説明

紙葉類識別装置

【課題】
作業員の熟練度にかかわらずセンサ部と対向部の位置決めを容易かつ正確に行える紙葉類識別装置を提供する。
【解決手段】
紙幣識別装置10に、紙葉類から識別用の検出を行う磁気センサ45を有する磁気センサ部40と、該磁気センサ部40と対向して配された対向ローラ部50と、前記対向ローラ部50を前記磁気センサ部4に近づく方向へ付勢することで位置決めベアリング51を位置決め部材42に当接させる付勢部60とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば紙幣に代表される紙葉類の金種や真偽を識別するような紙葉類識別装置に関し、特にセンサ部と対向部の位置調整を容易に行えるような紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類識別装置は、紙葉類の種類や真偽を識別するために、光学式センサ、磁気センサ、または感圧センサ等、種々のセンサが設けられている。これらのセンサは、充分な識別精度を確保するために位置調整が必要であり、この位置調整は、ネジ止め等によって製造時に行われている。
【0003】
このようなセンサの位置調整を行う装置として、磁気ヘッド取付調整装置が提案されている(特許文献1参照)。この磁気ヘッド取付調整装置は、先端が曲面でその一部に模様検出用のスリット面が設けられた磁気ヘッドを、前記紙葉類に前記曲面が接触した状態のまま回転可能とすることで、前記スリット面が前記紙葉類との接触部に位置するように調整できる装置である。
この磁気ヘッド取付調整装置により、磁気ヘッドのスリットがずれた位置にある場合に、磁気ヘッドの姿勢調整が簡単に行えるとされている。
【0004】
しかし、姿勢調整が簡単であってもその調整を行うのは作業員であり、人手による調整であることに変わりはない。このため、姿勢調整後の磁気ヘッドの読み取り精度や、姿勢調整に要する作業時間は、作業員の経験と熟練度によって大きく影響される。
【0005】
一方、紙葉類を搬送して識別する以上、運用中に紙葉類がセンサ類近傍で詰まってしまうトラブルが発生する。このような場合に詰まった紙葉類を取り出そうとすると、センサ類が邪魔になる。
【0006】
ここで、センサ類に触れることなく詰まった紙葉類を除去できれば良いが、センサ類を一旦取り外さないと詰まった紙葉類を除去できない場合、除去した後にセンサ類の位置調整を再度行う必要が生じる。
【0007】
前述した磁気ヘッド取付調整装置は、このような再調整を行う場合に、最初の調整と同様の調整を再度行わなければならず、この再調整をなくせるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開昭52−121309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述の問題に鑑み、メンテナンス後のセンサ部と対向部の位置決めを作業員の熟練度にかかわらず容易かつ正確に行える紙葉類識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、紙葉類識別装置であって、センサ部と対向部との少なくとも一方を互いが近づく方向へ付勢することで該一方の一部を他方の一部に当接させる付勢部を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、ベースとカバーとの対向面間に搬送路を形成し、センサ部と対向部のいずれか一方を前記ベースに配して他方を前記カバーに配し、前記カバーと前記ベースとの開閉をロックするロック部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、ロック部としてのフック部が係合部にフッキングしたことを検出するフッキング検出手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、メンテナンス後のセンサ部と対向部の位置決めを作業員の熟練度にかかわらず容易かつ正確に行える紙葉類識別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、自動取引装置の1つであって、銀行等の金融機関に設置されるATM1の斜視図を示す。このATM1は、装置本体の上部前面に、通帳の投入を許容する通帳挿入口2と、硬貨の入出金を行う硬貨入出金口3と、カードの挿入を許容するカード挿入口4と、紙幣の入出金を行う紙幣入出金口5と、顧客に取引操作を表示案内するタッチパネル兼用のCRT6とを備えている。この構成により、ATM1は、入金、出金、振込み、通帳記入、および残高照会等の取引を許容している。
