説明

紙葉類鑑別装置及び紙葉類鑑別方法

【課題】紙葉類鑑別装置において、テンプレートを記憶するために必要な記憶部の容量を抑制することのできる技術を提供する。
【解決手段】紙葉類の鑑別を行う紙葉類鑑別装置1の基準データ記憶部5は、紙幣の鑑別に利用するときに基準とするテンプレート30を記憶する。イメージセンサ3は、投入された紙幣の画像データ20を取得する。変換部4は、テンプレート30または取得した画像データ20のうち一方のデータを対象として、そのデータに対して予め定められた読み出し方向とは異なる方向から読み取って、変換データを生成する。判定部6は、変換データを利用して、投入された紙幣の鑑別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入された紙葉類をテンプレートと比較して紙葉類の鑑別を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金融機関向けの紙葉類(紙幣)処理装置では、装置の記憶部に鑑別すべき金種の基準データがテンプレートとして記憶されている。紙葉類処理装置は、紙葉類が投入されるごとに、紙葉類を光学的に読み取って階調値等の画像データを取得し、取得した画像データから、投入された紙葉類の模様や濃淡を検出し、テンプレートと検出結果との間でパターンマッチングを行うことにより、投入された紙葉類の種類(金種)や真贋を判断している。
【0003】
従来においては、図6に示すように、紙葉類がどの向きで投入されても正しく種類や真贋が判断できるように、ある種類の紙葉類につき4方向、すなわち、表裏及び天地方向ごとのテンプレートを搭載するのが一般的である。ある紙葉類の表裏・天地方向それぞれについてテンプレートを用意しておくことにより、紙葉類処理装置は、どの方向で紙葉類が投入された場合であっても、4とおりのテンプレートのうち紙葉類の向きが一致するテンプレートを利用して、紙葉類の金種や真贋の判定を行うことが可能となる。
【0004】
図6に示す例では、投入された紙葉類は、表面倒立方向であり、B方向のテンプレートと向きが一致するため、B方向のテンプレートを用いて、紙葉類の金種や真贋の判定を行う。なお、図6においては、人物の描かれている面を表面、反対側の面を裏面とし、画像データ及びテンプレートのうち、表面には、実線で人物を描き、裏面には、反対側の面(表面)の人物が描かれている位置に、破線で人物を描いている。
【0005】
紙幣等を鑑別する公知の技術としては、例えば、貨幣の表面画像がデータベースの参考画像に符合しない場合には、表面画像を回転させて参考画像と比較することにより、貨幣の真偽を識別する技術が提供されている(例えば、特許文献1、2、3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−78478号公報
【特許文献2】特開平11−250260号公報
【特許文献3】特開平11−161827号公報
【特許文献4】特開平6−76142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙葉類処理装置が取扱い対象とする紙葉類の種類が増えた場合、これに伴って、テンプレートを記憶させておくために必要なメモリ等の記憶部の容量も増大することとなる。上記の従来における紙葉類の鑑別方法によれば、ある金種につき4とおりのテンプレートを必要とするため、メモリ上の大きな制約となっていた。
【0008】
本発明は、紙葉類処理(鑑別)装置において、テンプレートを記憶するために必要な記憶部の容量を抑制することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る紙葉類鑑別装置は、前記紙葉類の鑑別に利用するときに基準とするテンプレートを記憶する記憶部と、投入された前記紙葉類の画像データを取得する取得部と、前記テンプレートまたは前記取得した画像データのうち一方のデータを対象として、該データに対して予め定められた読み出し方向とは異なる方向から読み取って、変換データを生成する変換部と、前記変換データを利用して、前記投入された紙葉類の鑑別を行う判定部とを備える構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紙葉類鑑別装置によれば、テンプレートを記憶するために必要な記憶部の容量を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る紙葉類鑑別装置のシステム構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る紙葉類鑑別装置による紙幣の鑑別方法を説明する図である。
