェーディング補正および被検査体の姿勢角度のような初期位置等の補正であるスキュー補正のような各種の補正処理に加えて、補正後の画像データに基づいてその特徴を抽出するための微分/積分等の特徴抽出処理が含まれる。
【0014】前処理により抽出された特徴データは、予め設定された券種判別用基準データとの比較により、券種判別処理を受ける(ステップS2)。この券種の判別を受けた画像データは、引き続いて、券種毎に用意された真偽判別用基準データから対応する券種の基準データとの比較を受け、これにより、真偽判別処理を受ける(ステップS3)。判定結果が「真」であれば、引き続く処理のためにその結果が出力され、他方、判定結果が「偽」であれば、被検査体である紙幣の受け入れが拒否される(ステップS4)。
【0015】本発明は、このような紙葉類認識工程の内、後述するように、券種判別処理(ステップS2)に適用することができるが、以下、本発明を真偽判別処理(ステップS3)に適用した例について説明する。図3は、本発明に係る紙葉類真偽判別装置10を概略的に示す構成図である。紙葉類真偽判別装置10は、被検査体である紙幣の画像データを構成する多数の画素信号を入力信号として取り扱う。図4は、この画像データの読み取り例を示す説明図である。図4では、例えば紙幣のような紙葉類11がその長辺11Aである長手方向へ搬送されて紙葉類真偽判別装置10に受け入れられるとき、画像読み取り手段(図示せず)により、搬送方向と直角な短辺11Bに平行な多数の読みとりラインに沿って画像データが読み取られる。この画像データは、図4の例では、1〜Nの画素番号iでそれぞれが特定されるN個の画素の集合体で構成されている。この画像データを構成する画素番号i(1〜N)の一連の画素の電気信号が、入力情報すなわち入力画素として、紙葉類真偽判別装置10に入力される。
【0016】再び図3を参照するに、紙葉類真偽判別装置10は、真偽判別のために必要なデータを格納するデータ記憶部12と、画素配列パタン選択部13と、画素処理部14と、画素処理結果蓄積部15と、真偽判定部16とを備える。データ記憶部12は、選択画素リスト記憶手段である選択画素リスト格納部分17と、各画素についての基準データを格納する画素基準データ格納部分18と、真偽判別基準データ格納部分19とを備える。
【0017】選択画素リスト格納部分17は、読み込んだ画像データの画素群から検査を受ける画素群を選択するために、例えば図1に示した選択画素配列パタンを各画素番号の列として記憶する。図5は、選択画素リスト記憶手段である選択画素リスト格納部分17に記憶された選択画素リストの一例を示す説明図である。選択画素リストは、画素配列パタン番号k(1〜L)で示されるパタン番号(SYN)列と、選択順位番号j(1〜M)で示される選択順位番号(SXN)行とで構成されており、両番号kjにより、選択画素番号Skjが決まる。配列パタン番号(1〜L)は、例えば図1に示した選択画素配列パタン(1〜L)に対応した画素配列パタン番号kを特定し、各パタン番号kにおけるパタン番号順位毎の選択画素番号(SPN)Skjは、図4に示した画素番号i(1〜N)に対応する。
【0018】例えば画素配列パタン番号kの数値1が選択されると、この画素配列パタン(k=1)では、画素番号iが5、11、23、......92の各画素を選択画素とする画素配列群が、選択される。また、画素配列パタン番号(k=2)が選択されると、画素番号iが2、27、81、......88の各画素を選択画素とする画素配列群が、選択される。各画素配列パタン番号kで特定される選択画素からなる画素配列群は、図1で示したように、各画素配列パタン毎で、画像データの全域にほぼ均等に分散されるように設定することが望ましく、特に選択画素が多数の連続する帯状部分となることを避けることが望ましい。これらは、偽造券を用いた試行錯誤による検査部位の探知を一層困難にする。
【0019】図3に示した画素配列パタン選択部13は、選択パタン番号カウンタ(k)を備える。この選択パタン番号カウンタ(k)は、設定された画素配列パタン番号kの初期値を読み込み、判定工程の繰り返し毎に、順次、画素配列パタン番号kを更新する。また、この画素配列パタン選択部13には、選択パタン番号カウンタ(k)で読み込まれたパタン番号kの画素配列パタンの画素番号iを順次読み込むために、選択順位を1からM迄、順次更新する選択順位番号カウンタ(j)と、パタン番号kおよび選択順位番号jで特定される画素番号Skjを読み込む画素カウンタ(i)とが設けられている。
【0020】画素配列パタン選択部13は、選択番号カウンタ(k)で読み込んだパタン番号kの画素列を、選択順位番号カウンタ(j)の更新に伴って、順次、対応する選択順位番号jの選択画素番号(SPN)Skjを画素カウンタ(i)に読み込み、これを順次画素処理部14に出力する。
【0021】判定処理のために選択された画素群の画素番号を受ける画素処理部14、画素処理結果蓄積部15、真偽判定部16は、これらの選択画素から得られる画素情報を、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19のデータと比較することにより、対象となっている被検査紙幣についての真偽を判別する。
【0022】この画素処理部14、画素処理結果蓄積部15、真偽判定部16の構成および作用、さらには、画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19に格納されるデータは、判定処理方式に応じて、従来におけると同様な機能部分およびデータを適用することができる。各種の判定方式の内、以下では、画素情報の1つである画像濃度が所定の範囲内にある画素の数の合計数を求め、その合計数が所定数に達しているか否により真偽を判定する方式を適用した例について、概略を説明する。