【0015】
このATM1の取扱い操作について説明すると、ATM1の内部に設けられた制御装置(図示省略)が、取引項目別の入力案内、操作手順、および受入れ案内等の各種取引の案内情報をCRT6に表示し、この表示に基づいて顧客にタッチ入力された取引を実行する。
【0016】
図2は、ATM1に内蔵される紙幣処理装置7の内部構成図を示す。この紙幣処理装置7は、上部一側に顧客が紙幣を出し入れする紙幣入出金口5を開口し、この紙幣入出金口5と搬送路9で連通する内方に紙幣の真偽識別および金種識別を行う紙幣識別装置10が設けられている。
【0017】
紙幣識別装置10の後段には、紙幣識別装置10に導かれた紙幣を適正と判定したときに一時保留する一時保留部、および識別不良と判定したときに識別不良紙幣を返却保留する返却保留部が、搬送路9で連通されて設けられている。
【0018】
さらにその後段には、第1〜第3出金カートリッジのそれぞれから搬送路9への紙幣の受け渡しを行う各繰出ユニット、搬送路9から入金カートリッジへ紙幣の受け渡しを行う集積ユニット、および、搬送路9から直接紙幣を受入れる回収/リジェクトカートリッジが設けられている。
【0019】
紙幣処理装置7の天板8は、図中点線で示すように開閉可能に枢支されている。また、紙幣識別装置10には、カバー13および拡張カバー15が図中点線で示すように開閉可能に枢支されている。これらの天板8、カバー13および拡張カバー15は、同方向へ開閉するように構成されている。
【0020】
以上の構成により、紙幣処理装置7は、入金処理、出金処理および精査処理等の処理指令に応じた搬送処理を実行できる。搬送路9で紙幣が詰まった場合などメンテナンスを行う際には、天板8を開操作できるため、容易にメンテナンスすることができる。
【0021】
特に紙幣識別装置10内で紙幣が詰まった場合など紙幣識別装置10のメンテナンスが必要な際には、天板8と同方向にカバー13および拡張カバー15を開操作できるため、作業者は同じ立ち位置で天板8、カバー13および拡張カバー15を開操作することができて作業が楽であるとともに、メンテナンスを容易に行える。
【0022】
次に、紙幣識別装置10の構成について説明する。
図3は本体ユニット11および拡張ユニット12が開状態の紙幣識別装置10を後方から見た斜視図を示し、図4は本体ユニット11が開状態で拡張ユニット12が閉状態の紙幣識別装置10を前方から見た斜視図を示し、図5は本体ユニット11が閉途中状態で拡張ユニット12が閉状態の紙幣識別装置10を前方から見た斜視図を示し、図6は本体ユニット11および拡張ユニット12が閉状態の紙幣識別装置10を前方から見た斜視図を示し、図7は拡張ユニット12を取り外した状態で本体ユニット11が閉状態の紙幣識別装置10を後方から見た斜視図を示す。
【0023】
紙幣識別装置10は、本体ユニット11の後方(図4の左側)に拡張ユニット12が接続されて構成されている。本体ユニット11は、ベース14にカバー13が回転軸24で軸支されて構成されており、拡張ユニット12は、拡張ベース16に拡張カバー15が回転軸25で軸支されて構成されている。
【0024】
閉状態のときにカバー13とベース14とが対向する対向面間には搬送路28(図4参照)が設けられており、カバー13とベース14とに上下に対向配置された複数のローラ21で紙幣を搬送するように構成されている。
また拡張ユニット12は、閉状態のときに拡張カバー15と拡張ベース16とが対向する対向面間に搬送路29(図3参照)が設けられており、拡張カバー15と拡張ベース16とに上下に対向配置された複数のローラ21で紙幣を搬送するように構成されている。
【0025】
この搬送路28と搬送路29は一直線に連続しており、本体ユニット11の前方から受け入れた紙幣を直線的に搬送して拡張ユニット12の後方から排出する構成になっている。
【0026】
