説明

紙送り機構、プリンターおよび紙送り機構の制御方法

【課題】連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送ることが可能であっても、連続用紙の後端側の紙ジャムを防止することが可能な紙送り機構を提案する。
【解決手段】紙幅方向の両端部分に所定の間隔で送り孔が形成される連続用紙2を送る紙送り機構11は、連続用紙2の送り孔に順次にトラクターピン18を係合させながら連続用紙2を送るトラクター4と、トラクターピン18と送り孔との係合状態を検出するための検出機構27とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幅方向の両端部分に所定の間隔で送り孔が形成される連続用紙を送る紙送り機構に関する。また、本発明は、かかる紙送り機構を有するプリンター、および、かかる紙送り機構の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幅方向の両端部分に一定間隔で送り孔が形成された連続用紙を送るトラクターが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のトラクターは、連続用紙の送り孔に係合する複数のトラクターピンが形成されたトラクターベルトを備えており、トラクターベルトは、駆動ローラーと従動ローラーとの間に架け渡されている。駆動ローラーは、連続用紙の送り方向の下流側に配置され、従動ローラーは、連続用紙の送り方向の上流側に配置されている。また、このトラクターは、プリンターの給紙部に搭載されて使用される。プリンターの給紙部に搭載されて使用される場合、トラクターは、連続用紙に所定の印刷を行うために、プリンター内の給紙ローラー等と一緒に連続用紙の送り方向の下流側(印刷ヘッドが配置される側)へ連続用紙を送る。また、トラクターは、連続用紙に所定の印刷を行うために、必要に応じて、プリンター内の給紙ローラー等と一緒に連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−231096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトラクターでは、トラクターによって送られる連続用紙の後端が駆動ローラーに近づくと、連続用紙の送り孔の全てがトラクターピンから外れる。そのため、この状態で、連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送ろうとした場合、給紙ローラー等によって連続用紙の一部を送ることはできるが、連続用紙の送り孔がトラクターピンに係合せずに、トラクターによって連続用紙の後端側を送れないといった状況が生じるおそれがある。したがって、この状態で、上流側へ連続用紙を送ろうとすると、連続用紙の後端側で紙詰まり(紙ジャム)が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送ることが可能であっても、連続用紙の後端側の紙ジャムを防止することが可能な紙送り機構を提案することにある。また、本発明の課題は、かかる紙送り機構を有するプリンター、および、かかる紙送り機構の制御方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の紙送り機構は、紙幅方向の両端部分に所定の間隔で送り孔が形成される連続用紙を送る紙送り機構において、トラクターピンを備え、前記送り孔に順次に前記トラクターピンを係合させながら前記連続用紙を送るトラクターと、前記トラクターピンと前記送り孔との係合状態を検出するための検出機構と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の紙送り機構は、連続用紙の送り孔とトラクターピンとの係合状態を検出するための検出機構を有している。そのため、検出機構の検出結果に基づいて、送り孔とトラクターピンとが係合している場合には、トラクターによって連続用紙を送り方向の上流側へ送り、送り孔がトラクターピンから外れている場合には、トラクターによって連続用紙を送り方向の上流側へ送らないようにすることが可能になる。したがって、本発明の紙送り機構では、連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送ることが可能であっても、連続用紙の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0008】
