説明

素子の表面形状を補正する方法

【課題】本発明は、特にSLMアセンブリ素子の製造において、熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を介して、ベース部に接続され、その高さが横方向の大きさより非常に小さい素子の表面形状を補正する方法に関する。
【解決手段】本方法は以下のステップを備える。素子の製造後、素子の現在の表面形状を測定して、所望の表面形状からの偏差を検出するステップと、ベース部表面に、所望の表面形状からの偏差に対してネガティブな補正用型を設けるステップと、接続材料を、ベース部表面または素子の下側に塗布するステップと、現在の表面形状および補正用型に応じて位置を合わせながら、素子とベース部を結合するステップと、素子の現在の表面形状の偏差を補って所望の表面形状を達成するように、熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を硬化させるステップを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を介してベース部に接続され、横方向の大きさより非常に小さい高さを有する素子の表面形状を補正する方法に関する。さらに本発明は、表面形状の補正方法をSLMアセンブリの製造に適用することに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型面光変調器(SLM)は一般に、横方向の大きさに比べて薄いシリコン基板を用いて製造される。一例として、CMOSドライバチップ上に製造されるマイクロマシンSLMが挙げられる。理想的には、かかるチップの活性表面は、非励起状態で完全に平坦でなければならない。しかしながら実際は、SLMチップには、わずかに湾曲および/または歪みがあり、その表面には、垂直方向の大きさおよび横幅の異なる凸部や溝が生じる可能性がある。このような欠陥は光変調器の機能を低下させるため、マイクロリソグラフィおよび適応光学系等の特定の用途に、条件付きでしか用いることができない。
【0003】
反射型SLMの製造プロセスに、平坦化工程を設けて、例えば金属化合物の試作品によって、生じ得る平坦性の不良を補正する。平坦化工程はまた、化学的機械研磨(CNP)によって実現され、元来完全に平坦ではない原基板に対して実施することもできる。しかしながら、化学的機械研磨は、小さい領域の平坦化にしか適さない。小さい領域とは、横方向の大きさが数10μm程度までのものと定義される。ミリメートルおよびセンチメートルより大きな寸法の場合、化学的機械研磨(CNP)の効果はほとんどない。
【0004】
通常、SLMの設計には、ウェハ全体の金属化の平均密度をできるだけ多く補うため、フィラー構造が用いられる。しかし、これは何に対しても可能なわけではなく、例えば、ボンドパッド、テスト用構造、切断線には用いることはできない。さらに、層蒸着やエッチングの非同質性は、十分に回避することはできない。したがって、製造プロセスでは、常に新たな凸や溝が発生し、横方向の大きさに対する表面平坦性を、通常ミリメートルからセンチメートルの範囲で低下させることになる。
【0005】
さらに、基板は、蒸着された金属および絶縁層の機械的緊張、ならびに横方向の大きさに対する厚みの薄さに起因して、湾曲する。機械的緊張および基板を個々のチップ(またはSLM、素子)に切断することに依るさらなる緊張に起因する非同質性は、SLMの変形を制御不能に変えてしまう。
【0006】
一般に反射型SLMは、多くの場合セラミック材料で構成される筐体またはパッケージに、エポキシ系接着剤またはポリイミド接着剤を用いて接着結合される。この接着剤の多くは、導電性および/または伝熱性の粒子が充填されている。筐体(パッケージ)は一般に、SLMチップよりも非常に厚みが厚く、機械的に強固である。的確な接着剤と処理パラメータ次第で、キャピラリー力および接着剤の収縮に起因して、表面形状が制御不能に変化することがある。
【0007】
別の手段によって、SLMチップの表面を改良する試みがなされている。すなわち、特許文献1は、接着接合時に、真空によって、平面にチップを保持することを開示している。しかしながら、このプロセスはチップの変形や歪曲を平面化するだけであって、凸部や溝を検出することはできない。また、上述の従来技術は、活性表面の非平面形状を補うためにそれぞれ動作される圧電アクチュエータまたはネジの列に、SLMを接合接着することを教示している。