また、カバー13と拡張カバー15は、図3に示すように同じ方向に独立して開閉動作し、ATM1の天板8とも同じ方向に独立して開閉動作するため(図2の仮想線参照)、カバー13を開けた後の作業(例えば詰まり紙幣の除去などの作業)が容易に行える。
【0027】
前記カバー13は、搬送路28との対向面(下面)に、画像センサ部30(図4参照)、および磁気センサ部40(図4参照)が前方からこの順で設けられている。
【0028】
前記カバー13の左右両側面の各前方部分には、搬送路28の搬送幅方向と平行な回転軸98に回転可能に枢支されたフック部90が左右対称にそれぞれ独立して設けられている。なお、左右の両フック部90,90は、互いに連動して同一角度に同時回転するように連結して構成してもよい。
【0029】
前記カバー13の左側面の略中央位置には、ATM1に電気的に接続するための3つの接続コネクタ23が設けられている。これにより、カバー13に設けられたローラ21、画像センサ部30、および磁気センサ部40等の電気的要素は、電力の供給を受けると共に各種制御信号を受信することができ、検出した検出信号をATM1に送信することができる。
【0030】
ベース14は、搬送路28との対向面(上面)に、光源部70(図4参照)、対向ローラ部50(図4参照)、および複数の固定ローラ83(図7参照)が前方からこの順で設けられている。
【0031】
ここで複数の固定ローラ83は、いずれもステンレスなどの硬度が高く変形しない金属部材で断面中実に形成された円筒形のローラであり、搬送幅方向と平行に回転軸が備えられて搬送方向に回転する。
【0032】
固定ローラ83の上方には、搬送路28(図3参照)を挟んで感圧センサ部80が設けられている。この感圧センサ部80は、図7に示すように、3つの変位ローラ81が搬送幅方向の回転軸に回転可能に枢支されており、その左右外側には、少なくとも外周が変形可能なゴム等の弾性部材で形成されたローラであるゴムローラ82が1つずつ設けられている。これらの変位ローラ81およびゴムローラ82は、前記固定ローラ83の上方に該固定ローラ83と対向して配置されている。
【0033】
前記変位ローラ81は、外周面がステンレスなどの硬度が高く変形しない金属部材で形成され、その内側に弾性変形が可能なゴムなどの弾性体が設けられている。この構成により、紙幣が搬送路28を通過する際に紙幣の厚みによって弾性体が変形して変位ローラ81(正確には変位ローラ81の外周)が持ち上がり、この持ち上がり距離(上方への変位距離)を図示省略するセンサで検出して紙幣の厚みを検出する。
【0034】
この変位ローラ81は、カバー13の回転軸に直接固定されて配置されており、カバー13が開いたときでも変位ローラ81が移動しないように構成されている。これにより、上下の位置の調整に最も精度が要求される紙幣の厚み検出について、カバー13が何度開閉されても変位ローラ81による厚み検出の精度に誤差が出ず、常に高精度の厚み検出を実現できる。
【0035】
また、両端部分のローラがゴムローラ82であるため、紙幣の厚みを誤検出することを防止できる。つまり、搬送幅方向に同軸で並設されたローラが仮に全て変位ローラ81であった場合は、両端部の変位ローラ81に紙幣の端部が掛かり、その変位ローラ81の中央まで紙幣が掛からない場合がある。このような場合、変位ローラ81は傾いてしまい、真紙幣であるにもかかわらず厚み異常と検出してしまう可能性がある。しかし、この実施形態では搬送幅方向に同軸で並設されたローラのうち両端部をゴムローラ82で構成し、この部分の厚み検出を行わないため、紙幣の掛かり具合によって変位ローラ81が傾いて紙幣の厚みを誤検出することを防止できる。
【0036】
また、前記ベース14の左側面の略中央位置には、ATM1に電気的に接続するための接続コネクタ27が設けられている。これにより、ベース14に設けられたローラ21、対向ローラ部50、および光源部70等の電気的要素は、電力の供給を受けると共に各種制御信号を受信することができ、検出した検出信号をATM1に送信することができる。
【0037】
以上の構成により、紙幣識別装置10は、紙幣を搬送路28で搬送する間に画像センサ部30、磁気センサ部40、および感圧センサ部80による金種識別と真偽識別を実行することができる。
【0038】
そして、搬送路28内で紙幣が詰まった場合、作業員はカバー13を開けて詰まった紙幣を容易に取り除くことができる。また、搬送路29内で紙幣が詰まった場合、作業員は拡張カバー15を開けて詰まった紙幣を容易に取り除くことができる。
