説明

紙葉類識別装置、および紙葉類識別方法

【課題】複数の同一内容の識別情報の全てにおいて、不明な部分があった場合でも、識別情報を認識できる紙葉類識別装置、および紙葉類識別方法を提供する。
【解決手段】利用者との間で取引される紙葉類に記載された複数の識別符号から構成される、紙葉類を識別するための識別情報を読み取る読取部と、識別符号それぞれに対応する、識別符号の識別基準となる基準識別符号を記憶する記憶部と、読取部が読み取った識別情報を構成する識別符号と記憶部が記憶する基準識別符号とに基づいて、識別符号のそれぞれが基準識別符号のいずれかに一致するか否かを判定し、識別符号のそれぞれが基準識別符号のいずれにも一致しないと判定した場合、一致しないと判定された識別符号と、基準識別符号のそれぞれとが一致する度合いに基づいて識別符号を特定することにより、読取部が読み取った識別情報を識別する識別部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類に記載されている、記番号等の識別情報を認識して紙葉類を識別する紙葉類識別装置、および紙葉類識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙幣、小切手、手形や商品券等の紙葉類(以下、これらを代表して単に紙幣と呼ぶ。)上には、その紙幣を一意に特定するための識別情報が記載されている。近年、例えば、金融機関等の店舗では、紙幣上から、識別情報として記番号を認識し、認識した記番号をデータベースに登録しておき、利用者が取引した紙幣を管理する紙幣管理装置等の紙葉類管理装置が設置されている。
【0003】
また、諸外国では、金融機関の現金自動預け払い機(以下、単にATM(Automated teller machine)と呼ぶ。)から偽造紙幣が出金されたというようなクレームが多発している。このため、金融機関では、その偽造紙幣が、実際に利用者が出金した紙幣であるか否かを記番号で管理する必要性がある。紙幣の記番号を読み取って管理することにより、偽造紙幣が出金されたというようなクレームが発生したとしても、その出金紙幣が、実際に利用者が取引した紙幣であるか識別可能となるため、このようなクレームに対処することができる。
【0004】
しかしながら、従来の紙葉類管理装置では、紙幣上から記番号を文字認識する際、例えば、紙幣の汚れ等の紙幣の状態によっては、紙幣上の記番号が文字認識できないような場合も多数存在する。そのような場合に対応するために、例えば、特許文献1には、紙葉類の識別情報の認識において、複数の位置にある同一の識別情報を読み取ることで、ある識別情報の一部が認識不能あったとしても、他の識別情報で認識可能であれば、その内容で識別情報を特定することが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2010/032335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術では、同じ媒体の識別情報を識別し、複数の位置にある同一の識別情報の全てにおいて、不明な部分があった場合、識別情報を決定することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、複数の同一内容の識別情報の全てにおいて、不明な部分があった場合でも、識別情報を認識できる紙葉類識別装置、および紙葉類識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる紙葉類識別装置は、利用者との間で取引される紙葉類に記載された複数の識別符号から構成される、前記紙葉類を識別するための識別情報を読み取る読取部と、前記識別符号それぞれに対応する、前記識別符号の識別基準となる基準識別符号を記憶する記憶部と、前記読取部が読み取った前記識別情報を構成する前記識別符号と前記記憶部が記憶する前記基準識別符号とに基づいて、前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれかに一致するか否かを判定し、前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれにも一致しないと判定した場合、一致しないと判定された識別符号と、前記基準識別符号のそれぞれとが一致する度合いに基づいて前記識別符号を特定することにより、前記読取部が読み取った前記識別情報を識別する識別部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記紙葉類識別装置で行われる紙葉類識別方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、識別情報の認識性能の高い紙葉類識別装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】紙幣取り扱い装置の構成例を示す図である。