本発明において、前記検出機構は、たとえば、前記トラクターの設置領域における前記連続用紙の有無を検出することで、前記トラクターピンと前記送り孔との係合状態を検出する。この場合には、たとえば、検出機構で連続用紙があることが検出されていれば、送り孔とトラクターピンとが係合していると判断することが可能になる。また、この場合には、たとえば、検出機構で連続用紙がないことが検出されていれば、送り孔がトラクターピンから外れている、あるいは、外れている可能性があると判断することが可能になる。
【0009】
本発明において、前記トラクターは、前記トラクターピンが形成されるトラクターベルトと、前記トラクターベルトが架け渡される第1プーリーおよび第2プーリーと、を有し、前記第1プーリーは、前記第2プーリーよりも前記連続用紙の送り方向における下流側に配置され、前記検出機構は、前記第1プーリーよりも前記送り方向における上流側に配置され、前記送り方向において、前記第1プーリーと前記検出機構との距離は、複数の前記送り孔のうちの前記送り方向における最後端の前記送り孔と前記連続用紙の後端との距離よりも長いことが好ましい。このように構成すると、検出機構で連続用紙が検出されない紙無し状態になったときにトラクターを停止させれば、送り方向における最後端の送り孔をトラクターピンに係合させておくことが可能になる。したがって、トラクター停止後に、送り方向の上流側へ連続用紙を送る際の連続用紙の後端側の紙ジャムを確実に防止することが可能になる。
【0010】
本発明において、前記検出機構は、前記連続用紙が接触するレバー部材と、前記レバー部材を検出するセンサーと、を有し、前記レバー部材は、前記連続用紙が接触しているときの第1回動位置と、前記連続用紙が接触していないときの第2回動位置との間で回動可能となっており、前記センサーは、前記レバー部材が前記第1回動位置または前記第2回動位置のいずれにあるのかを検出することで、前記連続用紙の有無を検出することが好ましい。
【0011】
本発明の紙送り機構は、たとえば、前記連続用紙に向かってインク滴を吐出する印刷ヘッドを有するプリンターに搭載される。このプリンターでは、連続用紙の送り方向の上流側へ連続用紙を送ることが可能であっても、連続用紙の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0012】
本発明の紙送り機構は、たとえば、次動作で前記送り方向の上流側へ前記連続用紙を送る必要がある場合、前記送り方向の下流側へ前記連続用紙を送っている最中に、前記検出機構で前記連続用紙が検出されない紙無し状態になると、前記トラクターを停止させる制御方法によって制御される。この制御方法によれば、トラクターが停止したときに、送り方向における最後端の送り孔をトラクターピンに係合させておくことが可能になる。したがって、次動作で、送り方向の上流側へ連続用紙を送る際の連続用紙の後端側の紙ジャムを確実に防止することが可能になる。
【0013】
本発明の紙送り機構の制御方法では、前記検出機構で前記連続用紙が検出される紙有り状態から前記紙無し状態に切り替わると、前記トラクターを停止させることが好ましい。このように構成すると、送り方向における第1プーリーと検出機構との距離を短くしても、トラクターが停止したときに、送り方向における最後端の送り孔をトラクターピンに係合させておくことが可能になる。
【0014】
また、本発明の紙送り機構は、たとえば、前記連続用紙の紙送り前に、前記検出機構で前記連続用紙が検出されない紙無し状態である場合に、前記送り方向の上流側への前記連続用紙の送りを禁止する制御方法によって制御される。この制御方法によれば、検出機構で連続用紙が検出されておらず、送り孔がトラクターピンから外れている可能がある場合に、連続用紙が上流側へ送られるのを防止することができる。したがって、連続用紙の後端側の紙ジャムを確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかるプリンターの斜視図。
【図2】プリンターの主要部を示す概略図。
【図3】図1に示すプリンターから筺体を取り外した状態の斜視図。
【図4】連続用紙の後端側部分の平面図。
【図5】図3のE−E方向からプリンターの装置後方部分を示す図。
【図6】(A)は連続用紙がないときの図5のF部の拡大図、(B)は(A)のG−G方向からトラクターおよび検出機構を示す図。
【図7】(A)は連続用紙があるときの図5のF部の拡大図、(B)は(A)のH−H方向からトラクターおよび検出機構を示す図。
【図8】次動作で装置後ろ側へ連続用紙を送る必要がある場合の紙送り機構の制御フローを示すフローチャート。
【図9】連続用紙の後端側の処理を行うときの紙送り機構の制御フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した紙送り機構、プリンターおよび紙送り機構の制御方法を説明する。
【0017】
