説明

紙葉類識別機の搬送機構

【課題】構成部品の種類、点数の削減および製造コストの削減を達成可能な紙幣識別機の搬送機構を提案すること。
【解決手段】紙幣識別機1の搬送機構は、駆動プーリ21a、21bと、アイドラプーリ22a〜24a、22b〜24bと、これらに張架した搬送ベルト25a、25bとを備えており、駆動プーリおよびアイドラプーリとして、同一形状および同一大きさの共通のベルトプーリ210が用いられている。駆動プーリとアイドラプーリを共通部品とすることにより、搬送機構の構成部品の種類を少なくでき、ベルトプーリ210を製造するための金型が1種類で済むので製造コストを削減できる。ベルトプーリを区別して保管する必要がなく、駆動プーリを配置すべき所にアイドラプーリを配置してしまうといった作業ミスも起きない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト・プーリ式の搬送機構を用いて識別対象の紙幣などの紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類識別機に関し、特に、ベルト・プーリ式の搬送機構の部品点数の削減およびコスト低減のための改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技店などにおける遊技台の間には、遊技台で用いるパチンコ玉などの遊技媒体を貸し出すための遊技台用台間機が配置されている。遊技台用台間機には、挿入された紙幣を識別して遊技媒体の貸し出しを行うことが出来るように、紙幣識別機が搭載されている。紙幣識別機としては、ベルト・プーリ式の搬送機構を用いて挿入された紙幣を搬送路に沿って搬送し、搬送路に配置されている透過型あるいは反射型のホトセンサを用いて紙幣の光学的情報を読み取り、これに基づき挿入された紙幣の真偽などを識別するものが知られている。特許文献1には、ベルト・プーリ式の搬送機構を備えた紙幣識別機が開示されている。
【0003】
ベルト・プーリ式の搬送機構では、搬送ベルトが張架されるベルトプーリとして、駆動プーリとアイドラプーリが用いられている。駆動プーリには駆動軸が連結され、駆動軸の軸端に固着した動力伝達用歯車を介して搬送用モータの回転駆動力が駆動プーリに伝達される。駆動プーリが回転すると、この駆動プーリとアイドラプーリに張架した搬送ベルトが駆動され、回転自在の状態に保持されているアイドラプーリは搬送ベルトに連れ回り状態になる。搬送ベルトが駆動プーリおよびアイドラプーリから外れないようにするために、駆動プーリおよびアイドラプーリには、その両端にベルト脱落防止用の円盤状のフランジが形成されている。
【特許文献1】特開平8−7148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、紙葉類識別機のベルト・プーリ式の搬送機構では、駆動プーリとアイドラプーリが用いられており、前者は駆動軸に連結されて回転駆動力が伝達され、後者は回転自在の状態に保持されるので、構造が相違している。このため、2種類のベルトプーリを製造する必要があり、部品金型も2種類必要になり、製造コストの増加を招いている。また、これら駆動プーリおよびアイドラプーリは目視により識別することが困難であるので、色分け等を行って別個に管理し、駆動プーリの配置場所にアイドラプーリが配置されてしまうなどといった作業ミスの発生を回避する必要がある。
【0005】
さらに、駆動プーリおよびアイドラプーリは、プーリ本体に、別部品であるプーリ軸が同軸状態に装着された構造となっている。また、駆動軸に回転駆動力を伝達するために、金属製の駆動軸の軸端部に別部品である動力伝達用の歯車を装着固定している。このように駆動プーリ、アイドラプーリおよび駆動軸は、複数の部品から製造されているので、製造コストが高いという問題点がある。
【0006】
一方、駆動プーリおよびアイドラプーリに張架した搬送ベルトがこれらのプーリから横方にずれて外れてしまうことを防止するために、各プーリの両端には円盤状のフランジが形成されている。搬送ベルトは、各プーリにおける両端のフランジの間に挟まれた状態で各プーリに架け渡され、各プーリから外れないようになっている。しかしながら、両端に大径のフランジを備えた形状のプーリは型抜きが難しいので射出成形には適しておらず、廉価に製造できないという問題点がある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、構成部品の種類、点数の削減および製造コストの低減化を達成可能な紙葉類識別機の搬送機構を提案することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、射出成形が容易な形状のプーリを備えた紙葉類識別機の搬送機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、挿入された紙葉類を搬送するための紙葉類識別機の搬送機構において、