【図2】現金自動取り扱い装置の制御ブロックを示す図である。
【図3】現金自動取り扱い装置の概略を示す図である。
【図4】一般的な記番号の配置の例を示す図である。
【図5】記番号認識処理で求められる一致度の例を示す図である。
【図6】記番号認識のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる紙葉類識別装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、本発明にかかる紙葉類識別装置を紙幣取扱装置に適用した場合の例について説明しているが、これに限らず、例えば、商品券やくじ券、投票券といった、識別情報によって管理することが必要となる各種の券類、紙葉類にも適用することができる。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかる紙幣取扱装置106の構成を示す図である。紙幣取扱装置106は、後述するように、図2に示す現金自動取引装置103の一機能を構成するユニットあるいは装置である。図1に示すように、紙幣取扱装置106は、利用者である顧客が入金するために投入される紙幣を受け入れ、又は顧客が所望する紙幣を出金するために放出する入出金部1と、投入された紙幣を搬送する搬送路2と、搬送される各紙幣の金種、あるいはその真偽若しくは状態を判別する紙幣識別装置3と、を含んで構成されている。特に、この紙幣識別装置3は、当該紙幣の識別情報(例えば、紙幣に印刷された記番号など、紙幣を一意に識別するための識別情報)を読取る識別情報読み取り部115と、読み取られた識別情報を認識する識別情報認識部116と、を有している。
【0014】
また、紙幣取扱装置106は、図1に示すように、上述した紙幣識別装置3のほか、物理的には、紙幣を一時的に保管する一時保管庫4と、流通に適さない紙幣を収納するためのリジェクト庫5と、搬送路2により搬送される紙幣の通過を検知する通過センサ6と、紙幣の搬送方向を切り換えるゲート7と、紙幣を収納する収納庫8および9と、紙幣取扱装置106の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置から構成される制御部(図2に示す制御部104)と、を有している。
【0015】
図1に示すように、入出金部1内には、利用者が入金した紙幣を受け入れるホッパ10と、主にリジェクトされた紙幣を利用者に放出して返却するリジェクトスタッカ11とが含まれている。紙幣取扱装置106が紙幣を出金する場合、制御部104からの制御により、搬送路2を動作させ、収納庫8または9のいずれかから紙幣を搬出する。本実施の形態では、収納庫8および9は、入金された紙幣を出金にも供するリサイクル機能を備えたリサイクル庫である。具体的には、収納庫8および9に収納された紙幣は、以降の利用者による取引の際に出金紙幣として利用され、例えば、収納庫8には万円紙幣、収納庫9には千円紙幣を収納し、制御部104によって、そのリサイクル動作が設定されている。なお、リジェクト庫5は、上述したリサイクル機能を備えず、リジェクト庫5に収納された紙幣は、以降の利用者による取引の際に、利用されることはない。
【0016】
図2は、ホストコンピュータ101、サーバ102と接続された紙幣取扱装置106を有した現金自動取引装置(ATM(Automated teller machine))103のブロック図である。現金自動取引装置103は、銀行等の金融機関やコンビニエンスストア等に設置されるものであり、図3は、その現金自動取引装置103の外観を示している。ホストコンピュータ101およびサーバ102は、現金自動取引装置103の上位装置であり、現金自動取引装置103と取引情報の送受信や顧客情報の管理を行い、顧客の口座番号や口座に対応した預入金額などの取引情報を記憶する。紙幣取扱装置106の制御部104は、図1に示したゲート7の動作による紙幣の搬送先の決定や、搬送路2による紙幣の搬送の制御や、紙幣取扱装置106を構成する種々のユニット(入出金部1、紙幣識別装置3、記憶部105、107、108等)を制御する。
【0017】
このように、制御部104は紙幣取扱装置106全体の制御を行う。なお、この制御を行うためのプログラム、ソフトウェア、ミドルウェア等の情報は、例えば、メモリ等の記憶媒体から構成される記憶部105に記憶され、現金自動取引装置103の起動時に、現金自動取引装置103からの指示に従って、制御部104が、各種のプログラムを記憶部105にロードし、上述した各部の動作を制御する。なお、この記憶部105は制御部104の一部として構成しても良い。
【0018】