【0008】
つまり、現在入手可能な最上の基板ウェハ、充てん材で丁寧に加工され、CMPプロセスを用いて平滑化されたチップならびに平面性を実現する最適なパラメータを用いたとしても、公知の単純なプロセスフローでは、マイクロリソグラフィにおいて求められる平面性を十分に提供することができないと言うことができる。
【0009】
非平面な表面形状を圧電アクチュエータ列によって補うことは、考えられる解決策であるが、非常に複雑でコストがかかりすぎる。アクチュエータにドリフトも起こり得るため、製造後のみの測定・補正では不十分であるので、フィードバック機能を有する複雑な測定システムを備えなければならない。この測定システムは、全ての接続が圧電アクチュエータと繋がる、プログラム可能な、多チャンネルで高電圧なドライバを含む必要がある。複雑な測定設計のため、アクチュエータ素子の数が限られており、横方向の表面補正は限定的にしか解決されない。
【0010】
同じく開示された簡単なネジ列も、補正対象の表面に直接作用するネジは、設定精度が粗すぎるため、同様に平面性の設定にはあまり適さない。実際のSLM表面の平面性の偏差は、通常数μmの範囲であり、たった数度ネジを回転させただけで、補正に必要なネジの1動作になってしまう。
【0011】
平面性を改良する上記2つの可能性の別の不利な点として、SLMの動作中に発生する熱が分散してしまうことが挙げられる。通常、熱の分散には、筐体またはパッケージの後ろ側のヒートシンクで十分なところ、さらにアクチュエータ列を設置すると、断面の熱伝導性が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許公開番号 第20050068510号(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の基本的な目的は、熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を介して、ベース部に固定的に接続される、高さが横方向の大きさより非常に小さい素子の表面形状を補正する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明基づき、主クレームの特徴によって解決される。
【0015】
さらに有利な進歩および改良が、従属項に記載された特徴によって実現される。
【0016】
製造後、素子の現在の表面形状を測定して、所望の表面形状からの偏差を検出し、さらに、接続材料の収縮性に依存する拡大係数を考慮して、所望の表面形状からの偏差にネガティブな補正用型を、ベース部表面に設置するので、素子とベース部を、互いに表面の位置を一致させて結合することができる。素子の現在の表面形状の偏差は、接続材料が熱的または化学的収縮により硬化した後、補われる。
【0017】
例えば、エポキシ樹脂またはポリイミド系の接着剤または、はんだ等を、素子をベース部に固定するための接続材料として選択することができる。
【0018】
垂直方向の測定値が所定の高さと拡大係数の積となる凹所または隆起部を、ベース部表面の補正用型に簡単な方法で加工して、形成された隆起部または凹所の所定の高さの偏差を補正することができる。
【0019】
素子とベース部間に配置された接続材料の厚さは、有利な方法で、所望の表面形状からの偏差の横方向の大きさよりも非常に小さい厚さに選択される。すなわち、本発明に基づく方法は、接続材料の厚さや分布の影響を受けないため、凸部または溝の横方向の大きさは、接続材料、つまり接着剤の厚さより非常に大きくなるはずである。このような条件下で、例えばパッケージとして作成されるベース部や、例えばSLM表面である素子に接着剤を接着することによって、横方向の収縮を防ぎ、垂直方向の収縮が正しく定義される。横方向の大きさは、好ましくは、接続材料の厚さの10倍より大きく、本方法においては100倍より大きいとさらに好ましい。本方法は、横方向の大きさが接着剤の厚さの100倍より大きいときには、全く問題がない。接着剤の厚さの約10倍までの範囲であっても、本発明は適用可能であるが、低い範囲では、完全な平滑性は実現できない。ここで、拡大係数(以下の通り)を用いた単純な計算に基づく補正用型を、FEMによって最適化するための開始値として使用することもできる。これに関連して、基板、接着剤、コンポーネントから成る弾性システムの変化を、シミュレーションプログラムによって算出し、必要であれば、シミュレーションで所望の平面度が達成されるまで、補正用型を反復方法により変化させる。