【0023】図6および図7は、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19にそれぞれ格納されるデータ例を示す説明図である。画素基準データ格納部分18には、図6に示されているように、一つの画像データを構成する各画素番号i毎に、閾値ci が設定されている。各閾値ci は、対応する各画素の情報である画素濃度の2値化を図るときの基準値ci となる。この閾値ci は、各券種毎に設けられており、図示の例では、画像データの全域についての閾値が設定されているが、各画素配列選択パタンk毎に、選択される画素群についての閾値のみをデータとすることができる。また、画素基準データをマスク値により構成することもできる。
【0024】真偽判別基準データ格納部分19には、図7R>7に示されているように、図6に示した閾値を越える画素の数についての真偽判別閾値tが、各画素配列選択パタンk毎に設定されている。図6の例では、画素配列選択パタン1では、画素基準データに基づいて2値化した画素のうち、例えば画素値「1」を示す画素の数が真偽判別閾値35以上であれば、真券である旨を示す。
【0025】図3に示した画素処理部14は、画素配列パタン選択部13から読み込んだ画素番号iの画素について、画素情報である画素濃度を画素基準データ格納部分18に格納された図6に示した画素基準データの対応する閾値と比較して、画素濃度すなわち画素値の2値化を図る。また、画素処理結果蓄積部15は、2値化された各画素値を1画素配列パタン分蓄積する。真偽判定部16は、画素処理結果蓄積部15に蓄積された画素値と、真偽判別基準データ格納部分19に格納された図7に示した真偽判別基準データの対応する真偽判別閾値と比較し、紙幣の真偽を判別する。
【0026】図8は、本発明の紙葉類真偽判別装置10の真偽判別処理動作を示す流れ図であり、以下、この流れ図に沿って、紙葉類真偽判別装置10の動作を説明する。
ステップS11:先ず、画素配列パタン選択部13の選択番号カウンタ(k)においてパタン選択番号(SYN)kが決定される。このパタン選択番号の決定により、対応する画素配列パタン(1〜L)が選択される。このパタン選択番号は、選択番号カウンタ(k)により、紙幣の取り扱いの度毎に、順次、パタン番号kを1〜Lまでの間で1つずつインクリメントすなわち増大する。
【0027】ステップS12:選択順位カウンタ(j)により、選択順位番号(SXN)jが0に初期化される。
ステップS13:選択順位カウンタ(j)により、選択順位番号(SXN)jが1〜M迄、1ずつインクリメントされる。
ステップS14:画素番号カウンタ(i)により、選択画素リスト格納部分17から、画素配列選択番号(SYN)kおよび選択順位番号(SXN)jに対応する画素番号(SPN)i=Skjが読み込まれる。
ステップS15:画素処理部14が入力媒体の画素配列kから画素番号iの画素値xi を読み込む。
【0028】ステップS16:画素処理部14が画素基準データ格納部分18から対応する画素番号iの画素基準値ci を読み込む。
ステップS17:画素処理部14が読み込んだ画素値xi と画素基準値ci とを比較し、xi ≧ci を満足すれば、画素処理結果蓄積部15に「1」を出力し、この式条件を満足しなければ、同様に「0」を出力する。
ステップS18:画素処理結果蓄積部15が画素処理部14の出力結果を受けてその出力結果を蓄積する。
ステップS19:選択順位番号(SXN)jが最終番号Mであるか否かを調べ、未処理画素があるとき、すなわちMでないときステップS13に戻る。選択された画素配列kの全ての画素の処理が終了する、すなわち選択順位番号がMであると、ステップS20に進む。
【0029】ステップS20:真偽判定部16が画素処理結果蓄積部15から出力される蓄積結果である画素集積値と、真偽判別基準データの対応するパタン番号の真偽判別閾値tとを比較し、画素集積値が真偽判別閾値t以上であれば、ステップS21に進む。他方、画素集積値が真偽判別閾値t未満であれば、ステップS22に進む。
ステップS21:真券判定処理を実行する。
ステップS22:偽券判定処理を実行する。
【0030】本発明に係る紙葉類真偽判別装置10では、前記したように、画素配列パタン選択部13が紙幣の処理毎に、異なる画素群からなる画素配列を選択し、この選択された画素配列の画素群からの画素情報に基づいて判別処理が施されている。そのため、従来のような固定的に特定された部位の画像情報によってのみ判別処理が施されることはなく、紙幣の取り扱い毎に判別部位が変化することから、判定処理の高速化を損なうことなく、外部からの試行錯誤による検査部位の探知を困難にして偽券の使用を排除することができ、偽券に対する安全性を高めることができる。また、画素配列パタンを選択するに際し、画素配列番号を乱数表に基づいて選択することにより、画素配列パタンの繰り返しを不規則することができ、これにより偽券に対する安全性をより高めることができる。
【0031】先に示した例では、ステップS17において、画素処理部14が読み込んだ画素値xi が画素基準値ci 以上であれば、画素処理結果蓄積部15に「1」を出力させたが、これに代えて、各画素毎に、下限閾値に加えて上限閾値を設け、各画素値xi が、下限閾値≦xi ≦上限閾値の条件を満足するときにのみ「1」を出力させ、この条件を満たさないときに「0」を出力させることができる。