【図3】第2の実施形態に係る紙葉類鑑別装置のシステム構成図である。
【図4】第2の実施形態に係る紙葉類鑑別装置による紙幣の鑑別方法を説明する図である。
【図5】第3の実施形態に係る紙葉類鑑別装置による紙幣の鑑別方法を説明する図である。
【図6】従来技術に係る紙葉類鑑別装置による紙幣の鑑別方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置のシステム構成図である。図1に示す紙葉類鑑別装置1は、例えばATM(Automated Teller Machine、現金自動預払機)等の紙葉類処理装置に組み込んで使用され、ATM等に投入された紙葉類すなわち紙幣の金種や真贋の判断を行う。
【0013】
図1に示すとおり、紙葉類処理装置1は、投入部2、イメージセンサ3、変換部4、基準データ記憶部5及び判定部6を有する。
投入部2はATMに投入された紙幣を受け付ける。イメージセンサ3は、投入部2に投入された紙幣の画像データの読み取りを行う。本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1では、イメージセンサ3として、透過型フォトセンサを用いたラインセンサを使用する。
【0014】
変換部4は、イメージセンサ3において読み取った画像データの変換を行う。変換部4における画像データの変換方法については、図2を参照して詳しく説明する。
基準データ記憶部5には、金種や真贋を判定するときに基準となる画像データを記憶させておく。金種や真贋を判定するときに基準とする画像データを、以下「テンプレート」とする。本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1では、テンプレートは、各金種につき1方向の画像データを用意している。
【0015】
判定部6は、イメージセンサ3から入力される画像データ及び変換部4から入力される変換データと、基準データ記憶部5に記憶されているテンプレートとでパターンマッチングを行って、投入された紙幣の金種や真贋を判定する。
【0016】
上記のとおり、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1の基準データ記憶部5は、ある金種につき1方向のテンプレートを記憶している。紙幣が投入されると、変換部4は、投入された紙幣についてイメージセンサ3において取得した画像データの変換を行う。判定部6は、イメージセンサ3により取得した画像データ及び変換部4において変換を行うことにより得られた画像データ(以下変換データとする)をある方向についてのテンプレートと比較することにより、投入された紙幣について、金種や真贋の判定を行う。
【0017】
以下、図2を参照して、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1において、イメージセンサ3が取得した画像データを変換して変換データを得ることにより、1方向についてのテンプレートを用いて鑑別を行う方法について、具体的に説明する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1による紙幣の鑑別方法を説明する図である。図2においては、人物の描かれている面を表面、反対側の面を裏面とし、画像データ及びテンプレートのうち、表面には、実線で人物を描き、裏面には、反対側の面(表面)の人物が描かれている位置に、破線で人物を描いている。他の図面についても同様の方法で表面・裏面を表している。
【0019】
図2に示す例では、紙葉類鑑別装置1は、表面正立方向のテンプレート30を保有する。これに対し、紙葉類鑑別装置1に投入された紙幣の向き、すなわち紙幣を読み取って得られた画像データ20の向きは、表面倒立方向であり、互いに異なっている。
【0020】
なお、以下の説明においては、紙葉類の方向すなわち表裏・天地方向を区別するために、人物の肖像画が描かれている面を表面、肖像画の描かれていない面を裏面とし、人物の正立像が描かれている場合には、その方向を「表面正立方向」とする。同様に、人物の倒立像が描かれている場合は、その方向を「表面倒立方向」とし、人物の肖像画が描かれていない面であって、反対の面には人物の正立像が描かれている場合の方向を「裏面正立方向」、反対の面に人物の倒立像が描かれている場合の方向を「裏面倒立方向」とする。
【0021】