(プリンターの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるプリンター1の斜視図である。図2は、プリンター1の主要部を示す概略図である。図3は、図1に示すプリンター1から筺体5を取り外した状態の斜視図である。図4は、連続用紙2の後端側部分の平面図である。
【0018】
プリンター1は、紙幅方向の両端部分にスプロケットホール(送り孔)2aが形成された連続用紙2に印刷を行う装置である。このプリンター1は、プリンター本体部3と、プリンター本体部3の装置前後方向の後側部分に配置されるトラクター4と、プリンター本体部3を覆う筺体5とを備えている。プリンター1では、連続用紙2は、トラクター4によって、装置後方からプリンター本体部3内へ送り込まれ、印刷が施された後、プリンター本体部3から装置前方へ排出される。すなわち、装置前後方向は、連続用紙2の送り方向である。また、装置前側は、連続用紙2の送り方向の下流側であり、装置後ろ側は、連続用紙2の送り方向の上流側である。また、装置左右方向は、連続用紙2の紙幅方向である。
【0019】
スプロケットホール2aは、図4に示すように、連続用紙2の送り方向と一致する連続用紙2の長さ方向に沿って一定ピッチPで形成されている。また、連続用紙2には、一定間隔でミシン目2bが形成されている。ミシン目2bは、連続用紙2の長さ方向において、2個のスプロケットホール2aのちょうど中間位置に形成されており、連続用紙2の長さ方向におけるスプロケットホール2aとミシン目2bとの距離は、ピッチPの半分(P/2)となっている。また、連続用紙2の長さ方向における最後端のスプロケットホール2aと連続用紙2の後端2cとの距離も、ピッチPの半分(P/2)となっている。なお、以下では、連続用紙2の長さ方向における最後端のスプロケットホール2aを他のスプロケットホール2aと区別して表す場合には、このスプロケットホール2aを「スプロケットホール2d」とする。
【0020】
プリンター本体部3の内部には、連続用紙2が送られる用紙搬送路6が装置前後方向に直線状に延びるように形成されている。また、プリンター本体部3の内部には、印刷ヘッド7が配置されている。印刷ヘッド7は、連続用紙2に向かってインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この印刷ヘッド7は、用紙搬送路6の上側に配置されている。また、印刷ヘッド7は、駆動用モーター、プーリーおよびベルト等によって構成される駆動機構の駆動力によって装置左右方向へ移動可能となっている。
【0021】
また、プリンター本体部3の内部には、装置左右方向で分割された複数の分割プラテン8が配置されている。分割プラテン8は、用紙搬送路6の下側に配置されており、図2に示すように、装置左右方向から見たときに、分割プラテン8と印刷ヘッド7とは、所定のギャップを介して上下方向で対向配置されている。本形態では、複数の分割プラテン8によって、印刷ヘッド7が連続用紙2に印刷を行う印刷領域PAが規定されている。
【0022】
印刷領域PAとトラクター4との間には、連続用紙2を印刷領域PAへ供給するための紙送りローラー9が配置されている。印刷領域PAよりも装置前方には、印刷が施された連続用紙2を排出するための排紙ローラー10が配置されている。本形態では、トラクター4、紙送りローラー9および排紙ローラー10等によって、連続用紙2を送る紙送り機構11が構成されている。
【0023】
プリンター1では、連続用紙2に印刷を行う際に、連続用紙2の送り方向と直交する走査方向(すなわち、装置左右方向)に印刷ヘッド7を移動させて印刷を行う印刷動作と、送り方向の上流側や下流側(すなわち、装置前側や装置後ろ側)へ連続用紙2を所定量ずつ送る紙送り動作とを交互に行う。
【0024】
(紙送り機構の構成)
図5は、図3のE−E方向からプリンター1の装置後方部分を示す図である。図6(A)は、連続用紙2がないときの図5のF部の拡大図であり、図6(B)は、図6(A)のG−G方向からトラクター4および検出機構27を示す図である。図7(A)は、連続用紙2があるときの図5のF部の拡大図であり、図7(B)は、図7(A)のH−H方向からトラクター4および検出機構27を示す図である。
【0025】
紙送りローラー9には、連続用紙2を紙送りローラー9に押し付けるための押圧ローラー14が上側から当接している。押圧ローラー14は、所定の付勢力で紙送りローラー9に押し付けられている。排紙ローラー10には、連続用紙2を排紙ローラー10に押し付けるための押圧ローラー15が上側から当接している。押圧ローラー15は、所定の付勢力で排紙ローラー10に押し付けられている。紙送りローラー9および排紙ローラー10には、動力伝達機構を介してモーター16が連結されている。モーター16は、プリンター1の制御部17に接続されている。