【0032】さらに、前記したと異なる判別方式の一例を示す。次に示す判別方式では、選択した画素配列パタンkの画素群の画素値xi を画素値の「平均値μi 」と画素値の「標準偏差値σi 」とで正規化し、この正規化された値の自乗和が所定値以下であれば真券と判断され、それ以外であれば偽券と判断される。この判定方式では、画素基準データ格納部分18に格納される画素基準データとして、各画素番号iで特定される各画素毎の画素値の平均値データμi のリストと、各画素番号iで特定される各画素毎の画素値の標準偏差値データσi のリストとが採用される。真偽判別基準データ格納部分19に格納される真偽判別基準データは、図7に示したと同様なデータリストである。
【0033】図9は、画素処理部14、画素処理結果蓄積部15および真偽判定部16で行われる演算処理の説明図である。画素処理部14は、図8に示されたステップS17において、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18に格納された各画素iの統計量である「平均値μi 」と「標準偏差値σi 」とを用いて、画素値xi を正規化{(xi −μi )/σi }し、図9(a)式に示された自乗値yi を求める。
【0034】画素処理結果蓄積部15は、ステップS18において、図9(b)に示されているように、選択された画素配列リストkの各画素iの正規化値の自乗を加算蓄積する。真偽判定部16は、ステップS19において、画素処理結果蓄積部15によって得られた蓄積結果値Sを、真偽判別基準データ格納部分19に格納された真偽判別基準データの閾値tと比較する。この比較の結果、図9(c)に示されているように、蓄積結果値Sが閾値t以下であれば「真」と判定され、蓄積結果値Sが閾値tを越えれば「偽」と判定される。
【0035】このように、本発明の紙葉類真偽判別装置10には、先に示した判定方式に限らず、それ以外の種々の判定方式をも適用することができる。また、画素配列パタン選択部13により選択された画素群からの画素情報に基づいて紙葉類の券種判別を行うことができ、これにより、本発明を券種判別装置にも適用することができる。
【0036】〈発明の効果〉本発明の紙葉類認識装置では、紙葉類の検査毎に、画像データから選択された検査を受ける選択画素が異なることから、検査を受ける部位が固定的に特定されることはなく、外部から検査部位を探知することは不可能であり、検査部位の探知を確実に防止することができる。また検査部位が検査毎に変化することから、同一パタンの大量の複製偽造券の連続使用を確実に防止することができる。従って、本発明によれば、画像データの全画素についての情報を取り扱うことがないことから、券種あるいは真偽のための高速処理化を従来におけると同様に妨げることなく、しかも検査部位の探知を確実に防止して偽造券の使用を確実に排除することができることから、偽造券の誤収容率を低減し、紙葉類認識装置の信頼性および利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を表す選択画素配列パタン例の図面である。
【図2】一般的な紙葉類認識処理工程を概略的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る紙葉類真偽判別装置を概略的に示す構成図である。
【図4】本発明に係る画像データの読み取り例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る選択画素リスト例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る画素基準データ例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る真偽判別基準データ例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る紙葉類真偽判別装置の動作を示す流れ図である。
【図9】真偽判別方式の他の例を示す演算式説明図である。
【符号の説明】
10 紙葉類真偽判別装置
11 紙葉類
13 (画素配列パタン選択手段)画素配列パタン選択部
17 (選択画素リスト記憶手段)選択画素リスト格納部分
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流通媒体である紙幣や有価証券等の各種紙葉類からそのイメージを読み取って、券種あるいは真偽を判別する紙葉類認識装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紙幣、証券、商品券のような紙葉類を取り扱う、両替機、金融自動預払機、券売機等の機械には、取り扱うべき紙葉類の券種の判別あるいは真偽の判別を行う紙葉類認識装置が組み込まれている。この紙葉類認識装置では、券の模様、図形の光学的な反射/透過パタンあるいは磁気的な反射パタンをセンサまたはイメージリーダにより読み取り、このパタンを多数の画素の集合体からなる画像データとして電気信号に変換し、この画像データを構成する多数の画素の情報に基づいて、券種あるいは真偽の判別を行う。
【0003】ところで、紙葉類の真偽の判別では、高解像度の画像データを得て判別精度を高めることが理想である。しかしながら、解像度を高くする程、画像データを構成する画素の数は増し、この多数の画素情報についての処理時間が増大する。これに対し、一般の利用者にとっては、この処理時間は短いほど利便性が高まる。