図1の説明において述べたとおり、本実施形態においては、透過型フォトセンサをイメージセンサ3として用いている。透過型フォトセンサを用いて取得した画像(透過画像)では、紙幣の表面及び裏面の模様が重なって一体となっている。したがって、本実施形態においては、紙幣が表面あるいは裏面のいずれの向きで投入された場合であっても、画像データ20を読み出す順序を変更すれば、4方向についての画像データを得られることを利用している。
【0022】
図2に示す例では、例えば画像データ20を(1)方向から、すなわち図2においては画像の右から左方向に、上のラインから順次読み出してゆく。そして、読み出した画素を左上から配置し直してゆくことにより、裏面倒立方向の変換データ21を得る。
【0023】
例えば、紙幣の表面に描かれた人物の肖像は、画像データ20では、倒立方向で図中左側に位置している。透過型フォトセンサを用いて取得した画像データ20のデータを再配置することで、例えば変換データ21においては、紙幣に描かれた人物の肖像は、倒立方向で図中の右側にあることとなる。変換データ21は、表面倒立方向の画像データ20に対して、紙幣の投入方向を反転させた場合のデータに相当する。
【0024】
同様に、画像データ20を(2)方向及び(3)方向から読み出して再配置を行うことにより、それぞれ裏面正立方向の変換データ22及び表面正立方向の変換データ23を得る。変換データ22は、画像データ20について、180度の回転及び紙幣投入方向に関して反転をさせたデータに相当し、変換データ23は、画像データ20について、180度の回転をさせたデータに相当する。
【0025】
図2に示す例では、4方向それぞれについてのデータ(画像データ20及び変換データ21〜23)のうち、(3)方向から読み出して得られた変換データ23の向きは、表面正立方向であり、変換データ23は、テンプレート30と合致する。
【0026】
このように、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置1では、変換部4において、画像データ20のデータの再配置を行って、擬似的に他の方向についての変換データを得る。画像データ20及び変換データ21〜23のいずれかは、テンプレート30と合致する。これにより、紙葉類鑑別装置1に記憶するテンプレート30の向きは1方向のみであっても、判定部6は、投入された紙幣の向きによらずにパターンマッチングを行うことができ、紙幣の種類や真贋の判定が可能となる。
【0027】
なお、上記においては、変換データ21〜23をメモリ等の記憶手段に再配置してからテンプレート30との比較を行っているが、これには限定されない。例えば、画像データ20を所定の順で(図2に示す例では、それぞれ(1)、(2)及び(3)方向の順で)読み出しつつ、テンプレート30の対応する箇所と比較を行っていく構成としてもよい。パターンマッチングに要する時間を短縮化させることができる。
【0028】
<第2の実施形態>
上記の実施形態に係る紙葉類鑑別装置1は、投入された紙幣から得られた画像データ20について読み出す方向を変えることにより、4方向についてのデータを取得し、テンプレート30との比較を行っている。これに対し、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置は、保有しているある方向についてのテンプレート30について読み出す方向を変えて4方向についてのデータを得て、投入された紙幣から得られた画像データとの比較を行う点で異なる。
【0029】
以下に、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置において紙幣の鑑別を行う方法について、具体的に説明する。
図3は、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置のシステム構成図である。図3に示す紙葉類鑑別装置11のうち、図1に示す上記の実施形態と同様の構成については、図1と同様の符号を付し、詳細な説明は割愛し、上記の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0030】
上記の実施形態に係る紙葉類鑑別装置1では、図1に示すとおり、変換部4は、イメージセンサ3において取得した画像データ20の変換データを得る。これに対して、図3に示す本実施形態に係る紙葉類鑑別装置11の変換部14は、基準データ記憶部5に記憶しているテンプレート30の変換データを得る。擬似テンプレートデータ31〜33は、それぞれ、テンプレート30を反転させたデータ、反転及び180度回転をさせたデータ及び180度回転させたデータに相当する。
【0031】
判定部6は、基準データ記憶部5から読み出したテンプレート30及びテンプレート30を変換したデータ31〜33をイメージセンサ3において取得した画像データ20と比較することにより、紙幣の金種や真贋の判定を行う。