【0020】
素子すなわちSLMチップは、接続材料すなわち接着剤の所望の横および垂直の規模の収縮に追随するように充分薄くなければならないが、その一方、接続材料がまだ軟らかい内に形状が変化しないだけの硬度を有する必要がある。素子すなわちSLMチップの硬度が高すぎると、製造プロセスの終了に近づくにしたがって、薄くなるようにしなければならず、硬度が低すぎると、別の基板またはウェハに接着や接合することによって補強しなければならない。同様にベース部も、接続材料の収縮に基づく変形が無視できる程度になるように、強度を高くする必要がある。強度が高くない場合は、ベース部をプレートなどで補強する。
【0021】
補正用型の高さを決定する拡大係数を、SLMを補正用型に固定するのに使用される接続材料すなわち接着剤の収縮率から、有利に定める。この係数は、高い精度を達成するため、実験でできるだけ正確に定める。このために、混合・硬化状態を正確に観察し、再生可能な結果を得る。なお、本発明に基づく方法は、仮定の収縮率が実際の収縮率とは異なったとしても、平面性に関してより良い結果を得ることができる。
【0022】
理論的な補強係数1/s-1は有利に選択される。Sは、接続材料の収縮係数である。すなわちフィルムの厚さは、硬化時に厚さD・(1-5)に収縮する。したがって、収縮率は1%のとき、s = 0.01、拡大係数99となる。
【0023】
以下に、この拡大係数の短い微分計算を規定する。f(x)をコンポーネントの形状とし、g(x)を補正用型とする。上記条件下で、g(x) = -k*f(x)-dが選択できる。拡大係数kはこの時点では未定であり、定数dは、コンポーネントの大きさの範囲内で、全xに対してg(x) < f(x)が成り立つ大きさに選択される。最後の仮定によって、接続材料の厚さ、つまり接着剤の厚さ(収縮前)を、h(x) = f(x) - g(x)がどの時点においても確実にゼロ未満になる。接着剤が、2つのインターフェースの接着に起因して、係数s(上記条件)によりほぼ同一の方向のみに収縮する場合、収縮後の接着剤の厚さは、h'(x) = (1-s)*h(x) = (1-s)*((1+k)*f(x)+d)となる。この接着フィルムを、形状g(x)の変化していない基板に配置する。すなわち、フィルムの上側はf'(x) = g(x)+h'(x) = ((1-s)*(1+k)-k)*f(x)+(1-s-1)*dである。この関数は、元の形状f(x)とは関係なく、一定である。前係数は、ゼロとなる必要がある。すなわち、(1-s)*(1+k)-k=0、あるいはこれを変形してk = (1/s)-1の関係となる。このように、本方法が接着剤の異なる厚さに対して適応することが同時に証明される(異なるd)。
【0024】
本発明に基づく方法は、補正した結果が、素子すなわちSLMの元の形状から離れ過ぎない限り、平面ではない所定の表面形状を求めるのに用いることもできるので有利である。この場合、補正用型は、所望の形状と元の形状の差を、収縮率の逆数から1を引いた値で積算した値にしなければならない。
【0025】
本発明に基づく方法の特に有利で重要な点は、補正用型が光学的に精密である必要がないことである。補正用型は、特に接着剤の約100の補強係数に因って、例えば従来のフライス加工など一般の加工プロセスによって製造できる。前記補正用型は、波長の分数(100未満)の大きさまで、表面の欠陥を補正できる。一方、垂直方向の補正は、数μmの大きさまで可能である。
【0026】
本発明において、素子あるいはSLMは、垂直または深さ方向の表面特性が、補正用型のそれぞれの特性に対応するように調整されなければならない。これらの特性、つまり所望の表面形状からの偏差の横方向の大きさは、ミリメートルからセンチメートルの範囲であり、この調整精度に対する要求はあまり高くない。
【0027】