【0004】このような判別精度を高めるための高解像度化と、利便性を高めるための高速処理化との相反する要求を満たす従来技術が、手島昌一および嘉数侑昇の両氏により、「ニューラルネットワークを用いた紙幣識別に関する研究−最適センシングライン配置問題−」として、情報処理学会第46回(平成5年前期)全国大会、予稿集、2C-2に開示されている。この従来技術による紙幣識別では、紙幣の搬送方向と直角なライン状領域をセンシングラインとして、紙幣の汚れあるいは傷等による付加雑音の少ないライン位置を求め、付加雑音の少ない予め特定された所定のセンシングライン位置の画素情報に基づいて、識別が行われる。従って、この従来技術によれば、判別精度を高めるために画像データの解像度を高めても、画像データの全ての画素について識別処理を施す必要はなく、判別作業の高精度化および高速処理化が達成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のような従来の技術では、紙幣のセンシングライン位置が固定的であることから、この帯状に連続するセンシングライン位置を試行錯誤的に探知することが可能である。このため、この探知したセンシングライン位置にのみ真券の対応する帯状部分を張り付けた偽造券が作られると、この偽造券の使用行使を排除することはできない。そのため、このような偽造券の使用を拒否し得るより安全性に優れた紙葉類認識装置の出現が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、基本的には、画像データを構成する画素の内、処理すべき画素を固定的に特定することなく、紙葉類の券種あるいは真偽の判定毎に、異なる画素群を使用するという構想に立脚する。図1は、本発明の構想を示す図面であり、数字(1)〜(L)で示される各矩形は、それぞれ判別を受ける例えば紙幣のような複数の被検査体の画像データに対応する。各画像データ(1〜L)は、多数の画素に区画されており、図中に黒塗りで表された画素は選択された検査を受ける画素すなわち選択画素を示し、同様に白塗りで表された画素は非検査画素を示す。
【0007】各画像データ(1〜L)で示された白黒の選択画素パタンの変化から明らかなように、検査毎に検査を受ける選択画素すなわち黒塗りで表された画素の位置が変化する。この選択画素パタンの変化を図1に示すように(1)〜(L)の間で循環し、あるいは無秩序に選択することにより、検査毎に検査を受ける画素群のパタンを変えることができる。各選択画素パタンにおいて、選択画素である黒塗りの画素を画像データ内に均等に分散させることが望ましい。検査を受ける選択画素は、検査毎に異なり、しかも選択画素は帯状に単純に連続することがないことから、検査位置を探るために従来のような試行錯誤を繰り返しても、この検査部位を探知することは、実質上、不可能となる。
【0008】本発明は、前記した構想を実現するために、次の構成を採用する。
〈構成〉本発明の紙葉類認識装置は、被検査体である紙葉類の画像データを構成する画素群の画素情報の処理により、紙葉類の券種または真偽を判別する紙葉類認識装置であって、画素群から予め選択された複数の画素の組み合わせからなる複数の画素配列パタンをそれぞれ特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段と、選択画素リストから判別処理毎に異なる画素配列パタンを選択する画素配列パタン選択手段とを含み、選択された画素配列パタンの画素群の画素情報に基づいて、紙葉類の券種または真偽を判別することを特徴とする(請求項1に対応)。以下、各構成要素について説明する。
【0009】(選択画素リスト記憶手段)選択画素とは、被検査体の画像データを構成する、例えば画素番号によりそれぞれが特定される多数の画素の内、検査を受けるために予め選択された複数の画素である。このような例えば画素番号に基づいて選択された選択画素の組み合わせである画素群が、画素配列パタンである。一部の画素が複数の画素配列パタンで重複して選択されていても良い。複数の画素配列パタンにより、図1で示したような選択画素配列パタン群(1〜L)が構成され、このような複数の選択画素パタンを特定する選択画素リストについての情報が、選択画素リスト記憶手段に格納される。
【0010】(画素配列パタン選択手段)画素配列パタン選択手段とは、複数の選択画素パタンを特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段からある一つの選択画素パタンを特定する画素配列パタンについての情報を、例えば配列パタン番号として選択する手段である。
【0011】〈作用〉本発明の紙葉類認識装置では、画素配列パタン選択手段が選択画素リスト記憶手段に格納された複数の画素配列パタンからある一つの画素配列パタンを選択する。複数の画素配列パタンは、重複して選択された一部の画素を除き、全体的にはそれぞれ異なる画素の組み合わせからなる画素群を構成することから、選択された画素配列パタンに応じて、検査を受ける選択画素が異なる。そのため、検査を受ける選択画素は、検査毎に異なることから、検査部位を探るために従来のような試行錯誤を繰り返しても、この検査部位を探知することは、実質上、不可能となる。