【0026】
トラクター4は、装置左右方向の両端側のそれぞれに設置されている。このトラクター4は、連続用紙2のスプロケットホール2aに挿入されて係合するトラクターピン18を備えている。トラクターピン18は、トラクターベルト19の外周面に一定間隔で形成されている。トラクターベルト19は、駆動プーリー(第1プーリー)20と従動プーリー(第2プーリー)21とに架け渡されている。また、トラクターピン18およびトラクターベルト19の上面は、開閉可能なガイド蓋22に覆われている。駆動プーリー20は、従動プーリー21よりも装置前側に配置されている。本形態では、紙幅の異なる連続用紙2の送りが可能となるように、トラクター4は、装置左右方向へ移動可能となっている。なお、連続用紙2の紙幅が変更されたときには、装置左右方向の一方側に配置されるトラクター4のみを移動させて、装置左右方向の他方側に配置されるトラクター4は移動させない。
【0027】
駆動プーリー20の中心には、装置左右方向に貫通する角孔状の貫通孔が形成されている。この貫通孔には、モーター23の動力によって回転する駆動軸24が挿通されている。駆動軸24は、装置左右方向を軸方向として、プリンター1のフレームに回転可能に支持されている。駆動軸24の一端には、動力伝達機構を介して、モーター23が連結されている。駆動軸24は、四角柱状に形成されており、駆動軸24が回転すると、駆動軸24と一緒に駆動プーリー20も回転する。モーター23は、制御部17に接続されている。
【0028】
従動プーリー21の中心には、装置左右方向に貫通する丸孔状のガイド孔が形成されている。このガイド孔には、紙幅変更時に移動させるトラクター4を装置左右方向へ案内する円柱状のガイド軸25が挿通されている。ガイド軸25は、装置左右方向を軸方向として、プリンター1のフレームに固定されている。従動プーリー21は、ガイド軸25に対して回転可能となっている。また、従動プーリー21は、ガイド軸25に対して装置左右方向へ移動可能となっている。
【0029】
トラクター4によって連続用紙2を送る際には、スプロケットホール2aとトラクターピン18とが係合するように連続用紙2をセットする。その後、モーター23の駆動力で駆動軸24および駆動プーリー20を回転させてトラクターベルト19を回転させ、トラクターピン18を順次にスプロケットホール2aに係合させて、連続用紙2を送る。
【0030】
装置前後方向において、トラクター4が設置される設置領域TAには、設置領域TAにおける連続用紙2の有無を検出する検出機構27が配置されている。検出機構27は、装置前後方向において、駆動プーリー20と従動プーリー21との間に配置されている。すなわち、検出機構27は、駆動プーリー20よりも装置後ろ側に配置され、従動プーリー21よりも装置前側に配置されている。また、検出機構27は、装置左右方向において、装置左右方向の他方側に配置されるトラクター4(紙幅変更時に移動させないトラクター4)の内側に配置されている。
【0031】
検出機構27は、レバー部材28と、光学式のセンサー29とを備えている。センサー29は、装置左右方向で対向配置される発光素子と受光素子とを備えている。また、センサー29は、制御部17に接続されている。レバー部材28は、連続用紙2が接触する用紙接触部28aと、センサー29によって検出される被検出部28bとを備えている。用紙接触部28aは、レバー部材28の上端側部分を構成し、被検出部28bは、レバー部材28の下端側部分を構成している。レバー部材28は、ガイド軸25に回動可能に保持されており、ガイド軸25を中心に回動可能となっている。
【0032】
検出機構27の設置位置に連続用紙2がなく、用紙接触部28aに連続用紙2が接触していない場合には、レバー部材28を付勢する付勢部材(図示省略)の付勢力によって、図6(B)に示すように、センサー29の発光素子と受光素子との間を被検出部28bが遮っている状態が維持される。一方、検出機構27の設置位置に連続用紙2があって、用紙接触部28aに連続用紙2が接触していると、レバー部材28は、付勢部材の付勢力に抗して回動し、図7(B)に示すように、被検出部28bは、センサー29の発光素子と受光素子との間から外れる。このように、レバー部材28は、用紙接触部28aに連続用紙2が接触しているときの第1回動位置28Aと、用紙接触部28aに連続用紙2が接触していないときの第2回動位置28Bとの間で回動可能となっており、センサー29は、レバー部材28が第1回動位置28Aまたは第2回動位置28Bのいずれにあるのかを検出することで、連続用紙2の有無を検出する。
【0033】