【0032】
図4は、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置11による紙幣の鑑別方法を説明する図である。図4では、テンプレート30の向きは、表面正立方向であり、投入された紙幣(から取得した画像データ20)の向きは、裏面倒立方向である例を示す。
【0033】
本実施形態に係る紙葉類鑑別装置11も、上記の実施形態に係る紙葉類鑑別装置1と同様に、透過型フォトセンサをイメージセンサ3として用いている。基準データ記憶部5においては、基準となる画像データを透過型フォトセンサにより取得したデータをテンプレート20として記憶している。
【0034】
上記の実施形態に係る紙葉類鑑別装置1と同様に、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置11では、透過型フォトセンサを用いて取得した画像では、紙幣の表面及び裏面の模様が重なって一体となっていることを利用している。変換部14において、テンプレート30を読み出す方向を変えてデータを配置し直すことにより、保有しているテンプレート30の向きは1方向のみであっても、他の方向についての擬似テンプレートデータを得る。これにより、判定部6は、パターンマッチングを行って紙幣の金種や真贋の判定を行うことが可能となる。
【0035】
なお、上記においては、テンプレート30を変換して生成した擬似テンプレートデータ31〜33をメモリ等の記憶手段に再配置してから画像データ20との比較を行っているが、これには限定されない。例えば、テンプレート30を所定の順で(図4に示す例では、それぞれ(1)、(2)及び(3)方向の順で)読み出しつつ、画像データ20の対応する箇所と比較を行っていく構成としてもよい。パターンマッチングに要する時間を短縮化させることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置では、基準データ記憶部5に記憶しているテンプレート30について読み出す方向を変える方法を採用している。このことを利用して、紙葉類鑑別装置が紙幣の鑑別処理を実行していない期間等のすき間時間を使って、例えば、紙幣が紙葉類鑑別装置に投入されるまでの期間に、予め擬似テンプレートデータ31〜33を生成しておくこと等も可能である。
【0037】
更には、実施例では、イメージセンサ3としてラインセンサを用いており、テンプレートは、使用波長域の波長ごとに用意されている。例えば、ある金種についてのテンプレートは、赤外領域、可視光領域及び紫外領域のそれぞれについてのテンプレートが、基準データ記憶部5に記憶されている。紙葉類鑑別装置が鑑別処理を実行していないすき間時間等に、ある波長及び他の波長についてのテンプレートを組み合わせた(加算した)テンプレートや、波長間の差分を取ったテンプレート等を生成しておき、紙幣の鑑別に利用することも可能である。
【0038】
紙葉類鑑別装置において、紙幣の鑑別に利用する各種のテンプレートが生成可能となることで、予めこれらのテンプレート(例えば加算したテンプレート)を基準データ記憶部5に記憶させておくことが不要となり、紙葉類鑑別装置の構成を簡素化することができるとともに、テンプレートを記憶するために必要な容量を抑制することが可能となる。
【0039】
<第3の実施形態>
本実施形態に係る紙葉類鑑別装置は、上記第2の実施形態に係る紙葉類鑑別装置11と同様に、テンプレートの変換データを生成して、変換データを利用してパターンマッチングを行って、紙幣の鑑別を行う。
【0040】
ただし、上記の第2の実施形態に係る紙葉類鑑別装置は、イメージセンサ3として透過型フォトセンサを用いたラインセンサを使用している。これに対し、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置は、イメージセンサとして、反射型フォトセンサを用いたラインセンサを使用している点で異なる。
【0041】
以下に、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置において紙幣の鑑別を行う方法について、具体的に説明する。
なお、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置の構成は、図3と同様であるが、上記のとおり、イメージセンサ3として反射型フォトセンサを用いたラインセンサを使用する点で、上記の第2の実施形態に係る紙葉類鑑別装置11と異なる。また、基準データ記憶部5には、表面及び裏面それぞれについてのテンプレート40、50を記憶する。