【0012】本発明の紙葉類認識装置の具体的な構造として、紙葉類の真偽を判別するための基準データを格納する真偽判別基準データ記憶手段を設け、真偽判別装置として利用することが望ましい(請求項2に対応)。また、画素配列パタン選択手段による選択画素配列パタンの選択を乱数表に基づいて、無秩序に行うことが望ましい(請求項3に対応)。この乱数表に基づく選択画素パタンの無秩序な選択により、選択画素パタンの繰り返しの予測すなわち検査部位の予測を一層困難にすることができる。さらに、各選択画素配列パタンにより特定される画素すなわち各選択画素パタンの選択画素を画像データ内に均等に分散させることが望ましい(請求項4に対応)。選択画素を均等に分散させることにより、選択画素が帯状に単純に連続することを確実に防止することができることから、検査部位の探知のための試行錯誤に対して、より有効な対抗策となり得る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態について詳細に説明する。図2は、本発明に係る紙葉類認識装置のような、紙葉類取り扱い装置の一般的な紙葉類認識処理工程を全体的に示す概略図である。紙葉類認識工程では、先ず、被検査体である紙幣の平面画像がセンサのような画像読み取り手段により、画素の集合体である画像データとして電気信号に変換され、画像データを構成する各画素信号が入力情報として取り扱われる。この入力情報により得られる画像データは、前処理を受ける(ステップS1)。この前処理は、センサの特性あるいは劣化等による画像の濃淡補正であるシェーディング補正および被検査体の姿勢角度のような初期位置等の補正であるスキュー補正のような各種の補正処理に加えて、補正後の画像データに基づいてその特徴を抽出するための微分/積分等の特徴抽出処理が含まれる。
【0014】前処理により抽出された特徴データは、予め設定された券種判別用基準データとの比較により、券種判別処理を受ける(ステップS2)。この券種の判別を受けた画像データは、引き続いて、券種毎に用意された真偽判別用基準データから対応する券種の基準データとの比較を受け、これにより、真偽判別処理を受ける(ステップS3)。判定結果が「真」であれば、引き続く処理のためにその結果が出力され、他方、判定結果が「偽」であれば、被検査体である紙幣の受け入れが拒否される(ステップS4)。
【0015】本発明は、このような紙葉類認識工程の内、後述するように、券種判別処理(ステップS2)に適用することができるが、以下、本発明を真偽判別処理(ステップS3)に適用した例について説明する。図3は、本発明に係る紙葉類真偽判別装置10を概略的に示す構成図である。紙葉類真偽判別装置10は、被検査体である紙幣の画像データを構成する多数の画素信号を入力信号として取り扱う。図4は、この画像データの読み取り例を示す説明図である。図4では、例えば紙幣のような紙葉類11がその長辺11Aである長手方向へ搬送されて紙葉類真偽判別装置10に受け入れられるとき、画像読み取り手段(図示せず)により、搬送方向と直角な短辺11Bに平行な多数の読みとりラインに沿って画像データが読み取られる。この画像データは、図4の例では、1〜Nの画素番号iでそれぞれが特定されるN個の画素の集合体で構成されている。この画像データを構成する画素番号i(1〜N)の一連の画素の電気信号が、入力情報すなわち入力画素として、紙葉類真偽判別装置10に入力される。
【0016】再び図3を参照するに、紙葉類真偽判別装置10は、真偽判別のために必要なデータを格納するデータ記憶部12と、画素配列パタン選択部13と、画素処理部14と、画素処理結果蓄積部15と、真偽判定部16とを備える。データ記憶部12は、選択画素リスト記憶手段である選択画素リスト格納部分17と、各画素についての基準データを格納する画素基準データ格納部分18と、真偽判別基準データ格納部分19とを備える。
【0017】選択画素リスト格納部分17は、読み込んだ画像データの画素群から検査を受ける画素群を選択するために、例えば図1に示した選択画素配列パタンを各画素番号の列として記憶する。図5は、選択画素リスト記憶手段である選択画素リスト格納部分17に記憶された選択画素リストの一例を示す説明図である。選択画素リストは、画素配列パタン番号k(1〜L)で示されるパタン番号(SYN)列と、選択順位番号j(1〜M)で示される選択順位番号(SXN)行とで構成されており、両番号kjにより、選択画素番号Skjが決まる。配列パタン番号(1〜L)は、例えば図1に示した選択画素配列パタン(1〜L)に対応した画素配列パタン番号kを特定し、各パタン番号kにおけるパタン番号順位毎の選択画素番号(SPN)Skjは、図4に示した画素番号i(1〜N)に対応する。
【0018】例えば画素配列パタン番号kの数値1が選択されると、この画素配列パタン(k=1)では、画素番号iが5、11、23、......92の各画素を選択画素とする画素配列群が、選択される。また、画素配列パタン番号(k=2)が選択されると、画素番号iが2、27、81、......88の各画素を選択画素とする画素配列群が、選択される。各画素配列パタン番号kで特定される選択画素からなる画素配列群は、図1で示したように、各画素配列パタン毎で、画像データの全域にほぼ均等に分散されるように設定することが望ましく、特に選択画素が多数の連続する帯状部分となることを避けることが望ましい。これらは、偽造券を用いた試行錯誤による検査部位の探知を一層困難にする。