装置前後方向において、駆動プーリー20と検出機構27との距離は、最後端のスプロケットホール2dと連続用紙2の後端2cとの距離P/2よりも長くなっている。具体的には、装置前後方向における駆動プーリー20の中心と用紙接触部28aとの距離L(すなわち、駆動軸24の中心と用紙接触部28aとの距離L、図6(B)参照)は、スプロケットホール2dと連続用紙2の後端2cとの距離P/2よりも長くなっている。本形態では、後述のように、検出機構27で連続用紙2が検出される紙有り状態から検出機構27で連続用紙2が検出されない紙無し状態に切り替わった直後にモーター23を停止させており、紙有り状態から紙無し状態に切り替わった直後からモーター23が完全に停止するまでにトラクターピン18が移動する距離を「トラクターピン移動距離」とすると、距離Lは、トラクターピン移動距離と距離P/2との和以上となっている。より具体的には、距離Lは、トラクターピン移動距離と距離P/2との和とほぼ同じか、この和よりもわずかに長くなっている。
【0034】
また、本形態では、装置前後方向における従動プーリー21の中心から駆動プーリー20の中心までの間で、スプロケットホール2aとトラクターピン18とが係合しており、従動プーリー21の中心よりも装置後ろ側および駆動プーリー20の中心よりも装置前側では、スプロケットホール2aがトラクターピン18から外れている。
【0035】
そのため、検出機構27で連続用紙2が検出される紙有り状態から検出機構27で連続用紙2が検出されない紙無し状態に切り替わったときに(すなわち、検出機構27で連続用紙2の後端2cが検出されたときに)モーター23を停止させて、トラクター4を停止させれば、最後端のスプロケットホール2dと係合するトラクターピン18は、装置前後方向において、駆動プーリー20の中心よりも装置後ろ側で停止する。すなわち、紙有り状態から紙無し状態に切り替わったときにモーター23を停止させれば、トラクター4が停止したときには、最後端のスプロケットホール2dとトラクターピン18とが係合している。
【0036】
また、検出機構27で連続用紙2が検出される紙有り状態のときには、少なくとも、スプロケットホール2dとトラクターピン18とが係合している。すなわち、本形態では、トラクター4の設置領域TAにおける連続用紙2の有無を検出する検出機構27での検出結果に基づいて、スプロケットホール2aとトラクターピン18との係合状態を検出することができる。具体的には、検出機構27での検出結果に基づいて、スプロケットホール2aとトラクターピン18とが係合していることを検出することができる。
【0037】
(紙送り機構の制御方法)
図8は、次動作で装置後ろ側へ連続用紙2を送る必要がある場合の紙送り機構11の制御フローを示すフローチャートである。図9は、連続用紙2の後端2c側の処理を行うときの紙送り機構11の制御フローを示すフローチャートである。
【0038】
紙送り機構11は、次動作で装置後ろ側へ連続用紙2を送る必要がある場合、図8に示すフローにしたがって装置前側への紙送りを行う。すなわち、装置前側への紙送り指令が制御部17に入力されると、制御部17は、モーター16、23を起動して、装置前側への紙送りを始める(ステップS1)。装置前側へ連続用紙2を送っている最中に、検出機構27で連続用紙2が検出されない紙無し状態になると(ステップS2で「Yes」になると)、制御部17は、直ちにモーター16、23を停止して紙送りを停止する(ステップS3)。すなわち、装置前側への紙送り開始後、検出機構27で連続用紙2が検出される紙有り状態から紙無し状態に切り替わると、直ちにトラクター4、紙送りローラー9および排紙ローラー10が停止する。
【0039】
一方、紙有り状態が維持されている場合(ステップS2で「No」の場合)には、設定された送り量の紙送りが完了するまで(ステップS4で「Yes」になるまで)、検出機構27の検出結果を確認しながら、装置前側への紙送りが行われ、設定された送り量の紙送りが完了すると、モーター16、23を停止して紙送りを停止する(ステップS3)。
【0040】
また、紙送り機構11は、連続用紙2の後端2c側の処理を行うときには、図9に示すフローチャートにしたがって紙送りを行う。すなわち、連続用紙2の後端2c側の処理を行うときには、まず、制御部17は、紙有り状態であるか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11で紙有り状態である場合(ステップS11で「Yes」の場合)には、制御部17は、装置後ろ側への紙送りを許可するバックフィード許可フラグを立てる(ステップS12)。この場合、装置後ろ側への紙送り指令が制御部17に入力されると、装置後ろ側へ連続用紙2が送られる。一方、ステップS11で紙無し状態である場合(ステップS11で「No」の場合)には、制御部17は、装置後ろ側への紙送りを禁止するバックフィード禁止フラグを立てる(ステップS13)。この場合には、装置後ろ側への紙送り指令が制御部17に入力されても、装置後ろ側へ連続用紙2は送られず、たとえば、紙送りローラー9および排紙ローラー10によって、装置前側へ連続用紙2が排出される。