本発明において、厚さの均一でない素子すなわちSLMの両面を測定し、これらの測定結果に応じて補正用型が形成される。この特徴によって誤差を防ぐことができる。誤差は例えば、素子の前側に対応する溝がない場合、後ろ側の凸部により、接着剤の厚さが減少し、この領域で収縮プロセスが減少して、最終的に、接着剤硬化後、素子の前側に凸部が形成されるような場合に発生する。このような両面の製造後測定や、測定に対応した補正用型は、補正精度に対する要求が高い場合にのみ必要となる。誤差は発生しても、素子後ろ側の元の凸部より接着剤の収縮係数s分だけ小さいため、かかる対応金型は通常不要である。
【0028】
非常に高い精度の表面形状が要求される特に重要なケースでは、本発明に基づき、接続材料の弾性を考慮して、ベース部の補正用型をFEMシミュレーションによって決定することができる。接続材料つまり接着剤の有限な弾性に基づき発生する誤差を、この測定の際に考慮する。例えば、小さな凸部を、同じ高さの広い凸部より平らになるように補正するには、接続材料の収縮よりも大きな力を要する。この力は接着剤の収縮力に対抗するため、収縮率を中間の幅の凸部から算出した場合、広い凸部は過度に補われるが、小さな凸部は完全には平面化されない。これらの不正確性は、拡大係数の単純な計算ではなく、補正用型をFEMシミュレーションによって決定することによって回避できる。いつこれが必要になるかは、接続材料つまり接着剤やコンポーネントの厚さおよび弾性のモジュールに依存して決まる。適用の限界は、単純なケースの場合、公知のビームベンディング理論に基づき、最初にコンポーネントの平滑化に適用すべき表面荷重を算出することによって推定できる。表面荷重の反力が接着剤に負荷をかけ、弾性のモジュールをその分変形させる。この変形が補正すべき非均一性の元の高さより小さい場合は、大きく平滑化することによって、力の均衡がもたらされる。逆に、接着剤の変形が、補正すべき高さと同等またはより大きい場合は、平面性の改善度は小さい。
【0029】
これらの検討事項も当然、FEMシミュレーションを用いて有利に実施することができる。エッジ長38x16mm2、厚さ0.67mmの、実質シリコンで構成されるSLMチップを例に挙げる。厚さが0.1mm から0.2mmの間で変化するエポキシ系接着剤を使用の場合、FEMシミュレーションの結果、拡大係数によって算出した補正用型を用いて、長さ10mmまでの波形構造は、最初の高さの10%未満まで平滑化された。対照的に、約2.5mm未満の波形長の波形は、最初の高さの90%を超えて維持された。SLMを薄型化することによって、合理的に補正可能な波形長を、より小さな値にまで拡大できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に基づく方法は、筐体(セラミックパッケージ)またはベース部を基本的に変更することなく、従来の固定技術に代えて、容易に利用できる。実際には、補正用型をチップ毎に作成しなければならないため、幾分高価となるが、補正用型の製造は、アクチュエータ列の導入と比較すると、非常にコスト性が高い。SLM をパッケージに固定し、表面を検査した後、フィードバック機能を伴う追加の測定やアクチュエータシステムの設置することなく、直接アセンブリを使用できる。
【0031】
本発明に基づく方法は、SLMアセンブリの製造に有利に適用できる。また、当然ながら、大きな長さと広い幅の素子の表面形状を、その高さに対して調整する他の分野にも適用できる。以下に、本発明に基づく方法の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明に基づく方法の適用に基づき、第1形態における硬化前後の板状素子とベース部を有する構造の断面を示す。
【図2】図2は、第2実施形態において、図1と同じ構造の断面を示す。
【図3】図3は、第3実施形態において、図1と同じ構造の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の意図は、実施形態において接続材料、接着剤の収縮を利用することにある。接続材料は、SLMチップを平坦化するためのアクチュエータとして、硬化時にSLMチップをセラミックベース部またはパッケージに接続する。SLMチップは例えば、配列された複数の反射型素子を有する。反射型素子は、バネまたはポストを介して、メタライズ層や絶縁層を有するシリコン基板構造に旋回可能に接続される。必要な電極やドライバもチップ上に設けられている。静止位置で、ミラーはチップ表面のポスト領域に対して平行である。SLMチップで起こり得る湾曲の半径は、ミラー部材の領域では検出不能な大きさである。