【0019】図3に示した画素配列パタン選択部13は、選択パタン番号カウンタ(k)を備える。この選択パタン番号カウンタ(k)は、設定された画素配列パタン番号kの初期値を読み込み、判定工程の繰り返し毎に、順次、画素配列パタン番号kを更新する。また、この画素配列パタン選択部13には、選択パタン番号カウンタ(k)で読み込まれたパタン番号kの画素配列パタンの画素番号iを順次読み込むために、選択順位を1からM迄、順次更新する選択順位番号カウンタ(j)と、パタン番号kおよび選択順位番号jで特定される画素番号Skjを読み込む画素カウンタ(i)とが設けられている。
【0020】画素配列パタン選択部13は、選択番号カウンタ(k)で読み込んだパタン番号kの画素列を、選択順位番号カウンタ(j)の更新に伴って、順次、対応する選択順位番号jの選択画素番号(SPN)Skjを画素カウンタ(i)に読み込み、これを順次画素処理部14に出力する。
【0021】判定処理のために選択された画素群の画素番号を受ける画素処理部14、画素処理結果蓄積部15、真偽判定部16は、これらの選択画素から得られる画素情報を、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19のデータと比較することにより、対象となっている被検査紙幣についての真偽を判別する。
【0022】この画素処理部14、画素処理結果蓄積部15、真偽判定部16の構成および作用、さらには、画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19に格納されるデータは、判定処理方式に応じて、従来におけると同様な機能部分およびデータを適用することができる。各種の判定方式の内、以下では、画素情報の1つである画像濃度が所定の範囲内にある画素の数の合計数を求め、その合計数が所定数に達しているか否により真偽を判定する方式を適用した例について、概略を説明する。
【0023】図6および図7は、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18および真偽判別基準データ格納部分19にそれぞれ格納されるデータ例を示す説明図である。画素基準データ格納部分18には、図6に示されているように、一つの画像データを構成する各画素番号i毎に、閾値ci が設定されている。各閾値ci は、対応する各画素の情報である画素濃度の2値化を図るときの基準値ci となる。この閾値ci は、各券種毎に設けられており、図示の例では、画像データの全域についての閾値が設定されているが、各画素配列選択パタンk毎に、選択される画素群についての閾値のみをデータとすることができる。また、画素基準データをマスク値により構成することもできる。
【0024】真偽判別基準データ格納部分19には、図7R>7に示されているように、図6に示した閾値を越える画素の数についての真偽判別閾値tが、各画素配列選択パタンk毎に設定されている。図6の例では、画素配列選択パタン1では、画素基準データに基づいて2値化した画素のうち、例えば画素値「1」を示す画素の数が真偽判別閾値35以上であれば、真券である旨を示す。
【0025】図3に示した画素処理部14は、画素配列パタン選択部13から読み込んだ画素番号iの画素について、画素情報である画素濃度を画素基準データ格納部分18に格納された図6に示した画素基準データの対応する閾値と比較して、画素濃度すなわち画素値の2値化を図る。また、画素処理結果蓄積部15は、2値化された各画素値を1画素配列パタン分蓄積する。真偽判定部16は、画素処理結果蓄積部15に蓄積された画素値と、真偽判別基準データ格納部分19に格納された図7に示した真偽判別基準データの対応する真偽判別閾値と比較し、紙幣の真偽を判別する。
【0026】図8は、本発明の紙葉類真偽判別装置10の真偽判別処理動作を示す流れ図であり、以下、この流れ図に沿って、紙葉類真偽判別装置10の動作を説明する。
ステップS11:先ず、画素配列パタン選択部13の選択番号カウンタ(k)においてパタン選択番号(SYN)kが決定される。このパタン選択番号の決定により、対応する画素配列パタン(1〜L)が選択される。このパタン選択番号は、選択番号カウンタ(k)により、紙幣の取り扱いの度毎に、順次、パタン番号kを1〜Lまでの間で1つずつインクリメントすなわち増大する。
【0027】ステップS12:選択順位カウンタ(j)により、選択順位番号(SXN)jが0に初期化される。
ステップS13:選択順位カウンタ(j)により、選択順位番号(SXN)jが1〜M迄、1ずつインクリメントされる。
ステップS14:画素番号カウンタ(i)により、選択画素リスト格納部分17から、画素配列選択番号(SYN)kおよび選択順位番号(SXN)jに対応する画素番号(SPN)i=Skjが読み込まれる。
ステップS15:画素処理部14が入力媒体の画素配列kから画素番号iの画素値xi を読み込む。
【0028】ステップS16:画素処理部14が画素基準データ格納部分18から対応する画素番号iの画素基準値ci を読み込む。
ステップS17:画素処理部14が読み込んだ画素値xi と画素基準値ci とを比較し、xi ≧ci を満足すれば、画素処理結果蓄積部15に「1」を出力し、この式条件を満足しなければ、同様に「0」を出力する。
ステップS18:画素処理結果蓄積部15が画素処理部14の出力結果を受けてその出力結果を蓄積する。
ステップS19:選択順位番号(SXN)jが最終番号Mであるか否かを調べ、未処理画素があるとき、すなわちMでないときステップS13に戻る。選択された画素配列kの全ての画素の処理が終了する、すなわち選択順位番号がMであると、ステップS20に進む。