図1にて説明のとおり、紙幣識別装置3は、各紙幣の真偽、金種を判別する処理と共に、紙幣の識別情報を読み取る。なお、以下では、記憶部105のハードウェア構成は、物理的に1つであり、論理的に記憶部105のエリアを2つに分けて情報を記憶し、それぞれ記憶部A107および記憶部B108と定義する。記憶部A107は、一時保管庫4に一時的に保管された紙幣について、一時保管庫4から制御部104が決定した紙幣の搬送先に紙幣を搬送する際に識別情報読み取り部115が読み取り、その後、識別情報認識部116が判別した紙幣の識別情報を記憶する。また、記憶部A107は、後述するように、個々の記番号が認識不能となった場合において比較対象の候補(基準)となる個々の記番号(例えば、英数字)や、その記番号のインクの色に関する情報(明度、彩度等)を記憶する。なお、以下では個々の記番号(各桁の記番号のそれぞれ)は識別符号を意味する。
【0019】
一方、記憶部B108は、入出金部1に入金された紙幣を一時保管庫4に搬送する処理である紙幣の入金計数処理時に、紙幣識別装置3が読み取った紙幣の識別情報、紙幣識別装置3が判別した判別情報(紙幣の金種、真偽又は状態を判別した情報をいう。)、及び入金順番情報(入金計数時の紙幣の搬送順番をいう)を記憶する。
【0020】
図2および図3において、通帳取扱装置109は、顧客から挿入される通帳を取り込み、主に通帳への記帳処理、印字処理を行い、これらの処理が行われた後の通帳を顧客に返却する。明細票発行装置110は、利用者との間で行われた取引の内容を印字した取引明細票を発行する。カード取扱装置111は、キャッシュカード等の磁気ストライプカードに貼付された磁気ストライプや、キャッシュカード等にICチップが搭載されている場合には、そのICチップの読み取り又は書き込み処理を行う。操作部112は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のパネルであり、現金自動取引装置103において取引可能な操作画面を表示するとともに、顧客や係員、保守員からの操作入力を受付ける。本体制御部114は、現金自動取引装置103全体を制御し、本体制御部記憶装置113は、その制御のために必要なプログラム等やカードデータ等を記憶する。
【0021】
現金自動取引装置103は、顧客との間で種々の取引を実行するが、代表的な取引として入金取引と出金取引とがある。入金取引では、顧客によって投入された紙幣を入出金部1が受け付け、その後、操作部112が顧客から投入した金額を確認するための操作を受け付ける。この際、操作部112に表示された金額で良いと判断した場合には、顧客は確認(OK)ボタンを押下して取引を終了する一方、操作部112に表示された金額で良くないと判断した場合には、顧客は返却(NG)ボタンを押下し、投入した紙幣を返却して取引を終了する。これらの異なる利用者の要求を満たすために、以下では、図1及び図2にて説明した紙幣取扱装置106では、1つの入金取引において、入金計数処理と入金収納処理との2つの機能を有しており、以下、入金計数処理について最初に概要を説明する。
【0022】
入金計数処理では、まず、利用者により入出金部1に紙幣が投入されると、紙幣取扱装置106は、入出金部1のホッパ10から紙幣を1枚ずつ分離し、搬送路2上に搬出する。搬送路2上を搬送される各紙幣は、紙幣識別装置3によって、搬出されたその金種や真偽が判別され、更には紙幣を判別する及び当該紙幣の識別情報を読み取る。このとき、紙幣取扱装置106の制御部104は、紙幣識別装置3の紙幣を判別した判別結果である判別情報に基づき、紙幣の搬送先を決定する。 この搬送先の決定においては、制御部104は、紙幣識別装置3により真券であると判別された紙幣の搬送先を、収納庫8,9の運用方法に合わせて決定する。例えば、収納庫8には万券を収納するとした運用方法においては、紙幣識別装置3により紙幣の種類が万券であると判別された場合は、制御部104は、当該紙幣の搬送先を収納庫8に決定する。
【0023】
また、制御部104は、紙幣識別装置3により真券であると判別された紙幣であっても、汚れや破れありと判別された紙幣(流通に適さない紙幣)については、その搬送先をリジェクト庫5に決定する。汚れや破れのある紙幣は、流通に適さないためである。さらに、制御部104は、紙幣識別装置3により真券でない又は疑わしい紙幣と判別された紙幣の搬送先も、リジェクト庫5に決定する。紙幣識別装置3により真券でない又は疑わしい紙幣と判別された紙幣が、再度出金されると、法令等にてらして規則違反となるためである。また、制御部104は、紙幣識別装置3により金種が判別できない紙幣、寸法が異常な紙幣などであると判別された紙幣の搬送先を、入出金部1のリジェクトスタッカ11に決定する。紙幣として認められないと判断し、利用者に返却するためである。
【0024】
このように、紙幣取扱装置106は、紙幣識別装置3により判別された紙幣のうち、金種が判別できない、寸法が異常などの紙幣は一時保管庫4を介さずに入出金部1に搬送して利用者に返却するが、それ以外の紙幣(真券、偽券、疑わしい券等)は、真券と判別された紙幣を、制御部104が決定した搬送先に搬送する前に、一時保管庫4に搬送する。紙幣識別装置3により真券でない又は疑わしい紙幣であると判別された紙幣も、制御部104が決定した搬送先に搬送する前に、一時保管庫4に搬送する。