【0041】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、次動作で装置後ろ側へ連続用紙2を送る必要がある場合、装置前側へ連続用紙2を送っている最中に紙有り状態から紙無し状態に切り替わると、モーター23が停止してトラクター4が停止する。また、本形態では、紙有り状態から紙無し状態に切り替わったときにモーター23を停止させれば、トラクター4が停止したときには、最後端のスプロケットホール2dとトラクターピン18とが係合している。そのため、本形態では、次動作で装置後ろ側へ連続用紙2を送る際の連続用紙2の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0042】
本形態では、連続用紙2の後端2c側の処理を行う場合、検出機構27で連続用紙2が検出されていないと、装置後ろ側への紙送り指令が制御部17に入力されても、装置後ろ側へ連続用紙2は送られない。すなわち、本形態では、検出機構27で連続用紙2が検出されておらず、最後端のスプロケットホール2dがトラクターピン18から外れているおそれがある場合には、装置後ろ側への紙送り指令が制御部17に入力されても、装置後ろ側へ連続用紙2は送られない。そのため、本形態では、スプロケットホール2aとトラクターピン18とが係合していない状態で装置後ろ側へ連続用紙2が送られることで生じ得る連続用紙2の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0043】
このように、本形態では、検出機構27の検出結果に基づいて、上述の制御を行っているため、スプロケットホール2aとトラクターピン18とが係合している場合には、連続用紙2を装置後ろ側へ送り、スプロケットホール2aがトラクターピン18から外れているおそれがある場合には、連続用紙2を装置後ろ側へ送らないようにすることができる。したがって、本形態では、装置後ろ側へ連続用紙2を送ることが可能であっても、連続用紙2の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、紙有り状態から紙無し状態に切り替わると、トラクター4、紙送りローラー9および排紙ローラー10が停止する。そのため、装置前後方向における駆動プーリー20の中心と用紙接触部28aとの距離を短くしても、トラクター4が停止したときに、最後端のスプロケットホール2dとトラクターピン18とを係合させておくことができる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態では、駆動プーリー20の中心と用紙接触部28aとの距離Lは、トラクターピン移動距離と距離P/2との和とほぼ同じか、この和よりもわずかに長くなっているが、距離Lは、トラクターピン移動距離と距離P/2との和よりも大幅に長くなっていても良い。たとえば、従動プーリー21よりも装置後ろ側に用紙接触部28aが配置されても良い。この場合、次動作で装置後ろ側へ連続用紙2を送る必要があるときには、たとえば、装置前側へ連続用紙2を送っている最中に紙無し状態になった後も、最後端のスプロケットホール2dがトラクターピン18から外れない位置まで所定距離、連続用紙2を送り続け、その後、トラクター4、紙送りローラー9および排紙ローラー10を停止させても良い。
【0046】
また、駆動プーリー20の中心と用紙接触部28aとの距離Lは、トラクターピン移動距離と距離P/2との和より短くても良い。たとえば、駆動プーリー20よりも装置前側に用紙接触部28aが配置されても良い。この場合には、検出機構27での検出結果に基づいて、スプロケットホール2dがトラクターピン18から外れていることが検出される。また、この場合には、紙無し状態となった後の装置後ろ側への紙送りを禁止することで、連続用紙2の後端側の紙ジャムを防止することが可能になる。
【0047】
上述した形態では、検出機構27は、レバー部材28と光学式のセンサー29とによって構成されているが、検出機構27は、レバー部材28と、レバー部材28を検出する近接スイッチとによって構成されても良い。また、検出機構27は、連続用紙2を上下方向で挟むように配置される発光素子と受光素子とによって構成されても良いし、連続用紙2に向かって光を出射する発光素子と、連続用紙2で反射された光を受光する受光素子とによって構成されても良い。すなわち、検出機構27は、連続用紙2の有無を検出できるのであれば、どのように構成されても良い。また、上述した形態では、検出機構27は、連続用紙2の有無を検出することで、スプロケットホール2aとトラクターピン18との係合状態を検出しているが、スプロケットホール2aとトラクターピン18との係合状態を直接、検出できるように、検出機構27が構成されても良い。