【0029】ステップS20:真偽判定部16が画素処理結果蓄積部15から出力される蓄積結果である画素集積値と、真偽判別基準データの対応するパタン番号の真偽判別閾値tとを比較し、画素集積値が真偽判別閾値t以上であれば、ステップS21に進む。他方、画素集積値が真偽判別閾値t未満であれば、ステップS22に進む。
ステップS21:真券判定処理を実行する。
ステップS22:偽券判定処理を実行する。
【0030】本発明に係る紙葉類真偽判別装置10では、前記したように、画素配列パタン選択部13が紙幣の処理毎に、異なる画素群からなる画素配列を選択し、この選択された画素配列の画素群からの画素情報に基づいて判別処理が施されている。そのため、従来のような固定的に特定された部位の画像情報によってのみ判別処理が施されることはなく、紙幣の取り扱い毎に判別部位が変化することから、判定処理の高速化を損なうことなく、外部からの試行錯誤による検査部位の探知を困難にして偽券の使用を排除することができ、偽券に対する安全性を高めることができる。また、画素配列パタンを選択するに際し、画素配列番号を乱数表に基づいて選択することにより、画素配列パタンの繰り返しを不規則することができ、これにより偽券に対する安全性をより高めることができる。
【0031】先に示した例では、ステップS17において、画素処理部14が読み込んだ画素値xi が画素基準値ci 以上であれば、画素処理結果蓄積部15に「1」を出力させたが、これに代えて、各画素毎に、下限閾値に加えて上限閾値を設け、各画素値xi が、下限閾値≦xi ≦上限閾値の条件を満足するときにのみ「1」を出力させ、この条件を満たさないときに「0」を出力させることができる。
【0032】さらに、前記したと異なる判別方式の一例を示す。次に示す判別方式では、選択した画素配列パタンkの画素群の画素値xi を画素値の「平均値μi 」と画素値の「標準偏差値σi 」とで正規化し、この正規化された値の自乗和が所定値以下であれば真券と判断され、それ以外であれば偽券と判断される。この判定方式では、画素基準データ格納部分18に格納される画素基準データとして、各画素番号iで特定される各画素毎の画素値の平均値データμi のリストと、各画素番号iで特定される各画素毎の画素値の標準偏差値データσi のリストとが採用される。真偽判別基準データ格納部分19に格納される真偽判別基準データは、図7に示したと同様なデータリストである。
【0033】図9は、画素処理部14、画素処理結果蓄積部15および真偽判定部16で行われる演算処理の説明図である。画素処理部14は、図8に示されたステップS17において、データ記憶部12の画素基準データ格納部分18に格納された各画素iの統計量である「平均値μi 」と「標準偏差値σi 」とを用いて、画素値xi を正規化{(xi −μi )/σi }し、図9(a)式に示された自乗値yi を求める。
【0034】画素処理結果蓄積部15は、ステップS18において、図9(b)に示されているように、選択された画素配列リストkの各画素iの正規化値の自乗を加算蓄積する。真偽判定部16は、ステップS19において、画素処理結果蓄積部15によって得られた蓄積結果値Sを、真偽判別基準データ格納部分19に格納された真偽判別基準データの閾値tと比較する。この比較の結果、図9(c)に示されているように、蓄積結果値Sが閾値t以下であれば「真」と判定され、蓄積結果値Sが閾値tを越えれば「偽」と判定される。
【0035】このように、本発明の紙葉類真偽判別装置10には、先に示した判定方式に限らず、それ以外の種々の判定方式をも適用することができる。また、画素配列パタン選択部13により選択された画素群からの画素情報に基づいて紙葉類の券種判別を行うことができ、これにより、本発明を券種判別装置にも適用することができる。
【0036】〈発明の効果〉本発明の紙葉類認識装置では、紙葉類の検査毎に、画像データから選択された検査を受ける選択画素が異なることから、検査を受ける部位が固定的に特定されることはなく、外部から検査部位を探知することは不可能であり、検査部位の探知を確実に防止することができる。また検査部位が検査毎に変化することから、同一パタンの大量の複製偽造券の連続使用を確実に防止することができる。従って、本発明によれば、画像データの全画素についての情報を取り扱うことがないことから、券種あるいは真偽のための高速処理化を従来におけると同様に妨げることなく、しかも検査部位の探知を確実に防止して偽造券の使用を確実に排除することができることから、偽造券の誤収容率を低減し、紙葉類認識装置の信頼性および利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本原理を表す選択画素配列パタン例の図面である。
【図2】一般的な紙葉類認識処理工程を概略的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る紙葉類真偽判別装置を概略的に示す構成図である。
【図4】本発明に係る画像データの読み取り例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る選択画素リスト例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る画素基準データ例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る真偽判別基準データ例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る紙葉類真偽判別装置の動作を示す流れ図である。