【0039】
また、紙幣識別装置10は、拡張ユニット12を取り外した本体ユニット11だけで画像センサ部30、磁気センサ部40、および感圧センサ部80による金種識別と真偽識別を実行できるため、本体ユニット11に特別な改造をすることなくATM、両替機、券売機などの多種多様な自動取引装置に取り付けることができる。
【0040】
さらに、拡張ユニット12には種々のセンサ類を自由に取り付けることができるため、例えばそれまでの紙幣が旧紙幣となって真紙幣が発行され、この真紙幣の金種識別や真偽識別の精度を向上するために新しいセンサ類が必要となった場合にも、拡張ユニット12にこのセンサ類を取り付けるだけで対応できる。また、海外紙幣の金種の追加等に対しても、センサの追加等で対応することが可能である。従って、拡張性の高い紙幣識別装置10を提供できる。
【0041】
その上、拡張ユニット12についても拡張カバー15が開く構成であるため、拡張ユニット12内で紙幣の詰まりなどのトラブルが発生しても、拡張カバー15を開けて容易にメンテナンスすることができる。
【0042】
また、実際に運用されている紙幣識別装置10であっても、運用している場所からメーカーへ一旦引き上げるといったことをすることなく、現場で拡張カバー15を開けて新規なセンサ類を取り付けるといったことができるため、短時間で高品質な保守サービスを提供できる。
【0043】
また、最も処理時間が長い画像センサ部30を前方に配し、最も処理時間が短い感圧センサ部80を後方に配しているため、処理時間がかかるセンサ部から順に紙幣が通過することになり、全体の処理時間を短縮することができる。
【0044】
次に、磁気センサ部40と対向ローラ部50との構成について説明する。
図8は磁気センサ部40の構成図であり、図9は対向ローラ部50の構成図であり、図10は紙幣識別装置10を正面から見た断面図であり、図11は磁気センサ部40と対向ローラ部50の斜視図であり、図12は磁気センサ部40と対向ローラ部50を右側面から見た断面図であり、図13は磁気センサ部40と対向ローラ部50の位置決め動作を説明する説明図である。
【0045】
磁気センサ部40は、図10に示すように、支持体41と、複数の磁気センサ45(図10参照)と、2つの位置決め部材42とで構成され、支持体41の左右両側端がカバー13にネジ止めにより固着されている。
【0046】
前記支持体41は、高透磁率部材のひとつであるアルミニウムで搬送幅方向に細長く形成されており、その下面は凹凸のない一直線な平面に形成されている。
【0047】
前記位置決め部材42は、硬度の高い金属部材のひとつであるステンレスで形成されている。この位置決め部材42は、前記支持体41の下面の長手方向両側部に、該支持体41の下面と位置決め部材42の下面とが面一になるように埋設されている。この位置決め部材42の位置と、前記支持体41のネジ止め位置とは近接している。
【0048】
前記磁気センサ45は、前記支持体41の下面に設けられたセンサ収納孔44内に埋設され、磁気センサ45の下面が支持体41下面と面一になるように構成されている。この磁気センサ45の配置は、紙幣識別装置10を提供する国の紙幣に合わせて自由に設定できるが、例えば、センサ収納孔44の両端には1つ若しくは2つずつ設け、センサ収納孔44の中央部には間隔を詰めて密に複数配設し、該中央部と前記両端部との間には間隔を開けて粗に配設する。
【0049】
このように配置した場合は、搬送する紙幣から重要な情報を集中的に検出することができ、同数の磁気センサ45を満遍なく配設した場合に比べて効率よく高精度な検出ができる。また、満遍なく磁気センサ45を密に配設した場合に比べて、低コストに提供することができると共に、識別処理の所要時間を短くすることができる。また、サイズの異なる様々な紙幣にも適切に対応できる。
【0050】
前記対向ローラ部50は、軸体53と、複数の対向ローラ52と、位置決めベアリング51とで構成されている。
前記軸体53は、搬送幅方向と平行な回転軸で回転するように搬送路28の搬送幅の両端で軸支されている。該軸体53の両端には、図9に示すように、駆動ローラ58,58が固着されており、この駆動ローラ58,58に架けられたベルト59,59を通じて、ステッピングモータ等の適宜の駆動手段の駆動力を得て搬送方向に回転する。