【0048】
上述した形態では、紙送り機構11は、インクジェットヘッドである印刷ヘッド7を有するインクジェットプリンターに搭載されているが、紙送り機構11は、インパクトドットプリンター等の他のプリンターに搭載されても良いし、連続用紙2を送るプリンター以外の装置に搭載されても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・プリンター、2・・・連続用紙、2a・・・スプロケットホール(送り孔)、2d・・・スプロケットホール(送り孔、最後端の送り孔)、4・・・トラクター、7・・・印刷ヘッド、11・・・紙送り機構、18・・・トラクターピン、19・・・トラクターベルト、20・・・駆動プーリー(第1プーリー)、21・・・従動プーリー(第2プーリー)、27・・・検出機構、28・・・レバー部材、28A・・・第1回動位置、28B・・・第2回動位置、29・・・センサー、TA・・・トラクターの設置領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幅方向の両端部分に所定の間隔で送り孔が形成される連続用紙を送る紙送り機構において、
トラクターピンを備え、前記送り孔に順次に前記トラクターピンを係合させながら前記連続用紙を送るトラクターと、
前記トラクターピンと前記送り孔との係合状態を検出するための検出機構と、を有することを特徴とする紙送り機構。
【請求項2】
前記検出機構は、前記トラクターの設置領域における前記連続用紙の有無を検出することで、前記トラクターピンと前記送り孔との係合状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の紙送り機構。
【請求項3】
前記トラクターは、前記トラクターピンが形成されるトラクターベルトと、前記トラクターベルトが架け渡される第1プーリーおよび第2プーリーと、を有し、
前記第1プーリーは、前記第2プーリーよりも前記連続用紙の送り方向における下流側に配置され、
前記検出機構は、前記第1プーリーよりも前記送り方向における上流側に配置され、
前記送り方向において、前記第1プーリーと前記検出機構との距離は、複数の前記送り孔のうちの前記送り方向における最後端の前記送り孔と前記連続用紙の後端との距離よりも長いことを特徴とする請求項2に記載の紙送り機構。
【請求項4】
前記検出機構は、前記連続用紙が接触するレバー部材と、前記レバー部材を検出するセンサーと、を有し、
前記レバー部材は、前記連続用紙が接触しているときの第1回動位置と、前記連続用紙が接触していないときの第2回動位置との間で回動可能となっており、
前記センサーは、前記レバー部材が前記第1回動位置または前記第2回動位置のいずれにあるのかを検出することで、前記連続用紙の有無を検出することを特徴とする請求項2または3に記載の紙送り機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の紙送り機構と、前記連続用紙に向かってインク滴を吐出する印刷ヘッドと、を有することを特徴とするプリンター。
【請求項6】
請求項3に記載の紙送り機構の制御方法であって、
次動作で前記送り方向の上流側へ前記連続用紙を送る必要がある場合、前記送り方向の下流側へ前記連続用紙を送っている最中に、前記検出機構で前記連続用紙が検出されない紙無し状態になると、前記トラクターを停止させることを特徴とする紙送り機構の制御方法。
【請求項7】
前記検出機構で前記連続用紙が検出される紙有り状態から前記紙無し状態に切り替わると、前記トラクターを停止させることを特徴とする請求項6に記載の紙送り機構の制御方法。
【請求項8】
請求項2から4のいずれかに記載の紙送り機構の制御方法であって、
前記連続用紙の紙送り前に、前記検出機構で前記連続用紙が検出されない紙無し状態である場合に、前記送り方向の上流側への前記連続用紙の送りを禁止することを特徴とする紙送り機構の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213948(P2012−213948A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81644(P2011−81644)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】