【0025】
一方、入金計数処理における返却処理では、紙幣取扱装置106は、紙幣識別装置3により金種が判別できない紙幣、寸法が異常な紙幣などであると判別された紙幣については、一時保管庫4を介さずに、入出金部1のリジェクトスタッカ11に搬送し、利用者に返却する。続いて、図1及び図2の紙幣取扱装置106を用いた紙幣の入金取引における入金収納処理の概要に関して説明する。
【0026】
入金収納処理では、紙幣取扱装置106は、操作部112に紙幣を計数した結果を示し、利用者に対して利用者の入金した入金額との一致を確認させた後に、制御部104が決定した搬送先に紙幣を搬送するときの紙幣取扱装置106の処理を示す。また、紙幣取扱装置106は、操作部112にて表示した入金金額の確認において、上述した返却ボタンの押下によって利用者に入金取引を取り消されたとき時は、一時保管庫4に一時的に保管された計数した紙幣を入出金部1に返却する。
【0027】
紙幣取扱装置106は、制御部104が決定した搬送先に従い、紙幣を一時保管庫4から搬送路2上に搬出する。搬送路2上に搬送される紙幣は紙幣識別装置3によって再び判別され、紙幣取扱装置106は、搬送路2上の通過センサ6で紙幣を監視し、ゲート7を切り替え、制御部104が決定した搬送先(収納庫8、収納庫9、リジェクト庫5)に紙幣を搬送し、各収納庫に収納する。最後に、図1及び図2の紙幣取扱装置106を用いた紙幣の出金取引における出金処理では、の概要を説明する。
【0028】
出金処理では、紙幣取扱装置106は、出金庫4、収納庫8、9の各金種毎の収納庫(金庫)から所定の枚数づつ紙幣を繰出し、紙幣識別装置3で、紙幣を判別し、入出金部1に収納し、利用者に支払われる。このとき、出金リジェクトが発生した場合には、その紙幣は一時保管庫、リジェクト庫5に収納され、不足分の紙幣を収納庫8,9よりが追加して繰出す。このように、紙幣取扱装置106では、主として入金計数処理、入金収納処理、出金処理の3種類の処理が行われている。
【0029】
ここで、紙幣識別装置3が紙幣上の識別情報である記番号を認識する処理について、図6を用いて説明する。
【0030】
一般的に、図4に示すように、紙幣には1枚の紙幣上の2箇所に同じ記番号が記載されていることが多い。そこで、紙幣識別装置3は、図4のような紙幣が搬送されると、識別情報読み取り部115により、2箇所に記載された記番号(記番号A、記番号B)を読み取り、識別情報認識部116で記番号の各桁において文字認識を行う(ステップS10)。このとき、図5に示すように、識別情報認識部116による文字認識の結果が、例えば、図4に示した記番号A、Bのうち、記番号Aは“ABC12*4*6”、記番号Bは“ABC12*4**”であり、認識不能であった文字*を含むものであったとする。
【0031】
次に、識別情報認識部116は、各桁において記番号A、記番号Bの両方が認識不能の文字であるか否かを判定する(ステップS11)。そして、識別情報認識部116は、その判定結果が否である、すなわちいずれかの記番号が認識可能であると判定した場合(ステップS11;No)、同じ桁に記載された認識可能な文字で、認識不能と判定された個々の記番号を確定する(ステップS20)。例えば、上述した2つの紙幣の記番号のうち、9桁目は、記番号Aが“6”記番号Bが“*”であるため、その判定結果は否となり、認識不能であった記番号Bの9桁目の認識結果は“6”となる。
【0032】
一方、識別情報認識部116は、その判定結果が両方の記番号が認識不能であると判定した場合(ステップS11;Yes)、識別情報判別部116は、不明となった桁の記番号と、記憶部A107が記憶する候補文字との一致度を計算し、一致度があらかじめ定められた閾値以上となった候補文字とその一致度とを対応付けて記憶部A107に記憶する(ステップS12)。この一致度は、例えば、基準となる実際に紙幣に印字される記番号のインクの色に関する情報(明度、彩度等)の値や、記番号の形状と、あらかじめ記憶部A107に記憶されている記番号の形状との重複度合い等によって定められる。
【0033】
なお、上述した候補文字とは、記番号を認識する対象となる文字や数字、記号等から構成される個々の記番号(記番号となる可能性のある情報の集合体)の候補を意味し、例えば、記番号が数字の場合、“0”,“1”,“2”,“3”,“4”,“5”,“6”,“7”,“8”,“9”が候補文字となる。また、上述した一致度とは、記番号を構成する候補文字との類似の度合いを示している。上記類似の度合いは、個々の記番号の形状によって、光学的、さらには磁気的に類似する度合いを示している。
【0034】