駆動プーリと、
アイドラプーリと、
これらに張架した搬送ベルトとを備え、
前記駆動プーリおよび前記アイドラプーリとして、同一形状および同一大きさの共通のベルトプーリが用いられていることを特徴としている。
【0010】
駆動プーリとアイドラプーリを共通部品とすることにより、搬送機構の構成部品の種類を少なくでき、プーリを製造するための金型が1種類で済むので製造コストを削減できる。また、これらのプーリを区別して保管する必要がなく、駆動プーリを配置すべき所にアイドラプーリを配置してしまうといった作業ミスも起きない。
【0011】
ここで、共通化したベルトプーリを、プーリ本体と、このプーリ本体の両端面から当該プーリ本体の軸線方向に同軸状態で突出している軸端部とが一体成形された成形品とすれば、これらを別部品として製造して組み付ける必要がなくなるので、製造コストの削減に有利である。
【0012】
また、共通化したベルトプーリには、駆動プーリを回転駆動させるための駆動軸を差し通すことのできる中心貫通孔を形成しておけばよい。この場合、前記駆動軸および前記中心貫通孔におけるそれらの軸線に直交する方向の断面形状を、相補的な形状であり、しかも、前記駆動軸は前記中心貫通孔に沿ってこれらの軸線の方向に相対移動可能であり、前記軸線を中心とする回転方向には一体回転可能な形状としておけばよい。
【0013】
例えば、前記駆動軸の断面形状および前記ベルトプーリの中心貫通孔の孔断面形状を十文字形状としておけばよい。
【0014】
ここで、前記駆動軸を、その軸端に駆動力伝達歯車が同軸状態で一体成形された成形品とすれば、駆動軸および歯車を別部品として製造して組み付ける必要がなくなるので、製造コストの削減に有利である。
【0015】
次に、前記ベルトプーリを、プーリ本体の一端にのみベルト脱落防止用の円盤状のフランジが形成された形状とすれば、成形金型を用いて成形した場合に型抜きが容易になり、製造コストの削減に有利である。この場合には、前記フランジが左右に交互に向く状態に前記駆動プーリおよび前記アイドラプーリとして用いられている各ベルトプーリを配置すれば、前記搬送ベルトが各ベルトプーリから外れることを防止できる。
【0016】
一方、本発明の紙葉類識別機は、上記構成の搬送機構を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の紙葉類識別機の搬送機構では、駆動プーリおよびアイドラプーリを共通化しているので、これらを製造するための金型が1種類で済み、製造コストを削減できる。また、これらのプーリを区別して保管する必要がなく、駆動プーリを配置すべき所にアイドラプーリを配置してしまうといった作業ミスも起きないので、組み付け作業の作業性も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した紙幣識別機の実施の形態を説明する。
【0019】
(全体構成)
図1は本発明を適用した紙幣識別機を示す平面図であり、図2は開閉ユニットを開けた状態での紙幣識別機の斜視図である。
【0020】
紙幣識別機1は、本体ユニット2と、この本体ユニット2の表面に形成された装置前後方向に延びている凹部3に収納されている開閉ユニット4と、本体ユニット2の紙幣挿入口側の前端部に取り付けられている挿入口蓋ユニット5とを有している。開閉ユニット4は、その後端部両側に形成した支軸6a、6bを中心として、凹部3に収納された閉じ位置から所定の角度の範囲で開閉可能である。また、開閉ユニット4の前端部の両側に形成した係合レバー7a、7bが、本体ユニット2に形成された係合溝7c、7dに差し込まれており、これにより開閉ユニット4が閉じ位置にロックされている。左右の係合レバー7a、7bを内方に引き込むことにより、係合レバー7a、7bが係合溝7c、7dから外れて開閉ユニット4を開けることが可能になる。
【0021】
図3は紙幣識別機1の内部構成を示す説明図であり、図4は本体ユニット2の平面図である。これらの図も参照して紙幣識別機1の内部構成を説明する。
【0022】
紙幣識別機1の本体ユニット2の前面には紙幣挿入口8が形成されており、この紙幣挿入口8は、本体ユニット2の前端部と挿入口蓋ユニット5との間に形成されている紙幣挿入路9を介して、本体ユニット2と開閉ユニット4の間に形成されている紙幣搬送路10に通じている。紙幣搬送路10の後端は紙幣排出口10aとなっており、ここから排出された紙幣は不図示の紙幣収納部に収納される。