【0042】
図5は、本実施形態に係る紙葉類鑑別装置による紙幣の鑑別方法を説明する図である。図5では、投入された紙幣から取得した画像データ20は、裏面倒立方向であるとする。
上記のとおり、本実施形態に係る紙葉類判別装置では、反射型フォトセンサをイメージセンサ3に用いている。このため、イメージセンサ3は、投入された紙幣の向きに応じて、表面あるいは裏面のうちいずれかについての画像データ20を得る。画像データ20とパターンマッチングを行うテンプレートについても、表面及び裏面それぞれについてのテンプレート40、50を基準データ記憶部5に記憶させている。
【0043】
紙葉類鑑別装置に紙幣が投入されると、表面及び裏面それぞれについてのテンプレート40、50を読み出す方向を変えてデータを配置し直すことにより、変換データ41、51(擬似テンプレートデータ)を生成する。変換データ41は、テンプレート40を180度回転させたデータに相当し、変換データ51は、テンプレート50を180度回転させたデータに相当する。
【0044】
本実施形態において使用するイメージセンサは反射型フォトセンサであるため、透過型のフォトセンサとは異なり、表面と裏面を透過した画像をテンプレートとして使用できない。反射型フォトセンサではセンサの裏面の画像を取得できないためである。そのため、基準テンプレートは表面と裏面の少なくとも2種類が必要となる。
【0045】
このように、4方向についてのテンプレートデータを擬似的に生成して、表面正立方向及び裏面正立方向についてのテンプレート40、41と、表面倒立方向及び裏面倒立方向についての変換データ41、51とを用いて、画像データ20とのパターンマッチングを行う。これにより、保有しているテンプレート40、50は2方向についてのみであっても、投入された紙幣の向きによらずに、紙幣の金種や真贋の判定が可能となる。
【0046】
上記においては、テンプレート40、50を変換して生成した変換データ41、51をメモリ等の記憶手段に再配置してから画像データ20との比較を行っているが、これには限定されない。例えば、例えば、テンプレート40または50を所定の順で(図5に示す例では、それぞれ、(1)方向及び(2)方向の順で)読み出しつつ、画像データ20の対応する箇所と比較を行っていく構成としてもよい。パターンマッチングに要する時間を短縮化させることができる。
【0047】
また、画像データ20について変換データを生成してテンプレート40、50との比較を行うことにより、紙幣の鑑別を行うことも可能である。
図5に示す例では、反射型フォトセンサを用いて取得した画像データ20の向きは、裏面倒立方向である。画像データ20の(a)方向から読み出していくことにより、裏面正立方向の変換データを得る。画像データ20の向きは、テンプレート40、50の向きとは一致しないが、得られた変換データは、テンプレート50の向きと一致する。したがって、このような方法でも、同様に紙幣の鑑別を行うことが可能である。
【0048】
以上説明したように、上記の第1〜第3の実施形態に係る紙葉類鑑別装置によれば、イメージセンサ3において投入された紙幣を読み取ることにより得られた画像データまたはテンプレートを変換して、他の方向についての画像データまたは擬似テンプレートデータを生成する。生成したデータ(変換データ)を利用して、投入した紙幣から取得した画像データとのパターンマッチングを行うことで、保有するテンプレートは1方向についてのみであっても、紙幣の方向によらずに、パターンマッチングを行って紙幣の鑑別を行うことが可能となる。これにより、テンプレートを記憶させておくメモリ等の記憶部の容量を抑制することが可能となる。
【0049】
上記の紙幣の鑑別方法は、ソフトウェアによって実現されるものであり、ハードウェア構成には手を加える必要がないため、実現が容易であるという利点を有する。
また、例えばCPU(Central Processing Unit)内蔵の高速メモリを利用して、パターンマッチングを高速で行おうとする場合には、CPU内蔵の高速メモリは、処理速度は高速であるが、メモリ容量が比較的小さいため、処理に際してメモリ容量の制約を受けることとなる。従来は、例えば、全ての金種のテンプレートを高速メモリから一度に読み出すことができず、一部の金種のテンプレートを高速メモリに読み込んで処理を実行し、途中で他の金種のテンプレートに切り替えて処理を継続する必要が生じる等の支障が生じており、高速化の妨げとなっていた。上記の実施形態に係る紙葉類鑑別装置によれば、ある金種につき記憶するテンプレートは1方向についてのみで足りるため、このような問題についても改善を図ることが可能となる。