【0034】
かかるSLMチップを、図では1つのプレートまたは層としか示していないが、上述の通り、複数のマイクロメカニカルな構成部品を含んでいる。
【0035】
SLMチップ製造後、SLMチップの活性表面形状を測定する。この測定は、SLMチップへの機械的負荷またはストレスをできるだけ低くして行われる。この測定結果を基に、所望の表面からの偏差、本実施形態の場合は平面からの偏差が検出され、偏差を有する表面の逆の形状である、この偏差に応じた補正用型が作成される。例えば、SLMチップ表面に凸部がある場合、補正用型の同じ位置に溝を設けなければならず、その逆も同様である。また、接着剤の収縮率の値を考慮する必要があるため、以下で説明するとおり、補正用型を垂直方向に補強しなければならない。
【0036】
補正用型は、SLMチップ用にセラミックベース部の固定面に作成される。この金型は、例えば、フライス加工やレーザ切断によって製造することができる。ベース部またはパッケージの材料が複雑で加工に向かない、または薄すぎて直接成型できない場合は、最初に補強をする。補強は、電気めっき、スパッタリングや他の蒸着方法によって実現できる。または、適当な材料の別のプレートを、パッケージ内やベース部上に設置することもできる。このプレートは、補正用型に配置する前に、別の方法で、接着接合、はんだ付け、または締結することもできる。
【0037】
図1に、SLMチップ1とベース部2の配置の断面を示す。SLMチップは、小さな凸部と、凸部に対応する位置に、より大きな溝を有するベース部を備え、図からは識別できないが、非常に薄い接着層がチップ1とベース部2間に設けられている。また、溝全体に接着剤3が充てんされている。図1の左手側において、塗布したばかりの接着剤3が硬化して収縮し、接着剤の厚さの厚い領域、ここでは溝5を下方向に牽引している。 しかし、接着剤の厚さが薄いポイントは、下方にほとんど牽引されない。この状態を図1の右に示す。凸部4が平滑化されて、SLMチップ1に平面が形成されたのが識別できる。
【0038】
溝5の垂直方向の大きさを決定する拡大または補強係数は、接着剤の収縮率sに依存して決まる。理論的拡大係数は1/s-1により算出される。例えば、SLMチップ表面の高さ1μmの凸部4を、収縮率1%の接着剤を用いて平滑化する。補正用型は、深さ99μm(= 1μm x(1/1%-1))の溝となる。1%は、実際のエポキシ系接着剤の一般的な値であるが、図や実施例では、その効果をわかりやすくするため、10%の接着剤収縮を想定している。このときの拡大または補強係数は9である。同じ理由で、Z軸を大幅に誇張している。
【0039】
図1からわかるように、1μmの凸部が設けられ、溝5を有する補正用型が作成されているので、凸部4下の接着剤の厚さは10μmである。図1の右手側において、接着剤は硬化し、10%収縮しているため、凸部4(存在しない)下の厚さが、9μmになっている。
【0040】
同様な実施形態を図2に示す。図2の接着層は、図1のものよりも大きい。図2の左手側は、硬化前の配置を示し、接着層6は、溝近傍では15μmに達し、凸部4下では20μmに達している。図2の右側において、硬化後の接着層は、それぞれ9μm、18μmに収縮している。また、凸部4が平滑化されている。
【0041】
図3に、非均一な接着層7をベース部の表面に形成した実施形態を示す。この接着層7は、図3の2つの図の左側はほとんど厚みがなく、右側は厚さ10μm、凸部4下は厚さ15μmである。図3の右図において、硬化後の接着層7の左側は依然としてほとんど厚みがないが、右側の厚さは9μm、凸部があった位置の厚さは13.5μmである。これらの例から、本方法の作用は、接着剤の厚さや分布に左右されないということが理解できる。
【0042】
当然のことながら、はんだペーストや他のはんだ材料等の熱的にまたは他の化学的に収縮する、異なる収縮率値を示す材料も、本発明において使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にSLMアセンブリ素子の製造において、素子の表面形状を補正する方法であって、該素子は熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を介して、ベース部に接続され、その高さは横方向の大きさより非常に小さく、該方法は、