【図9】真偽判別方式の他の例を示す演算式説明図である。
【符号の説明】
10 紙葉類真偽判別装置
11 紙葉類
13 (画素配列パタン選択手段)画素配列パタン選択部
17 (選択画素リスト記憶手段)選択画素リスト格納部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検査体である紙葉類の画像データを構成する画素群の画素情報の処理により、前記紙葉類の券種または真偽を判別する紙葉類認識装置であって、前記画素群から予め選択された複数の画素の組み合わせからなる複数の画素配列パタンをそれぞれ特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段と、前記選択画素リストから判別処理毎に異なる画素配列パタンを選択する画素配列パタン選択手段とを含み、選択された画素配列パタンの画素群の画素情報に基づいて前記紙葉類の券種または真偽を判別することを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項2】 請求項1において、さらに、紙葉類の真偽を判別するデータを格納する判別データ記憶手段を含み、前記画素配列パタン選択手段によって選択された画素配列パタンの画素の情報に基づいて前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項3】 請求項1または2において、前記画素配列パタン選択手段による画素配列パタンの選択は、乱数表に基づくことを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項4】 請求項3において、前記画素配列パタンにより特定される各画素は、各画素配列パタン毎に、前記画像データ内にほぼ均等に分散するように選択されていることを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項1】 被検査体である紙葉類の画像データを構成する画素群の画素情報の処理により、前記紙葉類の券種または真偽を判別する紙葉類認識装置であって、前記画素群から予め選択された複数の画素の組み合わせからなる複数の画素配列パタンをそれぞれ特定する選択画素リストが格納された選択画素リスト記憶手段と、前記選択画素リストから判別処理毎に異なる画素配列パタンを選択する画素配列パタン選択手段とを含み、選択された画素配列パタンの画素群の画素情報に基づいて前記紙葉類の券種または真偽を判別することを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項2】 請求項1において、さらに、紙葉類の真偽を判別するデータを格納する判別データ記憶手段を含み、前記画素配列パタン選択手段によって選択された画素配列パタンの画素の情報に基づいて前記紙葉類の真偽を判別することを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項3】 請求項1または2において、前記画素配列パタン選択手段による画素配列パタンの選択は、乱数表に基づくことを特徴とする紙葉類認識装置。
【請求項4】 請求項3において、前記画素配列パタンにより特定される各画素は、各画素配列パタン毎に、前記画像データ内にほぼ均等に分散するように選択されていることを特徴とする紙葉類認識装置。
【図1】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【特許番号】特許第3187698号(P3187698)
【登録日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【発行日】平成13年7月11日(2001.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−316140
【出願日】平成7年11月8日(1995.11.8)
【公開番号】特開平9−134464
【公開日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【審査請求日】平成11年1月26日(1999.1.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【参考文献】
【文献】特開 平8−329304(JP,A)
【文献】特開 昭51−135600(JP,A)
【文献】特開 平7−220087(JP,A)
【登録日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【発行日】平成13年7月11日(2001.7.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成7年11月8日(1995.11.8)
【公開番号】特開平9−134464
【公開日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【審査請求日】平成11年1月26日(1999.1.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【参考文献】
【文献】特開 平8−329304(JP,A)
【文献】特開 昭51−135600(JP,A)
【文献】特開 平7−220087(JP,A)
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