【0051】
前記対向ローラ52は、搬送幅方向に7つ横並びに配され、各対向ローラ52の回転軸に前記軸体53が挿通されている。この複数の対向ローラ52は、全て直径が同一であり、いずれも軸体53に固着されて該軸体53の回転に連れ周りするように構成されている。この対向ローラ52の回転速度は、ローラ21の搬送方向への回転速度と同一であり、ローラ21と対向ローラ52の同期が取られている。
【0052】
前記位置決めベアリング51は、直径が前記対向ローラ52より少し大きいベアリングであり、前記軸体53の両端部に近い位置で、図10に示すように、前記磁気センサ部40の位置決め部材42と対向する位置に配設されている。この2つの位置決めベアリング51は、それぞれが搬送路28の搬送路幅L(図9参照)の外側に位置するように配設されている。これにより、搬送中の紙幣が位置決めベアリング51に衝突することを回避している。
【0053】
このように構成された対向ローラ部50は、図12に示すように、対向ローラ部50の左右両端部に左右対称に設けられた付勢部60で上下動可能に支持されている。
この付勢部60は、バネ55とバネホルダ56と収納カバー61と収納ケース65とで構成されている。
【0054】
前記収納ケース65は、断面U字型でその両上端部に内側へ突出した係合突起66,66が前後(図12の左右)に対称に設けられている。
【0055】
前記収納カバー61は、全体が断面逆U字型であり、上下方向に長い2つの足部64が位置決めベアリング51の直径と同幅の間隔を隔てて平行に設けられている。各足部64の上下方向中央部には、前後方向(図12の左右方向)外側に突出した係合突起63,63が対称に設けられている。これにより、収納カバー61を収納ケース65に嵌め込むだけで、係合突起66と係合突起63とを係合させて固定することができる。
【0056】
前記収納カバー61の上辺には、前後方向(図12の左右方向)の長さが位置決めベアリング51の直径より少し短く、搬送幅方向(図12の奥行き方向)の長さが位置決めベアリング51の厚みより長い穴62が設けられている。従って、各足部64の上端部分は内側に少し突出している。これにより、位置決めベアリング51は、収納カバー61の上面から一部が突出できるものの、位置決めベアリング51自体が抜け出すことはできないように収納される。
【0057】
前記バネホルダ56は、弦巻型のバネ55を下方で保持しており、前記収納ケース65の底部内側に装着されている。これにより、バネ55が安定して上下方向に伸縮するようにしている。
このように構成された付勢部60は、位置決めベアリング51を、バネ55で上方へ付勢しつつ、前後方向へずれることなく安定した上下動が可能なように支持する。
【0058】
以上の構成により、カバー13が開状態(図2参照)のとき、図13に示すように、位置決めベアリング51はバネ55の付勢力によって上方へ付勢されつつ穴62で抜け止めされている。
【0059】
そして、図13に矢印で示すようにカバー13が閉状態(図6参照)に閉じられると、位置決め部材42が位置決めベアリング51に当接して下方へ押し込む作用をし、この作用で対向ローラ部50全体が下方へ押し込まれる。
【0060】
この状態で、図12に示すように磁気センサ部40の下面(磁気センサ45の下面)と対向ローラ52の最上面との間にクリアランスCが形成される。このクリアランスCは、紙幣の通過が可能で、かつ磁気センサ45が紙幣の情報を適切に検出できる距離であり、例えば0.3mm程度の距離に形成されている。
【0061】
したがって、カバー13を閉じるだけで適切なクリアランスCを形成でき、カバー13の開閉作業を行う作業員の熟練度に関係なく磁気センサ45の検出精度を高精度に保つことができる。
【0062】
次に、フック部90の構成と、該フック部90が係合ベアリング99にフッキングする動作について説明する。
図14はフック部90を後方から見た斜視図を示し、図15はフッキング動作の説明図を示す。
【0063】
フック部90は、図14に示すように、本体部92に設けられた操作取手91、係合凹部93、傾斜面94、スイッチ押圧突起95、および軸支部96により構成されている。
【0064】