前記素子の製造後、素子の現在の表面形状を測定して、所望の表面形状からの偏差を検出するステップと、
前記ベース部表面に、所望の表面形状からの偏差に対してネガティブな補正用型を設けるステップと、
前記接続材料を、前記ベース部表面または前記素子の下側に塗布するステップと、
前記現在の表面形状および前記補正用型に応じて位置を合わせながら、前記素子と前記ベース部を結合するステップと、
前記素子の現在の表面形状の偏差を補って所望の表面形状を達成するように、熱的にまたは化学的に収縮する接続材料を硬化させるステップを備える
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記素子と前記ベース部の間に設置される前記接続材料の厚さは、偏差の横方向の大きさよりも非常に小さくなるように選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベース部表面に前記ネガティブな補正用型を設ける際に、前記接続材料の収縮に依存する拡大係数を考慮する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
所定の高さと前記拡大係数の積である垂直測定値を有する凹所または隆起部を、前記補正用型に加工して、隆起部または凹所として形成される偏差を補正する
ことを特徴とする請求項1乃至3の内の1つに記載の方法。
【請求項5】
補正用型を形成するための前記拡大係数は、前記接続材料の収縮率に基づいて実験によって定められる
ことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
1/s-1の値が前記拡大係数とて選択され、sは接続材料の収縮係数である
ことを特徴とする請求項3乃至5の内の1つに記載の方法。
【請求項7】
前記素子は、前記ベース部に接着剤を介して接続される
ことを特徴とする請求項1乃至6の内の1つに記載の方法。
【請求項8】
エポキシ樹脂またはポリイミドに基づく接着剤が、前記接着剤として選択される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記素子は、前記ベース部にはんだを介して接続される
ことを特徴とする請求項1乃至6の内の1つに記載の方法。
【請求項10】
均一の厚さを有する複数の素子の片面の形状が測定され、補正用型は測定に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1乃至9の内の1つに記載の方法。
【請求項11】
非均一の厚さを有する複数の素子の両面が測定され、補正用型は測定にしたがって形成される
ことを特徴とする請求項1乃至9の内の1つに記載の方法。
【請求項12】
前記ベース部の前記補正用型は、前記接続材料の弾性を考慮して、FEMシミュレーションによって決定される
ことを特徴とする請求項1乃至5または7乃至10の内の1つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の内の1つに記載の方法のSLMアセンブリの製造への利用法であって、
複数のミラー部材と対応する電極およびドライバを有するSLMチップは、好ましくはセラミック材料、金属またはシリコンからなるベース部に、接着剤またははんだを介して接続される
ことを特徴とする方法の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501882(P2010−501882A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524902(P2009−524902)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008316
【国際公開番号】WO2008/022648
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504174917)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. (26)
【出願人】(509050362)ミクロニック レーザー ズィステムス アーベー (1)
【Fターム(参考)】