【0023】
紙幣挿入路9に続く紙幣搬送路10の上流側の部位には、本体ユニット2の側に、紙幣の挿入を検出するために左右一対の入口センサ9a、9bが配置されている。入口センサ9a、9bとしては、ホトカプラ、メカニカルスイッチを備えたものを用いることができる。これらの入口センサ9a、9bの下流側には、紙幣搬送路10に出没可能なシャッタ片20aを備えたシャッタ機構20が本体ユニット2の側に配置されている。
【0024】
シャッタ片20aの下流側の紙幣搬送路10の部位には、当該紙幣搬送路10を搬送される紙幣の光学的特徴である光透過パターンを検出するための4組の透過型ホトセンサ11〜14が幅方向に配置されている。これらの透過型ホトセンサ11〜14の発光素子11a〜14aは開閉ユニット4に搭載され、受光素子11b〜14bは本体ユニット2に搭載されている。これらの設置位置よりも下流側の紙幣搬送路10の部分には紙幣の磁気特性を検出するための磁気ヘッド15が配置されている。磁気ヘッド15は本体ユニット2に搭載されており、この磁気ヘッド15の検出面に紙幣を押し付けるための押圧ローラ16が開閉ユニット4に搭載されている。
【0025】
紙幣排出口10aの近傍における本体ユニット2の側には、排出される紙幣を検出するために左右一対の出口センサ17a、17bが配置されている。これら出口センサとしては、ホトカプラ、メカニカルスイッチを備えたものを用いることができる。
【0026】
紙幣を紙幣搬送路10に沿って搬送するための搬送機構はベルト・プーリ式のものであり、左右一対の駆動プーリ21a、21bと、左右三対のアイドラプーリ22a、22b、23a、23b、24a、24bと、これら駆動プーリ21aおよびアイドラプーリ22a〜24aの間、および駆動プーリ21bおよびアイドラプーリ22b〜24bの間にそれぞれ張架した左右一対の搬送ベルト25a、25bとを備えている。これらの各部は、本体ユニット2の側に搭載されており、駆動プーリ21a、21bは紙幣搬送路10の下流端側に配置され、アイドラプーリ22a、22b、23a、23bは、駆動プーリ21a、21bと磁気ヘッド15の間に配置されており、アイドラプーリ24a、24bは、発光素子11a〜14aの上流側に配置されている。
【0027】
また、搬送機構は、開閉ユニット4の側に搭載されている4組の左右一対の押圧ローラ31a、31b、32a、32b、33a、33bおよび34a、34bを備えている。これらは、上下方向にスライド可能、かつ、回転自在の状態で開閉ユニット4に搭載されており、それぞれ、搬送ベルト25a、25bの上から、駆動プーリ21a、21b、アイドラプーリ22a、22b、23a、23bおよび24a、24bにばね力によって押圧されている。
【0028】
さらに、搬送機構は、図4に示すように、本体ユニット2における凹部3の側方の部位に内蔵されている搬送用モータ26を備えている。この搬送用モータ26の回転力が、ウォーム歯車27aおよびウォームホイール27bを備えた減速歯車列27および駆動軸28を介して、駆動プーリ21a、21bに伝達されるようになっている。
【0029】
入口センサ9a、9bによって紙幣が紙幣挿入口8から挿入されたことを検出すると、搬送機構が駆動され、挿入された紙幣が紙幣挿入路9から紙幣搬送路10に送り込まれる。紙幣搬送路10に沿って搬送される紙幣は、その光透過パターンが4組の透過型ホトセンサ11〜14によって読み取られ、その磁気パターンが磁気ヘッド15によって読み取られる。読み取られた紙幣情報に基づき紙幣の種類および真偽の識別が行われる。受け入れ可能な紙幣であると識別された場合には、紙幣搬送路10の下流端の紙幣排出口10aから不図示の紙幣収納部に紙幣が送り込まれる。受け入れ不可の紙幣、あるいは偽札であると識別された場合には、そのような紙幣は逆送りして、紙幣挿入口8から返却される。
【0030】
紙幣が紙幣搬送路10に詰まった場合、紙幣搬送機構の保守点検作業を行う場合などにおいては開閉ユニット4を開けて、紙幣搬送路10を開放状態にする。すなわち、本体ユニット2の側の左右一対の搬送ベルト25a、25bの上から駆動プーリ21a、21bおよびアイドラプーリ22a〜24a、22b〜24bに押圧されている押圧ローラ31a、31b、32a〜34a、32b〜34bが搬送ベルト25a、25bから離れ、これらの間に規定される紙幣搬送路10が開放状態になる。
【0031】
(搬送機構のカートリッジ式搬送ユニット)