【0050】
CPUを内蔵するメモリ以外であっても、テンプレートを記憶するために必要な容量が抑制されることで、例えば、メモリバンクを切り替える頻度を抑えることができ、同様に、処理の高速化に資する。
【符号の説明】
【0051】
1、11 紙葉類鑑別装置
2 投入部
3 イメージセンサ(取得部)
4 変換部
5 基準データ記憶部
6 判定部
20 画像データ
21〜23 変換データ
30 テンプレート
31〜33 擬似テンプレートデータ
40、50 テンプレート
41、51 擬似テンプレートデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の鑑別を行う紙葉類鑑別装置であって、
前記紙葉類の鑑別に利用するときに基準とするテンプレートを記憶する記憶部と、
投入された前記紙葉類の画像データを取得する取得部と、
前記テンプレートまたは前記取得した画像データのうち一方のデータを対象として、該データに対して予め定められた読み出し方向とは異なる方向から読み取って、変換データを生成する変換部と、
前記変換データを利用して、前記投入された紙葉類の鑑別を行う判定部と
を備えることを特徴とする紙葉類鑑別装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記取得した画像データ及び該画像データから生成された変換データと、前記紙葉類のある方向についての前記テンプレートとのパターンマッチングを行うことにより、前記投入された紙葉類の鑑別を行う
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項3】
前記画像データは、前記紙葉類をある方向から読み取ることにより得られる透過画像であり、
前記変換部は、前記画像データの読み取りの方向とは異なる方向から該画像データを読み取ることにより、該画像データを回転させた場合に相当するデータ、前記紙葉類の投入方向を反転させた場合に相当するデータ並びに該画像データを回転させ、前記紙葉類の投入方向を反転させた場合に相当するデータを生成する
ことを特徴とする請求項2記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記画像データと、前記テンプレート及び該テンプレートから生成した変換データとしての擬似テンプレートデータとのパターンマッチングを行うことにより、前記投入された紙葉類の鑑別を行う
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項5】
前記テンプレートは、前記紙葉類をある方向から読み取ることにより得られる透過画像であり、
前記変換部は、前記テンプレートの読み取りの方向とは異なる方向から該テンプレートを読み取ることにより、該テンプレートを回転させた場合に相当するデータ、該テンプレートの前記紙葉類の投入方向に対応する方向を反転させた場合に相当するデータ並びに該テンプレートを回転させ、前記紙葉類の投入方向に対応する方向を反転させた場合に相当するデータを生成する
ことを特徴とする請求項4記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項6】
前記テンプレートは、前記紙葉類の表面及び裏面のそれぞれについてある方向から読み取ることにより得られる画像であり、
前記変換部は、前記紙葉類の表面及び裏面のテンプレートの読み取りの方向とは異なる方向から該表面及び裏面のテンプレートを読み取ることにより、該表面及び裏面のそれぞれについてのテンプレートを回転させた場合に相当するデータを生成する
ことを特徴とする請求項4記載の紙葉類鑑別装置。
【請求項7】
紙葉類の鑑別を行う紙葉類鑑別方法であって、
投入された前記紙葉類の画像データを取得し、
前記紙葉類の鑑別に利用するときに基準とし、予め記憶部に記憶させているテンプレート、または前記取得した画像データのうち一方のデータを対象として、該データに対して予め定められた読み出し方向とは異なる方向から読み取って、変換データを生成し、
前記変換データを利用して、前記投入された紙葉類の鑑別を行う
ことを特徴とする紙葉類鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−113375(P2011−113375A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270329(P2009−270329)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】