前記操作取手91は、本体部92の上面後方位置(図14の上面手前側)に設けられ、基部から上方へ起立してその先端が前方へ2段階に折れ曲がる形状に形成されている。
【0065】
前記係合凹部93は、本体部92の後方面(図14の手前側)に、略中央から下方へ一定範囲を前方(図14の後方)へ向けて一直線に略水平にくり貫いた形状の凹部であり、その外側面は開放されている。
【0066】
この一定範囲は、係合ベアリング99(図15参照)の直径と同じ距離の範囲か、若しくはそれ以上の距離の範囲に構成されている。これにより、係合凹部93内に係合ベアリング99が嵌合できるように構成されている。
【0067】
また、該係合凹部93の底辺の前後方向の長さは、係合ベアリング99の半径より長く形成されている。これにより、係合凹部93は、底辺が係合ベアリング99の下面にしっかり係合することができ、係合凹部93が係合ベアリング99から意図せず外れてフック部90を備えるカバー13が意図せず開状態になることを防止している。
【0068】
前記傾斜面94は、本体部92の底辺から後方(図14の手前側)へ向けて湾曲しつつ斜めに立ち上がる傾斜面であり、その上端が前記係合凹部93の底辺の後方端(図14の手前側端)につながっている。
【0069】
前記スイッチ押圧突起95は、前記傾斜面94における軸支部96側の端部位置に下方へ向けて突設されている。
【0070】
前記軸支部96は、カバー13側に立設されており、カバー13の回転軸98(図3参照)に回転可能に軸支されている。この軸支部96の下部には、弾性体としてのバネ(図示省略)の一端が取り付けられるバネ掛け突起97が設けられている。このバネの他端は、カバー13に取り付けられている。このバネにより、フック部90は係合凹部93が係合ベアリング99に嵌合する方向へ回転するよう付勢され、係合ベアリング99と係合凹部93とが確実に係合するように構成されている。
【0071】
以上の構成により、図15(A)に示すように、カバー13(図3参照)が閉じる方向へ回転されると、まず傾斜面94が係合ベアリング99に当接する。
ここからさらに閉じられると、フック部90の回転軸98から係合ベアリング99の回転軸を結ぶ直線に対して前記傾斜面94が傾斜していることから、図15(B)に示すように、傾斜面94が係合ベアリング99に押圧されてフック部90が回転軸98を軸に回転する。このとき、係合ベアリング99はフック部90と逆回転し、フック部90の回転を滑らかに実行させる。
【0072】
さらにカバー13(図3参照)が閉じられると、係合ベアリング99が傾斜面94から離れ、フック部90は、図示省略するバネの付勢力をバネ掛け突起97に受けて回転軸98を軸に逆回転する。このとき、図15(C)に示すように、係合ベアリング99は係合凹部93内に確実に入り込んで係合する。
またこの逆回転の際に、スイッチ押圧突起95がベース14に設けられたスイッチSWの操作突起SWaに当接して該ベース14を押下し、スイッチSWをオフからオン(若しくはオンからオフ)に切り替える。
【0073】
逆にカバー13を開ける場合は、図15(C)の状態から、利用者が操作取手91をカバー13の回転軸24(図3参照)へ向けて押圧操作しつつ上方へ持ち上げ、カバー13を開方向へ回転させることができる。
このとき、操作取手91を押圧操作した時点でフック部90のスイッチ押圧突起95がスイッチSWの操作突起SWaから離れるため、スイッチオフ(若しくはスイッチオン)して開操作されていることを即座に検出できる。
【0074】
なお、拡張カバー15に設けられたフック部90と、拡張ベース16に設けられた図示省略する係合ベアリング99とは、上述したカバー13のフック部90およびベース14の係合ベアリング99と同一の構成で同一の動作を行うため、その詳細な説明を省略する。
【0075】
以上に説明したように、磁気センサ部40と対向ローラ部50との相対位置は、バネ55の付勢力によって位置決め部材42と位置決めベアリング51が確実に当接して位置決めされるため、カバー13を何度開閉しても特別な位置決め調整をすることなく高い位置決め精度を維持することができる。
【0076】
そして、カバー13の開閉をロックするフック部90と係合ベアリング99とを設けたため、紙幣識別装置10が駆動して紙幣を搬送している間にカバー13が意図せず開閉してしまうことがない。従って、バネ55の付勢力を得た位置決め部材42と位置決めベアリング51で位置決めされたクリアランスCを紙幣の搬送中も維持することができる。