例えば、図4に示した例では、認識不能となった記番号の桁は、数字の3桁目、5桁目は記番号A、記番号Bともに認識不能である。そこで、識別情報認識部116は、それぞれの桁の記番号について、候補文字(例えば、0〜9の数字)との一致度を計算する。この場合、記番号Aの3桁目の数字に対する候補文字と一致度とを求めると、図5に示すように、それぞれ、“0:20%,1:10%,2:30%,3:80%,4:10%,5:30%,6:40%,7:10%,8:60%,9:40%”であり、記番号Aの5桁目の数字は、“0:20%,1:30%,2:40%,3:20%,4:10%,5:60%,6:40%,7:10%,8:40%,9:40%“であり、これらの値を対応付けて記憶部A107に記憶する。
【0035】
これと同様に、識別情報認識部116は、記番号Bの3桁目の数字は、”0:20%,1:10%,2:30%,3:70%,4:10%,5:30%,6:50%,7:10%,8:40%,9:40%“であり、記番号Bの5桁目の数字は、”0:20%,1:30%,2:40%,3:20%,4:10%,5:40%,6:50%,7:10%,8:40%,9:40%“であり、これらの値を対応付けて記憶部A107に記憶する。
【0036】
そして、例えば、閾値として50%以上の一致度の候補文字とその一致度を記録することにすると、識別情報認識部116は、記番号Aの3桁目は“3:80%,8:60%”、記番号Aの5桁目は“5:60%“、記番号Bの3桁目は”3:70%,6:50%“、記番号Bの5桁目は”6:50%“を記憶部A107に記憶する。
【0037】
次に、識別情報認識部116は、各桁において記録した一致度を、各文字ごとに合算する(ステップS13)。例えば、上述した例では、3桁目の候補文字”3”は、記番号Aでは一致度が80%”であり、記番号Bでは一致度が70%であるため、合算された一致度は150%となる。これと同様に、3桁目の候補文字”6”の一致度は50%、3桁目の候補文字”8”の一致度は60%となる。また、5桁目の候補文字”5”の一致度は60%、5桁目の候補文字”6”の一致度は50%となる。
【0038】
そして、識別情報認識部116は、各桁において、一致度の最大のもので、各文字の一致度を除算し、新たな一致度(一致割合)として記録する(ステップS14)。例えば、3桁目の候補文字の一致度のうち最大のものは150(%)であるため、一致割合は、3桁目の候補文字“3”では1、候補文字“6”では0.33、候補文字“8”では0.4となり、5桁目の候補文字“5”では1、候補文字“6”では0.83となる。
【0039】
次に、識別情報認識部116は、各桁において最大である一致割合以外の一致割合が、記憶部A107に記憶された所定の閾値以下か否かを判定し(ステップS15)、その一致割合が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS15;Yes)、識別情報認識部116は、一致割合が最大である候補文字を、その桁の認識結果とする(ステップS16)。例えば、所定の閾値が0.5である場合、3桁目では、その一致割合が所定の閾値以下であると判定され、一致割合が最大である“3”が3桁目の認識結果となる。
【0040】
一方、識別情報認識部116は、その一致割合が所定の閾値以下ではないと判定した場合(ステップS15;No)、一致割合が所定の閾値より大きい候補文字の組み合わせにより、特殊文字を定義する(ステップS30)。例えば、所定の閾値が0.5である場合、5桁目では、その一致割合が所定の閾値以下ではないと判定され、5桁目の候補文字は”5”、”6”であるが、これらに代えて、例えば、“#”といった特殊文字を定義する。
【0041】
そして、識別情報認識部116は、各桁において定義された特殊文字を、その桁の認識結果として設定する(ステップS31)。例えば、上述した例では、5桁目の認識結果は“#”となる。このステップS31またはステップS16、ステップS20の処理のうちのいずれかの処理が終了すると、図6に示した全ての処理が終了する。
【0042】
このように、紙幣識別装置3は、例えば、上記のような手続きを全ての桁において行うことで、紙幣の識別情報である記番号を、従来の手法よりより高精度に決定することが可能となる。すなわち、複数の同一内容の記番号の全てにおいて、不明な部分があった場合でも、記番号を決定することが可能となる。例えば、上記記番号の一部の文字が識別不能であった場合、各文字の一致度が高い認識候補情報を基に識別不能である文字を決定する。
【0043】
また、上記実施形態では紙幣上の異なる位置に記された2つの記番号を認識する場合の例について説明したが、例えば、入金計数処理、入金収納処理、出金処理等の各種の処理が実行されるタイミングで読み取られ、記憶部A107に記憶された桁の記番号に関する一致度、一致割合等の情報を、これらの処理で共通して使用することも可能である。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0045】