本例の搬送機構では、その本体ユニット2の側に搭載されている部品がユニット化され、本体ユニット2に取り外し可能な状態で装着されているカートリッジ式搬送ユニットとなっている。図5は紙幣識別機に対するカートリッジ式搬送ユニットの着脱方向を示す斜視図であり、図6(a)および(b)は、カートリッジ式搬送ユニットの平面図および斜視図である。
【0032】
図4、図5および図6を参照して説明すると、カートリッジ式搬送ユニット40は、例えばプラスチック成形品からなるユニットベース41を備えており、このユニットベース41には、一定の間隔で前後方向に平行に延びている一対のプーリ取付部42、43と、これらプーリ取付部42、43の後端側の部位を連結しているガイド板部分44とが形成されている。プーリ取付部42には、駆動プーリ21aおよびアイドラプーリ22a〜24aが取り付けられ、これらに搬送ベルト25aが張架されている。他方のプーリ取付部43には、駆動プーリ21bおよびアイドラプーリ22b〜24bが取り付けられ、これらに搬送ベルト25bが張架されている。
【0033】
ガイド板部分44の裏面には、駆動プーリ21a、21bを貫通して駆動軸28が延びており、ガイド板部分44の一方の側面から突出している駆動軸28の一方の軸端部にはウォームホイール27bが同軸状態に固定されている。また、ガイド板部分44の裏面には、出口センサ17aおよび17bが取り付けられている。
【0034】
本体ユニット2の側には、その後端面からカートリッジ式搬送ユニット40を前方に向けて差し込み可能な搬送ユニット装着部50が形成されている。搬送ユニット装着部50は、カートリッジ式搬送ユニット40の左右のプーリ取付部42、43が挿入される一対の細長い挿入溝52、53と、カートリッジ式搬送ユニット40のガイド板部分44が挿入される挿入部54とを備えている。これら挿入溝52、53および挿入部54は、本体ユニット2における紙幣搬送路10の一方のガイド面を規定しているガイド板部分55を切り欠くことにより形成されたものである。
【0035】
カートリッジ式搬送ユニット40を搬送ユニット装着部50に装着すると、カートリッジ式搬送ユニット40のガイド板部分44によって、紙幣搬送路10の排出口側のガイド面部分が規定される。また、カートリッジ式搬送ユニット40のウォームホイール27bが、本体ユニット2の側の減速歯車列27のウォーム歯車27aに噛み合った状態になる。この結果、搬送用モータ26から駆動プーリ21a、21bへの動力伝達経路が形成される。
【0036】
カートリッジ式搬送ユニット40のガイド板部分44には、プーリ取付部42、43の外側の部位に、ねじ挿入穴45a、45bが形成されている。これらのねじ挿入穴45a、45bに対峙する本体ユニット2の部位にはねじ穴56a、56b(図2参照)が形成されている。カートリッジ式搬送ユニット40は搬送ユニット装着部50に挿入された後に、固定ねじ46a、46b(図4参照)によって、本体ユニット2の側に固定されている。
【0037】
ここで、駆動プーリ21a、21bおよびアイドラプーリ22a〜24a、22b〜24bとして、同一形状および同一大きさのベルトプーリが用いられている。換言すると、駆動プーリとアイドラプーリが共通部品とされている。駆動プーリ21a、21bとアイドラプーリ22a〜24a、22b〜24bを共通部品とすることにより、搬送機構の構成部品の種類を少なくでき、プーリを製造するための金型が1種類で済むので製造コストを削減できる。また、これらのプーリを区別して保管する必要がなく、駆動プーリ21a、21bを配置すべき所にアイドラプーリ22a〜24aあるいは22b〜24bを配置してしまうといった作業ミスも起きない。
【0038】
図7(a)は、共通部品であるベルトプーリを示す説明図である。ベルトプーリ210は射出成形品であり、円形外周面が凹凸状になっているプーリ本体211と、この中心を貫通して延びる十文字状断面の中心貫通穴212と、プーリ本体211の軸線方向の両側の端面から側方に突出している軸端部213、214と、プーリ本体211の一方の端面側に形成されているベルト脱落防止用の円盤状のフランジ215とを備えている。軸端部213、214は、円形外周面を備えた4個の突出片によって規定されている。ベルトプーリ210には、両端にプーリ軸としての軸端部213、214が一体成形されているので、プーリおよびプーリ軸を別部品として製造して組み付ける必要がないので製造コストの削減に有利である。
【0039】
次に、ベルトプーリ210(駆動プーリ21a、21b、アイドラプーリ22a〜24a、22b〜24b)は、カートリッジ式搬送ユニット40のプーリ取付部42、43に上側から着脱可能な状態で装着されている。プーリ取付部42、43は上方に開口している一定幅の溝形断面をしており、左右の側板部分42a、42b、43a、43bには、ベルトプーリ210を上から着脱可能かつ回転可能な状態で受け入れる円弧溝42c、42d、43c、43dがそれぞれ4箇所に形成されている。