【0077】
また、スイッチSWはフック部90の係合凹部93が係合ベアリング99に確実にフッキングして係合したことを直接検出するため、他の不具合によらずに検出でき、しっかりロックされていない不安定な閉状態でカバー13が閉じられたと検出してしまうことを防止できる。従って、完全にロックされた状態になるまで紙幣識別装置10を稼動させないといったことができ、紙幣搬送中にロックが外れてカバー13が開いてしまうといったトラブルを確実に防止できる。
【0078】
また、フック部90に直接操作取手91を設けたため、カバー13を開操作する際に、その最初のアクションであるロック解除の時点で確実に検出できる。従って、例えば紙幣識別装置10の稼動テストなどの際に、紙幣識別装置10が紙幣を搬送している途中で作業員がカバー13を開けようとすれば、カバー13が開き始める前のロック解除段階でこれを検出し、カバー13が開き始める前に紙幣の搬送を停止するといったことができる。
【0079】
また、磁気センサ45の周囲を構成する支持体41を高透磁率部材で形成したため、磁気センサ45の検出精度が支持体41に影響されることを回避できる。そして、位置決め部材42は、支持体41とは異なり硬さを重視して硬い部材で形成したため、位置決め部材42が磨耗等で経年変形してクリアランスCが変化してしまうことを防止できる。
従って、磁気センサ45の周囲はアルミニウムや樹脂などの高透磁率部材で構成することが望ましいが、磁気センサ45と対向ローラ52との間のクリアランスCを一定に保つためには、柔らかい高透磁率部材部材よりも透磁率が低くとも鉄や合金など硬い材質の方が好ましいといった相反する課題を解決することができる。
【0080】
また、位置決めベアリング51は、対向ローラ52と同じ軸体53に固着されているため、対向ローラ52の位置を直接的に位置決めすることができ、高い位置決め精度を確保できる。
【0081】
詳述すると、例えば位置決め部材42と位置決めベアリング51の代わりに適宜の当接体が磁気センサ45と対向ローラ52との対向部より搬送方向前方あるいは後方に存在した場合、カバー13とベース14の変形等によって位置決め精度が低下するが、上述した構成によってこのような精度低下がなく、安定した位置決め精度を維持することができる。
【0082】
また、位置決めベアリング51が対向ローラ52と同様に断面円形であるため、磁気センサ部40に設けられた磁気センサ45と対向ローラ52とを結ぶ直線上で位置決め部材42に当接し、クリアランスCを直接的に決定することができる。
なお、上述した実施形態では、支持体41の下面と位置決め部材42の下面を面一に構成し、対向ローラ52の半径より位置決めベアリング51の半径を大径に構成することでクリアランスCを形成したが、支持体41より位置決め部材42を下方に突出させ、対向ローラ52の半径と位置決めベアリング51の半径とを同径に構成することでクリアランスCを形成するなど、様々な構成でクリアランスCを形成することが可能である。
【0083】
また、支持体41に位置決め部材42を埋設して固定したが、ネジなどの固着手段によって支持体41の下面に対する位置決め部材42の突出距離を調整できるように構成してもよい。この場合も、一度調整しておけばカバー13を何度開閉しても閉状態でのクリアランスCが維持されるため、メンテナンス作業後の位置調整が不要となり作業効率が向上する。
【0084】
また、付勢部60をベース14に備えて対向ローラ部50を付勢することで安定動作するように構成したが、磁気センサ部40、対向ローラ部50、および付勢部60は、カバー13とベース14に対して他の適宜の配置に備えることも可能である。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の紙葉類識別装置は、実施形態の紙幣識別装置10に対応し、
以下同様に、
センサ部は、磁気センサ部40に対応し、
他方の一部は、位置決め部材42に対応し、
センサは、磁気センサ45に対応し、
対向部は、対向ローラ部50に対応し、
一方の一部は、位置決めベアリング51に対応し、
ロック部は、フック部90および係合ベアリング99に対応し、