1…入出金部
2…搬送路
3…紙幣識別装置
4…一時保管庫
5…リジェクト庫
6…通過センサ
7…ゲート
8…収納庫
9…収納庫
10…ホッパ
11…リジェクトスタッカ
101…ホストコンピュータ
102…サーバ
103…現金自動取引装置
104…制御部
105…記憶部
106…紙幣取扱装置
107…紙幣識別装置記憶装置A
108…紙幣識別装置記憶装置B
109…通帳取扱装置
110…明細票発行装置
111…カード取扱装置
112…操作部
113…本体制御部記憶装置
114…本体制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者との間で取引される紙葉類に記載された複数の識別符号から構成される、前記紙葉類を識別するための識別情報を読み取る読取部と、
前記識別符号それぞれに対応する、前記識別符号の識別基準となる基準識別符号を記憶する記憶部と、
前記読取部が読み取った前記識別情報を構成する前記識別符号と前記記憶部が記憶する前記基準識別符号とに基づいて、前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれかに一致するか否かを判定し、前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれにも一致しないと判定した場合、一致しないと判定された識別符号と、前記基準識別符号のそれぞれとが一致する度合いに基づいて前記識別符号を特定することにより、前記読取部が読み取った前記識別情報を識別する識別部と、
を備えることを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記紙葉類には、同一内容の前記識別情報が複数記載され、
前記読取部は、前記識別情報をそれぞれ読み取り、
前記識別部は、前記読取部によって読み取られたそれぞれの前記識別情報の中で同一の識別符号があるか否かを判定し、前記識別情報の中で同一の識別符号があると判定した場合、同一であると判定した前記識別符号のうちの一の識別符号を他の識別符号とみなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記識別部は、前記識別情報に含まれる前記識別符号の全てが識別できないと判定した場合に、認識できない前記識別符号を前記度合いに基づいて特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記識別部は、前記読取部が読み取ったそれぞれの前記識別符号のうちの、同一の識別符号についての前記度合いを合算した合算一致度を算出し、算出した前記合算一致度が最大となる最大合算一致度に対する前記合算一致度の割合に基づいて、前記識別符号が前記基準識別符号のいずれに一致するか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記識別部は、前記合算一致度が前記最大合算一致度に対する割合が所定の閾値以下である場合に、前記最大合算一致度であると算出された前記基準識別符号を前記識別符号として決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記識別部は、前記識別符号が前記基準識別符号および前記他の識別符号のいずれによっても識別できないと判定した場合、識別できなかった識別符号に、その旨を示す識別符号を設定する、
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の紙葉類識別装置。
【請求項7】
前記読取部は、磁気的または光学的な画像情報として前記識別情報を読み取る、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙葉類識別装置。
【請求項8】
利用者との間で取引される紙葉類に記載された複数の識別符号から構成される、前記紙葉類を識別するための識別情報を読み取る読取ステップと、
前記読取部が読み取った前記識別情報を構成する前記識別符号と、記憶部が記憶する前記識別符号それぞれに対応する、前記識別符号の識別基準となる基準識別符号とに基づいて、前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれかに一致するか否かを判定する判定ステップと、
前記識別符号のそれぞれが前記基準識別符号のいずれにも一致しないと判定された場合、一致しないと判定された識別符号と、前記基準識別符号のそれぞれとが一致する度合いに基づいて前記識別符号を特定することにより、前記読取部が読み取った前記識別情報を識別する識別ステップと、
を含むことを特徴とする紙葉類識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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