【0040】
本体ユニット2の搬送ユニット装着部50における挿入溝52、53は、図4から分かるように、各プーリ21a〜24a、21b〜24bが位置する部位が狭い幅となっている。カートリッジ式搬送ユニット40を装着した状態においては、当該狭い溝幅の部分を規定している下側ガイド板部分55の部位によって、各プーリの軸端部213、214が円弧溝42c、42d、43c、43dから上方に抜け出ないように、これらの円弧溝の上端開口が封鎖された状態となっている。
【0041】
したがって、カートリッジ式搬送ユニット40を搬送ユニット装着部50から引き抜いた後は、簡単に、各ベルトプーリ210を外して、搬送ベルト25a、25bを取り外すことができる。
【0042】
次に、図6に示すように、駆動プーリ21aおよびアイドラプーリ22a〜24aは、フランジ215が交互に反対側の端に位置するように配置されている。これにより、これらに架け渡した搬送ベルト25aが横方向に外れることが防止されている。他方の駆動プーリ21bおよびアイドラプーリ22b〜24bにおいても同様な配列状態とされている。フランジ215を各ベルトプーリ210の両端に形成しておけばよいが、射出成形によりベルトプーリ210を成形する場合には、両端に大径のフランジが付いている場合には成形金型から抜くことができない。あるいは、成形金型が複雑な形状になってしまう。本例の形状のベルトプーリ210は、簡単に射出成形することができ、また、それらを交互に逆向きに配列することにより、搬送ベルトの外れも防止できる。
【0043】
次に、図7(b)は駆動軸28およびウォームホイール27bを示す斜視図である。本例の駆動軸28およびウォームホイール27bは、射出成形品からなる単一部品とされている。これらを別部材として製造して組み付ける場合に比べて製造コストを低減できる。また、駆動軸28は、その軸線に直交する方向の断面形状が、ベルトプーリ210の中心貫通孔212の孔断面形状と相補的な十文字状断面となっており、当該中心貫通孔212にスライド可能な状態で差し通すことができる。差し通した状態においては、駆動軸28およびベルトプーリ210は、それらの軸線回りには一体回転し、駆動軸28の側からベルトプーリ210に回転駆動力が伝達される。
【0044】
本例では、プーリ取付部42、43に形成されている4組ずつの円弧溝42c、42d、43c、43dに、それぞれ4個のベルトプーリ210を装着し、最も後端側のベルトプーリに横方から駆動軸28を差し通すことにより、これら2個のベルトプーリ210が駆動プーリ21a、21bとして機能する。
【0045】
なお、ベルトプーリ210の中心貫通孔212の孔断面形状および駆動軸28の断面形状は、十文字形状以外の形状とすることも可能である。
【0046】
また、本例の紙幣識別機1では、交換が定期的に必要になる搬送ベルト25a、25bが取り付けられている部分を、本体ユニット2に対して着脱可能なカートリッジ式搬送ユニット40として構成してある。したがって、搬送ベルト25a、25bの交換時には、開閉ユニット4を開き、露出した固定ねじ46a、46bを外し、カートリッジ式搬送ユニット40を本体ユニット2から後方に引き出して外し、新たなカートリッジ式搬送ユニット40を挿入して再び固定ねじ46a、46bで本体ユニット2に固定するだけでよい。よって、交換作業が簡単になり、張力調整などが行われた後のカートリッジ式搬送ユニット40を装着すればよいので、組み付け後の調整作業なども不要になり、固定ねじ46a、46bのみを取り外せばよいので、取り外した部品の紛失、破損のおそれも少ないという利点がある。
【0047】
(その他の実施の形態)
上記の例は本発明を紙幣識別機に適用したものであるが、本発明は、チケット、クーポン券などの紙幣以外の紙葉類を識別するための紙葉類識別機としても用いることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用した紙幣識別機の平面図である。
【図2】開閉ユニットを開いた状態の紙幣識別機の斜視図である。
【図3】紙幣識別機の内部構成を示す説明図である。
【図4】紙幣識別機の本体ユニットの平面図である。
【図5】カートリッジ式搬送ユニットの着脱方向を示す説明図である。
【図6】カートリッジ式搬送ユニットの平面図および斜視図である。
【図7】(a)はベルトプーリを示す説明図であり、(b)はその駆動軸およびウォームホイールの一体射出成形品の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 紙幣識別機