係合部は、係合ベアリング99に対応し、
フッキング検出手段は、スイッチSWに対応し、
紙葉類は、紙幣に対応し、
高透磁率部材は、アルミニウムに対応し、
金属部材は、ステンレスに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】ATMの斜視図。
【図2】ATMに内蔵される紙幣処理装置の内部構成図。
【図3】本体ユニットが開状態の紙幣識別装置を後方から見た斜視図。
【図4】本体ユニットが開状態の紙幣識別装置を前方から見た斜視図。
【図5】本体ユニットが閉途中状態の紙幣識別装置を前方から見た斜視図。
【図6】本体ユニットが閉状態の紙幣識別装置を前方から見た斜視図。
【図7】閉状態の本体ユニットを後方から見た斜視図。
【図8】磁気センサ部を示す底面図。
【図9】対向ローラ部を示す平面図。
【図10】紙幣処理装置を正面から見た断面図。
【図11】磁気センサ部と対向ローラ部の斜視図。
【図12】磁気センサ部と対向ローラ部を右側面から見た断面図。
【図13】磁気センサ部と対向ローラ部の位置決め動作を説明する説明図。
【図14】フック部を後方から見た斜視図。
【図15】フック部のフッキング動作の説明図。
【符号の説明】
【0087】
10…紙幣識別装置
13…カバー
14…ベース
28…搬送路
40…磁気センサ部
42…位置決め部材
45…磁気センサ
50…対向ローラ部
51…位置決めベアリング
60…付勢部
90…フック部
91…操作取手
93…係合凹部
94…傾斜面
96…軸支部
99…係合ベアリング
SW…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
該ベースに対して開閉可能なカバーと、
前記ベースと前記カバーとの対向面間に形成され紙葉類を搬送する搬送路と、
前記ベースと前記カバーのいずれか一方に配設されて前記紙葉類から識別用の検出を行うセンサを有するセンサ部と、
他方に配設されて前記センサ部と対向する対向部とを備え、
前記センサ部と前記対向部のいずれか一方を他方に近づく方向へ付勢することで該一方の一部を他方の一部に当接させる付勢部を備えた
紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記カバーと前記ベースとの開閉をロックするロック部を備えた
請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記ロック部を、前記ベースに設けられた係合部と、前記カバーに設けられ前記係合部に係合するフック部とで構成し、
前記ベースに、前記フック部が前記係合部にフッキングしたことを検出するフッキング検出手段を備えた
請求項2記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記フック部を前記カバーに回転可能に軸支する軸支部を備え、
前記フック部を、
閉状態への移行時に前記係合部に当接してフック部自体を回転させる傾斜面と、
閉状態への移行完了時に前記係合部が係合する係合凹部と、
開状態への移行時に前記係合凹部が前記係合部から脱出する方向へ前記軸支部を支点にフック部自体を回転させる操作を許容する操作取手とで構成した
請求項3記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記センサを磁気センサで構成し、
前記センサ部の前記磁気センサ周囲を高透磁率部材で形成し、
前記対向部の一部と当接する前記センサ部の一部を金属部材で形成した
請求項1から4のいずれか1つに記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記センサ部のセンサは、
搬送路の搬送幅のうち紙葉類が通過する幅の両端に備えると共に、
搬送路中央に密に備えた
請求項1から5のいずれか1つに記載の紙葉類識別装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−34602(P2007−34602A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215921(P2005−215921)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】