2 本体ユニット
3 凹部
4 開閉ユニット
5 挿入口蓋ユニット
6a、6b 支軸
7a、7b 係合レバー
7c、7d 係合溝
8 紙幣挿入口
9 紙幣挿入路
9a、9b 入口センサ
10 紙幣搬送路
10a 紙幣排出口
11〜14 透過型ホトセンサ
11a〜14a 発光素子
11b〜14b 受光素子
15 磁気ヘッド
16 押圧ローラ
17a、17b 出口センサ
20 シャッタ機構
20a シャッタ片
21a、21b 駆動プーリ
22a〜24a、22b〜24b アイドラプーリ
25a、25b 搬送ベルト
26 搬送用モータ
27 減速歯車列
27a ウォーム歯車
27b ウォームホイール
28 駆動軸
31a〜34a、31b〜34b 押圧ローラ
40 カートリッジ式搬送ユニット
41 ユニットベース
42、43 プーリ取付部
42a、42b、43a、43b 側板部分
42c、42d、43c、43d 円弧溝
44 ガイド板部分
45a、45b ねじ挿入穴
46a、46b 固定ねじ
50 搬送ユニット装着部
52、53 挿入溝
54 挿入部
55 ガイド板部分
56a、56b ねじ穴
210 ベルトプーリ
211 プーリ本体
212 中心貫通孔
213、214 軸端部
215 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入された紙葉類を搬送するための紙葉類識別機の搬送機構において、
駆動プーリと、
アイドラプーリと、
これらに張架した搬送ベルトとを備え、
前記駆動プーリおよび前記アイドラプーリとして、同一形状および同一大きさの共通のベルトプーリが用いられていることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類識別機の搬送機構において、
前記ベルトプーリは、プーリ本体と、このプーリ本体の両端面から当該プーリ本体の軸線方向に同軸状態で突出している軸端部とが一体成形された成形品であることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の紙葉類識別機の搬送機構において、
前記駆動プーリを回転駆動させるための駆動軸を有し、
前記ベルトプーリは前記駆動軸を差し通すことのできる中心貫通孔を備えており、
前記駆動軸および前記中心貫通孔は、それらの軸線に直交する方向の断面形状が、相補的な形状とされ、しかも、前記駆動軸は前記中心貫通孔に沿ってこれらの軸線の方向に相対移動可能であり、前記軸線を中心とする回転方向には一体回転可能な形状とされており、
前記駆動プーリとして用いている前記ベルトプーリに前記駆動軸が差し通されていることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項4】
請求項3に記載の紙葉類識別機の搬送機構において、
前記駆動軸の断面形状および前記ベルトプーリの中心貫通孔の孔断面形状は十文字形状であることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項5】
請求項3または4に記載の紙葉類識別機の搬送機構において、
前記駆動軸は、その軸端に駆動力伝達歯車が同軸状態で一体成形された成形品であることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項6】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の紙葉類識別機の搬送機構において、
前記ベルトプーリは、プーリ本体と、このプーリ本体の軸線方向の一端に形成されたベルト脱落防止用の円盤状のフランジとを備えており、
前記フランジが左右に交互に向く状態に前記駆動プーリおよび前記アイドラプーリとして用いられている各ベルトプーリが配置され、これにより、前記搬送ベルトが各ベルトプーリから外れることが防止されることを特徴とする紙葉類識別機の搬送機構。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載の搬送機構を備えていることを特徴とする紙葉類識別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−42945(P2009−42945A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205997(P2007−205997)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】